平成15年6月25日(水曜日) 15時~17時
文部科学省別館11階 研究開発局会議室
阿部充夫、石山卓磨、黒田壽二、高祖敏明、田中雅道、田村哲夫、山内昭人、横溝正子、和田義博
加茂川私学部長、久保私学行政課長、栗山私学助成課長、石井参事官、平野私学行政課課長補佐、後藤私学行政課課長補佐、滝波私学助成課課長補佐、徳岡参事官付調査官
(1)事務局から資料2、3,4についての説明があり、委任状の今後の取扱い、学校法人の代表権者の登記、事業報告書の取扱いについての自由討議を行った。
(2)次に、事務局から資料5についての説明があり、民間的経営手法、事務機能の強化及び学校法人の会計監査について自由討議を行った。
○:委員 ●:事務局
○:理事は理事会に出席することが原則であり、実際に会議に出席し多くの人の意見を聞いた上で議題について判断することが大切である。書面投票は、委任するよりはまだ良いという意味だと思うが、この書き振りだと書面での表決があれば会議への出席は必要ないという誤解を受けてしまうのではないか。
○:資料の基本的考え方では、理事会には実際に出席して賛否の意思を表示することが原則であると書かれている。理事の職責を果たすためには出席することが大前提であるが、現実的な問題もあるので出席できない場合には委任と書面投票の2つの方法が考えられる。
○:中小企業の取締役会では書面投票を取り入れていく方向である。さらにパソコン等のITも取り入れ、TV会議なども使っていくという流れになってきている。もちろん重要事項等のどうしても集まらなければならないものは集まるべきだと思うが、中小企業での全体的な動向としては書面投票を行う流れである。また指導方針に書かれている当日の修正動議の取扱はよく考えられていると思う。
○:結論はこの資料に書かれている考え方になるのではないか。しかし、例えば人事に関する案件の場合、事前に議案を送付すれば情報が漏れてしまうことになり、この方法で運用できるのか心配である。逆にそういう人事案件の場合には、実際に出席して賛否の意思を表明するということになってよいのかもしれない。運営上問題も出てくるだろうが、考え方や取扱いを書くとするとこの資料に落ち着くのではないかと思う。
○:私も結論としてはこのような形になると思う。ただ書面投票の場合に、表決を書く欄の横に意見を書かせている学校法人が多いようだが、その場合、意見を付された賛否をどう取扱うかは難しいので、そのようなやり方はやらない方がよいと思う。また理事会の緊急動議は、ある程度根回しておけばすぐに理事長を辞めさせることができてしまうので全く認めない方がよいと思う。
○:委任状や書面投票について文部科学省が指導を行うのは望ましいことだと思う。その際、様式も合わせて指導したようがよいのではないか。
○:様式の例が記載されているがこのような形でよろしいか。
○:問題ない。また別紙2に委任状についての作成例が載っているが、これは議案に関する可能な限り詳細な資料をあらかじめ送付し、その上で委任を行うということでよろしいか。
○:そのような判断になるだろう。先程人事案件の例で指摘があったように、事前に送付できないものについては、原則に則り各学校法人が判断するということになるだろう。
○:委任をするときには、現理事以外の者への委任は認めないということを明示すべきである。これについては寄附行為上でもはっきりさせるべきではないか。委任状の様式の中で「○○氏をもって代理人と定め」とあるが、「理事○○氏をもって代理人を定め」というようにしないといけない。議決権を有する他の理事に委任するというところまで決めておいた方がよいだろう。
○:基本的にはこの資料に記載されている指導方針に異論はないということでよろしいか。委任する相手は他の理事に限定するということと、当日新しい議題を取り上げることについては制限してはどうかという意見があった。これを踏まえて整理していただきたい。
○:事務局から公益法人や特定非営利法人については理事長登記が行えず、中間法人や社会福祉法人については理事長登記が行えるという説明があった。これまでの議論では理事長の登記が行える方が良いという意見が多かったがこれも含めて議論いただきたい。
○:寄附行為上代表権を持つ役員のみを登記するという方向で検討していただきたい。現在の制度では、寄附行為で代表権を制限していても対外的には法的な効力がないということになっている。寄附行為で代表権を制限したならば、それが法的にも支えられて初めて本当の意味でのガバナンスの明確化になると思う。また、大規模法人の場合、理事長のみ登記するのか代表権を持っている理事も合わせて登記できるようするのか考えていかなければならないだろう。
○:組合等登記令を廃止した際、なぜ民法54条を準用するかたちに落ち着いたのか、なぜ社会福祉法人のように代表権を制限した定めも登記する規定を残さなかったのか、その経緯を教えてほしい。
●:私立学校法も社会福祉法と同様に寄附行為をもって理事長登記を制限することができるようになっているが、社会福祉法は民法54条を準用しておらず、一方私立学校法は準用している。初めは個別の政令でそれぞれ登記事項を定めていたが、その各政令を一つにまとめて組合等登記令を制定した。当時の学校法人登記令を組合等登記令に移す際の資料が全て残っているわけではないのではっきりしたことは言えないが、逐条解説等を参考にすると、学校法人は民法54条を準用しているため寄附行為で制限した代表権をもって外部へ対抗することが認められず、現在の組合等登記令にあるような整理を行ったようである。
○:本来ならば理事長を代表権者として登記するのがよいのだが、恐らく昭和39年には理事の数も少なく、理事全員が代表権を持っているのだから理事全員を登記することでもいいのではないか、という判断だったのではないか。だが、現在の学校法人を見ていくと何十人も理事がいるところもあるので代表権の制限も登記する必要があると思う。もっとも民法や組合等登記令との関係で簡単に法改正ができるようになるのかという疑問もある。
○:代表権の制限を登記できないという最高裁判例があったと思うがそれに反するような法改正は可能なのか。
○:その判例は現行法の解釈であり、現実に社会福祉法人で登記は行っているので法律そのものを変更することは問題ない。登記については理事全員が意欲のあった私学法制定当時の背景がいまだに残っているのだろう。しかし理事が名誉職的なものに変わってきてしまっている現状では、現在の制度は時代に合わなくなってきていると言えるのではないか。いずれにせよ私学法が制定された時に準用していた話なので当時の事を良く調べ、その上で妥当な結論が出れば改正した方がいいと思う。
○:現在検討が行われている公益法人制度の改革の中で民法の改正も視野に入れて検討しているようだが、財団法人、社団法人も学校法人と同じような状況があると思う。公益法人制度の改革の具体的内容に関する情報は持っていないのか。
●:具体的内容はまだ検討中で決まっていないところであるが、公益法人制度の改革については動向を注意して見ていきたい。
○:民法54条の代表権の制限は部分的なものだと認識している。つまり代表権を全く無くしてしまうものではなく部分的制限の規定である。だがここでの議論は理事長のみに代表権を与えてそれ以外の理事には代表権は与えないということも可能にしてほしいという趣旨に聞こえる。そこで有限会社法第27条を学校法人に合わせて読み替えると「理事は学校法人を代表する」「理事が数人あるときは各自学校法人を代表する」「前項の規定は寄附行為または理事会の決議をもって学校法人を代表すべき理事を定めることを妨げない」となる。これを参考にして登記事項を変えていけばいいのではないか。
○:有限会社だと取締役が数人いた場合でも、その内の代表権者を登記すればその人だけが代表権者を持つこととなる。
○:ここでは実際の法改正がどうなるかまではわからないが、いずれにせよ理事長に代表権を持たせるという方向性である。ただし理事長一人だけを登記するのか、それとも代表権を持つ他の理事も登記できるようにするのかは、事務局で検討して整理していただきたい。
○:以前の財務公開の議論のときには、事業報告書を作成して公表させる方向で結論が出ていたのか。
○:公表を義務付けるという方向までは決まっていなかった。数字がひとりあるきしないように、まず学校法人が財務書類を説明できるようなものを添付することが望ましい、またその内容については各学校法人に任せてはどうかという議論であった。
○:基本的に事業報告書の公開は当然のことと考える。ただし、そのやり方としては、各学校法人に公開するかしないかも含めて任せる方法もある。事前統制でなく事後チェックが本旨であれば、入学する前に判断できる資料を提供するのは当然学校の責任である。
●:以前の議論の時には義務付けについては賛否両方の意見があり、仮に義務付けるとすれば何を義務付けるかということを整理した上で、もう一度議論しようということであった。
○:資料中の盛り込むべき事項の例示について、「設置する学部・学科」とあるが、これは「設置する学校」とする必要がある。事業報告書を公開するのは原則であろうと考える。法律等で義務付けるのではなく文部科学省の指導事項とし、学校法人によっては公開しないという考え方もあるであろうから、それぞれの学校法人が最終的には自己責任で判断し、文部科学省は望ましい姿を示すにとどまるということでよいのではないか。そのようにしても、実質的には大部分の学校法人は文部科学省の指導に従うと思う。私はB案がよいと考える。
○:高等教育のグランドデザインの議論と関係してくるが、各学校法人は自主的に情報を公開しなかったら生き残れない。そういう時代が第三者評価制度が社会的に受け入れられるまでの10年間程度は続くであろう。それまでの間、大学の教育の質を担保するための各大学の自主努力が求められる。そういうことを考えると、事業報告書の公表をあえて義務付けなくても各学校法人がやらざるを得なくなってくるであろう。文部科学省は望ましい姿を示すにとどまり、各学校法人のやり方に任せてしまうのがより良い方法であると考える。公表すべき事業報告の事項を例示として示す程度でよいのではないか。
○:他の新しくできている法人のほとんどが国民に対してデータを開示するという状況の中で、私学も法律によって情報公開を行い、必要最低限これは公開する、ということをはっきりさせたほうがよいのではないか。つまり、外から私学は公開してもしなくてもどちらでもよいという取り方をされた場合に、私学全体が国民に対して責任を果たしたといえるかどうか。また、計算書類の内容が不十分であれば、それを理解しやすくするために事業報告書を添付する、という考え方で理解していた。
○:財務諸表との関係からの単なる数字の羅列ではなく、こういう目的でこういう事業をやったということを具体的に文書として書くのが事業報告であると理解している。財務諸表を補足するという意味での事業報告であれば義務付けをしてもよいと考える。
○:資料で出ている事業報告書の記載例は公益法人に関するものであるが、記載項目については指導監督基準で示されており、あくまでも公認会計士協会で検討した作成の例である。財務書類の説明資料というよりも財務書類とバランスをとって事業報告として開示していくという観点からは、この記載例程度の内容が必要ではないかと考える。
○:学校法人関係者にとっては、財務との関連で財務を明らかにするために作成するのが事業報告書であるという感覚が強い。学校法人は、学生募集のために財務以外の活動状況をパンフレット等を作成することにより広く情報提供している。
○:国民の側から見ても、公共性、透明性の観点から、財務と事業報告の公開はセットであり、両方を見てはじめて理解できるものと考える。学校が学生募集のためにPRしたい事項は義務付けなくても自ずから公開する。ここで重要なのは、どこまで義務付けるかということだと思う。資料で例示してある事項は、学校法人の健全性、公共性、公正性を理解するためにはほとんど必要であるが、「重要な将来計画」についてはどの程度の内容を想定すればよいのか。これからはすべての事業体、特に学校法人にとっては、持続可能性の判断のためには必要な事項ではあるが、将来計画まで求めるのは実際は難しいことだと思う。
○:学校経営者として、基本的には公開するのは当然であり、公開しなければ生き残れないと考える。株式会社やNPOが参入してきて、それらの組織が情報公開をするのであれば、学校法人も当然やらなければ競争には勝てない。学校法人は、今まで同族規定などの規制があって、その行動に制約を受けてきたが、これからはそうではなくて全部オープンにして、その代わり細かな規制はなくしていくという考え方をとらないと他の組織との競争に勝てないのではないか。情報を公開するのと規制を無くしていくのはセットでやるべきだと考えている。そういう意味で同族規定の制約は緩めてもらえないかと思う。某問題法人は、規制されているため、理事でない者がやっていた。理事であればそのようなことをしなかったかも知れない。真面目にやっている学校法人がやり易いような仕組みを考えるべきであり、悪い例を踏まえて規制を強化すべきではない。
○:公益法人は事業報告書を公開するように指導監督基準で義務付けられているのか。
●:公益法人の事業報告書については指導監督基準上、公開の対象になっている。
○:一般の公益法人が事業報告書の公開を義務付けられている状況の中で、私学の場合は公開する公開しないの判断を各法人に任せるというのは、少し私学の特殊性を主張し過ぎではないかと思う。中味についてはなるべく簡潔に示す程度にとどめて各法人に任せ、公開そのものは義務付けるのが世間の流れではないかと思う。
○:只今の意見にこの場の考え方が集約されたように思われる。事業報告書の作成、公開は義務付け、盛り込む事項について例示するにしても、中味については学校法人に任せてよいのではないか、つまりB案に近いという意見に集約されたという理解でよいか。
何かあれば報告書全体の検討のときにお願いしたい。
○:元来、民間である学校法人について「民間的経営手法」という表現はなじまないのではないか。授業料以外の収益確保の方法、他の資金調達方法という整理をすべきではないか。
○:資産運用のことで質問がある。株式会社のオーナーから寄付された株式を保有し、その配当を奨学金に使うということは許されるか。
●:株式を保有すること自体は禁止されていない。ただし、学校法人の本来事業と直接関連のない子会社に対し2分の1以上を出資するのは望ましくないとしている。
○:公益法人については、指導監督基準上、基本財産として寄付された株式かポートフォリオ運用である場合を除いては株式の保有は禁止されている。
○:シンガポールの場合では株式会社でないと学校を作れない。この場合にシンガポールの子会社の株を保有するのはどうか。学校法人制度は日本独自のものであり、外国に学校を設置しようとすると必ずそういう問題が出てくる。
○:国際化の時代であり、日本の学校法人が海外に株式会社を持つことは今後大いに考えられるので、それについての対応を考えておく必要があるのではないか。
○:寄附金、学校債による資金調達はなかなか難しい。特に学校債については、広くたくさんの人から少しずつということでは、かえって事務的な手間がかかってしまう。それであればむしろ、銀行から借りたほういいという判断で、特に短大法人では学校債を発行しているところが少ないのではないかと思う。
○:学校債は、一般企業の社債と同じような扱いにいつなるのかに関心がある。そのような動きはあるのか。
●:学校債に流動性を持たせて譲渡を可能とする制度設計については、今のところ課題意識を持って検討がなされてはいないが、外部資金についての議論は必要であろう。株式会社が学校経営に参入してきてその成果が出てきたときに、競合する学校法人も検討が必要となるであろう。
○:大きな法人は別であるが、普通の学校法人は父母等に対象が限定され、学校債の募集は困難である。まして、入学に際して募集ができないとさらに厳しい。入学時の寄付金が禁止なら代わりに学校債で借り入れるという方針はどうなのか。
●:昨年10月の通知においては、学校債の扱いは寄附金と同じであるとしており入学前の募集は禁止している。
○:民間的という表現はともかくとして、民間的経営手法により、いわばいかに稼ぐかという議論をしているのに、この資料には規制による歯止めばかりが目立つので、整理の仕方を考えるべきではないか。
○:事務機能の強化のアウトソーシングについて、ある学校では教育の質の低下を招くという議論が起こり、組合から大変な抵抗を受けて導入に5年から10年かかった。そのような問題も考えられるので、ここについては例示をする程度にしておいた方がよいのではないか。
○:学校法人の会計監査についてであるが、まず、公認会計士法で同一監査人の監査を一定期間とするのは基本的に企業のみであり、学校法人、公益法人までは適用を受けない。むしろ規模の小さな法人については同一の人が指導をしながら監査していくほうが適当な場合が多いという意見もある。
不整へのチェックについては、監査基準が変わってきており、計算書類に影響が及ぶことを考慮して、違法行為、不整、誤謬についても監査上注意するようになってきている。独立行政法人の監査報告書で、財務諸表等に重要な影響を与える不整及び誤謬並びに違法行為に関する意見が述べられている例もあり、要請があれば学校法人の監査報告書の形も変わることもあり得ると思う。
また、経営困難法人に対する監査機能の充実とは、ゴーイングコンサーンのことかと思われる。今の会計処理では、まだその法人が存続することを条件として取得原価主義で決算をしている。しかし、仮にあと1年以内に企業が倒れてしまうかもしれないという時に、永続性の前提がないのに減価償却をしていては具合がよくないという例がたくさんある。そのため経営破綻の懸念のある企業に対してはその対策をどうするかを注記させ、その注記について公認会計士が追加情報で意見を言う、ということが監査基準で決められている。学校法人について、この問題をどうするかということであるが、まだゴーイングコンサーンの前提、つまりどういう状況になったらそのことを学校法人に書かせなくてはならないのかという問題が決まっておらず、学校法人会計基準にもそれを注記することについての規定がない。それを公認会計士の判断で書くというのは無理なことであるが、公認会計士の監査に対する社会一般の期待もあり、例えば赤字であるが適正であると監査報告書に書いて3ヶ月後に破綻したら公認会計士の監査は何だったのかと言われかねない。今後、学校法人についてもそういう問題が出てくるかもしれない。
○:小規模法人の立場とは齟齬が出てくる箇所もだいぶあろうかと思われるが、全体の枠組みを決めた後でないと検討が難しい部分も多い。アウトソーシングについては、幼稚園の場合、一部の仕事だけに取り入れるというのは難しい。また、ここの表現の仕方が、学校法人はアウトソーシングを進め効率化を図ることが重要だという書き振りになると、幼稚園法人には混乱があるかもしれない。これらについてはもうすこし報告書の内容が見えてきてから議論したいと思っている。
○:資料については、表現もさることながら、中味についても少し整理していただきたい。その際、できればあまり縛りつけるようなものではなく、元気の出るような表現でお願いしたい。
●:ゴーイングコンサーンについて、企業は1年以内ということだが、学校法人について例えば4年制大学であれば4年間のスパンで、企業とは違った長い目で見ていく必要があるという難しい問題がある。いずれにしても今後もお知恵を拝借しながら検討してまいりたい。
○:今後の進め方であるが、今回で一応の議論は終了し、事務局にこれまでの議論を踏まえた中間報告書案を出していただき、後2回程度で中間報告書をまとめたいのでよろしくお願いしたい。次回からはそれに沿って議論をしてまいりたい。
高等教育局私学部私学行政課
-- 登録:平成21年以前 --