標記の法科大学院については、平成16年6月30日付けで信州大学から文部科学省に対して提出された設置計画書中、教員の教育研究業績に関する虚偽の内容が含まれていたことが判明した。審査に携わる文部科学省及び当大学設置・学校法人審議会に対して真正でない書類を提出し、当該大学院の設置を可とする結論を得るということは決して許されない行為であり、法科大学院が法曹養成を担っていることに鑑みても、極めて遺憾である。
こうした問題を受けて、当審議会は、同省から、平成17年9月20日付けで、改めて当該法科大学院に係る法令・基準適合性に関する意見を求められ、信州大学から提出された諸資料に基づいて、設置計画全般にわたる調査審議を実施してきた。
このたび、その結果として、下記のとおり意見をとりまとめたので、回答する。
なお、申請書類に虚偽の記載を行うことは、大学の設置認可制度の根幹を揺るがす重大な問題であり、当該大学において厳正にして実効ある再発防止策を講じられるよう、併せて、広く設置認可手続の中で、こうした事態が生じないよう、文部科学省において必要な検討を行い、その結果を当審議会に報告することを望む。
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信州大学(小宮山淳学長)は、昨年6月末、文部科学省へ法科大学院の設置を申請。大学設置・学校法人審議会(設置審)の審査を経、本年4月開学。
【信州大学法曹法務研究科法曹法務専攻の概要】
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研究科長 |
米田保晴教授(本年5月に又坂常人教授から交代) |
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入学定員 |
40人 |
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専任教員数 |
21人(基準数12人) |
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本年3月末、申請内容の虚偽(教員の業績水増し)の疑いが表面化し、信州大学は、「法科大学院設置申請に係る調査委員会」を設置(4月1日)。6月8日に報告書をとりまとめ(翌9日に文部科学省へ提出)。
<事実関係>
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平成16年6月30日提出の設置計画書の教員個人調書に添付した、当該大学の研究紀要(「法学論集」)に係る「発刊予定証明書」(11名分)において、申請時点(6月30日)では、5名の論文が未提出。なお、この5人には法科大学院設置準備室長(=経済学部長兼研究科長(4月27日付けで両職を辞任))及び法科大学院設置準備副室長を含む。 |
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掲載予定論文の受領は、紀要委員会委員長名(押印有)で証明されているが、紀要委員長は、当該証明書の存在及び押印行使の事実について不知。(当該証明書は、紀要委員長の同意を得ないままに作成) |
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当該証明書の作成は、論文の完成を見込んだ経済学部長(=法科大学院設置準備室長兼研究科長)の指揮命令の下で作成。法科大学院設置準備副室長も証明書の添付等に関与(論文未提出の残りの3人は証明書の内容を関知せず)。 |
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最終的に5名の論文は9月初旬までには提出されたが、うち2名(法科大学院設置準備室長を含む)の論文は、設置計画書上に記載された論文概要の内容を網羅したものとは認められず。 |
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信州大学は、上記の事実認定を踏まえ、以下の処分等を実施。
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当該証明書の作成・添付に関与した2名の教員に懲戒処分(停職3ヶ月及び減給2ヶ月)。両名は法科大学院担当を辞職。 |
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原稿提出遅延により3名の教員に訓告等の処置。学長は給与の一部の自主返納。 |
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6月14日、信州大学が当面の学生募集活動及び大学の改組に係る申請の自粛を表明。
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信州大学からの資料提出を受け、設置計画の法令・基準への適合性を再確認するため、9月20日付けで設置審に対して「意見伺い」。設置審が調査審議を実施。11月28日に会長から文部科学省へ「回答」予定。
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