平成15年9月18日(木曜日) 13時~15時
文部科学省別館10階 第6会議室
阿部充夫、石山卓磨、黒田壽二、高祖敏明、佐野慶子、田中雅道、田村哲夫、山内昭人、横溝正子、和田義博
久保私学行政課長、石井参事官、濱参事官付企画官、平野私学行政課課長補佐、後藤私学行政課課長補佐、早坂参事官補佐、徳岡参事官付調査官、井戸参事官付専門官
(1)事務局から資料についての説明があり、最終的な報告へ向けて自由討議を行った。
○:委員 ●:事務局
○: (幼稚園連合会の意見として)基本的に中間報告の示す方向性で良いと思う。財務情報の公開における小規模法人への配慮については、「プライバシー保護の観点等から学校法人が適当でないと判断した場合は、その部分を公開しないことができるとすることが必要である」という記述中で担保されるということで良いのではないか。私学法で公開を義務付けるのは大臣所轄法人のみとし、都道府県所轄法人については各都道府県の判断に任せるべきという意見もあるが、反対意見も多く関係者の中でも意見が分かれているところである。
○:公開すべき財務書類の範囲について私学法で一律の基準を定めた方がプラスの面もあるという意見あるがどうか。
○:確かに、地方によって情報公開には差があるので法人の意見も様々で、団体としてまとまらない。小規模法人から出た意見としては、公開によって個人の給与がわかったり、財務体質の弱さが公表されるのは困るということである。
○:公開すれば財務体質がわかるから困るというのは小規模法人に限った問題ではなく、また財務情報の公開の議論は財務体質がわかるように公開するということなので、それは公開しない理由として通らないと思う。プライバシー保護の問題については、ある程度公開の仕方を各学校法人の判断に任せるという線に落ち着けるのがよいのではないか。また、自治体によって情報公開の度合いが違うということであるが、国のほうが公開に消極的であるということにならないよう配慮する必要がある。
○:団体の意見としては、財務情報の公開は法人の二極分化につながるという意見もあるがやらざるを得ないだろうということだ。ただ大学法人の間では、国立大学法人の対応を見ながらという意見が強い。国立大学法人では財産目録の作成をしないことから、財産目録は除外すべきだという意見も出てきた。貸借対照表がなかったころの名残である財産目録を作る必要はないのではないかという意見もある。
また、事業報告書に盛り込むべき内容の例示についてだが、やはり報告書で例示されれば書かざるを得なくなるのではないか。学生数の公開は、多いところも少ないところも困るので例示から外して欲しい。また、財務書類の内容の経年比較を義務付けるのも難しいと思うので外すべきである。
●:社会福祉法人などは閲覧用と認可申請用で様式が異なり、閲覧用としているのは総括表程度のものである。国立大学法人と独立行政法人は企業会計が取り入れられているため、財産目録は作っていない。財産目録を作成するかどうかは、国立大学にならって企業会計的色彩を帯びるか、もしくは他の公益法人などとの並びをとるのかという問題であると思う。
●:参考にご教示いただきたいが、財産目録は以前は企業会計のなかで作成されていたが、外されるようになったと考えて良いのか。
○:昭和30年代には企業会計の中にも財産目録は位置付けられていたが、流動的な計算を重視するフローの概念により貸借対照表が作成されるようになって、財産目録の位置付けは不確かなものとなり、作成されなくなった。財産目録を外すことにより失われる情報は附属明細書で手当てすることになった。
○:公益法人会計基準でも財産目録を外すことも考えられていたが、民法51条第1項に基づき作成が求められている書類であることから公益法人が作成すべき財務書類に含め、貸借対照表に含まれる資産及び負債の明細として活用することとした。公益法人においても財産目録はそれが作られた頃とは位置付けが変わってきている。
○:企業会計は収益力の測定を目的とすると思うが、学校法人は収益を目的とするのではない。学校法人にとっては、財政的基盤が重要であり、負債があるときにどの程度返済できるのかという尺度として、やはり財産目録は必要ではないか。
○:財産目録を貸借対照表の明細と位置付け、公開するものについては別に様式を設け、社会福祉法人と同じ程度に公開すればよいのではないか。
○:財産目録は、流動的には作成されないが重要な情報を含んでいるという性質をふまえ、私学法の定めから財産目録を除き、財産目録中重要な情報については開示基準をつくって事業報告書の中で公開すれば良いのではないか。
●:財産目録の作成の義務付けをやめるとなると、今回の中間報告で公開するとされている書類に書かれている財務情報をカバーできなくなる。代わるものを作らないと問題があるのではないか。
○:その点については財産目録中の必要な情報については事業報告書の中で手当てできると思う。
●:私学法47条で備え付けを義務付けられている財産目録はもともと申請時に必要な書類として作成されたものであり、公開を目的としたものではない。47条の財産目録は公開目的のものと定め、様式などについては申請時に必要なものとは別とするというふうに整理すればよいのではないか。公開するとしたらやはり財産目録という用語は残しておくべきだろう。
○:将来、公益法人に関して民法を抜本的に改正するとき、もしかしたら財産目録の定めはなくなるかもしれないが意見は分かれるであろう。
○:そもそも、財産目録というものはあるほうがわかりやすいのか。
○:貸借対照表と、附属明細書を見れば、ほぼ財産目録に含まれる情報は読み取れる。ただ、それらの情報を一覧でき、二つの書類をつなげるクッションとしての役割を財産目録は持つだろう。民法で規定されている限り、財産目録は残さないといけないと思うが、開示基準を定め、よりシンプルな形にして、事業報告書に盛り込む方がわかりやすいのではないか。また、比較可能性を保つことが公開に際しては必要であると思う。もし、公開書類に財産目録が含まれないとなれば、私学法上必要な書類から外すべきではないかと思う。
○:企業でも破綻したときなどには財産目録が必要になる。財産目録のほうがわかりやすいかどうかと言われれば、そのときの状況によるというしかない。
○:企業では、継続時はフローの計算過程から作成される貸借対照表が有効だが、清算時は財産の評価を行い財産目録を作る。学校がどの程度の教育資産を持っているかは学校法人の永続性の観点から重要であるので、財産目録に書いてある情報が不必要だとは思っていない。ただ、別の形で手当てしてはどうかということである。貸借対照表があるから財産目録が不要だというわけではない。
○:貸借対照表と消費収支計算書が複式簿記でつながっているため、財産目録の位置付けがあいまいとなっているが、貸借対照表の内訳としての意味をもたせて残されている。今では財産目録の価額も貸借対照表に一致させることになっている。
○:ただし、法的には私学法の財産目録は作成基準がなく、会計基準の貸借対照表(取得原価で作成されている)と価額が同じでなくても良いという解釈もできる。今は実務的にイコールである前提で話をしているが、法的につめた場合、そうとは言い切れないという意見もある。
○:少なくとも閲覧に供する総括表はバランスシートに合わせた価額にすべきではないか。
○:ところで、別途委員会を設けて学校法人会計基準の検討が行われているとのことだが、今のような議論とどういう関係を持つのか。
○:現行の会計基準のまま財務書類を公開すると、一般人にはわかりにくいという問題が指摘されている。財務情報を公開する以上、それに見合うような会計基準を定めるべきであり、基準の見直しと公開という話はリンクして進んでいくべきだと思う。
○:両者は会議としては別々に進んでいるので、財務書類についてこちらで勝手に議論したものをあちらに押し付けるというわけにはいかないのではないか。
●:もちろんそれはセットで進めることが必要と考えている。
○:会計基準の検討会では公開を前提としたところの見直しを行っていると思う。
○:検討会の中で、財産目録は対象になっているのか。
○:まだそこまで話は及んでいない。
○:財産目録に記載されている内容は、貸借対照表の注記として入ってくるということもありえるということか。
○:質問だが、学校の設置認可の際、土地は自己所有でなくてもよいという規制緩和は実態と財産目録の乖離と見てよいのか。
○:それは借用財産という形で財産目録に反映される。
○:では、財産目録についてであるが、認可時に作成されるものはそのまま残り、公開目的のものについては会計基準の検討会の中で総括表のプロトタイプをつくってもらうということでよいか。
○:それは別の次元の話である。会計基準の見直しは、今ある計算書類をどう体系付けるかの問題で、公開する書類の様式(財産目録・事業報告書等)をどうするかはこちらの委員会の問題であると思う。
●:法人の中には、公開を義務付けられるのは認可申請時に作成する財産目録であると思っているところも多く、有価証券の銘柄や借り入れ額が公開されるのを心配している。
○:だからこそ、財産目録を残す以上、開示基準を定めるべきではないか。
○:たしかに、公開するからには基準がばらばらでは問題がある。
○:それでは備え付けに必要な財産目録の様式を定めるということでよいか。
○:では今日の議論をふまえ、事務局で公開用の財産目録の様式案を作ってみて、ここで検討してもらうこととする。
○:情報公開についてだが、国の法律によって、より公開が進んでいる条例を抑えるという理論は無理である。法律が禁止していない限り、条例でさらに厳しい基準を定めることは可能である。
○:その他の財務書類については中間報告のとおりでよいかということについてはどうか。
○:小規模法人への配慮についてだが、個人のプライバシーの問題については法人の規模とは関係ないと思う。小規模法人への配慮というよりは個人のプライバシー保護として、非公開にできる基準を定めるべきだ。また、開示基準は個々の法人が勝手に判断すべきではなく、開示しないことができる事項をあらかじめ定めるべきだと思う。財産目録についても開示基準を定めるべきである。さらに、現行財産目録の内容のうち、ひきつづき財産目録に記載する事項と、貸借対照表の注記に記載すべき事項とを整理する作業も必要ではないか。
また、事業報告書については、中間報告で書くべき内容の例示はするが様式は各法人に任せるということになっているが、法人の概況がわかるということがまずありきなので、様式の大きなフレームはまず定めておくべきで、法人の規模に応じた基準や地域による差異は、その大きなフレームの中で対処すべき問題であると思う。事業報告書についても比較可能性を高めることが必要であると思う。また、貸借対照表の明細等、公開しない財務書類の中の必要な情報については、事業報告書の中で手当てしてはどうか。小規模法人については、事業報告書の中に財産目録、貸借対照表、収支計算書の簡単なものを入れ、詳しい計算書類については免除するという形で配慮するという方法も取れるのではないか。
○:事業報告書についても、法人の概況、事業の概況、財務の状況等のフレームを作ったらどうかという意見であるがどうか。
○:記載内容について各学校法人で判断できる部分は残すべきではないか。私立学校は多様な建学の精神に基づいて特色ある教育を行っているところが多く、すべて一律の基準で事業を公開するとなると法人のプライバシーが侵害されるのではないか。特に宗教教育を行っているなど、校風に非常に特色のある学校が存続しにくくなるのではないか。公表しないと判断しても、その判断について世間の評価を受けることになるのだから、公開しないという余地も残すべきである。
○:私はプライバシーとはすなわち個人情報だと考えており、学校法人の公共性を考えると、法人のプライバシーというものはあまりないはずだと考えている。宗教教育を行っていることがなぜ法人のプライバシーなのかよくわからない。私が申し上げたのは記載事項について概況などの大まかなフレームをつくっておくべきだということで、実際に詳細情報として何を書くかは法人が決めるという意味である。
○:事業報告書については各法人が自分のところの良さを宣伝するという意味でプラスにとらえればよいのではないか。建学の精神などはむしろ公表すべきで、宣伝したいところではないのか。
○:非常に特徴のある学校だと、それを公表したくないという法人もあるのが現実である。一律に公開を義務付けるのは問題があると思う。
○:実際の記載内容については余裕を持たせるべきだと考えているが、学校の特色を隠したがるというのが個人的によくわからないだけである。
●:法制度上、他の公益的法人との並びで考えれば、公開する情報について例外規定を法律に置くことは前例がなく困難である。実務上、個人のプライバシーをどう担保しているのかは、他の法人の例を調べてみたい。
○:事業報告書の話が一人歩きしている気がするが、もともと事業報告書は財務情報を補足するものとして出てきたものである。フォーマットを決めてしまうと、各法人の事情を反映しにくくなるのではないか。
○:フォーマットを法制化すべきというのではない。実務上、様式がないのでは作りづらく基準が欲しいという声が出てきた際、規定化することが必要になるのではないかと思う。各法人が千差万別の様式で出してきたのでは見づらいので、大枠を示して、法人の個々の事情はその中で反映させてもらうようにすればよい。また、個々の計算書類の事情を補足したいのであれば、注記で補えばよいのではないか。こうして議論している中でも、事業報告書のイメージは随分各人で異なってしまっているということがわかる。
○:財産目録、事業報告書に対するイメージに大きな相違があるということがわかった。今後、事務局では報告書にうたっている内容のうち、私学法で定めるのはここまでで、これ以下は施行令等で定める、または各学校の判断に任せるという区分けをある程度明確にしてもらうこととする。
高等教育局私学部私学行政課
-- 登録:平成21年以前 --