科学技術と学術は新たな知を生み出し、人類の未来を切り拓く源である。我が国は、人類の知的資産たる優れた研究成果を創出し、これを世界に発信することを通じて人類共通の問題の解決に貢献するとともに、国際的な競争環境の中で持続的に発展し、安心・安全で質の高い生活のできる国の実現を目指す必要がある。そのためには、我が国の最も貴重な資源である「頭脳」によって、世界をリードする「科学技術創造立国」を目指して努力していかなければならない。
文部科学省は、科学技術と学術を総合的に振興することを任務としており、研究者の自由な発想と研究意欲を源泉とする学術研究から、特定の政策目的を実現する大規模プロジェクトまで広範な研究及び開発を推進する役割を担っている。その役割を果たすために、文部科学省は、優れた成果を生み出し、社会・経済への還元等を図るよう、研究及び開発に関する企画立案、実施、評価等を、国民の理解を得つつ適切に行っていくことが必要である。その際、様々な性格、内容、規模等を有する広範な研究及び開発について、各々の特徴を踏まえるとともに、全体として調和が取れたものとなるよう配慮することが重要である。
研究及び開発の評価については、従来より取り組みがなされてきたところであるが、平成13年3月に閣議決定された科学技術基本計画においては、優れた成果を生み出す科学技術システムを実現するための柱の一つとして、評価システムの改革が挙げられている。今般、この基本計画に基づき、改定された「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(平成13年11月28日)が内閣総理大臣決定された。
他方、大学評価を行う機関として、大学評価・学位授与機構が創設されるとともに、「独立行政法人通則法」(平成11年法律第103号)に基づく独立行政法人研究機関の評価が実施されている。また、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づく政策評価が平成14年4月から実施されることになっている。これらの評価については、研究及び開発に係わるものがあるため、大綱的指針に基づく評価を進めるに当たっては、これらの評価との整合性を確保しつつ、適切に進める必要がある。
科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会研究評価部会では、大綱的指針を踏まえ、文部科学省における研究及び開発の評価について基本的な考え方を示したガイドラインとなる指針の策定に向けて具体的な検討を行い、また、並行して科学技術・学術審議会学術分科会で行われた学術研究における評価の在り方に関する検討結果「学術研究における評価の在り方について(報告)」(平成14年2月14日)の内容を反映し、文部科学省の所掌に係る研究及び開発全体を対象とする本草案を取りまとめた。
本草案では、第1章において評価についての意義等を明らかにし、第2章において本指針の4つの評価対象(研究開発施策、研究開発課題、研究開発を行う機関等、研究者等の業績)に共通する事項を整理し、第3章において4つの評価対象毎の個別事項を取りまとめた。さらに、第4章においては、第1章から第3章に基づいて評価を行うに当たり、特に、学術研究及び独立行政法人研究機関の評価に当たっての配慮事項を特記するとともに、第5章において本指針のフォローアップについて記述した。
なお、研究及び開発は未知を知とする高度な専門性に立脚した知的生産活動である。このため、その見通しや価値の判断は、専門家の洞察に依存する部分を本来的に避け得ないものであることに留意しなければならない。このため、評価は無謬ではないという謙虚な立場に立ち、その完成度を高める努力を怠ってはならないと考える。文部科学省としても、評価手法の改善についての調査研究を行うとともに、評価の実施状況等をフォローアップし、本指針の見直し等適切な措置を講じていくことが必要である。
科学技術・学術政策局政策課
-- 登録:平成21年以前 --