研究開発評価は、「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」(平成9年8月7日内閣総理大臣決定)(以下、「研究開発評価に関する大綱的指針」という。)を策定し、研究機関や研究課題についての評価を本格的に導入した。大学については、自己点検・評価を義務化し、評価の一層の促進が図られた。しかしながら、評価結果の資源配分・処遇への反映や、評価プロセスの透明性は未だ不十分であるとされており、評価の実効性の向上が課題となっている。このため、評価の在り方や方法、結果の公表について、早急に改善が必要である。
研究開発評価は、研究開発評価に関する大綱的指針に従い実施されているが、競争的な研究開発環境の実現と効果的・効率的な資源配分に向けて、
● 評価における公正さと透明性の確保、評価結果の資源配分への反映
● 評価に必要な資源の確保と評価体制の整備
に重点を置いて改革を進める。また、その実施に当たっては、研究開発課題の評価、研究機関の評価、研究者の業績評価が、体系的かつ効率的に行われるようにする。
このため、以下のような事項を盛り込み、研究開発評価に関する大綱的指針を改定する。
(a)評価における公正さと透明性の確保、評価結果の資源配分への反映
研究開発課題の評価は、その課題の性格に応じて行う。評価は一律の基準で行うのではなく、研究課題、分野によって柔軟に対応する。とりわけ、政策目的に応じたプロジェクトや研究開発制度による課題については、第三者を評価者とした外部評価により、事前評価においては社会的・経済的な意義・効果や目標の明確性等の評価を、中間及び事後評価においては実施に当たって設定した具体的目標に対する達成度の評価を徹底する。また、競争的資金による課題については、原則として、独創性・先導性等の科学的・技術的視点については長期的視点を持つなど高い資質を有した専門家によるピア・レビューを行い、国際的水準に照らした質の評価を徹底する。その際、その時点までに競争的資金の申請者が関与した研究開発課題の事後評価が制度を越えて次の申請の際の事前評価に反映されるよう運用の改善を行う。
各府省は、研究開発課題の事前評価、中間・事後評価に加えて、研究開発の終了後における研究開発成果の波及効果に関する追跡評価を実施し、そのインパクトを評価するとともに、過去の評価の妥当性について検証する。また、研究開発制度及びその運用についても、その目的に照らして効果的・効率的なものになっているか等の評価を行う。
研究機関の評価は、機関の設置目的や研究目的・目標に即して、機関運営と研究開発の実施の面から行う。機関運営評価は、機関長に与えられた裁量と資源の下で、目標の達成のためや研究環境の改善等のためにどのような運営を行ったかについて、効率性の観点も踏まえつつ評価を行う。研究開発の実施の評価は、機関が実施した研究開発課題の評価と所属する研究者の業績等の評価の総体で評価を行う。研究機関の運営は機関長の裁量の下で行われるものであるので、研究機関評価の結果は、運営責任者たる機関長の評価につなげる。
研究者の業績評価は、研究機関が行うべきものとして、機関長が評価のためのルールを整備し、責任を持って実施する。その際、研究開発、社会への貢献等関連する活動を評価できる多様な基準によって行い、基準の一つにおいて特段優れている場合にはこれを高く評価する。
以上の評価を進めるに当たって、評価の公正さ、透明性を確保するため、客観性の高い評価指標や外部評価を積極的に活用するとともに、評価を行う者は、被評価者に対し、評価手法・基準等の周知、評価内容の開示等を徹底する。
また、評価結果については、課題の継続、拡大・縮小、中止等の資源配分、研究者の処遇に適切に反映する。
なお、大学については自主性の尊重、教育と研究の一体的な推進などその研究の特性に留意する必要がある。また、大学評価・学位授与機構等による教育、研究、社会貢献、組織運営などの第三者評価の推進を図る。
(b)評価に必要な資源の確保と評価体制の整備
評価は研究開発活動の効果的・効率的な推進に不可欠であり、評価に必要な資源は確保して、評価体制を整備する。
● 競争的資金の配分機関などにおいて専任で評価に従事する者が質・量ともに不足していることを踏まえ、研究費の一部を評価の業務に充てる、評価部門を設置して研究経験のある人材を国の内外を問わず確保するなど必要な資源を充て、評価体制を充実する。また、研修等を通じて人材の養成に努める。
● 評価実施主体が国内外の適切な評価者を選任できるようにするため、及び個々の研究開発課題の評価において普遍性・信頼性の高い評価を実現するため、国全体として、個々の課題についての研究者、資金、成果、評価者、評価結果をまとめたデータベースを整備する。その結果、どのような成果が上がっているか、わかりやすい説明にも資する。
● 評価体制の整備に伴い発生する審査業務等を効率化し、評価をより高度なものとするため、電子システムの導入を図る。
研究開発評価に関する大綱的指針は制定後既に3年を経過しており、基本計画を踏まえて速やかに改定する。また、研究者の流動化その他の科学技術システム改革に関する施策についても、基本計画を踏まえ、必要に応じ、基本的な指針を取りまとめる。
総合科学技術会議は、大規模な研究開発その他の国家的に重要な研究開発について評価を行い、その結果を公開するとともに、推進体制の改善及び予算配分に反映させるよう関係府省に提示する。また、基本的な政策や重要事項に係る方針等に反映させるため、必要に応じ、各府省における科学技術の施策について評価を行う。
科学技術・学術政策局政策課
-- 登録:平成21年以前 --