科学技術・学術審議会(第61回)議事録

1.日時

平成31年1月30日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

東海大学校友会館「阿蘇の間」

3.議題

  1. 「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の推進について」(建議)について
  2. 各分科会等の審議状況について
  3. 第6期科学技術基本計画策定等に向けた論点の整理について
  4. その他

4.出席者

委員

濵口会長、庄田会長代理、安西委員、浦辺委員、大垣委員、小縣委員、甲斐委員、梶原委員、春日委員、勝委員、鎌田委員、岸本委員、栗原和枝委員、栗原美津枝委員、小長谷委員、白石委員、鈴木委員、辻委員、西尾委員、平田委員、福井委員、松本委員

文部科学省


藤原文部科学事務次官、松尾科学技術・学術政策局長、佐伯研究開発局長、坪井科学技術・学術政策研究所長、菱山サイバーセキュリティ政策立案総括審議官、渡辺大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、勝野科学技術・学術総括官、角田科学技術・学術政策局政策課長、井上企画評価課長、坂本人材政策課長、工藤地震・防災研究課長、ほか関係官

5.議事録

【濵口会長】 お時間になりましたので、開始させていただきます。ただいまから、科学技術・学術審議会第61回総会を開催いたします。委員の皆様方におきましては、御多用中にもかかわらず御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
それでは、まず配付資料の確認について、事務局からお願いします。

【角田政策課長】 事務局でございます。今回も卓上にタブレットPCを御用意しております。ペーパーレス会議を、このタブレットPCによりまして行わせていただきたいと考えております。全ての資料はタブレットPCで御覧いただけます。もしタブレットPCに不都合がございましたら、お知らせいただければと思います。
 また、本日説明をしていただきます皆様におかれましては、説明の際に、必ず資料番号を明確にしていただいてから説明を始めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 それでは早速議事に入ります。議題の1番目は、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の推進について」であります。測地学分科会長の平田委員から御説明をお願いいたします。

【平田委員】 それでは、資料1に基づいて御説明させていただきます。
測地学分科会からは、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の推進について」の建議案について御説明させていただきます。お手元の資料の1ページ目に建議案の概要がございまして、2ページ目から建議案の本文となってございます。本件に関しましては、昨年9月、科学技術・学術審議会委員の皆様に、メールにて審議経過を報告させていただきましたが、建議案のポイントについて改めて御説明いたします。
 資料1の1ページ目の概念図を御覧ください。これに基づいて御説明いたします。本年度までの5か年の地震火山観測研究計画では、災害の軽減に貢献することを意識した観測研究を実施してまいりました。この現行計画について実施いたしました外部評価では、災害の軽減に貢献することを目指すという方向性は適切であり、今後より一層推進していくべきであるとの評価を頂きました。
 この外部評価を受けまして、本建議案では、計画の名称を引き続き「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」といたしまして、その第2次計画といたしました。本計画では、地震学や火山学を中核として、理学、工学、人文・社会科学などの分野が連携して、この図の水色の四角のところでございますが、マル1の地震や火山現象を解明する研究、真ん中の緑色のところのマル2として、地震発生予測、火山噴火予測の高度化を推進する研究とともに、その成果を活用して、右側の赤のところ、マル3の災害誘因、つまりハザードの予測を研究すること、更にその下のゴールドのところのマル4の研究を進めます。この、マル4のところについては後で御説明いたします。更に黄色のマル5の推進体制の整備を加えて、5つの柱として全体の計画を進め、地震や火山噴火による災害の軽減につながる研究をしたいと考えております。
 これらの研究項目のうち、真ん中の緑色のマル2の研究項目の中で、3つの重点的な研究というものを推進することといたしました。1つ目は、歴史記録などに基づく地震発生履歴の解明と、最先端観測で得られる地下構造内の状態に関する知見を最大限に活用し、地震発生の長期予測の新たな手法を開発する研究。2つ目は、地殻活動、つまり地震活動や地殻変動のモニタリングと、理論や実験などに基づく物理・統計モデルとを統合した地震発生予測を高度化する研究。3つ目として、火山噴火の前兆から発生、終息までを一連の現象として捉えた火山活動推移モデルを構築して、火山噴火の予測精度の向上を図る研究ということを重点的に推進いたします。
 また、分野横断の総合的な研究として、南海トラフ沿いの巨大地震、首都直下地震、千島海溝沿いの巨大地震、桜島大規模火山噴火、規模は小さくても高い災害リスクを伴う火山噴火を5つのターゲットといたしまして、分野横断で総合的な研究を実施し、社会的要請の高い地震・火山噴火による災害リスクに対する研究を実施し、成果を発信してまいります。
 本研究で初めて本格的に取り組むのが、このマル4の部分に記載している「防災リテラシー向上のための研究」でございます。地震や火山に関する知識や情報を災害軽減につなげるためには、科学的な情報を受け取る側が効果的に理解を深め、災害に関する社会の共通理解を醸成し、そのようなことに貢献できる人材を育成するための手法を、人文・社会科学の研究者と理学の研究者が共同して研究するのが、防災リテラシー向上のための研究でございます。
 このほか、この概要にございますように、各種の観測研究を、関係する様々な方面の研究者が連携して進めていくこととしております。本計画については昨年10月から11月に、関連学協会の意見聴取及び一般からの意見公募(パブリックコメント)を聴取いたしました。
 その結果、本計画を推進すべきであるという御意見のほか、自然科学研究と防災研究との融合を一層進めることにより、災害の軽減を目指すべきであるという御意見、また本計画により学術研究の成果が具体的な施策にどのように活用されるかということを、行政などの防災関連機関との一層の連携強化を目指すべきであるという御意見も頂いております。頂いた御意見を踏まえ、測地学分科会において更に審議し、先の審議経過報告に所要の修正を加えまして、建議案の最終取りまとめを行いました。
測地学分科会では、地震や火山噴火による災害をより一層軽減するということを念頭において、この計画が進むように努めていく所存でございます。つきましては、本建議案について御審議いただき、科学技術・学術審議会としての御決定を頂き、文部科学大臣をはじめとする関係諸大臣に、その実施に必要な最善の措置が講ぜられるよう、文部科学省設置法第7条第1項第5号の規定によりまして、御建議いただきたいと願っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【濵口会長】 ありがとうございます。それでは、本件について御質問ございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは本件につきましては、原案のとおり決定してよろしいでしょうか。

 (「異議なし」の声あり)

【濵口会長】 ありがとうございます。それでは、本件を科学技術・学術審議会の建議といたします。

【角田政策課長】 事務局から御案内いたします。これから、濵口会長から藤原文部科学事務次官に建議を手交していただきます。カメラの準備がございますればお願いいたします。よろしいでしょうか。それではお願いいたします。

【濵口会長】 それでは、災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の推進に関する建議に当たりまして、私から一言発言させていただきます。
 科学技術・学術審議会では、平成31年度から5か年の計画である、災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の推進について、現行計画に対する外部評価で頂いた御意見などを踏まえ、地震や火山噴火による災害の軽減に一層貢献できることとなるよう審議を重ね、本日ここに成案を得ましたので、文部科学大臣ほか関係大臣に建議をいたします。
 文部科学省におかれましては、政府関係機関におかれまして、この建議に基づく観測研究の実施について格段の御配慮をお願いいたします。よろしいでしょうか。

 (濵口会長から藤原事務次官へ建議書を手交)

【藤原事務次官】 ただいま、科学技術・学術審議会での御審議の結果を建議として頂戴いたしました。これまでの審議会における真摯な御議論の上でのこの建議の取りまとめに対しまして、感謝を申し上げたいと思います。私どもといたしましては、関係機関における地震・火山の観測研究の充実強化が着実に推進されるように、政府として、この建議につきまして、その内容をできる限り実現すべく、今後努力してまいりたいと思います。
 皆様の御尽力に対しまして、改めて御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

【濵口会長】 改めまして、この計画を御審議いただきました平田先生はじめ、関係各委員に、深く御礼申し上げます。きょうはありがとうございます。
 それでは続きまして、議題の2、各分科会等の審議状況についてお諮りいたします。学術分科会、技術士分科会から報告がございます。まず、学術分科会においてまとめられた「人文学・社会科学の振興に向けて」を、学術分科会会長である西尾委員から御報告をお願いいたします。

【西尾委員】 西尾でございます。資料2-1を御参照いただければと思います。これからの説明は、最初のページの概要をベースに説明させていただきます。
 学術分科会では、今後、第6期科学技術基本計画策定に向けての検討が本格化することを想定し、基本計画における学術研究の位置付けに関する検討に資するため、学術研究の推進に関し、議論すべき主な論点の整理を試みました。
人文学・社会科学に関しては、Society 5.0など新たな社会の姿が提唱され、また社会の構造が大きく変革している現代においてこそ、果たすべき役割が大きいことから、ワーキング・グループを設置して集中的に検討し、「人文学・社会科学の振興に向けて(審議のまとめ)」を策定いたしました。それが2ページ目からあるものでございます。
 まず、1ページ目の枠で囲ってある箇所の上のところに、審議のまとめを行うに当たっての背景を論じております。科学技術の成果が人間の社会生活に大きな変化をもたらしていること、また、グローバル化などにより、人々が共有する価値・文化・社会が大きく変化していることから、人文学・社会科学が、科学技術と社会の調和、未来社会の共創のために、その真価をより一層主体的に発揮していくことが期待されているとの認識を整理しました。
 そこで、(1)の枠内のところに入っていきますけれども、一方で、人文学・社会科学について、研究分野が過度に細分化している、社会的課題に対して十分な応答ができていないといった指摘が今も少なくなく、また個々の専門的な研究がマクロな知の体系との関連付けを得ることが難しくなっている状況にあり、その克服のためには、現代社会が直面する諸課題に関する研究を行う中で、人文学・社会科学の諸学が分野を超えて共有できる本質的・根源的な問いに対する探求を深化させていくアプローチが有効ではないかという議論をいたしました。
 他方、科学技術と社会の調和のため、自然科学との連携・協働が必要であるものの、自然科学による問題設定が先行してしまうという傾向が強く、人文学・社会科学の研究者がインセンティブを持ちにくいなどの課題が指摘されました。その克服のためには、課題解決の必要性について認識を共有し、調和的な社会実装について、人文学・社会科学の中で位置付けを与えることが求められているのではないかという議論を行いました。
 (2)の枠のことですが、これから説明します。また研究データの活用について、人文学・社会科学においてもデータ収集・分析を用いた手法は一般的であるが、デジタル化された研究データの利用環境整備は諸外国に比べ遅れていることなどを踏まえ、共同利用可能なデータ拠点の整備と社会実験などを通じ、未来社会の設計に資するデータを生み出していくことが急務ではないかという議論を行いました。
 (3)の枠のことでございますが、国際性については、研究成果の国際発信、国際共同研究への積極的な参加により、研究に新しい概念や価値観を創出することが期待されているという議論を行いました。
以上の分析に基づき、人文学・社会科学の現代的役割を踏まえた研究支援の方法について検討を行いました。それが下の方の2つの枠で書かれていることでございます。
 その1つ目は、人文学・社会科学固有の本質的・根源的な問いに基づく大きなテーマを設定して、その中に自然科学も含む分野を超えた研究者が参加して、現代的課題に関する研究課題を設定し、共同研究を行う、未来社会を見据えた共創型のプロジェクトの実施をしていくこと、これが1つ目の方策として考えられる。
 また2つ目として、研究データの共同利用のための基盤整備、データサイエンスの応用促進が重要であり、恒常的なデータプラットフォームに向けて、関係研究機関などとの連携・協働により、組織的な拠点形成に向けた検討に着手する必要があるといった方向性を得ました。次期学術分科会においても、第6期科学技術基本計画などを見据え、人文学・社会科学と自然科学の連携等について、引き続き検討していく予定です。
 以上でございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。西尾先生、深く感謝申し上げます。
 それでは続いて、技術士分科会においてまとめられた技術士制度改革に関する論点整理について、技術士分科会長である小縣委員から御報告を頂きます。

【小縣委員】 それでは、資料2-2になります。「技術士制度改革に関する論点整理(概要)」というものでございます。資料は2ページ物になっておりまして、これも赤い字を中心に説明していきたいと思います。重要な部分につきましては、黒い太字にしております。
 順番が逆になりますが、ローマ数字2.第9期技術士分科会における審議をご覧ください。ちょうど2年前の第8期のまとめのときに、この場で第8期の審議状況について報告いたしました。そのときに、今後の技術士制度の在り方についてということで、様々課題も引き続きあるということを御説明したわけでございます。
 今回は継続検討すべきとされた技術士資格のうち、国際的通用性の確保、活用促進・普及拡大、継続研さん・更新制の導入、技術士補制度の見直し・IPD制度の整備・充実、技術士試験の適正化、総合技術監理部門の位置付けの明確化という6つ赤い字で記してありますが、これを集中的に議論したわけでございます。きょうも御出席の岸本先生に大変御尽力いただきましてありがとうございます。
 技術士分科会の下に、試験部会、制度検討特別委員会、あるいはAPECエンジニア特別委員会があるわけですけれども、制度検討特別委員会の下に、更に国際的通用性検討作業部会というのも設けて、かなり精力的に議論をさせていただいたわけでございます。
 戻りますが、1.現状認識、これは皆様御案内のとおりですが、技術士法制定が昭和32年ということでありまして、60年以上が経過しております。そして現在までに大きな見直しも多々ございましたけれども、黄色の網掛けにございますように、現在の産業構造でありますとか社会ニーズ、国際的な環境、これは大変大きく変化しているわけでございまして、我々としてやはり、技術士制度の目指すべき方向性を改めてきちんと議論しておくことが必要なわけでございます。
 2.基本的な検討の視点の1つ目にありますが、そういった激変、大きく速く変化する環境の中で、技術士制度の活用を促進することが技術士制度に求められるわけでございますし、2つ目にあります、技術者のキャリア形成に資するため、技術士資格の取得を通じた資質能力の向上、これを促す必要がございます。そして3つ目ですが、技術士の国際的通用性を確保するということでございます。
 審議の内容につきましては、1ページ目のローマ数字2の2に詳しく書いてございますが、主には、この赤い字、あるいは場合によっては黒い太字で御説明してまいりますけれども、現状の問題点が左側に書いてありまして、右に行きますと黄色のところ網掛けで今後の取組の進め方と書いてございます。この(1)~(6)の6つは相互に強く関連しておりまして、その中でも特に国際的通用性の確保を中心として、これを常に頭に置きながら、全体の制度改革を目指す議論を行ってきたわけであります。
まず(1)国際的通用性についての現状の問題点で言いますと、日本人エンジニアの海外での活躍、それから日本における外国人エンジニアの受入れ、これも皆様御存じのように、今後重要になってまいります。また、APECエンジニア制度もございますけれども、十分に活用されていない中で、国内の登録者数が減少しているという課題がございます。これに対しまして右の方にまとめて書いていますので、これは(2)を説明してから御説明します。
 (2)活用促進・普及拡大でございますが、技術士資格の活用方法は、技術士の能力を専門的業務に活かす場合と、IPDやCPD、これは略で、下の注のとおり、IPDは初期能力開発、CPDは継続研さんと言われておりますが、これらの段階を人材育成に利用する場合があるわけであります。活用の程度で部門間の差もございます。
このような現在の国際的通用性の問題点について、今後は技術士を国際的に通用するものとすることを目指しつつ、APECエンジニア等の活用を促進するということでありますとか、技術士の専門能力を公的事業・業務で活かす活用と人材育成面での活用を並行して進めるということでございます。
 続きまして、(3)の継続研さん、更新制の導入でございます。これにつきましては、各国の状況を、国際的通用性も観点に入れながら調べたところ、かなり本格的に調べていただいたのですが、更新制と名簿の公開については、ほとんどの国において実施されている中で、私ども日本では、更新制度が導入されておらず、早急に対応すべき案件と認識しておりまして、今後検討を進めて、制度の具体化を目指していきたいと思います。
 2ページ目になりますが、(4)は技術士制度の見直し・IPD制度の整備と充実ということでございます。先ほど説明しましたIPD制度(初期能力開発)でございますが、初期能力の開発につきましては、日本においてもエンジニアの育成の方針、初期能力開発制度の在り方について、本格的な検討を行う必要があるわけであります。
 それとともに、(5)技術士試験の適正化としましては、これまで随時行ってまいりましたが、ここにございますようにGA、PC、この注は前のページに記載されておりますが、GAはグラディエートアトリビュートということで、IEAが設定したエンジニア教育の卒業生として身に付けるべき知識、能力と御理解いただければと思います。またPCでございますが、これは同じくIEAが制定いたしましたプロフェショナルコンピテンシーということで、やはり専門職としての知識、能力ですが、いずれにしてもそうした経験とか知識、能力、こういうものを測るものとなるように見直しが必要であるという認識があります。また、第一次試験の適正化は7期から検討が行われておりますが、基礎・適性・専門科目全てについて上記の観点から見直すべきであるという問題意識を持っております。
 次に(6)の総合技術監理部門につきましては、位置付けや求められる資質能力等に関して様々な議論がございますので、再整理が必要ということで、これは前回から継続しております。
 これらの今後の進め方になりますが、3つの矢印で示している、特に黒い太字ですけれども、先ほど申し上げたようなIPD制度の整備・充実、それから赤い字で、第二次試験制度については平成31年度以降新試験制度になりますので、実施状況に応じて検討するということ、それから、引き続き第一次試験の適正化並びに外国人エンジニアが受験しやすい試験方法の検討を行うということでございます。
 以上、今後の検討や取り組みにつきまして、今期は特に主語、あるいは目的をできるだけ明確にするということを意識しながら、ローマ数字の3.当面重点的に取り組むべき項目として整理してございます。左側に項目、右側に取り組みの内容が書いてありまして、上から順にA、B、Cと分類しております。
 表の分類を御覧いただきますと、Aは、対応の方針及び方策が明らかで、実際に対応を行っていくもの、それからBは、対応の方針が明らかになっていて、今後具体的な方策を検討するもの、Cは、対応方針を明らかにするため、更に検討が必要なものということになります。ここでは重点的なものだけを取り出してきておりますが、部会では、これよりも更に多岐にわたる項目について検討、議論をしたところでございます。
 きょうはその中で、Aは、ちょっとグレーが掛かった形で網掛けしておりますが、例えば本来の目的であります公的事業・業務における活用の促進、それから他の国家資格との関係性の明確化及び相互活用の実施、技術士の資質能力とそれを活かせる活用方法の紹介などは、右にありますように、文部科学省と日本技術士会が中心となって、活用の提案がなされている資格に関して関係機関に働き掛けていくということ、それから資質能力等につきましては、日本技術士会が中心となって、技術士のコミュニティーで該当する活動が行われている事例を整理し、産業界に働き掛けるということであります。
 時間の制約もございますので、以下B、Cにつきましては、この赤い字で書かれました更新制度の導入に向けた検討を行う作業部会を設置するという点、それから技術士試験に関する検討を行う作業部会を設置して、具体的な検討を行うということ、それから一番下にございます、技術士試験に関する検討を行う作業部会において、総合技術監理部門についての検討も引き続き行うという点でございます。
 以上、資料2-2について御説明を申し上げました。
 今後はこのような論点整理を踏まえた中で、更に働き掛けを深めていきたいと思いますが、今回は本当に各部会、あるいは作業部会等の委員の方々に、かなり熱心な議論をしていただいたところでございます。引き続きの継続課題につきまして、御認識いただければ幸いでございます。ありがとうございます。

【濵口会長】 小縣先生、ありがとうございました。
 それでは、ただいまの2件の御報告について、御質問等ございましたら発言をお願いいたします。いかがでしょうか。どうぞ。

【浦辺委員】 浦辺でございます。質問というよりコメントですけれども、先ほど学術分科会から人文学・社会科学の振興に向けての審議の報告がございました。しかしその内容は、下に書いてありますように、未来社会を見据えた大きなテーマを設定して、自然科学も含めた共創型のプロジェクトを提案するというような、非常に新しい視点のすばらしい報告だったと思います。
 ところがそれのタイトルが、「人文学・社会科学の振興に向けて」というのだと、ちょっと内容を表していないような気がしますので、もう少しタイトルとかキャッチフレーズとか、内容を表すようなものを是非お考えになって、それで社会に対して訴えていくという視点があってもいいんじゃないかと思いました。
 以上です。

【濵口会長】 ありがとうございます。西尾先生、いかがでしょうか。

【西尾委員】 貴重なコメントありがとうございます。これまでにも何回か、この人文学・社会科学に関しての諸問題は議論されてきたのですけれども、社会あるいは学術を取り巻く現代的な変化に応じて、人文・社会科学の振興について再度議論すべきだということから、このようなタイトルになっております。
 ただし、今御指摘いただきましたように、社会でこのまとめが有効に生きるという観点からすれば、もう少しインパクトがあり、社会に訴えるタイトルを、今後、検討していきたいと思っております。どうもありがとうございました。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。人文・社会科学と理系の科学の共創、これはとても大事な点だと思います。どうぞ。

【栗原(和)委員】 私も同じことですが大変大事なので。私は学術分科会でこのワーキング・グループの議論についてもいろいろ伺っていたのですが、非常に幅広い意見が出た中で、大きく2つの課題に絞って今回まとめていただいたことに感謝いたします。
前半の共創型プロジェクトというのは、今、社会の中に新しい技術が入っているところで、非常に大事な課題だと思いますし、2番目のデータサイエンスの応用に関しましては、今、国文学資料館等でやっている古典籍のデータベース化が、国外との共同研究や、それから新しい文献学の在り方等も導くのではないかという印象を持っております。そのような新しい展開について、非常にコンパクトに2つにまとめていただいたことに感謝します。ありがとうございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。西尾先生、いかがでしょうか。

【西尾委員】 今のコメントは本当にありがとうございます。その上で、当方として最後に申し上げたいのは、今後、第6期の科学技術基本計画の議論が始まりますけれども、SDGs等を見据えた上で、今後、日本の科学技術が直面する課題は非常に複雑で、いろいろな関係が複雑に絡みものになると考えます。
 今までイノベーションを起こす際には、まず自然科学系が、飛行機で言うならば主翼の役割をして、どんどん前へ進むという役割をして、人文学・社会科学系は、飛行機で言うならば尾翼の役割で、それを実装するに当たって間違った方向に行かないように、うまく制御していくという役割を負ってきました。けれども、これからイノベーションを起こす際には、問題が複雑であるが故に、どういうアプローチをしたら良いのかというところから、しっかり議論する必要があり、その場合には人文学・社会科学系がむしろその先導役を担いつつ、自然科学系とどう調和を図りつつ巻き込んでいくのかということが強く求められると思います。そういう観点も、この審議のまとめの中で記述しております。この点もコメントさせていただきます。

【濵口会長】 ありがとうございます。貴重な御意見を頂きましてありがとうございます。
 ほか。どうぞ。

【春日委員】 非常に貴重なおまとめありがとうございました。人文学・社会科学が、自然科学よりも、それ以上に人間、そして社会を研究の対象とすることから、自然科学との連携、それから外国人研究者との連携に加えて、研究の課題の設定や研究の推進自体を社会とともに進める、そういう意味での共創についても御議論されたかと思うんですが、その点少し補足いただけますでしょうか。

【西尾委員】 この報告書の中でも、共創という言葉を使わせていただいております。コ・クリエーションのことなのですけれども、やはり今後の課題解決の中には、社会とアカデミア、社会と研究機関、そういうところがお互いに課題をきっちりと認識して、相互の議論の場をきっちり設けて、そこでお互いに共創活動、コ・クリエーション活動を展開していくことが、今後の学術の在り方としては特に重要ですし、それが今後の科学技術、学術の振興のためのベースになっていくと思います。
 そういうことを前提とした形での記述とさせていただいております。それは今後、第10期においても、その議論は更に展開していきますので、そこで今御指摘いただいた点を、より強く打ち出していきたいと思います。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 ほかよろしいでしょうか。どうぞ。

【福井委員】 私も、是非人文学・社会科学を更に振興する方向で進めていただきたいという立場でコメントさせていただきます。医療・医学分野の研究のディスカッションに携わることが最近多いのですが、特に再生医療も含めて、いろんな場面でELSIといいますか、倫理、法学、社会との関連で物事が決まることが非常に多く、人文学・社会科学を強化しないと、アンバランスな方向に行くんじゃないかと危惧しておりました。是非これを進めていただきたい。
 もう一点、医学、医療の分野でも、外国では医療人文学や、健康人文学、メディカルヒューマニティー、あるいはヘルスヒューマニティーズという分野の大学院が作られている状況です。日本では全くそういう分野の大学院が欠けております。いろんな分野で人文学・社会科学との関連性を、より強化せざるを得なくなってきているんじゃないかと考えております。是非リーダーシップをとっていただいて進めていただければと思います。

【濵口会長】 西尾先生。

【西尾委員】 今おっしゃったことは本当に大事で、特にSociety 5.0を実現するには、人工知能技術やビッグデータ解析がコアの技術なのですが、最近出ている米国のレポートでは、そのような技術開発を鋭意進めている企業にとって、人間の日常行動によって得られた超大量のデータは、非常に大切な財産、象牙なのだけれども、人間そのものはもう価値がなくて、死んだ象の屍であるとまで言っています。要は、象牙は人間の作ったデータであって、人間そのものの重要さを忘れかけているという大きな警鐘を鳴らしております。
 G20が今年ありますけれども、例えば、全世界の情報通信分野の有り様を検討するときに、日本こそがSociety 5.0を構築する上での倫理の問題、ELSIの重要性を考え、世界が間違った方向に行かないように日本が先導役になっていく、そういう国にならなければならないと思います。

【濵口会長】 ありがとうございます。平田委員。

【平田委員】 先ほど建議していただきました地震、火山の災害軽減の研究でございますが、私どもも従来は理学や工学に偏った研究をしておりましたけれども、災害の軽減を目指すというのは、基本的には人文・社会科学の研究者との連携が非常に重要であるということを、遅まきながら強く感じるところでございまして、第2次計画では、人文・社会科学の研究者との連携を更に強化して進めてまいりますので、ただいま西尾委員から御説明いただいたようなことについては全面的に賛同いたしますので、おまとめよろしくお願いいたします。

【濵口会長】 ありがとうございます。どうぞ、先生。

【岸本委員】 こういう形でまとめていただきましてどうもありがとうございます。この審議のまとめというのは、第一印象として、どちらかというと科学技術を専門にする人たちから人文・社会科学の人たちに、こういう形で振興してほしいというような、言葉がふさわしいかどうか分かりませんけれども、いわゆるこちらからある程度ラブコールを送っているみたいな印象もあるところで、その中で次の段階として、人文学・社会科学の人たちとこういったことを通じた対話をして、実際の活動につなげていくということで、今度は人文学、社会学、科学を専門としている人たちからの意見も我々としては聞きたいなと思いますけれども、いかがでしょうか。

【濵口会長】 いかがでしょう。西尾先生。

【西尾委員】 学術分科会の構成委員は自然科学系だけではなくて、人文学・社会科学系の方々に多分に入っていただいております。このまとめを行うに当たりましては、人文学・社会科学系の研究者の委員においても、人文学と社会科学は違うのだというようなこともはじめとして、本当に活発な御議論をしていただいた上で、この審議まとめに至っております。
 特に人文学・社会科学系の方々が切望されているのは、この概要の下の方で書かせていただいている、人文学・社会科学系において国全体で行うような大規模なプロジェクトの推進です。そのような事業を通じて、この審議まとめで記しているようなさまざまな知見が生まれ、自然科学系との接点も探ることができます。
 そういった観点で、今頂きましたコメントをこの審議のまとめをさらに改訂していく中で、反映していきたいと思います。貴重なコメントどうもありがとうございました。

【濵口会長】 ありがとうございます。引き続き御議論をよろしくお願いいたします。
 もう一件の技術士制度改革に関する論点制度に関して、何か御意見ございますか。よろしく。

【梶原委員】 教えていただきたいのですけれども、国際的通用性を持たせるというお話がありましたが、グローバルにどういった国が技術士のような制度で活発なのかですとか、どういう国と国際的な通用性を作ろうとしているのか、情報を頂ければと思います。

【濵口会長】 小縣先生、お願いします。

【小縣委員】 今回、調べるのもなかなか大変な部分もあったのですけれども、報告書本体の35ページからの別紙5に記載がありますが、例えば既にあります科学技術調査とか、IEAの会合等で用いられる国際総合レビューレポート、それから過去にいろいろな委員をされた方の情報提供など、総合的に調査をおこないました。
 更に加えて、それらでも足りない部分につきましては、各国の担当者にインタビューなども行ったところでございます。また今回調査を行った国というのは、日本を除いて17か国と御理解いただければと思います。
 ただ、その中で今の御質問ですけれども、共通点と、それから全然共通されていない部分もございます。1つは、いわゆる試験のタイプにつきましては、例えばイギリスとオーストラリアが割と育成タイプであり、あとの国は試験のタイプとなっており、その結果により技術士、プロフェッショナルエンジニアといったような資格を取っていることがあります。また、部門数では、差はあるのですけれども、おおむね似たような部門数になっている、しかし若干の差はあるということでありますとか、合格率ではやはり日本が、シンガポール、韓国、台湾とともに低い合格率となっています。それだけ厳しい試験ということになるのでしょうけれども、一方で、オーストラリア、英国などは先ほど言ったように育成型になるわけで、また少し試験の観点では違ってくるわけであります。
 それから資格要件ですけれども、ここは二、三年の業務経験というところもありますし、一方で10年ということもございますけれども、平均的には4年ぐらいということなので、ここにつきましてはそれほどの違いはないと思いました。
 試験の方法につきましては、先ほど申しました試験タイプと育成タイプがありますが、更につぶさに見ますと、試験のタイプのうち、やはり択一式であるとか、筆記式とか、国において割とばらつきがあると思います。日本は両方とも採用しているという国であります。
 それから、先ほどまとめの中で申し上げましたIPDにつきまして、これは部会としても大変問題意識を持っておりまして、これからも更に検討を続けていきたいと思います。英国、オーストラリアについては先ほど申しましたように試験も育成型ですので、当然のことながらその制度がかなり確立していますけれども、その他試験で資格認定を行う国についても、かなり綿密にIPDが用意されている国もあります。そのような状況から問題意識を持ちまして、私どもも初期能力開発については非常に大事であるとの認識であります。
 それから、先ほど申し上げましたCPDです。更新制度につきましては、更新を全く実施していない国はほとんどないということでありまして、そういったことでいきますと我々として、先ほどまとめのところにありましたが、更新制度に向けてはやはり作業部会を設置して、具体的な方策を考えていきたいと思います。
 ただCPDにつきましては国の制度としては確立されていない状況です。例えば産業界で広くこの資格を有して活躍されている方もあるわけですから、あるゲートウエイとして、そこに更新制度を持ってくる、既にもう更新していなければ駄目という形に移行するには、いろいろと産あるいは官の中でよく考えていかなければならない部分があります。いずれにしても今回はかなり今までの部会と比べますと、そういった問題意識を持って、次期の中で具体的に検討していこうということで、きょう御説明いたしました。
 また、ほとんどの国は更新制度を持っていると申し上げましたけれども、名簿の公開をほとんどの国が行っているわけでございます。そういったことも含めて検討を進めていきたいと思います。また日本にも技術士会というのがありますが、海外も同様でありまして、技術士会と同様の海外の組織が、試験に既に合格し、資格を持っている人たちに対して、その組織に必ず入らなければいけないということを義務付けているような国もございました。国によりばらつきはございますが、そういったことも参考にするということでございます。
 いずれにしてもこれまで育ててきた技術士制度でございますので、冒頭の目的に沿って、やはり技術士制度が真に活用されるように、そして国際的通用性を得られるように、今後とも課題については具体的に論議していきたいと思います。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 ほかよろしいですか。どうぞ。

【岸本委員】 国際的な枠組みについての御質問だったので、簡単に補足させていただいてもよろしいでしょうか。専門職としての技術者の資格を持った人たちの国際的なモビリティーを高めるということと、その前の段階の大学を卒業した時点での学生の能力の保証について国際的な枠組みの中でお互いに整合するようにしようかということで、IEAという組織がございまして、インターナショナル・エンジニアリング・アライアンスということなんですけれども、そこでは各国の技術士(プロフェッショナルエンジニア)の認定をしている団体と、学部教育の認定をしている団体が相互に一緒に入りまして、国際的な流動性を高めるにはどういう枠組みが国際的に必要かということで、いろんな制度を作ってきています。
 当初は、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、アイルランド、ニュージーランド等の英語圏の国々がそういうことを始めたわけですけれども、我が国は非英語圏として、いち早くその加盟団体に入りまして、お互いに大学教育の同等性、技術士資格の同等性ということをずっとやってきております。そんな中でアジアの国々、さらには南アメリカの国々、ヨーロッパの国々の人たちも同じような枠組みに入ってこようということで、加盟国がどんどん増加しているような状況です。
 その中で、ますますお互いの国の制度を国際的に通用する形に高めていくというのが、これからのグローバル化社会では大切だということで認識を持っていまして、その中で日本の制度もよくしようということから、こういういろんな論点整理というのをさせていただいています。

【濵口会長】 ありがとうございます。明治以来の資格制度の大改革でございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
資料2-3、2-4に、各分科会等の審議状況等をまとめた資料を配付しておりますので、御覧いただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 次の議題に移らせていただきたいと思います。次の議題は、議題3「第6期科学技術基本計画策定等に向けた論点の整理」についてお諮りします。総合政策特別委員会主査であります私から報告をさせていただきます。資料3を御覧ください。
 そこの1というところにございますが、これまで総合政策特別委員会では、第5期科学技術基本計画の後半と第6期に向けた検討の論点と方向性について議論を重ねてきたところでございます。本日は現時点の論点取りまとめ(案)について御審議いただきたいと存じます。まず、そのポイントについて説明をさせていただきます。
 1ポツのところでありますが、我が国の立ち位置及び今後の方向性と、科学技術が担う役割について。昨今の社会は、将来像や価値観が多様化するなど、大きく時代が変わってきております。IoT、AI、遺伝子改変技術等の革新的技術の登場により、これまで以上に科学技術が経済、社会、政治に影響を及ぼすようになり、その役割は拡大していると考えられます。
 一方、我が国では急激な少子高齢化が進み、女性の活躍が求められております。また、地方と都市の格差、企業の伸び悩み、研究力の低下等、我が国の活力の源泉は枯渇の危機にさらされています。このような状況であるからこそ、我が国が前向きに多様な個性・能力の調和と共創による先導的な挑戦を実現する必要があると考えます。
 大きな時代背景の変化を踏まえつつ、我が国として、競争するところと協調するところ、守るべきところ、全く新しい価値を創造するところなど、戦略的に見極め、資金循環を創出し、よりよい新たな社会へとゲームチェンジしていくことが必要であると考えております。そこに5点のポイントが1のところでまとめられております。
 次のページ、2ポツのところでございます。今後の研究の在り方とそれを支える科学技術システムへの転換について。
 まず先端、基盤となる研究力の部分については、アカデミックエクセレンスの追求という論点をまとめております。発見、発明といった研究、学術的な基礎研究、応用研究等は、研究者が卓越した新たな発想を追求し、創造する活動が重要であり、これらの多様性と厚みが社会に新たな価値をもたらす基礎体力となると考えます。
 2点目として、研究者が挑戦(失敗)できる環境。科学の探求には挑戦が必要であり、挑戦した内容が適切に評価され、それを基に次の研究に再挑戦できる環境へと転換していきます。更に研究によるビッグピクチャーを描き、複数の専門分野を持った人材の育成が必要でありまして、これには挑戦と明確な仮説に基づく、考え抜いた上での失敗というのが容認されるべき環境だと考えております。
 これらに基づきまして、研究を支え、転換していくためのシステムとしては、柔軟性と即応性を兼ね備えた共創システムが3点目として重要と考えます。発明、発見といった研究を、その後の開発、イノベーションに展開していくには、社会の変化に対し柔軟性と即応性を持って適応することが求められております。多様な個性・能力の調和、共創が実現できる科学技術システムへ新陳代謝を高めて、モデルチェンジしていくことが必要と考えます。
 これらと合わせて新しい試みとして、未来社会デザインとシナリオへのアプローチが必要と考えます。将来の不確実性や多様性が高まる中、将来の未来社会ビジョンを、科学技術によって前向き、主体的にデザインし、その可能性や選択肢を広げていくことが、よりよい新しい社会への突破口、糸口となり得ると考えます。その際、多様な知や技術を最大限活用、社会実装していくためには、様々なイノベーションの類型に応じた検討や支援を行っていくことが必要であると考えます。さらに、先進的な研究を適切に促進し、社会で円滑に適用するため、自然科学と人文・社会科学との分離脱却、倫理的・法的・社会的問題、いわゆるELSIに係る議論を活性化する必要があると考えます。
 3点目、次のページでありますが、今後の検討項目及びその方向性でございます。これらのことを実現するために、研究力向上に向けたシステム改革、未来社会デザインとシナリオへのアプローチ、デザインを実現する先端・基盤研究、技術開発という3つの柱で、今後具体的な検討を進めていきたいと考えます。そこに3つの枠がございます。
 まず、研究力向上に向けたシステム改革でございますが、研究人材、研究資金、研究環境の改革を、現行課題や諸外国の取組も勘案し、未来を見据えた中長期的な視点も入れ、大学改革と一体的に検討することが必要と考えます。
 未来社会デザインとシナリオへのアプローチに関しては、将来の未来社会を科学技術によって前向き、主体的にデザインし、その可能性と選択肢を広げるとともに、領域やセクターを越えたステークホルダーと積極的に共有しながら、調和、共創によってつなぐシナリオを描き、その実現に向けた取組を検討するとしております。
 3点目のデザインを実現する先端・基盤研究、技術開発に関しましては、未来社会デザインとシナリオの実現に向けてキーとなる先端・基盤研究、技術開発について検討いたします。
 4点目として、今後のスケジュールについてでございますが、この論点取りまとめ(案)については、本日頂く御意見も踏まえ、明日開催予定の総合政策特別委員会において再度審議し、取りまとめたいと考えております。その後、この論点取りまとめ(案)を基に、各分科会、部会及び関係各課に具体の検討をお願いする予定でございます。
 以上が私の説明でございますが、御意見を賜れればと存じます。よろしくお願いします。いかがでしょうか。どうぞ。

【白石委員】 それぞれについて3点申し上げます。
 まず最初のページでございますが、我が国はもちろんいいんですけれども、外国で何が起こっているのか何も書いていないんじゃないかということで、何となくこれだけ素直に読みますと、日本はいまだに経済大国で技術の先進国でと、そういう前提がどこかにあるのかなと。ちょっと誤解であることを祈りますけれども。だけど実際にいろんなマクロのデータを見ても、世界経済に占める日本のシェアというのは急速に下がっていますし、NISTEPや何かの研究を見ましても、少なくとも論文や何かで見る日本の科学技術力は、やっぱりこの15年ぐらいで急速に下がっていますし、外国との関係で日本の位置がどうなっていてということについてのもっと強烈な危機感が要るんじゃないかというのが1点目。
 それから2つ目に、それに関連して科学技術システムですけれども、新陳代謝とかモデルチェンジと言うんですが、どのくらいのスピード感でこれを話しているのか。正直、またこれから5年間ゆっくりやるんですかというところが2点目。
 それから3点目のところは、この大きい箱の一つで先端・基盤研究、技術開発、これは非常に大事だと思いますが、今の国際的な動向を見ますと、これについての管理のシステム、もっとはっきり言いますと、安全保障管理のシステムというのをやはりきちっと考えないと、ここで想定される先端・基盤研究というのはほぼ全て、日本では評判が悪いですけれども、デュアルユースのものでございますので、そこのところを考えておく必要があるだろうという、3点でございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。明日これをフィードバックさせていただいて、しっかり議論させていただきたいと思います。
 ほかいかがでしょうか。どうぞ、お願いします。

【浦辺委員】 大変よくまとめられたと思います。3の今後の検討項目及びその方向性のところに、研究力向上に向けたシステム改革というのが入っていますが、そのそれぞれの人材であるとか、資金であるとか、研究環境、大学改革というのは、少なくとも20年、ずっと言い続けてきたことだと思うんです。それが余りもしかしたらうまくいかないので、今回また改革という言葉が使われているのかなと、ちょっと意地の悪い見方をするとそういうことが言えるんではないかと思います。
 この中でやはりこれまでやってきた科学技術政策といいますか、そういうものの見直しといいますか、その反省なりの上に立って新しい改革ということを言わないと、常に毎年毎年多分大学改革という言葉が出てくる。それと今回が何が違うのか、今まで改革、改革といったのが、また改革しなくちゃいけないのかということで、大学の方々も皆さん結構改革疲れをしておられると思います。そこら辺も少しまとめていただけると有り難いなと思います。

【濵口会長】 ありがとうございました。御指摘のとおり、私も実感しますが、改革疲れというのがかなりまん延している状況がございます。これは1つは、方向性のはっきりしない改革の疲れがあるような気がします。それで、現時点で議論しております未来社会デザインは、シナリオを考えつつ大学改革へ向けていくと。もう少し方向性を見据えながら議論しなきゃいけないんじゃないかなということは考えております。
 ほかいかがでしょうか。先生。

【大垣委員】 今のお話の過去の取組を振り返るというのは重要だと思いまして、かつてというか、選択と集中という概念がかなり重要な概念、コンセプトとして出てまいりましたが、これからは学術の多様性というのを正面に打ち出さないといけないんではないかと思いまして、今のこの御説明だとちょっとそこが薄いかなという気がいたします。
 一企業、あるいは一大学法人が選択と集中をするのはもちろん経営として構わないわけですけれども、国家として学術政策をどうするかというと、これは多様性という言葉を入れておかないと、非常に知の創造が枯渇してしまうんではないかという気がいたします。
 ちょっと長くなって申し訳ないですが、地球観測推進部会を担当しておりましたので、そこは非常に地道な観測データの蓄積、あるいは非常に長期に変化する生態系の観測とか、様々な非常に、いわゆる先端科学技術の方法論とは違う学術的方法論を必要とする分野が多数ありまして、分野の多様性と、それから研究の方法の多様性と、その両方を国家として支援するというか、維持していく、特にこれから予算資源がそう大きく増えるとは思えませんので、その中でどう維持していくかということが重要かと思います。その点がちょっと気になりました。

【濵口会長】 ありがとうございました。あしたしっかり議論させていただきます。これは重要です。
どうぞ、お願いします。

【小縣委員】 ありがとうございます。やはり日本の未来とか、科学技術の日本の未来の在り方については、私も民間ですけど、非常に大きな課題であるし、危機感は持っております。先ほど出ていた御意見の中にある危機感みたいなものが、もっとにじみ出ていいのかなというのは同じです。
 また、例えばまとめの中に、共創システムという言葉が出てまいります。最初のところの御説明の共創による先導的な挑戦とか共創システム、そういうのが随所に出てきますが、海外の、特にアメリカの大学などとも付き合っていますけれども、やはり民間との連携がもう少し表現的に出ていたのかなと。表現的にやや少ないのかなというのが1つあります。
 もちろん表現すればいいということではないのですが、やはり民間として大学と協働して研究して、実証試験だけじゃなくて、本当に具体的な社会実装につなげていくというのが、今大事なのかなと思っていますので、その辺を念頭に置いていただくといいかなと思います。
 それからもう一つは質問ですが、国際優位性のあるインフラというのは先ほど御説明いただきました、デザインを実現する先端・基盤研究、技術開発であると思いますが、私どもはインフラ企業でありますので、いろいろな場面で日本のインフラというのは国際優位性があると言われつつ、なかなかそうはいっても、その優位性が国外では余り発揮できないような状況もあります。一生懸命努力して、現実に日本のこのインフラを世界に貢献させるという取り組みも行っておりますが、ここでは国際優位性のあるインフラという表現で1行書いてありますけど、更にどのような形で作っていくのかというのは、すごく難しいと思います。そんな簡単な問題ではないと思うので、これも先ほどのことにつながりますが、実際にインフラ企業も含めて検討していくことが、最後は優位性につながるのではないかと思います。
 インフラといっても、いわゆるハード中心のインフラというより、本当はインフラの使い方、運用、オペレーション、それから今問題になっているメンテナンス、そういった総合力が重要になってきますので、その点については、確かに日本では、分野によりますが世界的には優位性があるのかなと思っています。

【濵口会長】 ありがとうございます。本当に問題点を共有しているように思いますけれども、インフラの問題は実は、結構論文のベースで見ますと、日本語で重要な論文が出ていて、それが国際発信できていないとか、かなり深いところからの問題点がありますので、技術士の国際化の問題と併せて、研究者集団のもう少し国際化を図るような誘導が必要なんではないか。それは1つはファンディングの設定の仕方にあるなと、私個人は感じております。
 それから、共創システムですけど、これも今パッチワークでかなり進んでいるような感じがしていまして、例えば民間と大学の人事交流は、10年前よりも少なくなっている問題があります。すごく日本の縦型社会というのは固いものになっておりますが、一方で大学によっては、民間からの投資が非常に従来にない形で、大型で長期のものが起きておりますので、これはかなり新しいトレンドだろうと。
 それから、大学発ベンチャーの時価総額を調べていただいたんですけれども、トップ5つの企業だけで今1兆円超の時価総額がありまして、東証マザーズのシェアでいきますと2割が大学発ベンチャーになっている。これは10年前には想像もできなかったような展開。ただこれがまだ限定された状態にあります。
 一方で小さな大学発ベンチャーは、企業の方も大分入っていただいて、ここ3年ぐらい大分活性化しておりますので、このトレンドをどう誘導していくのかという課題は、かなり奥の深い問題点がいろいろ横たわっていますけど、うまく動き始めたところをいかに誘導するか、問題点のあるところをいかにミニマイズしていくかという作業が必要ではないかと感じております。
 どうぞ。

【春日委員】 先ほどから危機感という御発言がありましたけれども、私も危機感を別の観点からちょっと加えさせていただきたいと思います。今、アントロポセン(人新世)の時代と言われていますけれども、地球環境の変化、それから先ほど地震・火山の御説明がありましたが、災害に対する対応、これに対する危機感をもう少し研ぎ澄ます余地があるのではないかと感じます。
そうしますと、ここでも既に将来の不確実性や多様性、また地球規模課題ということが述べられていますけれども、それに対する前向き、主体的な対応に加えて、危機感に基づきつつ、かつ柔軟な対応ということがアカデミアに求められていると思います。シナリオをデザインするというところで止まらずに、そのシナリオが社会にどういうインパクトを与え得るかということ、そこまでを科学的に示す必要があると思う次第です。
 それによって政策の選択に対する支援ができます。そこが足りないと、これは言いっ放しになってしまうわけです。やはり科学者コミュニティーとして、地球環境の危機感の下、本当に人の命と健康を守ることができるのかというところに立脚して、その社会の政策の決定に対する科学的な根拠を提供する、そこまでの責任を言うべきではないかと思います。
 ではあっても、科学の全コミュニティー全部がそちらを向く必要があるわけではないと思います。そういうことができる基盤として、基礎研究がなくては絶対にいけないわけです。ですので大垣先生がおっしゃったように、多様性、それはもう本当に非常に重要なエレメントとして、引き続き強調していきたいと思います。

【濵口会長】 ありがとうございます。重要な視点だと思います。
 勝さん、お願いします。

【勝委員】 今議論されているように、やはり科学技術は非常に重要で、世界でのプレゼンス低下に対しての危機感であるとか、あるいはスピード感が足りないであるとか、そういったものはここで広く共有されていると思いますし、このまとめ、方向性についても、非常によくまとまっているとは思うのですが、やはりちょっと抜けているなと思うのは、大学改革という項目はあるわけですけれども、その大学の教育プログラムが科学技術振興に向けてどのようにあるべきか、ということも、今後更に考えていく必要があるのではないか。
 先ほど人文・社会科学との在り方ということで、西尾先生から非常にすばらしい御説明がありましたけれども、やはり様々な学術の多様性ということを確保するためにも、研究者それぞれの「価値」を確立しなければならなくて、その場合にはダブルメジャーであるとか、あるいは副専攻であるとか、その辺を拡充していくことが多分必要になってくるであろうし、あるいは先ほど会長が言われたような英語での発信、研究者の発信の方策というものを考える必要があるかと思います。その場合、大学院の時代から、例えばダブルディグリーであるとか、ジョイントディグリーであるとか、海外の研究者との連携、ネットワークを強化していくということが必要になるわけで、その辺のところも考えていく必要があるのかなと思います。
 あとは3ページ目の一番下のところで3つの言葉が書かれていて、今後重要となるその方策について検討するとあるのですが、一番左の「人文学・社会科学との分離脱却」という表現は何か少し違和感があって、学術の多様性であるとか、新たな価値の創出であるとか、そういったようなものに変えていった方がいいのかなと思います。
 以上でございます。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 では、甲斐先生。

【甲斐委員】 ありがとうございます。今後の科学技術を進めていくために、いろいろな大変良い改革案が出されていると思います。ただ、全てのそういう人材を生み出す根源が大学であるということから、大学改革と書いてありますけれども、大学の在り方というのを考えると、私は危機感を持っておりまして、今大変重要な問題だと思っています。
 といいますのは、大垣先生が言ってくださったように、これまでちょっと選択と集中が行き過ぎていて、それから国立大学法人の指定国立大学法人や研究開発法人など特化していく方向性や集中性が強くなり過ぎていると感じます。一見いいように見えますが、それを輩出する大学が疲弊しているという現実が、今実感としてありまして、行き過ぎているんじゃないかと感ずるのです。
 私の周りの大学院生がもう博士課程に残らなくなっている。トップの方の大学であってもそうなんではないかと思います。これはもう現実の危機感です。日本の優秀な大学院生たちが減っています。だったらその人材を発掘するために外国人留学生を入れれば良いというのは安易な考え方だと思います。せっかく優秀な学生がいるのに大学院に来なくなっている。その理由をもう少しちゃんと考えてほしいと思うんです。
 科学技術を上げようとか、選択と集中だとか、いい論文を書くための方策を考えるのではなく、良い研究をできる人材を排出する大学、大学院が魅力がなくなっていることが問題です。そのような最も重要な現実を見ていない改革の方針ではないかなと心配いたします。ですから大学改革のためには、研究者を魅力的なものにするのではなくて、魅力ある大学、大学院にすることが先決です。そういう観点が抜けているという現実を認識していただきたいと思います。
 運営費交付金の全体での削減が、改善されないまま、ますます集中する方向に行きかけています。来年からまた始まるということも聞いていますが、そんなことが始まったら多分、すごい格差が生まれて、学生たちの大学院への進学率はますます落ちると予想されます。
 大学に格差を大きくして、1点に集中したところでそこで育った優秀な人材はその後にどこへ行くのでしょう。もしほかの大学が魅力がなくなっていたら、行き先がなくなる。優秀な学生は企業を選んでしまします。そういう現実をもう少し根底から考えて、選択と集中が行き過ぎてから多様化を考えるのでは遅過ぎて取り返しがつかなくなりますので、私は危機感を持って、もう一回大学の在り方というのを是非根底から議論していただきたいと思います。緊急課題だと思っております。よろしくお願いいたします。

【濵口会長】 ありがとうございます。恐らくこの大学改革は大きく分けて、論点として整理していかなきゃいけない。いわゆるリスク管理、いよいよリアルにそれが見えてきている部分がございます。小さい大学にかなり影響のある状況がございます。そちらの問題と、大学院を含めて、大学のシステムの魅力をいかに増加させていくかというプラス方向の作業、この2つを分けて考えないと、暗い暗い議論にどんどん引っ張られて、出口がなくなる。
 ここ数年私は見ていて議論が、危機を考えることも大事なんですけど、そちらにだけちょっと議論が行き過ぎていて、今、日本社会が持っている、実は底流で動いているダイナミックな変化というのを、我々自身が捉え切れていないのかもしれないなという問題意識も実はございます。
 それは例えば大学発ベンチャーの勢いがこんなにあるというのは、前はなかったんです。ただその成果がうまく大学にフィードバックできていない。見ていてシステム上のフェーリアがあるなと。それをもう少し総合的に考えながら、そのプラス面をどう作るのか、今の限られた資源と環境の中で、いかに活力を作るかというところを、もう議論しないといけないなと。
それで困った、困ったとやっていると、済みません、ちょっと踏み込みますけど、本当に困っている状況に今なっているんではないか。どうしたら我々は力を持てるのかということをここのところ少し、総政特では議論している状況がございます。先生の御意見を踏まえて、また議論させていただきたいと思います。
 ほかいかがでしょうか。松本先生。

【松本委員】 このまとめは非常にうまくまとめられたと評価します。ただ、今議論が集中しています、3、今後の検討項目及びその方向性というところで、大学改革の話がたくさん出ましたが、これを見てみると、研究人材の改革と大学改革は同じことが書いてあるんです。大学改革の方にはマネジメントが付け加えられています。ここは研究力とか科学力をどう上げるかということを審議する会だと思いますが、先ほど人文学・社会科学と自然科学の融合、あるいは交流、あるいは共創という話が出ていましたが、大変大事だと私も思っています。
 ただ、そういう簡単に言うと理系、文系の融合をちゃんとやるという話が議論されているわけですけど、自然科学の中でどうなっているかということを考えても、旧態依然として、学部ごと、あるいは研究科ごとに研究テーマを追求している。その融合が大学の中で図りにくい状況が続いています。そちらの方をむしろ書くべきじゃないかと思います。そういう書き方。
 つまり例えば物理学と化学はどう関係していますかとか、そこにエネルギーでも入ってきたらどうしますかと。それぞれの研究科単位、大学院で研究していますけど、その融合が非常に遅い。これは我が国の特色ですね。悪い特色だと思いますが。これを改善すべしということを書かないと、単に大学改革といったって、学部はそのままだし、はっきり言うと教育と研究をどう分離していくか。
 していかないといかんという意見を言われる方は多いですけれども、研究上はほかの学部の先生ともっと大いに交流するようなシステムにしないといけないので、研究を活性化するためのシステム改革の提案としては、そういうところまで踏み込む、つまり学問領域融合ということに踏み込んだ方がいいんじゃないかと思いました。

【濵口会長】 御指摘のとおりだと思います。日本全体がかなりタコつぼ化している状況がありますし、分野がどんどん細分化していて、同じ学問領域の中でも隣の研究室の中身が分からないような状態がかなり起こっていて、一方でNSFだとか、今度ヨーロッパのEUで行われますホライズン・ヨーロッパの2021年以降のプロジェクトの進め方は、社会課題融合型の研究をいかに展開するかというところにかなり注力されていて、日本は少しそういう意味ではビハインドな状態、しかも構造改革が進んでいない状態は、実はここにあるとは思うんですけど、これはある種ファンディングの方向性をきっちりそちらの方向へ決めていくことで、現場が理解が進むんではないかなと、実は個人的には感じております。引き続きちょっと議論を進めさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
 ほかいかがでしょうか。どうぞ、順番に。

【岸本委員】 済みません、3つに分かれてまとめられているんですけれども、この最初のところは一般論として問題提示になっていて、文科省、関係者の考えというのが2番目に来ていて、3番目が具体策と構成されているのかということを確認したいことと、もしそうだとしますと、この1番目で少し気になるのは、最初のところで経済成長や生産性向上のみを目指す社会ではないと言いつつ、3つ目のところでは国民総生産が停滞し、研究力がという形になっていて、別の社会を目指しているのにもかかわらず、もう一度これを持ってきて、我が国の活力が枯渇していくというのは、矛盾しているんじゃないかなと。
 むしろ、現在はそういう状況だけど、いろいろ研究のいい種は、実は国の中でたくさん若い人たちもやっていて、それをこれからどう伸ばしていくかという前向きの方に持っていけたら、このあたりは、最初の段落としてはもっと活力が出てくるのかなと思いました。

【濵口会長】 ありがとうございます。

【岸本委員】 あと、2番目のところなんですけれども、今度はここはかなり限定した範囲の中での議論になっているというのが、科学技術システムというともっと広い、日本全体を考えたら、企業の活動もありますし、いろんな活動がある中で、この文科省が関わるところに的を絞るとこうなるという意味なのか、もっと日本全体を考えているのか、その辺がもう少し明確になるといいかなと思いました。
 それと、システムと考えたときに、この順番のとおりにプライオリティーがあるのかどうかも議論できるといいかなと思いました。特に、この未来社会デザインとシナリオのアプローチというのは非常に大切なことだと思いますけれども、これは科学システムの考え方なのか、これからのプランディングのための何か別のカテゴリーになるのかがもうちょっと出てくるといいし、これはもう既にやられているところもたくさんある中で、ここを特出ししたのはどういうことなのかというのが、もうちょっと位置付けがうまくできるとはっきりするのかなと思いました。
 あと最後に、3のところは多分具体的に関係の部署でやるということなんですけれども、具体的な項目イメージの中に出てきているいろいろな項目というのは、文科省の中だけで閉じて議論するべき項目ではなくて、もっといろんな形で広くやっていくべきことだとすると、この方向性の中で、ここは文科省の中だけでやるようなイメージになってしまってはいけないので、そういったところをうまくこの1、2、3の中で、誰がやるのか、どういう形でやるのかも明確にしていけるといいと思います。勝手なことを申しましたけど、そんな印象を持ちました。

【濵口会長】 ありがとうございます。非常に重要なポイントを頂きました。多分この3番目のところは、システム改革にどういうツールが我々はあるかということもよく見極めておかないと、総論だけまとめて具体的に何も変えられないという状況が落ちてくると思うんです。
 それから、やっぱりもう一つの悩みは、ここは科学技術・学術審議会で、もう一つの方に中央教育審議会があって、教育の改革は、大学院改革も含めて、それから融合的な研究力の設定にしても、こちらが議論していただかないといけないんです。こちらの御意見が要るんです。今、その人材委員会では両方の委員が一緒になって議論する場も作っていただいておりますので、そういう緩やかな議論を少しずつ活性化しながら、全体設計をどうしていくかということを、文部科学省としてもかなり戦略的に考えていただいておると思いますが、もう少し前向きにここを進めないといけないなというのは、きょうの御意見を頂いた実感でございます。
 先生、お願いします。

【栗原(和)委員】 2に書かれている今後の研究の在り方と、3に書かれていることなのですが、例えば2でアカデミックエクセレンスの追求ということ、これは研究者としては必須だと誰もがおっしゃると思うのですが、得てしてこういうことと共創とかシナリオで研究するということが、少し相反するような印象を与えると、やはりいいものができてこないのではないかと思います。
もちろん共創は非常に重要なのですけれども、共創するためには、新たな知の発見ができるぐらい、個人個人の研究者がアカデミックエクセレンスを持つことが非常に必要なことだと思うのです。
 そのときに、ある分野に対してのきちんとした深い知見というのは必要だと思います。3番目はすごく制度とかシステム的なところになって、特にシナリオとかいうと、そのシナリオをやるためにということになるんですが、その基になるところとしてはやはり大学の基本的な研究力、人材力を維持するということが、長期的には非常に大事だと思いますので、先ほどの多様性ということにも通じると思いますが、そのあたりを何か、少し気持ちの中に置くだけでも書きぶりが違うのかなと思いますので、お願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 では、先生、お願いします。

【栗原(美)委員】 幾つかのキーワードが刺さるところがありまして、例えば多様性ですとかチャレンジとフレキシビリティーという点については、まさに資料に黒字で書かれているように、今後の考え方において大変重要ではないかと思います。
 多様性については、先ほど松本委員もおっしゃられましたが、自然科学の中でも、今までの分野で整理できない学際的なことがありますし、それから自然科学を超えた人文科学や社会科学との連携ですとか、あるいは自然科学に携わる人にとっても、倫理観を醸成するような教育ですとか、いろいろな分野が融合していくことが重要ではないかと思います。そのためにも多様性が実現されるような、教育を含めた科学技術システム全体の環境整備になっていってほしいと思います。
 それから2点目に、先ほどの改革という言葉は、決してネガティブな意味ばかりではなくて前向きな改革だと思いますので、悪いところを直していくというような改革ではなく、良いところを伸ばしていく戦略的な取組を、より前向きに出してほしいと思います。
 そこで戦略的な取組と言ったときに、例えば企業側から見ましても、今後伸びるだろう産業に対し、それを支える人材がミスマッチといいますか、相当足りない状況でございまして、重点的な人材育成や投資が必要な分野があるわけです。そういうところを伸ばしていくといいますか、メリハリを付けて投資や人材育成をしていくことが、戦略的に必要ではないかと思いますので、是非考え方として盛り込んでいただきたいと思います。

【濵口会長】 ありがとうございます。貴重な御意見どうもありがとうございました。
 それでは、辻さん。

【辻委員】 大変うまくおまとめいただいているかと思います。1枚目のところで、ゲームチェンジという言葉が入っておりますけれども、従来、特に他国ですと、軍事研究から出てくるようなゲームチェンジが多かったという認識でございます。その一方で、日本の特有のところといいますしょうか、よさを出していけるところというと、やっぱり何か社会課題をしっかり解決していくんだというところに、他国とは違う視点での課題解決というところがあり得るのではないかなと感じている次第でございます。
 2ページ目、3ページ目のところで、例えば未来社会デザインですとか、シナリオですとか、そういったキーワードが出てくるわけでございますけれども、この文科省の中で全てのシナリオだとか、課題感だとか、デザインを描くだとかをやるというよりは、例えばいろいろとほかの省庁等でも、そういった未来デザイン的なところはやっているわけで、特にそういったところから出てきているデザインであったり課題感であったりを、我々文科省のこのチームも共有させてもらいながら、その中から更にアカデミアでしっかりと解くべき課題を落とし込むことも、一つの視点としてあってもいいのではないかなと感じました。

【濵口会長】 ありがとうございます。幅広く情報を集めたいと思います。
 西尾先生、お願いします。

【西尾委員】 2ページの2のところなのですけれども、今までの科学技術基本計画というのは、どういう社会を実現するのだということが明確に示されてきました。例えば、Society 5.0、超スマート社会というような社会を実現するためには、こういう技術が必要である、こういうアプローチが必要である、という形で書かれてきています。そこで、第6期の基本計画では目指す社会の姿を明確には世には示さないという方針なのでしょうか。
 というのは、未来社会ビジョンと書いてあるのですけど、これはどういう社会か分かりません。
 ところがもう一方で、未来社会デザインと書いてあります。これは、目指すべき社会をデザインしていくことと解釈します。ところが、未来社会ビジョンからバックキャストすると一方で書いてあります。この辺りをどう解釈してよいのか、理解に苦しみます。
 例えば、Society 5.0、これは日本が考える究極の社会と考える。だから第5期基本計画で推進したことをもう一段熟成させるのが第6期の基本計画なのか。
 さらに、2030年にはSDGsを達成するという目標が掲げられているときに、日本の科学技術がそれに向けてどのように貢献していくのか。時期的には、その貢献をするには第6期の基本計画期間がラストチャンスだと思います。その辺りのことがどうなっているのかが私としては不明です。

【濵口会長】 いや、済みません。かなり説明不足なんですけど、これは実は総合政策特別委員会でまず現時点での論点整理をやって、ここから半年間掛けて9月までもう一度議論を深化させていくという作業工程にあります。

【西尾委員】 そうなのですね。後でもう一つだけコメントさせてください。

【松尾科学技術・学術政策局長】 今、西尾先生からありましたスケジューリングの問題であるとか、バックキャスティングをどうするかとか、未来社会ビジョンをどうするのかということでありますけれども、今、濵口先生より御説明があったとおり、総政特、そして科学技術・学術審議会で御議論いただいて、その内容をCSTIにお伝えして、第6期科学技術基本計画を作成していくということになります。
 ただ、社会ビジョンをどうするのか。これまでの5期までの計画というのは先生が言われたように、バックキャストということでありましたけれども、実際これから5年、10年先を見通せるのかというのが、現実問題としてあるわけでございます。
 そうすると、そこからのバックキャストというのは本当に意味がどうあるのかということも、我々は立ち止まって考えなければいけなくて、そうすると5年前に言ったSociety5.0が、もう達成できて云々(うんぬん)ということではなくて、やはりそれは長期的に社会像としてある、そしてまたSDGsの問題であるとか、様々な課題があって、変化する社会に我々がどう立ち向かっていくのかというのが大きな課題、前提としてあろうかと思います。そのための教育であったり、科学技術をどう作っていくのか。
 ただ全く想定もしないで今やるということはできないわけでありまして、したがって、今の科学技術でもって、ある程度我々が社会をどう捉えていくのかというのも、その中で柔軟に考えていくことが必要だろうと思います。したがって、ある程度アジャイルな形で社会を見極めていくということが恐らくあるんだろうということで、こういう書き方にさせていただいております。
 そのほか、今種々頂いた多様性の問題であるとか、教育と科学技術、大学の改革について、これは先ほど会長からありましたけれども、中教審でも議論してございまして、ここでも御報告させていただきましたけれど、年末に出た大学のグランドデザインの中では、多様性がキーワードになっています。学生、教育、教師、それから大学のガバナンス含めて、多様性ということでありますので、そういったところとうまく連携しながら、私どもは科学技術力をどう向上させていくかということを考えていきたいと思っております。
 それからあと1点だけ申し上げますと、先ほど西尾先生から人文学・社会科学の振興に向けた審議のまとめについて御報告を頂きました。これは政府としても真剣に取り組んでおりまして、例えば昨年末の臨時国会でありますけれども、研究開発力強化法の改正が行われ、その中で様々なイノベーションのプログラムができたわけでございます。
 出資でありますとか、基金の造成、その中でも特にプログラム規定として、人文学・社会科学と科学技術の在り方は検討すべき事項として国会でもお示しいただきまして、今回頂いた取りまとめも、またCSTIにも報告をさせていただいて、そこでどういう形で持っていくのかというのを議論させていただきますし、自然科学の中での融合、これも重要でございます。
 大学の中でも工学教育中心ではありますけれども、やっぱりダブルメジャー、それから副専科、これは設置基準も昨年変えさせていただきましたので、徐々にではありますけれども、融合というのが進んでいく状況であろうかと思いますので、そういったことも見据えて、また議論させていただきたいと思っております。

【西尾委員】 お答えいただきまして本当にありがとうございました。
 2つ目のコメントというのは、甲斐先生がおっしゃっていただきました大学関係のことです。甲斐先生がおっしゃっていただいたことを、我々は日夜本当に深刻な状況の中で考えております。その中で、こういう改革に関する資料の記述は改革後のアウトプットの姿なのですが、これを国の政策として打ち込むためには、インプットとしてどれだけの財政処置をして、その成果として記述されているようなアウトプットが出てくるという組み立てで構成されるものだと考えます。そのインプットの部分をきっちりと考えないで、大学にアウトプットのところだけを要求されていくことになると、先ほど疲弊という言葉が出ていましたけれども、そういう状況になります。
 大学とは、本来、学術研究をするところですので、基本計画の中に学術研究の重要性を明確に記述いただいて、それをトリガーにして、基盤経費であるとか科研費を基本計画期間中に政策的にどのように増進していくか、そういうシナリオを考えていただくことが大事かと思いますので、その点もどうかよろしくお願いいたします。

【濵口会長】 特に学術研究、これは大事なキーワードですね。ありがとうございました。
 ほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 本日御議論いただいた論点取りまとめ(案)ですが、ただいま頂いた御意見も踏まえ、あす総合政策特別委員会で再度審議を図り、取りまとめさせていただきたいと思います。取りまとめ後は、論点取りまとめを基に、各分科会・部会及び関係各課に具体の検討のお願いをする予定でございますし、ここでもまた報告させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 議題の4に移らせていただきます。本日は、第9期最後の総会でございます。最後に委員の皆さんから一言ずつ御発言いただき、本日の議題を含め意見交換をしたいと思います。よろしくお願いします。これだけは絶対言いたいということをお願いしたいと思いますが、庄田先生から。

【庄田会長代理】 最後の総会になると思いますが、これまで、総会に加えて、産業連携地域支援部会、学術分科会、ならびに濵口会長が主査をお務めの総合政策特別委員会に所属をして参りました。
 学術分科会関係では、先ほど西尾委員から御報告がありましたが、人文学・社会科学の振興について、第5期科学技術基本計画の中では、単に科学技術コミュニケーションとして記載されているのみですが、第6期の議論に向けては、本日の議題3の資料の中にあるように、「人文学・社会科学との分離脱却」というよりは、「未来社会デザイン」を議論する上で、特にSociety5.0が人文学・社会科学の視点で国民にとって何を意味するのか、これまでの科学技術を主として描かれた姿を超えた検討も重要であると思います。
 また、総合政策特別委員会関係では、これからの第6期への提言と同時に、第5期科学技術基本計画に沿って文部科学省が行っている各種施策のPDCAをしっかり行っていくことが重要であると思います。計画を作るだけではなく、施策がどういう成果を上げているのか、先ほど既に改革の芽が出ているという話がありましたが、そのような改革をさらに促進するにはどうするかといったことを、俯瞰(ふかん)マップを使って、不断に見直しをしていって戴きたいと思います。
 最後に、政府の中には、統合イノベーション戦略推進会議や総合科学技術・イノベーション会議といった枠の広い会議体もありますので、この審議会では、基礎研究、学術研究、あるいは人材の育成といった文部科学省ならではの分野に特に力点を置いて、これからの御議論をお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。

【濵口会長】 ありがとうございます。庄田先生、本当に長い間、ありがとうございました。
 それでは、発言いただいていない方に主にまず、御発言いただければと思います。安西先生、よろしいでしょうか。

【安西委員】 私も本日までではないかと思いますので、濵口会長、また庄田会長代理はじめ皆様に、感謝を申し上げたいと存じます。ありがとうございました。
 少し大きなことで恐縮でございますが、今アメリカと中国のはざまで日本の立ち位置が政治的・外交的に非常に重要になっている中で、日本の大きな特徴であり財産であるのは、民主主義と、自由に研究ができる、自由に物が言えるということであったはずだと思います。
 そういう意味で、学術というのは日本にとって極めて大きな財産であり、また戦略にもなり得るものだと、私としては認識しておりますし、是非この審議会におかれましては、そういう国の立ち位置との関係で、学術を十分捉えていただければ有り難いと思います。
 文部科学省設置法では、文部科学省がやるべきこととして、教育はもちろん、科学技術の総合的な振興、それから学術、スポーツ、文化とありまして、スポーツと文化はそれぞれスポーツ庁、文化庁がありますが、学術については、特にこの審議会の中で学術分科会等が担っておられるわけです。やはりもっと大きく、財産としての学術というものを是非もう一度認識していただけると有り難いと思います。
 もう一点、毎度申し上げていることで大変申し訳ありませんが、やはりデジャブの感が拭えません。ずっと同様の議論をしてこられているのではないか。人文学・社会科学についても同様の面がございまして、私の若い頃からずっと議論されていると思いますが、私としては強い危機感がありまして、議論しているより、やはり批判を越えても実践していっていただきたいというのが、私の心からの願いでございます。
 何かやろうとすれば必ず批判は出るので、それを恐れていると、議論はできるけれども実現はできません。そのことを、不遜で恐縮でございますけれども申し上げておきたいと思います。どうもありがとうございました。

【濵口会長】 ありがとうございます。貴重な御意見ありがとうございます。
 それでは続きまして、鎌田先生、お願いします。

【鎌田委員】 ありがとうございます。私も多分きょうが最後だと思いますけれども、この科学技術・学術審議会の議論を通じて、いろいろと勉強させていただいたことを、心から感謝申し上げたいと思います。本日のテーマとの関連で少し申し上げますと、私自身は社会科学系でございますので、人文・社会科学の振興という課題については、この審議会に参加させていただいて以来ずっと、安西先生がおっしゃったように、何度も審議に加わらせていただきました。
 ただ、きょう御議論いただきました、例えば災害の軽減、この防災・減災という議論をするときにも、テクノロジーも大切ですけれども、それをどう社会に実装していくか、定着させていくかというのは、まさに人文・社会科学の問題でありますし、データサイエンスも、データエンジニアリングよりも、むしろそれを社会の中でどういう観点から何を集め、どう活用していくか、こういう社会的価値創造方策の分析の比重がこれから大きくなっていくんだろうと思っておりますし、生命科学の発展が、先ほど御指摘がありましたように、いろんな形で人文・社会科学との融合を求めていると考えています。
 岸本先生から、これは自然科学から人文・社会科学へのラブコールという御指摘がありましたけど、逆に我々から申し上げますと、今申し上げましたような点は、人文・社会科学の側では随分意識してきたと思いますけれども、おそらくこちらからのラブコール不足で、自然科学との間に実質的な協働関係をなかなか成立させることができなかったように思います。
 しかし今、災害の問題であれ、データサイエンスの問題であれ、生命科学の問題であれ、予測や想像の次元の問題じゃなくて、早急に実現を図っていかなきゃいけない段階に来ているということで、社会が実質的な連携を求めている。それを今やらないと手後れになりそうな時期だという意味で、本当にこれを実行に移していくチャンスであり、最後の機会かもしれないという緊張感を持って、我々の側でもこの問題に取り組んでいきたいと思っております。
 それから、大学改革についていろいろ議論になりましたけれども、これは既存の制度の中での議論という限界があるからかと思いますけれども、きょうの資料の中に出ております大学改革の具体的な項目は、割とスケールが小さいなと感じました。また、個別の大学の自主的努力を主として考えているようなところがある。それも引き続き絶対にやっていかなきゃいけないことではあるんですけれども、ここのところは単独の大学の枠の中では限界があるということで、広い意味での大学間連携が強調されてきているわけで、この大学間連携も、名古屋大と岐阜大学のようなものもあれば、もっと緩い形で、しかし幅広く連携していく、例えばフランスのCOMUEは、10とか20の大学や研究機関が連携して、現実にいろんな総合的な研究を進めていますが、こういう多様な可能性があるわけです。既存の大学や研究機関をどう整理・統合していくかを超えた、大きな発想に広げていく。これも今が絶好の機会ではないかなという印象を持っておりますので、次期の審議会で、是非ダイナミックで発展的な御議論をしていただければと期待いたしております。

【濵口会長】 ありがとうございます。御指摘のとおり、海外の大学改革をもう少し見た方がいいなと私も実感しております。フランスのサクレー大学は、もう強力に変化をしている。そういう情報がちょっと入っていない感じがいたします。済みません。ありがとうございました。大変失礼しました。
 それでは、小長谷先生、お願いします。

【小長谷委員】 私は第9期から参加させていただきまして、幅広くいろいろなことを学ぶことができました。特に人文学・社会科学の振興に向けてワーキング・グループに入り、すばらしくまとめていただいて、きょうもいろいろな皆さんの御意見を聞きながら、おしゃれなタイトルはどうしたらいいかとか、世界にまねしたくなるようなプロジェクトはどんなことがあるかということを、発言にはなっていませんけれども、皆さんのご意見を非常に刺激的に聞きました。
 恐らくこれは2つのことをすることで、古い用語ですけれど、一点突破全面展開という、いろいろな多角的な問題が同時に解決されるような方向になるといいのではないでしょうか。
 例えば人文・社会系は大型の科研費の応募数がもともと少ないんですけれども、こういうことを通じてもっと増えるようになり、また、地方の大学に就職して忙しいためになかなか大型研究に参画できない人をいかに引き抜いて、その空いた穴を若手のドクターを取った人たちが派遣されることによって、教育と研究をスイッチして全体でシェアするとか、いろんな形でこの大型プロジェクトを進めることが、諸問題の解決に少しずつ役立つようになったらいいなと思います。ありがとうございます。

【濵口会長】 ありがとうございました。
 それでは、締めの発言を鈴木先生、お願いします。

【鈴木委員】 私は今期初めてこの会に参加させていただきました。測地学分科会と技術士分科会で多くのことを学ばせていただき、とても勉強になりました。有難かったです。
 1つ気になりますのは若手人材育成という観点でして、今回の取りまとめにも、きちんと若手人材と書いてくださっています。例えば測地の方では火山の分野の人材育成プログラムが、おととしから10年計画でスタートしておりまして、実際にいいプログラムで、確実に人材が育成されているというのは現場で見ていて分かるのですが、残念なことにその出口がないのです。人は育っていますが、その人たちが学位を取った後に、どこで仕事をするか、仕事を生かせるかというポジションがないことをとても残念に思っています。
 身近な話を申し上げて恐縮ですが、修士課程までは行きたい、でも博士課程は先がないから嫌という学生がやはりいまだに多く見受けられます。ですからプログラムでいい学生さん、人材が育っていくのですから、その後もちゃんとケアできるように、日本の将来にとって役に立つ研究者として育っていける道を作るということも、大事なことではないかなという印象を持っています。
 以上です。ありがとうございました。

【濵口会長】 ありがとうございます。まだ言い残した方が多数おられると思いますが、お時間が来てしまいましたので御了解いただきたいと思います。
 第9期最後ですので、一言申し上げたいと思います。
 第9期最後の総会に当たりまして、委員の皆様におかれましては、総会や各分科会等において精力的に御審議いただきまして、本当にありがとうございます。第9期では文部科学省における研究及び開発に関する評価指針、災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の推進と、2件の建議のほか、各分科会等においても多数の報告書を頂きました。文部科学省におかれましては、建議や報告書等の趣旨に基づき、しっかりと御対応をお願いしたいと思います。
 第10期におきましては、第6期科学技術基本計画策定に向けた議論が活発化すると思います。第9期の議論を引き続き継続し、科学技術・学術の発展に寄与することを期待しております。
 委員の皆様におかれましては、今後とも様々なお立場から科学技術・学術の重要性について社会に発信していただくとともに、ここにもまた出席していただくということもあると思います。国民の期待や社会の要請に応えることができるような、革新的なイノベーションを生み出す人材を育てていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 今後とも、我が国の科学技術・学術の発展のため御指導賜りますようお願い申し上げて、御挨拶とさせていただきます。
 最後に、閉会に当たり、藤原文部科学事務次官から御挨拶を賜りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【藤原事務次官】 閉会に際しまして、文部科学省を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。
本審議会は、本日が第9期の最終回でございまして、委員の皆様方には、本日の御審議を含めて、これまで精力的な御議論を行ってきていただいたことについて、まずは感謝申し上げたいと思います。
 第9期の審議会におきましては、今ほど濵口会長からもお話がありました、各般の議論を各分科会等で精力的に行っていただいたわけでございます。とりわけ先ほど御審議の中でも御発言がありましたが、研究人材をめぐる課題の克服のために、科学技術政策、学術政策と高等教育政策の連携が不可欠という観点から、人材委員会と中教審の大学院部会が合同で会議を開催していただきまして、報告書を取りまとめるなど、新しい取組にチャレンジしていただいたと思っております。
 この点につきましては文科省といたしましても、更に連携を密に、次の期での審議会で御議論をしていただければ大変有り難いなと思っている次第でございます。文部科学省といたしましては、今般取りまとめていただきました建議や報告などにつきまして、できる限り政策に反映できるように頑張っていきたいと思っている次第でございます。
 最後に、委員の皆様方におかれましては、この審議会への御参画をはじめといたしまして、科学技術・学術の推進に関して、多大な御支援、御協力を頂きましたことを心から感謝申し上げるとともに、とりわけ本日で最後となる委員の先生方に対しましては、衷心から感謝の意を申し上げまして、閉会の御挨拶といたします。どうもありがとうございました。

【濵口会長】 ありがとうございます。
 それでは、事務局から連絡事項をお願いいたします。

【角田政策課長】 本日はありがとうございました。本日の議事録につきましては、委員の皆様に御確認をさせていただいた上で公表させていただきたいと考えております。
 以上でございます。

【濵口会長】 ありがとうございました。それでは、第9期科学技術・学術審議会総会を閉会いたします。委員の皆様におかれましては、2年間本当にありがとうございました。どうもお世話になりました。
 

お問合せ先

科学技術・学術政策局政策課
学術政策第1係
電話番号:03-5253-4111(内線3848)
ファクシミリ番号:03-6734-4008
メールアドレス:shingist@mext.go.jp
 

(科学技術・学術政策局政策課)