令和7年1月29日(水曜日)13時00分~15時00分
文部科学省旧庁舎6階第2講堂及びWeb会議
大野会長、上田会長代理、相澤委員、網塚委員、五十嵐委員、勝委員、金井委員、狩野委員、菅野委員、久世委員、栗原委員、佐伯委員、鷹野委員、高橋委員、田中委員、寺井委員、仲委員、日野委員、観山委員、村山委員、門間委員
増子文部科学審議官、金光大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官、井上科学技術・学術政策局長、髙谷大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、先﨑科学技術・学術総括官、藤原研究開発戦略課長、奥人材政策課長、伊藤科学技術・学術戦略官(制度改革・調査担当)、千原科学技術・学術政策研究所所長、塩見研究振興局長、生田振興企画課長、助川学術企画室長、柳澤大学研究基盤整備課長、小川大学研究力強化室長、堀内研究開発局長、ほか関係官
【大野会長】 それでは、全員がおそろいということでございますので、ただいまから科学技術・学術審議会総会第75回を開催いたします。御多忙中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
それでは、まず議事に入る前に、事務局から説明をお願いいたします。
【伊藤科学技術・学術戦略官】 事務局でございます。本日の総会は、科学技術・学術審議会令第8条第1項に定める定足数の過半数を満たすことを御報告いたします。
次に、本日のハイブリッド形式による会議の開催に当たりまして、委員の先生方にお願いがございます。まず、会場にお越しの先生方におかれましては、御発言の際、挙手をお願いいたします。職員がマイクをお持ちしますので、必ずマイクを通して御発言いただくようお願い申し上げます。それから、オンラインで御出席の委員の先生方におかれましては、御発言の際に手のマークの挙手ボタンを押すようお願いします。御発言後は再度、挙手ボタンを押して、挙手を取り消すようお願いします。また、御発言以外はミュートにしていただき、御発言時のみ、ミュート解除を御選択いただくようお願いします。
以後は共通になりますけれども、会場とオンライン上でも聞き取りやすいように、御発言の都度、お名前をおっしゃっていただくようお願いします。
また、御発言の際、資料参照する際でございますけれども、資料番号またはページ番号、ページ内の該当箇所などを分かりやすくお示しいただくよう御配慮願います。
本日の資料につきましては、配付資料一覧に記載のとおりでございます。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、議事を始めさせていただきます。
まずは本日の進め方でございますが、初めに議題1及び2についてそれぞれ報告をいただきます。その後、それぞれの報告に基づいて60分程度意見交換を行いたいと思います。
それではまず、議題の1番、「分科会等からの取組報告について」です。本日は、今期、第12期の最後の総会ですので、各分科会等から2分程度で今期の取組の報告をお願いします。なお、委員会等での検討結果を報告される人材委員会については、今期の取組の報告と合わせて7分でお願いします。また、学術分科会からは、次期科学技術・イノベーション基本計画について検討いたしましたので、その報告と合わせて7分とさせていただきます。
それでは、初めに、研究計画・評価分科会の分科会長である観山委員から報告をお願いいたします。
【観山委員】 よろしくお願いいたします。第12期の活動実績は以下のとおりでございます。
分科会下の委員会等と連携を取り、前期に策定した分野別研究開発プランを適宜更新、計15回するとともに、委員会が担当する各分野において重点的、戦略的に推進すべき研究開発の取組や、推進方策の見直しを行いました。上記プラン等に位置付けられた研究開発課題について、今期は事前評価を10件、中間評価を21件、事後評価3件、計34件を実施いたしました。併せて分科会の下にある、委員会の所掌に属さない研究開発課題の評価について見直しを行い、円滑に課題評価できるように改定を行いました。
なお、計画等の審議や評価を行うに当たって、総合知の創出、活用に向けた取組の観点に留意されるよう評価様式に明示して進めました。
研究開発プログラム評価については、前期の試行的取組等を基に評価の実施時期、分量等が改めて課題となり、科学技術・イノベーション基本計画の見直し内容等も踏まえて、次期以降も引き続き整理、議論することとなりました。
以上でございます。
【大野会長】 ありがとうございます。それでは、続きまして、資源調査分科会の分科会長である門間委員から報告をお願いいたします。
【門間委員】 門間です。よろしくお願いいたします。
資源調査分科会では、2020年に発表しました八訂のデータにつきまして、一部を更新・追記した「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」を令和5年4月に公表しました。日本食品標準成分表の充実・利活用を含めた在り方につきまして、食品成分委員会を設置し、今後の方針として、現状の流通実態に即した食品成分表となるよう、収載食品の再分析を重点的に実施すること。また、これまでに実施している主要な食品の未収載成分(AOAC.2011.25法)による食物繊維の分析、アミノ酸組成、脂肪酸組成、利用可能炭水化物組成等の分析、分析結果に基づく成分値の検討を行い、収載値案の確定が終了した段階で食品成分表を取りまとめ、公表することなどを整理しました。
次期食品データベースに関しまして、分析データの受入れから収載値案の検討、データ提供の一貫体制を念頭に置いた調査を行いました。
以上です。
【大野会長】 ありがとうございました。それでは次に、海洋開発分科会の分科会長代理である日野委員から御報告お願いします。
【日野委員】 海洋開発分科会分科会長代理の日野でございます。配布資料に基づき御説明申し上げます。
第12期の海洋開発分科会の活動実績といたしましては、新たに深海探査システム委員会を設置し、松本主査の下で5回の検討を行い、令和6年8月に本分科会として、「今後の深海探査システムの在り方について(提言)」を取りまとめました。
本提言では、今後、我が国の深海探査において必要となる能力をまとめるとともに、今後の深海における探査機の在り方や、探査機を探査地点まで送り届けるための母船を含めた深海探査システムの在り方について提言を行ったところです。
また、これはちょっと資料の下の枠と関連します。文部科学省として推進する海洋科学技術等に関する研究開発課題について、令和6年3月に、海洋情報把握技術開発の事後評価を行いました。事後評価については、海洋情報を効率的かつ高精度に把握するための観測計測技術の開発が行われ、それらの技術がベンチャー企業や民間企業へ技術移転されるなど、波及効果の大きな技術開発が行われたことなどを評価いたしました。
さらに、令和6年8月に北極域研究強化プロジェクトの事前評価を行いました。気候変動などの地球規模課題や、北極域の変動が我が国を含む人間社会に与える影響等の解明を行うため、引き続き北極域のデータ観測や、研究、人材育成を行っていくことが重要であるとの評価を行い、現在本件に関する公募を行っているという段階でございます。
海洋開発分科会からの報告は以上となります。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、測地学分科会の分科会長としての日野委員から御報告をお願いいたします。
【日野委員】 改めまして、今度は測地学分科会のほうから、日野が御報告させていただきます。測地学分科会につきましては、地震・火山災害に対するレジリエントで安全・安心な社会の構築を目指す取組を幾つか実施してまいりました。
まず、例年のこととなりますが、災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)に基づき、成果の取りまとめ等を含めて、計画の推進、進捗の管理を行ってまいりました。
なお、第2次観測研究計画は令和5年度で最終年度を迎えたことから、新たに災害の軽減に向けた基礎的研究を一層推進するとともに、分野横断で取り組む総合的研究などにおいて、理学、工学、人文学、社会科学の連携強化を通じた総合知による成果の創出を目指すため、令和5年12月22日に、災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第3次)の推進について、ここでも議論いただきましたが、建議し、本年度から開始をしております。
また、本分科会に設定しております火山研究推進委員会につきましては、火山観測データの一元的流通の促進、技術開発、人材育成等を議論するために設置しておりましたが、新たに令和6年4月1日付で文部科学省内に火山に関する観測予測対策の一体的な推進及び火山研究人材の育成などを議論する火山調査研究推進本部が設置されたことにより、その役割を終えたことから、今期をもって終了する予定です。
以上となります。
【大野会長】 ありがとうございます。それでは、続きまして、技術士分科会の分科会長代理である寺井委員から報告をお願いいたします。
【寺井委員】 技術士分科会の分科会長代理を仰せつかって寺井でございます。本日は佐藤分科会長は所用にて欠席されておりますので、私のほうから報告させていただきます。
第12期におきましては、過去の分科会で重要な視点とされてまいりました技術士資格の国際的な実質的同等性、これを念頭に置きながら、ここに掲げております7点の検討を進めてまいってございます。特に今回2点ほど補足説明させていただきますが、まず、1点目のIPD制度の整備・充実でございます。
IPDとは、Initial Professional Developmentの略でございまして、若い技術者、若手技術者が、プロフェッショナルエンジニアになるまでの研さんの過程をサポートする仕組み、これを構築しようとするものでございます。
第9期からの継続的検討課題でございますけども、今期は海外事例調査とか企業や技術士にヒアリングを実施しまして、我が国におけるIPDシステムの社会実装に向けた方向性をアウトプットとして取りまとめてございます。
もう1点、4番目にあります継続研さんの充実・強化でございます。技術士のCPD活動の実績の管理、そして、それを活用可能とする公的な仕組みが2021年度よりスタートしております。
日本技術士会がその事務を担っているところでございますけども、この仕組みは全ての技術士を対象とするものでありまして、残念ながら、直近の登録数はまだ4,000名に満たないと聞いております。技術士会の会員だけでも2万名おりますので、まだまだ取組を強化する必要があると思っております。
それからIPDとCPD、これやはり統合的に運用すべきだろうというような議論もありまして、資格の活用の促進と併せて継続的な課題としていくものであります。
以上でございます。
【大野会長】 ありがとうございました。次に、基礎研究振興部会の部会長である観山委員から御報告をお願いいたします。
【観山委員】 第12期の基礎研究振興部会では、我が国の基礎研究のさらなる振興のため、社会的価値にも注目しながら、以下の具体的な観点から基礎研究の振興について検討を行いました。
第6期科学技術・イノベーション基本計画期間における取組状況も踏まえて、第7期科学技術・イノベーション基本計画の検討に向けて、基礎研究の在り方、社会的意義・価値化について議論いたしました。世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)については、持続的な成長・発展に向けた今後の取組の方向性について議論いたしました。2030年に向けた数理科学の展開について、学問の体系的な進展と新たな価値を創造していくことが重要であることから、異分野や社会との連携、人材育成等の重要課題について議論いたしました。研究DXの推進については、新たな価値創造を目指し、デジタル技術とデータ活用によって研究活動を変革していくための必要な取組、生成AIやAIロボット研究について議論いたしました。
以上でございます。
【大野会長】 ありがとうございます。次に、研究開発基盤部会の部会長である網塚委員から御報告をお願いします。
【網塚委員】 よろしくお願いいたします。研究開発基盤部会では、今期、これまでに11回会合を開催いたしまして、以下の4つの主要テーマについて議論を進めてきました。大学等における戦略的な研究設備・機器の整備と共用化の推進方策、国内有数の先端研究設備・機器の利用環境の整備方法、研究設備・機器の共用を支える人材の活用方法、そして、新たなイノベーション創出を支える基盤技術開発の強化であります。
具体的には文部科学省が進めております「先端研究基盤共用促進事業」、通称コアファシリティ構築支援事業と言いますが、これの令和3年度採択期間に対する中間評価や、令和2年度採択機関の活動状況を確認しました。これによって共用化の進捗状況、先進的な取組事例を把握いたしました。
さらに研究設備・機器の共用化を促進するためのガイドラインの浸透状況の確認を通じて、研究設備・機器の共用と高度化・開発の観点から、現状と課題、今後の方策について総合的に議論しました。これらを踏まえて、昨年7月24日に先端研究設備・機器の共用推進に係る論点整理を取りまとめました。
現在、この論点整理に基づいて研究基盤エコシステムの形成、それから機関間のネットワークの構築、また、全国の共用システムの見える化など、論点整理に基づいて提言しました目指すべき方向性、これを具体化するために必要な取組について詰めの議論を行っております。最終的な全体の取りまとめを現在行っている状況です。
以上となります。
【大野会長】 ありがとうございました。次に、産業連携・地域振興部会の部会長である久世委員から報告をお願いいたします。
【久世委員】 それでは、産業連携・地域振興部会の活動状況について御報告させていただきます。
ここに3点ありますように、まず、第6期の科学技術・イノベーション基本計画などを踏まえて、文部科学省として行うべき研究開発成果の普及・活用の促進をはじめとする産学官連携の推進をいかに強化していくか。また、地域が行う科学技術の振興、これに対しても、どういう形で支援していくかの重要事項について活発な議論をしてまいりました。
2つ目の項目は、スタートアップの支援と育成をいかに強力に加速していくか。また、数だけではなくて、サイズを大きくしていくといった議論もありました。エコシステム拠点都市では、集中的に起業支援活動、それから、アントレプレナーシップ教育などを行っています。さらには、大学発のスタートアップの創出支援、それから、次世代型のオープンイノベーションモデルなどを通して、スタートアップの創業後、いかに継続的に成長を支援していくか。さらにはアントレプレナーシップの教育などの取組の推進方策について議論を重ねてまいりました。
3つ目の項目です。地域の中核・特色ある研究大学の振興に対する政府での検討状況などを踏まえつつ、大学などを中核として、地域の未来を担う若手の研究者の挑戦的・革新的な研究成果をいかに社会実装につなげるか、そのための産学官共創拠点の形成、その推進方法などについて議論、検討を行ってまいりました。
こういった産業連携・地域振興を実施するに当たって、大企業も中小も含めて、産業界の立ち位置を明確にするほか、より突っ込んだ取組が必要だという議論もありました。さらには、産業連携や地域振興を加速、推進できる人材の議論がありました。これには単純な教育だけでは育成が難しいのではないかという意見もありました。大きな構想やビジョンを持って、強力にリーダーシップを発揮し、関係するメンバーや組織をつなぐことができる人材が重要になります。これらを担える強力な人材の育成が、日本にとって、また、産業連携・地域振興にとって、非常に重要なテーマであるとの認識の上、活発な議論をさせていただきました。
以上です。
【大野会長】 ありがとうございます。それでは、続いて生命倫理・安全部会の部会長代理である金井委員から御報告をお願いいたします。
【金井委員】 生命倫理・安全部会の第12期の活動につきまして、小川部会長の代理で金井より御報告申し上げます。
まず、1点目です。令和4年2月に総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)において、(1)ゲノム編集技術等を用いた遺伝性・先天性疾患に関する基礎的研究及び(2)核置換技術を用いたミトコンドリア病に関する基礎的研究につきまして、これまで認められていた、提供を受けた受精胚の活用だけではなくて、研究のために新たに受精させた胚の活用が容認されました。これを踏まえまして関係指針等の見直しについて審議を行い、改正案について了承いたしました。
2点目でございます。中段になります。遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律に基づく、研究開発等において遺伝子組換え生物等の使用等する際の拡散防止措置について、申請する制度がございます。
1、人の生命もしくは身体の保護のため、または非常災害に対する措置のための使用等について。大臣確認を適用除外とすることができる場合の要件を具体化しました。及び 2、同法施行から20年の実績を踏まえまして、大臣確認を必要とする遺伝子組換え生物等の範囲の見直しの検討を行いました。関連する省令告示案について審議を行い、順次承認しております。
最後3点目になります。ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用や適正な取扱いのための規制の在り方につきまして、関係省庁とともに検討を行いました。
以上となります。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは次に、国際戦略委員会の主査である、菅野委員からの御報告をお願いします。
【菅野委員】 それでは、第12期国際戦略委員会の活動実績について、説明させていただきます。第7期科学技術・イノベーション基本計画に向けた検討を見据えて、これまでの科学技術の国際展開に関する戦略等を踏まえた文部科学省における取組状況等を確認するとともに、現行基本計画策定時からの変化を踏まえた今後の国際戦略について、審議いたしました。合計5回の審議を経て、令和6年8月に中間取りまとめ、12月に科学技術・イノベーションにおける国際戦略を策定しました。
本戦略では、開かれた研究の中で国際的に連携しながら、自由な発想に基づく研究を通じて科学が発展することは、国際的な共通認識であることを改めて確認するとともに、グローバルに優秀な人材を引きつけ、国際連携協力を強化し、研究力、競争力を高めていくためにボトムアップとトップダウンの特性を生かし、両輪で国際連携を進めることなどを盛り込んでいます。
加えてこのような国際連携のためには、その基盤としてやはり学問の自由、独立性、開放性、相互主義、互恵性、透明性といった、共通の価値観に基づく開かれた研究環境を守っていくことが必要です。このため、我が国における今後の研究インテグリティ及び研究セキュリティの確保に関する基本的な考え方を確認いたしました。
以上が第12期国際戦略委員会の主な活動実績です。
【大野会長】 ありがとうございました。それでは、続きまして、情報委員会の主査である相澤委員から報告をお願いいたします。
【相澤委員】 情報委員会からの活動状況報告です。まず、科学技術及び学術の振興を図るため、AIをはじめとする情報分野の研究開発力の強化や、オープンサイエンスの推進のために必要な方策等について調査検討を行い、「オープンサイエンスの推進について(一次まとめ)」や、「AIPセンターの今後の在り方について」の取りまとめを行いました。
また、情報科学技術の急速な技術革新にも適切に対応できるよう、最先端の技術に関する情報収集・検討を行うため、「情報科学技術分野における戦略的重要研究開発領域に関する検討会」を立ち上げ、当該分野において戦略的に重要な研究開発領域の動向及びそれらを踏まえて国が講ずべき取組等に係る事項に関する検討を行いました。
なお、本委員会の所掌に関する課題について事前評価を2件、中間評価を2件実施しております。事前評価につきましては、生成モデルの透明性、信頼性の確保に向けた研究開発拠点形成及び富岳の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発整備、中間評価については、富岳の成果創出加速プログラム、そして、先日御審議をいただきましたAI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業となっています。併せて研究開発プランを策定し、各課題の質の向上等に努めました。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは次に、大学研究力強化委員会からは、事務局の小川大学研究力強化室長から御報告をお願いします。
【小川大学研究力強化室長】 事務局より御説明させていただきます。
大学研究力強化委員会につきましては、今期現在まで6回開催し、2月4日に第7回を予定しております。これまで国際卓越研究大学とJ―PEAKSという研究大学としてのシステム改革に向けた事業が新たに開始し、大きな転換点を迎える中で、我が国全体としてどのように多様で厚みのある研究大学群を形成していくのかについて、活発な御議論をいただきました。
国際卓越研究大学につきましては、本審議会で意見聴取をいただき、東北大学を初の国際研究大学として認定するとともに、第2期公募を開始したというところでございますけれども、国立大学法人法の改正を踏まえたガバナンス体制の在り方や第2期公募に向けた考え方など、本委員会におきましても継続的に議論をいただきまして、その議論を受けまして、国際卓越研究大学法に基づく基本方針の改定などを行うなど、制度設計を進めてまいりました。
また、25の大学がJ―PEAKSとして選定されたところでございまして、今後、各大学において研究力強化に向けた改革が進む中、この後押しを行っていくために、国内外の先進的な取組の調査等を通じて、戦略的に取り組む必要のある課題について好事例を含む可視化を進めてまいりました。
また、最後に現在、第7期科学技術・イノベーション基本計画の策定に向けた検討が進んでおりますが、多様で質の高い研究成果を創出する知の基盤の構築に向けまして、学術分科会と連携し、議論の取りまとめに向けた検討を行うとともに、特に各大学や領域など組織を超えた連携を拡大することも重要であるという観点から、共同利用・共同研究体制の機能強化に向けた課題や方策に関しても確認するなど、多様で厚みのある研究大学群の形成に関して幅広い観点から検討を重ねてまいりました。
説明は以上でございます。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、人材委員会の主査である狩野委員から報告をお願いいたします。
【狩野委員】 では、報告いたします。まず、資料をありがとうございます。
人材委員会では、活動実績としてまず博士後期課程学生の皆さんへの経済的支援、充実とキャリアパスの多様化、それから、研究人材の流動性、安定性の両立に関するワーキンググループの開催、また、前回、以前に皆様にお示ししていろいろ御意見をくださいました「シン・ニッポンイノベーション人材戦略」をまとめました。
それから、これらを踏まえて、今後の検討課題の議論を取りまとめております。人材委員会では、どうしても文部科学省というと枠組みあるいは統計的な目線が強くなりがちかもしれませんけども、人材を主体として、主役は人だということで、そちらから眺めたらどういうふうに見えるかということを進めてきております。これに関係しまして、少し時間をいただいたのでワーキンググループの検討結果について、これから御紹介したいと思います。
皆様のお手元の資料ですと64枚目というところでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
では、まず1つ目が、このワーキンググループの中で、若手研究者へのメッセージというところであります。67枚目からです。こちらは昨今、雇い止め等々のことが起きている中で、文部科学省としてどういうことが出せるかということを委員各位と検討しまして、出したメッセージです。
基本的には、ここに書いてある内容について少し文字を追っていただければと思います。広い視野のもと、自らの思い新しい発想をもとに進めていくのが研究だと、委員としては考えていて、それはもちろん今すぐ役に立たなくても10年後、100年後あるいはもっと先の社会に必要な知識、理論であると。そうしたものをつくっていくという仕事だと思っているんだけれども、それを進めていく方々が安心を持ちながら進められているという、昨今の状況から感じていない人もいるかもしれないということを書いてあります。
でも、それを支えていきたいということで、このメッセージを出しているということを書いてあります。
続いて、何枚かが関連するデータでありまして、データを基に生きているのが研究者なので、実際の現状どうなっているかということを見ていただきたいということで幾つか出しております。下のオレンジの囲みの中に、それぞれのデータの我々としての解釈が書いてあります。
次をお願いいたします。ここの流動性についてもいろいろあるのですが、大学には入っていく人は多いけれども、あんまり出ていってはいないねということは、この機会に出てきた内容であります。
それから、続いてがこの10年ルールのことについての説明、そして、文科省に期待をさせていただく内容が例えば七十二、三枚目のところにあるし、それから、先ほどから出ている博士後期課程の学生の支援についてどんなことが出ているかというのを改めてここで紹介しております。
さらに、こういう内容は文部科学省の皆様にお願いするだけじゃなくて、我々大学側も何かしないといけない内容であるのは間違いありません。75枚目あたりに、大学でどんなことを期待したいかということは、このワーキンググループの視点で書いてあります。
76枚目が、文部科学省でこれから検討していただきたい内容という書き方になっております。
続いて、もう一つ、ワーキンググループがございまして、こっちはURA等の皆様、研究開発マネジメント業務、それから、人材に関わる課題の整理と今後の在り方ということのまとめになっております。こちらとしてはやはりなかなか立ち位置が難しい状況であるということの把握があって、それをよりよくしていく、最終的には大学の経営に関わるような方々になっていただきたいということを含めて、今後、新たな施策も今準備中だと伺っております。
続きまして、先ほど出ました「シン・ニッポンイノベーション人材戦略」は、前回といいますか、ずっと2回目ぐらいですか、皆様に御紹介いたしましたので、それを踏まえて、先ほど申し上げたように人が主役だというふうにして、そちら側から眺めたら、各種施策はどう見えるかという観点で検討を進めるという内容について書いてあります。
81枚目からがそちらでございますけれども、まず、その意味で、この今の関係の施策を俯瞰いたしますと、82、83枚目に特に整理していただいておりますけれども、9象限に分けて考えることができると。もちろんこれは人材委員会が全ての担当だということは全くなくて、直接に担当される皆様方は当然おられるのはよく分かっているんですけども、人材を集約してみたときにどう見えるかという意味で、関わるその主役の人材から見るとこういうものに囲まれているなということになるということでまとめております。
その意味で、その次の84枚目にこうした9象限を基にして検討していくとしたらどんな柱が立つかということを事務局の皆様とともに並べてあるのがこちらであります。これを列挙した上で、人材委員会の皆様にそれぞれについてどういうことを考えないといけないかということを聞きました。それをまとめていただいたのが85枚目以降、86枚目からです。まず、研究開発費等の確保、活用推進で、こちらの点線の枠内に皆様の意見を踏まえた上で、文部科学省とともに御一緒して検討していくのであれば、こういう内容かなということにまとめをしていただいております。
先ほどもありました産学共創ももちろんでありますし、知的財産のことも書いてありますし、あとはこれは私、外務省の仕事も以前いたしましたけども、科学技術に関する国際協力の観点がありますが、それとともに先ほどありましたセキュリティの件、これも列記しております。それから大学等の機能強化に関すること、それから研究体制の構築、すみません、今88まで来ました。89ですね。
先ほども申し上げた博士後期課程学生の支援、専門人材の育成確保といったことがありますが、さらに90枚目に、学校教育段階における取組として、こちらは科技系部局としては、大学以降をどうしても注目してきがちだったけれども、人材の育成と考えますと、高等学校あるいは小中学校段階からも考えたほうがいいのではないかということを記載してあるところです。
科技系ということで、理数系という書き方になっていると私は理解しておりますけども、個人的にはここは科学者全般に大事だと思っている公共心あるいは好奇心から、ほかの人と違う思いつきができて、それを証拠をつかまえてほかの人に納得してもらう力、一般に伸ばしていくということではないかなと思っております。その結果、社会として公益が高まればいいのかなというのが私の考えですが、こういうことをこのような内容を通じてしていければいいのではないかということになります。
91番目はさらに機器のこと、そして92枚目に政策評価あるいは研究の評価の在り方、安全保障はさっきも出ましたが、そしてコミュニケーションのことと今意見収集及びその方向性の検討ということをしております。この議論は当然これで終わりではなくて、来期においても継続をさせていただいて、夏ぐらいに中間取りまとめをしたいということで、現在検討しているところでございます。
以上です。ありがとうございました。
【大野会長】 どうもありがとうございました。
最後に学術分科会ですが、会長を私が知っている関係から、私から御報告をさせていただきます。
今期の学術分科会では、研究力強化に向けた取組などを念頭に、分科会及び関連する部会で今後の学術の振興策について審議を行ってまいりました。今朝、午前中も、最後の学術分科会を開催したところであります。学術分科会自身では第7期の科学技術・イノベーション基本計画に向けて、様々な審議を行い、学術分科会としての意見を取りまとめたところであります。
また、研究環境基盤部会に関しては中規模研究設備の整備、そしてその論点整理を行い、大学共同利用機関を中心とした共同利用・共同研究体制の機能強化について検討を行ったと。さらに御存じの方は多いと思いますが、学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想-ロードマップ2023を策定しております。
研究費部会に関しては科学研究費の助成事業において、研究種目の整理・統合、あるいは国際性、若手研究者の支援の強化、研究種目の基金化の推進を含む研究費の効用の最大化、基盤研究の助成の在り方について、様々な調査と審議を行ったところであります。
人文学・社会科学特別委員会関係では、人文学・社会科学の現代的役割、分野研究の深化及び異分野との連携・融合、新たな「知」の創出を支える研究基盤、研究成果の可視化・モニタリングなどについて調査審議を行い、今後の人文学・社会科学の振興に向けた推進方策についてを取りまとめたところであります。
本日、最後の分科会で第7期科学技術・イノベーション基本計画に向けて、さらに議論を深めたわけでございますけれども、まだ議事録もできていないところなので、ちょっと私のあやふやな記憶に頼らざるを得ないところがあって御了承いただきたいと思いますが、基盤経費の充実を求める声が多数あったと。私たちのところ、学術を充実させようとするとそういう声が多い。それは税制も含めて、個人、法人など民間の支援を得られる方策づくりも必要だという議論がございました。
加えて関係しますけれども、そのトップ大学以外の全体を底上げする投資、そして人の循環、それらの仕組みが今求められていると。それをつくっていかなければいけなくて、第7期にはそれが実現するようなことが入っているべきだということであります。
加えて社会にその基盤基礎、学術の重要性をきちんと知ってもらおうと。それによって最終的には今申し上げたような資金循環あるいは人の循環、これまで、多くの部会等の御報告にもありましたように、社会全体が科学技術を支えると。そういう仕組みが第7期に向けて、第7期で実現するように、基本計画に取り込んでほしいと。そういう最終的な取りまとめになろうかと思います。
私からは以上でございます。
分科会等の御報告は以上でございまして、続いて議題の2に入り、最後に全体をまとめて、皆様から御意見を頂戴したいと思います。
それでは、議題2の第7期科学技術・イノベーション基本計画の検討に向けての状況報告等について、こちらは井上科学技術・学術政策局長からお願いいたします。
【井上科学技術・学術局長】 それでは、資料2でございます。お手元の資料ですと通し番号96ページ目からでございます。
これは現在、この各分科会の御議論なども踏まえて、文部科学省として第7期の科学技術・イノベーション基本計画に向けて、どのように次の一手を打っていくのかということを検討しております。その検討状況でございます。
表紙をめくって、次のページお願いします。これはもう第6期科学技術・イノベーション基本計画で目指してきた社会像ということで、第5期と第6期の振り返りでございますので、ここは説明を省きます。
次のページをお願いします。目指すべき未来社会像に向けた現状と科学技術・イノベーションの役割ということで、現状は「Society5.0」の実現には道半ばでありますと。国際情勢や社会構造の変化が加速し、先行きが不透明で将来の予測が困難な時代であると。そうであるからこそ、国力の源泉である科学技術・イノベーションにしっかりと取り組むべきということが書いてございます。
次のページをお願いします。科学技術・イノベーション全体像の中で「知」を得るエコシステムの強化が必要ということでございます。模式図が書いてございますけれども、科学技術・イノベーションを取り巻くエコシステムを考えたときに、大きく見ますと多様で豊富な「知」を得るエコシステムと、その「知」と社会をつなぐエコシステム、これはむしろ「知」を価値化していくようなエコシステムがあると関連しておりまして、我が国、特に文部科学省としては、研究力の相対的な低下も指摘されている中で、この多様で豊富な「知」を得るエコシステム、ここをしっかりと強化していくということが重要ではないかと考えております。
そしてこのエコシステムを強化していくに当たっては、横に国際頭脳循環と書いてありますが、国際的なエコシステムともつながっていなければいけないと。国際的な頭脳循環をしっかりやっていくということが、このエコシステムを強化することにもつながるということをきちんと認識し、また、世界的に課題認識が高まっております経済安全保障にもしっかりと対応しないと、このエコシステムがしっかりと動かないであろうということで、こういったことにも配慮をきちんとしながら、このエコシステムをつくっていくということが重要ではないかと考えております。
次のページはデータなので省きます。さらに、先のページに行ってください。研究力強化に向けた文部科学省の取組の方向性ということでございます。
まず、第6期の下で、どのような手を打ってきたかということが書いてございますが、国際卓越大学やJ―PEAKSにより、強力な研究大学群をつくるというある種組織の強化、そしてその次のポツですが、研究者に対しての創発的な研究事業の創設ですとか、博士課程学生の支援など、人を強化するような取組をやってまいりました。
こういった取組を踏まえまして、真ん中に破線で囲ってありますけれども、第7期は、このような人材や機関がそのパフォーマンスを効率的かつ最大限に発揮し得るエコシステムを構築していくことが重要としております。
その上で、下のほうにいきますけれども、大学や人材の評価に加えまして、3つ目のポツにあります研究機関が持つ高度な研究リソース、研究設備・機器、専門人材、研究データ等、これは今は多くが研究室所有、研究者個人所有になっているようなリソースでございますが、これを戦略的に集約をして、開放していくと。そういったことを基盤としてエコシステムを構築していくということが重要ではないかと考えてございます。こういったことを通じて日本全体としての研究活動の生産性・創造性を飛躍的に向上していきたいと考えております。
次のページを御覧ください。以上のようなことを基本に置きつつ、全体5つの施策にまとめております。青字で書いてありますが、施策1、人的資本と投入資金の効果を最大化させる組織・分野を超えた新たなエコシステムの形成でありますが、高効率な研究環境の実現と研究資金改革ということでございます。施策の2がエコシステムの主役となる研究者・専門人材の育成・活躍促進。施策の3が我が国の研究活動の戦略的な国際展開。施策の4が経済安全保障に係ること。施策の5が知の価値化ということで整理をしております。
次のページ、最後でございますが、各施策の概要ということで書いてございます。施策の1は、個々の大学等の意欲的な改革や研究者個人の独創的な研究への支援を充実するとともに、高度な研究リソースについて戦略的な集約と開放を行い、技術職員等の専門人材、事務スタッフの育成・配置などと併せて、組織・分野を超えたオールジャパンのエコシステムを構築すると。
この集約と開放を進めていくために、文字では書いておりませんけれども、併せてそういったことを進めるためのインセンティブを付与するような研究資金の改革も必要だと考えております。
施策2につきましては、博士人材や技術者・研究マネジメント人材等の育成、安定的なポスト確保、キャリアパス拡大を推進し、新たなエコシステムの主役となる関係人材の裾野を広げる。
施策3は、海外のトップレベル研究機関や研究者とつながるネットワークの強化。
施策4は、国家として重要な技術分野への研究開発投資を拡大するとともに、研究インテグリティ及び研究セキュリティを確保する。
施策5、産学官共創の場の形成・強化、大学発スタートアップの創出・成長やそれを支える人材の育成の後押し、特にスタートアップについては、創業後の支援が重要であると考えております。
以上、まだ粗い状況でございまして、ワーディングも必ずしもきっちりと固まったものではございますが、今日先生方から、忌憚のない御意見を賜れればと考えております。
以上であります。
【大野会長】 井上局長、どうもありがとうございました。
それでは、意見交換に進んでまいりたいと思います。これまでの分科会等の今期の御報告、そして、次期基本計画の検討状況について、皆様から御意見を頂戴したいと思います。時間は十分あるはずですけれども、とはいえ、二、三分の御発言で何回か回るのが理想的だと思いますので、どうぞ御配慮のほどもよろしくお願いしたいと思います。
それでは、いかがでしょうか。仲委員、お願いいたします。
【仲委員】 どうもありがとうございました。大変重要なおまとめを整理してお示しくださいまして、ありがとうございます。
コメントだけなんですけれども、私は学術分科会のほうで、大野分科会長のもと議論させていただきました。おまとめくださいましたように、全国の津々浦々にあるリソースを最大限生かせるように、研究費の基盤化であるとか、また、若手人材にも研究費が行き渡るように保障することで、日本の研究力を活性化できるんじゃないかな、ということが一つ。
そして、人材委員会でおっしゃったように、本当に人こそ財産、ということに焦点を当てて、STEM教育のこともおっしゃいましたけれども、小中学校から始めるSTEM教育。やはり全体的に見て、女性研究者が研究者の2割であるというのは大変少ないわけですので、研究力を上げていくためには、女性の研究者を増やしていくという努力が必要ではないかなと思いました。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、観山委員、お願いいたします。
【観山委員】 どうもありがとうございます。今、局長言われた施策、5つの施策、非常に重要だと思いますが、施策の1番、人的資本と投入資金の効果を最大化させる組織・分野を超えた新たなエコシステムの形成ということで、これは非常に重要なことだと思っております。
資料によりますと、我が国の研究力というのはどういうところが支えているかということ、資料にもありましたけれども、諸外国と比べるとトップレベル、今回、採択されようとしている国際卓越大学だとかJ―PEAKSみたいな、第1群、第2群も非常に頑張っているわけですけども、日本の特色として、第3群、第4群の大学も大いに貢献しているという資料があります。
これはほかの国に比べると、少し第1群、第2群がもっともっと頑張ってもらいたいという状況もあるのですが、日本の特色として幅広く地方の大学だとかに広がっている研究者も結構実力を持っているということだと思います。そういう実力を持っている研究者をやっぱり最先端の研究施設の下でうまく活動していただいて、研究を執行していただくというシステムとして、日本は独特なシステムとして、大学共同利用機関とか共同利用・共同研究機関というものを持っております。
これが要するに大学の研究者が、もちろん国立大学においては法人化されて、それぞれの大学が頑張っていくということでございますが、研究というのはやっぱりそれぞれの大学におられる研究者を結びつけて、その人たちが最先端の観測装置や実験装置、例えば高エネルギー研究所だとかニュートリノ観測施設だとか、国立天文台の施設だとか、並びに共同利用・共同研究拠点が持っているような施設を使って、成果を上げるというところは、日本独特の仕組みであって、結構成果が出ております。
ですから、全体に経費を上乗せしていただくということが、日本の研究力を高める非常に大きな原動力になると思いますけれども、それはなかなか難しいところであるとすれば、そういうハブの機能を研究者を結びつけて、最先端の研究施設を使えるような仕組みに重点的に今後もリソースを提供する、注入するということは重要なところではないかと思いましたので、ひとつ発言させていただきました。
以上でございます。
【大野会長】 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
勝委員、お願いいたします。
【勝委員】 ありがとうございます。御説明ありがとうございました。
最後のこの基本計画について、少しコメントをさせていただければと思います。人、もの、金とそれぞれについて言いますと、人については施策の2のところ、エコシステムの主役となる専門人材の育成、活躍促進と。これは本当にそのとおりだと思うんですけれども、育成と活躍促進だけではなくてやはり拡充も入れていただきたいなと。つまり、研究者の数から言いますと、日本は今ドイツよりも低いということで、もちろん論文数もここ長年、かなり数が低下しているということだと思うんですけれども、その大きな要因としては、やはりその人材の数が、絶対数が少なくなっているのではないかと。
先ほど人材委員会のほうから御説明ありましたけれども、もちろん研究者の数、絶対数の中で、特に非正規といいますか、任期つきの方が非常に多くなっていて、そうするとやはりそれを目指す研究者というか、卵たちがほかの業界にいってしまうということもあり得るわけで、まずはそういった数、これは民間企業でもやはり技術者であるとか研究者、これの報酬の改善とか、そういったことも必要だと思うんですが、そういったことを考えていくべきではないかというのが第1点目です。
それから、ものとしては、先ほど来、学術分科会それから基盤部会から、中規模設備の話が出てきましたけれども、基盤部会でも、中規模設備についてはかなり長らく議論したわけですが、ただ、今年度補正予算で出てきたのは非常に少ない金額であったと。
もちろんエコシステムということで、先ほど来お話があるように共・共拠点とか、そういったのはまたすばらしい効果があるとは思うんですけれども、やはり研究者がいろいろなところに点在しているといった場合には、そういったところにも予算をつけていくということが必要なのではないかなというのが第2点目です。
3点目としては、そのお金のところなんですが、この103ページに知の価値化ということで、スタートアップの成長がそれを支える人材の育成というのがあるんですけれども、実は昨年、シリコンバレーの方々と実は東北大学の施設を見学させていただいたことがあって、やはりこういうところの特にスタートアップ、先ほど来、御指摘のあるように、成長する段階のところは一番難しいわけですけれども、やはりその人材を一から育てるというのではなくて、やはりプロフェッショナルな方と接点を持っていくということにも、ぜひ工夫していっていくようなことも、その中に含まれたらいいなと思いました。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
門間委員、お願いいたします。
【門間委員】 御報告ありがとうございました。二、三、教えていただきたいことと、大学卒業後のキャリアパスについて少し申し上げたいなと思いました。
まず、101ページで、さっき井上局長からお話のありました、設備や機器の共有化のお話ですが、研究設備・機器はどうしても研究者個人とかグループの独占的な使用になりがちかと思います。それぞれ対象やテーマが違うということで、共有化が進めるのが難しいと研究現場にいたときによく感じておりました。インセンティブをかけるとのことですが、具体的にどういうことができるのか、あるいは問題点とかあれば教えていただきたいと思います。
あと、27ページのところで、論文数が2010年半ばから増加傾向で、トップテンについても下げ止まりということで、明るい兆しかとも思いますが、もし最新の状況、こういう分野で伸びているとか、こういうところは問題があるとか何かあれば教えていただきたいです。
33ページの裾野の広い大学ということで、裾野の広い大学に意欲や能力のある研究者が存在されているということで、心強いところですが、地域的な違いといったことはあるでしょうか。地域や分野のアクティビティの違いや、どういうところに問題点があるかというところが、もし分かればお教えください。
最後に、大学卒業後にさまざまなキャリアパスで大学に戻る方もいらっしゃるんですが、経済的な不安もあり、安定した職業に対する志向というのが強いように私は感じています。そういったところで経済的なサポート、あるいは安定したポストを増やし、安心して働いていける場所を提供していくのも大事かと思います。産業界、既に就職した方でスキルアップの道を広げてあげるといったことも必要と感じております。
以上です。
【大野会長】 それでは、これは事務局にお答えいただくことになろうかと思います。
【井上科学技術・学術局長】 私のほうから共用の関係の部分だけちょっとお答えさせていただきますけれども、今、先生から御指摘いただいたように、研究機器・施設は比較的占有すると、研究者が占有するという傾向は多うございますが、これは必ずしも全ての機器占有ではなくても、共有することも、非常に共有が可能なものもたくさんあると見ております。
それと最近は私ども現場を歩いていると、これはいろいろな要因があるんですけれども、電気代が上がったとかいろいろなことあると思いますが、研究者によっては研究機器等を手放したい研究者も結構出てきています。世界的な潮流をあと一つ申しますと、研究機器を集約して、DX、自動化技術などを加味して、研究の効率を非常に上げるという流れがございます。
そういった流れも併せて考えれば、この集約と開放というのは、それなりに現場の御意見も踏まえながら進めていくことができるのかなと考えております。あとインセンティブについては、これはまだ具体的なことは正直に申しまして詰めたものは考えておりませんけれども、例えば競争的資金の審査において、機器については共用施設を前提に考えているものについては、何らかの優遇措置を与えるとかいろいろなアイデアが検討できると考えております。
【大野会長】 それでは、助川室長でしょうか。
【助川学術企画室長】 失礼いたします。学術企画室長の助川でございます。
御指摘の中、学術分科会でお諮りした資料が入ってございましたので、私から御報告申し上げます。33ページの、裾野の広い大学に点在する意欲・能力ある研究者のポテンシャルを活かしきれていない可能性という部分について、地域的な偏りがあるかどうかという御質問をいただきました。例えば北のほうが多い、南のほうが多いとか、そこまで細かいところまではちょっと今手元にはないのですけど、裾野の広い大学にも意欲・能力ある研究者が存在するといったときには、必ずしも都市部には限定されておらず、全国各地に広くいらっしゃると認識しております。
先生、大変恐縮でございます。その前に2点目として御質問あったと思うのですが、ちょっとうまく聞き取れなくてもう一度お願いできないでしょうか。
【門間委員】 すみません、申し訳ありません。
33ページ、地域的なこと、あと分野的な違いと、あと、27ページの論文数で増加傾向と、あと下げ止まりと書いていただいているんですが、2021年以降、コロナ以降、かなり社会の変化も大きくなっているかと思うんですが、もし最新の情報でこういう分野で強みが増しているとか、そういったことがあれば教えてください。
【千原科学技術・学術政策研究所所長】 横から失礼してもよろしいでしょうか。オンラインで参加の科政研の千原でございます。
【大野会長】 どうぞ。
【千原科学技術・学術政策研究所所長】 今の門間先生の2番目の27ページのところでございますが、科政研のデータを使っていただいていると承知しております。これはNISTEPで公表しております科学技術指標2024年の最新バージョンをお使いいただいているというところかと思っておりまして、残念ながら、この2021年までのところが今最新の状況かと存じます。毎年これは調査をして公表いたしますので、2022年が来年かなと思っておりますが、大体こんな感じの傾向かと思います。
ちょっとだけ付言しますと、総論文数は日本もこのように増加をしており、一方で10%補正論文数は、下げ止まりといいますか横ばいという状況です。このところにつきましては、最近やはり中国あるいはグローバル・サウス、こちらでのTop10%論文数の増加が顕著でございまして、そこら辺の詳細分析も今NISTEPのほうでさせていただいているという状況でございます。
簡単ですが、以上です。失礼いたしました。
【大野会長】 どうもありがとうございます。4番目ですね。
【藤原研究開発戦略課長】 今、NISTEPの千原所長からお話ありましたけれども、最近では科学技術指標2024のデータの中に、主要国の分野別論文数割合の推移というのがございますので、簡単に触れさせていただければと思うのですけれども、こちら見ますと、伸びている、割合が増えているものとしては臨床医学、環境・地球科学といったところが経年的には伸びてきているのかなと見えるところでございます。逆に、物理学ですとか基礎生命科学といったところの割合は、少し日本の論文の中では減ってきているように見えるところでございます。
すみません、直接のお答えではないかもしれませんが、傾向としてということでございます。
【大野会長】 あと卒業後の進路という安定した人材確保みたいなことはどなたか、お話しいただけますか。
【奥人材政策課長】 人材政策課の奥です。ありがとうございます。
キャリアパスの話はコメントだったと思うんですけれども、付言させていただくと、科学技術人材という観点でいうと、博士号取得者に対する経済支援の強化というのは我々のほうでやらせていただいていまして、ストレートドクター3万人のうちの7割を対象に、2万2,500人に対して生活費相当額の支援をするということを目標に、これ第6期の基本計画のほうで目標を定めていますので、その実現に向けて取り組んでいます。
ドクターが出た後、もちろん今までは研究者だけというキャリアパスが主眼に置かれていたかもしれませんが、やはり企業であるとか、研究者のみならず技術者であるとかあるいは研究のマネジメントをする人材、あと多様なキャリアパスを育成するということを我々としては政策的に後押しをしていまして、これも含めて人材委員会のほうで御議論をさせていただいているところです。
【大野会長】 ありがとうございます。それでは、ほかに、狩野委員、お願いいたします。
【狩野委員】 すみません、先ほど長く話した後なので、発言を控えていたんですが、あまりたくさんの方がお押しにならないので、ちょっとより役割を離れた個人的なところを申し上げます。
1つ目に、どうしても研究者の今の状況ですと要素を深めていく、要素の知識を深めていくという展開をしやすいようなエコシステムの設定になっていると思うんですが、伸びる論文というか、後から引用が増えるものというのが要素、思いもよらない形でつなぐというやり方であるというのが、例えばOECDのペーパーで一つ出ておりますし、それからあと私は医学出身ですけど、医学の古きを振り返っても同じようなことが言えまして、例えば心臓と血液がめぐっているという説というのは実はそんなに昔からじゃなくて、最近の、最近と言っても3世紀ぐらいから見ると最近だったんですけども、1000年ぐらいの間ずっと血液は肝臓がつくるだけで、どこに効いているか分からないという説だったのが、ハーヴェイという人がめぐっているかもねということを言って、それを本当にそうだねと言った人は、顕微鏡というのと生体をつなげた人で、そのときはあほじゃないかと言われてやっていたという話であり、それから、その後に細胞が体を全部つくっているというのも産業革命で出てきた合成染料を体にふっかけるという不思議な人がいたんで出てきたと、そんなような展開をしているということが歴史を振り返って分かるんですが、こうした思いも寄らないようなつながりを思いついてしまって、試してみようと思ったときに、それができるような今仕組みになっているかということを考えると、いろいろまだやりようがあるのではないかなということを思うわけでございます。
そのときに、そういうことでは、どういうふうにこれを支えられるかという質問に今度なりますと、専門の中でのボトムアップというのは今、科研費的なものでやっている。それから、政府のほうで思いつかれたものを支えるというのはミッションオリエンテッド的に、トップダウン的にやっておられる。だけれども、例えばもう少し国際社会的な課題感を取ってボトムアップであるとか、あるいは専門をつないだボトムアップであるとか、そういうところをどういうふうにできるのかというのは確実変化が若干そういったところはありますけれども、あんまり枠として大きいわけじゃないので、そういうところを種を育てるようなことをどうやってやっていくかというのを考える必要あるかなということをひとつ思います。
その際に、政府のお金だけでできるかということを考えると、もしかすると難しいときもあるかもしれませんが、ただ、そういうことをまとめられる力はやっぱり政府が大きいのかなということを考えると、例えば企業のお金、あるいは財団のお金をそうした範囲で一定的に把握は少なくともして、そうした今申し上げたような新しいところを出していくようなところに、お金がうまく回るのか。もちろんそれは基盤的経費という形で表現しても結構ですけど、それはそれで学者としてはありがたいことでございますが、なかなか納得を得られにくいということであるとすると、今申し上げたような方策もほかにあるのかなということを思っておりました。
そんなところでもしお答えいただけるものがあればありがたいですし、取りあえず個人の考えでございます。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。質問ではなかったように聞こえましたけれども、答えたいという方、最後にまたもしよろしければコメントをいただくということで、ほかにいかがでしょうか。金井委員。
【金井委員】 ありがとうございます。まず、人材育成に関しまして、数々のお力添え、どうもありがとうございます。博士の70%の学生がファンディングされているってすばらしいことだと思っていますし、身近に感じるところではありますけれども、実は現場にいると理系は、修士に行く日本の学生は非常にたくさんいるのですが、そこから博士課程に移るという方が、私の周りは減っているように思えるのですが、修士からドクターに行かれるというところを、どういうふうにリクルートするのかというのは本当に課題であると思います。そこの部分が学部であるのか、もしくはもう少し若い子たちに理系を広めるというところになるのかなと思うんのですが、お考えをお聞かせ願いたいというのが、1点目の質問です。
あともう1点は、いただいた資料の29、30のところです。私、素人で分かりにくいのですけれども、30ページにサイエンスマップ2004年と2020年を比較すると、相対的にコンチネント型の増加、スモールアイランド型の減少と書いていらっしゃるのですが、研究者の数が2004年と2020年の推移を考えたとしても、全体としてコンチネント型を推奨するというデータを書いていらっしゃるふうに読み取れてしまうのですが、大野先生がおっしゃっていたように国際共同利用研究以外に一方、基盤の経費を充実していただいているということでした。地方で小さい種があってこの期間が多分16年ですか、例えば30歳が46歳で一番力がある人たちが、スモールアイランドから大きくなるというのは良いことと思われますが、小さいことが悪いと私は思っていなくて、地方の方の日本のイニシアチブを取れる小さな種の継続について、どのように解析されているか教えていただきたいのですけど。
【大野会長】 ありがとうございます。それでは最初は人材ですね、修士からドクターに行かない。
【奥人材政策課長】 ありがとうございます。修士からドクターに上がらないといろんな要素があると思うんですけども、国際比較で見ると、やはり日本人の人口当たりの博士号取得者の割合というのは、欧米先進国と比べてやはり3分の1の低い状況にある。最近のドクターへの進学というのは大体横ばい程度なんですけれども、大きく増えていない。諸外国が増やす中で大きく増えていない。この要因として、やはり修士からドクターに上がるに当たってその生活費を給与がもらえないということがあるので、その生活費に関する不安というと、あと将来的なキャリアパスがなかなか開けないという2つ大きい要素があるかなと思っています。
ということで、先ほど申し上げた生活相当額の支援ということで200万から250万程度ですけれども、2万2,500人をターゲットに一応支援は開始しているということ。それと並行して、そうしたドクターを受け入れる、あるいは大学に対してそのキャリアパスに対して支援をしてくださいということで、いろんな産業界と一緒になったワークショップフォーラムの開催であるとか、キャリアを見据えたような相談窓口を支援するであるとか、様々アカデミアのみならず産業界にも進むようなキャリアの多様化を図っていくということで、各大学において取組を進めていただいているところです。
最新の科技統計見ているとドクターの進学数ですか、ここ2年間ぐらい、若干ですけども、増加の傾向にあります。これはひとえには、こういう生活費相当額の支援というのも一つ要因として挙げられるのかなと思いますが、こちらは継続的に状況把握していかないといけないと思いますので、それも踏まえて対策を考えていきたいなと思っています。
【大野会長】 それでは、どうぞ。助川室長。
【助川学術企画室長】 助川でございます。金井先生、ありがとうございました。
先ほどの29ページ30ページのところ、まず見方について簡単に先に御説明申し上げますと、この29ページ、30ページの図、この国際的に注目を浴びている分野について、サイエンスマップという言い方していますけれども、4つの分野に分けてございます。平たく言いますと、今、先生が御紹介くださいましたように、スモールアイランド型というのは、新たな研究の芽となる可能性のある研究領域です。それに対して、コンチネント型というのは、規模も大きいし継続性も大きいという領域でございます。そして、そうした領域への日本の参画度合い、あるいはほかの国の参画度合いがどのように変わってきたのかというのが次のページのグラフでございまして、特に日本と中国のところ、一番右のところを比較していただくと、中国が、上にある水色のところ、スモールアイランド型というのをすごい増やしてきている。すなわち新たな研究の芽となる可能性のある研究の領域を大きく増やしていると。
一方、日本の場合はというと、大きく変わっているわけではないんですけど、どちらかというとコンチネット型が大きくなってきております。また、その次のページも併せて見ていただければと思います。今申し上げたこととちょっと若干重なるような資料ではあるんですけども、これだけ見ても読みづらいのかもしれないので補足させていただきます。
これは論文データベースの全論文を内容の近さで5,000に分割してクラスタというのをつくり、その5,000のクラスタについて、クラスタとしての成⻑率を計算し、その上位100の領域を「TOP100成長クラスタ」と定義しています。そして、その「TOP100成長クラスタ」における論文数順位で、日本は幾つのクラスタで1位を取りましたか、2位を取りましたかというのがこのグラフでございます。視覚的に見ていただくとわかりやすいと思いますが、日本のところを見ていただくと、2001年に比べ2021年のグラフは少し右に寄っていると。2001年の段階では約半数の領域で論文数がTOP3にランクインしていたのに対し、2021年だとTOP3にはほとんどランクしていないと。対して中国は多くの領域で1位になっているということがわかるかと思います。
コンチネント型がいいか、スモールアイランド型がいいかというのはもちろん議論があると思うんですけれども、新たな研究の芽となる可能性のある研究領域のところを、昔は日本がもうちょっと引っ張っていけていたのかもしれませんけど、現在はそこを引っ張っていける度合いが下がってきているんじゃないかということをお示しした資料でございます。
それで併せてすみません、先ほどの狩野先生のお話に関わるんですけども、先生、ありがとうございました。先生からいただいたお話は、ちょっと今朝の学術分科会のところでも若干議論がございまして、42ページのところを見ていただければと思います。42ページにはアカデミアへの期待と書いてございます。学術分科会ですので、アカデミアの話を中心に御議論いただいたところなんですけども、アカデミアにどんなことが期待され、求められているのかということをまとめたものでございまして、これまでの議論でもあったかもしれないんですけれども、研究と社会・ビジネスの距離が凄く近くなっている。
そういう中で1点目のポツですが、アカデミアの方々には、社会からの要請を意識した研究や研究成果の社会実装、要するに確実にイノベーションにつなげていくという意識も持っていただければなというのは一つあるんですけども、それだけではなく、2つ目のポツ、やはり科学研究でゼロからイチを生み出せるというのは、アカデミアの嗅覚・知的好奇心にほかならないと考えておりまして、日本のアカデミアへの期待として、この両方の点を含めて「知」のハブとして、革新的な発見を生み出すことを通じて、我が国の発展の原動力になるということが期待されるとしてございます。
そして、先ほど申し上げました通り、研究と社会・ビジネスの距離が近づいているということもありまして、基礎研究に対して、民間の方々ともいかに協力していくか、民間の方々の投資をいかに活用していくかということについても課題意識として持っております。現在のところは、こうしていけば民間の資金も導入していけるだろうといったところまでは詰め切れていなかったんですけれども、まずは、産業界も含めた社会へ発信していき、基礎研究・学術研究への民間からの投資をしっかりと呼び込んでいければという話は今朝の学術分科会でもありましたので、御紹介だけさせていただきます。
すみません、長くなって恐縮でございます。ありがとうございました。
【大野会長】 どうもありがとうございます。
【金井委員】 ありがとうございました、大野先生。
【大野会長】 大分手も挙がっているようですので、進んでまいりたいと思います。
この順番でいいのかな、鷹野委員、お願いいたします。
【鷹野委員】 ありがとうございます。私からは67ページの人材委員会からの御報告のところでちょっとコメントをさせていただきたいと思います。
若手研究者へのメッセージということで、おまとめいただいておりまして、これはとてもよいと思いました。最近、大学の教員や研究者の環境の厳しさというのが強調され過ぎている面があると感じております。実際に厳しい面もあるんですけれども、それが強調され過ぎていて、若い方々が研究者や大学の教員を目指す、憧れるといった面がそれによって損なわれているというような面も感じているところなんですけれども、こういったメッセージを出すということがとても重要であると思っております。
そして、特に若い人たちに伝えていくということが重要だと思うんですけれども、その際に、発信方法の工夫も必要なのではないかというふうにも思います。私、特によいアイデアというのがあるわけでもないんですけれども、ちょっと思うのは例えば研究の面白さとか、とても若い人たちが興味を持つような研究をやっている方の研究紹介あるいはその研究者の紹介、そういったものを併せて発信するなどして、できるだけ若い方に知らせていくということで、このメッセージは、実際に研究に苦労されている方といいましょうか、研究環境に苦労されている方へのメッセージでもあるんですけれども、少し拡大しまして、より若い方々に、この分野というか研究を目指していただくためのメッセージとしても併せて伝えていただければと思っております。
先ほどの学術分科会でも、文科省が施策をやっていることを目指しているところ、それから私どもが研究について若い人たち、それから社会の国民といいましょうか、様々な方々に伝えていくことの重要性というものも議論されましたけれども、そういったところを重要に思っているということで、お伝えさせていただきたいと思います。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、今のところで、次が相澤委員からお願いいたします。
【相澤委員】 相澤です。最初に議論となったところに戻りますが、この集約と開放というコンセプトは非常にメッセージ性が高いものであると感銘を受けました。集約と開放は、第7期で深めていくにふさわしいコンセプトで、33ページのところに出てきておりました、裾野の広い大学にも意欲・能力ある研究者が存在するという現状分析も踏まえたものであると思います。ここで開放を、どうやって実現するのかということを考えてみますと、これはユーザーサービスでありまして、集約するよりも開放するほうがはるかに難しいと思っております。
巨大設備については、既に大きなユーザーグループが存在し、新たな利用者を募る仕組みもある一方で、そうでないリソースについて、いかに戦略的に開放を行っていくかというのは、単に予算があればいいということではなく、このエコシステムをいかにつくっていくかについては、私たち含めて大きな宿題をいただいているという認識でおります。
一緒にみんなで検討していくべきところだと感じました。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございます。ちょっと順番が分かりにくいかと思いますけれども、今、私の把握しているのは、次に高橋委員、五十嵐委員、網塚委員、栗原委員、狩野委員、村山委員という順番で御発言をいただきたいと思いますので、今、名前呼ばれなかった方はちょっともう1回、手を画面上で挙げていただければと思います。
それでは、高橋委員お願いいたします。
【高橋委員】 高橋でございます。第7期の科学技術・イノベーション基本計画に向けた5つの施策のうちの施策2と5に関係するところでございます。
施策2に関しては、博士人材のキャリアパス数を拡大していく、拡大を推進していくということで、この点に関しては非常に重要で、これが施策5の知の価値化にもつながってくると考えています。
人材委員会での資料の89ページに今後の検討課題として、2ポツの社会で活躍され多様な人材育成・確保というところを、特にアカデミア以外における博士人材の活躍を推進していくことは、ぜひ進めていただきたいと思っているんですけれども、一つ、コメントとしましては、企業における研究人材だけではなくて、様々な職種に博士人材が活用されるということが非常に重要だと思っています。
というのも、私が大学発のスタートアップとかその経営をやっている中で、非常に問題だと認識しているのが、特にアメリカや海外と比べてPh.Dを持つ投資家の数が非常に少ないということなのです。そうなったときに研究自体だけではなくて、どういうところに投資をしていくのかという、例えばベンチャーキャピタリストですとか、どういうところと組んでいくのかというビジネスマンにも、博士人材が活躍してくれないとなかなかこの知の価値化というところにつながっていかないという課題感を非常に抱えています。
ベンチャーキャピタルや投資家だけではなくて、大学発スタートアップを創出していくときに、やっぱりその研究者とつながる経営者がなかなか見つからない問題とかはよく言われているので、民間企業の研究職だけではなくて違う職種の様々な領域に博士人材が育っていくことが非常に重要だと考えていますので、その観点もぜひ含めていただければと思います。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。大変重要なポイントだと思います。
続きまして、五十嵐委員、お願いします。
【五十嵐委員】 どうも御説明ありがとうございました。井上局長の研究パフォーマンス最大化プラン、これはすばらしいと思います。私も、今の「知の価値化」のところで少しお聞きしたいことがあります。ページでいうと、99かあるいは102ページでしょうかね、文科省の様々な施策がここにプロットしてあります。施策の5番、「知の価値化」は、ここの「知」を得るエコシステムと、「知」と社会をつなぐエコシステム、この間の重なっている部分だと思います。今日の午前中の学術分科会でも、科学技術と社会との関わりのところを大分議論しまして、この社会との関わりのところがすごく大事だと思っています。
井上局長からも、まだ第6期ではSociety5.0の実現は道半ばであるという話があって、私もそう思います。そもそも第6期では、基本法を改正して人文・社会科学の振興、いわゆる「総合知」による社会変革ですけれども、どうもその、新しい社会をつなぐ仕組みというのでしょうかね、そのエコシステムが見えにくいところがあります。多分そこのところがまだ道半ばだと思うのですけども。人文学・社会科学との関わり、つまり技術と社会との関わり、それが今日の御説明ではうまく分からなくて。途中どこかに、ELSIという言葉があったのですけども、ELSIだけだとちょっと狭いかなと思いまして。人文学・社会科学も相当深く進化していますので、そういった進化と、新しい技術をどう結ぶかという話、それが鍵かと思っているのですが、どうでしょうか、そこのところに関しては。
【井上科学技術・学術局長】 全くそのとおり、御指摘のとおりだと思っておりまして、そもそも人文系と理工系をもうそんなに分けなくてもいいのではないかと思っているぐらいなんですけれども、今の御指摘、もっともだと思いますので、そうしたいろいろな人文系の方々も含めて、エコシステムが回るような仕組みづくりをしていきたいと思っております。
【五十嵐委員】 文理融合という言葉が随分昔から言われているのですけれども、もちろん無理に融合する必要はないのですが、日本は文理の壁が高過ぎるのだろうなと思っています。何かそこのところで、うまいエコシステムができればいいと以前から思っていましたので、よろしくお願いいたします。
【大野会長】 ありがとうございます。それでは続きまして、網塚委員、お願いします。
【網塚委員】 ありがとうございます。網塚です。まず私からは、先ほど設備共用に関する質問が出ていましたので、研究開発基盤部会の座長の立場からコメントさせていただきたいと思います。
文科省の施策としてこれまで10年以上になりますが、設備と機器の共用化を推進しており、着実に設備の共用化が進展しております。各大学等でも共用の文化が、ガイドラインの制定なども通じて、浸透しつつあります。
共用システムには階層構造がり、一つは、スーパーコンピューターやNanoTerasu、J―PARC、Spring―8といったいわゆる共用促進法で運営されている巨大な共同利用施設。
2つ目の階層としては、一つの大学や研究所などで網羅できない高額設備、これを機関間でプラットフォームを組んで共用に資するというものです。具体的にはNMRや顕微イメージング、それからナノテクノロジーが今走っているプラットフォームになります。
あともう一つが、各大学や研究機関の中で、先端的だけれども汎用性がある機器を共用化するという階層でありまして、先ほどの御質問は、主にこの各大学における設備共用に関するものだと思います。冒頭部会の報告でも少し申し上げましたけれども、直近で走っている共用促進事業はコアファシリティ事業と呼ばれておりますが、この事業がまさに御質問いただいた、様々な課題を解決するために設けた施策となっています。
装置を導入した研究者の側では、科研費等で導入したとしても、それを共用化することによって利用料収入を得ることができるというインセンティブが一つあります。その際の事務手続を簡素化するために、各大学ではウェブシステム等を使って利便性を高めています。あるいはまた、利用者との共同研究に発展するようなメリットもあります。一方で、御懸念にありましたように、装置を例えば更新する際の費用を賄うところまでのインセンティブはないという問題がありました。
こういった課題について、今走っているコアファシリティ事業では、共用化を個々の研究者任せにするのではなく、大学執行部が財務部などの事務部とも連携しながら、大学として共用化を統括して進める体制を構築する大学を支援する内容の事業になっています。
こうすることによって、研究者側としては、共用化によって論文創出などの成果をあげている装置については、大学が戦略的に予算を投じたり、概算要求等で優先順位を高めるといった形で、大学の経営戦略の中に設備更新が組み込まれていくことになります。これによって研究者側に大きなインセンティブが生まれるという構想のもと、各大学がコアファシリティを構築を進めているところであります。
もう一つの柱として、技術職員が技術支援人材を育成して適正配置し、設備の共用化を支え、研究者を支援するという改善も図られています。現在、15の大学が採択され、それぞれのコアファシリティの整備が進み、ほぼ完成に近づいている状況です。
もちろん全ての大学でこのような取り組みを行うことは困難ですが、採択された大学が、将来的にはハブとなって地域や様々な分野をつなぐネットワークを構築し、共用化を広く促進していくという将来像も構想されています。まだ御説明したいことはございますが、以上が先ほど御質問いただいた点への回答となります。
【大野会長】 網塚先生。
【網塚委員】 すみません、長くなりましたので。
【大野会長】 どうも詳しい説明をありがとうございました。
【網塚委員】 ありがとうございます。失礼します。
【大野会長】 どうもありがとうございました。あと10名ほどの皆さんが御発言されることになりますので、お一方、恐縮ですけれども、2分ぐらいで、会話が終わるようにしていただければと思います。申し訳ありません、栗原委員、お願いいたします。
【栗原委員】 ありがとうございます。私、この第12期に関しましては、産業界の立場で出席をさせていただいておりまして、社会実装ですとか企業連携、産業連携、地域連携などの観点で、いろいろな議論に参加をさせていただきました。
今回、研究力の低下を課題にしていましたが、産業界でも国際競争力の低下があり、この20年から30年、経済成長が低迷していたということは共通の課題としてあります。ですから、国力の源泉として、大学の中での研究力の向上だけではなく、産業界も含めた全体で、社会全体で上げていくことが共通の課題だと思います。したがって、今日、第7期に向けた施策の概要がございましたが、それぞれ重要ですが、これらの施策が大学の中で閉じた議論ではなく、ほかのステークホルダーと一緒にやっていくことを考えていただきたいと思います。 それらの連携が一つの大きな突破口になるのではないかと思います。
その中で特に人材に関しては、企業と大学との人材交流はまだまだ足りないと思っておりまして、実は財界でも、高等教育機関との連携を課題にしていますので、その辺も考慮していただくといいのではないかと思います。
【大野会長】 ありがとうございます。極めて重要な視点だと思います。狩野委員、お願いいたします。
【狩野委員】 ありがとうございます。何度も恐縮です。短めにします。
1つ目ですが、先ほどボトムアップの話を申し上げましたけれども、どういう人にお金を渡すかの優先順位のつけ方をこれから考えねばならない気がいたします。今の同じ物差しでは難しいかなと思っております。
それから次に、鷹野先生だったかおっしゃった情報の伝え方ですけれども、確かに背中を見せていくことによってロールモデルが見えるというのは非常にいいかなと思いますので、そういうことも、文部科学省の皆様と御相談していきたいなと思って伺いました。
高橋先生がおっしゃっていたPh.Dの経験の意味ですが、私なりに人文系の方とも話して考えたこととしては、人文と理系の違いは何かというのが1つ目に大きくあるとすれば、理系は人間全員に共通する心理を探した人たち、その趣味の人が多くて、人文系というのは人間がそれぞれ違うことに興味がある人が多いかなと思うんですけど、そこらをうまくつなげられるようにしたいと思いますが、それも通じて同じ言い方をすると、自分だから思いつけたことを集める情報としてほかの人に受け入れてもらえる力というのがきっと学問の力かと思います。これは産業でも重要ではないかと思っておりまして、例えば自分のアイデアに出資してほしいときはそういう言い方をするしかないと思うので、こういう力を高めていくという言い方がどうかなと思いました。
それからあと、五十嵐先生が社会への受入れについてお話しになりましたけど、社会は当然人でできておりますので、先ほどの人材で申し上げた、より多くの人に研究的な考え方も知っておいていただくという考え方が大事かなと思っていて、でないと、なぜそのような活動に意味があるのか分かってくれる人が少なくて、支援もしてもらいにくいのかなということを思っております。
ということで、既存知識を把握する力だけじゃなくて組み合わせて新しいのも出す力というのをちょっと教育で考えていく必要があるなということを思いました。
以上です。
【大野会長】 ありがとうございます。それでは、村山委員、お願いします。
【村山委員】 村山です。102ページです。エコシステムの話なんですけれども、今まで技術力に関するエコシステムというのはあったんですけれども、実は日本は文化が強いにもかかわらず、このエコシステムをつくることが非常に遅れているんです。ここを実は私、試みましたので、その経験を少しお話しして、端的にお話しして、今後の助成の仕方なんかを考えていただければと思います。
実は10年以上前に文部科学省からお金をいただきまして、同志社大学のビジネススクール内に伝統産業グローバル革新塾という塾をつくりました。これはビジネススクールの教員がマーケティングだとかファイナンスだとか、そういう話を職人に話をするんです。職人がその知識を得て文化ビジネスとして立ち上げるということなんです。
それで新しい製品を開発してもらって、1年目に座学をやって、2年目に実際にパリにその製品を持っていって、東京でもやりました。それでそれなりの成果はあったんですけれども、そこまでだとエコシステムにならないんですよね。でも、助成はそこで切れるんです。実はそこから勝負で、私はそこでやめたくなかったので、何とかその中から人を探し出して、ビジネスを立ち上げてほしかったんです。たまたま1人、そこから出てきまして、文化ビジネスのコーディネーターの仕事をし始めました。
ところが大変苦労しました。というのはもう180度回転するんですよ。今までお金をもらって文化ビジネスやっていたのを、それを全部稼ぎ出さなきゃならないと、自分の生活費まで稼ぎ出さなきゃならないという話です。そこでもう行き詰まってしまって、何度も何度も私のところに相談に来るわけです。そこでアドバイスしないと絶対倒れています。
だから、このエコシステムつくるためにはこれ一、二年じゃ絶対駄目で、恐らく10年ぐらいそれをし続けないと、ちゃんとしたビジネスにならないんです。それである程度できるようになって私が言ったのは、私はちょうどリタイアしたので、一つ、アンダーグラデュエイトの事業を持っていたのを彼に任せたんです。それで任せてやらしたら、私以上に評判がいいんです。だから、明らかに実際にそれが使えて新しいところにステージに入っていったということなので、だから、これはエコシステムというと相当時間がかかるので、それを見据えた助成の仕方というのをぜひとも考えていただきたいというのが私の意見です。
以上です。
【大野会長】 ありがとうございます。それでは、佐伯委員、お願いいたします。
【佐伯委員】 どうもありがとうございます。103ページの施策の2、人材の育成に関して幾つかコメントさせていただきます。
若手研究者へのメッセージ、非常にいいという話もありましたが、私も非常にとてもいいメッセージだと思いました。最近学生と話しても、研究者の待遇がそれほどよろしくないとかそういった話にどうしてもなってしまうので、そうではなくて、研究者というのもいい仕事なんだということを若手研究者に知っていただくというのは大事だとは思います。
ただ、こういった周知はもっと早くからやるべきであると。つまり、修士課程から博士課程に進学する学生の数が減っている、あるいは横ばいであるという話もありましたけれども、もっと早く高校生、もっと早くと言えば小学校、中学校、そういった頃からアウトリーチ活動をしっかりやって、こういった研究の仕事というものが非常に価値のある社会に非常に貢献ができる、やりがいのある仕事であるということを子供たちに、あるいは若い人たちに伝えていく、そういった活動が必要なのではないかと思います。
場合によってはちょっとなかなか難しいかもしれませんが、大学の入試、入試問題などでも、うまく活用しながら小中高で習っている様々な科目の内容が、その後で一体社会にどのように役に立っているのかとか、そういったことを子供たちに分かってもらえるようなことをやっていくと、将来、博士課程に行って頑張るんだというような子供たちも増えてくるのではないかと期待したいところでございます。
それからもう1点は、キャリアパスの支援についてですが、例えば大学生、大学院生、インターンシップに行っている学生も多いと思います。ただ、非常に短い期間で終わっている場合が多いようですので、ジョブ型インターンシップというシステムもありますけれども、企業などに長期間、できるだけ長い期間行って研さんを積んで、実際の現場でどういったことが行われているかというのをしっかりと知るという機会の拡充、そういったことも必要かと思います。
それからキャリアパスの一つの可能性として、企業の研究者を目指すというのももちろんありますし、アカデミアの大学等で研究者になるという道もありますけれども、今後、URなどの研究支援員、そういったものも一つのキャリアパスとして確立できたらいいなというのは個人的に思っているところです。研究者の様々な業務、だんだん増えてきております。研究支援員という存在がとっても重要になってきている、私、個人的にそのように思っておりますので、そういった人材も必要であると。そこに博士課程のキャリアパスの一つとしての道を見つけられたらいいのではないかと思っております。
私から以上です。ありがとうございました。
【大野会長】 どうもありがとうございました。それでは、菅野委員、お願いいたします。
【菅野委員】 ありがとうございます。菅野です。手短に2点ほど。
まずは人材に関しての先ほどの修士からドクターの問題です。私の個人的な印象ですが、ドクターに行く人材を企業と大学とで取り合っているという状況で、大学は完全に負けているというのが私の印象です。大学の研究が魅力的なのは無論ですけれども、そこを何とか、先端的な分野では考える必要があると思います。その人材が企業に行った後、やはりバックトゥーベーシックが必要というので、大学にもう一度、博士を取りに戻ってくるというルートがあります。実際、数多くのドクターの企業からの受入れを行っているところもあります。様々な年代において、教育、ドクターの育成を考えるというのが重要ではないかと思いますし、それは、この場でも産学合わせて考えることかなと思います。
2点目、日本には大学が多いので、そこの研究者を最大限活用する、活用という言い方はおかしいですけれども、共に研究を行うべきだということに関してです。文科省のプロジェクトでDXのプロジェクトが走っています。データを基に新しい材料を創出するというプロジェクトです。日本には様々な大学で多くの材料研究者がいるので、ぜひある拠点のプロジェクトと言えども、そのような研究者を最大限利用すべきであると考えます。それには多分今、設備の共用化というのが進んでいますけれども、共用化した様々な設備から出るデータというのが、非常にデータ蓄積にとっては重要になると今後考えます。
そのようなデータをうまく利用する人材も含めて、まとめた、相応した施策が必要ではないかと考えます。あとゼロからイチの人材ですけれども、そういう人材を育てるというか、邪魔しないというのが一番かと思います。それには、そのような人材を抱える余裕が必要であるということをちょっと付け加えたいと思います。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございます。人材、社会と取り合ったとき、大学がどういう工夫ができるかというのは非常に重要なポイントだと思います。次に久世委員、田中委員という形で発言をしていただきたいと思います。久世委員、お願いいたします。
【久世委員】 手短に、人材のところ、89ページですか、これ全て重要なんです。このうちの2の社会で活躍する多様な人材の育成・確保は非常に重要なテーマだと思っています。そんな中の2番目の専門人材の育成・確保の中に、博士人材も含め、研究からビジネスにつなげる人材の育成とか、それから、研究開発マネジメントができる人材、それから、専門性を生かして研究を「共創」していく人材、これは大学だけではなくて企業のほうでも、非常に重要なテーマでやっておるんですけど、ここに対して何か委員会のほうで具体的な、部会のほうで何か施策があったのかどうかという点で、例えば我々産業界でも行っていますので、20社から25社ぐらいの研究開発のメンバーとマーケティングのメンバーがもう会社、ソニーさんとか、パナソニック、トヨタ、日産、NTT、いろんな会社があるんですけど、その研究開発のリーダークラス、経営者も入ってマーケティングと研究開発のチームが企業もごっちゃになって4回ぐらい集まってやるんです。
それで、やっぱりここでやっているような議論のなかなか研究者のほうが市場だとか、社会のインパクトを意識して研究開発ができない。マーケティングというのはやっぱり会社のほうで事業のほうをどう引っ張って、どの方向に行くか。そこのチーム同士の間にも壁があると。そこは1個の企業の中でやるんじゃなくて、企業クロスでこの課題をどうやって解いていけるんだろうということをやっているんです。
私はそこに本当に大学の方が、博士課程の学生さんであったり、ドクターの学生であったり先生方も入ってもらうと、もうちょっと違うこともできるかなと思っていまして、何かその点を少し具体的に何とかしようよという話があったかどうか教えていただけますでしょうか。
【菅野委員】 残念ながらまだそこまで具体的なっておりませんので、これからぜひと思いました。ありがとうございます。
【大野会長】 よろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございます。
それでは、田中先生。
【田中委員】
今ちょうど人材が出たので、私は国立研究開発法人におりますので、ちょっとだけコメントをしたいと思います。
皆さんおっしゃったように産学官という言葉があって、それぞれやっていかないとね、というその理念としてはすごくよく分かっていて、それぞれ施策を打っておられると思うのですけれども、やはりなかなか社会全体に浸透するのは難しいというのが現実だと思います。今言ったからといってすぐ効果が目に見えることもあるのでしょうけれども、もう少し息長く考えていかないとなかなかうまくいかないのかというのが現実と思うので、ぜひとも今やっていること以上にいろいろもうちょっと産学官がうまく回るような施策というのがあればいいなと思いました。
もう一つは、井上局長がきちんと最後に非常にコンパクトに103ページに、まとめていただいたものは、どれも重要な施策だと思いますし、観点だと思うのですが、この1ページにまとめるというのはなかなか大変なことだと思うのですけれども、口頭でおっしゃっていましたし、村山委員もおっしゃっていましたけれども、やっぱりつくるというのもすごく重要です。その後のフォローアップのサポートというか、見ていくか、場合によってはフェーズが変わったときに、これに書かれていないようなことをサポートする必要が出てくるかもしれないということを踏まえて、息長く見ていくのが重要かなと思いました。
ちょっとずれるかもしれないのですけれども、やっぱりその施策を打ったからといってすぐ効果が出るもの、あるいは例えば、さきにお話にも出た博士の生活のサポートなどは年々よくなっていると思うのですけれども、たとえ今マスターで入られても、5年くらいたたないとドクターは取れないわけですよね。ということは効果が出るのはもう少し、この期の間にすぐ出るものもあれば、期をまたがってもうちょっと長期的に見ていかないと効果が出ないということもあると思うので、施策はどんどん打っていけばいいと思うのですけれども、モニタリングや評価のほうはもう少し、場合によっては、項目によってはもう少し長い視点で見るべきじゃないかといつも感じます。
以上、長くなりましたけど、コメントです。
【大野会長】 ありがとうございました。寺井委員。
【寺井委員】 すみません。今の御発言に関連するんですけど、私はたくさん使われているエコシステムというキーワード、このエコシステムのエコの意味合いをもう少し明確化するほうがいいのかなと思います。
資料の中では、括弧書きで高効率な研究環境の実現と研究資金改革、これがエコシステムですよと述べられておりますけども、そもそもエコというのは環境にやさしいという意味合いもよく使われるんですが、今回の場合は、逆に研究者にやさしいとか研究者ファーストの仕組みなんだと打ち出すということも考えられますし、あるいはもともとエコロジーのエコでございますから、自然の持っている自己修復機能とか自立性なんかを考えますと、人間のつくった仕組みや制度なんだけど、自己修復性を持っている。田中先生がおっしゃったような意味合いでの、そういうシステムをつくるんだということを打ち出されてもいいのかなと少し感じました。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございます。日野委員、お願いします。
【日野委員】 3点ございます。まず1つ目、最後のページの各施策についての1と2と5にあります。1ですけれども、これは言ってみれば研究のインフラをつくろうという話で非常に大事で、1足す1を2以上にしましょうということにつながると思いますが、やっぱりこの持続化をしっかり考えていただきたいと思います。
それともう一つは、こういう最先端の研究装置をつくるのはみんな先生方が自分のアイデアを実現するために注力されているわけで、最初はオンリーワンをつくっているんです。だけど、そのオンリーワンがいずれ広く使われるようになるというのを今まで私たちは見てきているので、オンリーワンからこの新しいシステムに入っていくという循環ももう一つ。だから、好循環と持続可能性をしっかり考えたものを検討いただきたいと思います。
施策の2ですけども、主役を育てるのはすごく大事なんですけれども、やっぱり応援団をちゃんと増やすということもまた一つ非常に重要だと思います。先ほどから研究者、研究の中身をアウトリーチで出すのも大事なんだけど、研究者を見せる。研究者というのはどういう人たちか、研究をやっていることが楽しいというのは、研究をやる人もそうですけど、その人たちの親にも伝わるはずなので、そういうことでぜひだから主役だけじゃないということも少し考えたいと思います。
それから、5つ目の知の価値化ですけど、価値というのは何か、経済的な価値が優先されがちですけれども、必ずしもそうじゃない。やっぱり文部科学省でやっていることですから、心の豊かさとか、そういうことに知がどう、学術がどうつながっていくかということもぜひ考えていただきたい。全部感想です。
以上です。
【大野会長】 どうもありがとうございました。これで皆様一通り、御発言をされたと思います。
どうしても一言という方がいらっしゃいましたら最後にお受けしますけれども、よろしゅうございますか。
それでは、どうもありがとうございました。本日の委員の皆様からの御意見も踏まえて、次期の科学技術・学術審議会においても、科学技術、学術の振興について引き続き御議論いただければと思います。また、文部科学省におかれましては、次期基本計画の策定に向けて検討のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
その他ですが、議題の最後、その他でございますけど、皆様から何かございますでしょうか。
それでは、最後に、今期最後の総会ということで、私からも一言御挨拶を申し上げたいと思います。
この後、会長代理をお務めいただきました上田委員からも一言いただきたいと思います。まずは活発な御議論、誠にありがとうございました。また、それを支えていただいた文科省事務局の皆さんにも深く心より感謝申し上げます。科学技術は、各国において自らの競争力の中心だと位置づけています。非常に今強いドライブがかかっていると思います。この基盤をつくっているのは、言わば基礎研究であったり基礎科学ですので、そこが枯れないように、しかし、国際的な競争的環境にもちゃんと対応できるように私たちはしていかなければいけないと思います。
そういう意味で、2点申し上げたいと思いますけれども、やはりパラダイムが大きく変わったのではないかという認識を持っています。これはノーベル賞に象徴されますけども、AIを使ってノーベル賞を取る。あるいは人間の言葉をやり取りできる生成AI、これが物すごい進化をしていって、科学の生産性にも経済的にも、大きな波及効果があります。
これは科学技術が世界にもたらす大きなインパクトなわけですけれども、その社会的なコンテキストも含めて、科学技術・学術審議会の中でこなしていかなければいけない。そういう意味では人文学・社会科学の皆様が果たされる役割も極めて大きなものになったのだと思いますし、我々がそういう新たな言わばツールを使って、いかに科学技術を発展させるかということが、次期のメインテーマになるのではないかと考えております。
もう一つ付け加えますと、高等教育との生態系といいますか、再構築する必要があろうかと思います。もちろん大学はもとより、国立研究開発法人であったり、それらを社会変革、人材の巡回をはじめとして、社会とのエンゲージメントを強化すると。それによって社会変革に資するだけではなくて自らも変わっていく、そういったことが重要になってきています。
特に社会がこれだけ急激に変化するからには、我々もそのスピードを持った変化が問われていると、皆様の御議論をお伺いしていてつくづく感じた次第です。
ということで、皆様、委員をお務めいただきまして、誠にありがとうございます。深く感謝申し上げます。
それでは、上田委員、お願いいたします。
【上田会長代理】 それでは、私の意見を述べさせていただきます。
今日が2年間という区切りで最後になりますが、この科学技術・学術審議会のメンバーは、先ほど栗原委員からも少しお話がありましたように、産業界からの参加者は6名で、全28名の委員の中で、約2割ということになります。そういう意味では分野あるいは専門が異なるいろいろな委員の方々のお話を伺う機会となり、大変参考になりました。文科省はじめ、関係者の方々にお礼申し上げたいと思います。
今日は分科会での議論を経たまとめという形で、先ほど井上局長のほうからお話をいただきましたが、特にスライドの102枚目、103枚目にまとめられている内容は、私自身は産業界の視点でも5つの施策自体は非常によいと思います。これをどういうふうに今後具体化していくかというのが大きな課題になりますが、本日はこの5つの施策を具体化する際に、どういうことに気を配ってほしいか、どういうところに注意をしてほしいかという意見が多かったような印象を持っています。先ほどトップ100の成長クラスターにおける論文数の順位において、日本は2001年から低下傾向が見られるというお話もございましたように、基本的には、残念ながら日本の競争力が相対的に低下しているという報道も多いという状況です。例えば国際競争力ランキングでは、日本は1990年には世界1位であったけれども、2023年は世界35位で、過去最低を更新してしまったことがあります。
もう一つ、日本の半導体産業の売上は、1988年には世界で50%以上のシェアを持っていましたが、残念ながら最近は10%以下に低下してきているということもあります。こういう競争力の低下が言われる中で、5つの施策の具体化に当たってはやはりレベル感、あるいは視点が異なる意見もいろいろ出てくると思いますが、ぶれずに実行していくことが重要だと思います。
その意味で5つの施策を具体化するに当たって、大きくテーマを3つの分類に分けて、それを念頭に置いておくことが重要と思います。まず1つ目は、世界でトップを目指すテーマです。何があっても世界の中で抜き出る、世界でトップを目指すテーマというものが一つ目の区分になると思います。
2つ目は世界トップレベルを維持するテーマです。これは複数の各種競争がある中で、少なくとも日本は世界のトップレベルを維持するというテーマです。
3つ目は、残念ながら世界では競争力が低下したけれども、経済安全保障などの視点では挽回を図るべきテーマです。これら3つのテーマについて、めり張りをつけてやっていかないとうまくいかないのではと懸念します。
これはどういうことかといいますと、この3つはそれぞれ取るべき戦略や努力の仕方が異なるということで、この3つの視点で5つの施策の具体化が進むことを期待したいと思います。今日の内容は目指すべき方向性、あるいは第7期の基本計画の方向性という観点では非常によい内容だと思いますので、是非これら5つの施策の具体化に当たって議論を深めていきたいと思いますし、文科省のほうでもそういう議論の場をつくっていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。本当にありがとうございました。
【大野会長】 どうもありがとうございました。
それでは、最後に、井上科学技術・学術政策局長から御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【井上科学技術・学術局長】 先生方、今日も御議論ありがとうございます。
この第12期の科学技術・学術審議会総会の終了ということでございますので、事務局を代表して一言御挨拶を申し上げます。
まずは先生方におかれては大変御多忙のところ、当審議会の委員としてのみならず、また、分科会や部会にも積極的に御参加いただきまして、誠にありがとうございました。ただいまも大野先生からも、また、上田会長からもコメントをいただきましたけれども、やはり今世界が非常に速い速度でどんどん変わっている、また、科学技術の方法論も変わっている、イノベーションのやり方もどんどん変わっているというような中で、先生方におかれては、もうこの非常に難しい科学技術・イノベーションをどうしていくのかということについて様々な御知見をいただきまして、本当に感謝をしております。
昨年12月に、石破総理から諮問がございまして、次の科学技術・イノベーション基本計画策定に向けた検討が始まっておるところでございます。
日本の国力の向上のためには、科学技術・イノベーション、これが本当に重要だと私どもも思っております。これからも先生方から様々な機会を通じて御指導、御助言を賜り、今日お示しさせていただいた5つの施策、これをしっかりと具体化していくべく、私どもも尽力したいと思っております。
最後に、大野会長、上田会長代理をはじめ、これまでの先生方の御尽力に深い感謝を申し上げますとともに、申し上げまして、すみません。事務局を代表いたしまして、お礼の御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【大野会長】 ありがとうございました。それでは、最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。
【伊藤科学技術・学術戦略官】 事務局でございます。本日の議事録は後日事務局よりメールで送付させていただきますので、御確認いただきますようお願い申し上げます。また、確認後は文部科学省のホームページに掲載いたしますので、御承知おきくださいますようお願いします。
最後、本日の会議資料につきましてですけども、郵送希望される先生方、委員の皆様は事務局で手配いたしますので、マチつき封筒の上に置いてください。
以上でございます。
【大野会長】 ありがとうございます。それでは、これで科学技術・学術審議会第75回を終了いたします。委員の皆様におかれましては、2年間ありがとうございました。
科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(制度改革・調査担当)付
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