令和7年11月12日(水曜日)10時00分~12時00分
文部科学省3階3F1特別会議室及びWeb会議形式
大野会長、上田会長代理、五十嵐委員、上田浩史委員、大竹委員、岡本委員、川辺委員、木部委員、久保田委員、佐伯委員、鷹野委員、高橋委員、田中委員、千葉委員、寺井委員、仲委員、中北委員、原田委員、深見委員、水本委員、宮澤委員、明和委員、山崎委員、相澤委員、狩野委員、菅野委員
小林文部科学副大臣、清水文部科学大臣政務官、柿田文部科学審議官、藤吉サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、大土井総務課長、西條科学技術・学術政策局長、福井大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、井上科学技術・学術総括官、石川研究開発戦略課長、根津研究開発戦略課企画官、奥人材政策課長、馬場参事官(研究環境担当)、伊藤科学技術・学術戦略官(制度改革・調査担当)、淵上研究振興局長、坂下大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、山之内振興企画課長、助川学術企画室長、板倉学術研究推進課長、塩崎科学技術・学術政策研究所長、北山国際統括官ほか関係官
【大野会長】 それでは、ただいまから科学技術・学術審議会総会(第78回)を開催いたします。御多忙中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、小林茂樹文部科学副大臣に御出席いただいております。また、清水真人文部科学大臣政務官にも、遅れて御参加いただける予定になっております。
それでは、初めに小林副大臣から御挨拶を賜りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【小林副大臣】 皆様、おはようございます。文部科学副大臣の小林茂樹でございます。奈良県出身でございます。
第78回の総会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。先生方におかれましては、大変御多忙のところ、このように御出席をいただきありがとうございます。また、オンラインで御出席の皆様もよろしくお願いいたします。
御存じのとおり先日、我が国の2名の研究者がノーベル賞を受賞されました。生理学・医学賞、坂口志文氏、化学賞に北川進氏でございます。我が国の研究者が大変高い水準を誇っているということを改めて世界に示したものでございまして、国民の皆様にとっても大きな誇りと励みになったことでございます。まずはこの二方の御受賞を心よりお祝いを申し上げるところでございます。
科学技術・イノベーション、これは社会経済の発展の源泉であります。日本の活力の向上のために極めて重要であります。先日、坂口先生、北川先生からお話を伺いました際には、基礎研究力の抜本的な強化に向けて政策を総動員する必要性、これを一層感じたところであります。
本日は第7期科学技術・イノベーション基本計画の策定に向けて、我が国の研究力の抜本的強化による科学の再興に必要な取組について、有識者会議で議論を進めていただいており、この検討状況を報告し、議論をいただく予定でございます。
皆様方におかれては、ぜひとも忌憚のない御意見を賜りますようお願いを申し上げます。冒頭、御挨拶申し上げます。しばらく時間の許す限り、皆様方の御意見も拝聴いたしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
私から以上でございます。
【大野会長】 どうもありがとうございました。
それでは、議事に入る前に事務局から説明をお願いします。
【伊藤科学技術・学術戦略官】 本日の総会は、科学技術・学術審議会令第8条第1項に定める会議開催の定足数である過半数を満たしていることを御報告いたします。
続きまして、オンラインでの発言の進め方についてです。会場にお越しの委員におかれましては、お手元のタブレットパソコンの映像をオンにしておいてください。また、音声は会場に設置したマイクで拾いますので、マイク、スピーカーともにオフの状態でお願いします。
次に、オンライン上から参加される委員におかれましては、映像をオン、音声のマイクはオフ、ミュートの状態にしておいてください。御発言の際は、手のマークの「挙手」ボタンを押していただき、御指名がありましたら「ミュートを解除」し、御発言ください。また、発言後は再度「挙手」ボタンを押して挙手を取り消すとともに、マイクもミュート状態に戻してください。
以降は会場・オンライン共通となります。オンラインからでも発言者が分かるよう御発言の都度、初めにお名前をおっしゃっていただくようお願いします。また、資料を参照して御発言される場合は、資料番号やページ数、ページ内の該当箇所などをお示しいただくよう御配慮のほどよろしくお願いします。
本日の資料についてですが、資料一覧に記載のとおりです。不足等がございましたら、事務局までお申しつけ願います。
続きまして、前回の開催日以降、文部科学省出席者に人事異動がございましたので、紹介させていただきます。
文部科学審議官の柿田でございます。
【柿田文部科学審議官】 柿田でございます。よろしくお願いいたします。
【伊藤科学技術・学術戦略官】 サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官の藤吉でございます。
引き続きまして、大臣官房総務課長の大土井でございます。
以上でございます。
【大野会長】 それでは、議事を進めさせていただきます。
まずは議題の1の「各分科会等からの報告について」です。本日は2件の報告事項がございます。
議題2の意見交換の時間を確保したいことがあり、各部会等からはそれぞれ5分での御報告をお願いいたします。各報告が終了しましたら、報告をいただいた件について都度、意見交換を5分程度実施いたします。
それでは、初めに、国際戦略委員会からの報告、主査の菅野委員からお願いしたいところでしたが、菅野委員のオンライン接続状況を確認中とのことですので、順番を入れ替え、北山国際統括官から、国際関係について御報告をお願いいたします。
【北山国際統括官】 ありがとうございます。文部科学省国際統括官で日本ユネスコ国内委員会事務総長の北山と申します。よろしくお願いいたします。本日このような機会をいただきまして、ありがとうございます。国内でユネスコ活動の発信を強化したく、この科学審におけるプレゼンの機会をいただきました。最近のユネスコの活動と科学分野での動向を中心に情報共有をさせていただきます。
ユネスコは1946年に設置された教育、科学、文化を担当する国連の専門機関でございます。来年で設立80周年ということになります。加盟国は現在194か国ですが、来年末に米国が脱退するということになっております。日本は1951年7月2日に60番目の加盟国として加盟しておりまして、来年加盟75周年の節目の年を迎えることになります。
日本の国連本体への加盟は1956年ですので、それに先立つこと5年、主権回復のためのサンフランシスコ平和条約への署名が1951年9月8日ですので、およそ2か月前にユネスコに加盟したということになります。
ちょうど今、2年に一度のユネスコ総会がウズベキスタンのサマルカンドで開催されておりまして、2017年から8年にわたって事務局長を務めたアズレー氏が退任し、新たにエジプトの観光・考古大臣を務めたことのあるエルアナーニー氏が事務局長に任命されました。15日付で就任をされます。
ユネスコの活動を資料2ポツのところにまとめさせていただいております。教育、自然科学、人文・社会科学、文化、コミュニケーション・情報という5つの分野での国際交流や支援を行っており、2か年の予算総額は約2,700億円となっております。年間1,350億となりますけれども、これ大体、九州大学の年間予算と同じような額になっております。
自然科学分野の予算規模330億円超となっております。なお、日本の分担率は米中に続き現在3位となっておりますが、来年末に米国が脱退した後は中国に次いで2位ということになります。
今回のユネスコ総会ですけれども、我が国からは増子文部科学事務次官が首席代表として参加し、政府代表演説を行いました。2年に一度の総会のほか、1年に二度執行委員会というのが58か国の委員国により開催されております。日本はずっとこの執行委員国になっております。総会、執行委員会及び事務局の3者で実際の行政が行われています。
日本国内では1952年に制定されました「ユネスコ活動に関する法律」に基づき、日本ユネスコ国内委員会が設置されております。国内委員会の委員総数は50名となっておりまして、大規模な審議会になっております。総会の下に4つの小委員会を設けられており、科学に関する専門小委員会は、東京大学の沖大幹教授に委員長をお務めいただいております。科学小委は9月2日に直近開催されておりますが、そのときの報告事項は3ページ以降に掲載させていただいております。後ほど御紹介を申し上げます。
3ポツ、我が国とユネスコの関係についてでございます。先ほど申し上げましたように来年はユネスコの設立80周年と日本のユネスコ加盟75周年という節目の年になりまして、日本ユネスコ国内委員会としては、この機会を捉えてユネスコへの貢献を強化するとともに、日本国内でのユネスコ活動の活性化を図るべく、75周年の記念事業を実施することとしております。記念フォーラムの開催、表彰の実施のほか、著名人による広報であるとか情報誌、動画の作成などを計画しているところでございます。特にユネスコの登録事業については、観光と学びの視点からPRを強化したいと考えております。科学の分野での登録事業としては、日本国内に世界ジオパークが10件、生物圏保全地域、いわゆるエコパークが10件存在するほか、世界自然遺産も5件存在いたします。これらが観光や学びにつながるよう様々な媒体を通じてPRしたいと考えております。
最後にユネスコへの我が国からの協力の在り方ですが、分担金として36億円、任意拠出金として7億円が支出されており、邦人職員は50名、うち政府から6名を派遣しております。かつては松浦事務局長がおられたり、本部部長クラスの日本人の方も複数おられたりしたのですが、今は本部で1名とジャカルタの所長1名、計2名となっておりまして、今後、新事務局長の下で高いランクのポスト獲得が課題となっております。
次に、4ポツのところにございます、最近の各分野における動きとして主なものを5件御報告させていただきます。政府間海洋学委員会でございますが、こちら東京大学の道田教授が議長を務めておられます。我が国がリーダーシップを発揮できる分野でございますが、米国の関与がちょっと弱っておりまして、海洋観測など様々な活動に課題が生じております。
(2)政府間水文学計画でございます。水の分野では、つくばの国立研究開発法人土木研究所の中に置かれた水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)というものがございますが、こちらユネスコのカテゴリー2センターとして認証を受けて、外国からの研究者の受入れなど国際貢献を行っておられます。
政府間水文学計画というIHPも50周年を迎え、東京大学の沖大幹教授はじめ、我が国の専門家が大きく貢献されています。
(3)のいわゆるエコパークと(4)のいわゆる世界ジオパークですけれども、ユネスコの自然科学分野での登録事業で、国内でも学術的にも観光資源としても関心が高まってきているところでございます。
(5)のニューロテクノロジーの倫理に関する勧告として書いてありますが、近年ユネスコで、科学分野で法的拘束力のない勧告が幾つか採択されております。2021年のオープンサイエンスやAIの倫理に関する勧告に続き、今年の総会ではニューロテクノロジーの倫理に関する勧告が採択されているところでございます。
なお、ちょっと資料への記載が漏れたんですけれども、ディザスター・リスク・リダクション、防災・減災の分野でも日本はユネスコの重要なパートナーとなっております。昨年秋の執行委員会において、日本の提案により、仙台防災枠組による取組強化を行っていくということが決定されております。災害大国として培った防災のノウハウを生かし、ユネスコを通じて途上国への技術協力や資金拠出を行っているところでございますし、国交省からの職員派遣も行われております。
以上、御紹介を簡単に行わせていただきました。引き続き日本のこの国際場裏におけるプレゼンス向上を図っていきたいと考えております。
御清聴ありがとうございました。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、5分ほど本件について意見交換をしたいと思いますが、皆様から御意見はございますでしょうか。
【狩野委員】 関連の仕事をいただいたので御報告です。ユネスコの自然科学セクターによる国際基礎科学計画(IBSP)というのがあり、IBSPのアジア地区のアドバイザーを頼まれましたことの内容も踏まえながらご報告いたします。
【大野会長】 どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。分担金が、アメリカが脱退するということで2位になると。それでも中国の3分の1ぐらいですよね。ヨーロッパ諸国とほぼ同等の分担ですので、分担金に見合った責任をちゃんと担って、リーダーシップを発揮するということは、今までもそうだったと思いますけど、これから極めて重要だと考えています。
特に、どのくらいの職員を出し、あるいは委員会でトップの位置を占めて提案その他リードするかということは、これからある種可視化していっていただくことが重要かなと思います。意見として、ぜひよろしくお願いします。
ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは、先ほどその順番を入れ替えました国際戦略委員会からの御報告をお願いしたいと思います。主査の菅野委員から御報告お願いいたします。よろしくお願いします。
【菅野委員】 どうも先ほど失礼いたしました。それでは、御報告させていただきます。今期の国際戦略委員会では、昨年12月に取りまとめた科学技術・イノベーションにおける国際戦略や、第7期科学技術・イノベーション基本計画の策定に向けた議論の状況を踏まえて、今春より有識者のヒアリングを行いながら議論を進めてまいりました。
このたび、これまでの議論を一度整理し、「科学技術・イノベーションにおける国際戦略:頭脳循環や国際連携の戦略的強化に向けて」と題して中間取りまとめを行いました。
具体的には、昨年12月の前回取りまとめからの国際情勢等の変化に焦点を当てて現状を確認した上で、中長期的に取り組むべき事項を整理し、さらに具体的に取組を進めるに当たり留意すべき事項について議論をいたしました。本日はこの中間取りまとめについて御説明をいたします。
【菅野委員】 それでは、この3ページ目の概要書を御覧ください。まず、現状認識・背景についてですが、科学技術・イノベーションは、国力の源泉としてその重要性が一層増している中で、地政学的な変化も相まって、国際的な人材獲得競争、先端技術の獲得競争が激化しています。特に、今年1月の米国新政権の発足による政策転換により、米国の研究環境に大きな変化が生じており、我が国としても研究力の強化を目指す上で、優秀な研究者を育成・集積させる国際頭脳循環や国際連携の戦略的な推進が重要となってきております。
同時に、研究インテグリティ、研究セキュリティに配慮した上で、国別・分野別の中長期的な国際連携戦略がこれまで以上に重要になっております。
他方で、開かれた研究環境の中での自由な発想に基づく研究によって、研究によって科学が発展してきたことも自明です。
このような現状、背景の下、中長期的に必要な国際展開施策をまとめた上で、最終的に具体の施策を検討していくことを考えております。
続いて、中長期的に取り組むべき事項の方向性についてですが、我が国の研究力向上に向けては、国際共同研究や海外研究者の受け入れ、日本人研究者送り出し等を通じて、我が国の研究者が国際的な科学サークルに参画し、競争・研さんし、その研究力を高めていくとともに、海外の研究者等と共に最先端の研究活動を進めていくことが不可欠です。
そのためには、研究インテグリティ・セキュリティの確保が必要であり、その基盤の上に、開放性を持った魅力ある研究環境の構築と国際連携の戦略的強化を両輪で進めることが重要であると考えております。
開放性を持った魅力ある研究環境の構築に向けた主な事項としては、「世界のアカデミアに開かれた国」であることを国際的に明らかにするために、学術交流を引き続き強化すること。留学生や海外研究者等が我が国にとどまって活躍できるような機会を提供すること。若手研究者や大学院生等の海外への送り出しを戦略的に増加させることを挙げております。また、国際連携の戦略的強化に向けた主な事項としては、国際科学のトップサークル参入に向けて、G7諸国や欧州といった先進国・同志国との戦略的な連携・協力等に対して、継続した支援を行うこと。また、ASEANやインドといったグローバル・サウスとの交流による優秀な人材の育成・確保に対しても、継続したい支援を行うことなどを挙げております。
最後に資料6ページ目の中間取りまとめ本文の4、具体的に取組を進めるに当たり留意すべき事項について簡潔に御紹介いたします。
前述の中長期的に取り組むべき事項を具体的に進めていくためには、まずは総論として、世界各国とのネットワークの形成や、そのために必要な海外からのビジビリティの向上に向けた取組が大前提であるとの認識に立つ必要があります。
その上で、1、グローバルな人材獲得競争やネットワーク化の中で、国際頭脳循環の一拠点として我が国のプレゼンスの向上、すなわち、海外研究者の受入れの観点。2、我が国若手研究者の海外の研究機関での研さん機会等の確保、すなわち日本人研究者の送り出しの観点。3、科学技術・イノベーションを取り巻く国際情勢が変化する中で、国別・分野別の戦略、すなわち国際共同研究の観点、この3つの観点についてそれぞれ留意すべき事項について詳細にまとめています。
今後、国際戦略委員会においては、これらの留意事項を踏まえて、具体的な施策の内容についてさらに議論を深めていきたいと考えております。
説明は以上です。
【大野会長】 菅野先生、どうも御報告ありがとうございました。それでは、本件について5分程度、意見交換をしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。狩野委員、お願いします。
【狩野委員】 国際戦略委員会の主査代理としての狩野でございます。内容として「魅力」という言葉で菅野先生に説明いただきましたが、この魅力というのを解剖してみることが大事かと私としては、思っております。解剖の中身は、誰に対して魅力を言いたいのか、それからどんな魅力をつくりたいのかというところです。魅力の可能性としては、お金とか仕事とか、研究のしやすさとかメンターがいるとか環境であるとか設備であるとかいろいろあると思います。
それからあと、出ていく人に対しては戻るための魅力というのもあるのかもしれません。
先ほどグローバル・サウスという言葉が出ましたけれども、そういう属性の方々に対する魅力は、欧米の人に対する魅力の発信とは内容が違うのではないかということも思います。例えば、基礎科学といっても、その内容がその人たちの出身国にある社会的な課題に関係すればするほど、多分魅力が高くなるのではないかということも思うわけですが、そういうような魅力も整備していく研究があるかどうかということについては、考える必要があるのかなと思います。
あとユネスコの基礎科学セクターにつながりがあって内容を聞いていますと、先方として研究機器の共用を国際的にするという考え方を少し考えているような様子がございました。内容としては、旅行はできないにしても研究試料を送り合ったりして、より研究機関、例えば日本みたいな測定機器などがある環境で、その内容を解析してもらうというようなことで、人のつながりもできないかというそういうアイデアを聞いたことがございまして、もしそういうのも参考になればと思って御発言いたしました。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。日本の科学のプレゼンスが下がっているというのは、レベルが下がっているんだとするとゆゆしき事態ですけれども、多くの要因を分析すると、やっぱり国際的なエクスポージャが下がっている。国際的なコミュニティに十分入り切れていないということは挙げられていますので、今幾つかの施策が行われていますけれども、海外との交流、人的な交流をさらに深めるということは、今御報告にありましたように重要だと思います。ぜひ一層それを進めていただければと思います。
また、アフリカその他新しい新興国でも我々が、これまでそれほどコミットメントできていないところに関しては、ヨーロッパ、アメリカは既に進めていますので、もちろん植民地であったということなども影響はしていますけれども、そこは戦略的なアプローチが必要だと思います。個別の大学群、大学等の群に任せるというよりは、それも大事なんですけれども、ぜひ、戦略性を持った施策をここでまとめていただけると大変ありがたいと思います。
私から以上です。よろしゅうございますでしょうか。
【菅野委員】 どうもすみません、ありがとうございます。基本的にやはり日本の研究環境、日本で研究するということを魅力的に見せるということが非常に重要であるという観点から、これまで議論を進めてまいりました。そのための施策として、現在様々な打つ手を考え、さらにお願いしているという状況です。どうもありがとうございました。
【大野会長】 菅野先生、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
よろしければ次、議題の2に移ります。議題の2は「第7期科学技術・イノベーション基本計画の検討状況について」です。
まず、その検討状況について文科省から説明いただいた後、審議を行いたいと思います。それでは、石川研究開発戦略課長から15分で御説明をお願いします。資料の2-1から2-3までを御覧いただいて説明がされます。どうぞよろしくお願いします。
【石川研究開発戦略課長】 ありがとうございます。研究開発戦略課長の石川でございます。前回の7月の総会の場でも、その時点での状況、CSTIの動きなどを御報告させていただきました。その後の状況ということで、改めて検討状況を御報告させていただいて、また、御意見をいただければと思います。画面にもありますように、通し番号の19ページ、提言(素案)概要から、説明させていただきたいと思います。
次の20ページですけれども、前回の総会では7月時点でのCSTIでの検討状況を御報告させていただきましたが、その後CSTIの基本計画専門調査会でも、9月18日に基本計画についての論点案を公表して議論をしております。
その中では、20ページの青の四角の真ん中、赤で囲っておりますけれども、第7期基本計画の方向性ということで5本、その1番目に、未来の礎となる「科学」の再興ということで計画の方向性が出ております。ここにございますように、科学は技術・イノベーションの土台である未来の礎となるものということで基礎研究力を抜本的に強化して、「科学の再興」を目指すべく、研究支援を質的、量的にも強化していくというような方向性が出ております。
こういったCSTIでの議論を受けまして、次の21ページ目でございますけれども、文部科学省のほうで、「科学の再興」に関する有識者会議を設置して、まさに大野先生に座長をお務めいただいて、この「科学の再興」というところを深掘りさせていただきました。
ここにございますように第1回が9月ということで、この2か月の間に、第4回まで開催をさせていただきまして、明日、第5回ということで、提言案を御議論いただく予定です。本日はこの第4回のところで事務局として、それまでの有識者会議の議論をまとめさせていただいて、提言素案という形で報告させていただいたものをここでも改めて報告させていただきまして、併せて第4回の有識者会議でどういった御意見をいただいたかというのも御紹介しながら、本日、先生方の御意見をいただければと思っております。
22ページ目からが有識者会議での提言素案の概要でございます。
23ページ目を見ていただければと思いますけれども、まず、この有識者会議においてそもそも「科学の再興」をどのように捉えるかというところから議論をさせていただきました。
その前提として、科学の重要性というものが、近年非常に状況が変わっているのではないかという中で、「科学」の重要性の今日的な意味合いというところからしっかり捉え直そうということで、議論したのが23ページ目のところでございます。
最初の、近年の国際社会や経済社会の情勢変化ということで、科学の重要性の変遷と書いていますが、過去、どういった形で科学、基礎研究を重点的に進めてきたかというところも少し振り返りながらこの有識者会議でも議論させていただきました。資料にございますように、重要性の変遷ということで例えば1980年代では、貿易摩擦などがあった中で、日本が経済大国世界第2位という頃に、「基礎研究ただ乗り論」というような、各国からの批判がありました。このような中で、官民において、基礎的な研究、先導的な研究を進めていたという時代がございます。こういう中で、政府であれば科研費ですとかJSTの戦略創造といった事業を増やしていくということや、民間であれば中央研究所が設立されたという時代がございました。
今年、ノーベル賞受賞された坂口先生ですとか北川先生も、この辺の90年代の頃の成果がベースになって、その後の発展の中で受賞されたという経緯がございます。95年には科学技術基本法が制定され、その基本法の考え方としては、先進国追従型でなくてフロントランナーへというコンセプトで当時、進められたということがございます。
こういったことも振り返りながら近年の情勢としては、やはりここにございますように地政学的なリスクの高まりなどとともに、科学とビジネスが非常に近接化しているということを取り上げております。
基礎研究の成果が何年もかかって社会実装されるというよりも、例えばAIに代表されるように、基礎研究だと思っていたものがすぐに社会的なインパクトを与えるというような状況がある中で、国際的な研究開発投資の競争にもなっているというのが現状であろうと。また、まさに気候変動の課題などを含めて、日本であれば人口減少下でどう持続可能な社会を構築するかといった課題もあるということで、これまでにも増して、科学というものが社会を変えるほどのインパクトを短期間にもたらすという部分を踏まえると、 3番目の今日的な意味合いということで、「変動する社会を見据えた戦略性」ですとか、あとはこの総会の中でも、これまで先生方から御議論、御意見があったと記憶しておりますけれども、まさに先の見えない「不確実な未来に向けた多様性の確保」ということで、分野の多様性だけではなくて人材の多様性というのもやはり重要であろうという議論をいただいております。その中で、産業競争力ですとか経済安全保障の文脈においても基礎研究が直結するという部分と、まさに基礎研究が国力の源泉ではないかというところを整理させていただいたところでございます。
次の24ページは、そういった形で科学の重要性が今日さらに増しているということで、一方で指標から見える現状はどうかという点をまとめております。もうここは釈迦に説法でございますが、論文数では、2000年代の初頭から比べると相対的な地位が低下しているということと、そうした相対的な地位が低下している原因としては、例えばやはり研究時間の低下ですとか、教員数、博士課程学生数の伸び悩み、研究開発費が他国が伸ばしている中で、特に大学部門の研究開発費が横ばいになっているといったようなことがNISTEPなどの分析では挙げられているということを紹介させていただきました。
こうした科学を取り巻く現状を踏まえて、では、目指すべき「科学の再興」というのはどういう姿をイメージして、議論すべきかというところで、25ページでまとめております。先ほどの国際戦略委員会の御議論にもありましたけれども、ここの青い丸、楕円の中に書いておりますように、科学の再興とはというところで、新たな「知」を豊富に生み出し続ける状態の実現で、我が国の基礎研究・学術研究の国際的な優位性を取り戻すということではないかということで、先生方に御議論いただきました。
具体的なイメージとして右側に挙げておりますように、まさに日本の研究者が学術コミュニティ、アカデミアはもとより各国の官民、政府関係者や民間企業のセクターからも、日本の研究者が常に認識されている、意識されている、まさにビジビリティが高い状況を取り戻すということではないか、国際的な頭脳循環の主要なハブになっているということではないかということを御議論いただきました。
それを実現するための要素ということで、左側にありますように大きく3つの観点で捉えております。ビジビリティを上げていく、国際的な優位性を取り戻すということで、まずは新たな研究分野を開拓し、先導していくということが重要であろうと。その上で、国際的な最新の動向を日本の研究者がグループにいるだけではなく、むしろ牽引するぐらいの立ち位置にいることではないかと。そういった、新たな研究の開拓、先導、牽引ということができるような研究環境、国内外の人材だけでなく、次の世代が魅力に感じる、先輩方を見て、同僚を見て、やはり研究でやっていこう、面白いと思っていただけるような環境を持続的につくっていくことが大事ではないかという議論をしていただいております。
下の※で、こうした「科学の再興」については研究のコミュニティだけではなくて周辺の産業界との連携も含めて重要であるということも、注記として書かせていただきました。
その上で今申し上げた重要な要素を実現していくためにも、基本的な方向としてどういった取組が必要かということで、下の4ポツの(2)にございますように、新たな研究領域の継続的な創造、国際ネットワークへの参画、優れた科学技術人材の継続的な輩出、時代に即した研究環境の構築、それと、こういったことをできるように基盤的経費の確保と大学改革の一体的推進等ということが大きな柱になるのではないかということで整理しております。
その上で右側の(3)のこの基本計画期間中、次の5年間の中での施策の方向性としては、大きく2つ書いておりまして、我が国全体の研究活動の行動変革という部分と、特に世界をリードする研究大学群が先行的にしっかり研究環境をつくっていくという2つの視点があろうということで、これらを一体的に進めることで、我が国全体の研究システムを刷新していくことが重要ではないかという方向性を出しております。
それで次の26ページ目ですけれども、特に集中的に取り組む事項ということで、総花にならないように具体的に幾つか重要なところを挙げておりますのが、先ほどの5つの柱をベースにしながら、新興・融合領域への挑戦の抜本的な拡充をしていくですとか、国際ネットワークへの参画ということで、特に内向き志向から外に出ていくということも重要ではないかということで挙げております。また、人材の育成の中では、博士課程の入学者数ですとか取得者数、人的資本の投資の抜本拡充というようなこと、時代に即した研究環境という点ではAI for Scienceや、研究環境の刷新ということで共用の拡大ということ。また、研究大学群という点では、以下の環境を満たすような研究大学群を構築拡大していくことが必要ではないかということで、機関内でも、挑戦を促すような資源配分ができるですとか、教員採用などにおいて、グローバルな評価基準を構築していくですとか、外国人研究者の受入れ体制構築や、共用システムの構築であったり、あとは、研究者だけではなくて周りのスタッフも充実していくというようなことなど、経営マネジメント改革を進めて、こういった環境をつくっていくことが大事ではないかということで、取りまとめております。
これらを進めていくに当たっては、26ページの一番下にありますように、基礎研究のための投資の抜本的拡充が重要であろうということをもう一つの柱として据え、素案としてまとめております。27ページ目は、今までのお話でなかなかイメージを持ちにくいという御意見もいただいていたところで、イメージを持ちやすくということでつくっております。研究システムの刷新のイメージということで、現状がどちらかというと、やはり個人の研究者の負担が大きくなっているような状況があるのではないかと。新たな領域への挑戦は、成果が出るか分からないところへの挑戦が次のキャリアのリスクになっているのではないかですとか、海外への挑戦も戻ったときのポストの懸念があるのではないかとか、研究環境を整えようと思っても自分で獲得したお金の中で、自分で整えるということをやっていくと、若手でせっかく独立しても、最初に設備などを整えるところからやっていかなきゃいけないので、スタートが遅れることがあるのではないか。
4番目に書いているような、優秀な研究者ほど、研究以外の負担も大きくなっていないかというようなこともあるので、やはり現状、個人の負担が大きくなっている傾向があるのではないか。組織に関しては、今まさに国際卓越研究大学やJ-PEAKSが緒に就いたところなので、そういったところも今まさに途上の段階ということで、先ほど申し上げたよう抜本的に研究システムを変えていくことで、右側にあるように、むしろ組織のほうがちゃんと基盤などを整え、若い研究者がたとえ裸一貫で異動してもコアファシリティなどを使いながらすぐに新しい研究をスタートできるということ、挑戦的な研究できるようなスキームをきちんと手当てしつつ、適切に海外経験などを評価していく。こういったものができていくと、先ほどの国際戦略委員会の異論の中でも魅力という話がありましたけれども、海外や次世代にとって、現状研究をやっていく魅力が下がっているのであれば、変えることによって魅力が上がっていくことを目指そうという方向性を書かせていただいております。
28ページ目は、先ほどの5本柱について細かく事業を記載しており、本文と合わせてご覧いただければと思います。
有識者会議でいただいた議論を踏まえた提言素案に対して、この63ページ以降69ページまで、各有識者から御意見をいろいろいただきましたものをまとめています。
64ページですと、先ほども少し触れましたが、科学単独で考えるのではなくて、経済政策、産業政策ですとか周りとの接点、連携、接続点というところも重要であろうという御指摘をいただいております。
また、2つ目にあるように、科学は投資されるべき分野であるということの理解を色々なステークホルダーから得るというための発信も重要であろうということですとか、まさに研究システム刷新の原動力は大学のガバナンスだろうと。
我々も今までも20年来様々な施策を打っていますけれど、それをやることがかえって、個人の負担になるようなことになっていることもやはりあるだろうということも有識者会議でも御指摘いただいて、様々な改革などが結局、個人の負担にならないようにするためにも、組織としてのガバナンスが大事であろうという御指摘もいただいております。
65ページにおいては、例えば日本の弱点というものは裏を返せば、まだそこにポテンシャルがあるという捉え方もできるのではないかというような御指摘ですとか、先ほどの説明と同じになりますけど、実務上のプロセスをよく理解した上で施策を打つ必要があるという御指摘もいただいております。
次の66ページでは、国際ネットワークに関しても、文科省だけではなくて外務省ですとか経産省、それこそJETROなども含めて、連携が必要ではないかという御意見をいただいております。
また、67ページでは、人材のところで、中高段階からの長期的支援という観点ですとか、国際交流という観点でも中高生段階からの支援も大事ではないかという御指摘ですとか、あとは研究環境という観点では、データに関しても御指摘をいただいていまして、利活用していくためにも、データをちゃんと適切に統合する、省庁の壁を超えて統合・活用するということも含めて、データの利活用としての基盤も重要ではないかという御指摘などをいただいております。
最後のところの基盤的経費や大学改革に関してのところで、68ページですけれども、組織に対してのインセンティブも重要だということですとか、産学連携でも、様々な費用をしっかり見るようなことを、産業界とも協力しながらやっていくことが必要であるといったようなことなどを指摘いただいており、こういった御指摘も踏まえて、今御紹介した素案をさらにブラッシュアップをして、明日の有識者会議で、提言案ということで改めて御議論いただこうと思っております。
本日この場でも、総会の先生方からも御意見いただきまして、最終的な提言案ということでまとめていければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
私からの説明以上でございます。
【大野会長】 石川課長、どうもありがとうございました。それでは、本件について審議を進めたいと思います。せっかくこれだけの有識者の皆様にお集まりいただいていますので、必ず1回は発言できるようにしたいと思います。その分、お一人が3分だと少し間に合わないかもしれないぐらいの時間配分になっていますので、その点をぜひ御考慮いただいて、御発言いただければと思います。よろしくお願いします。いかがでしょうか。狩野委員、お願いします。
【狩野委員】 ありがとうございました。新しい分野を開拓していく、あるいはそれによって日本の伸びしろをさらにもう1回見直すということで大変すてきだと思いました。
今回は人材委員会の人、あるいはSSHに関わっている人、または大学の附属学校で初等中等教育も最近頑張っている人として話をします。
先ほどのようなことを実現するに当たって、私としては、「科学」がもともと持っている、「説明がつかないこと」に対してチャレンジする、という気持ちをもう1回見直すべきではないかと思っています。なお「技術」の方面ですと、「方法が分からないこと」にチャレンジするという気持ちだと思います。いずれにしろ、この「説明がつかない」「方法がわからない」というところの対象がどこになるかというところが、大きな新しいことをするには問題かなと思います。
今までですと、与えられた分野、専門分野における「説明がつかないこと」を追いかけないと論文になりにくいとか、あるいはその中での引用数が伸びにくいという発想があったかと思います。しかし、先ほどから話がありますように、「説明がつかないこと」は社会中に存在しているわけでありまして、しかもその中でどのようにしたらその「説明がつかないこと」に新しい説明をつけられるかという、証拠集めの方法も分からないことも最初はあるかと思います。そこに関われる人を支援しないと、新しい分野は出ないのではないかという、そこを思っております。
このような「説明がつかないこと」、あるいは「方法が分からないこと」に対する挑戦の気持ちは、実は初等中等教育で今、探究学習として背中を押されておりまして、それをやりたい人たちは大分出てきていると思うのです。しかし、高等教育に至ったときにその人たちがうまく当てはまれる場所が少なめであるという問題があると思います。
したがいまして、この「説明がつかないこと」というのをどうしていくかというのが、あるいはそれを支えられる人をどうつくっていくかということを考えた支援、施策が要るのかなと思います。このときにそうしますと人材委員会の立場からすると、それができる人というのはどういうエクセレンス、卓越性があるのかという質問になると思います。ここは柿田審議官が昔、御一緒だったときに考えついた標語として、「深める」人のほかに「つなぐ」人と「活かす」人が必要であるという言い方をいたしました。それぞれに対してその卓越性は違うところにあるのではないかというふうに思っております。
この気持ちは今の奥課長と御一緒しているところでも、政策に入れていくということになっていまして、例えば、産業とアカデミアで行ったり来たりできる人材を考えるということも、こういう指標という意味では、今までのピュアアカデミアの指標とは違うところが必要ではないかということは考えているわけであります。いずれにせよ、こういう「説明がつかないこと」に対して関わる人、まだ「方法が分からないこと」に対して、その初めから関われる人をどうやって探して支援するか。基盤的経費という言い方を昔していましたけれども、もうちょっと絞ってもいいのかもしれませんが、しかしながら、今の定義や設定における「卓越性」が一定認められる人に対してしかお金をあげないということだと、こうした、社会に存在する「説明がつかないこと」や「方法がわからないこと」に、長い時間をかけてでも、地道に挑戦していこうという人たちが支援から漏れるかもしれないので、ここを考えていく必要があると思っております。
「時間軸の悲劇(Tragedy of horizon)」という言い方がありますが、まさに、長期間、地道に活動して初めて日の目を見る活動をどう支えていくかということだと思います。また、こうした活動は思い通りに行かない連続となりがちです。思い通りになるなら既に説明も方法もわかっているからです。したがって、「失敗は成功のもと」ということも大事にした支援が必要と考えます。
念押しで申し上げると、基礎科学のそもそもの初めがもしガリレオ・ガリレイだとしますと、天文学の中の説明がつかなかったことは、惑星とかその衛星の動きですし、物理のほうだと、重いものほど早く落下するというのはアリストテレスの考えだったところ、本当ですか、という「説明がつかない」ということで始めたというのが経緯だと把握しております。こうした近代科学の初めに立ち返っても、こうしたことをどうやって推せるかということが重要ではないかと思う次第です。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。大変重要な論点だと思います。続きまして、オンラインで原田委員、お願いいたします。
【原田委員】 ありがとうございます。今回非常にしっかりと御議論いただけたと思います。具体的には、第7期の基本計画期間中に実現する姿として、27ページの右側にまとめられている形でよく理解することができました。
私が関与している海洋学会の年会にて、第7期科学技術・イノベーション基本計画の説明会を開催する機会がありまして、CSTIの事務局の方が、御説明に来てくださいました。学生や若手も結構多く参画して、若手から多くの意見が寄せられたので、幾つか御紹介したいと思います。若手学生たちは、自分の周囲の同級生らが給料が高く良い一般企業にどんどん就職を決めていくことに「自分たちはこのままで良いのだろうか」という焦りを感じています。そういった中で、研究の楽しさとかやりがい搾取に頼らずに、修士課程を含めた大学院生にはしっかりと生活の支援や、彼らが国際会議や研修へ参加する際の費用の支援などをお願いしたいとおもいます。現状以上の若手学生への経済的支援の充実を望んでいるという意見が多く寄せられました。
また、大学や研究開発法人以外に、官公庁あるいは産業界での学位取得ホルダーの活躍をもっと推進していただきたい。多様な魅力あるキャリアパスの設定も彼らの大変望んでいる要望です。博士進学のモチベーションになると強く言っていました。
それから3つ目として、最近、意思決定組織あるいは会議に、若手の登用がとても増えています。これ自体は多様な意見を取り込むということで、非常にいいことなんですけれども、行き過ぎてしまいますと、同じ若手研究者あるいは女性研究者ばかりにこのような仕事が偏るといったことが起こります。こういう人たちは本来の研究へのエフォートが割けないままで、そういう仕事が割り振られない周りの研究者たちがどんどん成果を上げていくといった状況にあります。ですので、こういった状況も打開するために、ぜひとも、今回第7期、27ページに書かれている、研究機関の研究システム全体で一体的に研究者を後押しする仕組みづくりにこういった環境にある研究者への支援も具体化していただきたい。
以上です。
【大野会長】 非常に重要なポイントだと思います。引き続きオンラインで大竹委員、お願いいたします。
【大竹委員】 ありがとうございます。東京科学大学の大竹でございます。御説明いただいてありがとうございました。
御趣旨にあった我が国の基礎研究、学術研究の国際的な優位性を取り戻すというのはそのとおりだと思います。実際に科研費等についても、こういった流れに乗っていくというか、平仄を合わせるというところは重要かなと思いますし、スモールアイランド型と呼ぶんでしょうか、新分野、新学術分野を生むという観点で実際、そういった改革の方向に進んでいるんじゃないかなというふうに思います。
その上で1点申し上げたいなと思っているのが、社会の受容性という観点です。科学の再興というのは非常に重要な中で、この再興された科学が社会に受容されるかどうかというところについて、我々は考えていく必要がある時代に至っているのではないかと思います。
今年の8月に京都会議も開催された中で、そこでは価値の多層化という表現を用いていました。科学の価値、そして社会の価値、人間の価値と、ここが多層化しているというところが、今、世界が迎えている現状です。そこをもう前向きに、お互いの価値をスパイラルアップするような仕組みというのが必要じゃないかと。AIもそうですけれども、新しい科学というのが社会的に信頼されるということが再興のためには非常に重要かなと思う中で、この次の第7期においてはそこの社会の受容性というところを一つ焦点にするというのも、大切なのかなと私自身は思っています。
以上でございます。
【大野会長】 どうもありがとうございました。会場の方も手を挙げていただければと思いますけれども、挙げにくいようでしたら名札を立ててください。
それでは、川辺委員。
【川辺委員】 最初に副大臣がおっしゃられた「基礎研究力の抜本的な強化」が命題であるとの前提で資料を拝見しておりましたが、25ページの「目指すべき科学の再興の姿」には、やや違和感を覚えました。ここで述べられている「科学の再興」は、むしろ「研究力の再興」と捉えるべき内容ではないかと感じたためです。
科学において、研究コミュニティ内部での評価、例えば論文引用数や注目度によって示される、「知識のための科学」の意義は当然重要です。しかし、「社会のための科学」という視点を、もう少し、強く位置づけてもよいではないかと考えます。
研究力が低下しているからこそ未来の礎となる科学の再興をするという考えはよく理解しております。しかし、研究力の再興と科学の再興は、必ずしもイコールではないかとも感じております。研究力の低下に関しては、若手研究者が参入しにくく、定着しにくい状況があることが一因であるかと思います。この点については会議でも既に議論されてきましたが、若手研究者のポストが時限的な形態をとることが主流となり、在任期間中に短期的な成果を求められるなど、強いプレッシャーが常態化している制度が、一つのボトルネックになっているのではないかと思うのです。
こうした制度を改善するような方策を示していかなければ、27ページで示されました、「科学の再興に向けた研究システムの刷新」へ移行するのはむずかしいのではないかと感じております。この新しい研究システムは大変すばらしい方向性だと思うのですが、その前提として、個々の研究者が現在担っている、あるいは背負わされているリスクを軽減する措置が必要であろうと考えます。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございます。システムあるいは法人などがそういう緩和することをよく考えるべきだというのはそのとおりだろうと思います。
続きまして、相澤委員、そして五十嵐委員、さらにこの後、オンラインに戻りまして、高橋委員、山崎委員と御発言いただきたいと思います。相澤委員、お願いします。
【相澤委員】 28ページ、具体的取組の中に、4番目として挙げてありますAIについて、2点述べさせていただきます。すばらしいまとめ、ありがとうございます。
AIは今、あらゆる学問分野で使われているということだと思いますけれども、その使われ方が非常に多様であるという、そのAIの使われ方そのものの多様性にも注意が必要であると感じています。例えばAIというのは、今は基本的にはコンピューターの上で動いておりますけれども、各学問分野でどれくらい物理世界と関わりを持っているかというのは、学問分野によって全く異なります。その中で例えばロボットオートメーションが必要な分野ですとか、高い推論能力を持って今あるデータを解析することが重要である分野ですとかです。様々な関わり方がある点を意識して進めて行く多様性の観点は、非常に重要なことであるというふうに感じております。
2番目はAIというものを考えるときに、研究人材の強化という観点で捉えるということも重要だというふうに思っていまして、研究者は、日々の活動の中で、業務から研究まで様々なことを行っているんですけれども、その時間的制約ですとか認知的な制約を解決するために、co-workerとして、AIが研究者の能力を強化しているというのが現実的だと思いますので、単にAIが独立に、サイエンスに役立つコンポーネントであるというよりは、研究者のパートナーのco-scientistとして、人材強化に役立っているという観点でアプローチしていくことがポイントで、今後はAIの脅威ということも考える必要があるかと思いますが、AIを人間と結びつけて位置付けておくことが、そうした脅威の中でしっかりと人間がAIをグリップしていくということにもつながっていくと考えております。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございます。それでは、五十嵐委員、お願いします。
【五十嵐委員】 ありがとうございます。非常によくまとまった資料で、すばらしいと思うんですけども、結論として、25ページにある科学の再興と新たな「知」を豊富に生み出し続ける状態の実現であると。そして、その要件として一番上に上がっている新たな研究分野の開拓・先導です。ここのところ、現実的にどうすればよりこれが進みやすくなるのかなというのを考えると、やっぱり23ページに戻るんですけども、そもそもの表書きです。科学の重要性の変遷とあるんですけども、これはもちろんこのとおりですけども、これに加えて、科学が必ずしも明るい未来ばかりではないと。例えばデュアルユースの話があったり、ゲノム編集の技術があったり、最近では生成AIの話があると。そういった科学のネガティブな面もあるというふうな話。
そしてこの(3)番で、それはどこで示しているかというと多分左側の変動する社会を見据えた戦略ではなくて、右側のほうの不確実な未来に向けた多様性だと思うんです。そうすると、この戦略というのは今回も高市内閣で17の戦略ありますけど、こちらのほうは比較的ストレートで、それなりに分かりやすいといったらあれですけど、進められるのかなと。
右側のほうの不確実な未来に向けた多様性、いわゆるJSTの創発事業もそうですけども、分からない未来に対してどうするかというようなこと、ここのところを何らかの方法論というんですかね、何をやれば、よりこちらのほうで話が進んでいくのかという話ですけども、これは先ほど大竹先生がおっしゃっていた社会事業、いろんな国民、市民が未来はどうあればいいのかとか、どういう世界にそもそも住みたいのかとか、そういった方々のコミュニケーション、これは川辺委員がおっしゃった話と一緒だと思うんですけども、そういったところを、科学を深めていく上ではより重要になるんだろうなと考えています。
そういうことをやっていく上で、いろんなところのコミュニケーションというんでしょうか、産業界だけではなく国民とのコミュニケーションを通じて、新たな視点がそこから見いだされて、それが新たな研究分野になるだろうなと。その中には多分日本独自の研究分野というのも生まれるでしょうし、ですから、いわゆる昔からよく言われている科学技術コミュニケーションというんですか、その際にはELSI、RRI、Responsible Research & Innovation、こういったところはどこかにそういう言葉があったらいいのかなというふうに思いながら聞いていました。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、オンラインに戻って、高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】 基礎研究の重要性は、本日御参加の皆さんはもう議論するまでもなく理解されていると思いますし、国の知的基盤を支える基礎研究が今後も非常に重要であるということはもう明白だと思うんですが、ただ、財務省の方なんかと意見交換をすると、やはり、直近の物価高対策とかと比べると、基礎研究は優先度が低いということを明確におっしゃいます。そういったことを考える中で、大学の今後の2040年の状況とかを考えると、やはり少子化、財政制約の下で研究を持続可能にするには、民間企業との戦略的なパートナーシップが不可欠になってくるでしょうと。
あとは産学連携に対する税制ですとか、例えば技術支援人材の雇用安定補助ですとか、文科省だけではなく経産省とか内閣府とか財務省とか、いろんな横断的な法制度の改革が必要になってくることを考えると、やはり科学の再興を何のためにするのかというのが、あくまで我が国の成長戦略であるという観点をもう少し重点的に盛り込んでいただいてもいいのかなというふうに思います。
科学とビジネスの近接化ですとか、科学の実用化社会浸透が急速になっているという観点は、背景として少し触れていただいてはいるんですけれども、やはり何のために科学をちゃんと再興しなきゃいけないのかというのが、現政権での重点戦略分野の中でもこの基礎研究がきちんと研究されないと成長しないんですよといった成長戦略に沿っているというところをぜひもう少し盛り込んでいただきたいと思いますので、御検討いただければと思います。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。まさしくそのとおりだと私は感じています。続きまして、オンラインで山崎委員、お願いいたします。
【山崎委員】 宇宙政策や宇宙活動に携わっている立場から少しコメントさせていただければ幸いです。
第7期の改定に向けて、非常に包括的な議論をしてくださっていてありがとうございます。宇宙活動においても昨今やはりほかの分野でもそうですけれども、人材不足が大きな課題です。その中で、提言にもありますとおりやはり体制の強化、研究者はもちろんのことなんですけれども、研究者が研究に専念できる周りの技師であったり事務を支える方であったり、またマネジメントを経営する方であったり、体制全体の強化というものが欠かせないと思っております。ですので、そのためにも人材の流動性、クロスアポイントも含めて、ぜひ引き続き御検討くださればと思います。
それと同時になんですけれども、やはり一つ実験をして論文になるまで10年単位、長期的な視点も大切です。ですので、じっくりと腰を据えて短期的な成果で評価をされるのではなく、じっくりと腰を据えられるというような、そうした体制強化も科学の再興にとっては大切だと感じています。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、水本委員、そして木部委員の順で御発言いただければと思います。
【水本委員】 科学の再興に向けての提言ということで非常に短時間で、御議論いただいて、よくポイントをまとめていただいたなと思って拝見いたしました。
その中で必要な取組というのが、具体的には26ページにあります。5つ、1から5まで、4が2つ分かれているんですけど、このそれぞれのポイントを拝見すると、具体的にはこういうことをやるんだなというのがすぐイメージできるようなポイントがたくさん並んでいると思います。その中で、1の新たな研究領域への挑戦、あるいはこれを継続的に創造するというのがあって、はて、これはどうやってやったらいいんだろうというのが、まず、ちょっと目につきました。それについて、若干コメントをさせていただきたいと思います。
26ページの細かい字で書かれているところを見ると、既存の学問体系の変革を目指す、そういう研究、そういったものをつくる機会が必要じゃないかということはまさにそうだなということを思った次第です。
多分融合領域あるいはインターディシプリンな研究というのは、相当前から言われていることであると思いますし、そういう取組は幾つかあると思うんですけど、インターディシプリナリーからもう一歩進んで、最近はトランスディシプリナリーという視点が重要かというふうに思っている次第です。具体的にどういったことをやったらそれができるのかという解をここで申し上げることができれば、非常に美しいんですけど、私も残念ながら、どうしたらいいかというのはよく分かりません。
よく分からないんですけど、一つのやり方として、それぞれの分野で活躍されている、特に若手の研究者の方を一堂に会して、それこそ合宿形式でもいいですけれど、議論をしていただくというやり方があると思います。結構そういうのは有効かなと思うのは、日本学術振興会でやっている事業を見て、そのように私自身は感じています。そのときに、日本人の研究者だけでもいいんですけれど、やっぱり国籍を越えて海外の研究者、少し違った思考をやっぱり持っている、そういう感覚があります。そういう人たちも交えて少し時間をかけて混ざり合う、そういうのが一つ、新しい研究領域を生み出すのに有効ではないかなというふうに思いました。
そのことをここで発言させていただきました。ありがとうございます。
【大野会長】 ありがとうございました。それでは、木部委員、お願いいたします。
【木部委員】 木部でございます。人文系の立場から意見と感想を申し上げたいと思います。
今回基礎研究というのが大きく取り上げられて、これが重要だという御指摘は非常にいいことだと思います。26ページの下のほうを見ますと、基礎研究のための投資の抜本的拡大と書かれています。第7期は、基礎研究の拡充、基礎研究をさらに確たるものにするということに力を入れるということは本当にいいことだと思いますし、提言に明確に書いてくださったのは、ありがたいことだと思います。
その際、人文系での基礎研究は何かというと、現在は、やはりデータのデジタル化が、基礎研究のさらなる拡充につながると考えています。しかし、日本では、日本の言語、文化、それから芸術も含めてですけども、そういうもののデータベース化が遅れています。今AIがいろんなところで活用されているし、これからも活用されると思いますが、その際に日本の文化ですとか、日本の科学に基づくデータベースの構築というのが基礎研究にとって非常に大事になると思います。
ですから、基礎研究にデータベースの構築が非常に重要だということを強調していただきたいと思います。
その際に一つ、我々が困っているのは、データ基盤を貯蔵するサーバーだとか、そういう貯蔵機能が非常に今不足しているということです。ですから、データインフラをぜひ進めていただきたい。今現在は個々の研究所だとか個々の大学で賄っている状況ですけども、もう、一つ一つの大学や研究所ではとても賄えないような分量のデータが蓄積されつつあります。ですから、データ蓄積の方法をぜひ考えていただきたいというのが一つです。
それからもう一つは、個人の研究者の負担にならないようにということが明確に書かれたことは非常にすばらしいことだと思います。これから大学改革だとか研究施設の改革などが進んでいくとすると、理想としては研究者の負担にならないようにと言えるんですけれども、現実に改革を行いながら、あるいは新しいものを構築しながら、個人や研究者の負担が少なくするということを具体的にどう実現するか、それをぜひ文章の中だけではなく、現実に実行していただきたいと思います。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございます。データ基盤は非常に重要な観点だと思います。このまま各主体にお任せすると、今政府が苦労している自治体で2,000種類以上のいろんなやり方があるのをどうやって統合するかということは、将来課題になるのが見えていますから、今のうちにきちんとデータの基盤をつくらなければいけないというのは明らかだと思います。ありがとうございました。
それでは、小林副大臣はここで退出されます。
【小林副大臣】 申し訳ございません。よろしくお願いいたします。
【大野会長】 それでは、続きまして、中北委員、そして上田浩史委員、佐伯委員の順番でオンラインの委員の御発言をしていただきたいと思います。中北委員、お願いします。
【中北委員】 どちらかといえば地球全体、地球規模課題、あるいは気候変動の関連で、少しお話、簡単に意見申し上げます。
既に含まれているところと思いますけれども、地球課題というところは複雑なシステム、複雑系をどう科学的にほぐしていくかという面で非常に大事になってるんだと思いますので、基礎サイエンスあるいは基礎の社会科学共通として、複雑なシステムをこれからどうひもといていくかというようなところも大事な基礎研究として考えていただければと思います。
数年、何年か前にノーベル賞を取られた気候モデル関連の真鍋淑郎先生関連、あれはどちらかというと複雑なシステムをどうひもといたかという点において、評価されているということから考えてもこの分野、日本もさらに貢献していくべきと思っています。
もう一つですけれども、先ほどお話ありましたが、大野会長もすごく賛同くださった点ですけれども、データに関してです。今の地球観測並びに今後の地球規模の気候変動予測、これは文科省、頑張ってやられていますけれども、これらのやはりデータがどんどんどんどん増えていく中で、これらを文科省は開発的にいろいろ検討、データベースストレージを考えられますけれども、各省庁の壁を越えて、日本の課題として構築していっていただくというのが大事だと。ある意味、科学研究者向けだけじゃなくて、いろんな社会に関するステークホルダーの皆さんにとっても、大事な基礎データというのはこれから多く含まれますので、社会インフラと、ベースとする社会インフラとして全省庁あるいはいろんな行政も含めて、応援していって大事な礎としていただければと思います。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、上田浩史委員、お願いいたします。
【上田(浩)委員】 提言の資料や、あるいは提言案に対する委員コメントも十分な意見が出尽くしていて、これ以上申し上げることがないような、よくまとまった資料と拝察させていただきました。
少し観点を変えさせていただいて、予習させていただいた参考資料について、ちょっと述べさせていただきたいと思います。ちょっと取り上げられなかった部分です。参考資料の4には、原因分析が多くなされていて、幾つか引っかかるところがございました。
参考資料の4の、例えば38ページには、取得から10年以上たった機器が多くあり、老朽化が著しいといったこととか、37ページのほうには、共用機器の把握がきちっとなされていない、もっと活用していくべきというふうな感じのことが記載されていると拝察しました。
そういった予算が限られた中、そういった機器の拡充が必要ですが、もう少し共有化を進めて、例えばオペレーター的な人材も置いていただいて共用化を進めていったり、複数の大学にまたがって、先ほどユネスコからもというふうな話もありましたが、共用して有効活用を進めていったりすべきかと考えております。
加えて、41ページのほうには、大学の先生方のアンケートだと思いますが、研究活動が3から4割程度になっていると。大学ですので、教育エフォート重要ですが、その他の職務活動、規定等資料を共有していただいていますので、黄色い部分、そういったものを減らしていくことが必要じゃないかと。
これに含むかどうか分かりませんが、例えば競争的資金応募の支援とか、専門職を設けるのか、あるいは経験豊かなOBの方のサポートを受けるとか、そういった後方支援、仕組みを変えていって、研究活動をもっと割合を増やしていくというふうなことも必要かなと思います。加えて教育も、もちろん教育職として重要ですが、教育に関しても、もう少し教育専門で研究を重視してエフォートを広げる専門的な職とか、そういった仕組みの変えていくというふうなことも必要だと思います。そういったものがボトムアップにつながっていって、科学の再興につながっていくのではないかと考えております。ちょっと細かな話になってしまいましたが、そういったことを考えています。
もう一つ、本資料の科研費のことが書かれておりましたが、以前もちょっと申し上げましたが、科研費の若手研究、現在はドクター取得後8年未満が応募可能になっております。すなわち、マスターの段階では応募できないので、有能な若手研究者が育ちにくいということを考えておりますので、このドクターというのを撤廃していただくとか新たな別枠を設けてくれれば、ありがたいなと考えております。ちょっと観点をずらしての発言でしたが、以上になります。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、佐伯委員、お願いいたします。
【佐伯委員】 佐伯でございます。私は数学を研究している者として、少し意見を述べさせていただきます。資料26ページにまとめていただきまして、どうもありがとうございます。
これから取り組むべき事項ということですが、新たな研究領域への挑戦をどうしていったらよいのかという話が本日もたくさん出てきておりましたけれども、例えば数学を私、勉強してきていますが、そもそも数学というのは人間の知的好奇心に基づいた研究が基盤だったのですが、それが実は、現在の社会を支えているような基本的な基盤的技術のためにたくさん使われております。
なかなか目に見えにくいのですけれども、例えばインターネットにおける検索技術であるとか、皆様が毎日使っている携帯電話であるとか、そういったセキュリティシステムとか、至るところに使われているのですが、そもそもそういったものの基盤となる数学というのは前からあったわけです。それをそのように使えるということを知らずに、研究を進めていったというところがございます。
ですので、知的好奇に基づく研究というものがいずれはそういったものにつながっていくということなんですが、では、そういったイノベーション的なことにどうやってつなげていくのかということをどう考えていくのか。そのためには頭を広く持って、軽く持っていろいろなことに考えを及ぼして、様々な可能性を探っていく、それぐらいの余裕が必要なんだと思うんです。その余裕をつくり出すためにはやはり時間が必要で、それから、様々な人たちと話をするということがとっても重要だと思います。
自分の研究、基礎研究をされている方は深いことを知っておられるわけですけれども、それが社会のどういったことに役に立つのか、なかなか気がつかないことも多いかと思います。ですので、多様性のある人材の中で様々な議論を行っていく、こういった機会をこれからつくっていくということが非常に重要だと思っております。
そのためには例えば博士課程人材の支援の話も本日出ておりましたけれども、博士課程のときから、様々な分野の人たちがまざり合っていくような、そういった教育体制なども、これから支援していくようなことがあっていいのではないかというふうに思っております。
それから挑戦的な研究についてですけれども、もう少しインセンティブを与えるということに力を入れてもいいのではないかと思いました。つまり、リスクがありますので、うまくいくかどうか分からない。そういった研究にも一定の支援をして、うまくいかなかったとしても、まだ次、頑張ってくださいと言ってくれるようなそういった支援体制、そういったものが必要なのではないかと思いました。
それから、4-1にAI for Scienceによる科学研究の革新がございますが、AIをどんどん使って研究者を支援していく、これはとっても大事なことだと思います。先ほどの時間の確保という観点からも、ただそれだけではなくてAI自身の研究もとても大事だと思います。これは世界中でやっておりますけれども、この中から日本独自の技術というものも生まれてくると思います。今のところは様々な原因があって日本が遅れを取っておりますけれども、日本独自のAI技術、AIと日本の技術を結びつける、そういったところを基にして、日本の力を向上させていく、そういった観点もあっていいのではないかと思いました。
私からは以上でございます。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、久保田委員、田中委員、千葉委員までをまず御発言いただきたいと思います。
【久保田委員】 ありがとうございます。久保田でございます。提言素案、いずれも大事な点が書かれていて今後どんどん具体化していくのかなと期待しております。
私から3点、意見を述べたいと思います。一つ目は、基礎研究についてですけれども、昨今、大学等で基盤経費の減少も相まって外部資金獲得を推奨しておりまして、ある意味、研究者の中の活性化にもつながっているとは思うのですけれども、一方、テーマに関してはやはり研究費を獲得しやすいテーマになっていたり、あるいは短期間で成果が出るようなところに集中していたりするような傾向があるというふうに思っておりますので、ぜひ基礎研究あるいは時間のかかる研究にも研究費を確保できるような、そういう施策を取っていただければ良いというふうに思っております。
2点目ですけれども、これは新たな研究分野の開拓ということで非常に重要な点かと思っております。新しい研究にぜひチャレンジできるような仕組み、これは研究費のみならず、コミュニティ形成あるいは企業との連携まで視野に入れた、そういうものを推進するシステムがあるといいかなというふうに思っております。
最後、3点目は人材糾合ですけれども、研究環境あるいは研究費あるいは給与等、とても重要なのですが、もう1点研究者のその後のキャリアパス、そういったものもぜひ考慮した対応が必要かなというふうに思っている次第です。
以上3点述べさせていただきました。ありがとうございます。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、田中委員、お願いいたします。
【田中委員】 まず1点目ですが、久保田委員もおっしゃっていましたけれども、テーマによって時間がかかるもの、かからないものがあるというのはごもっともというのと、それから木部委員、あるいは中北委員もおっしゃっていましたが、データベースです。テーマによって予算がつきやすい、書きやすいというのがあると思うのですが、概して新しい発見をしたりとか、新しいデータを取ったりするというのは比較的取りやすいというか、書く側も元気が出て、なかなか良いプロポーザルになるのですけれども、それを継続していく、あるいはちゃんと蓄積して、世界標準化したものをきちんとためて、責任を持ってずっとメンテナンスしていくというのはすごく努力が必要で、なかなかそれに予算を獲得するのはしにくいという問題がございます。
私は地球科学を専門としていて、100年前のデータから使える分野ですけれども、そういうデータを日本で責任を持って、きちんとストレージしているのが実はもう恥ずかしながらお粗末で、ヨーロッパなどはやはりそういう考え方、考え方だと思うのですが,きちんとしています。予算的な問題ももちろんあると思うのですけど、考え方がきちんとしているので、そういう方々と一緒に共同研究をして、日本のデータをそちらにアーカイブしていただいているという、非常に何かと思いつつ、そういうことが実際問題生じているので、そこはやはり省庁を超えてきちんと考えていただきたいというふうに思っています。
2点目の省庁を超えてというのもあるのですが、なかなかこの素案自体はすばらしいことがいろいろ書いてありますが、具体的にはなかなか分かりにくいというところで、27ページなどにうまくまとめていただいたというふうに思っています。特に若手人材とか次世代の方、あるいは国際的に魅力ある形にというのはかなり明確になったのかなと私自身は思うのですけれども、若手だけではなく、キャリアアップした中堅の方、あるいはもう少し上のレベルに行った方にとっても、やはりすごく魅力あるというようなことが分かるような形を書いていただければなというふうに思います。
実際問題、海外の方なんかと話していますと、なかなか日本は長期的な展望が見にくいとのことです。良いことは書いてあるのだけれど、その5年なり何年かたったときにどうなるのかという長期的な展望がなかなか見えにくいという、苦言をよく聞くのですが、それについては、なかなかきちんと説明できないというのは、非常にもどかしいところかなというふうに思っています。
それから、もちろんところどころには書いていただいているのですけれども、やはり23ページにも書かれていますように、情勢がどんどん変化していて、昔だったら科学は科学、ビジネスはビジネスと結構その切り分けがきちんとしていたと思うのです。最近そこが非常に流動化しているということは、そうだと思いますが、こういう情勢になったからだけではないと思うのですけど、もう少し産学官の間で人材がうまく流動できればいいなというふうに思います。どこか片方だけが人材を流動しますよと言っても、やはり社会全体がそうなってくれないと、なかなか難しいかなというふうに感じています。ぜひ例えば科学で実施したときに、これはビジネスになりそうと思ったら、場合によってはそれで産のほうに行っていただいて、ビジネス化を進めていただく、あるいはそうした方がもう少しやはり基礎研究に戻ったほうが良いと思って、もう一度大学に戻られる、あるいは官に移られるというような、キャリアパスにもう少し柔軟性があればいいのかなというふうに感じております。
以上です。ありがとうございました。
【大野会長】 どうもありがとうございます。それでは、千葉委員、お願いいたします。
【千葉委員】 大変分かりやすく、整理されていると思います。それからそこですごく大事なのは、これをどうやって日本全体の力強い前進する力に変えていくかというところではないかなと思いますが、研究者はノルマを課せられたり遅れているから追いつこうというような発想ではなかなか力が湧いてこないものだと思います。
むしろ自分は独自の世界であるところが突出している、あるいは突出する可能性があるという思いを持てることが実は科学の再興どころではなくて、日本が断トツ一番になっていくという道をつくる上で非常に重要だと思います。
再興というのはプロセスとしては重要なんですけども、発想としては、日本が世界の中で突出するにはどうしたらいいかという考え方がとても大事ではないかなと考えています。では、どういう発想にしたらいいかということなんですけども、日本は大きな失敗をしないようにするということをかなり重視して、そのためには何が大事かというと過去にやったことを継承していくというのがあまり大きな失敗をしない。これは実は科学の考え方とは若干異なるわけです。未来志向でいかないといけない、ということは未来では、失敗する可能性もあるし、あとは何をやったらいいか分からないことに挑戦するという発想です。
ここで、実は視野を物すごく大きく広げて、先ほど社会ともっとつながるべきだとか、企業とというお話もありました。これ全くそのとおりで、社会の変化あるいは地球の変化、危機的な状況、リスクが高まること、これもうどんどん生まれてきているわけです。日々ニュースでも我々は目にするわけです。なぜそれが起こるのか、どうしたら防げるのか、これは自然現象だけじゃなくて、人間の思いとか、人間のエゴとかそういうものも全部絡んできている。こういうところを総合的に捉えていくと、何をすべきで何をもっと深く研究してどうリアクションしなきゃいけないということが見えてくるのではないかと思います。
ぜひ科学の再興、これはプロセスであって、目指すべきは、日本が世界に誇る突出した世界をつくるにはどうしたらいいかというアクションにつなげることが大事ではないかなというふうに思います。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、仲委員、鷹野委員、岡本委員から御発言いただきたいと思います。
【仲委員】 私は、「科学の再興」に関する有識者会議の委員も務めていますので、本日の先生方の御意見をまずはよく承って、というふうに思っておりますが、こちらの審議会の委員としても一言と委員長、おっしゃいましたので、申します。
26ページにあります、最後のところの「基礎研究のための投資の抜本的拡充、財源の多様化」という、この「投資」という言葉。また、先ほどの意見のところの64ページでしたか、国を挙げて、科学は投資されるべき分野であるということを社会全体に向けて改めて強く発信し、理解を得るということ。まさに日本の国として、基礎科学、科学に投資をしていくというふうな立ち位置なのかなと思っております。
このときに「投資」をする以上、ステークホルダーとしては、「配当金」は幾らなんだとか、「利率」は幾らなんだということが気にかかると思うんです。その観点で申しますと、3つあると思います。
一つは、今までもたくさん議論がありましたように、人材育成であるとか、キャリアアップであるとか、交流であるとか、そういう人材に関する機会やスキルや知識などをアップして、各企業や省庁などの科学力を上げていくということかなと思います。そういう意味では、学位を取った人たちがより企業、省庁に入っていくといいと思いますし、そういう方たちがまた大学で基礎研究にいそしんで、その成果を持ち帰るというようなことができるといいのかなと思いました。
もう一つは、科学的な活動、研究活動は経済活動でもありますので、例えば産業においても、基礎科学、科学研究に関わる基盤の設計とか建築・構築であるとか、データの分析とかというような、研究に関連する産業分野が活性化してくるということが必要かなと思います。
それだけではなくて、私たち国民ということで考えますと、いわゆる基礎科学とはちょっと違う分野で、例えばエッセンシャルワークに従事しておられる方とか、例えば介護とか、育児とかというところでも疲れ果てている国民はいっぱいいるわけです。そのときに、本当に国民の収入が増えて、そして余暇が増えるとか生活がよりよくなるというような、そういう「配当金」というのがあるような基礎科学の構築というのが必要なのかなと思います。いろいろな機会でこういった人々が参画して、いろんな観点で科学研究に携われるような、そういう構造がつくられるといいなと思ったところです。「配当金」とか「利率」はどういうふうに考えるか、ということを検討していく必要があると思いました。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、鷹野委員、お願いいたします。
【鷹野委員】 多くの議論を重ね、その積み重ねの上に提言をまとめていただきありがとうございました。私からは、各論的なことで恐縮ですが、2点ほど申し上げたいと思います。
1点目は人材育成の点です。私、高校生のサイエンスのコンテストに審査員として10年以上関わっております。この二、三年、特に変化が大きいと感じたことがございます。それは高校生の個人研究、あるいは少人数のグループの研究活動がとても活発で、極めて高度になっているということです。特に高校生が大学の教員から直接かつ継続的に指導を受ける機会を持つことができる、そういった仕組みも最近はあるということを知りました。
その発表は卒業研究の発表も超えたような修士学生の研究レベルに達するようなものもあると感じたところです。こういった支援、文科省なりJSPSの支援だと思うんですけれども、これをさらに効果的に展開するとすれば、高校生同士の交流、それから、大学生や大学院生も交えたような年齢を超えた交流、そういったものを盛んにすると、持続的な研究者の育成につながっていくのではないかということを感じております。
それから2つ目ですけれども、資料の27ページに書かれております、高度専門スタッフの充実ということに関してです。日本ではまだまだ十分ではないと感じておりまして、重要な視点だと思います。既に研究者の処遇改善の御指摘があったところですけれども、この高度専門スタッフの処遇についても重要ではないかと。
高度専門スタッフの拡充をするに当たっては、処遇についても配慮が必須であると考えておりますので、その点もぜひ御検討いただければと思います。
以上でございます。
【大野会長】 どうもありがとうございます。それでは、続きまして、岡本委員、お願いいたします。
【岡本委員】 東京藝術大学の岡本でございます。私の選考はアニメーション専攻及びゲーム専攻というものを担当しているんですけれども、今、漫画、アニメ、ゲームに関しましては、国の中で基幹産業という位置づけをいただき、海外売上げに関しましては、鉄鋼業や半導体産業にも匹敵するというふうに言われておりまして、これを将来さらに国の基幹産業とすべく、先日、高市内閣の17の戦略分野にも挙げられた分野であります。
心理的な意味でも売上げ的な意味でも非常に国際的プレゼンスが高く、アニメ、ゲームを目的に日本に来日するインバウンドの観光客の皆さんも増えている分野であります。
一方で、この分野を日本で勉強したいという海外からの学生も増えておりまして、私のゼミなどには、ルーマニアの工学部からプログラミングを学んできたという学生もいまして、非常にコンテンツ分野に関しては、海外からの注目も高いと。
また、この分野、非常に慢性的な人手不足にも直面しておりまして、今や、AIの力を借りたり、また、そもそもの成り立ちがプログラミングゲームとかはそうですけれども、プログラミングを基本とした表現ということにもなってきたりしております。今や、アニメ、ゲームなど、この映像分野と言われる、コンテンツ分野と言われるものは、表現とテクノロジーが融合した、いわゆる融合分野としてすごく重要なものではないかというふうに考えるわけです。
皆様の議論をされているAIに関してもなんですけれども、AIに関してこの日本のアニメの人材不足を担う重要な研究が必要だと考えてはいるんですが、今の日本の現状を見ると、民間のベンチャーなどに頼っていまして、どうしても1台かかるPCは大変高価なものであったり、サーバーが、膨大な容量のサーバーが必要であったりしまして、万年資金不足とパワー不足に悩んでいる状態です。
一方で、アメリカや中国に関しましては、特にこの分野、画像生成系が画像及び映像生成系が必要なんですけれども、そこに大規模な投資をして取り組んでいるので、この一ベンチャーでやっている日本と国力の差は非常に明確であります。最近、OpenAIなどでSoraなども話題を呼んでおりますけれども、それを活用しようとすると著作権の問題があったり、読み込んでいる画像、映像に関しては圧倒的に欧米の映像が多いので、日本のコンテンツ産業が望むものが出てこなかったりというような問題も抱えています。
そこで、ぜひそれに関連しまして、やっぱり日本のコンテンツ産業に資するAIの基盤の活用というものがすごく重要になってきておりまして、先ほど木部先生のほうから、人文科学及び芸術の基盤という話がありましたけど、まさにそこの分野がこの基幹産業となるべく発展のためには非常に喫緊の課題として要求、望まれているというところです。
科学の再興という話がございまして、新たな研究分野というところのお話がありました。ぜひ、このコンテンツ分野というものを新しい研究分野の中にも加えていただきまして、この映像分野、コンテンツ分野及びその基盤に関しては、日本の研究が世界で最も進んでいると。その最終的な出口としては、アニメ、ゲーム産業のさらなる発展というものがあり得るというようなところをぜひ進めていただきたく、AI for Science、AIの中に入ると思うんですが、AI for contentsということも進めていただければと考える次第です。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、会場に戻りまして、宮澤委員、そして寺井委員、御発言いただければと思います。
【宮澤委員】 宮澤でございます。科学の再興という目標の実現に当たりまして、28ページに書かれております具体的取組というのが重要であると考えております。ここには幾つかございますけれども、(1)新たな研究領域の継続的な創造についてのみ要点を絞って私の見解を申し上げます。
まず、評価すべき点として、ふだん基礎研究というのは結構マイルストーンの設定が難しい分野でございますけども、そういった特性を踏まえた上で、研究資金の拡充を掲げている点につきましては、一時のはやりとか、短期的な成果のみに左右されない自由な発想に基づく研究を支援できるものであると評価できると思っております。
ただ一方で懸念もございまして、具体的な取組として挙げておられている1番、科学研究費助成事業と創発的研究支援事業等による若手・新領域支援の一体的改革というものがございますけども、これだけで未来を担う研究者全体に、その支援が十分に行き届くかどうかという点が懸念として挙げられます。
この広い裾野の研究分野をサポートしていくという点につきまして、引き続き、さらなる施策や仕組み等を検討していただきたいと考えております。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございましたそれでは、寺井委員、お願いします。
【寺井委員】 ありがとうございます。私は、この科学の再興に向けていわゆる技術者の位置づけとか役割、これについて少しコメントさせていただきたいと思います。
23ページのノーベル賞の事例を載せていただいております。ここにちょっともう古いですけど、青色発光ダイオードの話がございます。まさにこのプロジェクトというのは研究者の基礎科学力と、技術者の社会実装する力、それともちろん産学官が緊密に連携したと思うんですけど、こういう三位一体のモデルケースだったと思うんです。こうした成功事例というのをやはり少しひもといて学ぶところがあるんじゃないかなというのを最初に感じました。
それから同じページの、科学の重要性の今日的な意味合いということで、「先端科学の成果が社会を変えるほどのインパクト」という文脈がございます。この社会を変えるほどのインパクトとなるからこそ重視しなければならないことがありまして、これは技術者だけじゃなくて研究者もそうだと思う。研究者、技術者の社会的責任の自覚というところです。倫理とか安全性とか、あるいは透明性とか説明責任、そのためにやはり科学技術の社会的な受容性とか、法制度との整合性、これはやはりちゃんと確保していかなければいけない。そういう意味で、やはり人文社会科学との対話というか、こういうのをやはり一つは視点として持っておく必要があるのではないかなと思います。
同じ文脈で、「同時に社会実装までの期間が短縮化」するというコメントがございます。まさに基礎研究から応用、実用化までの橋渡しというところが大変重要になってくる。そういう意味での産官学連携ということになると思うんですが、これについては、確かに24ページの御説明にもありましたが、米印で書いていただいています。この米印で終わらせていいのかなと。ここに書かれているように、新たな「知」をイノベーションにつなげるイノベーション・エコシステムです。これはどんなものかということをやはり議論していかないとなかなか難しいのではないかと思います。
それからもちろん技術者には、技術の進化スピードがどんどん上がってくるといったことも併せて、技術者自身もプロジェクト管理とか、あるいは試作とか検証を繰り返して成功していくと、アジャイル型の開発能力、これもやはり求められると思います。
そもそも日本の社会では技術者のイメージというのが非常に曖昧です。どのような科学の再興に向けて、どのような資質を技術者に求めるのかという視点が大変重要になってくると思います。先端科学研究から社会実装を担うというのを技術者に期待するのであれば、そういった技術者像を明確にした上で、そういった人材をどうやって育成していくのか。
そういうことも考えていく必要、これはネクストだと思いますけども、そういうふうに感じた次第でございます。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは委員、明和委員、深見委員、最後に会長代理の上田委員に御発言をいただきたいと思います。それでは、菅野委員、お願いいたします。
【菅野委員】 手短に3点述べさせていただきます。
まず、最初は、人材に関してです。26ページの(3)番に関することですが、ドクターの人材が少ないという指摘がこの文書にありましたけれども、短期的にはもう社会人ドクターを増やすしかないと考えます。今現在、ドクターに進学する人たちが少ない、ドクター過ぎても、アカデミアに残る人たちが少ないという課題がありますが、今現在、日本の慣習として終身雇用が企業で行われて崩れてはいるものの、パーマネントのポストが早い段階で供給されています。それに対して、大学の人事は、アカデミアが目指した人事体系、競争を若いうちに競争してパーマネントのポストを勝ち取るという、アカデミアの人事体系が進んでいます。
そのギャップが今極めて大きいので、そのギャップの下で、若い人が大変苦労している、しわ寄せを受けているという状況があります。これを何とかする必要があるというのが1点、人材に関してです。
2点目、AI for Scienceですけれども、これはサイエンティストにとってのAIであるということを少し考える必要があります。そういう議論もあったと聞いております。前回も指摘しましたが、AIで何をするかを決めて、自動・自律実験を経てデータを蓄積し、そのデータからAIによって次の実験を決める。粗筋としては、きれいですけれども、そこに人が関与する必要があるということです。他の国では膨大な資金、それから人材、人数で今、研究技術開発が進んでいます。それに対応、対抗するというのが喫緊の課題だと思いますけれども、そういう大量の資金、人材、人がいる場合には、考える人も非常に多いということで、考える人の数を効率よく日本では増やす必要があります。そこにAIが必要であるということです。AI for Science、人のためのAIであるということをマテリアルサイエンスの立場から主張したいと思います。
3番目。強い分野が勝ち続けるにはどうするか。この提言案にも0から1、1から10、10から100という記述がありますけれども、100になった分野を100のまま勝ち続けることができるかということが大変重要であると考えます。特に100になった後、ああ、よかったねというので、あとは落ちていく一方というのがこれまでのパターンで、100になった後、勝ち続けるというのがこれは産業の役割であるというような発想の下で、これまでいろんな施策が行われてきたと考えています。
その100を維持するには、新たにそこに0から1、1から10、10から100を導入し続けなければならないというように考えます。そのことによって、多分、サイエンスの分野では、早くて5年10年の単位で効果があると考えています。そこには産業とアカデミアの人事交流も必要で、その場合、課題となるのが大学の人事の問題です。これは先ほど言いましたように、サイエンス分野で厳しい競争を勝ち抜いた人が、ポストを得るというシステムになって、これでは、人事交流というのはまず無理ではないかとも考えます。
以上、3点です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、明和委員をお願いいたします。
【明和委員】 明和でございます。科学の再興に向けて拝読させていただきました。本当にこうしたことが実現されて、次世代の国民が本当に日本に愛着を持って、日本人でよかったと思えるような、そうした国になっていったらなと思いました。
私は、脳科学、生物学を専攻としておりますので、この観点から端的3点申し上げたいと思います。
まず、1つ目が、不確実な未来に向けた、こうした時代の中で、どのように日本の立ち位置しての科学の強みを出していくかという点についてなんですけれども、私自身は、日本という国は、いわゆる欧米系のようにパワーで何か科学を押していくという戦略はなかなか厳しいのかなと思っております。むしろ脳科学的に感じるところといたしましては、日本人が非常に得意とする感性、心の部分、自然観とでも申しましょうか、この部分をもう少し戦略的に強化していくことによって、欧米系の人たちがなかなか発想として出てこない科学というものを創出していくということが、一つポテンシャルがあるのかなと思っております。
その一つの例が、例えば、皆様御存じのジェフリー・ヒントンさんというAIのゴッドファーザーと言われている方ですけれども、彼が最近唱えた説では、今汎用AIというものが非常に進んできていて、こうした時代を迎えたからこそ、人類の持続的な発展においては、お母さんAIというものを設計していくことが大事だと提案されました。
こうした発言を聞いて私なんかは非常に腑に落ちるわけです。AIを非常に高精度なものとしてつくるというふうな研究者は、世の中にたくさんいらっしゃると思うんですけれども、これは人類のためにどう活用していくか、設計していくかというところで、お母さんAIをつくる必要があると。一見何を言っているんだと思われることが多いかもしれませんけれども、やっぱり生物としての人というものを考えたときには、かなり重要な側面です。
こうした感性は、日本人はかなり得意としています。その証左がやはりノーベル賞、あるいはイグノーベル賞もそうですけれども、こうした受賞者がやっぱり日本という国から非常に多く選ばれているということがあると思います。
それから2つ目ですけれども、新たな研究領域への挑戦への抜本的な拡充について、私自身が大変気をつけているのは、これはやっぱり日本人特有の風土あるいは文化的なプレッシャーの中で、脳がそのような認知的な癖を持つようになっているんですけれども、やっぱり日本人というのはコロナのときにも明確に示されたように、非常に空気を読むのが得意である。そうした特性を持っているがゆえに、特に若い世代の方々は、なかなか一見ばかばかしいことに感じるような、そうしたアイデアを発言することをちゅうちょしてしまうということが結構ございます。そうしたところに私たち教員をやっている者としては、いち早くそれはばかばかしいことではなく、語ってみること、考えてみることがとっても大事なんだよという、そうした態度で、若い人材をどう育成していくかということが極めて大事だと思います。私たち自身のマインドをリセットしていくということから始めないといけないと感じています。
つまり、人材というのは、人材育成というのは、リソースをリソースとしてみなしていくというよりも、やっぱり一人一人に対して時間をかけて丁寧に大切に育てていくプロセスそのものが、やっぱり日本人が得意とする感性を強化するプロセスだと考えます。
そして3点目、これはぜひお願いしたいんですけれども、やはりジェフリー・ヒントンさん、先ほど例に申し上げたように、やっぱりこうした発想が出てくるというのは、日本人が得意とする自然観、そこにやっぱり文系理系という発想を超えた人間感というものがあります。ですので、ぜひ今後科学がやっぱり産業界へとしっかりと結びついて、日本人の強みをしっかりと出していけるような土台をつくる上では、やはり産業界でも、人文社会科学の高度な人材をぜひ積極的に雇用いただく、これを加速して進めていただくということは必須であろうと思います。
以上です。ありがとうございます。
【大野会長】 どうもありがとうございました。深見委員お願いいたします。
【深見委員】 ありがとうございます。深見でございます。今までの委員の先生方の御意見をいただきまして、参考になりました。
これまでのお話の中で特に今後データ活用、あるいはAIの活用が極めて重要になってくるというのはそのとおりだと思います。分子生物学の研究が今、大きく変わっておりますので、今後日本がリードしていくという点で非常に重要だと思います。
また特に医学や分子生物学では、生命倫理が重要になってきますので、研究の内容だけではなくて、倫理の面においても、日本が世界をリードしていくような立場を取っていけるとすばらしいのではないかと思います。
一方、医学という面になりますと、最近医学部の学生さんや若い先生方が、リサーチよりも医療のほうに足を向けるということが多くなり、留学をされる方々、若手医師もかなり減ってきていると聞いておりますので、学部学生のうちからリサーチマインドを持った医学者の育成が、大学の役割として重要になってくるのではないかと思います。
医療機関が研究に向ける余力がなくなってきておりますので、支援があると医学研究の推進に役立つのではないかと考えます。
以上になります。
【大野会長】 どうもありがとうございます。それでは、上田輝久会長代理から御発言をいただければと思います。
【上田(輝)会長代理】 島津製作所の上田です。資料の全体の通し番号の28ページですが、このスライドは今回の提言の中で全体のまとめとして非常に重要だと思います。28ページについて3点述べさせていただきます。
まず、1点目は(2)の国際ネットワークへの参画の箇所についてですが、これは国際ネットワークへの参画だけではなく、日本がリーダーシップを取って、新たな国際ネットワークを生み出すというような、日本の主体性を示す表現があったほうがよいと思います。そういう意味では新規ネットワークの創生とか、そういう言葉を入れると、日本が諸外国のネットワークに参画するということだけではなく、日本が自らリーダーシップを取って、新たな国際ネットワークをつくっていくという姿勢が明確になるので、そういう表現を入れるというのが一つ目の提案です。
2つ目は、(3)の「優れた科学技術人材の継続的な輩出」という箇所が、優れた人材というのは、世界が複雑化、多様化する中で、これまでのような一般的な表現で終わるというのは少し違和感があります。例えば「優れた技術人材の継続的な輩出と総合知の活用」というような形で、自然科学だけではなく、人文社会系との融合による新しい時代の人材育成を行っていくというような意思を示すほうがよいと思います。これは過去の歴史を見ますと、科学技術の発展によって、原爆や公害などネガティブな側面があったことも事実ですので、科学を正しく活用するという意味を強調する意味でも、また、自然科学だけではなく、人文社会系との融合による新しい時代の人材育成を行っていくという意思を示す意味でも、「優れた技術人材の継続的な配置と総合知の活用」というような、自然科学と人文社会系との融合を示すような表現が非常に重要になると思います。
最後に(4)-1のAI for Scienceについて、「AI人材の育成確保」というのが4の箇所に書いてありますが、この箇所は「AIを活用した新時代の人材育成」というような形で、AIを活用した人材育成を含めるほうがよいと思います。人材育成にAIを活用するということは、大学だけではなく、産業界でも今後の重要テーマになっています。複雑化して、多様化している現在の知識体系をいち早く習得していくことが、新たな研究領域への挑戦という意味でも非常に重要な取組になると思います。
そういう意味でも「AIを活用した新時代の人材育成」という表現も、この中に含めるほうがよいと思います。
以上3点です。よろしくお願いします。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、私も最後に発言させていただきます。
1点目はデータの話ですけれども、これは途中で発言させていただきましたが、データそのものに価値がある。したがって、様々なプロジェクトで取ったデータが分散して保管されていて、その連結ができないということは非常に大きな損害だと思っていますので、それを第7期ではきちんとやっていくべきだと思います。
2番目に、法人として大学法人、あるいはそれに類する法人の役割が極めて重要になっていると思います。これをやらなければいけないということが幾つも出てくるわけですけれども、これを研究者がやっていると全然研究ができないあるいは教育ができないという仕組みになってしまいますので、そこは大学法人がいかにガバナンスという言い方をすると、大学の構成員の方々はぎょっとして距離を置きたがる向きがあると思いますけれども、研究者が研究と教育ができる環境をつくるのは法人の役割なので、これまでそれができてこなかったというのは法人が貧乏だったという面もありますし、そういう仕組みになっていなかったということもありますので、第7期に関しては、これからに関しては研究者が成果を出す環境をつくるのは、法人が担当するんだということを明確にするべきだと思っています。
私からは以上でございます。これで全員の皆様に御発言いただいたと思います。
今日科学技術・学術審議会で出された御意見も踏まえて、文部科学省においては第7期基本計画に向けた具体的な対応策をまとめていただきたいと思います。
それでは、閉会に当たりまして、清水政務官が御出席いただいていますので、御挨拶を賜りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【清水大臣政務官】 文部科学大臣政務官に就任をいたしました清水真人でございます。総会の閉会に当たり一言、御挨拶を申し上げたいと思います。
本来であれば、冒頭から参加をさせていただきまして、先生方の御意見を聞かせていただければと思っておりましたけれども、業務が重なりまして、参加が遅れましたことをまずもって心からおわびを申し上げたいと思います。
また、先生方におかれましては、大変お忙しい中にもかかわらず、御参加をいただき、精力的な議論をしていただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。
本日御議論いただいた「科学の再興」は、高市内閣において示された「新技術立国」の基盤となる大変重要なものであります。いただきました御意見は、提言の取りまとめに向けて、今後の議論に活用をさせていただくとともに、取りまとめた提言は、関係府省と連携をしまして、議論を進め、第7期の基本計画に反映したいと考えております。
今後とも科学技術・学術の推進に向けて、御支援、御協力賜りますようお願いを申し上げ、挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、最後に事務局から連絡事項をお願いします。
【伊藤科学技術・学術戦略官】 本日の議事録は後日事務局よりメールで送付いたしますので、御確認いただくようお願い申し上げます。御確認いただいたものを文科省のホームページに後ほど掲載しますので、御承知おきください。
また、本日の会議資料は郵送の希望がございましたら机上に残していただければ、事務局のほうで手配いたします。また、次回開催につきましては、追って御連絡させていただきます。 それから、国際卓越研究大学について少し御報告申し上げます。現在、第2期公募について審査中でございます。こちらにつきましては、国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律に基づく認定及びその体制強化計画の認可に対する意見聴取について、本審議会(総会)から大学研究力強化部会に付託しているところでございまして、今後法律に基づく意見聴取があれば、大学研究力強化部会のほうで審議する予定です。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、これで科学技術・学術審議会第78回総会を終了いたします。皆様、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。オンラインの方々もありがとうございます。それでは、これで失礼いたします。ありがとうございました。
科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(制度改革・調査担当)付
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