科学技術・学術審議会(第65回)議事録

1.日時

令和3年3月18日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 会長及び会長代理の選出等について(非公開)
  2. 部会及び委員会の設置について(非公開)
  3. 総会の議事運営について
  4. 今期の調査審議事項について
  5. その他

4.出席者

委員

濵口会長、須藤会長代理、天野委員、大野委員、小縣委員、小川委員、越智委員、小原委員、梶原委員、春日委員、勝委員、岸本委員、栗原委員、小長谷委員、白波瀬委員、鈴木委員、高梨委員、高橋委員、田中委員、仲委員、長谷山委員、福田委員、藤井委員、宮浦委員、観山委員、明和委員、村山委員、門間委員、安浦委員

文部科学省

藤原文部科学事務次官、松尾文部科学審議官、板倉科学技術・学術政策局長、杉野研究振興局長、生川研究開発局長、菱山科学技術・学術政策研究所長、行松サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、梶原大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、塩崎大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、長野大臣官房審議官(研究開発局担当)、塩田企画評価課長、山之内文部科学戦略官、中澤内閣府政策統括官付(科学技術・イノベーション担当)統合戦略グループ企画官、佐野科学技術・学術戦略官、ほか関係官

5.議事録

○会長には、科学技術・学術審議会令第4条第1項の規定に基づき、委員の互選により濵口委員が選任された。
○会長代理は、科学技術・学術審議会令第4条第3項の規定に基づき、濵口会長が須藤委員を指名した。

※事務局から、科学技術・学術審議会に置く部会及び委員会(案)について説明があり、了承された。

【濱口会長】 それでは、まず初めに、藤原事務次官から御挨拶をいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

【藤原事務次官】 文部科学事務次官の藤原でございます。ちょうど本日はこの時間帯、衆議院で本会議がありまして、大臣以下、政務三役がそちらに出席することとなりましたので、私が代わりまして、今期の初回である本日の第65回科学技術・学術審議会総会の開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。
委員の皆様方におかれましては、大変お忙しいところ、第11期の本審議会の委員に御就任いただきまして、誠にありがとうございます。
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、国際社会のみならず、国内生活も大きな変化を余儀なくされております。このような状況の中、我が国の成長と繁栄の要となるのは科学技術・イノベーションであります。科学技術・学術は新たな知を創出し、持続的なイノベーションの源泉になるものであり、さらにその源となる学術研究や基礎研究は極めて重要であります。
 折しも一昨日、第6期の科学技術・イノベーション基本計画の答申が出されたところでありまして、この計画におきまして文部科学省が果たす役割は極めて大きいものと認識しております。新しく始まるこの第11期科学技術・学術審議会において、文部科学省が担う科学技術・学術の振興を一層推進していくために、是非とも忌憚ない御意見、御提言を賜りますよう、お願い申し上げて、私からの開会の御挨拶といたします。どうぞよろしくお願いいたします。

【濱口会長】 ありがとうございます。
 それでは、僣越ながら私からも一言御挨拶申し上げます。奇しくもこの3月は東北大震災10周年となりますが、この10周年のときに新たにコロナ禍で日本は大変な状況にあると思います。
 世界全体で見ますと、3月17日現在で260万人の死亡者を数えておりますし、感染者は1億2,000万を超えております。日本国内においても死者は8,700人、9,000人近くなっておりますが、これ実は10月中旬は1,600人程度でしたので、ほぼ6倍にこの4か月から5か月で増えているという非常に危機的な状況にございます。その中でこの科学技術審議会の役割は従前に増して非常に重要な役割を果たすと私も感じております。
 昨年、科学技術基本法が科学技術・イノベーション基本法に変わりまして、人文科学のみに係る科学技術も当該法の対象ということになりました。その中で総合知という言葉が語られております。タイムリーな変更であったと今思いますが、well-being、あるいはSTI for SDGsがこの中で語られる条件に入ってきております。役割は非常に大きいと思いますので、皆様方の御意見をしっかり頂き、科学技術政策に反映させていいただく役割を果たしたいと思います。どうぞ御指導、御鞭撻いただきますよう、お願い申し上げます。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事を進めさせていただきます。まずは議題の3「総会の議事運営について」であります。事務局より説明をお願いいたします。

【佐野科学技術・学術戦略官】 それでは、資料3-1及び3-2に基づきまして、説明をいたします。
 こちら資料3-1でございます。科学技術・学術審議会運営規則となってございます。こちらにつきましては、科学技術・学術審議会令というものがございますが、これに定めるもののほか、この運営規則に定めるということで、総会の運営を定めているものでございまして、簡単に御説明をいたします。
 まず、審議会でございますが、第2条で会長が招集するとなってございます。
 第3条でございます。書面による議決ということができるとなってございます。
 第4条につきましては、分科会を分科会長が招集することができるという規定になってございますので、具体的な招集手続につきまして記載がございます。
 それから第5条でございます。こちらは審議会に置く部会についての記載でございます。こちらにつきましても、各号におきまして具体的な招集方法等を記載をしているものでございます。
 第6条、こちらは、特定の事項を機動的に調査をするために委員会を置くことができるという規定になってございまして、具体的な規定につきまして記載がございます。
 第7条でございます。こちらは会議の公開の規定でございます。審議会の会議資料等は、ここに掲げる、第1号に掲げる会長の選任、その他の人事に係る案件等以外につきましては、公開とするという規定になってございます。
 それから第8条でございます。議事録の公開ということで、審議会の会議につきましては議事録を作成して公開をする等という記載がございます。
それから第9条でございます。ウェブ会議システムを利用した会議への出席ということで、これは一番新しい規定でございますが、ウェブ会議システムを使って会議を開催することができるという規定でございます。
 続きまして、資料3-2につきましては、具体的な科学技術・学術審議会の公開の手続について定めているものでございます。1ポツのところに記載ございますが、会議の日時・場所・議事につきましては、原則1週間前の日までに公表するとなってございます。
 2ポツにつきましては、傍聴につきまして、一般傍聴者、報道関係傍聴者、会議の撮影、録画、録音につきまして、具体的な手続、やり方について記載がございます。
 説明は以上でございます。

【濱口会長】 ありがとうございます。本件について御意見、御質問等ございましたら発言をお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 御意見がなければ、総会の議事運営に関しましては、資料3-1、3-2に基づいて運営してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、次に、議題の4「今期の調査審議事項について」お諮りします。事務局から説明をお願いいたします。
 なお、科学技術基本法改正、科学技術・イノベーション基本計画を踏まえた科学技術・イノベーション政策の在り方について、今期どのようなことを御議論いただくかを各分科会、部会、委員会で検討いただき、次回の総会において報告いただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。それでは、事務局、お願いいたします。

【佐野科学技術・学術戦略官】 それでは、まず、資料4-1につきまして説明をいたします。
 第11期科学技術・学術審議会における主な検討事項というものでございます。一番冒頭に書いております今期につきましては、4月1日から施行される科学技術・イノベーション基本法、それから第6期科学技術・イノベーション基本計画を踏まえた科学技術・イノベーション政策の在り方を検討するということが必要だと思ってございます。
 また、先ほど会長からお話がありました自然科学の知と人文・社会科学の知の融合である総合知の創出・活用、それから、ポストコロナ下におけます科学技術・イノベーション政策の在り方等への留意が必要であると思ってございます。
 この下の丸、幾つかございます。こちらにつきましては、今後御審議いただくものとして想定されるものを記載しております。
 上のほうから、研究開発プログラム評価の新たな仕組みの検討、食品成分表の次期改訂の検討、学術研究の振興方策についての検討等々、それから、スタートアップ創出・本格的な組織対組織の産学連携の検討、それから国際頭脳循環、国際共同研究等による国際ネットワークの強化、科学技術外交の推進、博士課程学生を含む若手研究者の育成・支援方策等に関する検討について書かせていただいております。
 説明は以上でございます。

【濱口会長】 ありがとうございます。それでは、次に、塩田課長から説明をお願いいたします。

【塩田企画評価課長】 それでは、資料の53ページでございます。科学技術基本法の改正について御説明申し上げます。我が国の科学技術政策の基本的な枠組みを定めます科学技術基本法が、昨年の通常国会で制定以来初の実質的な改正が行われまして、来月4月より施行となりますので、そのポイントを御説明申し上げます。
 大きなポイントは2つ目の丸のとおり、これまで対象とされてこなかった人文科学のみに係る科学技術とイノベーションの創出を法の対象にしたことでございます。
 下の※印にありますとおり、イノベーションの創出は科学技術の水準向上と並立する目的として位置づけたものでございまして、イノベーションを唯一の目的として位置づけたものではございません。
 また、資料中には記載がないのですけれども、人文科学とありますのは、法律上は社会科学も含む概念でございます。また、科学という言葉は、およそあらゆる学問領域を指す広義の意味合いで用いられているものでございます。
 現行の科学技術基本法は、上の水色の枠囲いの中の第1条のとおり、科学技術の中から人文・社会科学のみに係るものを除いてございます。これは当時のコンメンタールとかを見ますと、人間や社会の本質を扱う人文科学は、自然科学と同列に計画的な推進策を講ずることは適当ではないという理由により、対象から外されてございました。
 しかし、一番上の趣旨のところに書いてございますように、近年の科学技術の急速な進展によりまして、人文・社会科学が対象といたします人間や社会の在り方と科学技術・イノベーションとの関係が密接不可分なものとなっております。また、先端技術や定量的手法を利用した分析など、人文・社会科学の研究手法も併用しておりまして、推進策を講じる上では人文・社会科学と自然科学の扱いを異にする妥当性がないという判断のものでございます。
 続きまして、3つ目の丸でございます。イノベーションの創出を法に規定するに当たりまして、定義規定を設けてございます。従来、別の法律に定義規定がございましたが、その規定を見直しました。※印のところでございますが、科学的な発見や発明、新商品の開発、こういった創造的な活動を通じて新たな価値を生み出し、これを普及し、経済社会の大きな変化を創出する、これをイノベーションの創出というふうに位置づけてございます。
 次の丸の振興方針は後ほど別の資料で御説明いたします。
 次の丸は、大学や民間事業者の努力義務規定を設けたというものでございます。
その次の丸が、後ほど説明がございます基本計画の策定事項として、人材の確保・養成の重要性に鑑みまして、それを改めて位置づけたものでございます。
 次のページに、今回の法改正は束ね法でございましたので、ほかの法律もあるのですけれども、そのうち4ポツのその他のところだけ簡単に御説明いたします。その他ですけれども、JST法や理研法につきましても従来対象とされていなかった人文・社会科学のみについても対象とするといった法改正がなされたところでございます。
 次のページでございますが、これが振興方針でございます。赤字が追記されたものでございます。かいつまんで説明いたしますと、第2項では、人文・社会科学の分野の特性の配慮とか、学際研究、また、学術研究という言葉も基本法に初めて入れてございます。学術研究と学術研究以外のバランスということでございます。
 また、第3項でございますけど、これは科学技術の振興には学術的価値の創出に寄与するという意義、その他多様な意義があるということを改めて規定してございます。
 第5項が、SDGsにつながります包摂性の概念を規定したものです。
 第6項が、いわゆる総合知という言葉が言われていますけれども、あらゆる分野の知見を総合的に活用して、社会課題への対応を図らなければいけないのだということが振興方針として記述しております。
 説明は以上でございます。

【濱口会長】 ありがとうございます。それでは、第6期科学技術・イノベーション基本計画答申について、内閣府中澤企画官に説明をお願いいたします。

【中澤企画官】 内閣府の中澤です。よろしくお願いいたします。私自身、文部科学省から出向で内閣府におりまして、足かけ2年ほど、文部科学省のところから計算して2年ほど基本計画関係の仕事をさせていただいてございます。今回、第11期の科学技術・学術審議会が開催された状況でございますが、この前期、第10期の際に総合政策特別委員会という、文科省の中の本審議会の下部組織でございまして、濱口先生に委員長になっていただいて、基本計画に関する報告書を昨年取りまとめいただいております。
 内閣府でも、こういった文科省からの報告書、科学技術・学術審議会からの報告書というところをベースにさせていただきつつ、冒頭、藤原次官からもお話ありましたこの基本計画は、やっとといいましょうか、年度末の閣議決定予定でございます。なお、つい先日3月16日に総合科学技術・イノベーション会議、いわゆるCSTI本会議において答申され、これが決定されているというところでございますので、基本的にはこちらの資料のものが最終案という状況でございます。
 CSTIの本会議では、本日、この科学技術・学術審議会の委員でもあり、CSTIの委員でもございます梶原ゆみ子先生、それから、本日も御出席いただいております藤井輝夫先生もCSTIのほうで、策定について御協力いただいているという状況でございます。
 前置きが長くなりましたが、資料4-3の概要について、簡単に御説明いたします。冒頭、現状認識でございますけれども、ボックスが3つございますが、一番左側でございますが、世界秩序の再編成、これが起きているのではないかと。科学技術・イノベーション自体が国家の覇権争いにもなっていますし、国家の力の源泉になっている、そういった変化です。さらには、グローバルアジェンダとしては、気候変動、これが将来の危機ではなくて、目前になっている危機ということでございます。さらにはITプラットフォーマーの台頭の中で、情報独占、あるいは格差の拡大、富の偏在というようなことがあるという中で、真ん中のボックスでございますが、コロナウイルス、これが大きな変化を加速しているという状況になります。
 一方で、右側のボックスのところでございますが、全体を振り返った際に、丸の1つ目でございますが、目的化したデジタル化、Society 5.0という話もやってきたわけですけれども、デジタル化自体が目的化していなかっただろうかということでございます。さらには相対的な研究力の低下。さらには、もう一つ、国内としては、直前に御説明ありましたが、根拠となる科学技術基本法自体が改正されたという大きな変化がございます。
 そういった中、では我が国はどこを目指していくのかというのが緑の真ん中のフェーズでございます。我が国はSociety 5.0を真に実現していく必要があるであろうということで、この中身を目的といいましょうか、達成すべき社会として2つに分けてございます。
 左側が、国民の安全と安心、これを確保する持続可能で強靱な社会ということでございまして、これはまさにSDGsと軌を一にするものでございます。さらには、強靱性の確保という観点でも、今回、コロナウイルスがある中で、いかにしなやかで、かつ持続し強靭性のある社会というところをつくっていくか。これは社会全体で実現していく必要があるのではないかということでございます。
 もう一つ、右側のボックス、一人一人の多様な幸せ、well-beingが実現できる社会であろう。左側が社会全体のことにある種フォーカスを置いているのに対して、右側はある種、社会全体の中の個々人、一人一人に焦点を当てた際に、単に経済的な豊かさ、そういったものだけではなくて、むしろ質的な豊かさ、それぞれが自分が望む自己実現という中で、多様な働き方ができる社会、これを実現していく、そこに科学技術・イノベーション政策がどういうふうに貢献し関われるであろうかということで、真ん中下のところに、バツと書いてある掛け算として、1つは、サイバー空間とフィジカル空間の融合による持続可能な強靱な社会への変革というところと、真ん中の掛け算のところでございますが、価値創造の源泉となる知の創造、それから一番右側は、人材育成が必要であろうということにしております。
 下のところは具体的な各論のところでございまして、ボックスを3つに分けてございますが、左側が、どちらかというと、イノベーションという言い方をしていただくとイメージがつくかもしれませんが、社会変化をしていこうと。その中で(1)から(6)まで項目6個ございますが、その中でも1つ目、2つ目、正に菅政権の重要政策でございますデジタル庁をつくるという中でもございますが、(1)番はそういったところをしっかりと進めていくというところです。
 (2)は正にカーボンニュートラル、2050年宣言をしてございますが、そこに科学技術自体が貢献していくということです。
 それから3番目は、レジリエントな安全・安心の社会、これをつくっていく。昨今、問題にもなっている技術流出にも留意しつつ、一方で、科学技術・学術をしっかりと進めていくというところが(3)番です。
 それから4番目は、イノベーション・エコシステムという観点の中では、SBIR、アントレプレナー、ベンチャーというところを強調して書かせていただいております。
 それから、5番目はSociety 5.0のある種、実現の一つの姿といたしまして、スマートシティ、そういったようなものを実現していくのだということです。折しも、この基本計画は5年間の計画ですので、2021年から5年間、対象年については万博の開催がございますので、そういったところで国際的にPRしていくという話です。
 それから、直前に御説明もありましたが、(6)番のところは、正に総合知というものを使って、いかに社会課題を実際に解決できていくか。あるいは新しい人類の方向性のようなものについても、社会課題を、総合知を使って解決し、指し示していくということに取り組んでいくということでございます。
 右上の下のボックスの右のところでございますが、知のフロンティアを開拓し、価値創造の源泉となる研究力の強化について、CSTI内の議論の中で、今回、基本法改正でイノベーションが加わった、だからこそより一層、むしろイノベーションを起こしていくための種となる、多様で非常に厚みのある研究力、知、基礎研究、学術研究、こういったものを積み重ねていくことがむしろ一番必要であるということでございます。
 (1)から(3)の3つのセクターに分けてございますが、まず1つ目、これまでも重視してきておりますが、多様で卓越した研究、この中で特に若手学生というところは、今回、中身においてもかなり博士課程学生の生活支援というようなところ、それからその後のキャリアパスというところで、実効性のある目標設定と具体的な中身ということも盛り込んでいるところでございます。
 その他、当然に、女性研究者、あるいは国際頭脳循環、人文・社会科学そのものの振興というところもしっかりと取り組んでいくところでございます。
 2番目は、研究自体もデジタル・トランスフォーメーションしていくべきであるし、既にそういったところに大きな価値が生まれ始めている。そこをしっかりやっていこうということでございまして、研究データそのものに対しての価値をしっかりとつけて、戦略的なオープンクローズ戦略で国全体としても価値のある共有を図っていく。さらには、スマートラボ化、AI等、研究そのものもデジタル化していくというようなところを取り組んでまいります。
 (3)番目については、大学改革を行うことで戦略的に経営できる形に進めていくという話と、今回一番大きな案件でございます、10兆円ファンドというところでございます。
 右下、一番最後でございますが、これまでの基本計画では必ずしもこういった初等中等教育あるいはリカレント教育というところは捉えていなかった、正面からは入れていなかったところでございますが、今回、キーワードとしては探求力という形で、正に答えが決まっていない、複数あるかもしれないし、もしかしたらないかもしれない、そういったものに対してトライアンドエラーをしていきながら、力を育んでいく。そういった教育への質的な転換を図っていこう。その中で、STEAM教育やGIGAスクールということは非常に大事になってくるだろうということについても加えております。科学技術・イノベーション基本計画については、年度末に閣議決定する予定でございます。
 以上でございます。

【濱口会長】 ありがとうございます。それでは、続きまして、科学技術関係予算の概要について、塩田課長から説明をお願いいたします。

【塩田企画評価課長】 御説明申し上げます。資料は144ページをお願いいたします。内閣府でまとめていらっしゃいます令和3年度の当初予算と今年度の3次補正における政府全体の科学技術関係予算の概要でございます。
 このページにございますように、令和3年度当初といたしましては、4兆1,414億ということで、対前年度比でいうと、マイナス5.4%になったということでございます。
 次のページでございますが、その内訳でございます。小さいですけれども、文科省についても、右の枠にありますように、マイナス3%ということでございます。
 一方で、次のページにありますように、本年度の3次補正では、経産省のグリーンイノベーション基金のための2兆円ですとか、後ほど説明がありますが、文科省の10兆円規模のファンド創設に向けた5,000億円、こういったお金が大きく積まれているという現状になってございます。
 次のページを御覧ください。関係予算の政府全体の割合ですけれども、左の丸でございますが、文科省予算は半分ぐらいという状況でございます。
 次のページを御覧ください。科学技術関係予算の推移でございます。基本計画の期ごとに分かれてございまして、第5期についていうと、政府の投資目標は対GDP比1%、総額でいうと26兆円という目標が設定されてございました。第5期のところの枠囲いになりますが、一応政府目標26兆円というのは現時点でも達成見込みということでございまして、グリーンイノベーション基金や10兆円規模のファンドを入れますと、大きく超える見込みということでございます。
 なお、科学技術関係予算というのは、公共事業への先進技術の導入といった既存事業にイノベーション要素を導入する事業、こういったような予算も含んだ概念でございまして、科学技術関係予算と大学などの研究現場における研究費とが必ずしも一致するものではないということでございます。
 このため、第6期計画では30兆円という投資目標とともに、国立大学法人、研究開発法人、大学共同利用機関における研究費の予算の執行額の合計についても、参考指標としてモニタリングしていく、このような旨が併せて規定されているところでございます。
 説明は以上でございます。

【濱口会長】 ありがとうございます。ここまでの内容でまず30分ほど自由討議をさせていただきたいと思います。ここまで説明について、改めて申し上げますと、今期の調査審議事項について、それから科学技術基本法等の一部を改正する法律の概要、3番目として、第6期科学技術・イノベーション基本計画答申について、最後に科学技術関係予算の概要について御説明いただきました。
 様々な御意見、御質問いただければと思いますので、特に新しく委員として参加された方、どうかお気軽に御意見いただければと思います。お手元の手を挙げるというところのボタンを押していただくか、分かりにくい場合はビデオで直接手を挙げていただいても結構でございます。
 御意見なければ、御指名させていただいてもよろしいでしょうか。現場で大変奮闘されております大野先生、いかがですか。御質問ございませんか。

【大野委員】 どうもありがとうございます。総合知の一翼を担う総合大学、そして研究大学の長として、御説明をお伺いさせていただきました。そういう意味で、総合知というものをこのたび新たに掲げてスタートするわけですが、それは具体的にはどういうところを目指すイメージで今は考えられているのかということについて、御説明いただけると大変ありがたく思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【濱口会長】 ありがとうございます。非常に鋭い御質問を頂きました。文部科学省の方々、どなたかお話しできる方ございますか。それとも、中澤企画官、いかがですか。難しい質問ではございます。おそらく、総合知の基本設計としては、人文・社会学というところであると思われますが。

【中澤企画官】 中澤でございます。私、文科省の職員でもありますし、内閣府の職員でもあるのですけれども、回答させていただきます。ある種、大事なポイントでございますが、2点回答させていただきたいと思います。
 総合知でございますけれども、第6期基本計画の中では、今日お配りしている資料を読ませていただきまして、基本計画の4の10ページ目にございますけれども、今後、人文・社会科学の厚みのある知の蓄積を図るとともに、自然科学の知の融合による人間社会の総合的な理解、それからその課題解決に資する総合知の創出・活用がますます重要になるという、定義はこういった定義になってございまして、これの融合といったときに、様々な融合の仕方があるのではないかということで、英語に訳すとなかなかこれ難しいねと。インテグレーションなのか、それともコンビネーションというところもありますし、あるいは、その2つを掛け合わせた創発的な概念というところもあるねということで、ただ、いずれにしましても、これまで人文・社会科学というところを、よりよい社会のためにどういうふうに生かしていくのかというところが求められている、この非常に複雑な時代になってきている中で、知を正にアカデミアの中でも糾合するような形でしていくということでございます。
 繰り返しになりますが、学問そのものが一緒になっていくという観点もございますし、学問そのものは自然科学もあれば人文・社会科学もあるのですけれども、そういったことを組み合わせることで、実際の社会課題を解決していくというところも含めてということになります。
 2点目につきましては、一方で、このままだと、そこまで具体的な政策は進まないだろうということで、この基本計画の中に書いてあるのですが、今後1年かけて、総合知に関する具体的な推進方策、これを政府部内で定めていこうということ自体が基本計画に書いておりますので、その際はまた先生方にも御意見、御知見を頂きながら進めてまいりたいと思ってございます。

【濱口会長】 ありがとうございます。どうぞ、お願いいたします。

【板倉科学技術・学術政策局長】 基本計画の趣旨は、今、中澤が説明したとおりですが、実際に本当に総合知を推進するに向けては難しいところもありまして、1つは、自然科学に対して人文科学が貢献するという、例えば自動運転のときに倫理問題をどうするのか、あるいは医学研究問題をどうするのか、そういった方法もありますし、逆に、人文・社会科学に対して自然科学がどう貢献できるか。これは統計学的手法や、あるいは最近、脳科学が非常に進んできておりますので、人文・社会科学をどう融合させていくかというようなアプローチがあるかと思っております。しかしながら、おそらく、基本計画で狙っているのはもう少し根源的なところで人文・社会科学と自然科学を融合させないといけないかなと思っておりますが、そこはどちらかというと、先生方、大学の方々にアイデアをいただければなと思います。いずれにしても、人文系、自然科学系を融合させて社会的課題を解決していくということを今後、文科省としても進めていきたいと考えております。

【濱口会長】 ありがとうございます。板倉局長、大変助かります。大野先生、今のお話に関していかがでしょうか。

【大野委員】 御丁寧な説明をどうもありがとうございます。いずれにせよ非常に時宜を得た方向性だと思いますので、現場を預かる身としても、あるいは審議会委員の一員としても貢献していきたいと思います。
 特に、社会課題を解決するのにとどまらず、新たな社会を築いていく、そういうときに総合知というのは極めて重要だと思いますので、是非これからもよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【濱口会長】 ありがとうございます。ほかの方いかがでしょうか。どなたでも結構です。梶原ゆみ子委員、お願いします。

【梶原委員】 ありがとうございます。第6期基本計画の策定に参加させていただいた立場から、総合知につきましての個人的な理解も含めて少し説明したいと思います。
 先ほど御発言がありましたように、今とにかく複雑な時代になってきている中で、よい社会をつくる、そして個人のwell-beingを追求していく、それがSociety 5.0だと打ち出しています。そうしたSociety 5.0を実現し、個人がその価値を実感していくためには、今までのやり方ではなく、多様な知が必要となります。文理融合というところもあるでしょうし、それで社会を変えていくという観点、特に日本ではデジタル化が遅れているとか、グリーン化、脱炭素化社会に向けた動きがグローバルで進んでいるなど、社会が変わっていく中で、日本人のマインドセットや社会システムそのものも変えていかなければならないような状況にあると思います。よりよい社会や、価値観の違う人たちの個々のwell-beingを、どのように追求していくのかということを考えますと、やはり総合知、あらゆる知が結集しないと、新たな社会を築いていけないということだと理解しています。
 私は、様々な日本のよいところ、グローバルに見たときに周回遅れになっているところも含めて、社会受容性が重要だと考えています。社会受容性を高めるという表現もしますけれども、私は、むしろ転換するぐらいの考え方や認識も必要だと考えており、そのためには人文社会系、そして自然科学系の人たちのあらゆる知、総合的な知が重要です。正に時宜を得たというか、複雑な時代に対する対処方法として総合知が重要であり、是非、この審議会あるいは部会や委員会におきましても、どのように総合知を生かしていくのか、育んでいくのかという観点での検討を進めていかれることを大変期待しておりますので、よろしくお願いいたします。

【濱口会長】 ありがとうございます。重要な御指摘いただきました。
 それでは続きまして、須藤委員、お願いいたします。

【須藤会長代理】 ありがとうございます。先ほどの第6期の科学技術基本計画の中の説明でイノベーションの創出という言葉を強調されていたのですけども、イノベーションというのは社会で実際に使われるもの、もっと簡単に言うと、実装されていなければいけないと思います。
 アカデミアの学術研究、基礎研究、それから企業の様々な応用に主体を置いた研究、いろいろな立ち位置があると思うのですけども、その立場立場で、最後にこの記述がどこにどうやって使われるのかということを是非イメージしながら、各々の立ち位置で進めるべきではないかなというように思います。
 日本ではなかなかイノベーションが起きないとか、国で様々な共同研究、プロジェクトを実施するけれども、なかなか実装されないじゃないかという意見もいろいろ出ておりますけれども、スタートするときからの基礎、応用、いろいろなところでそれぞれの人が、社会でどうやって使われるんだろうというのを意識する必要があるのではないかなというように感じております。以上です。

【濱口会長】 ありがとうございます。本当にイノベーションの視点からもこの総合知というのが重要であるということを実感いたします。
 ほかの方、よろしいでしょうか。御意見ございませんでしょうか。
 チャットで仲先生からのコメントが入っておられるようですが、音声でつながっておられないのですね。それでは、チャットに書かれていることを代わりに読ませていただきます。
 「仲でございます。今日はどういう訳か音声をつなぐことができず、すいません。ネットのせいかもしれません。日本でコロナワクチンの開発ができていないことを考えますと、こういった科学研究に予算を充てなければと素朴に思うのですが、この辺り何か対策はなされていますでしょうか。喫緊の課題に機動的に対応していける科学研究体制など」ということでございますが、何か御発言いただける方ございますでしょうか。
 確かに、現実的に、例えばEUはEUの中で作ったワクチンをEU域外に出さないという動きが出てきたり、グローバリゼーションとの対角的に、各地域あるいは国が孤立化するような動きがコロナワクチンの開発で動いております。一方で、日本はワクチンを十分自前では開発できない体制になってしまっている。これ、かなり難しい、いろんな多段階、複合的な要素があるかと思うのですが、どなたか答えられる人はございますかね。お願いします。

【松尾文部科学審議官】 今、確かに国産コロナワクチンの開発に遅れているということは事実でございますが、日本でも今、コロナワクチンを作るために、補正予算などで対応しています。
 ただ、もう少し研究開発のお話をしますと、日本では感染症の流行が、海外に比して押さえられてきており、なかなか感染症研究分野の予算、あるいは、これは濱口先生のほうがよく御存じかもしれませんが、研究者も余りこの分野にそれほど層が厚くないという諸問題がございます。ただ、今回こういうコロナを受けまして、文科省だけでなく政府全体で考えていかなければいけないことと認識しているところでございます。

【濱口会長】 ありがとうございます。実は私も今から40年前に研究生活に入った頃は、ウイルス学者として研究を進めておりまして、パラミクスバイラスという非常にコロナに近いウイルスを研究していました。当時は本当にたくさんの研究者が日本中におりました。ウイルス学会を開くと何千人という方がお見えになっていました。ところが最近、知り合いに言われたのは「君は絶滅危惧種だね」というような言葉を頂いて、本当に今研究者がいないんですね。ウイルス、特にコロナをやっておられる方がほとんどおられないということが1つ大きな問題です。
 それから、ワクチンに関しては、実は子宮頸がんワクチン以降、社会にワクチンを受け入れる空気が弱くなって、開発ができないというところもすごくあるかなと思います。板倉局長の御尽力でここを挽回していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 ほかいかがでしょうか。ございませんでしょうか。
 仲委員から「御説明ありがとうございました」というチャットをいただきました。ありがとうございます。
 どうぞお願いします。

【栗原委員】 ありがとうございます。これまでの御説明をお聞きし、第11期は法律も改正され、イノベーションに向けて大きく環境が変わり、今後の10年から30年ぐらいを見据えた新たな取組が必要だと拝見させていただきました。
 質問は2つありまして、1つは、先ほどイノベーション基本計画の説明をいただき、どういう取組をするかという御説明がありましたが、それぞれの事柄を科学技術・学術審議会にあります分科会や部会、委員会等がそれぞれ受けると思いますが、全体として見えるような、ある意味でこの審議会のガバナンス、トランスフォーメーションといいますか、そういうことが必要だと思います。恐らくそれぞれの分科会等で意識してこれから取り組んでいかれると思いますが、是非、全体像を見ながら進めていきたいし、それを国が発信することによって、全体としてこう進んでいるということがいろいろな人に分かることによって、更に民間企業も含めて推進されていくのではないかと思います。これが1点目です。
 それから2点目に、予算の件です。来年度の予算で4兆円という数字がありました。この数字、先ほどの基本計画ですと、5年間で政府の研究開発投資30兆円、民間の120兆円の投資の呼び水になるというようなことが書かれています。5年間の30兆円の研究開発投資に対して科学技術予算は来年度4兆円しかないわけで、恐らく、今後の5年間でアクセラレートしていかないと、国としての投資も不足するのではないかと思いますので、その辺の認識をどう考えられていますでしょうか。
 民間のほうは、この誘発効果だけではなくて、例えば今回のグリーン投資等についても100兆円ぐらいの投資が必要だと言われており、いろいろな投資をしなければいけない。正にその呼び水となる国の投資がある程度の規模、かつ、見える化されていないと、なかなか民間投資も促進されないのではないかと思います。大変重要だと思いますので、その辺についていかがでしょうか。

【濱口会長】 ありがとうございます。非常に重要な指摘をいただきました。どうでしょうか。まず予算の問題。塩田課長、お答えいただけますか。

【塩田企画評価課長】 御説明申し上げます。御指摘のとおり、30を5で割ると、単純に5で割ると6兆ということでございまして、4兆ではということだと思うのですけれども、これは飽くまでも当初予算でございまして、今後補正予算等も、恐らく見込めるだろうと。そういった補正予算も含めた上での目標ということでございます。
いずれにしろ高い目標を設定していただいておりますので、政府としては、この目標達成に向けて、特に民間の呼び水効果となる、こういったことも意識しながらしっかりとやっていく必要があると認識してございます。

【濱口会長】 私の記憶が間違いでなければ、従来はGDPの何%という形で示されていたものが、今回は金額で示されておりますよね。ここはかなり前進面かなと、ちょっと内心はほくそ笑んでいたのですけど、塩田さん、いかがですか。

【塩田企画評価課長】 会長御指摘のとおりでして、対GDP費、GDPの増が見込まれるときにはいいのですけれども、必ずしもそうでないときはかえってそれがどうなのかという御意見がございまして、このように目標設定されたというようにお伺いしてございます。

【濱口会長】 ありがとうございます。どうぞ松尾さん、お願いします。

【松尾文部科学審議官】 まず、今、御質問いただきました予算の件ですけれども、確かに過去はGDP比1%ということでありましたけれども、逆に言えば、GDPが伸びないときほど科学技術への投資を行って、イノベーションを増やしていくというのが本来の姿であろうかと思っております。そうなってきますと、GDPに連動させるというよりは、むしろ、海外の動向を見て、予算を伸ばしてしていくということが要諦だと思っています。
 それで今回、政府支出は約4兆円ですけれども、通常、地方財政を入れますと、地方は大体5,000億くらいでありますので、それに加えて補正予算ということで、こういった予算を私ども計上・試算したというのが現状でございます。

【濱口会長】 ありがとうございます。

【松尾文部科学審議官】 それでもう一つ、栗原委員から御意見いただきましたガバナンスの件でありますけれども、今般新しい基本計画、それから科技基本法案が25年振りに改正されましたので、これに基づいてしっかりと、この科学技術・学術審議会、また、部会のほうにしっかりと御議論いただいて、それもまた総会でまとめていただきたい。その上で、次の例えば7期基本計画につなげるとか、フォローアップしていただきたい。あるいは今回の基本計画も5年間の基本計画ですけれど、毎年毎年、しっかりと統合イノベーション戦略というのをつくっていきますので、そこに提示していただきたい。そういった形でガバニングしていって、世の中に方向性等を示していくということをさせていただきたいと思っていますので、是非皆さんの御協力をいただければと思っております。よろしくお願いいたします。

【濱口会長】 ありがとうございます。おそらく、次回までに各部会でお話しいただいたのをまた報告していただくとかいう形で全体で議論を進められるかと思いますので、よろしくお願いします。
 小縣委員、どうぞ。

【小縣委員】 先ほど須藤委員からもございましたが、私のほうも、民間といいますか、企業の立場で、この時代の中でのイノベーション、デジタル・トランスフォーメーションの重要性を認識しながら、仕事を進めております。例えば、先ほどの御説明があった10ページですが、資料4-4の10の、25年ぶりの科学技術基本法の本格的な改正という部分で、字面とすれば、大野委員も御質問されたように、このような内容になると思います。ただ、実際、実務で、社会的な価値を生み出して、そこに書いてありますように、世界へつなげていくという意味では、大事な観点がまだ幾つかあると思います。
 そういう意味で、10ページの下段の内容は、様々な要素は入っていますが、例えば1つは、社会へのソリューションの提供とか、イノベーションの部分で言いますと、経済や社会の大きな変化を創出するということは、価値観としては全く一緒ですけれども、現実的には、日本の既存の大きな企業でも、そんなに簡単なことではありません。GAFAなどは、もともとデジタルネーティブで、ゼロから作った強固な価値観で、ゼロから価値の創造を目指していますから、そのとおりの結果になっています。ただ、我々の日本にたくさんある、私は「既存の、非常に伝統のある、大きな会社」と呼んでいるのですが、そういったところで、本当にイノベーションを起こして、社会に価値を届けるとなると、クロスセクションという要素が重要になります。1つの組織体では、様々な既存の部門があり、仕方のないことですが、各々の部門は、各々の既存の大きなビジネスモデルを運営しているわけです。そこで、新たな価値をつくり出すというのは、非常に大事で、10ページに書かれているとおりですが、そのとき1つのキーワードとしては、イノベーションを起こすためには、クロスセクショナル、つまり、部門横断的な仕事の進め方が重要になってきます。 当然、その中で、これはいろんな経験を経てたどり着くのですが、社外のベンチャーと組むことは当然やっていますが、内部で真のイノベーションを起こすためには、既存の伝統ある大きな組織体においては、これは政府もそうなのですが、クロスセクショナルな仕事の進め方をしていかないといけない。いわゆる、縦割りのサイロという言葉があり、私も会社の中で言っておりますが、そのサイロを破壊するということをしていかないと、なかなか、実際の実効的な価値というのは出てこないと思います。
 よく言われることですが、およそ、イノベーションというのは、ヘテロジニアスな様々な集団が接触する中で、それらが、ケミカルに作用して、価値が創造されるものと思います。政府も是非、文部科学省が今回このような計画の中で、強いリーダーシップをとって、いわゆるクロスセクショナル、つまり政府でいえば省庁横断的な形の中で価値を出していくということが、これからはますます重要だと思います。その辺が、はっきり字面としては、出てきていないような気がします。
 また、例えば、アライアンスということもよく言われていますが、アライアンスは、簡単に言えば、1つの会社の組織体の中のクロスセクショナルということを超えて、クロスカンパニー、そしてこれからは、クロスインダストリーによって産み出されるのだと思います。それにより、巨大な新しい価値が出てくると思いますので、是非、今回の計画におきましても、文部科学省が政府の中で、協力に、横断的に取りまとめる中で、新たな社会的な価値産みを出すという、観点を、頭に入れていただきたいと思います。
 1つ、別の言葉で言えば、政府としても、新しいエコシステムを作っていくということになると思います。

【濱口会長】 ありがとうございます。非常に重要な御指摘いただいたと思います。世界的に見ましても、アメリカのNSFは2年ほど前からコンバージェンスというプロジェクトの推進の仕方をやっています。課題を設定して、分野を融合させて、まず議論をさせて、それからプロジェクトを推進して、アウトプットがきちんと出るような、社会に物が出るようなものを進めるという考え方のプロジェクトが動いています。まら、今度、ホライズン・ヨーロッパが始まりますが、全体で10兆円近い予算となっていますが、その半分が社会課題の解決に投資されるということで、同じようなお考えのことだと思います。
 ですから、きっと文部科学省もこれから検討されると思いますけど、科学技術のファンディングの在り方をもう一段改革していく必要があるのではないかなと、現場を預かっている私も深く実感しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、春日委員、お願いいたします。

【春日委員】 どうもありがとうございます。フューチャー・アースという国際研究プログラムのマネジメントに関わる立場で、少し感じたことを申し上げたいと思います。
資料4-3の現状認識のところに既に書かれていますように、今回の基本計画は、国際社会の大きな変化、それから、グローバルアジェンダの脅威の現実化を踏まえているということで、国際的な共同研究の精神ですとか、それから国際的展開、また、国際競争力の強化、増強、そういうことには大変配慮がされている計画だと思います。
 ただ、本当に世界の地球規模の課題の解決に向かおうとするのであれば、日本の学術、もちろん大変世界的に進んでいるところ、あるいは遅れているところ、様々な御指摘がありますけれども、目指すところとしては、世界の人々のwell-beingに貢献するのだということをもっと根幹に置いていただきたい。そういう形で、そういう気持ちで科学技術イノベーションを日本から進めていただきたいと強く思います。
 それから、コロナウイルスのワクチンの話が出ましたけれども、私も少し関わっている立場で話しますと、文科省だけではなくて、厚生労働省、そしてAMEDが大変御尽力されていて、現在、コロナウイルスに限らず、感染症に対する研究の推進、また治療薬の開発に多大な予算をつけていただいているようです。それで、絶滅危惧に向かおうとした感染症の研究者がまた元気になりつつあるということを私も感じて、うれしく思っております。
 ただ、その中でもう一つ踏み込んで進めることが必要と思うことは、感染症と地球環境変化との関連、あるいは土地利用ですとか人や物の国際的な動きという人間社会の急速な変化、それらを組み合わせて研究する、そういう見方だと思います。
 それは、正にただいま小縣委員がおっしゃったように、クロスセクショナル、分野横断的な大きな研究の統合につながる見方だと思います。そのことこそが、フューチャー・アースではトランスフォーメーションという言葉も使いますけれども、総合知によって達成すべき大きな分野横断的な研究の方向でもあると思います。

【濱口会長】 ありがとうございます。本当に御指摘のとおりだと思います。
 今のワクチンの流れは、実は南北問題ではないかと私は改めて見ております。アフリカにワクチンが到達するのは2023年以降という予測もあります。日本も大分遅れがちになってきております。非常に深刻な問題だと思います。科学技術者がもっと総力を挙げて今の対策を立てるべき時代が来ているのかもしれませんね。
 続きまして、大学ファンドの創設と、それから新型コロナウイルス感染症等における日本の科学技術への影響と科学者・技術者の貢献についての分析、それから、東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方についてのコメントを頂きたいと思いますので、それを踏まえて、またもう1回御議論させていただきたいと思います。
 まず、大学ファンドの創設について、山之内文部科学戦略官から説明をお願いいたします。

【山之内戦略官】 山之内でございます。では、資料の151ページを見ていただければと思います。これは大学ファンドについての概略を1枚にまとめたものになります。
 まず、現状とファンド創設の狙いということで、上の四角のところでございますが、現状については、下の図を見ていただければと思いますが、最初、博士進学率の減少ということで、2000年には17%であったものが2018年は9%と、博士進学率は半減している状況でございます。また、欧米主要大学との基金規模の差の拡大とありますが、ハーバードが4.5兆、スタンフォードが3.1兆なのに対して、日本の大学は1,000億以下の状況です。特にこの資料には書いていないですが、スタンフォード大ですと、3.1兆円の基金を運用することによって、1年間約1,500億円の運用益を得ているということでございます。
 こういった状況により、研究力に関しての日本の国際的な地位が低下しているというのが一番下の図になります。欧米、中国の順位は変わらないのに対し、日本は4位から11位になっている。そのような現状がございます。
こういった現状を踏まえ、上の四角のところをまた見ていただきたいのですが、ファンドの創設の狙いでございます。大学の長期・安定的な財政基盤を抜本強化する必要がある。また、世界トップ研究大学を目指し、経営体として生まれ変わる大学への大改革、こういったことが必要じゃないかということです。
 こういったことを実現するために、右下にスキーム図が書いてございますが、JSTにファンドを設置し、そのファンドの運用益を使って、大学の研究基盤への長期・安定的な投資をしていくという形になろうかと思います。
 制度概要でございますが、運用する際には、まず1つ、運用の基本的な考え方として、政府、主務大臣である文科大臣による基本的な指針を策定し、長期的な観点からの分散投資など、リスクを抑えた、確実に収益を上げるような、そういったことを基本的な考え方としたいと考えています。
 次にガバナンス体制の強化とありますが、ここはJSTに金融の専門知識を持つ運用業務担当理事や運用監視委員会、こういったものを設置する。
 リスク管理としては、万一計画の達成の見込みがない場合は運用の停止、繰上償還、こういったものを改善計画を策定・実施していくことになろうかと考えております。こういったことができるように、1月に通常国会でJST法の改正を審議・可決していただいたところでございます。
 資料の右上に予算について書いてございます。R2補正予算5,000億円、R3の財投計画額案ということで4兆円の計4.5兆円となっています。できるだけ早く10兆円規模に達成できるように頑張っていきたいと思っております。
 次のページ、152ページを見ていただけますでしょうか。このページは制度の検討体制ということになります。1月にJST法の改正によって、先ほどのスキーム図のような運用ができるということになりましたが、実際大学に助成できるように、どのように運営していくだとか、あるいは助成する大学をどう選ぶとか、どんな助成をしていくかなど、こういったことをこれから決めないといけないわけでございます。
 そのため、この四角に書いてありますが、制度検討に当たっては、内閣府CSTIの下に専門調査会、世界と伍する研究大学専門調査会というのを設置、そして下のほうに記載の主な検討事項とあるんですが、そこでは世界と伍する研究大学の定義だとか参画大学の要件、配分の基本的枠組み、こういったものを検討していく予定でございます。
 また、この専門調査会の下に、金融経済等の専門家からなるワーキンググループ、資金運用ワーキンググループを設置して、資金運用に係る専門的事項を検討していく予定でございます。
 次の153ページになります。このページは、今後のスケジュール、運用開始はいつするのかとか、大学への支援開始までのスケジュールになっており、簡単な概略になってございます。背景の色が、青のところが資金運用関係でございまして、緑のところがファンドの使途、大学を選ぶ、どういうふうに選ぶか、どういう助成するかとか、そういったもののスケジュールになってございます。
 まず、青地のところの資金運用についてでございますが、現在、JSTの体制整備を行っているところでございます。4月には先ほど言いました資金運用ワーキンググループを開始いたしまして、そこで運用の基本的考え方の検討を踏まえて、文部科学大臣決定となる運用基本指針を決めていくと。来年度の終わりには運用を開始したいと考えております。
 次に、緑色の大学改革、ファンドの使途、配分についてでございますが、世界と伍する研究大学専門調査会というのがございます。先ほど見ましたが、これは3月24日に第1回の会合が開かれる予定でございます。先ほど説明したように、ここでは大学の選定基準や支援の枠組みといったものを検討します。
 これと併せて、一番下のところに書いてありますが、文部科学省でも国立大学法人の新たな法的枠組み検討有識者会議というのを立ち上げて、国立大学のガバナンス改革なども議論していく予定でございます。
 こういった検討も踏まえて、必要があれば関連法案の審議、その後、対象大学を指定していって、令和5年度初めには支援が開始できるようにしていきたいと考えてございます。説明は以上でございます。

【濱口会長】 それでは、次に、NISTEPの菱山所長に次の調査結果の報告をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【菱山科学技術・学術政策研究所長】 ありがとうございます。科学技術・学術政策研究所長の菱山でございます。
 資料の4-7、ページ数は154ページからでございます。調査の目的と書いてありますけれども、COVID-19がもたらす科学技術への影響を把握するとともに、科学技術の総合的推進に向けた政策立案において有益なエビデンスを得ることとなっておりまして、私どもが構築しています専門家ネットワークに対しまして、COVID-19がもたらす日本の科学技術全体と研究開発現場への影響、感染症や自然災害や複合災害の対策に資する科学技術について尋ねてみました。
 これ自体は昨年の6月に調査しまして、7月に速報版を出し、補正予算や令和3年度予算要求のエビデンスの1つとして活用していただいているところでございます。
 今般、10年前の7月に東日本大震災の後に同様なアンケートをしておりまして、それと比較し公表したので、今回、御紹介させていただいているということでございます。
 新型コロナウイルスの関係でアンケートするときに、10年前とできるだけ比較できるようにということと、もちろん感染症と震災は違いますので、コロナウイルス関係に合わせた形の質問もあるということで、完全に一致はしていませんけれども、できるだけ比較ができるように設計を研究所のほうでしております。
 結果でございますけれども、156ページを見ていただけますでしょうか。日本の科学技術への影響でございますけれども、簡単に申し上げますと、東日本大震災のときと比べまして、今回は専門家が日本の科学技術への影響をより強く危惧しているというものでございます。
 選択肢の5、右側5を見ていただきますと、「日本の科学技術が直接的・間接的に影響を受ける」という回答割合が最も高いということになっております。また、選択肢1を見ていただくと、「一時的あるいは地域的に問題は生じても、日本の科学技術全体は基本的には変化しない」の回答割合が半分以下になっている。10年前に比べて半分以下になっているということで、結構影響が大きいということで、特に選択肢6を見ていただきますと、「日本の科学研究が大きな打撃を受け、衰退するのではないかと危惧される」という割合が非常に大きくなっているということが分かりました。
 次のページでございます。では、政策として何を重視すべきかという質問に対しての答えでございますけれども、多くの専門家が科学技術・イノベーション政策推進の必要性を考慮すべきということを答えていて、特に前回と比べると、専門家が研究開発やそれを担う人材への影響をより強く危惧しているという結果が出ております。
 次のページでございます。158ページでありますが、科学者や技術者が果たす役割は何ですかという質問でございます。これについては、前回と同様、科学技術の専門家としての基本姿勢は共通しておりまして、下のグラフを見ていただきますと、右も左も丸3でありますけれども、「国民全般に対して科学的に正しいメッセージを出していくべき」というものが、今回も10年前も同様に大きくなっているということでございます。
 それから次の159ページ、160ページは、実はこのアンケート調査で、選択だけでなくて、自由記述を書いていただいております。その中から目視してまとめたものがこのページでございまして、どんな影響かという質問でございますが、例えば159ページの上ですけれども、専門家会合の中止とか延期、オンライン化による研究者間コミュニケーションへの影響がありましたということでありまして、これは皆さんも影響を受けていらっしゃる方多いと思いますけれども、去年は学会が開催されなかったり、お会いできないということがあって、情報交換量が減少したのではないかというふうに思います。また、特に去年6月頃までは余りなかったかもしれませんが、かなりの学会がオンライン化した、今はしておりますけども、その当時も情報学会等、オンライン化をしたところがありました。オンライン化した学会では、なかなか他の研究者と偶然会って情報交換するといった交流がなくなってしまって、新たな研究テーマとか方法を発掘する機会が減少してしまった、そういったことがあります。
 それから、研究機関や施設への立入りが制限されて、なかなか研究計画のとおり進まなかったというものがあります。こういったことについては、補正予算等でリモート化とかそういった予算要求に結びついているというものであります。
それから、教育研究活動への影響ということで、卒業研究や学位のための研究、そういったものに影響があるといったものがありました。
 それから、子育てや家庭活動への影響というものも出てきたというものであります。
次に、要望については次の160ページ目でありますけれども、研究開発現場の環境整備、オンライン化とかデジタル・トランスフォーメーション、そういったものでございます。
 それから、研究が遅れることによって、研究費の執行をどうするのかといったこともあって、それはかなりJSTもJSPSも含めて、ファンディングエージェンシーにかなり対応していただいたかと思います。
 それから、研究人材に関することで、学位の取得、就職、あるいは留学とか、そういうのがあったと思いますが、    
それの柔軟な対応が必要ということで、かなりこれもできるだけの対応を担当のところで行い、あるいは予算が必要な場合には、補正予算等で要求をしたということであります。
 それから、今後の研究開発の方向性に関する内容で、リモートでの情報共有やコミュニケーションをしっかりしていこうということであります。
 それから次のページですけれども、これは新興感染症への対策に向けた科学技術でどんなものがありますかということで、自由記述で書いていただいたものであります。先ほど少し話題になっていましたが、治療薬とかワクチン開発をはじめ、基礎研究でもこんなものがあるとか、検査、医療支援といったもの、感染対策、そういった様々なアイデアが出されております。
 それから、162ページ目は自然災害への対策に向けた科学技術ということで、気候変動とか生態系に関する評価、あるいは災害時のエネルギー確保に関する技術といったものが挙げられておりました。私ども、この調査以外にも未来予測とか、あるいは国民調査といったものも行い、感染症、あるいは今後のゼロエミッションも含めて調査研究を進めて、こういったことに基づいて次の調査研究も考えていきたいとしております。
 簡単でございますが、以上でございます。

【濱口会長】 ありがとうございます。かなり刺激的な内容が多いかと思います。
 それでは続きまして、東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方についてという建議が以前なされておりますので、この説明を塩田課長にお願いしたいと思います。

【塩田企画評価課長】 説明申し上げます。この建議でございますけれども、資料168ページです。最初の丸にございますとおり、震災に際しまして、国民の期待に十分に応えられなかった、こういうことを反省し、国民との信頼関係を再構築すべきだ、こういう問題意識から、本科学技術・学術審議会で、総会のみならず各分科会等においても議論を重ねて、当時の野依会長から下村大臣にお渡ししたものでございます。
 建議の内容を紹介いたします。1は総論です。震災は我が国が抱えていた課題を顕在化させたと、こういった問題意識が強くございます。
 2つ目の丸でございますけれども、先ほど須藤先生からも御指摘ございましたが、社会からの要請を十分認識することが必要なのだと。その下のポツの後半部分にありますように、研究者は社会リテラシーを向上させて、社会の要請を認識すべきであること。
 また、次の丸でございますけれども、我が国は新たな知識の獲得ですとか要素技術の開発に偏りがちだと。課題解決のための多様な専門知の結集が必要だということを指摘してございます。
 次の3でございます。地震防災研究についての検証でございますけれども、大震災発生の可能性を国民に十分に伝えられなかったことが被害の深刻化を招いた、こういう反省に立ったものでございます。
 最初の丸は、人文・社会科学も含めた総合的かつ学際的な研究が足りなかった。こういったことを指摘してございます。
 次でございます。3でございます。課題解決のためには、分野間連携、学際研究が必要でございますが、我が国では伝統的な学問分野に即した研究が多くて、こういった取組が不十分だという現状を反省したものでございます。
 最初の丸では、政策誘導によって分野間連携を促す必要性を指摘してございます。
 次の、最初のポツでは、論文主義に偏するコミュニティーの意識改革を促すため、新たな研究評価システムの構築が必要だ、このような御指摘もしてございます。
 次に4でございます。4は、投資を行ってきた研究開発の成果が災害や事故に際して必ずしも十分に機能しなかった面があったということを反省し、成果が実際に活用できるようにすることが必要だということを指摘したものでございます。
 最後の5でございますが、震災に当たりましては、社会に対して科学技術コミュニティーが専門知を結集したような知見をきちんと提供できなかった、こういったことを反省し、社会への発信と対話が必要であると、指摘したものでございます。説明は以上でございます。

【濱口会長】 ありがとうございます。改めてこれを見直してみますと、問題意識は全く同じでありまして、現状は深刻化しているなというのを正直実感します。
 コロナウイルスの論文の算出量を私どもも調査しておるのですけど、今、夏からずっと16位なのですね。先ほど4位が11位となったという状況がございますが、更に近未来にはもっと厳しい状況が生まれるかもしれません。本当に今、科学技術関係者はしっかりとした対策を立てる時期へ来ているかと思います。
 今の3点に関して御意見いただきたいと思いますが、お手が挙がっているようですが、高梨委員、お願いいたします。

【高梨委員】 東北大の高梨です。実は前の議題の最後のところで手を挙げたのですけども、時間のないところで申し訳ありません。ただ、ちょうど大学ファンドのお話の最初のところに少し関係があるので、今回の科学技術・イノベーション基本計画で人材育成というのがかなり強く言われているのは大変いいことだと思いますが、大学ファンドのところの最初のところでも出てきましたけども、博士課程に学生が行かないというか、日本人の学生が行かない。外国人は結構来ますけれど、日本人の学生が、特に工学系の分野で博士課程に行かないというのは極めて深刻な問題だと私は思っています。
 これを何とかしなければいけないということで、資料にもありましたけれど、処遇の改善とかキャリアパスの拡大とかありますが、今、現在、学生自身が学生のときに受けられる財政支援みたいなものは結構、様々なプログラムがあって、比較的充実していると思います。しかし、その後というのが一番問題で、キャリアパスの拡大というところは本当に取り組んでいかなければいけないと思うんですね。
 博士の学位を取れば、必ずしも研究者になるだけではなくて、社会に出て様々なところで役に立つんだという意識を、国民全体でそういう意識を共有できるように、もちろんそれは大学も努力しなければいけないのですけれど、民間企業もそういうことを理解して、博士の学位を取った人間を積極的に採っているところもありますけど、必ずしも全てそうなっているわけではないですし、これは官民学が連携して変えていかないといけないなと思います。そのことをコメントしたくて先ほど手を挙げさせていただいた次第でございます。以上です。

【濱口会長】 ありがとうございます。非常に重要な指摘だと思います。日本の未来の科学を支える大黒柱になる日本人の人材がどんどん細っているように実感しております。特に工学系が危機的な状況にあるというのは深刻ですね。これを何とかしないといけないなと私も感じておるんですけど、いかがでしょうか。
 板倉局長、お願いできますでしょうか。

【板倉科学技術・学術政策局長】 正に人材問題、非常に大きな問題だと考えておりまして、科学技術・学術政策研究所が昔取ったアンケート調査でも、なぜ修士の方が博士に行かないのかという調査を行ったところ、将来のキャリアパスが不透明である、あるいは博士課程の在学中の経済的な問題から進学できないというような経済的問題、それからキャリアパスの問題というものが非常に上位に上がっておりました。こういう問題は何とか解決をしなければいけないのではないかということで、この第6期基本計画にもこの点記載されておりますが、あわせて、大学ファンドの動きとも連携しまして、今年の補正予算と来年度の予算でいえば、3年度予算で合計7,800人の博士課程、後期課程の方の生活費相当分を支援しようということで取り組んでおりまして、これは、先ほど外国人の方はたくさんいらっしゃるというお話もありましたが、日本人のドクター、修士から博士に上がっていっている方というのは大体3万人ぐらいいらっしゃいまして、既存の支援策と合わせますと、大体その半分ぐらい、1万5,000人ぐらいは支援できるのではないかと考えております。また、博士課程在学中だけではなくて、もう一つの不安要素であるキャリアパスも、これも大学で組織的に考えていただきたいということで、博士課程支援のお金と合わせて、キャリアパス支援も行っていただくという施策も講じています。
 また、経産省ですか、内閣府もですけれど、他省庁さんとも連携して、本当に産業界でも積極的に採用していただくような取組というものを、この計画に書かれていると同時に、政策として今取り組んでいるというような状況でございます。

【濱口会長】 どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、越智委員、お願いいたしたいと思います。

【越智委員】 広島大学の越智です。最終的には10兆円ファンドのことをお伺いしたいと思いますが、先ほどから若手の支援に関しては、今回の大学フェローシップ創設事業で大学院後期の学生を支援していただくということで大変有り難く思っております。
 私自身も、濱口先生が主査だった総合政策特別委員会に参加し聞かせていただいたので、科学技術・イノベーション基本計画については理解していると思っております。地方大学と都会の本当に力のある、世界と伍する大学との間の関係といいますか、これも私、やはり選択と集中、ある意味ばらまきとの関係において、バランスをどう取っていくのかだろうと思うんです。
 先ほどからコロナの研究者が少なくなっているというのも、そこにかけているお金、予算が少なかったのではないかというふうに思います。想定外のことが起こったときに、十分に対応できる研究者というのを一定数は確保しておく必要があろうかと思いますから、そういうところのバランスを十分に考えていただきたいと思っております。
 それで、10兆円規模の大学ファンドのスタートは、大学で決定されるということで、分野では決定されないというふうには聞いておりますけれども、地方大学の中にもきらりと光るような分野というのがあるので、最終的には対象大学の指定から、長い目で見たときには、地方大学の強い分野、特徴的な分野にも支援が行き渡るような形の仕組みを構築していただければと思っております。

【濱口会長】 ありがとうございます。今の御意見にどなたか。山之内さん、お答えいただけますか。いかがでしょう。

【山之内戦略官】 山之内でございます。どうも御意見ありがとうございます。
 まず、地方大学という話でございましたけど、我々としては、世界トップレベルの大学をつくるということで、地方大学は駄目とかそういうつもりは全くございません。ここはちゃんとしたポテンシャルとビジョンを持っていただく大学が適正な基準を設けて選ばれるということではないかなと思っております。
 我々の思いとしては、世界トップレベルの大学と申しましたけど、やはり経営ができる大学ですね。それと、大学自らが最終的にはファンドを運用して、自立した大学、そういったものを目指していくということでございます。
 質問の答えになっているかよく分かりませんが、以上でございます。

【濱口会長】 ありがとうございます。ちょっとお時間押しておりますので、ほかの方の御意見いただきたいと思います。岸本委員、お願いいたします。

【岸本委員】 それでは、簡潔にコメントさせていただきたいと思います。今日の最後の資料のところで大震災のときの建議の話が出てまいりましたけども、正にその課題は、今でもこの課題は残っていて、大事なことと思います。
 そこにも触れられていたのですが、人材育成について、もっと幅広く科学技術を担う人たち全体の、人材育成というのが非常に大切だということです。今回の科学技術・イノベーション基本計画にも教育・人材育成のところが書かれていますが、このような観点からも、もっと幅広く議論していく必要があるということを申し上げたいと思います。
 また、今日の資料の中でも技術士制度のことが書いてありますけれども、そういったエンジニアのことも含めて、全体的な議論をできるといいなというふうに思いました。
 私から申し上げたかったのは、人材育成についてより広い立場から総合的な議論ができるといいなということでございます。以上です。

【濱口会長】 すいません、今、音声がコンタミしてしまいましたが、貴重な御意見ありがとうございます。観山委員、お願いいたしたいと思います。

【観山委員】 大学ファンドの創出というのは非常に期待を持っておりまして、特に今の相対的に日本の研究力が落ちているということは、非常にそういうもので何とかできればと思っています。
 1つ、日本が新しいパラダイムをつくるためには、学際的研究、これは何度も言われていますけども、非常に重要です。先ほどの震災のときの話にもありましたけれども、政策的にそれを誘導するということが書かれていて、それは非常に重要なことだと思います。実際、大学の現場にいて、そういう学際的な研究を担ってくれるのはやっぱり若い樋地のチャレンジ精神だと思います。そのときに、新しい分野に進んだ後に、それをどういうふうにキャリアに進めていくというところが非常に難しくて、それぞれの先輩なり指導教官というのはそれぞれの分野で確立しているわけですが、新しい分野のところにはなかなかそういうふうに道が開けていない。研究のサイドでも企業に行ってもです。
 だから、その点に関して少し、無駄遣いするわけではないですけれども、そういうチャレンジ精神を持った者は優遇するぐらいの仕組みを何とか考えていただけると、そういう方向にも若手の人が進んでいこうかなという気持ちを起こさせると思います。そういう部分を是非是非今後考えていただきたいと思っております。以上です。

【濱口会長】 ありがとうございます。非常に重要なポイントをいただきました。今後の委員会の議論の中でも具体化できることがないかということを考えてみたいと思います。
 ちょうどお時間ほとんどなくなってまいりましたけど、全体を通して御意見いただける方ございますでしょうか。あるいは、文部科学省のほうで改めて御意見いただけることはございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 なければ、今日予定しておりました議題を全部お話しいただきまして、これから頂いたいろいろな課題がございますので、特に全体としての議論をしっかりもう一度フィードバックしていただいて、各部会等とをつなぎながら、統合的な政策を当てられるようなアドバイスが出せればと思っておりますので、引き続きどうぞ御指導賜りますようにお願いいたします。
 今日はどうも長時間ありがとうございました。これにて会議を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

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