科学技術・学術審議会(第62回)議事録

1.日時

平成31年3月13日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

東海大学校友会館

3.議題

  1. 会長及び会長代理の選出について
  2. 部会及び委員会の設置について
  3. 総会の議事運営について
  4. 今期の調査審議事項について

4.出席者

委員

濵口会長、青木委員、小縣委員、春日委員、勝委員、岸本委員、栗原和枝委員、栗原美津枝委員、小長谷委員、白波瀬委員、鈴木委員、須藤委員、十倉委員、中田委員、橋本委員、長谷山委員、平田委員、福井委員、三島委員、宮浦委員、観山委員

文部科学省

永岡文部科学副大臣、藤原文部科学事務次官、山脇文部科学審議官、松尾科学技術・学術政策局長、磯谷研究振興局長、佐伯研究開発局長、坪井科学技術・学術学術政策研究所長、菱山サイバーセキュリティ政策立案総括審議官、渡辺大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、千原大臣官房審議官(研究振興局担当)増子大臣官房審議官(研究開発局担当)、勝野科学技術・学術総括官、角田科学技術・学術政策局政策課長、井上企画評価課長、ほか関係官

5.議事録

〇 会長には、科学技術・学術審議会令第4条第1項の規定に基づき、委員の互選により濵口委員が選任された。
〇 会長代理は、科学技術・学術審議会令第4条第3項の規定に基づき、濵口会長が三島委員を指名した。

※事務局から、科学技術・学術審議会に置く部会及び委員会(案)について説明があり、了承された。

【濵口会長】 それでは、ここで永岡文部科学副大臣から御挨拶を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

【永岡文部科学副大臣】 皆様、おはようございます。文部科学副大臣の永岡桂子でございます。本日は、第62回の科学技術・学術審議会総会の開会に当たりまして、一言御挨拶をさせていただきます。
 委員の皆様方におかれましては、大変お忙しいところ第10期の本審議会の委員に御就任を頂きまして、誠にありがとうございます。そして、ただいまは濵口会長、三島会長代理という人事も決めていただきましたこと、大変感謝を申し上げますし、また会長、会長代理には、どうぞよろしくお願いいたします。
 我が国が将来にわたりまして成長と発展を遂げていくためには、今こそ科学技術・学術の振興を図る必要があります。そのためには、研究者が従来の慣習や常識にとらわれない柔軟な思想と斬新な発想を持って研究に取り組み、そこで生み出された成果を応用・発展させていく必要があります。その基本方針を議論する本審議会の役割は大変大きなものと認識をしております。
 一方、我が国の研究力の状況は、諸外国に比べまして低下をしていると言われております。このような中、我が国の研究力を向上するために、優秀な若手研究者へのポストの重点化や多様なキャリアパスの確保などの研究人材改革、そして、若手研究者への重点支援、新興・融合領域への取組の強化など研究資金の改革、研究設備等の共用の促進や研究支援体制の強化など研究環境の改革、この三つを総合的に進める必要があると認識をしております。
 第10期の科学技術・学術審議会におかれましては、研究力の向上に向けた取組や第6期科学技術基本計画の策定に向けた検討につきまして、委員の皆様方から是非とも忌たんのない御意見を賜りますよう、よろしくお願い申し上げまして、御挨拶とさせていただきます。
 どうぞよろしくお願いいたします。

【濵口会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、僣越ながら、私からも一言御挨拶を申し上げます。
 今期の科学技術・学術審議会総会は、第5期科学技術基本計画の策定を終えて約3年が経過したところで、今後、第6期科学技術基本計画の策定に向けた文部科学省における検討を本格化するフェーズに入ってまいります。現在、総合政策特別委員会を中心に、文部科学省における検討を進めている状況でございます。総合政策特別委員会においては、これまで第5科学技術基本計画のフォローアップ、第6期計画に向けた検討の論点と方向性について議論を重ね、2月に「論点とりまとめ」を提示したところでございます。今後、総合政策特別委員会は、この「論点とりまとめ」を踏まえ、具体の検討を進めることを行っていきたいと思っております。次期基本計画に関する総合科学技術・イノベーション会議での検討は、来年度早々に専門委員会を設置して開始する予定と聞いております。総合政策特別委員会の検討もこの状況下で加速する必要があると考えておりますので、総合政策特別委員会は、6月に「中間とりまとめ」の骨子案の策定、8月を目途に「中間とりまとめ」を行うことを目指して検討することとしております。来年3月には、最終的に取りまとめを行いたいと考えております。
 科学技術・学術審議会の関連部会・分科会等においては、総合政策特別委員会における検討に資するよう、特に「論点とりまとめ」にある研究力向上に向けたシステム改革、大変重要な論点でございますが、これだけは第6期基本計画に是非盛り込むべきという重要な点を各部会・分科会で十分検討していただき、6月上旬までに総合政策特別委員会に提示いただけるように、お願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 また、研究計画・評価分科会直下の関係委員会・部会においては、個別分野に関する次期基本計画に向けた検討の結果を、10月中を目途に総合政策特別委員会に提示いただけるようにお願いしたいと思います。
 いろいろお願いはたくさんありますが、どうぞよろしくお願いします。
 それでは、議事を進めさせていただきたいと思います。まずは、議題3、総会の議事運営についてお諮りします。事務局より説明をお願いいたします。

【角田政策課長】 資料の3-1、3-2に基づきまして、御説明いたします。
 資料3-1、科学技術・学術審議会の運営規則の改正についてです。今回の改正は、2点でございます。1点目は、第3条に追加する書面による議決でございます。現在、情報化の進展の状況、調査審議の機動性に鑑みまして、他の審議会の事例も参考に書面による議決を行えるよう、規定を新たに加えるものでございます。
 2点目でございますが、第4条第5項に新たに追加する分科会への付託事項でございます。研究計画・評価分科会において審議される文部科学省における研究及び開発に関する評価指針に係る事項、また、測地学分科会において審議がなされる我が国の研究機関における地震火山計画に係る事項につきましては、これまで総会において最終的に議決をしておりましたが、今回、専門性や審議の機動性に鑑みまして、担当の分科会に付託をし、分科会の議決をもって総会の議決とすることとさせていただくという案にしております。
 続きまして、資料の3-2、科学技術・学術審議会の公開の手続きについての改正についてでございます。公開の手続につきましては、1、2、3にございますように、審議会として決定しているものでございます。今回、先ほど御説明いたしました運営規則の改正に伴う条ずれに伴いまして、関係箇所を修正するものでございます。
 説明は、以上でございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 本件については、規則の改正となりますので、審議が必要となります。この件に関して、御意見、御質問等ありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。御異存なければ、資料3-1、3-2については変更案のとおり決定したいと思いますが、よろしいでしょうか。

 (「異議なし」の声あり)

【濵口会長】 ありがとうございます。
 それでは、次に、議題4をお諮りします。今期の調査審議事項について、お諮りします。まず、事務局から、説明をお願いいたします。

【角田政策課長】 資料4-1でございます。今期、第10期審議会における主な検討事項を掲げさせていただいております。ここにございますように、一番上からでございますが、第6期、次期の科学技術基本計画の策定に向けた検討、研究開発プログラム評価、学術研究の振興方策及び基礎研究の振興方策、先端研究施設・設備・機器の整備・共用、産学連携、国際戦略、これらに加えまして、専門的な事項として、日本食品標準成分表、海洋関連施策、地震火山観測研究、技術士資格の更新制の導入及び技術士試験、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針等が、検討事項として考えられるものと思っております。担当の各分科会・部会・委員会におきまして、御議論いただくものと考えているところでございます。2ページ目、3ページ目につきましては、前期である第9期における、それぞれの分科会・部会・委員会の検討の状況ということで、御参考にしていただければと思います。
 これに関連いたしまして、資料4-2「高等教育・研究改革イニシアティブ(柴山イニシアティブ)」について、御説明を申し上げます。
 本件は、高等教育機関・研究機関における、教育、研究、ガバナンス改革を一体的に推進するための政策パッケージとして、去る2月1日に柴山大臣から発表されたものでございます。資料上段にございますように、基本的な考え方としては、今後の高等教育機関・研究機関の改革を進める上で、取組・成果に応じた手厚い支援と厳格な評価を徹底することによって教育、研究、ガバナンスを改革して、世界をけん引するトップ大学群あるいは地域や専門分野をリードする大学群の形成、研究者・学生の育成・活躍を促進していくというものでございます。
 改革の方向といたしましては、下段左側にございます四つの点、高等教育機関へのアクセスの確保、大学教育の質保証・向上、研究力向上、教育研究基盤・ガバナンス強化を掲げております。このうち研究力向上については、資料の5ページに詳細がございます。御覧いただければと思います。
 我が国の研究力が諸外国と比べて相対的に低下をしているという現状を踏まえまして、今後の方向性として3点、世界をリードする質の高い研究人材と流動性の確保、研究者の継続的な挑戦を支援する研究資金の改革、研究生産性を向上させる研究環境の実現、これらを大学改革と一体的に改革を加速・深化させていくこととしております。具体的な方策としては、下段のところに色の付いた三角形がございますが、研究人材につきましては優秀な若手研究者のポストへの重点化、研究資金については若手研究者への重点支援や新興・融合領域の開拓、研究環境については設備・機器等の計画的な共用や研究者の事務負担の軽減などに取り組むこととしております。
 これら研究力向上についての具体的な方策につきましては、資料の8ページに工程表が掲げてございますが、この工程表を御覧いただきますと、中段にございますように、現在永岡副大臣の下で省内に研究力向上加速タスクフォースを設置し具体的な方策について検討を進めているところでございまして、近々結果を取りまとめる予定となっているところでございます。今後、このタスクフォースの検討結果に基づきまして予算要求と改革を推進していくとともに、第6期の科学技術基本計画の検討にも反映をしていただきたいと考えているところでございます。
 事務局の説明は、以上でございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。続きまして第9期総合政策特別委員会において取りまとめられました、お手元の資料4-3及び委員会の今後の進め方について示した資料4-4について、私の方から説明させていただきます。
 資料4-3を見ていただきますと、第9期総合政策特別委員会では、第5期科学技術基本計画の後半と、第6期に向けた検討の論点と方向性について、議論を重ねてまいりました。1月にまとめましたのが、この「論点とりまとめ」でございます。タイトル、「平成から〇〇へ」となっておりますが、これは新元号が決まり次第、きちっと書かせていただく予定でございます。タイトルとしては、「「新時代・新世代の科学技術システム」ビジョン」となっております。
 大きな論点としては3点ございます。1点目は、「我が国の立ち位置及び今後の方向性と、科学技術が担う役割」でございます。この論点で大きくは4点ございますが、まず、昨今の社会は、将来像や価値観が多様化するなど、大きく時代が変わってきているという認識の下、さらにIoT、AI、遺伝子改変技術等の革新的技術の登場によりまして、これまで以上に科学技術が経済・社会・政治に影響を及ぼすようになり、その役割は拡大しているという認識でございます。一方で、我が国は急激な少子高齢化が進み、女性の活躍も求められております。また、地方と都市の格差、企業の伸び悩み、研究力の低下等、我が国の活力の源泉は枯渇の危機にさらされているという認識を持っております。4点目として、このような状況であるからこそ、我が国は、前向きに多様な個性・能力が調和し共創する社会の実現に向けて、科学の力による先導的な挑戦を続ける必要があると考えております。さらに、大きな時代背景の変化を踏まえつつ、我が国として競争するところと協調するところ、守るべきところ、全く新しい価値を創造するところなどを戦略的に見極め、資金循環を創出し、より良い新たな社会を形成していく必要があると考えております。
 2ページ目を見ていただきたいと存じます。2点目として、「今後の研究の在り方とそれを支える科学技術システムの考え方」でございます。まず大きな点としては、研究における卓越性の追求、これが大変重要だと思います。「真理の探究」「基本原理の解明」「新たな知の発見、創出や蓄積」など、研究者が卓越した新たな発想を追求し、創造する活動が重要と認識しております。2点目としては、研究者が挑戦(失敗)できる環境をどう作るかでございます。科学の探求には挑戦が必要であり、挑戦した内容が適切に評価され、それを基に次の研究に再挑戦できる環境へと転換していくことが、重要であると考えております。3点目としては、柔軟性と即応性を兼ね備えた共創システムの確立でございます。発明、発見といった研究を、その後の開発・イノベーションに展開していくには、社会の変化に対し、柔軟性と即応性を持って適応することが求められていると考えております。4点目として、未来社会デザインとシナリオへのアプローチ。これは文部科学省としては非常に新しい試みであると、個人的には考えております。将来の不確実性や多様性が高まる中、将来の未来社会ビジョンを科学技術によって前向き・主体的にデザインし、その可能性や選択肢を広げていくことが、より良い新しい社会への突破口・糸口となり得ると考えております。また、多様な知や技術を最大限活用・社会実装していくためには、様々なイノベーションの類型に応じた検討や支援を行っていくことが必要であります。さらに、先進的な研究を適切に促進し、社会で円滑に適用するために、人文学・社会科学の視点、倫理的・法的・社会的問題、いわゆるELSIに係る議論を活性化する必要があると考えます。
 3点目としては、「今後の検討項目及びその方向性」であります。3ページ目を御覧いただきたいと思います。一言でまとめますと、これらの論点を実現するために、研究力向上に向けたシステム改革、未来社会デザインとシナリオへのアプローチ、更にデザインを実現する先端・基盤研究、技術開発という観点から、今後、具体的な検討を進めたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、ただいま説明いただきました「高等教育・研究改革イニシアティブ」における研究力向上や、私から説明させていただいた第6期科学技術基本計画の策定に向けた議論、これらは非常に重要な課題でございます。今後、関係する分科会等々で議論をしていただく上で、本日御出席の委員の皆様から、是非御意見を賜りたいと存じます。時間は十分ございますので、お一人お一言は必ずお願いできればと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 どうぞ。

【井上企画評価課長】 先生方の御意見を頂く前に、少し補足させていただきたいと思います。先ほど会長から御説明いただきました総合政策特別委員会でございますが、資料4-4に今後のスケジュール、心づもりを書いてございます。濵口会長の最初の御発言の中でも既に言及いただきましたが、資料で御覧いただければと思います。
 御案内のように、第6期科学技術基本計画は、内閣府の下にございます総合科学技術・イノベーション会議が政府として取りまとめていくという形ですが、各関係省庁が協力しながらやっていくという形であろうかと思います。文部科学省といたしましても内閣府の方と十分な連携・情報共有をしながら進めていきたいと思っておりますが、科学技術・学術審議会で御議論いただいたことも、逐次内閣府の方にも連携を取りながら、連絡をしながらやっていきたいと思っております。
 資料4-4の2ポツのスケジュールを御覧いただければと思いますが、第3回、6月下旬を予定しておりますが、ここでまず骨子の取りまとめを行っていただきまして、内閣府のCSTIにおける議論の状況も見まして、途中段階のまとめ、骨子も出していけるような形をとれればと思っておりますので、ここで骨子案を一つ区切りとしたいと思っております。そのために、第3回の上に括弧書きで書いてございますが、特にシステム改革に関して、どうしてもこれはというものをここで出していければと思いますので、関係部会等で御議論いただき、その事項を出していただければと考えています。次の節目が、8月下旬、第5回と書いておりますが、ある程度の肉付けをして、「中間とりまとめ」ということを考えてございます。そして、最終的には平成32年、2020年3月に「最終とりまとめ」を行いたいと考えてございますので、それまでに個別分野の事項につきまして関係部会等において御議論・御検討いただいたものも踏まえて「最終とりまとめ」を行いたいと思います。第6期は、これは年度でございますので、2021年4月からの検討に向けて、こういうスケジュール感で事務局としては進めていきたいと、考えてございますので、よろしくお願い申し上げます。

【濵口会長】 ありがとうございます。重要な点を補完していただきました。最初のターニングポイントとなりますのは、第3回、6月下旬でございます。余り時間がございません。あと2か月少しだと思いますが、これまでに各部会において検討を十分進めていただいて、論点整理をしていただいて御報告いただくという作業が必要になりますので、是非よろしくお願いいたします。頂いた御意見を骨子案として取りまとめて、その後、御議論いただきながら、8月に「中間とりまとめ」、来年3月に「最終とりまとめ」と、こういう手順で進んでいきますのでどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、質問、御意見等ございますでしょうか。橋本委員、どうぞ。

【橋本委員】 橋本でございます。今、お話に出ておりました内閣府のCSTIの議員をしておりまして、私としても今回この審議会に入れていただいたので、しっかりと内閣府とつなぐ役割をさせていただこうというふうに思っております。
 その観点から、今日初めてこの資料を拝見させていただきましたけど、資料4-3というのが、この審議会で第6期に向けた論点を整理したものかなというふうに思っております。ここに書かれていることは、全く私も同意するものでありまして、是非こういう方向でしっかり議論することが重要だと思うのですが、一方で、現在の第5期の策定のときも、私、当時CSTPでしたけれども、そのときの議員として第5期の作成に最初からずっと関わってきました。今の第5期を御覧いただいても、書いていることは大変立派なことが書かれていると思っております。計画もそのときかなりいろいろ調べて、いろんなことを考えて埋め込んだものですから、書かれていることは決して間違ってないと思っているのですが、しかしこの間起きていることが、今も御説明ありましたように、研究力の低下の話ですとかいろんな危機感もあって、私自身が一番気にしているのは、実は研究現場における閉塞感、これが何よりも一番問題。いろんな課題はありますけど、特に今は、若手を中心として研究現場における閉塞感というのが極めて大きいと思っています。現在CSTIではそこの部分を取り上げて、学術会議にも協力していただきながら議論を進めているところでありますが、いろんな論点はありますけれども、若手の雇用の安定化に関しては私も全くそのとおりだと思うのですが、一方で、国際的に見ても若手のうちからテニュアにどんどんなるなんていうことはないわけでして、基本的にそこは競争原理の中でいくという、これは昔から世界中で行われていることであります。我が国と欧米諸国との違いは何かというと、そこの後のキャリアパスが途切れているということが何よりも問題であって、そこのキャリアパスを充実化させるということは、これもずっと分かっていたので言ってきたし第5期にも書いているわけですけれども、しかし、実質的にはなかなかそこの部分がいかないということを率直に考えていかないといけないと思うのですね。
 キャリアパスの多くは産業界の方に出ていくというのが何よりも望まれることですが、産業界に採ってほしいということをずっと言っているだけでは駄目だということも明確にはっきりしていまして、今回も十倉委員と須藤委員がいらっしゃって、私たち、よくそういう話をさせていただいておりますが、産業界も採りたい人はどんどん採ると言っているわけでして、逆に言うと、採りたい人が十分いないから採ってないと、そういう言い方はされませんけど、そういうことに近いのだと思うのですね。ですので、基本的に大学院時代から人材育成の方向性としてそういうことを明確に打ち出した上での産学連携の話を活性化しているわけであって、これを総合的にやっていくということが絶対に必要だと思っています、というのが1点。
 それから、もう1点、大きな問題として、研究予算が足りないということで国に対して求めるわけですが、これも冷静になって考えると、日本自身は貧しくないかもわからないですけど、日本の国家は貧しいのですね。これは残念ながら事実で、高齢化社会、社会保障費の問題があって、事実としてそうなので、だから、両手を挙げてバンザイするわけじゃなくて、私たちもしっかりと国に十分な支援をしていただくようなお願いをしないといけないと思うのですけれども、でも限界がありますよね。限界があって、格段に伸びるなんていうことはどんなに頑張ったってできないわけでして、一方で、これも視点を変えると、世界全体で科学技術に対する期待というのは非常に高まっていて、ボーダレスな資金の移動等々も非常に起きているわけですね。そういう中に日本が必ずしも入ってないという事実もあります。ですので、そういう大きな世界全体の資金の流れの中で我が国の科学技術をどのようにもり立てていくかという視点が、大変重要だと思っています。
 その流れから言いますと、ここ1年ぐらいで我が国に対する海外からの期待度が猛烈に変わって、上がっていますね。多分、皆さんは感じておられるのではないですか。私も非常に感じます。ここ1年ぐらいです。欧米諸国からの、ヨーロッパ、ドイツ、フランス、イギリスからの、これは個々の理由がそれぞれありますけど、ものすごくありますし、アメリカからもありますし、中国からもものすごくあります。こんなチャンスはないと。私、20年ぐらいこういうことに関わってきていますけど、これぐらい我が国が期待されているような状況はなかった。ところが、一方、中では先ほど申し上げたようなすごく暗いイメージの話ばかり出ていて、このギャップにあ然とするわけです。今のように我が国が求められている時っていうのはそんなに長くなくて、我々はよくそういう議論をしたとき、せいぜい2年ぐらいだろうと。逆に言うと、この2年ぐらいにそういう前向きのメッセージを出して世界のそういうのに応えるようにして大きな流れを作っていかなければ、本当に終わってしまうのではないかということを言われているわけです。
 なので、私の御提案は、こういう形できちっと立派にまとめられていただいていますので、それを各分科会で議論していただいて積み上げていただくのは当然必要なのですが、一方で、CSTIとしては、数名の人間で話しているだけでまだ公式な話ではありませんけれども、我々の方向としてはやはり第6期の枠組み自身を大きく変える必要があるのでないかと。それぐらいのことをしないと、今までと同じような、5期に基づいて6期を作るというのだと多分変わらないだろうと。視点を、視座を変えて第6期の構造自身を大きく変えていくべきではないかということを、実は内々に話しています。今ちょうどスタートしたところですので、まだCSTIの中でも本格的な議論はされておりません。そのようにして視座を変えた議論をしていこうというふうに思っておりますので、その情報は適宜、もちろん事務方を通じて文科省にも流しますし、私も可能な限り流すようにいたしますので、是非そのような視点を持っていただきたい。
 最後にもう1点だけですけれども、先ほどもお話ありましたように、第6期は2年後です。逆に言うとまだ2年間あるのですね。先ほど申し上げたように、私たちに残っている時間は2年ぐらいじゃないかと思っているのです。本当に有効な、今やれることは。ですので第6期を作ることによって、第5期を忘れてしまうというか、先のことばかり議論してしまう可能性があって、第6期の議論はするけれども、この2年間をどうするのかという議論は物すごく重要だと思っております。その視点を是非忘れないでやっていくことが重要かなというふうに思っておりますので、繰り返しですけれども、私もここの委員としてしっかりと議論に参画させていただきますし、また内閣府での議論も適宜御報告させていただきたいというふうに思っております。
 以上です。

【濵口会長】 ありがとうございます。非常に貴重な意見を賜りました。
じゃ、岸本委員、お願いします。

【岸本委員】 ありがとうございます。この論点整理については、前期のときにも大分議論をして、課題は非常に明確になってきている中で、どういうふうに私たちが答えを出していくかというのが求められているということかと思いますが、今回のスケジュールを見ると、非常に早い、忙しい。でも、その中できちんと出していきたいということなので、この4月、5月、6月、非常に大事な時期だと思いますけれども、大きなシステム改革をする中で、個別に最適化をしても全体のシステムは良くならないということで、各分科会のところで議論する論点整理の中で、これまでのやり方ですと個別のところを部会に提示して議論をしてくださいということになっていると思いますが、できれば論点整理のところの中で、全体像が分かる中で、この部会はここを考えて、全体システムの中にどうするかという議論ができていくといいのかなというふうに思います。
 そういった観点から、大学との一体改革ということが今回大きな中で、もう一つ、高等局の方では2040年の高等教育のグランドデザインということで、大学改革のことについてそちらでも議論が進んでいると思います。高等局の方でも科学技術の振興と大学改革の議論をしているところを共有化しながら答えを出していかないと、大学は異なったことが出てきた場合、両方を同時に最適化というのは難しいところもあると思いますので、そういったところも踏まえた議論が早急にできるといいのかなというふうに思いますので、是非よろしくお願いいたします。

【濵口会長】 ありがとうございます。重要な点を頂きました。
 先ほどの橋本先生、今の岸本先生のお話を伺っていて思うのですけど、全体をしっかり最適化しながら、個別課題についてももう少し深掘りも必要かなあと思います。例えば、人材育成で産業界と大学のつながりの面ですけど、分野によっては実は相当進んでいる分野もあることをJSTでも分析しておりまして、例えば化学界はドクターの採用は非常に多いのですね。そんなに問題が出ていない。スムーズにいっておりますし、給与体系も良くなってきている。そこは日本全体で見ますとまだパッチワークになっていて、進んでいるところと進んでいないところ、バイオはかなりミゼラブルな部分がいろいろあるのですけど、これを全体としてどう考えるかということと成功例はどうやってうまくいっているかということと、これを一致させた議論をこの短期間のうちにしっかりやれないかなあと。それと橋本先生が言っておられる、この後の2年間に打てる手はないのか。今期の前半のところはここもじっくり検討が必要ではないかなと、そういう実感がございます。
 済みません、しゃべり過ぎましたが、ほかの御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。
 どうぞお願いいたします。

【小縣委員】 小縣と申します。新しく委員になられた方もいると思いますが、私はJR東日本に所属しています。JR東日本は民間であり、社会インフラの会社でございます。幾つか申し上げたいと思います。
 前回もこの場でも申し上げたこともありますが、濵口会長がおっしゃったとおり、最初に立ち位置の部分がございますけど、危機という言葉が出ておりました。特に国の活力の源泉は枯渇の危機であるという部分で今後の日本の科学技術力の問題が出ていましたけれども、最初に申し上げたいのは、私ども民間会社とすればその危機感はもっと強いものがございます。ですからそこがまずベースであるので、是非その危機感を共有するというか、そこは正に会長がおっしゃったとおり、さらに様々な面における具体的な協調をお願いできればなというふうに思います。
 それから、2点目ですけど、資料4-1、上から五つ目になりますが「組織対組織の本格的な産学連携の推進」ということで、大変力強い表現になっています。後ほどで結構なのですけど、事務局の方でどのぐらいの決意でいらっしゃるのかというのを具体的にお聞かせ願えれば大変幸いであります。表現的には非常に具体的に書かれているのかなと思うのですが、イメージとしてはどこまでということをお教えいただければと思います。1点申し上げますと、私どものような社会インフラの会社でも、当然、先ほど申し上げた危機感を持っておりまして、例えば私はイノベーションを担当しておりますけれども、特に最近では幅広いアライアンスにより進めています。ですから、産と産、企業と企業で組んで素早く進んでいくということが非常に大事でございます。そういう意味では、全体、科学技術とか、AIということも出てまいりますけど、いずれにいたしましても、ICTの技術を駆使していかなきゃいけないのだというふうに思います。イノベーションにおけるキーワードとなっているAIでありますとか、ロボット、IoT、ビッグデータは、もう言い古された言葉であると思いますが、私の経験でも日本はこれらの応用の場というのはたくさん、また広くあると考えております。特に社会インフラ、我々は鉄道でございますけれども、世界最先端のICT技術を応用する場というのは、ふんだんにあるわけで、実証実験から社会実装の場で多くの日本の強みを出せると私は信じておりますので、是非それも留意していただくと有り難いなというふうに思っております。
 それから、3点目ですけど、視点なのですが、濵口会長に御説明いただきました資料4-3の3ページ目ですが、例えば未来社会をデザインするということは非常に大事だというふうに思っております。デザインして、バックキャスティングで考えていくというのは非常に大事で、私どもの中でも相当それを強く指導しているのですけれども、例えば右下に「デザインを実現する先端・基盤研究、技術開発」と書いてございまして、その上には「未来社会デザインとシナリオへの取組」が書いてあるのですが、かなり議論をされてまとめておられて、更にこれから委員会の中でも進んでいくと思います。その上で申し上げたいと思いますけど、例えば我々の部分でいくと、インフラだと「都市・建築・土木・交通関係(インフラ構築・保守、技術体系化等)」ということが書いてあります。これは、発想的には今までの発想かなというふうに思います。例えば日本はインフラが強いと言われていますけれども、私も長く付き合っている欧米、特にアメリカとかイギリスと比べても、確かにインフラが強いのですが、その源泉はオペレーションとメンテナンスであります。インフラの定義というのは国によって全然違うわけでありまして、まず定義を確定してから議論する必要があることを彼らにも言っているのですが、彼らの言うインフラというのはインフラそのものであり、動かないインフラ、ただそこにあるインフラというのが一般的のようです。日本の場合はオペレーションとメンテナンスが付いてくるというところが強みで、政府も今インフラ輸出に言及され、その場合はオペレーションとメンテナンスの強みを輸出しようと話されていますが、そんな簡単なものではないのです。ただ私が申し上げたいのは、資料4-3の3ページの右側の中段の項目のイメージは、まだまだそういう意味では、私が先ほど申し上げたいわゆるモノといいますか、一つの固まりといいますか、ハコモノとまでは言いませんけれども、一つ一つ分離された項目のイメージだと感じました。
 今、特に私どもで力を入れていますのは、MaaSと言いまして、モビリティ・アズ・ア・サービスです。マスコミではこの1~2年ぐらいで急に名前が出てきてしまっておりますけど、私どもはずっと前から考えておりました。これはモノとして捉えるということではなく、また自動車側のオペレーションとメンテナンスとして捉えるのでもありません。実際に社会、コミュニティ、そして我々でいくと、お客様、利用者、そういう方々のモビリティ、本当に動くこと、移動することに対してサービス設計を行いますから、非常に広い概念からMaaSと言っています。ちょっと長くなりますが、今マスコミでよくMaaSと言いますが定義がばらばらでして、自動運転あるいはカーシェアリングのことを狭くMaaSと言う場合もあるわけであります。これは技術視点ですけど、私どもの言っているMaaSというのは、極端に言いますと、24時間、人々が日本の中、あるいは世界を動き回る、動くこと自体を言っています。ですので、当然、家の中にいることも含めて、あるいは、旅館、ホテル、観光地、全て含めてMaaSという広い定義で頑張ろうと思っておりますから、是非その観念を入れていただくといいかなと感じました。資料の表現では、もちろん広くとらまえていらっしゃいますけれども、ハコモノとは決して申し上げませんが、まだ分野横断的にはなってないのではないかという印象を持ちます。モビリティというのは、社会、コミュニティで住んでいらっしゃる人々のクオリティ・オブ・ライフというようなところに結び付くようなものになってないのではないかと思います。
 それから、最後になりますが、先ほど橋本先生のおっしゃったことは全くそのとおりだと思いまして、会長からも前回も前々回も言われるように、ケミストリーの分野とか非常にマッチングがよくなってきたということなのですが、私ども、今は人生100年ということで積極的に人事制度を変更してきておりまして、ポスドクの問題も含めて本当に広く門戸を開いております。その中で、かなり前の議論で出ましたけどマッチングといいますか、どういう方がどういう能力を持っていらっしゃるのかというデータが少なくとも私どもの分野は不足しておりまして、何か良いマッチングの方法があれば、本当に広く優秀な方を採っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

【濵口会長】 ありがとうございます。いろいろ御指摘いただいた点、それから、貴重な御意見、人事制度について、御発言頂きまして、ありがとうございます。
 3ページのところは、現在はまだ正直なところ、従来型の縦割りの項目立てのまま残ってきております。ここにいかに横串を入れるか、共通項目を洗い出すかというのは、実は大変重要な時期に入っていっていると思います。文部科学省の科学技術・学術政策研究所の方でもそういう分析をしていただいたり、AIを使った分析等もやっていますので、データがうまく見合ってくれば、適宜こちらへ入れていきたいと思います。
 長谷山委員は途中で帰られるとお聞きしておりますが、御意見を頂ければと存じますけれども、いかがでしょうか。

【長谷山委員】 恐縮です。長谷山でございます。今回新たな総会ということで、大体その大綱といいますか、大きな方向を議論していくという機会を頂いていると思います。拝見しまして、いろいろな項目で科学技術の振興ということを今後議論していくと。その中で、私はどちらかといいますと人文科学の立場でございますので、一つ言えると思うのは、研究力を向上させるというときに大学の立場から申し上げますと、全ての分野で上げていくとかあるいは論文の数だけを増やすというのは、日本にとっては非常に難しいと思います。
 ただ、グローバル化の中でどういうふうに生き残っていくかということについて全般的に考えますと、一つはやはり世界標準に適合しないといけないと。共通ルールの中で戦っていかなければならないと。しかし、それは同時に共通ルールに適合していきますと、そのままですと埋没してしまう、個性がないと生き残れないということですから、世界標準に適合しながら、どういうふうに個別の研究者の個性、あるいは日本全体としての研究の個性、日本としての個性・特色を出していくか、強みは何かということだと思いますが、そこを伸ばすというのが大事だと思います。
 また、研究者の育成、これは大学の大きな使命の一つですけれども、今、共同研究、分野も融合して共に研究していくという、これは大変大切なことなのですが、個々の研究者、個を強くしないと全体の鎖の輪も強くなっていかないと。ですので、正に若手の研究者の支援とかいう場合にどういうふうにして個々の研究者を支援して、また活躍の場を作っていくか。個があってこその全体だという人材育成の在り方、これを考える必要があるのではないかと思います。
 今、世界の大学関係者の間で話題になっているのは、ダボス会議とか、環太平洋学長会議とかでもそうですが、テクノロジーが急速に進歩している。その中でテクノロジーと人間をどう調和させるのかということ、そこに広い意味での人文学の出番があるのではないかと。つまり科学技術振興という場合に、テクノロジーと人間をどう調和させて幸福な社会を実現するか、これが恐らくSociety5.0の目指すところだと思いますので、そういう視点を持って全体的な議論をしていく必要があるのではないかという感じがいたします。
 最後に、昨年、イノベーションということで大変面白い経験を中国でいたしました。中国というと、言葉は悪いのですが、いろんなことをまねしてゼロから作ってないのではないかと言われますけど、そうじゃないと。イノベーションというのはゼロから作るだけじゃなくて、既存のイノベーションを組み合わせるのもイノベーションだと。電動自転車の例というのをそこで伺いまして、1990年代の半ばに日本も中国も量産体制は整っていた。現状、2015年とかで見るとどうなっているか。中国は3,300万台位で、日本はまだ57万台位ですか、そのぐらいしかなかったと。なぜだろうというのは、日本の場合には、新しいものが出るとまず安全性、それから規制、もちろん必要なことなのですが、そこから始まっていくのでなかなか実装できない。制御装置が付いてないから軽車両として認定されないので路上を走れないという時代が長かった。中国の場合というのは、まずやらせてみせる。自動車よりも安くて自転車よりも楽だ。じゃあやろうとなって、どんどんやっていく。そのときに中国政府というのは決していいかげんに放置しているのではなくて、じっと監視をしているというのですね。これは良いものだというと、進む方向に規制をどんどんやる。これは危ないと思うと、逆に一挙に規制をかけてしまう。そういうことなので、自転車とモーター、イノベーションを組み合わせて産業界がどんどんやっていくと市場原理に任せている。しばらくたって、それをどうするか。日本の場合には、一生懸命造って、だけれども、一つ一つ規制をクリアしていく間に間に合わなかったので遅れてしまう。なので、イノベーションを社会実装につなげる面で、開発する産業界、それから、規制をする政府と、間に立っている大学と、この三者が一体になってイノベーションの推進を考えていかないといけないのではないかと感じました。
 大変雑ぱくで申し訳ないですが、大体こんなところです。

【濵口会長】 ありがとうございます。中国は割とアメリカ型と似ているパターンですね、政策の展開の仕方が。
 ちょっと論点を戻したいと思うのですけど、先ほど組織対組織の連携というのは具体的にどうだという質問がございましたが、どなたか、文部科学省として考えておられることをお話しいただける方、ございますか。
 松尾局長、お願いします。

【松尾科学技術・学術政策局長】 遅れてまいりまして、申し訳ございませんでした。
 組織と組織の連携ですけれども、私どもが考えていますのは、資料にひょっとしたらあったかもしれませんが、大学、国研と企業との間の連携というのも、今の研究室レベルだと200万とか300万くらいが平均になっていますけれども、全体として連携をしていくというのが組織対組織ということだと思います。したがって、研究室レベルからいろんなものが出てきたときに、大学全体としてどう連携していくかというのを考えていただくということだと思います。それで考えますのは、多分、10年前、20年前だと、大学と産業界とのコラボというのは余り意識としても根付いてなかったかもしれませんけれども、これは、そこの部分だけの連携ではなくて、産業界から入ってきたお金、例えば間接経費であるとか、そういったものを基礎の方にも回してもらうというのが、多分コンセプトなのだと思います。したがって、産業界との間では、ただ単に大学のシーズを産業界が使って社会実装するという出口だけではなくて、何をやるかということも丸ごと一緒になって考えてもらい、その資金もしっかりと根である基礎の方にも回してもらう、あるいは人件費も回してもらう、そういった大きな仕組みの中で産学の連携というのを考えていくというのが、今の恐らく国の立場というか、そういうことなのだと思います。そういったことのためにも、大学の中でしっかりと改革をしてもらい、人事・給与改革をし、そしてしっかりと産学との間での見える化をした上で企業と大学がコラボをすると。しかも、それは出口だけではなくて、何をやるかということも含めてやると。そして、出てきたものをどう応用していくかというのも、イノベーティブに大学と連携をしてもらうと。ただ大学が企業の中央研究所のようになるのかというとそうではなくて、しっかりと根であるところの基礎研究なり草の根的なところにも資金を産の方から回してもらうと。そのための組織対組織の連携ということを私どもとしては考えているということであろうかと思います。
 会長から言われたのはどういう文脈か、今、到着したばかりなので、とんちんかんなお答えかもしれませんけれども、そういうのがコンセプトであろうかと思います。具体的にどういったことかというのはまた、それに応じてことだと思います。

【濵口会長】 いつも無理難題に応じていただいて、ありがとうございます。
 この点を補完させていただきますと、ファンディングエージェンシーの立場から見ていますと、大学の研究というのは個別的には非常に先端的なものがいっぱいあるのですが、これがパーツのままとどまっている状況があって、パーツのまま、JSTでもいろいろ分析しているのですけど、その技術が海外へどんどん応用されていく例が多くて、幾つか例で、我々としてはパテントを数億円もらうだけで、実際その売上げは数兆円のものが隣の国で生まれたりという状況がかなり続いております。この問題は恐らく、先ほど長谷山先生も言っておられた、日本としてはつなぐというところが弱い、先ほどの資料4-3の3ページで縦割りの項目立てになっているのと同じ問題点がございまして、イノベーションというと一つのプロダクトとして物を造らなきゃいけないのですけど、いろんなパーツをつなげるところがうまく組織的に出来上がっていない。大学改革をするというときに、それをどういう形で大学の中へ作っていただくかというところは大きな課題かなと、個人的には感じております。
 もっと御意見を賜れればと思います。春日委員、お願いします。

【春日委員】 国立環境研究所の春日と申します。今のつなぐというところは、私も大変問題意識を持ちながらいろいろ御説明をお聞きしておりました。組織対組織、これは研究室を超えた、研究所とか大学ということを念頭に置かれた御説明でしたけれども、今の濵口会長のお話を伺って、私も感じていたことなのですが、もっと大きく領域対領域ぐらいのつなぎをしないと、国際的にもとても対応できないのではないかというふうに思います。
 先週、私どもが進めているフューチャー・アースという国際プログラムで、海外からトップの研究者もお招きしまして、大手町で金融セクターと地球科学とのコラボの対話をしました。これは決して金融業界から研究資金を頂きたいというお話では全然なくて、金融業界が今進めているESG投資ですとかグリーンファイナンスに対して、地球の現実をより直接的に知っていただくための機会、それから、地球科学者にとってはどうやってお金が回っていて、それが地球環境のどこでどういう形の開発に結び付いているかという、その現実を学ぶための対話です。そういうことによって、地球科学で行われていることは何なのかということを社会に知っていただく、そういう機会にもなりますし、また全く新しい研究の糸口・ヒントを学ぶ科学者にとっての機会でもあるのです。こういうことをつなげていきたいと思います。
 また、別の事例では、洗剤メーカーとライフサイクルアセスメントの科学者とのコラボですとか、今まで全く対話がなかったようなそういうコミュニティ同士、領域同士をつなげるということを、私どもはしております。これが大きな意味での人材活用、それから、今回バックキャストとフォアキャストの組合せということが出てきましたけれども、こういうところにも役に立つと思います。
 そして、そういう取組をする中でまだまだ足りていないというふうに認識しているのが、科学あるいは研究の語り方、見せ方なのです。この間何度も言われていることですけれども、研究者自身は必ずしも語りが上手な人ばかりではない。どこかで通訳が必要ということですね。それともう一つは、広い意味での科学技術を見せていく、マーケティング戦略、マーケティング的な考え方、そういうことが新たに必要と思います。そういうことができるような人材・組織の新設ということも考えるべきではないかというふうに思います。

【濵口会長】 ありがとうございます。非常に貴重な意見を頂きました。
 栗原先生、お願いします。

【栗原(和)委員】 今まで出ていることはどれも大変大事な観点だと思いますが、少し違う視点のことを申し上げたいと思います。
 資料4-3の1ページの一番下に「より良い新たな社会の形成」という大きなくくりで課題が出ているのですが、未来社会からのバックキャストという言葉が割と漠然としていて、それから、次の技術というところに、繰り返し出ていながら余り議論されてないのは、やはりSDGsがあるのではないかと思っています。地球規模の課題で、もちろんその中のエネルギーとか低炭素とかいう課題に関してはかなり議論されていますが、SDGsの中には教育を全ての人にとか、かなり社会的ないろいろな課題が多くあるわけです。そういう部分に対してどういうふうに取り組めるのかというようなことも、産業の在り方に対しても、例えばそういう視点で見たらどういう新しい産業ができるのかというようなこともあるかもしれません。また、人文・社会学の振興がテクノロジーと人間との社会との在り方ということになっていますが、もう少し幅広く、地球規模での協力の仕方とか、そういうものもあるかもしれないので、STI for SDGsをもう少し超えたような形でより良い社会の在り方のようなものが検討できると、もう少し視点も広がるのかなというふうに思っているところです。もちろん、より良い社会というといろいろな観点があると思いますが、一つの観点かなと。SDGsは、かなりクリアに提示されているので、考えるのに取り掛かれる観点かなというふうに思って発言いたしました。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 それでは、栗原委員。

【栗原(美)委員】 栗原です。三つありまして、一つは、今後戦略的に取り組んでいくべき分野を、従来の延長線上ではなく見極めていただきたい。資料4-3にも「競争するところと協調するところ、守るべきところ、全く新しい価値を創造するところなどを戦略的に見極め」というようにありますが、正に戦略的見極め、ターゲティングが大変重要ではないかと思います。かつ、そのターゲットに向かっての現状分析、先行しているところと非常に遅れをとっているところがあると思いますので、そこも是非見極めていただき、そのギャップをどう埋めていくかという、目標設定と現状分析からの課題を分野横断的に見極めていただきたいと思います。その際、先ほど共通項目とか横断的視点と他の委員がおっしゃったのですが、横断的視点という中に、地域という観点もあると思うのです。地域の中でいろいろな分野とか産業あるいは機関が連携していくことが必要だと思うので、是非そういった視点も入れていただきたいと思います。
 二つ目はシステム改革についてですけれども、各研究機関や教育機関でやっていることは、国のなかでも先端的なことに取り組んでいるわけですから、失敗も多いと思うのですね。そのときに出てきた成功の数だけではなくて、失敗はしたけれども、そのプロセスから学んだこと、あるいはそのプロセス自体を評価するということを各機関でやっていただきたい。そうでないと、先ほど閉塞感という言葉がありましたけど、結果だけで評価されるとチャレンジする意欲を失いかねないと思いますので、その点を是非お願いしたいと思います。
 三つ目ですが、先ほど産学連携の中に大学と産業界というのがありましたけど、国立研究開発法人との連携もあるのではないかと思います。そこがどううまく連携していくを、ビッグビジョンの中で考えていただきたいと思います。インセンティブも必要でしょう。例えば、一部の規制が緩和されるというような環境作りもあるのではないかと思います。また、企業側にとってのインセンティブといいますか動機付けとしては、先ほど栗原委員がおっしゃったSDGsですとか、あるいはESG投資の促進は大いに動機付けになると思いますので、その辺をうまく絡めた形で連携が進むと良いと思います。

【濵口会長】 ありがとうございます。お二人に頂いた意見でSDGsというのはビッグチャンスかもしれないなあと私も思っておりまして、企業と大学が価値観を合わせられる目標となる。今までなかなか、こういうクリアな形の目標が立てにくかったかなあというので、今すごくいいフェーズへ入っているかなと思います。
 あと、先行例とかの見極め、去年、総合政策特別委員会ではいろんな分野で進んでいる部分と課題が残っている部分について、ずっと洗い出しをやっていただいたのですね。そうすると、意外と日本は進んでいるじゃないという部分も見えてきておりますので、そこをもう少し共有知としてお諮りをして、どうやったらこういう先行例の形を横展開できるかとか、そういう議論がもっと必要だなあと感じております。
 御意見をほかに。では、十倉委員、お願いいたします。

【十倉委員】 ありがとうございます。今回から委員を拝命しました、住友化学の十倉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 今後の議論の方向性として、一つはSociety5.0の実現があるかと思います。私は今、経団連の副会長をさせていただいておりますが、Society5.0は経団連の中西会長を中心に積極的にPRしております。Society5.0 for SDGsと、SDGsとも絡ませまして浸透を図ろうとしています。それからつい先日までCSTIの議員もさせていただいておりましたけれども、第5期の科学技術基本計画と同様に次期の基本計画でもSociety5.0は中心のコンセプトにしていただけると思っております。それから、よく言われるデジタルトランスフォーメーション、これはあらゆる産業にとって喫緊の課題なのですが、データやデジタル技術を積極的に活用する意味で日本の強みというのはリアルデータにありますので、リアルデータの基盤構築をやって、そして各産業のコア技術・ドメイン技術を掛け合わせることが、日本の産業力を強化する上で必要不可欠だと思います。
 以上はSociety5.0の半分宣伝みたいになるのですが、もう一つ、私が経団連やCSTIの場で繰り返し申し上げてきましたのは、基礎研究の充実であります。イノベーションは、先ほど長谷山先生の議論にもありましたように、必ずしも破壊的な技術革新から生まれるとは限りません。既存の技術の組合せからもイノベーションは生まれます。しかし、長い目で見れば、基礎研究というのはイノベーションの礎、イノベーションの母であります。しかしながら、橋本先生も指摘されていましたけど、研究現場、特に若手の疲弊をよく耳にします。グローバルな論文の引用件数が相対的に低下していることや、大学のグローバルランキングが低いことがよく問題にされていますが、それも大事なのですけど、すぐに着手すべきは研究現場の問題だと思います。若手研究者の研究時間の確保であるとか雇用の問題であるとか、いろいろありますが、今の状態は「貧すれば鈍する」と、そういう状態になっているかと思います。平たい言葉で言えば、お金の問題が非常に大きいと思っています。
 もう一つは、研究者の社会的な評価・地位を、もっと高めなければいけないと思います。私は常々、社会的評価・地位の向上が必要なのは官僚の皆様方と研究者の方々だと思っております。心からそう思います。給与の面で言うと、金額も大事なのですが、これも橋本先生がおっしゃっていましたが、研究というのは切磋琢磨の世界であって、有為な差を付けるべきだと思います。給与という面でも増やしながら、そういう切磋琢磨もさせる。どこかで富士山型という言葉がありましたが、正にそのとおりで、人材の裾野を拡大していく政策を期待したいと思います。要するに、若手が研究者になって残りたいと。しかも、企業も大事なのですが、大学とか国研の研究者で残りたいと。そういう環境を作っていくのは大事だと思います。
 それから、先ほどの中国のイノベーションの例もありますように、イノベーションというのは必ずしも基礎研究と直結するのではなく、既存技術の組合せからも生み出されるので、イノベーションのスピードは非常に速まっています。逆に言うと、我々企業にとって基礎研究に振り向ける人材と時間がなくなってきています。そういう意味で、先ほどから出ています、組織対組織、領域対領域で、大学や国研と企業が組むというのが重要になってきています。言い方を変えれば、基礎研究というのは、大学、国研であるとか、国だけがやるものではなく、企業も含めて社会全体で支えていく必要があると思います。そういう意味では、先ほどから出ている組織対組織とか領域対領域のよりコンプリヘンシブな取組、提携というのが大事になる。その中で、お金も流れていくのだと思います。
 ただ、悲観ばかりじゃありませんで、明るい材料もあるかと思います。先日予算化されましたムーンショットなどは、研究者に、特に若手の研究者に大きなやる気を起こさせる政策だと期待しています。
 それから、イアン・ブレマーさんが、年初のトップリスクの中で、「イノベーション冬の時代」という言葉を今年は挙げています。これは、米中の覇権争い、ヘゲモニー争い、なかでも技術の争いから、中国の「海亀政策」が取り上げられて、技術交流を減らそうとか、そういう動きがあります。こうした中で、中国、アメリカ以外の各国、特にヨーロッパなどは、日本の立場というのを非常に注目していると思います。そういう意味で、日本の相対的地位は上がってきていると思います。
 そして、米中のヘゲモニー争い、保護主義の台頭等、戦後築き上げてきた経済秩序が崩壊しつつある中で、先ほど紹介したイアン・ブレマーさんあたりは崩壊の始まりだと、そういうシビアなことを言っていますが、その一方で、SDGsとかESGとかCSVという言葉がありますように地球の全体の問題、特にサスティナビリティーの問題をイノベーションで何とか克服していこうという、大きな動きが出ています。イノベーションを支える革新的な技術も、デジタルトランスフォーメーションだけではなくてバイオ、ゲノムなど、こういうのも出てきています。正にSociety5.0 for SDGsじゃないですけれども、革新的な技術、イノベーションによって、社会課題に応えていく。こうした時代のうねりは、我々産業界にとりまして、大きなビジネスチャンスになると思います。
 そういう意味で、繰り返しになりますが、イノベーションの礎である日本の基礎研究力の強化が喫緊の課題だと思います。日本は、昔から島国、アイソレートされた環境でやってきました。そういう中で日本が生きていくのは、私はよく言うのですが、古い言葉で言えば科学技術立国であり貿易立国、今風の言葉で言えばイノベーションとグローバリゼーションであります。是非この場で議論を深めていきたいと思います。

【濵口会長】 ありがとうございます。非常にエンカレッジしていただけるお話で、頑張りたいと思います。
 それでは須藤委員、お願いいたします。

【須藤委員】 須藤でございます。私も産業界から出ておりますので産学連携のところでちょっとお話ししたいのですけれども、先ほどからいろいろ話題になっています組織対組織の研究というのは、私も文部科学省のいろんな施策の中に入ってやっていますので、ここ二、三年でかなり進んでいるのではないかなと。余り皆さんからそういう意見が出ないのですけれども、昔から比べると最近は組織対組織、産学連携、かなり進んできていると、私は思っています。やり方もいろいろ、先ほどから出ているバックキャスト型、課題を見付けてやるやり方もありますし、あるいは基礎研究から入る、フォアキャストみたいなやり方もありますし、文理融合というのもありますし、最近では非競争領域あるいは競争領域、いろんな仕組みを分けて産学連携は進んできているのではないかなあというふうに考えています。もちろん文部科学省やJSTでいろんな施策をやってもらっていますので、それの効果が出ているのかなと思うのですけど、そこで是非やらなきゃいけないのは、もうちょっと一つ一つを分析しないとまずいのかなあと。せっかくここ一、二年で盛り上がってきているのですけど、何がよくて何は直さなきゃいけないか、一つ一つについてはまだ余り分析が進んでないと思いますので、是非分析をここ一、二年、あるいは第6期に向けて進めていくべきじゃないかなと思います。それが1点目です。
 それからもう1点は、やはり産学連携ですけど、いろいろと進んできてはいるのですが、地方大学と産業界との大型の組織対組織というのはまだまだ不足しているかなと思います。大きな大学と大きな企業というのは結構やってきていますが、もう少し地方大学を生かす方法を、本来我々産業界も考えなきゃいけないと思うのですけれども、そこのところを少し何か施策を国の方で打って活性化するようなことも考えるべきじゃないかなというふうに考えます。
 以上、2点でございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 組織対組織が進んでいるのはメジャーな大学が中心ですけど、こちらで進んでいるのは極めて自律的に企業と大学がうまくかみ合い始めていると。これがどこまで広がるかというのは一つ課題がございます。
 それからもう一つは地方の問題がありまして、これは政策的にもっと文部科学省にサポートしていただかないといけないなあと、私どもは感じております。JSTがCOIというのをやっていますけど、この前第1回の日本イノベーション大賞で総理大臣賞をもらったのは弘前大学のCOIでして、面白いのは弘前大に企業が十幾つ入って、5年間の間に寄附講座が11講座できているのですね。3億円以上の投資が起きている。日本最短命県であったということをむしろ逆手にとって寿命を延ばすためのコホートをやっていて、これは海外からものすごく注目を浴びていますし、投資が入り始めていて、がらっと空気が変わっているのですが、ただそこは文部科学省から力強いサポートがないとまだ動かない。そういう地方の素材をどう伸ばすかという細かい分析が多分、今必要な時期かなあというのを感じています。
 勝委員、お願いします。

【勝委員】 ありがとうございます。今まで様々な意見が出ていて、どなたかがおっしゃっていましたけれども、日本が科学技術立国として生きていくために、科学技術の革新というのは非常に重要であると。現在は内閣府を中心として政府全体でやっていると思うのですが、やはり大学を擁している、あるいは国立研究機関を擁している文科省が率先して改革を唱えていくということが、非常に重要なことなのではないか、と思います。その点から言うと、先ほど岸本委員も言われたように、大学との一体改革というものが非常に重要になるだろうと思うわけですけれども、資料4-3、これは非常によくまとまっていると思うわけですが、研究力向上に向けたシステム改革、これが非常に重要なので、この辺をもう少し掘り下げて、どのように改革していくかということを大学改革と一体化して考えていく、道筋をつけていくということが非常に重要なのではないか、と思います。
 先ほどどなたかが、若手の雇用の安定化の件で、日本では若いうちにテニュアを取るが、ほかの国ではないという指摘がありましたけれども、その点から言うと、例えば大学教員の評価、柴山イニシアティブには手厚い支援と厳格な評価というのがありますが、そういった教員の大学評価というものを、これは非常に難しいところではあるわけですが、この点についても考えていく必要があるのかなというふうに思います。
 それからもう一つ、グローバル化についてですが、資料4-3の23ページに国際流動性の図がありますけれども、実は今年1月にアメリカの経済学会で報告をする機会があったのですが、そのときに驚いたのは、アメリカの経済学会は全世界から研究者が来て、なおかつ、FRBであるとか、中央銀行であるとか、BISとか、様々な機関、民間企業も参加する、非常に大々的なものなのですが、中国の方が非常に多くて非常に目立っていた。もちろん研究者の流動化というものは非常に重要なわけですが、その前の段階で、特に博士課程であるとかそういったところで中国はかなり連携しているのではないか、日本ももっと研究の面で海外の大学との連携を強めていく。これは大学としての政策というのもありますけれども、例えばJASSOの奨学金等について言えば、学部の、それも短期にまでかなり潤沢なお金が入っている。そうではなくて、もっと科学技術オリエンテッドなところでの奨学金というものを手厚くしていくということが、一つあるのではないかなと思います。例えば23ページですと、アメリカと中国、ものすごく多くの数の研究者移動がありますけれども、恐らくその前の段階でアメリカで学位を取っている研究者の比率というのが非常に高いというように推測されて、そこにそういった国の予算がかなり入っているだろうということも推察されるので、もう少しそうしたことを考えていく必要があるのではないか。
 それから、この前学士院の研究奨励賞の式典に参加させていただいたのですけれども、皆さん、様々なキャリアパスで、一つのところにずっといるという方はいなくて、国際的な研究ネットワークに入っている方が優れた研究をなさっているということも勘案すると、環境作りというのが非常に重要なのかなというふうに思います。
 それから、3ページの「今後の検討項目及びその方向性」というのは非常によくまとまっていると思うのですが、システム改革の方で並列して四つあるわけですけれども、大学改革とその上の改革というのは次元の違うものかなというふうに思いますのと、それから皆さん言われたように、「つなぐ」ということ、企業との連携、大学との連携というもの、この辺ももう少しうまく散りばめていくともっと説得力のあるものになるのではないかなというふうに思います。
 以上です。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 次、中田委員、お願いします。

【中田委員】 申し訳ありません。席を立たなければいけないので、先にお話しさせていただきます。
 私、国立研究開発法人水産研究・教育機構というところから来ております。ですので国研という立場、それから、今、赴任しているのが下関水産大学校と、地方大学に非常に近い立場できょうのお話をいろいろ聞いておりました。例えば食品とか、農業、水産ということから考えると、AIやビッグデータであるとか、今の科学技術、イノベーションの牽引役みたいなところがまだ十分届いておらず、逆に疲弊感が広がっています。リアルデータもなかなか取れていない産業を相手にしているわけです。そういう地域や産業で力を出していくのが、多分地方大学なのだと思っています。一つ一つのところに相対して、信用を得て一つでも成功例を地域や産業と一緒になって出していく。そうすると、それが少しずつ広がっていく。そういう状況で今進んでおりますし、これからも進めていきたいと思っています。
 もう一方、国際的に見ますと、例えばアジアでは、欧米諸国が機器を渡して漁業データ、水産データなどの情報を持っていくということがあります。日本は情報をうまく収集するという意味では非常に遅れている。そういう世界的な動きと地域ということをきっちり見据えてビジョンを持っていく必要があると思いました。
 以上でございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。重要な視点を頂きました。
 それでは、観山先生、お願いします。

【観山委員】 私、新任ですので、今までの状況はよくわかっていないかもしれませんけど、資料4-3の「論点とりまとめ」って、非常によくまとめられていて、なるほどなあと感心する部分が多いわけですが、ちょっと気になったのは2ページ目に「研究者が挑戦(失敗)できる環境」というのがあって、ちょっとびっくりしたのは研究っていうのは失敗の連続なので、失敗できない環境というのは本当にあるのかなあと思ってしまいました。一つ考えてみたら、研究といっても問題解決型の研究と問題発掘型の研究というのがあって、私は天文学とか宇宙物理学出身なので、基本的に問題発掘型の研究から言うと失敗の連続で、とにかく失敗できないような環境っていうのは考えられない状況でした。一方、問題解決型となると、結構大きなプロジェクトがあって、なかなかそれがうまくいかないとか、そういう部分では失敗というのがあるのかもしれませんけれども、その切り分けを頭の中に入れておかないと、研究ってそのものは失敗ですので、そこがちょっと気になったところです。
 そういう面から言うと、挑戦、チャレンジという言葉で、随分エンカレッジしたらいいと思うのですが、問題発掘型のところでも、今非常に思うのは、日本はいろんなオーソドックスな分野では基本的に欧米とか海外に負けているところはほとんどないと思うのですね。ただ弱いと思うのは、学際的な研究分野になかなか若い人たちが入っていかないというか、それは一つ、失敗を恐れるのかもしれませんね。つまり、キャリアパスの問題はいろんな分野でも大変なわけですけれども、特に新しい分野に行くと、なかなかそういう分野というのが定着していませんから、そもそもポストが全然ないとか、そういう部分がありますよね。ただ日本はこれから、欧米との協力もありますが、新しい分野を開発していかないと、多分、今までノーベル賞がどんどん出てきましたけれども、今後、発展の余地というのはなかなか難しいと思います。だから、政策的にもこういう分野にたくさんのサポートをしていかないと問題です。ある意味では政策的にサポートしていくという方向が何か打ち出される必要があると思います。科研費だとか、いろんな分野で学際分野というのはありますけれども、それが優遇されているというふうではないわけなので、若い人たちがそういう学際分野に行って、チャレンジを広げるような政策を執り続けないといけないと思います。日本はオーソドックスな分野では非常にエスタブリッシュされているのですけれども、その間をつなぐような部分については、随分始まっていますけれども、まだまだ必要なところがあると思います。
 以上です

【濵口会長】 御指摘のとおりなのですけど、多分この失敗を許すというのは、実験や研究に許すという問題ではなくて、評価のところで許す評価システムをどう作るかという問題です。常に感じているのは、失敗であるという評価が出た途端、予算は減りますので、ここを文部科学省や橋本先生にしっかりサポートいただいて正面突破できるような政策誘導ができるかどうかということ。
それから、日本は若い人が失敗しやすい分野に入りにくい機運がありますので、もう一つの問題は、新興・融合領域をどう作っていくかという政策誘導、ファンディングの在り方があるかと思います。
 宮浦先生、お願いします。

【宮浦委員】 ありがとうございます。関連したところで意見を述べさせていただきます。
 イノベーションにしても、人材にしても、失敗をしてはいけない状況になってしまっているために硬直化しているのではないかと。評価の問題で、組織も研究者個人も評価されますので、失敗によって評価が低下した段階で次がないということになるわけです。若手の任期付きの問題は、失敗したら次がありませんので、個人の人生を賭けるような状況になってしまいますと失敗できない、挑戦できないと。そうすると、小さい仕事で何となくポジティブなデータをとりあえず出さないと駄目だと。そういう積み重ねになってしまっているために種々の問題が出ている。
 人材系をいろいろ担当させていただいて思うのですけれども、意識の共有はできたのではないかと思っております。若手の問題ですとか、流動性の問題、多様性の問題、任期付きの問題、ポスドク問題、博士課程後期課程にチャレンジして進学をしようという学生の低下、それは日本全体でも起こっていますし、それは多くの組織で共有されていると思います。ですので、これからはとりあえず何をするかと。施策もそうなのですけれども、実現に向かってやる段階になっていて、もちろん個々の施策は打っていろいろやっているわけです。リーディング大学院をやったり、卓越大学院をやって卓越研究員をやったり、あるいは内閣府の事業ももちろんそうなのですけれども、全体で改善をしていないという問題が顕在化して多くの方が共通の意見を持っている。ではどうするかというところで閉塞感が出ているのだと思います。是非次の2年ぐらいは失敗してもいいので大幅にやってみるということが重要で、若手のところに2年間ぐらい財源を投下してみて、失敗したらそのとき考えればいいじゃないかというぐらいの考え方じゃないと、安全策を考えていると若手の問題は解決しないのではないかというのが感じるところです。同じようなことを2年やっても恐らく変わらないというのが過去2年担当してきて感じているところですので、思い切って失敗してもいい施策を打ってみるというのを提案したいと思います。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 福井先生。

【福井委員】 結論的には宮浦先生と全く同じことになると思います。私は医学の分野ですけれども、医学部では毎年9,000人近く卒業生がおりますが、基礎研究の分野に入る人は数えるぐらいしかおりません。このことは20年前から分かっていることで、いろいろ対策を講じていますが、全く効果がない状況が続いています。臨床医よりも基礎研究に向いている人がそちらの分野で生きていけないというのは誰にとっても非常に不幸なことですので、思い切った政策を実行していただきたいと思います。医学分野では、臨床医になった後、博士号が欲しいという医師が3年とか4年間だけ研究して、その間にすばらしい仕事をするのですけれども結局は基礎研究分野に残りません。そのような医師のほとんどが、いい研究論文は書いても結局は臨床の方に行ってしまって研究分野にとどまらないというのは、本当に残念なことで、大きなインセンティブを付けた対策を考えていただけないかと思います。
 もう1点は、研究の論文数が少なくなったという点についてです。日本は中国のように多額のお金と人材をつぎ込むということは無理だと思いますので、CSTI関係の会議で一度発言しましたが、研究についての研究を強化する必要があると思います。そのために、この分野の研究者を増やしたり、AIを活用したりできるのではないでしょうか
 それから、濵口先生もいろんなところでおっしゃっていることですが、医学関係では、中国でゲノム編集の子供が生まれたということからお分かりのように、倫理面への配慮がますます重要になってきていて、そのことが研究推進のボトルネックになっているようなところもあります。特に生命科学の分野では、ELSIをどうやって組み込んで推進するかということはかなり大きな問題ですので、その点についても今まで以上に配慮を頂ければと思います。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 それでは、平田さん。

【平田委員】 私は、東京大学地震研究所で、測地学分科会でお仕事をさせていただいておりますが、皆様の観点について異論はございません。
 一つだけ、今まで話題になってないことを申し上げます。数日前、3月11日に東日本大震災から8年になりました。2011年3月11日には、私たちが経験したことのないような非常に大きな自然現象と災害が発生いたしました。これはある意味、不意打ちを食らったような感じを社会は持っていますが、実は24年前の1995年1月17日にも阪神淡路大震災で不意打ちを私たちは感じて、地震学や火山学、地球科学は非常に大きな転換を迎えました。様々な問題はございますけれども、そう遠くないときに南海トラフや首都圏で、24年前に神戸で起きたこと、8年前に東日本で起きたことが起きることは、地球科学的には私にはほとんど自明でございます。運が良ければ、皆さんが生きているうちには何もないということかもしれませんが。ですから、そのときに一生懸命復興にお金を掛けるのはもちろん必要でございますけれども、その前に科学技術、あるいはもうちょっと広い意味で人文・社会科学や様々な学術の知恵を総合して、かつ産官学民全てが一体となったような研究を今後も是非進めさせていただきたいと思いますので、議論の中で少しそういう要素を入れていただけると幸いだと思います。
 以上でございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 それでは、三島先生。

【三島会長代理】 資料4-2、4-3に基づいていろいろな角度から御意見を頂いて、大変有意義な意見交換になっていると思いますけれども、一つ、ちょっと違う視点から私が申し上げたいのは人材育成の件です。大学の改革が必要だ、例えば柴山イニシアティブでは厳格な評価をすべきだ、出口保証をすべきである、博士へ行く人間を増やそうというようなことがずっと言われているわけですが、大学に入ってくる人材が果たして初等中等教育を通して大学にうまく連結しているかというところが非常に欠けていると思うのです。私も学長を長くやったときに学生と随分いろいろ話をしましたけど、学生って、自分の意見を言わない。それから言うことに自信がない、自分にとっての自信がないということをすごく感じるのですね。それはやはり大学が質の高い教育をしなきゃいけないというのは非常によく分かるので、今までのような一方通行の教育ではない、発言をどんどんさせるようなタイプの大学にならなきゃいけないということを思うのです。しかし、やっぱり初等中等高等教育のところで、成績のいい子が有能な人みたいな、一つの画一的な考え方があり、それから特に高校になったら偏差値に対する挑戦であり、自分の行きたい大学はどこかじゃなくて入れる大学はどこだという形で学生たちは入ってくる。その辺のところから、もうちょっと大学へ向けての若者の教育というのをしっかりと考え直す、いい時期ではないかというふうに思うわけです。橋本先生が最初におっしゃった、ここ2年が勝負だとかっていうことから見るとちょっと先の長い話かもしれないのですけれども、でも既に手遅れかもしれないようなことであっても今始めないと、と思うのです。そういう意味では初等中等教育と、入試も絡むと思うのですが、その辺をどういうふうにしたら彼らが元気で何をやりたいだとか、自分は何が得意だということを大きな声で言えるような子供たちを育てられるのかというふうに思う次第でございます。
 それで、資料4-3に関しては、3ページの一番下に、「人材(初等中等、リカレント教育含め)」ということで、ここだけに触れられているのですけれども、ここもやはり、今申し上げたように、議論を少しここの中に組み込んで、第6期の中でそういった視点での人材育成を考えてはいかがかなと、今お話をずっと伺いながら思いました。
 以上でございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 発言いただいてない方があと4名ございまして、時間と勝負になっておりますので、簡潔にお願いしたいと存じますが、よろしくお願いします。
 どうぞ。

【小長谷委員】 簡単に2点です。1点は脱「選択と集中」ということです。選択と集中という言葉は、研究教育界においてここ数年非常に人口に膾炙(かいしゃ)したわけですけれども、一つの問題を解決するのに、あらかじめ連結されていれば少ない投資でも裨益(ひえき)する領域が広がってということで、財布は決して大きくなるわけではないですが、あらかじめ連結しておくプランというのが大きな問題解決になるというような新しいフェーズに来たのだなと感じました。
 もう1点は、イノベーションは既に始まっているということです。名簿が送られてきたときに目を見張りました。30名中、14名が女性です。すばらしいです。こんなこと過去になかった。学術と科学技術を議論する場において、ここからイノベーションは始まりますということが大きく見せられている、可視化されている構成だと思います。このような段取り、マネジメントをしてくださった皆様に感謝し、エールを送りたいと思います。
 これからもよろしくお願いします。これが失敗でもいいという例にならないように……。

【濵口会長】 いや、絶対成功します。

【小長谷委員】 この大いなるチャレンジが失敗にならないように努めたいと思います。

【濵口会長】 よろしく。
 どうぞ。

【白波瀬委員】 お願いします。私も同じく文系なのですけど、意見は少し違います。3点ございます。
 1点目については、今海外から様々なところで日本への期待が高くなっていて、投資先としては一番良い時期にあります。そういう意味で教育は長期にわたる最大の投資先でございまして、多様な機関から教育分野、特に人材育成に投資をしていただける、そういうことが可能になるような仕組みを是非考えていただきたいというふうに強く思います。この投資先が長期にわたるという意味で潜在的なリスクもありますが、一人一人の学生たちのキャリアパスは多様であり重層的であるという、ある意味のリスクを配慮した仕組みを是非作っていただきたい。例えば、どうも日本というのは、モビリティというお話があったのですが、動くということに対してある意味苦手なところがございます。動くことをよしとする仕組みを社会の中で作っていただくのが一番いいかと思うのですね。
 そういう意味で、2点目ですけれども、こういう動き、横串、つなぐというキーワードがあったのですが、これを可能にするのは既存の構造をなくすというか、ある程度壊すしかないのではないかというふうに思っています。それは既得権をいかに諦めていただけるかということが大事なところです。今まで得してきた世代、得した方々が、ある程度気持ちよくというか、仕方がないねということで、新しいリスクに向って一緒に取り組んでいただけるような仕組みもまた必要。
 そのために、最後に人文・社会ということですけれども、3点目。人文学、社会科学、これらは同じ文系でも違います。人文だから、社会科学だから、ちょっと評価の仕方が違うよねという形ではなく、評価の価値基準を本当の意味で多様化していただきたいというふうに思います。そういう意味で、人文学の中の哲・史・文、の分野で、横串は価値の問題にあると思います。何をよしとするのか、いろんな価値を社会として受け入れられるような、歴史問題についてもそうなのですけれども、一辺倒の解釈のみがよいという社会には決してしない。それが若い子たちの、いろんな価値を持った人々の伸び代を伸ばすのではないかというふうに思いますので、この点については文部科学省から技術立国ならぬ学術立国として後押しするのだという、強いメッセージを出していただきたいというふうに思います。
 以上です。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 簡明にお願いいたします。

【鈴木委員】 鈴木でございます。若手人材を育成するというのは、資料4-2を拝見いたしましても「ポストへの重点化」などと明確に書いておられますが、大学の中で閉じているのではなく、やはり産官連携を強めて、先ほど地球科学と金融業界のお話がありましたように、つなぐというのが非常に重要なことだと思います。そういうことを施策的に考えるということをもう少し考えていただきたいと強く思いました。
 もう一つは高齢化に関してです。私自身の経験で言いますと、女性として仕事を続ける上で育児というのは、保育園も充実してきましたし、非常によかったと思うのですが、介護の問題というのはある日突然訪れます。時間が拘束されます。そういうことに関する、もちろん研究者だけではありませんが、社会的な環境の中で介護という問題が今後大きく出てくるのではないかと思いますので、そういうことをもう少し具体的にどうしていくかというようなことも議論をしていただければ有難いと思います。
 以上です。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 それでは、青木委員、お願いします。

【青木委員】 ありがとうございます。政府、特に文科省には科学技術研究に対しての投資家としての立場と、サービスを調達するという立場があるかと思います。そのときに何に投資をするのか、どの時点までにどこまで出来上がっていたらそのサービスを調達するのかということについて、資料4-3の1ページ目とも関係するのですけれど、明確にしていただきますと、学生も自分が研究者になれるのかどうか、そこに貢献できるのかどうか、イメージがはっきりすると思います。イメージがはっきりしないことによるしゅん巡ということが人材育成をかなり妨げている面もあると思いますので、決して画一的な像を押し付けるということではなく、今の社会像を読み解く、提示するという、政府の役目として果たしていただきたいと思います。
 どうもありがとうございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 今日は、お時間となりましたので、ここら辺で水入りにさせていただきたいと思います。
 最後に、事務局から連絡事項をお願いしたいと思います。

【角田政策課長】 2点、御連絡いたします。
 本日の議事録につきましては、委員の皆様に御確認の上、公表させていただきたいと考えております。
 また、会議の資料につきましては、郵送の希望がございましたら机上に残していただければ、事務局で手配いたします。
 以上でございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 それでは、今期もどうぞ活発な御議論をお願いいたします。今日は、ありがとうございました。
 

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