科学技術・学術審議会(第72回)議事録

1.日時

令和6年9月2日(月曜日)13時00分~15時40分

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室及びWeb会議

3.議題

  1. 情報委員会からの報告について
  2. 第7期科学技術・イノベーション基本計画の検討に向けた基本的な考え方について
  3. その他

4.出席者

委員

大野会長、上田会長代理、相澤委員、網塚委員、金井委員、狩野委員、菅野委員、久世委員、栗原委員、佐伯委員、佐藤委員、白波瀬委員、鷹野委員、高橋委員、田中委員、寺井委員、原田委員、日野委員、藤井委員、観山委員、明和委員、村岡委員、村山委員、門間委員

文部科学省

増子文部科学審議官、伊藤高等教育局長、井上科学技術・学術政策局長、塩見研究振興局長、千原科学技術・学術政策研究所、坂本サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、髙谷大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、先﨑科学技術・学術総括官、橋爪審議官(研究開発局担当)、金光大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官、藤原研究開発戦略課長、倉田参事官(国際戦略担当)、伊藤科学技術・学術戦略官(制度改革・調査担当)、柳澤大学研究基盤整備課長、中澤基礎・基盤研究課長、国分参事官(情報担当)、小川政策課企画官、根津研究開発戦略課企画官、髙見人材政策推進室長、助川学術企画室長、ほか関係官

5.議事録

【伊藤科学技術・学術戦略官】  会議開催前に事務局のほうからお知らせさせていただきます。
 本日は、対面及びオンラインによるハイブリッド形式で会議を開催させていただきます。
 なお、台風10号の影響で会場までの移動が困難な委員の先生方につきましては、急遽オンラインで御参加いただいております。オンラインで御参加いただいている委員の先生方におかれましては、表示される御氏名について、いま一度御確認くださるようお願い申し上げます。
 また、本日は公開で会議を開催させていただきます。傍聴登録された方はYouTubeで視聴いただくことになっていることを申し添えいたします。
 以上です。

【大野会長】  それでは、時間になりましたので、ただいまから、科学技術・学術審議会総会第72回を開催させていただきます。今お話がありましたように、台風10号の影響、あるいはもともと御多忙な中を御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、議事に入る前に、事務局から説明をお願いいたします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  本日の総会は、科学技術・学術審議会令第8条第1項に定める定足数の過半数を満たすことを御報告いたします。
 続きまして、前回の開催日、これは昨年の12月でございますけれども、それ以降、文部科学省出席者に人事異動がございましたので、紹介させていただきます。
 高等教育局長、伊藤学司です。

【伊藤高等教育局長】  よろしくお願いいたします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  科学技術・学術政策局長、井上諭一です。

【井上科学技術・学術政策局長】  どうぞよろしくお願いいたします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  科学技術・学術政策研究所所長、千原由幸です。

【千原科学技術・学術政策研究所長】  よろしくお願いいたします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、坂本修一です。

【坂本サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官】  よろしくお願いいたします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  科学技術・学術政策局担当審議官、髙谷浩樹です。

【髙谷大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)】  よろしくお願いいたします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  研究開発局担当審議官、橋爪淳です。

【橋爪大臣官房審議官(研究開発局担当)】  よろしくお願いいたします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  科学技術・学術総括官、先﨑卓歩です。

【先﨑科学技術・学術総括官】  よろしくお願いいたします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官、金光謙一郎です。

【金光大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官】  よろしくお願いいたします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  研究開発戦略課長、藤原志保です。

【藤原研究開発戦略課長】  よろしくお願いいたします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  振興企画課学術企画室長、助川隆です。

【助川振興企画課学術企画室長】  よろしくお願いいたします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  参事官(国際戦略担当)、倉田佳奈江です。
【倉田参事官(国際戦略担当)】  よろしくお願いいたします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  最後に、私でございますが、科学技術・学術戦略官の伊藤嘉規です。どうぞよろしくお願いします。
 次に、本日のハイブリッド形式による会議に開催に当たり、委員の先生方にお願いがございます。
 会場にお越しの先生方におかれましては、御発言の際は挙手をお願いいたします。職員がマイクをお持ちしますので、必ずマイクを通して御発言いただくようお願い申し上げます。
 オンラインで御出席の委員の先生方におかれましては、御発言の際は、手のマークの「挙手」ボタンを押すようお願いします。また、御発言後は、再度「挙手」ボタンを押して挙手を取り消すようお願い申し上げます。御発言時以外につきましては、「ミュート」にしていただき、御発言時のみ「ミュートを解除」を御選択いただくようお願いします。
 以降は共通となりますが、会場及びオンライン上でも聞き取りやすいように、御発言の都度お名前をおっしゃっていただくようお願い申し上げます。また、御発言に当たり資料を参照する際は、資料番号、ページ番号、また、ページ内の該当箇所などを分かりやすくお示しいただくよう御配慮願います。
 本日の資料につきましては、配付資料一覧に記載のとおりでございます。
 以上です。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ここでプレスの皆様も御退室をお願いいたします。
(報道関係者退室)

【大野会長】  申し遅れましたけれども、私、本審議会の会長をしております大野です。議事を進めさせていただきます。
 本日は、その他を含めて議題が3つございまして、議題1が情報委員会からの報告について、その後、第7期の科学技術・イノベーション計画の検討に向けた基本的な考え方について御報告をいただいた後、皆様と質疑、そして、意見交換をさせていただきたいと思います。
 それでは、早速ですけれども、議題1の情報委員会からの報告について、を始めます。情報委員会主査である相澤委員から御報告をお願いいたします。

【相澤委員】  情報委員会主査の相澤でございます。私から、情報委員会で取りまとめましたAIPセンターの今後の在り方について御説明をいたします。
 まず、経緯について御説明いたします。
 理化学研究所革新知能総合研究センター(AIPセンター)は、我が国のAI研究開発力を牽引するための拠点として、2016年度に理化学研究所に設置されました。また、昨年、我が国はG7の議長国として広島AIプロセスを主導し、「全てのAI関係者向けの広島プロセス国際指針」を取りまとめるとともに、今年2月には、この国際指針を踏まえ、我が国のAIの安全性を確保するため、AIセーフティ・インスティテュートが設立されております。
 AIが日常的に使用されるようになり、社会の関心や国際的な機運も高まる中で、日本のAI研究を遅延なく推進していくためにも、情報委員会においてAI研究開発の現状とその中でのAIPセンターにおける課題を整理した上で、同センターの今後の在り方を取りまとめました。
 以降、お手元の資料1に沿って御説明いたします。本資料は、項目として、5項目から成っております。それぞれの項目について要点を簡単に御説明いたしていきます。
 第1項では、AIの研究開発を取り巻く現状について記載しております。
 昨今、AIの発展により社会変革が始まっている一方で、AIを開発及び利用する際の安全性やセキュリティ面でのルールづくり、そのための研究開発の必要性・課題について国内外で議論が行われています。今後も、大規模言語モデル(LLM)のみならず、画像や動画を含む多様な形のデータも取り込んだ基盤モデルを中心として、AIの活用範囲が拡大されることが見込まれます。このような状況下で、我が国がAI研究を牽引するためには、様々な分野の応用に精通した人材の輩出と併せて、さらなる研究開発が必要であるということを記載しております。
 続きまして、次のページに行きまして、第2項、理科学研究所AIPセンターについて、現状をまとめております。
 AIPセンターは、国のAI戦略において、AI関連中核センターとして国内の研究ネットワークの整備・推進の役割を担うとともに、AIに関する理論研究を中心とした革新的な基盤技術の研究開発で世界トップを狙うセンターとして位置づけられております。国際的にもトップレベルの研究成果を多数創出し、AI分野の研究者の輩出にも大きく貢献しております。世界の研究動向が大きく変わりゆく中で、中核的なAI研究組織としての研究組織等の在り方について、柔軟かつ不断の見直しを行い、今後の方向性についても示す必要があると指摘しております。
 続きまして、次のページ、3ページ目に参ります。第3項では、情報委員会において、AIPセンターの今後の在り方を検討した際の留意点を箇条書にてまとめております。
 AIが抱える新たな課題に対応するために、センターとしての研究目標や方針を明確にしつつも、機動的に対応できるような枠組みづくりの検討や、これまでの成果を踏まえて、理研内でもAI研究の総括的な位置づけをして、各センターとの連携や助言機能を可能にするべきといった点を指摘しております。
 次のページに参りまして、4項目、AIPセンターの今後の在り方。前項で述べました留意点も踏まえて、AIPセンターの今後の在り方について、情報委員会にて議論を行った内容について取りまとめております。
 現在のプログラム終期は令和7年度となっていますが、国内外の卓越した産学の研究者をまとめるAI研究のハブとして、また、国際的に優れた研究者を輩出し、我が国のAI研究開発力を牽引するための拠点として、令和8年度以降も引き続きAIPセンターを設置すべきとし、10年後を見据えた次世代基盤技術を開発するための基礎研究の推進など、今後重点的に実施するテーマを5つ、箇条書の形で挙げております。その上で、今後の在り方について、3つの観点から指摘いたしました。
 まず、研究内容についてです。ページの中ほどとなります。
 研究内容に関しては、機械学習の数理的研究の深化、時々刻々と変化する実環境において汎用的に使える人工知能技術開発、科学分野における先端的な人工知能の活用を通した社会課題の解決や科学研究の加速を推進するべきとしております。
 なお、これらの研究の推進に当たり、先ほど申し上げましたとおり、安心してAIを利活用できる知識基盤の獲得を目指すとともに、AIセーフティ・インスティテュートの活動にも貢献することを期待しております。
 続きまして、次ページ、組織体制に移ります。
 組織体制について、これまで理研AIPセンターが築き上げた国のAI研究のハブとしての機能や、世界からのビジビリティを維持する役割を引き続き担っていくとともに、国内外の研究機関や企業との連携をさらに強化していく必要があることを指摘しています。
 また、理研全体の研究開発への波及効果創出のため、理研における他の研究センターとの協力により、AI関連研究を総合的に推進する機能を構築するとともに、最先端かつトップレベルの研究ができる研究体制が必要であると考えております。
 最後に、人材育成の項目に参りまして、人材育成については、情報科学技術分野における先端的な研究人材の質・量の両面での充実のための取組を引き続き実施し、特に、若手研究者の積極的な登用とセンターの研究への参画機会の提供を期待している旨記載しております。また、大学等に設置しますサブ拠点の活動を通した新たな取組や、民間企業との連携により、人材育成の活動を強化するべきであることを挙げております。
 次ページに参りまして、項目5、今後の研究の進め方です。結びとして、今後のAIPセンターの在り方の検討に当たりまして、センターの設置が理研であることを踏まえまして、理研が令和7年度から新たな中長期目標期間に入ることなどから、AIの研究開発を常に牽引できる体制の整備や事業実施期間について柔軟に検討する必要があることについて触れております。また、AI分野の研究人材が深刻に不足している中で、研究者にとって魅力的な研究環境を提供していく必要もあり、関係者の取組に期待したいと記載してございます。
 私からの説明は以上となります。コメント等ありましたらよろしくお願いいたします。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、情報委員会からの報告について5分程度、意見交換を行いたいと思います。皆様から御質問あるいは御意見ございますでしょうか。
 寺井委員、お願いします。

【寺井委員】  ありがとうございます。
 御説明ありがとうございました。私自身、別にAIの専門家でも何でもないのですけど、人間の脳の消費電力とよく比較されるようなことがあって、人間の脳というのは僅か20ワットと言われています。すなわち、ChatGPTに代表されるような大規模なモデルの消費電力が大変問題になるということで、今、1ページ目、AI研究開発をめぐる状況の中でもそれはしっかり書き込まれていて、正しい認識だと思うのですけど。その計算機の省エネ性能だけではなくて、結局はデータセンターとネットワークが消費する電力というのがもう計り知れないぐらい大きくなると危惧されているところです。なので、そういう意味では、こういう省エネという観点はもちろん大事ですけれども、ここの丸3番に書いているように、まさに20ワットで動くようなAI、これが本当に大事なのだなといったことを、感想で申し訳ありませんが、深く感じたところでございます。
 以上です。

【相澤委員】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 大変重要な御指摘をありがとうございます。省エネというのは、本当に世界規模の国際的な課題でございまして、今御指摘のありましたとおり、データセンターですとかGPUをはじめとする高性能の計算基盤の電力を省エネの形で設計する技術ももとより、計算のアルゴリズムとして、いかに人間の脳を参考にしつつ、同じような機能をより計算パワーの少ない処理で実現するといった、まさに理研の目指す革新的な計算原理の研究も必要になるという理解でおります。そういったこともAIPセンターのミッションとして意識をするように、今後の検討にも含めてまいりたいと考えております。

【大野会長】  今、オンラインで挙手をされている藤井委員、お願いいたします。

【藤井委員】  ありがとうございます。
 1つだけ御質問させていただきたい。この間、生成AIも含めて、AIの研究開発に関係する国際的な環境、状況が大きく変化している中で、AIPセンターは日本のAI研究のハブということですが、世界の民間におけるAIの開発の動きや、日本の企業におけるAIに係る研究開発との関係において、どういう位置づけで国のAI研究のハブを担っていくのか。民間との関係性について、議論としてどのように整理されたのか、教えていただきたいと思いました。

【相澤委員】  ありがとうございます。
 民間との切り分けという形で線を引くといった形の議論は行っておりませんが、AIPの果たすべき機能の大きな柱として、人材育成ということは強調して掲げております。研究者の不足が各所から指摘する中、AI人材、特に、最先端の技術を有して国際的にも強く、国際的なコミュニティの中に出ていくことができるような人材に対して、優れた研究開発を提供し、育成していくということが、一つ重要なミッションになるという形の指摘をしております。
 AIの進歩が非常に速い中、個々の技術について、この部分は民間がするべきといった線を引いていくということは、柔軟に運用する中で議論を行っていくべきと考えております。
 もし事務局から何か補足がありましたら、よろしくお願いします。
 よろしいでしょうか。
 では、以上、回答で、よろしくお願いします。

【大野会長】  どうもありがとうございます。

【国分参事官(情報担当)】  文部科学省の情報参事官ですけれども、よろしいでしょうか。

【大野会長】  どうぞ。

【国分参事官(情報担当)】  すみません。1点補足させていただきます。
 藤井先生御指摘の点は非常に大事だと思っておりまして、特に昨今の状況ですと、生成AIに関する民間との連携というのは非常に重要になってきていると考えております。このAIPセンターは、どちらかというとアカデミア寄りのプロジェクトではありますが、もう一つ、我々のほうでは、AIPセンターの先生も入った形で、生成AIに特化した形の、聞かれたことがあるかもしれないですが、LLM勉強会というのを母体とした、生成AIに関する安全性や透明性を確保するための研究開発拠点を国立情報学研究所につくらせていただいております。そちらのLLM勉強会のほうには今1,600人程度参加者が産官学から集まって日々情報共有しながら、特にどうやって生成AIの信頼性・透明性を確保していくかという観点で研究が行われていますので、そちらのほうに集約している状況でございます。
 以上、補足でした。失礼します。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 ほぼ時間になりましたが、それでは、栗原委員、お願いいたします。

【栗原委員】  若干今のことと関連するのですが、研究内容の中に、いろいろな社会課題の解決や科学研究の加速として、医学・医療、防災・減災等がございます。民間ではありませんが、理研の中の各センターとの協力もそうで、理研の中に閉じるのではなく、ほかの機関との連携というのが極めて重要だと思います。したがって、組織体制の中にも書いていますが、こうしたハブを担う人材、あるいは体制を意識して進めていただければと思います。
 以上です。

【相澤委員】  サブ拠点の活動等も通して、意識して進めてまいりたいと思います。ありがとうございます。

【大野会長】  それでは、よろしゅうございますか。次の議事に入りたいと思います。
 議題2ですけれども、第7期科学技術・イノベーション基本計画の検討に向けた基本的な考え方についてです。
 まずは、この議題の背景を文部科学省から簡単に説明していただきます。

【藤原研究開発戦略課長】  研究開発戦略課の藤原でございます。
 この議題の背景といたしまして、御案内のことかと思いますけれども、令和3年度から開始されました5か年計画の第6期科学技術・イノベーション基本計画というものは、今年4年目を迎えまして、来年度が計画の最終年度ということになっております。
 また、今年6月に閣議決定されました経済財政運営と改革の基本方針2024、いわゆる骨太の方針でございますけれども、こちらにおいてもこの基本計画に関する記載というのがございまして、この次期基本計画に係る検討を年内に開始するということが位置づけられてございます。
 つまり、今後、総合科学技術・イノベーション会議、そして、その事務局である内閣府を中心に、次期基本計画に向けた検討というのが進められる見込みでございます。そのため、科学技術・イノベーション政策の一翼を担う文科省といたしましても、その検討の参考になるよう、次期基本計画に向けた考え方というのを整理していきたいと考えておるところでございます。
 そのため、この検討といたしましては、まず、本審議会の下の分科会、部会、委員会、その中でも特に分野横断的な内容を扱っておりますところで、第7期基本計画に向けての現状の課題などの整理、そして、それを踏まえた取組の方向性といったところを検討していただいておりました。
 一方で、文科省内におきましても、第7期計画に向けて、事務方で考えております基本的な考え方というのを並行して整理をしてございます。
 本日は、最初に各分科会等からの御説明、そして、私ども事務方での検討の状況につきましても御説明をさせていただければと思っております。
 私からの御説明、以上でございます。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 第7期科学技術・イノベーション基本計画を取りまとめるに当たって、その検討の助走が始まったということで、本審議会でも検討し、意見を述べていこうということであります。
 この後、各分科会、あるいは、部会、委員会からの御報告をいただき、その後、今の話にありました藤原課長から文科省の様子を御報告いただいた後、御質問なども受けながら意見交換を進めたいと思います。
 ということで、お一人必ず一回は発言していただけるように時間配分をしたいと思いますので、お話しになる時間は1人3分ぐらいを目安にお考えいただければと思います。
 それでは、各分科会等からの報告ですけれども、まずは学術分科会、こちらは私が分科会長を務めておりますので、私から説明をさせていただきます。
 資料としては、2-1-2が一連の基本計画に向けた学術分科会としての意見が文章でございますけれども、今日は御説明としては、この前の、今出していただいていたポイントというところを1枚使って御説明させていただきたいと思います。
 学術分科会におきましては、次期基本計画に向けて、学術研究の意義、あるいは、現代的な役割、さらには、それを発展させるための方策、国際的に見た研究力の相対的な低下傾向を反転させるための取組などについて議論を行い、委員各位から様々な意見をいただきました。それらを取りまとめたのがこの全体であります。
 まず、ここにありますローマ数字の1、学術研究の意義・現代的な役割でございますが、学術研究・基礎研究の重要性は、現行の基本計画においても記載されているところです。次期基本計画においても、引き続き学術研究・基礎研究を政策の重要な柱と位置づけ、力強く推進していくべきであるということが私たちの基本的な意見であります。
 今もお話にありましたけれども、近年の生成AIを含む人工知能をめぐる技術の急速な発展は、社会にさらなる成長をもたらすと同時に、数年後の世界を予測することも難しくなるというような不確実性をもたらしています。コロナについても同様なことが言えるかもしれません。
 未来を切り拓(ひら)き、そして、予期せぬ変化に対応するためには、多様な「知」が重要です。つまり、多様な学術研究・基礎研究を安定的・継続的に実施し、「知」を蓄積して、将来の「知」を生み出す人を育て、社会の価値を創造することは、社会が持続的に発展し、さらに未知の変化に対応するために必要な「基礎体力」であると今ここでは位置づけています。また、これが人間や社会の在り方に関わり、価値創造として花開くとき、イノベーションという果実をもたらすわけです。
 我が国の研究力は相対的に低下傾向にあると指摘されていますが、我が国が引き続き世界をリードしていくためには、この学術研究・基礎研究をこれからも継続的・安定的に推進することが必要不可欠であります。
 続いて、このえんじ色のところのローマ数字の2ですけれども、多様で質の高い研究成果の創出には、研究者が個々の知的好奇心に根差した独創的な研究に踏み出せる資金があること、そして、そのような研究ができる環境があることが重要です。これには、個々の大学等の強み、あるいは、特色の強化や、組織文化を超えた連携の強化・拡大が重要です。また、研究の国際性を高めていくということの必要性も言うまでもありません。
 これらの観点を踏まえ、次期基本計画に盛り込むべき方向性を、その下の(1)から(2)、(3)のとおりに整理しています。(1)が左上、(2)が一番下、(3)が右上というレイアウトになっています。
 (1)の研究者の知的好奇心に根差した独創的な研究の強力な後押しに関しては、現状の課題として、グレーの部分のところに少し書いてございますけれども、研究者一人当たりの定常的研究経費が減少傾向であること、円安・物価高騰により、実質的な配分額が、科学研究費も含めて目減りしていることなどをここでは指摘しています。
 そうした課題を踏まえ、基盤的経費の十分な確保、そして、多様な財源の確保等により、大学や研究者の活動の基盤となる柔軟性の高い経費を充実させること、科研費については、質的充実・量的拡大を図ること、創発的研究支援事業の定常化等により、若手研究者が自由で挑戦的・融合的な多様な研究を安定的に取り組める環境を整備すること、それが後押しとなるということをここでは申し述べています。
 続いて(2)、下ですけれども、大学等における研究環境の改善・充実、マネジメント改革です。
 研究者が研究に専念できる環境を整備するためには、研究の質・量を改善・充実させるためのマネジメントというものが求められます。研究環境に関する現状の課題として、例えば、予算の制約により研究設備・機器が老朽化・陳腐化していること、あるいは、研究者が研究時間を確保できていないこと、関連して、欧米に比べて適切な分業が進んでおらず、研究者の業務負担が重いということ、改善策に関する優れた取組も存在していることは存在していますけれども、全国的には、それがやり切れていないということが挙げてあります。
 これらを踏まえて、取組の方向性としては、コアファシリティ化を我が国全体でさらに効率的・効果的に推進すること、そして、それによって若手も含めた意欲ある研究者の研究設備・機器へのアクセスを確保する。研究時間の減少に関しましては、その要因を調査・分析して、その上で、対応策の例とともに分かりやすく発信し、各大学等の取組を国が支援・後押しするということです。
 そして、各ファンディングエージェンシーにおいても、申請者あるいは審査者の負担軽減のための取組を進めること。研究開発マネジメント人材や技術職員に関しても、その能力がさらに発揮できるようにし、研究者との相乗効果を生み出すため、各大学の経営層が適切な分業体制の構築や適正な評価・処遇を行って、政府においても、ガイドラインの策定やOJT研修の創設等によって取組を加速させることを求めています。好事例の可視化と、優れた取組を分野を超えて全国的に波及させること、そして、各大学の取組の意義・有用性を社会に対しても分かりやすく説得力のある形で発信することが重要だとここでは主張しています。
 そして、(3)、これは真ん中右ですけれども、日本全体の研究力発展を牽引する研究大学群の形成です。
 我が国は、多様な規模の多数の大学が研究活動に参画しており、この多様性は我が国にとって重要な強みです。そうした多様性をさらに進化させ、日本各地の研究者のポテンシャルを最大限引き出すことが重要ですが、我が国のトップ層の大学の生み出すインパクトの高い論文は必ずしも多くなく、また、中小規模の大学も含めた全国の研究者のポテンシャルを引き出す学術研究基盤の整備が十分とは言えないということが課題であります。
 これらを踏まえて、今後は、国際卓越研究大学制度やJ-PEAKSを契機とした意欲ある研究大学の育成を進め、各大学のビジョンの実現に向けた改革を継続的・安定的に後押しし、個々の大学の特色・強みを最大化することが求められます。
 さらに、大学の枠を超えた共同利用・共同研究体制の機能強化を図るとともに、全国に点在する研究者のポテンシャルを引き出し、我が国の研究の厚みを厚くするという必要があります。
 ということで、最後に申し述べておりますけれども、本意見が今後の政府における次期基本計画の検討に生かされることを期待するとともに、本分科会としても、引き続き、関係の部会、そして委員会と連携し、これまでの施策の評価も踏まえつつ、今後の取組の方向性の具体化の議論をさらに深めていきたいと考えてございます。
 私どもの分科会からの御報告は以上でございます。
 まずは御報告をいただいて、その後、質疑応答・意見交換に入りたいと思います。
 それでは、続いて、産業連携・地域振興部会より、久世部会長から御説明をお願いいたします。

【久世委員】  産業連携・地域振興部会の報告をさせていただきます。
 資料は、通し番号で21番から28番まで、8ページあります。今回取りまとめた文章は、「産学連携」、「地域振興」、「人材育成」の3つの項目から構成されています。
 私の隣におられます栗原部会長代理、上田委員、高橋委員、私の4名の委員と、16名の臨時委員で議論をしてまいりました。毎回、活発な議論となり、2時間の予定時間では不足することも少なくありませんでした。委員のみなさまから、貴重な御意見や御指摘を多くいただきました。それらの議論を踏まえ、産業連携・地域振興部会として、「今後取り組むべき施策の方向性について」ということで取りまとめました。
 まず、「産学連携」です。大学等に眠るイノベーションにつながりうる研究シーズを、より多く発掘することが重要になっています。それに加え、経済社会の成長を推進するため、大企業と大学発スタートアップの連携を行うこと。大学発スタートアップの創出自体の強化を図っていくこととしています。さらには、大学等におきまして、知財マネジメントの重要性について言及しています。産学連携に関するノウハウや好事例の蓄積を増やし、共有していくことが必要です。
 今後の施策の方向性としては、大企業とスタートアップの連携を推進し、連携に関する専門人材の配置、スタートアップと大学の共同研究の支援、大学の知財の管理・活用を行う専門人材の育成、官民ファンドによる投資も含めて民間投資を呼び込むことによる資金供給環境の整備、スタートアップ・エコシステム形成支援の充実等に言及しています。
 次に、「地域振興」についてです。
 地域の中核・特色ある研究大学(J-PEAKS)の機能強化に向けた取組を着実に進めます。これらの研究大学群が日本全体の研究力向上や研究環境の整備等を進め、強みや独自性を活かして国内外の社会課題の解決に貢献することが必要です。あわせて、地域におけるイノベーション・エコシステムの形成や地域経済の活性化に資する研究開発を促進することとしています。
 今後の施策の方向性としては、将来の産学官共創を牽引できる研究者が地域の課題解決に寄与し得るグローバル水準の研究を行い、それらの研究を通じた人材の育成や人材の流動化に資する産学官共創拠点の形成、地域の中核となる大学の機能強化に向けた支援の充実、地域におけるスタートアップ創出力の強化に向けたスタートアップ・エコシステム形成支援の充実等に言及しています。
 最後は、「人材育成」についてです。
 スタートアップを担う人材の育成や国内外のネットワーク構築のため、ニーズを踏まえてアントレプレナーシップ教育を提供する機会や質の向上を図ることとしています。
 今後の施策の方向性としては、「アントレ推進大使」の活用や海外派遣などの教育メニューの充実を図り、アントレプレナーシップ教育の支援を行うことに言及しています。
 4ページ目以降から具体的な施策についてです。「新たなオープンイノベーション推進等による成長支援」、「知財活用支援の強化等」、「アントレ教育の抜本的強化」、「将来の産学官共創を牽引する研究者の共創拠点の形成」について議論しました。
 まず、「新たなオープンイノベーション推進等による成長支援」です。ディープテックに強みのあるスタートアップの成長に向けて長期的で大規模な投資が十分されていない。基礎研究をはじめとするスタートアップ創出後の支援がほとんど実施されていない。スタートアップと大企業の協業などによる成長モデルを十分に創出できていない、などが課題となっています。また、大学がそのアセットを活用して、関係企業とスタートアップを接続するプラットフォームとするため、連携を促進する体制や共同研究の支援等が必要といった背景・課題があります。
大学発スタートアップの成長を含めた研究成果の社会への還元を促進するため、多数の企業とスタートアップをより緊密に連携させるための専門人材の配置等の一貫したコーディネーション機能を大学に付与すること。また、大学発シーズの市場価値を高め、社会実装を加速するため、創業後に必要な研究開発について共同研究の経費等を支援することとしています。
 「知財活用支援の強化等」については、大学の知財体制の中心となる知財ガバナンスリーダー等の人材不足、各大学の産学官連携の参考となる好事例等に関する情報不足、知財ライセンス収入拡大に向けた知財の取得・活用の好事例不足、といった背景・課題があります。
 大学の知財体制の中心となる「知財ガバナンスリーダー」の育成等により、知財人材育成を充実・強化し、各大学における産学官連携を円滑に推進する施策や知的財産の取得・活用等の好事例について共有を図ることで、大学の知の活用を最大化することを目的として、JSTの研修の拡充等を実施することとしています。
 「アントレ教育の抜本的強化」については、全国へのアントレ教育の普及・展開を現在も進めていますが、学生・教員・保護者を含め、まだ認知が不十分であること。また、小中高校生向けなど早い段階からのアントレ教育や修士・博士課程向けの実践教育など、アントレ教育実施メニューの充実や対象拡大への大学・学校等現場からの期待が顕在化しているといった背景・課題があります。
 希望する全ての学生等がアントレ教育を受けられるように、普及・展開のためのプラットフォーム機能やアントレ大使による普及・啓発、先導的プログラム開発、情報発信など、アントレ教育の質・量の向上を図ること。また、大学等を通じまして、小中高生など早い段階からの風土醸成や、博士課程学生等の実践的教育を充実させることなどを目的として、全国のエコシステム共創拠点都市の各プラットフォームで実施する大学生等や小中高生向けのアントレ教育について、新たに2つのプラットフォームに拡大します。さらに、アントレプレナーシップ教育の受講機会の大幅拡充、認知度拡大のため「アントレプレナーシップ推進大使」を現場に派遣する取組の推進を実施することとしています。
 「将来の産学官共創を牽引する研究者の共創拠点の形成」については、将来の産学官共創を牽引する研究者においては、産学共創のタネとなる研究成果の創出経験や企業等との連携経験が不十分です。また、地域の大学では、意欲があっても体制が不十分なために産学官共創を十分に行えていない。さらには、将来的に産学官共創拠点を創出する際には、優秀な研究者を地域の大学に呼び込む必要があるといった背景・課題があります。
 これらのことから、将来の産学官共創を牽引する研究者が地域課題に根差しつつ、課題解決に寄与し得るグローバル水準の研究成果・イノベーションを創出すること。それらを通じた産学連携やマネジメント等の経験を有する人材を育成すること。また、地域の大学で活躍できる研究者の人材の流動化にも資することなどを目的として、「共創の場形成支援事業」について、地域の大学・将来の産学官連携を牽引する研究者を対象として、地域の大学が地元企業や自治体等と地域課題を徹底的に絞り込み、解決すべき課題をブラッシュアップ、次に課題解決に資する研究を将来の産学官連携を牽引する研究者が実施するという、段階的な実施を行うプログラムを新たに検討しています。
 以上です。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、国際戦略委員会から、菅野主査から御説明をお願いいたします。

【菅野委員】  では、国際戦略委員会より御説明させていただきます。
 国際戦略委員会では、次期科学技術・イノベーション基本計画に向けた検討を見据えて、今春より有識者のヒアリングを行いつつ議論を進めてきました。これまでの議論を一度整理し、「科学技術・イノベーションにおける国際戦略(中間まとめ)」として取りまとめました。資料の29ページから34ページです。本日、この中間まとめを御説明させていただきます。
 国際戦略委員会では、留意すべき現行基本計画策定時からの変化、検討に当たっての背景をまず整理した上で、方向性として、開放性を持った研究環境や国際連携の重要性の再確認、今後の国際連携に重要となる研究インテグリティ及び研究セキュリティの確保に関する基本的な考え方について議論をいたしました。
 それでは、1番目、第6期科学技術・イノベーション基本計画策定時からの変化についてです。資料2-3の通しページ、29ページ目からです。
 まず、今後の国際戦略の方向性を議論する上で、留意すべき現行基本計画策定時からの変化を整理いたしました。
 1点目としては、先端技術の著しい発展を挙げています。生成系AIをはじめとして先端技術の進展速度は加速度的に増大するとともに、あらゆる分野での活用、影響が一層見られるようになったと考えております。また、市場・ビジネスのグローバル化に伴い、先端技術の獲得競争、人材獲得も国際化が進んでいます。
 2点目として、地政学的な変化を挙げています。米中対立、パンデミック、ウクライナ情勢など、国際情勢の不確実性、世界の安全保障環境の厳しさが一層増すとともに、経済安全保障の重要性が高まっています。加えて、開かれた研究環境を不当に利用して不正に技術等を搾取しようとする動向への懸念が増大していると考えています。科学技術・イノベーション分野で国際戦略を検討する上で、こうした変化は考慮しておく必要があると考えています。
 2番目、検討に当たっての背景です。このような変化に留意しつつ、検討に当たっての背景を整理いたしました。
 具体的には、国際的にも共通認識であるように、開かれた研究環境の中で研究者が国際的に連携をしながら、自由な発想に基づく研究を通じて科学が発展してきたところです。コロナ禍を経て、国際交流を再び活性化させるべき時期である一方で、国際会議の招待講演をはじめとした国際的な場面での我が国の存在感が大幅に減少するなど、我が国アカデミアが持つ国際ネットワークは、近年弱体化しているとの御指摘があります。
 国際連携は、今後、研究の質向上、研究力の維持・確保や、市場・ビジネスのグローバル化の観点から一層重要であると考えています。また、我が国の人口が減少する中、グローバルに優秀な人材を惹きつけることも一層重要です。G7及びOECDなど国際的に開かれた研究環境を不当に利用した技術流出等のリスクへの対応の重要性・必要性の認識が強くなり、一層の対応強化が求められている状況であります。研究インテグリティ及び研究セキュリティの確保が世界的な潮流になっています。国際交流や国際連携をさらに推進しつつ、リスクにも対応していくためには、国際的な共通な価値観に基づいた信頼できる開かれた研究環境の確保、共通の価値観へのコミット・実践が一層重要であります。
 3番目、方向性です。このような点を踏まえ、資料の30ページにありますような方向性を整理しています。
 我が国が国際的に卓越した成果を創出し、その実装・展開による社会課題の解決や新たな価値創造を国際社会の中で優位性を確保しつつ主導していくことが重要であり、そのためには、信頼できる開かれ、魅力ある研究環境を確保し、グローバルに優秀な人材を惹きつけ、国際連携・協力を強化し、研究力・競争力を高めていく必要があります。国際連携・協力に当たっては、その基本であり、G7やOECD等で指摘されている、学問の自由・独立性・開放性・相互主義/互恵性・透明性、研究インテグリティ、研究セキュリティといった共通の価値観を再確認し、より一層確保していくことが重要であります。
 このため、開放性を持った研究環境や国際連携の重要性を再確認するとともに、今後の国際連携に重要となる研究インテグリティ及び研究セキュリティの確保に関する基本的な考え方をまとめました。
 1番目ですが、開放性を持った研究環境や国際連携の重要性の再確認です。
 繰り返しになりますが、開かれた研究環境の中で、国際的に連携しながら、自由な発想に基づく研究を通じて科学を発展することは、国際的な共通認識です。
 研究の開放性や国際連携・交流を過度に制限することなく、異なる視点や様々な知的な刺激を享受できる環境を確保し、優れた研究活動を推進し研究力向上につなげる必要があります。
 一方で、経済安全保障の重要性も高まる中、我が国の技術の優位性や不可欠性、技術主権も念頭にしつつ、戦略的な国際連携が必要です。特に、新興技術については、その可能性と予期せぬリスクとのバランスが重要であり、国際社会との連携・協調が必要であると考えています。
 このため、ボトムアップとトップダウンの特性を生かし、その両輪で国際連携を進めていくことが重要である旨を指摘しました。
 具体的には、「世界のアカデミアに開かれた国」として、開放性を持った研究環境を確保し、ボトムアップによる学術交流は、従前どおり、引き続きの強化を盛り込んでいます。
 異なる視点でお互いに刺激し合い、卓越した成果を創出していくために、多様性を重視し、国籍や分野を超えた多様な人材との連携が重要です。
 G7諸国や欧州といった科学技術先進国・同志国との戦略的な連携・協力を強化し、相対的な研究力低下に歯止めをかけ、国際競争力向上につなげることも必要です。
 ASEANやインドなどの重要なグローバル・サウスとも、対等なパートナーとして、また、人口減少する我が国にとって、優秀な人材を育成・確保し、我が国のアカデミア・産業界での活躍を加速させることも重要です。
 相手国の状況を把握することも必要不可欠であり、様々な交流を通じ、相手国の政策や研究力など、相手国を知るための情報を収集・分析・調査することも重要であることを指摘しています。
 (2)、今後の国際連携に重要となる研究インテグリティ及びセキュリティの確保に関する基本的な考え方です。
 次に、研究インテグリティ、セキュリティですが、今後、国際連携を推進し、科学の発展やイノベーションにつなげるために、研究インテグリティ、研究セキュリティの確保が重要であるという位置づけをまずは記載しています。
 具体的には、国際連携のためには、開放性・互恵性・透明性といった共通の価値観に基づく環境が必要ですが、近年、開かれた研究環境が不当に利用されるリスクが国際的に認識されています。そして、G7やOECDにおいて研究インテグリティ、研究セキュリティの重要性が指摘され、各国において具体的な取組の検討が進んでいます。このような状況の下、今後の国際連携を進めるためにも、我が国において必要な取組がこれまで以上に求められています。
 このような位置づけを踏まえ、まず、研究インテグリティについては、既に政府において取りまとめられている対応方針に基づき、関係者が必要な取組を自律的に徹底していくことが重要です。具体的には、研究者は自らの研究活動の透明性を確保し、大学・研究機関等は適切なリスクマネジメントを実施、政府は必要な支援を継続的に行うことが重要です。
 次に、研究セキュリティについては、今後国際共同研究等の実施にあたり、諸外国と同等の取組が求められてくると想定されるとともに、国内においても、経済安全保障上の重要な分野など、先端科学技術に関する技術流出防止の取組が必要になると考えられます。研究セキュリティについては、国際的には幾つかの取組の事例がありますが、国内においては、具体的取組の検討が今後必要となります。
 このため、政府においては、諸外国の事例も参考に、我が国における研究セキュリティ確保のための取組について検討を進めていくことが重要であり、研究コミュニティの関係者と連携し、具体的な検討を進める場を設けることが必要と記載しています。その際には、研究セキュリティの過度の強化が研究やイノベーションの創出を逆に阻害することのないよう、十分に留意することが必要と考えています。今後、そこでの具体的な検討を踏まえ、本国際戦略委員会の最終取りまとめに反映していきたいと考えています。
 以上です。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、人材委員会から、狩野主査から御説明をお願いいたします。

【狩野委員】  承りました。狩野でございます。
 では資料2-4、35枚目から以降でございます。せっかくイノベーション人材に関わる内容でありますので、文部科学省様も頑張ってくださいまして、「シン」というすてきな字句がついた提案になっております。
 今までのお話にもあったとおり、人材は全てに関わる柱でございますので、ぜひアンビシャスにいきたいということで、委員会の議論を進めてまいりました。
 ここでイノベーションと言いますと、どうしても産業界的なものを想定される学術界の方もおられるかもしれません。しかし、こちらで申し上げているイノベーションというのは、新しいアイデア、価値をつくり出す人材一般、そして、そういう人材をつくり出せる方々の総称ということでございます。
 それで、今日、今の事務局の方に伺いますと、ぜひ御意見をいただきたいのは、42枚目に「今後の議論に向けて」というのがありまして、ここに向けて、内容を聞いていただいて、後で御意見を賜りたいということでございます。
 では、元に戻りまして、36枚目からです。この内容ですと、御想像のつくとおり、極めて広範でございます。毎回委員会は活発ではあったのですが、内容としては、現状の把握と、それから、理想像の気持ち合わせというところに今おります。従って、今後の具体的な方策についてぜひ御意見をいただきたい、ということになります。
 現在の背景、36枚目です。人口は減るし、それから、ほかの国は急成長する中で、我が国は、というところです。また、社会変化としては、ここ数日の気候でも経験しましたとおり、既存のパターンではどうしようもないという状況です。我々の国の社会規範が「互いに似ている」ということを重視している中ですが、「多様でないと先に進めないのではないか」ということは同意されたところです。また、社会が求めるところでは、経済成長はもちろん大事だけれども、加えて、ウェルビーイング的な、「生きたくなる気持ち」を育てていくことも大事だという話になっております。
 次に行きます。37枚目です。では、そこで「どんな改善の兆しがあるか」という言い方にしましょうと委員会でなり、そうした調子で、頑張って書いてあります。けれども、少し、現状では難しいことばかり書いてあるという状況です。ジェンダーバランスの問題がある。個別の力を生かせるようなところに教育現場はなってないかもしれない、というのが左の一番上に書いてある。それから、下に行きますと、社会環境は、先ほど申し上げたとおりで、「他者と違う」ことが許しにくいような基盤があるとすると、それによって新しいことが生まれにくいかもしれませんね、ということが書いてあります。右上に行きますと、その中で博士人材を増やしたいということで、ここは政策が進みまして、直近で数も増えているということで、ここは人材政策の誇るところでございます。けれども、それをやって博士号を取って、若手研究者になるとどうなるかというと、これもまた簡単ではない。また、流動性ももう一つ増えていくといいね、という状況です。
 もう一つ、こちらで注目しましたのは、コミュニケーションの問題です。科学技術の内容が極めて先端的になったことによって、社会で簡単に身近だともいかなくなっているかもしれない状況です。それをどうやって近づけるかということです。とりわけ「疑問を持つ力」、「議論をしていく力」というところをもっと身につけてもらうにはどうしたらいいだろうか、ということが意識にありました。
 次に行きます。そういう状況を踏まえて、今後の我々の国が目指すべき国家像、そのために必要な人材の力は何であるかということが38枚目にまとめてございますが、国家像としては、上に幾つかあります。まず、未来を見据えたときにどうやって進んでいくかが分かる。真ん中には、イノベーションによって変革し経済成長が続けられる、ウェルビーイングが達成される。ぜひ理想にしたいですけれども、では具体的にどのようにしたら実現できるか、が課題です。
 その中で、新しいことを生み出す、あるいは、そういうことができる人を育てる人材にはどういう力が必要か。ここは大きな議論なりました。この3つが全部そろった人を増やしたいというわけではないでしょう。そうではなく、この3つの力が社会に偏在して、合わせるとうまくいく、ということにしたいという意味であります。アカデミアだと、どちらかといえば、この02番、「深める力」が深まっているところかと思われます。しかし、それだけでは足りなくて、「つなぐ力」、それから、「実現する力」、両脇にあるこれらも社会の中で養成していく必要があるという理想は、委員会で共通したものとなりました。その結果としては、いろいろな種類の人材が必要であるということになろうかと思います。
 次の紙、39枚目に参りますと、そういう意味で、皆さんが「互いに違う」ということを主に考えたときに、その「互いに違う」人たちが「共にある」にはどうしたらいいかということも議論になった次第です。コラボラティブという言い方になっています。同調圧力、特に委員の中にこの言葉をこの紙にぜひ入れてほしいということがあったのであえて記載されているのですが、それが強くある中で、どう互いに違うことができて、その違いがお互い認められるかということ、しかも、生かし合えるかということについて考えていく必要がありますね、ということになっております。そこに、互いに違うのであれば、互いにコミュニケーションしてつながっていかないといけないという内容があります。また、それから、そういうことの土台となるリテラシーが共にないといけないですねということもございました。0番ですね。
 続いて、1番の次世代育成に参ります。そういうことで、この場は科学技術系の審議会なのですけれども、考えてみますとこうした生き方のきっかけは、大学からではなかなか育ち切れないのではないか、さっき久世委員の委員会からもお話がございましたが、もっと若いときからでないとうまくいかないのではないかという問題意識を持ちながら、こちらの内容になっております。
 子供たちの学びを支える行政、STEAM教育、そして、先ほどから申し上げている多様な力を認めて協働できるということ、それから、特定の分野に優れた能力を持つ人たちを伸ばすにはどうしたらいいかということが列挙してあります。
 次の紙に続きがございまして、40枚目ですが、抜本的強化の部分ではどうかというと、博士課程の学生については今までもやっておりますし、それから、若手・女性研究者についての取組もあります。けれども、加えて、技術者と言われる方々、あるいは、マネジメントする人たちも大事、そのほかも、というところがあります。
 この中で、「博士人材活躍プラン」は、今の担当大臣のお力もあって、かなり大規模なものになっております。加えて、ポスドクの方々、URAなどの支えていく人材。支えるといっても、その人たちと上下関係にあるわけではなくて、共に進まないといけないという意味です。それから、技術職員の方もそうです。そうした方々をどうやって元気にして才能をよりよくしていけばよいか、ということが強化に必要であろうということが述べられております。
 丸3番は、そうしたいろんな仕事あるいは能力の流動性と循環が確保されていくことが大事だし、それが国の壁も越えないといけない、ということで、先ほどの国際戦略委員会の内容にもつながってくるということになります。
 次の紙に参ります。41枚目が今申し上げたような様々な方々の一覧になっております。この紙の内容は下から見ていただきたいのですが、全体の中身は、国の中で言えば一般の国民の方ですし、特に公的資金を使っていくという意味では納税をしている方々となると思います。この中で、小中高段階から始めないと多分この科学技術政策にもつながってこないであろう。それから、大学に入って、できれば後期課程に来ていただいて、その上のキャリアパスも、今までは後期課程に行くとほとんど研究者の道だけが頭にあったかもしれないのを、多様なリーダー人材、企業において経営をする方も含めた、そして技術者、そしてマネジメントする方々、コミュニケーションする人たちという方々にも広げていく必要があるだろう、ということが書いてございます。
 大きな夢がたくさん語られていたのですけれども、ではどうするのというところが次の議論に向けてというところであります。今日は、先生方のお知恵をそういう意味でお借りしたい次第です。今申し上げたような、新しいアイデアや価値を創出できる人たち、そして、そういう人たちを育てていける人たちを元気づけて増やしていくにはどうしたらいいのだろうかということになります。
 こちらにアイデアが幾つかあるのは、今日3つ、4つの委員会のお話を伺っても、やはり人材が中央であり、柱ですので、人材という視点から、一体的に俯瞰的に議論していく必要があるのではないかということを一つ申し上げております。
 特に、この「ともにある」というところとか、次世代育成、抜本的評価とか、極めてやる気のある言葉が並んでおるのですけれども、これを政策に転換するにはどうしたらいいかというところが大きな具体策の検討すべき点だと思っておりまして、御意見を賜れればと思います。
 そして、こうしたところにもし投資をすると、当然ですが、達成目標等が必要になるかと思われますけれども、これを進めていくのにどんな指標を使うとより具体的になり、また、本質的なところを外さないで済むのかというところの議論が必要であるとも、考えております。ぜひこれは次の夏までまとめたいという心意気を事務局とも話しております。それとともに、こちらの内容も具体化したいということになります。
 そして、各事業予算、これは人材に関わるところだけではなくて、先ほどの学術分科会からのお話もあったところに通じますけれども、各種の事業予算の使い方についてもぜひ再考していくべきではないかということも今議論に上がっております。また、組織の支えの能力はどうしたらいいかということ、これらについても議論を進めたいと思っております。こうしたことについて、今日、ぜひ御意見を賜れれば幸いでございます。
 今の時点で、事務局から何か追加ございますか。よろしいですか。よろしいですね。
 以上です。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、文科省より藤原研究開発戦略課長から説明をお願いいたします。

【藤原研究開発戦略課長】  ありがとうございます。藤原でございます。私からは、第7期の基本計画に向けましての文科省内での検討の状況についての御説明をさせていただきます。
 この議題の初めのところで私申し上げましたように、今後、内閣府などで行われます検討に先立ち、今、4つの分科会等からお話をいただきました。こちら、その検討と並行しまして、文科省としての基本的な考え方を整理しているところでございます。
 検討に当たりましては、今御説明がありましたようなテーマ、深掘りをしていただいている検討をも踏まえつつ、一方で、文科省から内閣府に伝えるメッセージという観点で、総花的ではなくて、特に文科省としてインプットするものをシャープに打ち出していくという考え方にたち、前回、第6期のときには総合政策特別委員会というのを開いて広範に御審議いただきましたが、今回はそれとは違った形で検討を進めているところでございます。
 この後簡単に御紹介はいたしますけれども、検討はまだ途中段階でございまして、また、本日時間の都合上、ポイントに絞った形での御説明になりますけれども、御容赦いただければということでございます。
 通し番号で参りますと48ページ、次の基本計画についてという考え方の前に、私ども、これまでの基本計画の変遷と、現在、それから将来に向けて、この科学技術・イノベーション政策を取り巻く情勢というものがどういう状況であろうかということを整理しております。
 上半分が、基本計画の変遷をごく簡単にまとめたものでございます。御案内のところ多いかと思いますけれども、1996年、第1期の基本計画のときには、科学技術投資の確保ということで、17兆円という目標が設定されておりましたし、また、研究開発システムという観点では、競争的資金の拡充であったり、ポスドク1万人計画といったような取組がございました。第2期、第3期、選択と集中ということで、ライフサイエンス、情報技術、このほかにも幾つかございますけれど、こういった分野への重点投資、それから、国家基幹技術という国家的な大規模プロジェクトへの投資の位置づけというようなものがございました。
 第4期は、科学技術・イノベーションという概念が取り入れられまして、イノベーション、あるいは、価値の創造、先ほどもキーワードで価値の創造というのがありましたけれども、そういったことが重視された基本計画へと転換しておりますし、分野別から課題解決型へという転換が起きたのもこの時代でございましたし、また、策定直前に震災もございましたから、震災復興というのも柱としてございました。
 第5期では、我が国が目指すべき未来の社会の姿として、Society5.0というのが出てきました。システム関係で言いますと、オープンイノベーションの推進、ベンチャーの創出、こういったようなことも強調されておりました。
 そして、現行、第6期でございます。ここではSociety5.0を現実のものにするということがうたわれております。そして、目指すべき社会像としては、国民の安全と安心を確保する持続可能で強靱な社会ということ、それから、こちらも先ほど人材委員会からありましたけれども、ウェルビーイングが実現できる社会というようなものが示されておりますし、また、政策の方向性としては、総合知による社会変革、あるいは、知や人への投資というようなことも示されております。
 ざっと第6期までを振り返った上で、では次どうするかということでございます。従前の例によりますと、大体10年後、2035年頃になりますでしょうか、そちらを見通して、5年間、つまり2026年から30年頃というのをターゲットとした計画になるのではないかと思いますけれども、そのときの情勢はどうなっているのだろうかということが、この48ページの真ん中辺りに整理をさせていただいております。
 2021年、第6期が始まったときからの変化につきましては、先ほど各分科会等で振り返っていただいたものと共通するところが多くございますので、一つ一つは申し上げませんけれども、例えば、AIというところだけで申し上げましても、生成AIのサービスの爆発的な拡大であったり、一方で、相澤先生からありましたけれども、広島AIプロセスという形で、国際的なルールを考えていくというような動きもございました。また、経済社会情勢としての円安の進展、一方で、賃金アップというような社会情勢の変化もございます。これは一方で人材の不足というようなことにも関わってまいりますので、こういったことも考えていく必要があるのではないかということ。
 それから、地政学的なところを見ますと、これも先ほど国際戦略委員会で、お話ございましたけれども、例えば、中国とアメリカとの関係、ロシア、ウクライナの関係、そして、中東の関係、こういったところ、大きく変化をしてきているところでございます。
 こういったここ数年の変化を見ながら、2035年はということを考えましても、引き続き、技術開発の進展のスピードというのは加速していくということが予想されますし、また、我が国の人口減少は避けられない中で、「労働供給制約社会」というようなこと、そして、世界を見渡したときの地政学的変化というのもまた引き続き続いていくのではないかと、私どもこのように考えた上で、つまり、まとめますと、社会の変化のスピードは速くなっていき、そして、社会課題は多様化・複雑化し、予見可能性というのはますます低くなっていく、こういった状況にあって、では、この5年間、第7期として、何を位置づけていくかを考える必要がある、ということでまとめてございます。
 一番下のところは、第5期、第6期とSociety5.0というのが位置づけられておりましたけれども、この進展はどうだったかというのを簡単に振り返ってみましたが、AIのところなど、サイバー空間、そういったところでの能力の進展は進んだ一方で、では、実社会での価値創造というところにつきましては、進展はしているものの、まだ道半ばと捉えておりまして、Society5.0の実現という観点での取組というのはまだ必要なのではないかと整理をさせていただいております。
 次のページに参りまして、ここからが、私ども、今申し上げましたような現状認識の下、では改めて文科省が打ち出すべきメッセージは何かということを考えてまいりました。
 基本的な考え方が上半分のところでございます。1つ目のポツは、繰り返しになりますが、予見はますます困難になっていくという中で、2つ目のポツ、10年後、20年後ということを考えますと、私どもがやるべきことは、多様な科学技術・イノベーション人材の育成ということ、研究者が自由な発想の下、安心して研究に打ち込むことができる環境を整えるということ、そして、それを通じて豊富な知を生み出していくこと、こういったことが私ども文科省として、特にメッセージとして打ち出していくことではないかと整理をさせていただいております。
 また、3つ目のポツでございますけれども、こういったメッセージを、今後の科学技術・イノベーションを支えていく、あるいはそれを実行していく若者、あるいは、若者を中心とした国民の皆様に対して、具体策とともに強く訴えていくことが必要であるといったところも私ども考えているところでございます。
 今申し上げましたような考え方に基づきまして、この下にございます3つの柱で検討を深めていくということで考えております。
 1つ目が研究力。その研究力の下にポツが幾つかございます。こちら、具体的なところはまだ検討途中でございますので、まだまだ深めていくべきところはありますけれども、現在考えているところとしましては、研究に集中できる環境というところで、設備や機器へのアクセス、研究時間の確保といったところ、共同利用・共同研究体制というところ、それから、自由な発想に基づく研究を支える研究費の充実、そして、オープンサイエンスと、こういったようなものが考えられるということでございます。特に研究力の向上、私ども文科省、しっかりアピールしていくべきテーマであると考えております。
 2つ目が国際戦略。国際戦略委員会の話と重なるところも多くございますので一つ一つ申し上げませんけれども、現在、安全保障の重要性が高まっているということを踏まえての対応という一方で、開かれた研究環境、それから、国際連携の重要性というのは変わらず、この考え方も踏まえて、どういう取組をしていくかということを考えていく必要があると考えております。
 また、3つ目が人材ということでございます。博士課程学生の支援ですとか、研究者、あるいは、研究マネジメント人材の育成・確保というところ、人材委員会からのお話と重なるところが多くございますけれども、人材育成、特に文科省だからこそというところは多くあるのではないかと思ってございます。
 この3本柱以外にも、科学技術・イノベーション政策全体として考えますと、重要な柱はまだまだあると思っておりますけれども、文科省だからこそということでの強いメッセージとしては、この3本柱ではないかというのは現時点の方向性でございます。
 今後も引き続き検討を進めて、具体例を詰めてまいりたいと思っております。各部会、分科会等の御検討もこの後まだ引き続きというところがございます。本日、先生方から広く、こういった検討が進んでいるということをお聞きいただいて、御意見を頂戴できればと思ってございます。
 簡単ですが以上です。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 ただいまお聞きいただきましたように、各分科会等においてそれぞれの視点から御検討いただいております。加えて、本日は説明はございませんけれども、皆様の資料の一番最後、資料2-6では、基礎研究振興部会から検討状況について資料を御提出いただいています。基礎研究の価値、基礎研究の社会的意義と価値化、そして、基礎研究のさらなる進展に向けた研究DXの推進という3つの項目を立ててペーパーが出ていますので、それらも併せて御参考にいただければと思います。
 それでは、意見交換に進んでまいりたいと思います。総会として次期基本計画の検討に向けて重要と思うこと、もちろん質疑応答もあって結構だと思いますけれども、ぜひ御発言をいただければと思います。いかがでしょうか。
 それでは、高橋委員、お願いいたします。

【高橋委員】  ありがとうございます。高橋でございます。
 国際戦略委員会の取りまとめの中で、開かれた研究環境にするべき、特に国際的に連携しながらするべきというお話がありまして、特に、その点非常に重要な点だと思っております。
 とはいえ、今の研究環境の中で、何もせずに急にオープンになるということはないと思っていまして、何かここを進めるに当たって具体的に御議論されたことがありましたら教えていただきたいなというところがございまして。例えば、国際的な研究グループをつくったところにより研究費が配分されるような仕組みをつくってしまうとか、そういったような具体的な検討事項が何かございましたら、ぜひ教えていただければと思いました。
 以上です。

【大野会長】  それでは、菅野委員、もし何かありましたら。

【菅野委員】  どうもありがとうございます。
 国際戦略委員会のこれまでの議論、国際的に共同研究をするためには、いわゆる同盟国と言われる国々と、研究の開放性・互恵性など共通の認識を持つ国々とどのように共同研究を行うことができるかという観点から議論してまいりました。その観点で大変重要なポイントが、このペーパーにも最後のほうに2点、研究インテグリティと研究セキュリティについて主に議論をしています。
 研究インテグリティに関しては、既に政府から指針が出て、文科省でもその指針に基づいて指示が出て、大学などでそれに対して対応しておるところです。
 研究セキュリティに関しては、世界中でどのようにセキュリティを確保していくかというのが今現在進行中の段階で、我が国においても、その状況を見つつ、具体的な検討を行う必要があるというのが今の現状認識です。
 研究インテグリティとセキュリティに関して、詳しい定義については、このペーパーの最後のほうに少し記述をしています。インテグリティ、セキュリティ、少しニュアンスが違うのですけれども、相互に関連するというところもあります。これについて、開かれた共同研究をするために、今後さらに詳しい議論、特にセキュリティに関しては詳しい議論をしていくというのが今の現状です。
 主査からはこのとおりですが、もし事務局で何か補足がありましたら、どうぞお願いいたします。

【倉田参事官(国際戦略担当)】  ありがとうございます。
 事務局からでございます。少しだけ補足をさせていただきますと、今まさに菅野委員のほうからも御説明あったとおりでございますが、やはりどういったリスクがあるかといったことについて、まさにOECDですとかG7でも議論が始まっておりまして、各国いろいろな検討が進んでおります。そして、そういう中で、そういった国々の国際共同研究を進めるに当たりまして、やはりそのリスクをできるだけ小さくするような取組が既に相手国からも求められるようなことも始まっておりますので、そういった中で、日本としても、そういう国際ネットワークの中に入って、しっかりと国際共同研究をやっていくためには、やはりそういった先進主要国と足並みをそろえるといいますか、同じような問題意識を持ち、そして、どのようなリスクがあるかといったところをしっかり考えて取り組んでいくことが必要になってきていると、そのような状況でございます。
 具体的にどのようなことを気をつけていくべきかといった点を含めた具体的な取組につきましては、今後文部科学省としてもしっかりと検討し、そして、国際戦略委員会での御議論のほうにも報告をさせていただければと考えてございます。
 ありがとうございます。

【大野会長】  ありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。
 国際的な研究を推進するに当たっては、その環境整備が極めて重要になってきたということだと思いますし、費用ももちろん必要ですけれども、そういう環境が整備されていないと、十分な研究者を守った形での国際的な展開ができないということから、喫緊の課題です。
 それでは、オンラインで手を挙げておられる原田委員、よろしいでしょうか

【原田委員】  ありがとうございます。
 大変すばらしい御報告ありがとうございます。41ページですけれども、人材委員会から御紹介いただいた目指すべき理想像、この循環、各枠を超えて人材が多様化して流動化していくということが実現したら、本当にすばらしいと思いました。
 これを実現するために、特に私がお願いしたいのは、技術者の組織、高度研究マネジメント人材、この2つの人材や、教員とサイエンスコミュニケーター等の地位、給与面を含めた処遇・待遇の改善をセットでお願いしたく存じます。
 例えば給与面を含めた処遇改善について、学術分科会から御報告のあった研究の基盤的経費の充実などで図っていくことが必要かもしれません。
 また、高度研究マネジメント人材として、産業界に人材が増え、向上した処遇、身分、地位で活躍していけるようになると、学位取得者にも魅力あるポストとなりキャリアパスの多様化を提供することにもなると思います。
 以上です。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 まず皆様、大分手が挙がっているようですので、少し後でまとめて御回答させていただくということで、原田委員もそれでよろしゅうございますでしょうか。

【原田委員】  はい、結構です。

【大野会長】  それでは、オンラインで、鷹野委員。

【鷹野委員】  いろいろ丁寧に御説明いただき、ありがとうございました。
 私からは、国際化ということと、研究セキュリティに関することで、コメントをさせていただきたいと思います。
 まず1つ目の国際化につきましては、国際戦略委員会の御報告の29ページに、学部等早期の段階から国際交流・留学の促進により、将来国際ネットワークに参画する人材を育成することが重要であるという御指摘がございます。
 そして、人材委員会のほうでも、39ページかと思いますが、留学と国際経験の充実ということが指摘されております。
 こういった複数の委員会からの御指摘もございますように、私自身もこの国際化への種まきといいましょうか、それはとても重要だと思っております。特に、早い時期から学部生、場合によっては現在高校生も、そういった動きが出ていると認識しておりますけれども、早い時期から、そしてまた、それをある程度継続的に、ステージごとに、大学院生での経験、それから、博士号取得後の経験、そういったものを継続的に支援する仕組みというのが非常に重要なのではないかと思っております。
 そして、経験から多様な価値観を理解する、そこが国際社会で今後日本が貢献していくために非常に重要な視点かなと思っております。
 以上、国際化に関して複数の委員会からの御指摘に、私も賛同するところでございます。
 2点目の研究セキュリティに関することですけれども、そういったことに留意してやるということが国際的に重要であるということで、先ほどの議論とも少し関係すると考えておりますけれども、実は現場で研究者と話している中で、どういったところに留意すればいいかという辺りをつかむのがなかなか難しいということで、積極的に国際的研究を進めたいけれども、躊躇するというような意見も聞いたりいたします。
 そういう場合に、ガイドや相談窓口等が整備されましたら、研究の興味に従っていろいろな研究を促進させることができるのではないかと思っておりまして、その点の整備をぜひお願いしたいと思っているところです。
 以上です。ありがとうございました。

【大野会長】  ありがとうございました。
 対面での御発言はまだ。すみません、門間委員、ではお願いします。

【門間委員】  少し細かくなるかもしれませんが、14ページから15ページにある研究設備・機器の共用化について、重要と思いコメントさせていただければと思います。
 9ページにもありますが、ファシリティの効率的・効果的な推進については、研究の現場におりますと、十分な設備・機器があればいいデータが出るのにというようなことをいろいろ実感してまいりました。施設の充実、共用化が図られるというのはすばらしいことで、若手研究者を勇気づける内容かと思います。
 ただ、研究現場で実行するとなると、現実的には難しい、ハードルの高いことも多いと思います。下にもありますように、技術職員等の確保も含めて、高度な技術職員を育成するなどして効率的に進めていただけたらと思います。
 もう1点は、25ページの知財の話ですが、こちらも重要な切迫したことと思います。かなり昔になりますけど、知財立国というような言葉もありましたが、実際にどれほどのパワーになっているのかというのが少し疑問になるような状況もあります。知財ガバナンスリーダーなどの好事例を紹介しながら、より高度に進めていくということが大切かと思います。
 感想になります。よろしくお願いします。

【大野会長】  ありがとうございました。
 どうぞ、それでは、金井委員。

【金井委員】  医科歯科の金井でございます。
 今の門間先生のお話がございましたので、私も同じ点でお話ししたいと思います。大野先生、どうもありがとうございました。
 まず、共同利用・共同研究体制ということで、一番初めにイメージに上がるのは大型機器ということになるかと存じますけれども、やはり日本の場合は、動植物の遺伝情報や、また、それ以外のバイオマテリアルということも上がってくるかと存じます。ですので、このようなものに関しまして、省庁を超えるのはなかなか難しいかとは存じますけれども、例えば、日本は患者さんのカルテ情報とか世界に誇るものがありますので、そのようなもの等を統合していくとか、あと、久世先生からあったようなマテリアル知財とかマネジメントもあるのですが、実は日本から出ていったデータをトレースするというか、トレーサビリティが非常に効いていないということを考えていますので、そのようなことを、ぜひDX化と情報統合を考えていただければというのが1点でございます。
 あともう一つは、これは非常に各論になってしまうのですけれども、私、生命倫理・安全部会というところにおりますので、昨今のパンデミックの対応の後で、例えば、国際のカルタヘナ法等々を日本の中で緩和していこうとか、あと、それ以外には、動物の倫理問題等々も非常にこのものはつながっていくかと思いますので、ぜひ一緒に考えていただきたいということ。あともう1点だけ、これは人材のことで、ここは科学技術なので、先生おっしゃっていたように、小中とかそういうところまでまとめてしまうと非常に難しいのかなと思っているのですが、やっぱり日本の少子高齢化というところで、日本の国策がどうしても不妊治療とか、女性が負担が多いようなフェーズが多いと考えておりまして、基礎的なそこの部分の研究でありますとか、子供たちに正しい知識を与えるとか、小さい大学というのは、一大学で全て担うのは難しいので、例えば、大きな大学、地域性があって、高校、中学校、小学校みたいなアンブレラ方式の何かいい形が取れればよいのではないかなと思いました。
 以上でございます。ありがとうございます。

【大野会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、村山委員、お願いいたします。

【村山委員】  ありがとうございます。同志社大学の村山です。専門が経済安全保障ですので、経済安全保障の観点から、研究インテグリティ、研究セキュリティについてコメントさせていただきたいと思います。
 この2つ、非常に重要です。しかし、非常に分かりにくいのです。最後に定義を書いておられましたけれども、読んでみても、私自身もなかなかストンと落ちてこない部分があるのですよね。だから、ましてや大学に持っていってもなかなか理解されないので、この辺りをしっかり分かりやすく定義するというのはまず必要だと思います。
 それで、端的に言いますと、何が起こっているかというと、大学の研究と安全保障が重なり始めているのです。これは国際関係の変化なのですけれども。したがって、大学の研究者も安全保障のことをある程度視点に入れないとこれから駄目だと、そういう時代に入ったということだと思うのです。
 といっても、これは大学の研究者の非常に多くが絡むような問題ではなくて、一部の分野だけなんですね。したがって、この問題を議論するときに、やっぱり濃淡をつけて、関係のある分野とない分野をはっきり分けてやる必要もあるかなという感じはいたします。これがまず1点目です。
 2点目ですけれども、その説明の中で、世界がやっているから日本もやらなければならない。この発想は、私、ちょっとまずいと思うのですよね。というのは、国際会議に出ていくと、技術者の中には、この問題について非常に見識を持った人は多いのです。そういう人が出てきて、それを日本から見たときに、海外もやっているから我々もやってますと言ったら、ちょっとこれはまずいことになるので、やっぱり本質を理解してこういうことをやるというのは非常に必要だと思います。
 そのためには何かというと、やっぱり教育なのです。ここに文科省の出番があると思うのですよね。だから、今、工学系の学部では倫理教育というのをやっていると思うのですけれども、そこにやはりこの安全保障のところも入れるべきだと私は考えております。例えば、安全保障と科学技術のようなカリキュラムを入れて、この問題の本質を理解した技術者を育てる。これは私は非常にこれから重要になると考えています。
 以上です。

【大野会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、オンラインで、藤井委員、お願いいたします。

【藤井委員】  ありがとうございます。
 全体についてのコメントになりますが、先ほどの文科省からの御説明にもありましたように、今現在、日本が人口減社会、人口減で労働供給制約社会に差しかかるということで、今回の基本計画においては、いかに生産性を維持・向上していくかということや、国際化にどこまで踏み切るかということも含めて、どのような社会を描くかということとの関係で議論すべきだろうと考えております。
 特に、先ほどのAIも含めて、人材をどのようにして育てていくかということが大きなテーマになってくる。それぞれの委員会からの御報告でも、人材育成をどうするかということにかなり焦点が当たっている印象でした。これらを踏まえて考えると、これは各所で申し上げていることですが、人材の流動化、キャリアの柔軟性、そして、時間の多様性を許すような社会を実現していくことについて、どこかでその方向を目指すのだということを、あるいは、その方向を目指すことが科学技術・イノベーションにとっても望ましいということを書いておくべきではないかと思います。
 そのためには、先ほど原田委員がおっしゃいましたが、41ページにあります科学技術・イノベーション人材の理想像のところに、様々な研究者、技術者というような枠、境界を越えて全体として循環するということが書かれていますが、研究機関、あるいは、公的なセクター、行政官だけではなく、産業界もこの図の中にあっていいわけですし、スタートアップなどで自ら起業するということもあっていいわけです。これらの枠、境界を越えて人材の流動化が進み、必要な場所で生産性を高めていくということそのものが、人口減社会で日本が一定の経済活動の規模を維持していく上で非常に重要です。そしてそのような社会が実現されることが、すなわち、博士人材が活躍していくということにもつながりますし、また、国際的な、例えば海外からいらっしゃる留学生、あるいは研究者の皆さんの活躍の場を提供するということにもなります。さらに言えば、女性の活躍ということを考えても、キャリアの流動化や時間的な多様性を受け入れるインクルーシブな社会をつくっていくことが一つのキーになると思いますので、どこかでこれらのことに触れていただければと思いました。
 私からは以上です。

【大野会長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、観山委員、お願いします。

【観山委員】  どうもありがとうございます。
 一つは、人材委員会から、45ページになりますでしょうか、参考のところでございますけれども、博士の卒業者をいろいろ採用してほしいというところで、非常に同感です。日本の企業の中で博士人材が活躍するということは、それぞれの企業で新しいイノベーションの核になるのではないかと思っております。文科省も隗より始めよという形で始められていることは非常によろしいかと思いますが、彼ら彼女らは、大学院博士課程の中でデータを取り、それを分析し、結果を構築して、プレゼンテーションして新しい提案をするという訓練が非常にできていますので、それはいろんな企業の活動の中でも本当に役に立つ人材だと思います。ぜひ政府も、経団連とか、そういうところに博士課程の取得者を採用することを努力目標にしてもらうとかいうことを発信していただければと思います。
 それから、初任給として、どうも修士と博士はあまり変わらないというようなところも聞いていますので、やっぱりそれは3段階、博士課程の初任給を高くしていただければと思うことがあります。
 でも、こういう文章をまとめていただいたことは非常に喜ばしいことで、こういう博士課程の行き先がどんどん増えていくということで、博士課程に進学する学生も増えていくということになろうかと思いますので、非常に期待しております。
 もう一つは、19ページ、17ページ、共同利用・共同研究という日本の非常に独特な、なおかつ、非常に今まで成功してきたシステム、これをさらに活用するということが重要で、そこに書きましたけれども、中規模施設、汎用的なヘリウム施設だとか、そういうことが非常に重要だと思って、研究基盤部会でいろいろ議論しているところですが。その中で、それぞれの共同利用・共同研究拠点は、それぞれのコミュニティのために非常にしっかりとした研究の基盤をつくっているんですが、今後のテーマとしては、そこにありますような学際的なネットワークをそういう共共拠点が連携して、学際研究を始めていただくという仕組みがもうちょっとどんどんできないかということでございます。
 今、研究環境部会では、学際ハブ拠点というような形で募集して、これは非常にたくさんの募集があって、一部は採択されて進めておるところですけれども、それぞれの分野の共同利用・共同研究の拠点はできたのですが、それをさらに融合して広げるという活動が今後は非常に重要になって、これが世界の中での研究力を発信する上で非常に重要だと思っていますので、その2点、ちょっと強調させていただきました。
 以上でございます。

【大野会長】  ありがとうございます。
 続いて、相澤委員、お願いいたします。

【相澤委員】  相澤です。科学技術・イノベーションにおいてAI技術が果たす役割がますます重要になるということは、複数の委員会から指摘をされていまして、それについて一言申し述べさせていただければと思います。
 AI技術を科学においてどのように使っていくか、科学の進歩にどうやって役立てていくかということを考えると、実は、非常に広範な問題を扱うことになるというのが日々思っていることです。
 ネットワーク、セキュリティ、あるいは、計算機といった基盤と、研究者を近づける役割を果たしているのがAI技術であると感じています。例えば、データというのは、今生成AIにとって非常にコアな重要なものなのですけれども、もう既にオープンで簡単にできるデータでは勝負ができなくなっている。では、どうするのかということで、データを囲い込めばいいのかというと、囲い込んだデータでは科学の進歩というものが阻害されてしまう。そうすると、どうやってデータを取得するか、研究者の認知のバイアスや物理的な装置の限界を超えて、新しいデータを取得して構造化していくようなストラテジーそのものが競争力の原動力になるのだと思います。こういった様々な場面でAIを使うということは、単にツールとして研究者がAI活用するだけではなくて、AIが科学のパラダイムシフトを起こしているのだというふうな、そういったことを少し強調していただけるとよいかなと思いました。
 それに関連して、評価システムについてあまり言及がないという印象もございまして、そういった科学のパラダイムシフトの中では、評価システムも変化していくという観点は重要ではないかと思っています。研究者が国際的に競争できる力の源が個人のキャパシティ、能力ではなくて、いかにAIとか研究基盤にアクセスできるかだけになってしまうと、その個人を正しく評価するということはできないので、イノベーションを起こし得る研究者の評価システムはどうあるべきかということも、今後の第7期、この数年で大きな変化が起きるという中では重要かと思っています。
 以上です。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、網塚委員、お願いします。

【網塚委員】  ありがとうございます。北大の網塚です。
 まず、先ほど設備共用のお話が出ておりましたけれども、私は研究開発基盤部会でコアファシリティ事業の将来像を検討しております。法人化した後、継続的に設備共用政策が打ち出されまして、各大学の設備共用はかなり充実しつつあると思います。とはいうものの、先ほど御指摘にありましたように、現場ではまだまだ課題ももちろんあります。
 今、コアファシリティ事業に採択された大学は15大学ございますが、そこでは一応経営陣が設備の共用、そして技術職員の人材育成を戦略的かつ大学の経営の中に位置づけて維持・発展させていく体制の整備、研究基盤マネジメントと呼んでいますけれども、これを進めております。
 これからは、コアファシリティ採択大学がハブとなって地域の大学をつなぐ、あるいは、全国的に分野を基礎につなぐ形など様々な形態で強固な共用のネットワークを形成していく、そういった仕組みを考えています。全国の共用基盤を充実させていく施策を現在検討しておりますので、機会がございましたら御説明させていただきたいと思います。
 学術分科会の意見書について、コメントを1つさせていただきます。
 意見書の内容は、基礎研究の重要性を非常にストレートに表現されていて、私のように理学部で教えている人間としては、非常に心強く思いました。現場の実態、切実な訴えといいますか、課題を的確に反映していただいていると感じました。
 特に、基礎研究の多様性を維持することが非常に重要であって、長い目で見て、それがイノベーションを生み出す原動力となっているということが強調されていることに大変共感を覚えます。ここで改めて申し上げることでもないですけれども、例えば、量子力学とか相対論の発見・構築、あるいは、その言語である数学、こういったベースの発展がなければ現在のICT社会もないわけでありまして、この提言に盛り込まれている支援策、先ほどの話にもありましたが、特に基盤的経費の確保というのは、現場の研究力の持続的な発展を支える上では非常に重要であると思います。
 とはいうものの、現場におりますと、やはり直接的に経済効果を生み出すような、お金を稼いでくる研究にどうしても世間からのフォーカスが当たりやすく、外部資金を獲得して大学の財務運営に寄与できる研究が強化される傾向があります。私のようなアカデミアや文系の研究者にとって、肩身が狭く感じられるような風潮があるように思います。そういった背景を踏まえまして、アカデミアとしても、基礎研究の成果が長い目で見ると社会的なインパクトにつながっているということを広く認識してもらうために努力する必要があるという点も強調したいと思います。
 現状ですと、Top10%や1%などの論文の引用数、あるいは知財の件数といった実績がKPIとして評価されているのですけれども、これらだけではアカデミアの貢献が十分見えにくいように思います。難しいですが、基礎研究の社会的意義、影響というのをもっと具体的に示し、社会に伝えるための新しい評価指標が必要であると思います。
 かと言って妙案があるわけではないのですが、長期的な基礎研究の影響を追跡するような方法を模索する必要があるのではないかなと常々思っているところです。
 私からのコメントは以上です。ありがとうございます。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、上田委員、お願いいたします。

【上田会長代理】  ありがとうございます。
 本日の文科省からの説明については、特に異論はないのですが、科学技術の基本計画について、第6期までの成果というのは、御説明いただいたように、それなりに多くの成果はあったと思うのですが、基本的には、日本の科学技術力は低下していると言われているというのが一つ大きく気になるところであって、我々が議論すべきポイントではないかと感じています。
 そういう意味では、我々が今まで取り組んできたものは、いろいろな研究テーマがある中で、各研究テーマは、それぞれの大学、企業で個別に進むものが多かったというのが現状と思います。
 従って、これからは「連携」と「ネットワーク化」という観点で、テーマの具体化が重要になってくると思うのですが、今日の資料の40ページ目にその内容が書かれており、非常に重要なポイントになると思います。資料の右下には「国際頭脳循環の活性化」ということが書かれていますが、同様に括弧書きで書かれている複数個所の最後のところに、「先端・重要分野での戦略的なネットワーク強化」、「個が持つ点としての人的ネットワークを面として拡大し活性化」ということが書いてあるのですが、これは非常に重要なポイントだと思います。
 「面として拡大し」という箇所について、これは個人のネットワークというものを、組織、あるいは、あるグループ、団体のネットワークに拡大していくことで活性化しようということだと思うのですが、言い方を変えると、二次元のネットワーク化というのがここで言及されている重要なポイントと感じています。
 この二次元のネットワークというのも非常に大事だと思うのですが、その次にある三次元のネットワーク化、これは分野軸を加えるべきと思いますが、特に異分野同士の連携といいますか、異分野での協働、あるいは、異分野を含む戦略的なネットワーク強化ということが必要になると思います。
 この異分野連携というのは、単に科学技術の分野だけではなく、以前から話題になっている人文社会系の方々と自然科学の方々、研究者との連携ということが非常に重要であるということです。言い方を変えますと、日本は、いろいろな文化、あるいは、教育の面においては、諸外国、特に東南アジアを中心とする国々からは、欧米もそうですが、かなりリスペクトされているということを感じるのですが、その意味では人文社会系の考え方を積極的に取り入れた三次元の連携というのが今後重要になるのではないかなと思います。
 例えば、一つの例ですけれども、老化ということが最近よく言われていますが、これはもともと認知症とかがんの研究などが個別にやられてきた中で、基本的には、老化というものがいろいろな病気、あるいは、健康の不具合を引き起こしていることを考えていくと、がんの研究、認知症の研究というのは、全て老化ということが一つの起点になっているというものです。そういうことを捉えていきますと、基本的には、老化に伴って起こる心理的な変化も含めて、科学的な面での研究だけではなく、自然科学と人文社会系を連携させたような組織的なネットワークづくりというのが非常に重要になるということです。この三次元のネットワーク化について、連携あるいはネットワーク化という言葉だけで表現してしまうのではなく、ここに書いてありますように多次元のネットワーク化を念頭に置いて、もっとここを掘り下げて、自然科学と人文社会系が各分野で連携して、日本の強みを生かしていけるような科学技術体制をつくっていくべきではないかなと感じています。
 以上です。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、佐伯委員、お願いいたします。

【佐伯委員】  ありがとうございます。九州大学の佐伯です。大学で教育に当たる人間として、人材育成について幾つかコメントさせていただきたいと思います。
 今日のお話の中でも、かなりの方が御発言されておりましたけれども、やはり小中高からのアウトリーチ活動、こういった子供たちに科学技術、あるいは、その研究に興味を向けていただく、そういった活動が非常に重要ではないかと思います。
 歴史をひもときますと、例えば、自然科学、様々な昔のお偉い方々が様々なサイエンスを立ち上げてきましたけれども、例えば数学を取っても、数学を知的好奇心のために研究した学者の方もおられたと思いますが、必要に迫られて様々な研究をしていった、そういった偉大な先人たちもおられるわけであります。
 そういった形で、例えば、一つの分野だけに限らず、様々な分野が実際の生活、あるいは、社会の中でつながっているといったようなことを小中高の頃から教えていけば、将来的に研究者人口の増、あるいは、日本の国力の増強につながるのではないかと思っております。
 教育の現場、大学で携わっておりますけれども、人口減少に伴って学生の数もだんだん減ってきてはおるのですけれども、学生の質、非常に悪くはなっておりません。皆さん本当に優秀で、日本の若手人材、活用あるいは育成の仕方によっては、国力の増強に非常に寄与するのではないかと思っております。
 そういった意味でも、博士課程に進む学生の増加というのは、これはもうどうしても必要であると思います。そのためにも、将来的に修士課程あるいは博士課程に行くのがもう常識なんだと、その後に進んだらばどのようなキャリアパスが待っていてというようなことも、小中高の頃から教えていくのがいいのではないかというのが一つです。
 それから、もう1点、国際戦略とも関わるのですけれども、次世代育成の観点で、グローバル・サウスの話も出ておりましたが、そういったグローバル・サウス、要するに、欧米諸国だけではなく、そういった観点からも、留学生の獲得というのは非常に大事ではないかと思っております。
 例えば、ASEAN諸国にとって見ましても、日本というのはやはり非常に魅力的な国でございまして、日本に来て教育を受けて高い知力・学力・研究力を身につけて、日本の中で研究していくといったようなことも非常に魅力的な状況になっております。ですので、そういったところの優秀な人材を獲得するといったことも、国際戦略と人材育成の観点からも必要ではないかと思います。
 皆さんからも御発言ございましたように、労働力がこれから枯渇してまいります。日本人の人口も減ってまいりますので、外国人の留学生を、優秀な人をどんどん呼び込んで、日本の国力の増強のためにも活躍していただくというのは、そういった海外の留学生にとっても、あるいは日本にとってもウィン・ウィンの関係でうまくいくのではないかと思っております。
 それから、最後にもう1点ですけれども、労働力の観点から、AIの活用ということも今日の話の中でもたくさんありました。AIというのは、非常に技術力が高まって、様々な場面で使えるようになってきましたけれども、まだまだ多くの問題を抱えていると思います。自動運転にしましても、様々な問題を抱えていると思います。そういったところで、多様性というのが大事だと思います。つまり、AIをAIだけで深く進化させていくことはもちろん大事ですけれども、様々な場面で、それぞれの分野、あるいはそれぞれの課題、社会課題、そういったものに対応できるような多様性を持たせる研究も大事だと思います。
 今後、気候変動、戦争その他、社会的な人類未曽有の危機に直面するような問題が多く発生しておりますが、そういった中で、人類がこれまで持ってきている総合知、そういったものを活用するためにも、多様性、それとともに、人材育成の観点からは、ほかの分野との共創をしっかりとやっていく。そういったことを通して、AIともうまく協調していくようなことが必要ではないかと思いました。
 以上です。ありがとうございました。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 会議の時間が3時半まででして、まだ御発言になっていない委員の方が10名以上いらっしゃいますから、少し短めの御発言に切り替えていただけると大変ありがたいと思います。
 続いて、日野先生、お待たせしました。

【日野委員】  手短に。何回か紹介されていますけど、41ページ目の目指すべき理想像というやつですけれども、これが実現したら、一番冒頭にあった学術分科会の報告の中にある問題であるとか、こうあるべきというのは、あっという間に解決してしまうと思うんですね。すばらしいと思います。
 問題は、これ、問題提起されていましたけど、どうやってそこに向かうのですかということだと思う。いっときに全部これが達成するわけでは決してない。一方で、ただ、今日の中でKPIという言葉も出されていましたけれども、やっぱりロードマップがあって、それぞれのステージで何が達成されていなければいけないかというようなことが具体的に何か提案があって、それがあった上で、これ、第7期で多分解決するものではありませんから、第8期、第9期とバトンをつないでいかなければいけないというメッセージも加えて提案していくのが大事だと思います。だから、本当にこれはすごく大事だと思います。
 一方で、その具体的な中で、これ、要するに人材育成ですから、育ててもらう若い人たちがどう受け止めるか、モチベーションを持ってもらわないといけないので、そういう意味では、出口がちゃんとあります。だから、なっちゃっている人を処遇するのはもちろんですけれども、魅力のある出口があるということ。
 それから、もう一つ、38ページのほうでおっしゃっていただいた、これもすごくいいと思ったのですが、スーパーマンである必要はなくて、適材適所、できるものをやる。博士に育つ人ってものすごくモチベーション高いので、スーパーマンになりたがるところがあるのですけれども、そうじゃなくて、こんな人も博士のスコープになっているということが伝わっていくと、この理想像につながってくるかなと思っていました。
 以上、感想です。

【大野会長】  どうもありがとうございます。
 すみません。オンラインと対面と、なかなか全部目が行き届かなくて。対面の場合には、もしかしたら、こういうふうに(名札を立てて)やっていただくと分かりやすくなると思います。あるいは、オンラインのほうで手を挙げていただいても結構だと思います。
 続きまして、それでは、村岡委員、お願いいたします。

【村岡委員】  村岡です。どうもありがとうございます。
 皆様の検討いただいた報告内容も拝見していまして、また、委員の皆さんの御意見にも賛同するところです。
 私からは、次の科学技術・イノベーションの検討をするに当たって、ぜひ考慮すべきことがもう一つあるのではないかと思いまして、それについて簡単に申し上げたいと思います。
 社会構造が変化していく、あるいは、経済が変化していくことのもう一つ重要な問題として、地球環境が大きく変化する中で、いかに持続可能な社会の構築を支える科学技術・イノベーションは何か、あるいは、その人材育成の方向は何か、産学官民連携の方向性はどういったものがあるか、それをどのように将来10年、20年というようなビジョンでつくっていくかということも、ぜひ今後の検討に入れていただければと思いました。
 先ほど多くの今日いただいた項目の中でも、研究をいかに継続するか、発展させるか、人材育成を図るかということもありますが、特に地球環境が変化する中で、社会や経済を支える生物圏が大きく変化しているわけですが、それにも関わる科学技術、あるいは、研究、人材、こういったものをどういうふうに国として支えていくのか、発見していくのかということも、ぜひ今後の議論の中で考慮されればと願っております。
 以上です。よろしくお願いいたします。

【大野会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、栗原委員、お願いします。

【栗原委員】  先ほどから出ています人材に関してです。これは私も属しています産業連携・地域振興部会でも、若手研究者の活躍の場が一つの大きいテーマで、ここにも書いてありますような形で私どもも議論いたしました。
 やはり研究の競争力のためには、博士課程の人材の多様性が重要だと思います。41ページがよく皆さんに引用されていますけれども、この循環は重要だと思いますが、ストレートに博士課程まで終了した人が社会に出てこうなるということではなくて、むしろ一度社会に出た人が博士課程で戻ってくるという、そういういろいろなパスで行き来ができることが重要ではないかと思います。ぜひ一度企業に入り、あるいは、いろいろな機関に属して、その後、博士が目指せるようなパス、あるいは、大学の博士課程の人が企業に出向できるパス、あるいは、若手だけではなく、シニアの研究者の方々も企業に行き来できるパス、そういう柔軟性が必要なのではないかと思います。その辺を御検討いただきたいと思います。
 もう一点、気になったのが、博士課程の前に修士課程がありますが、ここでは学部と修士を一緒にしていますけど、学部卒で社会に出てしまう人が非常に多く、ここから修士課程に行くパス、ここを増やすことも実は重要なのではないかと思いますので、その辺の検討や、メッセージの発信があればよいと思います。

【大野会長】  ありがとうございます。
 それでは、白波瀬委員、お願いします。

【白波瀬委員】  よろしくお願いいたします。
 もう先生方のご意見には同意するところなのですけれども、1点だけ、申し上げたいと思います。
 国際化と人材の議論は密接にリンクしていると思います。国際化について、まずは人材への投資が肝要です。やっぱり人をどう育てるかというところで、だれをターゲットにするかということになりますが、高度人材となる候補の中で、いろいろな候補者がおり、いろいろな需要が生まれていますので、ここではマッチングが求められます。
 それで、今、国際的な状況におきましては、様々な高度人材の人たちがいろんな役割のいろんな職業を担って、この大きなグローバルな社会を動かしているという事実が、科学系にも例外なくあると感じております。まだそのような新しい展開には、規制や諸制度を支える法律が必要なので、文系、特に政策研究が求められます。いわゆる文理融合分野ということになっていきますが、専門教育の先に、さらなる多様な雇用機会がまっていますので、少し出口戦略を意識することが求められます。大学院に行ったから、次、学術にずっといないことがちょっと負けになるとか、そういうことではなくて、多様なキャリア形成にあたっての評価軸を多様にすることが求められると思います。
 以上です。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、明和委員、お願いいたします。

【明和委員】  京都大学の明和です。大変有意義な御提案をいただいたと思います。
 私の専門である脳科学という基礎研究の視点から、2点ほど述べさせていただきます。
 1点目です。41ページに、目指すべき理想像の相関図を示していただいております。その一番下の部分、小中高校段階から探究力、アントレプレナーシップを養成するとあるのですけれども、脳科学の理論でいうと、大学入学後の年齢でこうした能力を高めるというのは実は遅いと考えられます。こうした能力の育成にもっとも効果的な時期のひとつは、第二次性徴期、思春期です。この時期には、いまだ前頭前野は成熟していません。他方、脳の奥のほうにある大脳辺縁系とよばれる脳部位、感情を湧き立たせる、進化的に古い部位ですけれども、この活性が非常に重要となります。思春期の大脳辺縁系の活性は、リスクを恐れず、好奇心の赴くままに行動を起こさせることにつながります。大学入学以前からこうした知見を活かした教育体験をさせるのは効果的なのです。こうした取り組みは、アメリカでも行われています。こうした知見も含めながら、どの時期に何をやるのが効果的なのかを再考いただくことが日本でも必要だと思います。
 2点目は、40ページ、先ほど上田委員が指摘された点です。私も、まさにここが大切だと思っております。先ほど、文科省の方がオンライン空間の活用発展はうまくいったけれども、現実空間における価値創造は道半ばとおっしゃいました。ネットワークが個と個から、これが点から面になり、さらに三次元へと発展していくときに何が重要かというと、社会的な絆、研究者同士の信頼関係なのです。これがないと、多くの科学技術は絶対に発展しない。テキスト情報のやり取りだけでは、価値創出につながるイノベーションは起こりにくいことが、たしか先月のNature誌に掲載されていました。創造性、批判的思考を高める人と人との現実空間での交流なのです。この本質を踏まえた研究の時空間を、特に若い研究者に豊かに提供していけることで、研究者のネットワークは点から面に、そして、三次元へと発展、価値を創出していくと私は思っております。
 自然科学と人文社会科学の融合なしには、効果的に実現できない取組みもあるかと思います。ありがとうございます。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、狩野委員。

【狩野委員】  狩野でございます。ありがとうございました。人材委員会に関係するところで、たくさんの御意見をいただきまして、大変うれしくお伺いいたしました。
 一つ一つお答えするには時間が足りないかと思い、申し訳ないのですが遠慮させていただきまして私から加えたいことは、「ほかの人が分からないうちの新しさ」をどうやって支えるか、という議論が今まであまりできていないのですけれども、これは非常に今後大事なことかなということを思っているという点です。ここについては今のところまでできていないのですが、ぜひ今後考えたいなと思っております。
 それから、アントレプレナー及び博士人材の多様化のところです。ここも、どういうときに自分がそれに向いた力を持っているのかというのを感じてもらえる場の設定をどのようにできるか、ということを思っております。学校のカリキュラムで必要とされる能力を自らが持っているかどうかはすぐに分かる場もあると思いますが、それ以外の、科学者としての能力に当てはまるのか、企業に当てはまるのか、起業に当てはまるのか、などというところを感じてもらえる場の設定というのがきっとこれから要るのかなということを思っております。
 あと、先ほど広範なデータをどうやって扱うか、AIということについてのお話がありました。私が思っているのは、外務省の科学技術顧問の仕事もさせていただいたときに思ったのですけど、非常に広範なことを知る上で、何が本当で何がそうでないのかというのは、なかなか外から分からないときがございます。どの情報は信じるに足りるのか、どの情報はより深掘りする価値があるのか、といったことを教えてくださる方のネットワークもあるといいなということは思っております。これも何か実現ができるといいなと思っておりました。
 そのほかの、さっき最後に御発言いただいたような、我々の資料だとエビデンスが付きそびれているところにエビデンスをいただけたりしまして、大変心強く伺いました。
 以上です。ありがとうございます。

【大野会長】  ありがとうございます。
 もう何人かいらっしゃいますけれども、いかがでしょうか。
 田中委員、お願いいたします。

【田中委員】  非常にきちんとまとめられて皆さんの意見が出たので、今さら何かをというのがあると思います。この施策を打ったから、すぐに効果が出るものはもちろんあるとは思うのですが、特に人に関しては、やはりどうしても時間がかかります。特に小中高、小中高でも遅いという話がさっき出ましたけれども、次の5年ですぐ出るもの、それは出ればとってもいいとは思いはしますが、必ずしも全部に効果が出るわけではない。そうしたときに、もう少し長い目で、落ち着いて、ぶれずに評価するということが重要かなというのは、常に皆さんもお考えだと思うのです。
 あともう一つは、その評価軸も、相澤先生もおっしゃっていましたが、明日すぐ効果が出るものもあれば、本当に10年後、もしくは100年後に効果が出るものだってあるわけで、そういうのも全てやはり基礎が重要だということは、きちんと書き込まれてはいますが重要なことだと思います。そういうことに対する評価、先程狩野先生もおっしゃっていましたが、新しい芽とか、これは本当に辛抱強く見る価値があるということを判断していくような観点もぜひきちんと書き込んでいただければいいかなと思います。
 これは第7期だけではなくて、本当に8、9期、今後ずっと続いたときに、一番底にあるベーシックなところで必ず考えていくべき問題だと思いますので、そういう息の長い問題もちゃんとあるよということをもう少し明確に出してもいいのかなというのが印象です。
 以上です。長くなりました。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 佐藤委員、お願いします。

【佐藤委員】  佐藤です。基礎研究の在り方とか、非常に賛同したくなるようなものがたくさんありましたけれども、私も技術士分科会を担当しておりますので、人材育成について意見を述べたいと思います。
 特に人材育成の方針の中で、技術士についてもかなり踏み込んで書かれていまして、こういう新しいことをやりましょうという話になるのですけれども、既存の技術士の仕組みというのも、実はこの全体像の中でどう機能させるべきかというような見方をして、もっと国際的に見ても魅力のあるようなものに変革していくヒントがいろいろあると思いました。恐らくほかの取組も、今やっていることをさらに有効に機能させるという視点で、いろいろな見方ができるのではないかと思っています。
 あと、ちょっと長くなりますが、38ページの3つの力というのは、これは、技術士も今、国際的な同等性で、ほかの国がやっているものと整合を取っていきましょうということなのですけれども、諸外国では、こういう力に関しては、もう既にかなりこのことをやっているのですね。ですので、国際化をやると、結局、日本がどういうところが少し足りないとかというのは見えてくるので、我々の視点だけでは気がつかなかったようなことに気づくことができ、さらに高いところに行けると思っています。
 それから、もう一つ、ちょっと細かいところですけれど、この3つの力の全てがすばらしいことを全ての人に求めることはないと思うのですけれども、ただ、どれかが完全に欠けているというのは多分よくないと思うのですね。ですので、欠けている部分があっても、その部分の大切さを認識することは絶対必要だと思うので、全ての人がこの3つの力の必要性を理解すると同時に、自分に欠けている点を自覚することが大切だと思います。
 あと、深める力というのも、特定の分野だけにとどまらないので、自分だけではすべてはやり切れないということも認識する必要があると思います。
 というようなことで、ちょっとまとまりがありませんが、今日の資料にはいろいろなヒントが隠されているなと思って、非常に感銘を受けて聞いておりました。ありがとうございます。

【大野会長】  ありがとうございます。
 あと御発言されていらっしゃらない方としては、寺井委員は御発言されましたでしょうか。お願いします。

【寺井委員】  私は、じゃ、総合知に関して。総合知という概念は、多分第5期の基本計画から出てきていると思うのですけど、しきりにそういう創出・活用が必要だとか、あるいは、人文社会科学が持っている意義をもっと見直そうというような動きがあったと思うんですね。
 しかしながら、では、具体的にどう活用されているのとよくよく考えると、あんまり見えてこないなという部分もありまして。私は、人材育成という視点で、やはり個々の研究者とか技術者のレベルでは、当然その方々の専門領域の新しい知を追求するという努力はされていると思うのですけれども、その研究成果をどのように社会実装していくのかということを考える基盤みたいなものが総合知であり、人文社会科学的な知見なんだろうと思っているのですね。そして、やはり研究者・技術者の教育システムの中に、あるいはキャリアパスの中に、総合知を獲得するような意図をした仕組みが必要なのではないのかなとちょっと考えた次第であります。
 以上です。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、既に御報告になられていますけど、久世委員、そして菅野委員、次に。

【久世委員】  まず、産地部会に対して、まず、知財の強化についてご意見を、門間委員と金井委員からいただきました。
 知財の活用や好事例の共有など、規模の大きな大学では、知財人材も豊富で活動できます。一方、規模の小さい大学においては、専門の知財人材が配置できず十分な活動ができません。この解決のために、知財人材の派遣をするといった議論がありました。知財人材の派遣やローテーションにより、知財関連の情報やノウハウが、ひとつの大学に閉じず、より活発に共有できるといった副次効果もあります。
 金井委員からの御指摘は、知財には、特許だけではなく、ノウハウも含まれますし、最近では、プログラム(アルゴリズム)やデータも重要度が増している中、日本では、データなどに対する権利の確保やトラッキングの仕組みが弱いのではないかとのことでした。御指摘のように、日本では、データガバナンスの考え方が遅れています。技術的には、電子透かしや来歴管理などがありますが、デジタル技術の導入前に、データに対する意識や風土の醸成、プロセスの確立といった全体のフレームワークを整備する必要があります。
 最後に、人材は大変重要です。38ページで説明された「つなぐ力」、「深める力」、「実現する力」は本当に重要で、先ほど佐藤委員からもありましたように、3つの力が大事だという意識を持つことは大切だと思います。個人的には、「つなぐ力」を伸ばすことが、これからの日本にとって重要で、大学においても、企業においても、小中高においても注力すべきだと考えます。
 以上です。

【大野会長】  ありがとうございました。
 それでは、菅野委員、お願いします。

【菅野委員】  菅野です。国際戦略委員会に対して様々な御意見いただきまして、どうもありがとうございます。
 基本的な姿勢としては、研究者が国際的に連携しながら、自由な発想に基づく研究を通じて科学が発展してきたという認識で、これを我々としては守りたいというのが大きな目的です。
 そのための政策として何が必要かというのが、後半に述べましたように、インテグリティとセキュリティで、インテグリティに関しては、先ほど原田委員からも指摘がありましたけれども、まだあまり知られていないとの状況であります。現在も対策を練っている、進行しているところですけれども、もう少し宣伝活動が必要なのかなというような感じがいたしました。
 セキュリティに関しては、これは相手のあることですので、相手の状況を見ながら今後検討していきたいというのが今の現状です。これは村山委員から指摘がありましたけれども、相手があるということで、慎重に対応していきたいというのが今現在の状況です。
 ちょっと離れまして、私個人の感想ですけれども、私も先ほどの報告で、現在日本のステータスが少し落ちているというようなことを述べましたけれども、私自身の感覚としては、決して悪くないというのが個人的な認識です。ただ、ほかが非常に大きくなっているので、比率として見えにくくなってきているというのは事実で、後ろ向きではなくて、さらにこれまでの強みを生かすためにどうするべきか、それが人材であり、効率的な共同研究の進め方であります。国際戦略委員会としても、その方針に基づいてこれから議論していきたいと思います。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 あと、私からもちょっとだけ発言をさせていただきますが、大変すばらしい御意見をたくさんいただきまして、私自身も、そういうところも確かにあるなということはたくさん頂戴しました。ぜひこれを第7期に向けて生かしていきたいと思います。
 一方でと言うと言い方が変ですけれども、20年ちょっと前に大学が法人になって、そこから大学の環境が随分変わったという印象を持たれている方も多いと思います。そのときの私の整理の仕方は、法人化自身というのはよかったと思います。大学が自由に組織として新たなことを試みることができるという体制に移行したわけですから。しかし、国の一部であるところから、法人に移行するには、様々な手続、あるいは新たに発生する事務処理みたいなものの対応が必要になったわけですね。つまり、リソースが必要だったのですけれども、そこに対しての理解が、大学もなければ、そういう施策を打った側にもなければ、財政当局にもなく、法人化自身はよかったとしても、そこにリソースが必要だったにもかかわらず、運営費交付金がそこから減っていったというのは、非常に大きなダメージを大学が負ったのではないかということを、感じています。
 そういう意味で、やったほうがいいことというのは実にたくさんありますので、それらを一つ一つ実施していきたいと。そして、第6期もまだ1年ありますし、第7期は5年ありますので、その中でさらに私たちは発展を遂げたいわけですけれども、やればいいということだけを言って、きちんとリソースがそれについてこないと、(法人化後に経験した)事態がまた起きますので、そこのバランスは極めて重要だなと思います。
 もちろん、審議会の下でのペーパーには、抽象的といいますか、具体的にこうするんだということは書ききれないわけですが、それは予算を取ってこられて差配する文科省の皆様にお願いするしかありません。ぜひそこのところはお願いしたい。
 あと、私たち、小中高における育成をぜひやっていきたい。国の未来をつくっていくために、小学校、中学校、あるいは、先ほどのお話ですと、前頭前野の発達時期にある思春期、私はもう終わったと思って聞いていたのですけれども、そういう時期から、いろいろな情報を、生徒諸君が自ら選べるような形で接触できるといいなと思います。少子化の中での少子の育成は、これからもずっと続けていかなければいけないと思います。
 何回か出てきましたけれども、留学生というのも同時に重要で、これは我々の社会の中で活躍してもらうということと、それから、我々の中での学士、修士、そして、博士の学位を取って、あるいは、ポスドクとして経験を積んで世界に活躍するという、人脈、ネットワークがあるわけです。それらを我々が意識してつくっていかなければいけません。
 そこで、若干の不安が、私、3月まで大学の長でもありましたので、大丈夫かなと思っているのは、留学生を呼び込むというときに、本当に留学生来てくれるのだろうかと。私の場合は大学ですけれども、本当に魅力的な大学・大学院をつくっているのだろうかと。呼び込むぞと言って呼び込んだときに、来てくれなかったらちょっとまずいですよね。ですから、向こう側の立場から、日本がどのように見えているのかというのは、常にプローブをする必要があるかなと思います。
 そういう意味で、コミュニケーションというのは、僕らの中だけ、あるいは、私たちの社会の中でも重要ですけれども、海外に対しても、海外の様々なコミュニティに対して、留学生だけではなくて、コミュニケーションが必要です。そういう意味で、これは非常にプラグマティックな言い方をしますと、様々な指標は低いよりは高いほうがいい。(そのための施策も必要であることを)大学にいて思ったということを最後に感想で言わせていただきます。すみません。もう時間が長くなりましたので。
 いずれにせよ、非常に貴重な御意見をいただいて、これらをこれからさらに踏まえて、政府における次期の基本計画の検討を進めていっていただければと思います。文部科学省としても、今日の議論をぜひ踏まえて、引き続き検討をよろしくお願いいたします。
 最後の議題ということでよろしいですね。もう時間を過ぎてしまいましたので。
 何かその他、皆様から御発言ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、本日の議題は以上です。最後は、事務局から何か連絡事項があればお願いします。

【伊藤科学技術・学術戦略官】  本日の議事録は、後日、事務局よりメールで送付させていただきますので、御確認いただきますようお願い申し上げます。御確認いただいたものにつきましては、文部科学省のホームページに掲載いたします。
 次回は、追って御連絡いたします。
 また、本日の会議資料につきまして、郵送を御希望される場合は、事務局で手配いたしますので、マチ付き封筒の上に置いておいてください。
 以上でございます。

【大野会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、これで第72回科学技術・学術審議会を終了いたします。皆様、お忙しい中、最後まで御出席いただきまして、誠にありがとうございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(制度改革・調査担当)付
電話番号:03-5253-4111(内線3848)
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(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(制度改革・調査担当)付)