学校法人制度改革特別委員会(第2回)議事録

1.日時

令和4年2月9日(水曜日)10時00分~12時30分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 個別の論点について
  2. その他

4.出席者

委員

福原主査、佐野委員、西岡委員、梅本委員、尾崎委員、米澤委員、田中委員、小原委員、川並委員、嵯峨委員、重永委員、尾上委員、福田委員

文部科学省

森高等教育局私学部長,滝波高等教育局私学部私学行政課長,相原高等教育局私学部私学行政課課長補佐

5.議事録

【福原主査】
 皆さん、おはようございます。ただいまより、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会の学校法人制度改革特別委員会第2回の委員会を開催させていただきます。
 委員の皆様方、関係の皆様方には、御多忙の中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、新型コロナウイルス感染症対策のために、Zoomを用いたウェブ会議としてこのように開催をさせていただき、この様子をユーチューブのライブ配信にて公開をさせていただきます。先ほど既に200名を超える方の接続がなされているという報告に接しております。
 皆さん、会議の資料、また、音声などの御準備はよろしいでしょうか。私の音声のほうも届いておるようでございます。それでは、順次進めてまいりたいと思います。よろしく御協力のほどお願いをいたします。
 議事に入ります前に、事務局から連絡事項と、本日配信されております資料の確認をいたします。では、よろしくお願いします。
【相原補佐】
 おはようございます。私学行政課課長補佐の相原です。本日もよろしくお願いします。
 本日、ウェブ会議での開催、そして、YouTubeでのライブ配信となっております。その観点から御発言のお願いですが、まず、画面に向かって挙手をされるか、または、Zoomの画面下の参加者ボタンの手を挙げる、挙手機能のボタンを使用されるか、このいずれかでお願いいたします。そして、主査の指名がございましたら、それを待ってミュートを解除して御発言いただきまして、発言終わられましたら、マイクをミュートに戻していただければと思います。
 本日の資料につきましては、事前に大部でございますが、お送りさせていただきましたものを議事次第にございますが、資料の1から3、そして、資料の4-1から4-7、資料の5、そして、参考資料が1から8ということになっております。不足などございませんでしょうか。また、後ほど詳細は説明をさせていただきます。よろしくお願いします。
【福原主査】
 本日の会議に当たっての御注意いただく事項と、配付資料の点検でございます。それでは、これより議事に入ります。
 本日は、学校法人ガバナンス改革に関する個別の論点について審議を始めたいと存じます。前回の議論、御意見をいただいたことを踏まえまして、私と有識者委員の方々と相談をさせていただきまして、各論点の考え方について、各私学関係団体の事務局から意見照会をしてもらうということにいたしました。また、いただいた意見書について、事務局にて提示された論点ごとの事項を整理してもらっております。
 意見照会をいたしました論点資料は、昨年12月の改革会議の提言を参考としながらも、これまでに表明されている懸念などを踏まえまして、学校法人としての独自の見直しを提起しているものでございます。
 本特別委員会は、文部科学大臣が年末に示された対応方針に従いまして、関係者の合意形成を図ることが目的でございます。末松大臣からは、「学校法人の沿革や多様性にも配慮し、かつ、社会の要請に応え得る、実効性ある改革」を実現する成案を得ることが求められております。
 各私学関係団体の委員の皆様には、委員会開催の趣旨を改めてお酌み取りいただきまして、本日の具体的な審議以降、この論点資料をたたき台に、具体的な改革方策としてどこまで対応することができるかにつきまして、どうか前向きに御審議をいただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 そこで本日は、まず、論点資料の全体を簡単に確認いたします。その後、議題1といたしまして、個別論点のうち総論の部分、そして、理事・理事会と評議員・評議員会の関係部分を中心に討議してまいりたいと思います。
 それでは、事務局より、改めまして資料等、内容の説明をお願いいたします。また、会議委員ではない団体からも本特別委員会宛てに意見が幾つか提出されておりますので、併せて御紹介をするということにいたしたいと思います。
 では、内容につきまして、御説明をお願いいたします。
【相原補佐】
 それでは、資料のまず全体の御説明をさせていただきます。
 資料の1は、前回の議論の中で、先生方からいただいた御意見を簡単に事務局のほうでまとめさせていただいたものでございます。議論の御参考にしていただければと思います。
 資料の2が、先ほど主査より御紹介いただきました、学校法人ガバナンス改革会議の提言を参考としつつ、それに見直しを加えた課題提起の資料、たたき台という位置づけでございます。
 そして、これに対しまして、それぞれの関係団体で考えて回答をいただいたもの、それが資料の4-1から7でございますが、これはそれぞれの団体のほうから後ほど説明等に使っていただければと思いますが、この4-1から7の資料につきまして、それぞれの論点の項目別に一覧しやすいように、事務局のほうで集計、まとめて整理したものが資料の3という位置づけになってございます。
 主査よりお話ございましたように、今回は特に「総論、理事・理事会、評議員・評議員会」の関係部分を議論していくということで、その部分についてのまとめという資料になっておりますので、項目ごとの議論を御発表後に深めていく際にまた参考としていただければと思います。
 それでは、資料の2をお願いします。先ほど申し上げましたように、12月に出された改革会議の提言が基に参考となっておりますので、その同じ部分の説明の重複というのはもう割愛いたしまして、主に学校法人の視点で、今回見直しを提起している部分を中心とした御説明をさせていただければと思います。
 1ページの0-2という総論の項目の部分でございます。こちらは、改革会議の提言におきましては、評議員会に役員の選解任や業務の重要事項の決定権限を与えて、評議員会を「最高監督・議決機関」とするという提言に対しまして、今回の論点資料におきましては、従前の私学法上の理事会の位置づけ、評議員会の位置づけの関係を踏まえて、理事会・監事において、監視・監督の機能が健全に発揮されないような場合に、評議員会が合理的な監督権限を段階的に行使できるようにする。このような考え方を総論としてお示ししているところでございます。
 2ページをお願いします。1-3、1-4の部分が、役員のうち理事の選任、解任に関する部分でございます。改革会議の提言におきましては、全て評議員会による選解任に一元化しするということ。また、その解任についても解任の事由というのを特に必要とせず、いつでも解任できるという提言になっておりましたが、今回の提起といたしましては、理事の選任、解任は、寄附行為において評議員会その他の選任機関というのを定め、その選任機関において選任、解任というのを行っていただく。
 そして、解任事由というのがある場合に、まず、選任機関でその選解任の権限というのを適切に行使していただく。また、それが適切になされないような場合に、評議員会が選任機関に解任を請求する、あるいは、選任機関で解任が適切になされないような場合に、さらに評議員が解任に乗り出す。このような重層的な構造というのを考えてはどうかという提起となっております。
 次に、1-6に評議員と理事の兼職の論点ございます。これはまた2-7でも同様のところが出てきますので、後ほど触れたいと思います。
 1-7に理事の任期につきまして、改革会議の提言は2年というのを上限に提言をしておりましたが、実態としては少し短いのではないかという懸念もございますので、ここでは4年の上限という提起としておるものでございます。
 3ページをお願いします。論点の2-1でございます。先ほど0-2の総論で申し上げましたように、これまでの経緯を踏まえ、評議員会が諮問機関、審議機関であるという原則の位置づけというのを踏まえて維持するという前提に、今回この2-1では、先ほど申し上げたような理事の選解任に関するような一定の権限、あるいは後ほど出てまいります監事・会計監査人の選解任、このような部分を権限とすると。そして、従前から寄附行為によって決議事項というのを定める運用が可能、議決機関化することも可能となっておりますが、そのように寄附行為で定めた事項を決議事項とすると、このような論点としておるのが2-1です。
 加えて、2-2でございますが、大学の設置する大臣所轄学校法人の評議員会につきましては、これに加えて、組織運営等の一定の重要事項について、議決・承認というものの対象にしていくということを示しておりますが、改革会議におきましては、特にこの点は事業計画や予算、決算、借入れ、資産処分、重要な保証といったかなり細かい事項まで決議の対象と提言がされておりましたが、ここでは、重要な事項としては、寄附行為変更、任意解散、合併、中期計画、報酬基準といったところを重要事項としてお示ししている論点となっております。
 2-3は、先ほどの理事の選任のところと密接に関係する論点でございますが、意見聴取の事項の一つに、この理事の選任に関して、評議員会が意見を陳述できるというのを追加してはどうかという考え方をお示ししております。
 次に、2-5をお願いします。論点2-5におきましては、改革会議の提言におきましては、評議員自らが理事の違法行為の差止請求といった強い権限を直接的に有するような提言というのがありましたけれども、この理事会、評議員会の関係性、あるいは評議員の正当性という部分も総合的に勘案し、ここでは、評議員会はまず本来権限を有する監事に対して、そうした差止請求などの権限行使をまずは請求するという考え方をここでお示ししているというものでございます。
 次に、2-6から8の部分が、評議員の選任方法やあるいは構成といった部分の事項です。2-6は、まず改革会議の提言におきましては、評議員の選解任は理事・理事会が行うことは不可とする提言となっておりましたが、これも実態との乖離が大きい部分もございます。しかし一方で、監督の機能というのも明確にしていく点というのもございますので、バランスを図り、理事・理事会による評議員の選解任に一定の規制、上限というのを求めるという論点を提起させていただいております。
 2-7の部分、これは1-6とも関係する部分でございますが、理事と評議員について、これは改革会議と同様ではありますが、それぞれの役割を明確化する観点から解消していくという方向の論点で提示をしております。
 他方で、2-8でございますけれども、改革会議におきましては、評議員に内部者、使用人、あるいは職員、教職員というのを評議員として就任を認めないという提言となっておりましたが、ここでは実態という部分も踏まえて、また、役員の近親者というのも建学の精神、設立の功労者という部分での継承の意義も、一部指摘を前回も受けておったと思いますが、そのようなところを鑑み、職員やそれから役員の近親者等について、一律に不可とするということではなく、一定の上限を設けていくという考え方をここでお示ししております。
 次の2-9が評議員の任期ということで、改革会議では、理事の倍と提言になっておりましたが、ここでは理事の4年という提案を踏まえて、6年という上限を提案しておる論点でございます。
 2-10は、評議員会の評議員の定数につきまして、特に改革会議では少数、3人以上という提言となっておったかと思いますが、この2-7等の論点とも関係しますが、理事との兼職を解消していくという場合には、一定の定数の引下げというのをしていく方向性をここでお示しさせていただきました。
 5ページの2-12をお願いします。一定の評議員会の権能というのを明確化、具体化していくことに伴って、また、評議員に対する牽制も必要であると、そのような御意見も前回もいただいたところがございます。
 そのような部分につきまして、ここでは、評議員が不正、法令違反等の是正も行うような場合にはこれは監事がしっかり監査の対象とし、所轄庁や理事会・評議員会に報告するということを加えてはどうか、これは独自の提起という論点になっております。
 その他、多くは基本的な方向性といたしましては、改革会議の考え方というのを踏襲しておるところでございますが、本日は、特にこの総論から理事・理事会、評議員・評議員会の部分を中心に、討議を深めてまいりたいと思っております。
 次に、参考資料の2から4までに会議委員、構成員ではない団体から意見の提出をいただいておりますところ、少しかいつまんで御紹介をさせていただきます。
 まず、参考資料の2が、公益法人協会等からの意見ということでございます。2ページをお願いします。
 この辺りでは、評議員・評議員会に強力な権限というのを保有させる正当性に疑問がある、公益法人の制度でも必ずしも解決されていないという御認識が示されているほか、3ページにおきまして、最後にこの学校法人の検討というのは、まさに公益的な法人の最新のモデルとなるので、模範となるような形を慎重に検討してほしいと、このような御意見であろうかと思います。
 続きまして、参考資料の3でございます。大学監査協会からいただいております資料2ページ目の別紙をお願いします。
 特に、監視、牽制と言った部分の機能の充実についての御意見でございますが、評議員会から監事に対しての権限行使の要請というのを制度化してはどうかという御意見、あるいは監事の選任は評議員会によるべきである、あるいは、一定規模以上の法人に常勤監事を制度化してはどうかと。大学法人は会計監査人を必須としてはどうか、このような御意見を頂戴しております。
 次に、参考資料の4は、日本私立大学教職員組合連合からいただいた御意見でございます。2ページをお願いします。
 幾つか御意見をいただいておりますが、まず、1が学校法人の業務の重要事項は評議員会の議決を要するということにすべきだという御意見。また、2ですけれども、評議員会において理事・監事、役員の選任・解任を行うことを基本としていくべきだという御意見。
 また、3ページのほうになりますけれども、評議員会の構成につきまして、教職員、卒業生あるいは有識者という現行も3区分あるわけですけれども、その割合として教職員4割、残りを3割、3割程度とするという御意見がここに示されております。また、選任方法についても明確化していくという提言になります。
 最後に3ページから4ページにかけてでありますが、改革会議のほうで提言されておりました、評議員に教職員を含めないようにするという提言については、私学の教職員は学校法人の単なる使用人ではないということについて御認識がここで述べられているところでございます。
 なお本日、参考資料の5といたしまして、学校法人と社会福祉法人・公益財団法人の法令上の扱いの対照表というのもおつけ
 いたしましたが、この左から2つ目の学校法人の欄におきましては、青字で令和3年の3月に出された有識者会議の提言、また、12月に出された改革会議の提言を赤字で付しております。一部重複する部分もございますが、そのような色分けで提言内容を確認できるようにしておりますので、これもまた参考に御覧いただければと思っております。
 また、最後になりますが、参考資料の8といたしまして、私学高等教育研究所様より、私立大学を対象とした緊急アンケートというのが昨年実施され、その集計結果について御恵与いただきましたので、御紹介のほうをさせていただきます。
 7割以上の大学が回答されているということで、まさに、最新の状況ということになっております。この中にも例えば理事と評議員の兼務の状況のデータといったものも含まれておりまして、今回の、また次回の議論にも非常に参考となる貴重なデータもあると思いますので、また、後ほど御確認のほうをいただければと思います。
 事務局からの説明は以上でございます。
【福原主査】
 ありがとうございました。これまでの様々な議論の経過や、また、このたびお寄せいただきました意見等につきましても、今、皆さん方と御議論いただくに当たって、便利な整理がされているものと存じます。
 しかしながら、これらを全てお目通しいただき、検討していただいた上での御意見というのを本日直ちに賜るというのはまだまだ難しいところもあろうかと存じますが、本日は、それぞれの意見の開陳を踏まえまして、相互に質疑などを通じまして、実情がどのようなところを問題としているのか、また、これまでの議論の経緯と論点としてまとめられたところについて、クローズアップすべきところはどういうところにあるのかといったようなところを探っていければと思います。
 では、続きまして、議題1、本日予定しております個別論点の審議に先ほど申したような趣旨で入ってまいりたいと思います。
 そこでまず、事前に御意見を寄せていただいた各団体の代表者の皆様から、今回の論点としております総論、それから理事・理事会、評議員・評議員会の部分につきまして、恐縮ですけれども、5分以内の時間で、ここがそれぞれの私学団体としては意見として申したいところであるというところをフォーカスし、クローズアップして御紹介いただければと思います。
 なお、他団体の御意見にも接していただいていることかと思いますので、そういったものと比べて、また特徴、それぞれの団体における実情を踏まえた特徴などが、各委員の皆さん方に伝わるように御配慮いただければありがたいと存じます。
 では、順次名簿順によろしゅうございますでしょうか。
 では、最初に、日本私立大学連盟の田中委員から、よろしくお願いいたします。
【田中委員】
 ありがとうございます。私立大学連盟の田中でございます。
 まず、総論から申し上げますと、令和2年4月1日施行の改正私立学校法に基づく理事・理事会、監事、また評議員・評議員会の役割及び責任の明確化というものを踏まえまして、考えるべきことは理事会が意思決定、執行機関、監督機関であり、評議員会は諮問、審議機関であるということをまず踏まえておく必要があると思います。
 それを踏まえても、理事会と評議員会が本来は協調しながら、お互いの異なる役割を果たすべきだと思います。理事会は意思決定と執行機関でございますので、現場の教育研究に携わりながら何をすべきかということを進めていく。評議員の方は、本来ほかの職務に専念している傍らで、その学校法人を監督するわけでありますので、そこはモニターをするという役割になります。そうすると理事会と評議員会が相互に協力し合いながらも、同時に相互に牽制・監督し合う仕組みというものが必要だろうと思います。
 これまでうまくいっていたからといっても、悪意のある者が理事会をコントロールするとか、悪意のある者が評議員会をコントロールすることになったときに、それを止められるようなセーフティーネットという仕組みが必要であろうと考えておりまして、現行のままでそれが止められるかどうかということについては、やはり皆様の問題提起のように、検討すべき内容であると思っております。
 理事相互による監督機能と監事による監査機能のいずれもが重要でございますが、それが健全に発揮されない場合には、評議員会による合理的な監督権限の段階的な行使というものが可能になるということが必要であると思っております。
 しかしながら、私立の学校法人は多様でございまして、その役割も異なります。例えば大規模大学で研究に力を入れていながら、その成果を教育に反映させる大学もあれば、教育に特色を持って独特の教育理念で教育を推進する大学もあれば、地方の地域振興に特化しながら人材育成をする大学もある。また、高校、中学、小学校、幼稚園におかれましても、それぞれの建学の理念に即して、独自の教育の仕方を進めているということを考えますと、多様性を重視し、多様な教育研究や多様な人材の養成を確保するためには自律性も重要になります。
 そうしますと、一律に法令で細かいところまで縛ることには無理があると考えられますので、他の学校法人のガバナンス改革もお互いに参考にしながら、情報共有して、自律的な健全なガバナンスを組み立てていく必要があろうかと思っております。
 特に今日では、複雑でかつ急速な変化が起こっています。コロナもそうですし、DXの急速な進展もそうでありますが、これらの変化に常に対応できるような意思決定をする場合には、評議員会が最高議決機関で全てを決定できるような仕組みでは対応できない、やっぱり理事会による迅速な意思決定が可能な積極的なガバナンスが必要になります。
 そうすると、問題が起こったときにそれを是正するような守りのガバナンスと同時に、その変革ができる、攻めるガバナンスというものも必要になろうと思います。その意味では、各学校法人が寄附行為に定めつつ、ガバナンスコードなどによるソフトローによって、透明なガバナンスを実現することが必要であると思っております。
 少し具体案にまいります。まず、評議員と理事は、評議員の中から理事が選ばれることがあるとしましても、やはり兼務は解消すべきであると。本来役割が異なりますので、評議員と理事の兼務は解消すべきだと考えております。
 また、内部統制という観点からも理事会の議事録は作成し、透明性を高める必要があると考えております。評議員会については、評議員は誰が選ぶかということも重要な論点になりますが、こちらも理事が推薦するものと、評議員が互選で選ぶものという様々な組合せがあろうと思います。これらも寄附行為で定めるべきだと思います。つまり、やはりそこはバランスで定めるべきだと思っております。
 公益法人の協会からも御指摘がありますが、例えば国会議員のように、国民の選挙によって選ばれているのと異なり、評議員会がそういう非常に透明性のある形で選ばれているわけじゃないとしますと、やっぱり一部の方たちだけによって評議員が選ばれることは避けるべきだと考えます。
 ですから、理事会が推薦し、評議員会を認める場合と、評議員が互選で決める場合とそれぞれあろうかと思います。いずれにしても、特定の選出母体だけに配慮して、委員が決まるような仕組は避けるべきだろうと思っております。
 先ほど申し上げたとおりでありますが、理事においても暴走があれば評議員、監査監事の御意見を聞いて、理事を選解任することの権限を評議員会が持ち、また、評議員のほうで暴走があれば、監事の意見を聞いて理事がこれを解任することができるようにするということが重要だろうと思っております。
 総論としては以上でございます。
【福原主査】
 大変多様な御意見を取りまとめていただきまして、明確に、私大連としての御意見をクローズアップしていただきまして、ありがとうございました。
 続きまして、日本私立大学協会の会長である小原委員からお願いいたします。
【小原委員】
 ありがとうございます。私立大学協会の意見は資料の4-2にまとめてありますし、他の団体との意見比較も資料3に列挙されております。新たに、私のほうから加えさせていただきたい点が幾つかございます。
 まず1点は、現在の私学法の実質化であり、また、運用しながらそれの改善項目があるのかどうかをまず検証していくということを第1に考えております。このままの状況で、今国会中の立法となりますと、私学にとってはまさしく朝令暮改にほかなりません。しかも現在の私学法の実質化がなされないまま、またその評価もなされないまま、新たな法律に対する手続上の問題があるんではないかなと考えている次第です。
 それから評議員の構成です。第三者からということですが、それは学校に、法人にとって第三者かもしれないと同時に、それぞれの評議員にとっても学校法人とは第三者のような関係で、お互いが第三者ということになります。先ほど田中委員からも指摘があったように、評議員の根拠というものが非常に弱いという懸念があります。
 その人たちが最終決定を下すとなると、決定事項そのものにも根拠に欠けるということが考えられます。
 また、日本人の特有の思考なんですが、どちらかというと横並び、他がやっているから私たちもという思考で、意思決定されてしまいますと、私学が伝統としてきた教育といったそのものが弱体化されてしまうリスクがあります。
 したがって、協会としての意見は評議員の構成員、100%第三者にするということに対しては非常に反対の意見を持っております。人数割合はともかくとしても、教職員、卒業生や学識経験者といった多様性のある構成を考えていただきたいと願っているところです。
 また、評議員会の招集権ですけども、「評議員長」というものがない限り、やはり評議員会で招集するというのは難しいのではないかなと考えて、評議員会の招集権は理事長、理事会にあるとしている。現私学法第41条第3項の実施が必要と考えております。
 また、評議員会の審議事項は理事会が決定する。あくまでも評議員会は諮問機関ですから、理事会のほうで審議事項を考え、そして評議員会でそれについて諮問をすることで様々な意見が出されます。それを理事会が酌み取って、次の意思決定にそれを反映させるという従来の方式が、望ましい理事会と評議員会の関係ではないかなと考えている次第です。
 以上が、資料4-2以外に私がここで述べさせていただきたい点です。
 以上です。ありがとうございました。
【福原主査】
 ありがとうございました。資料4-2にありました個別の御回答に加えまして、小原先生からその趣旨、考え方といったものを重ねてお伝えをいただきました。ありがとうございました。
 では、続きまして、日本私立短期大学協会の川並委員より、よろしくお願いいたします。
【川並委員】
 日本私立短期大学協会常任理事の川並でございます。
 本日は議論の初めということもあり、また事前にいただきました質問が、非常に細かい質問が多かったので、各論で理念が埋もれてしまわないように、議論に対する私の思いも含めて背景について話をさせていただけたらと思います。
 まず、大学・短期大学のガバナンスについては、公的に2段階のチェックが行われていると考えております。いわゆる事前チェックと事後チェックと呼ばれるものですが、大学・短期大学は、新設、増設する際には事前指導が行われています。大学設置・学校法人審議会が事前チェックとしてその審査に当たり、特に学校法人分科会が学校法人のガバナンスについて細かく審査をしております。
 加えて、2004年より事後指導として、7年に一度の機関別の認証評価が義務付けられています。さらに専門職大学院や短期大学の認定専攻科などは、5年に一度の分野別の認定評価を受ける必要があります。これがいわゆる事後チェックと言われるものです。
 7年に一度に行われる機関別認証評価は、現在、第3期の評価に入っております。この事後チェックについて少し詳しく話をしたいと思います。私は私立短期大学の立場からお話をさせていただいておりますので、多くの私立短期大学が法の定めに従って認証評価を受けている、一般財団法人大学・短期大学基準協会の話をさせていただきたいと思います。
 私立短期大学における大学・短期大学基準協会の認証評価は、それぞれの短期大学が自ら行った自己点検評価報告書に基づいて、建学の精神、教育の効果、教育課程と学生支援、教育資源と財的支援、リーダーシップとガバナンスという4つの基準、そして、この基準を細分化した12のテーマ、33の区分、160の観点から評価が行われています。
 特に、リーダーシップとガバナンスの基準では、理事長のリーダーシップ、学長のリーダーシップ、ガバナンスの3つのテーマから、5つの区分、12の観点から評価が行われております。
 このように大学・短期大学基準協会で認証評価を受けている短期大学は、事後チェックとしてガバナンスについての評価を既に受けていることになります。
 この認証評価のリーダーシップとガバナンスの基準の中で、2017年度から2021年度、直近5年間に出された指摘について、向上・充実を求めたものが347件、早急に改善を要するものが83件でした。
 このうちガバナンスの項目に関して指摘を受けた短期大学は、合計45件ですが、その大半が理事会や評議員会に監事が出席していないとか、理事会の議決の前にあらかじめ評議員会で諮問すべきと定められたものを行っていない等、法律違反ではありますが、社会的に大きな非難をされるような違法行為と言うには軽微な事項に対する指摘が大半でありました。このように、社会的に非難されるべき違法行為や脱法行為として指摘を受けた事項は、皆無に近いくらいございません。ただし、ゼロとは申しませんが、実際にそのようなことがあったとしても、あからさまに表に出てくることはあまりないのではないかと思います。
 さて、日本の教育界において私立学校は大きな役割を果たしてきました。この果たしてきた役割を考えつつ、今、お話ししましたとおり学校法人の不祥事は軽微であることが多いことを踏まえると、不祥事を防止することを前提に、ガバナンスの必要性が説かれている部分のみに焦点を当てて議論をすることは非常に危険だと考えます。
 特に、法に触れるような不祥事は、明確な意思の下に実行されることが多く、法律で牽制しても防ぎ切れるものではないと思います。現状の私立学校法をいかに厳しくしても不祥事は起こるだろうし、不祥事を抑えるための予防的手段として、必要以上に法律を厳しくすることは、私立学校の自律的、主体的な教育活動を制限することに直結するというのは、先ほどの日本私立大学連盟、そして日本私立大学協会の先生方が御指摘されたとおりであります。
 今回の改革の議論については、不祥事ありきの牽制機能の構築ではなく、現状の学校法人制度に足りない部分を補う議論をすべきであると思っております。
 各々の学校法人が健全な運営を遂行できるようにするためには、理事会や評議員会の在り方を現状から大きく変更するよりも、監督官庁のチェックが行いやすくするなどの、体制を構築することで足りるのではないかと思っている部分もございます。現行の体制での効果的な方法を検討せずに、安易に社会福祉法人や公益財団法人、公益社団法人のような体制を導入さえすれば改善されるとするには、あまりにも短絡的、楽観的ではないかと思います。現行制度でガバナンスが十分に利いているとは思っておりませんが、評議員会を最高議決機関化することにより、不祥事などの抑止力が飛躍的に上がるとも思えません。
 私立学校は、建学の経緯からして多種多様であり、全ての学校法人を画一的に論ずることは危険であるということは、もう既に何度もお話があったとおりですが、本日会議に提出させていただいた意見書につきましても、日本私立短期大学協会内において様々な意見があり、短期間に意見を統一することは非常に難しく、今日を迎えております。
 しかしながら、理事会は最高執行機関、評議員会は諮問機関という現行制度からの大きな変更は不要であるという考えは統一されております。
 今後は、こういったことを含めて検討を進めさせていただければと思っております。提出の意見書で足りない部分について述べさせていただきました。
 よろしくお願いいたします。
【福原主査】
 ありがとうございました。以上、大学・短期大学の連盟、協会からの御意見を頂戴しました。
 では、続きまして、中学校、高等、小学校、幼稚園のそれぞれの団体からの御意見を賜ってまいりたいと存じます。そしてさらに、専修学校、各種学校等の御意見いただきますが、それぞれの御意見いただきながら意見書をもう一度お目通しいただきまして、一巡したところで、有識者の方々におかれて御質問、各全体に対する御質問や御意見というものを賜れればと思いますので、よろしくお願いします。
 では、私立中学高等学校連合会の嵯峨委員より、御意見の御紹介をお願いします。
【嵯峨委員】
 よろしくお願いします。私ども中高連の基本的な考え方は、やはり自律的な運営、改善能力を高めることは重要であると思っておりますけれども、現行法の中でこれを運用の工夫をしながらやっていくのは、重要ではないかと思っております。
 これまでにも、数度にわたる法改正を踏まえて、かなりいろいろな取組をし、不祥事を防ぐような取組というか、制度も導入してきていると私どもは思っております。
 そのようなときに今の段階で、なぜここで変えなければいけないのかというのは、私どもの協会としての考え方でありまして、まず、もし一番引っかかっているところが、なぜこのときに今、変更しなければならないかということについて、どういう必要性があるのか、また、現に発生した不祥事案について私立学校のどの規定にどのような問題があったのか、それをどのように変更すれば同様な事案が防げるのかなどなど、改革の必要性や理由を明確になっていないというところがとても我々は引っかかっております。
 役員の解任とかそういうのも既にもういろいろな法的にはなっているはずだし、私どもも、監督官庁からは数年に1回の監査も受け、会計監査も受け、その上でやはりなぜ変えなければいかないかというところが明確に示されていないところが、私どもとしては非常に不満に思っています。
 もっと言えば、では、社会福祉法人並みにとおっしゃっている方もいらっしゃいますけれども、では、社会福祉法人が、何もその事件が起きていないのかといえば、かなり大きな事件も起きておりますし、例えば理事会と評議員会の間で金銭のやり取りをして、理事会のほうの影響力を及ぼすとか、そういったことも実際に起きているわけで、この仕組み自体が、社会法人の仕組み自体が全てではないと思いますし、学校法人の仕組みも多少の手直しを加えるのか加えないのかは別にしても、現行法のままでも十分に有用に使えているのではないかと私は認識しております。
 また、逆に大きな大法人、学校法人ではない企業のガバナンスを非常に今世の中では重視していますけれども、とはいえ日本を代表する一部上場の中に、東芝だ、日産だ、オリンパスだ、スルガ銀行だ、そういったところも不祥事は実際に起きております。これはそういうガバナンスを本来もっとしっかりしなければいけないところでも起きているのに、それを全部その学校に当てはめようという考え方自体がちょっと無理があるのではないかと認識しております。
 また、評議員会につきましても、確かに大学法人と我々のような中小、言ってみれば、大学法人が例えば一部上場の大きな会社とすれば、我々の学校はいいところ中小、下手すれば幼稚園に至れば零細企業のような大きさのところに、評議員とかその会計監査を常駐だとか何とかというのはまず難しい、実際問題不可能に近い。
 それから、評議員をさっきもおっしゃった方いらっしゃるんですけど、第三者が入ってきてその学校の歴史、その学校の成り立ち、分からない方が意見を述べるのは構わないと思いますけど、その方たちが主になって動かしてしまえば、その学校の独自の考え方とかそういったものは排除されていってしまうので、例えばキリスト教とか仏教とかそういう学校もありますし、女子校、男子校もありますし、そういったよさもだんだん取り除かれていってしまうのか。
 そういったことを考えれば、当然そのところに勤めている教職員、長く勤めている教職員、それから卒業生、そういった方たちが評議員に入るというのは、全くもって不自然な話ではないと思っております。
 理事の兼任その他については、いろんな考え方がございますと思いますが、私どもとしては、今の段階では大きく変える必要性がないと思っております。
 以上です。
【福原主査】
 どうもありがとうございました。では、続きまして、私立小学校連合会の重永委員より御意見の紹介をいただきます。よろしくお願いします。
【重永委員】
 本日は、意見表明の機会を設けていただきまして、誠にありがとうございます。日本私立小学校連合会としまして、意見を集約しましたので、私、会長、重永より御説明申し上げます。
 最初にお断り申し上げますが、提示された論点の整理の議題に、少々難しいところもありました関係で、また、本委員会がゼロベースで始めるのではないということでございましたので、改革会議の報告を念頭に置いて、意見書を提出させていただいたところでございます。今日は、2点に絞って申し述べてまいりたいと思っております。
 まず、第1点ですが、私どもは現行制度において、学校法人ガバナンスは有効に機能していると考えております。そこが改革会議の皆さんの考え方と違うところでございます。しかも、私立学校法の令和元年改正において、施行後5年を目途とした施行状況の検討と定められているのに、なぜ今骨太の方針で私立学校法の改正を何が何でもやると決めたのかが、誠に不思議で思われてならないところでございます。
 私ども私立小学校は、100年以上にわたって時代の進展に応じつつ、児童生徒や保護者の期待に応え、国民の負託に応えられる教育プログラムを開発、実施してまいったところでございます。そのために、スピーディーな学校運営を心がけてまいりました。
 しかしながら、今般のように評議員会が最高機関になる改革案では、学校現場、校長、教職員からしますと、今までは、理事会の了承を得れば進めることができていたのが、これからは、理事会から評議員会へお伺い立てるということも加わりますので、三重構造になってしまいます。こういうことでは、スピーディーな学校運営ができなくなり、改正どころか改悪でしかないというのが現場の感覚でございます。
 現行どおり、評議員会を諮問機関としまして、評議員会の中で、理事を選出していくということにしていただきたいと思います。
 私は現行が、理事と評議員の兼職という、この兼職という考えには大変な疑義を抱いております。むしろ理事会と評議員会が信頼関係でしっかり結ばれてこそ、学校の運営、児童の教育というものは成り立っていくと考えておるところです。
 2つ目を申し上げます。現行私立学校法は、いろいろと改正を伴いながらも70年を超える歴史があるわけですが、その中で、糾弾されなければならないような不祥事や悪事が相当数に上っているとは言えないということを考えていただきたいなと思います。
 確かに、最近においても、不祥事や悪事、こうした学校法人はありますけれども、そういう自浄作用が果たせなかった学校法人に対しては、これまで助成金のカットや自主返上を迫ることがありましたり、司直の手によって断罪されたりしてきておるわけです。
 そういう助成金カットや司直による断罪ということがあることも、健全な学校法人、学校経営が導かれる基盤の一つだと考えておりますので、私どもは、現行私立学校法を大きく改正しなければならないということは思っておりません。ましてや、ほとんどの学校法人は、健全な学校運営を心がけておるわけですから、そのような外形的強制がなくとも、私立学校法の精神に従って、児童の健全な成長に資してきているというところでございます。
 以上2点にわたって申し述べましたが、もちろん私どもは必要な改革を絶対に拒否するという考え方には立っておりません。ただ、今回の改革会議によって示された方向性は、創立者の建学の精神を存立の基盤としておる私立小学校の運営を妨げることになると思いますので、ぜひとも考慮していただきたいと思うところでございます。
 以上です。ありがとうございました。
【福原主査】
 前回に続いて、明確な御主張を加えていただきましてありがとうございました。では、私立幼稚園連合会の尾上委員より御意見の御紹介をいただきます。
【尾上委員】
 私立幼稚園連合会でございます。よろしくお願いいたします。
 総論といたしましては、さきの会議の概略で申し上げましたように、私ども幼稚園のほとんどは小規模な学校法人で、家族経営的に事業継続を果たしている施設が多い実態に御配慮いただけたらと思っておる次第でございます。
 今までの私立学校法の改正等で伺ってまいりました監事機能が十分に浸透していないというケースが私どもの場合、たまにございまして、監査業務のより強化ということは、現実的には所期の目的を達成するべくためには重要ではないかと考えております。
 また、私ども特有の学校法人以外の設置者、いわゆる学校教育法附則6条の幼稚園、いわゆる102条園についても改めて学校法人化を支援するとともに、いわゆる非常時の所轄庁の監督を明確にすることもある意味、必要ではないかと考えておる次第でございます。
 理事会・評議員会の関係等については、今申し上げました監事の改善の余地がございますが、監事機能、監事が機能せず、不正が放置され、いわゆる非常事態には評議員会が自浄能力を発揮すればよいと考えておりまして、いわゆる評議員会は最高監督・議決機関として、形式的に屋上屋を架すというよりは、外部監査の充実に努めて、保護者や地域に直接的に説明責任を果たすことが、有意義ではないかなと考えておる次第でございます。
 いろいろ各項目について論点整理ということで、宿題いただいておりましたのですが、何せちょっと時間的な制約と、御案内のように今コロナ対策で、特に今幼児教育現場が非常に逼迫しておりまして、十分、各論点につきまして団体として熟議を重ねたという結果には至っておりません。大変申し訳ないことでございますが、今後また機会がありましたらとは思っておりますが、いわゆる私どもの小規模法人という特性を十分鑑みて、理事・評議員の選任、解任等についてもいろいろ提言がなされ、それぞれお答えはしておりますが、いわゆるごもっともなことだろうと認識はしておりますが、それぞれ各事象において、私どもが先ほどから申し述べております特異な事案によって、なかなか現実的には即座に対応しかねる厳しい環境状況があるということも、ぜひ御理解いただきたいと思っております。
 例えば職員と評議員との兼任の問題とか、今までやってきたことについて、急に変更となりますと、大変難しいという点が多々ございます。それと、私ども会計監査人ということも、非常に過重な負担になると思っておりますし、内部統制支出の制度についても、趣旨はよく理解させていただきますが、やはりこれも小規模法人には過度な負担ではないかなと憂慮していることでございます。
 また、子法人等についても、ほかの学校種と比して私どもそういうグループ法人というのは、実質ないし、少ないと認識をしております。小規模法人であり、その親族が教職員中心となって経営を支えているということが現状でございますので、仮に今後このような計画がなされる際でも、十分な憂慮と配慮をいただきたいということが、最後のお願いでございます。十分今回の宿題に関しまして、きちんと理解、把握できておりませんで、このような御回答になったことをおわび申し上げます。
 よろしくお願いいたします。
【福原主査】
 どうもありがとうございました。
 では、団体代表者の御意見の最後に、専修学校各種学校総連合会の福田委員より御意見を紹介いただきます。よろしくお願いいたします。
【福田委員】
 ありがとうございます。5分ぐらいで何とかまとめてと思っておりますけども、意見を申し上げます前に、総論の前といいますか、ガバナンス改革会議の報告書については、専修学校各種学校の立場からも深刻な懸念がありますので、特に、理事会・評議員会の位置づけについて、問題点を指摘させていただきました。
 させていただいたのは、本日の資料の4-7で記載をさせていただいたということでございます。詳細は割愛させていただきますが、こういった今度は資料3で分かりやすいといいますか、表も今日は御用意いただきましたので、あまり細かい話ではなしに意見を申し上げたいと思います。
 まず、私立学校の自主性、これがこの改革会議のような方向性で進めば、自主性が弱体化をすること、また、多様性が阻害をされる、円滑な学校運営に支障を来すこと、この3点について懸念を申し上げました。
 あらゆる改革におきまして本質を守ることができるのか、その改革によって本質が損なわれないか。そういった観点からいえば、私立学校の本質は建学の精神にのっとった自主性、公共性、そして多様性にあると言えるのではないでしょうか。私立学校の本質を維持した改革案の策定が重要かと考えます。
 教育の多様性を生かした学校群として、我々専修学校各種学校がございます。しかも高等教育機関である専門学校、後期中等教育機関である高等専修学校、生涯学習機関である専修学校、一般課程、また各種学校、教育の多様性を生かした学校群として、職業教育を中心に地域人材育成、こういった役割を担ってまいりました。
 専修学校各種学校のみを設置する法人は、準学校法人として国からの直接的な財政支援といったものはございません。したがいまして、自助努力により法人運営を行ってきた経緯があり、小規模法人が多いことが実情でございます。
 以上の私学の本質と、専修学校各種学校の他の学校種との異なる制度的な特殊性や法人規模なども踏まえて意見を申し上げたいと思います。
 総論の0-1に対しましては、私立学校が、所管庁の介入に頼ることなく、法人の自律的な運営改善能力を高めることが重要であることについては、当然のことと考えてございます。
 その中で、内部の諸機関による監視・監督体制が機能するように、それぞれの機関の役割の明確化、権限のバランス、相互監視・監督の体制の整備が重要です。その際には、私立学校法改正による監事のチェック・監督機能強化に対する、まずは検証を前提として進めるということでございます。
 論点、総論の0-2で言及されております評議員会の機能については、大前提として理事会に代わり、評議員会に最高監督・議決機関としての絶対的権力を持たすことは、これまでの学校法人制度における諮問機関としての評議員会の位置づけからも適切ではないと考えます。
 これまでどおり理事会を最高意思決定機関とし、評議員会を諮問機関とすることを前提とし、理事会に対する評議員会の監督権限については、監事によるチェック機能も活用しながら、健全な対応が可能となる仕組み、これを検討することがいいのではないかと考えてございます。
 次に、理事・理事会についてですけども、時間もございませんので箇条書きにしておりますのを読ませていただきますが、理事長の選定・解職は理事会の権限としつつ、寄附行為で定めること。理事の選解任については、基本的に当該法人に委ねられるべき選任機関を新たにつくるとなった際の小規模法人への配慮、これは必要と。解任事由は法令違反や職務義務違反など、明確な基準とすべき。校長理事の制度は、現状を維持する。
 評議員会への監督機能を付与する場合は、兼職は禁止すべきだが、評議員と理事の兼職によって評議員会の議論が充実する、コンセンサスが得られるということもあるんで、そういったことも御留意をいただきたい。
 任期につきましては、寄附行為で当該法人が定めるべきことであると考えてございます。
 あと、最後に評議員・評議員会につきまして重複しますが、あくまでも諮問機関であるべき。限定的な監督機能以外は、寄附行為に定める諮問事項に対する意見具申をすべき。監事の監督権限強化の検証を行うことが全ての前提である。評議員の選解任は寄附行為に定めることで異議はございません。職員と評議員の兼職、また近親者の評議員就任は、人数上限を設定しても必ず残していく。
 また、評議員の任期も寄附行為で定めるべきであるということで、本日は理事・理事会、評議員・協議員会につきまして、簡単でございますが、意見を申し述べさせていただきました。ありがとうございます。
【福原主査】
 どうも詳細にありがとうございました。
 各団体からの御意見をこの期間、限られた期間、またお忙しいところおまとめいただきまして、本当にありがとうございました。それを踏まえて、それぞれ委員から要点を本日伺うことができました。大変これからの議論を進めるに当たって有意義な御意見の紹介であったかと存じます。
 では、それぞれの団体に対する御意見、御質問でも、また、有識者のそれぞれのお立場からのこの問題提起や御意見などを順次賜りまして、その後、相互に本日12時半を終了時刻としておりますので、有識者の皆さん方からの御議論、問題提起や質疑等を皮切りに本日の審議を続けてまいりたいと存じます。
 では、恐縮ですが、名簿順でまたお願いしたいと存じますが、有識者の先生方から、また御質問でも結構ですし、また御意見、コメントといったことでも結構でございますので、頂戴できればと思います。
 では、佐野委員、いかがでしょうか。
【佐野委員】
 佐野でございます。昨年の改革会議からの報告では、私学は有効なガバナンスが利いていないという問題提起から始まりまして、ガバナンス体制の確立のための改革案、これが示されたわけですけれど、その具体についてはさておきましても、ガバナンスの機能充実のための各学校の施策の見える化、取組の可視化、これは公共性の高い私学の説明責任の遂行のあかしとして、非常に重要なことだと思っております。
 今日、この私学の皆さんのお集まりのこの会議も、この有効なガバナンス体制構築のための不断の検証のあかし、また、ベクトルをそろえるという点からも非常に有用な機会であると思っているところでございます。
 今日の御意見、それから書面提出あったものなどを見ましても、大体現行の、既定の理事会・評議員会、監事も含めまして、この役割については、ガバナンス機能を発揮できる仕組みになっているという私学の皆さんのお考えであったかと思っております。
 私、前回、自主性と公共性の調和が重要であるということをベースといたしまして、その有効なガバナンス体制の構築に関して3つの視点から申し上げたところでございますが、一つは現行の私学法の下で、私学法の趣旨にかなう運用が図られているか、私学自身が自己検証して、各法人が有効な、必要な見直しに取り組むべきだということ。
 それから2つ目が、所轄庁の指導であるとか、例えば寄附行為の作成例などによる示唆によりまして、私学の自主的な取組に期待するという視点がありました。これは今日の皆さんの私学のお話でも取組をしています、運用によってカバーできているというお話があったかと思います。
 そして3番目の視点なんですけれども、これは前回申し上げましたように、社会から疑念を持たれないようにするためのルールの明確化が必要な点があるということなんです。私学法というのはまさに学校法人が共通して守るべき最低限を定めているわけですから、私学の運用の工夫であるとか取組だけではカバーできないこと、これを法律改正に委ねなければ達成できないということがあるので、それについてはやはり取組を私学法の改正であるとかその他に委ねるべきではないのかなと思っているところです。
 例えば前回の有識者の昨年の会議ですね、改革会議でも、この兼職問題、評議員と理事の兼職問題が話題になっておりました。今日の会議では、皆さんからのお話を聞くと、やっぱり構成については、非常に今の仕組みがいいものを持っているというお話がございました。私も同感でございまして、例えば学校の実態、運用の実態、教育も含めまして学校法人の運用の実態を知っている職員が評議員会のメンバーとしていることによって、非常に情報がスムーズに共有される。それから、母校を思う卒業生がそこで受けた教育、自分が受けた教育を基に、その卒業した学校の経営に意見を申し上げる。これも非常に重要な意見がいただける。
 また、寄附行為の定めにもよると思いますけれども、学校によっては、地域貢献ということを考えながらその地域住民を加えるとか、それから、建学の精神を受け継いでいると思われる親族がいらっしゃるわけです。私学法には当然のことながら、役員には同族制限がついている。これに2名しかできないわけですから、いろんな親族の方、特に建学の精神を受け継いでいると思われるのはやはり親族の方かと思われるので、今、一つの例を出しているわけですけれども、そういう方々も評議員に加えて、建学の精神理念を守っていく、守りながら若い方々の意見を取り入れて、環境に合わせていくといった経営に対する意見具申というのは大変重要なことだと思っています。
 この辺のところは今伺っていたお話、それから書面提出いただいた中でも、皆さんがそのように思っているのではないかなと感じたところなんです。これは私学の独自性、自主性ということかと思います。
 これに対しまして、やはり意見が分かれたといいますか、そこが理事と評議員の兼職、さきの改革会議の報告ではこの評議員会を最高監督・議決機関、監督という言葉を使っていますね。今の私学法ではこれは監視です、モニタリングです。監督と監視はやっぱり違いますので、監視をするということだと思うんですが、さきの改革会議のほうでは、この兼職について、評議員会が最高監督・議決機関と位置づけていることから、監督機能の実効性が担保されていないということが提されているわけです。この兼職という外観をどう考えるかということなんです。
 今日伺っていました御意見などを聞きますと、兼職を認めたほうが情報共有しやすくて、活発な意見が出やすいんだと。牽制機能も働いていますということで、運用でカバーできていますというお話があり、また、意見提出がされていたかと思うんですけれども、やっぱり兼職をしているという外観ですね、外観を見たときに説明であるとか説得力に欠けるのではないかということが思われます。今の私学法の機関設計でガバナンスが利きますと、これは結構だと思いますけれども、外観を見たときに諮問機関である評議員会と執行機関、意思決定機関である理事・理事会の者が兼職しているという外観が、その実効性にむしろ誤解を招いているのではないか。
 むしろその兼職を避けて、相互牽制機能がきちんと働くことが担保されている私学法の下で、ここは各法人の問題としては、捉えていくべきではないかなと。つまり今の法律だけではちょっと難しい、やっぱり改正を伴わないと、私学の運用というところだけではカバーできない問題ではないかなと思っております。
 やはりこれは法律上の最低人数を抑えられることにもつながっていく。兼職が外れれば、今の理事数の倍超という評議員の最低人数も抑えられていくことになると思うんです。この辺りが、前回申し上げました3番目の問題として、各法人の問題として自助努力だけでは解決できるところではない、法律を変えてもらわないとできないということかと思っております。
 もちろんこのことによって、情報共有はどうなるんだとか、そういった問題も出てくると思うんですけれども、これは併せて例えば理事が評議員会に陪席して説明責任を果たすとか、評議員が理事会に陪席して、役員の業務執行の状況をモニタリング監視できるという仕組み、仕掛けをつくるとか、評議員会の役割をスムーズに果たせるようにすることも併せて手当てするということが大事かと思っています。
 今日は皆さんの御意見、それから、御提出の書面を見て、特に意見が相違していると思われるこの理事と評議員の兼職のところをちょっとフォーカスさせていただいて、意見を述べさせていただいたんですが、私学の方の運用でカバーできる、情報がスムーズにいくといったことも承知はしておりますけれども、やはりこれは公共性の高い私学としての説明責任を十分果たしているというあかしをつくるためにも、客観的な外観を整える。そのためには、法律の手を借りなければいけないところはきちんと委ねるということも必要ではないかなということで、お話を聞かせていただき、また、意見を述べさせていただいたところです。
 以上でございます。
【福原主査】
 どうもありがとうございました。フォーカスしていただいた論点はさることながら、やはりこの今回私学法の改正、私学法が担っている役割という点について、しっかりと整理をしていただいたものではないかと拝察をいたしました。
 やはり私学法が私学への信頼ですとか社会的な理解、協力を得るためのそういう要諦でなければならないわけですから、自由であると言っても、その取組に関してしっかりと可視化できる、そういった基盤になる私学法というものが求められている点を佐野委員が御指摘いただいたものと、私自身も拝聴いたしました。
 では、続きまして、西岡委員、いかがでしょうか。
【西岡委員】
 西岡です。意見を拝聴しておりまして、理事会・評議員会、監事の機能の実質化と活性化を図っていきたいという点は共通だと感じました。考え方の点などは、ほかの有識者の方の御意見も伺わせていただきたいと思いますが、実務的に課題となりそうな点について、企業での事例の観点から3点ほど述べさせていただきたいと思います。
 1つには共通的なところで、今回の検討事項は様々な形態や規模で適用されることをどう捉えるかという点にあったかと思います。私自身、グループ会社に出向していたこともありまして、重厚長大な制度設計の場合、小規模な組織ではオペレーションに負荷がかかるというのは実感しております。
 一方で、独自に制度設計するとなると、自分のところで問題がないと証明する必要があるという別の負荷があります。少ない人数で全て気配りするというのはかなり難しく、ガバナンス、コンプライアンス上、効果の高い施策につきましては上位組織で設計して、明確にルール化してもらうほうが、コンプライアンスリスクが高まっていく中では有用だと感じておりました。
 今後、ルール化を検証されていく中では、法律、ガバナンスコード、寄附行為、どこで定めるのかを具体化していくと思いますが、開かれた学校法人としてステークホルダーに分かりやすく、仕分けされていくということは有意義ではないかと考えております。
 2点目は評議員会に関する意見の中で学校や教育内容にあまり詳しくない方が選定され、また議論を主導するということへの懸念というのも述べられていたかと思います。御指摘はごもっともだと思いますが、企業もコーポレートガバナンスコードで社外取締役の参画が、例えば3分の1以上、または過半数といった形で言及されるようになってきた背景は、社外取締役の参画を促進するということが執行側、経営にとっても有益だと感じているからだと考えております。
 もちろん評議員会を諮問機関として多様な議論をされることについては、皆さん、御異論ないということかと思っておりますが、確認していくべきなのは、人選、選定と運営の点だと思っています。人の選定では、例えば社外取締役を選定する場合には、指名委員会で長期的な経営戦略から考えてどういう候補者が必要か、また挙がってきた候補者を指名委員自身が面談するなど、選定の要件とプロセスを定めて取り組んでおります。
 今も、選定委員会等で議論されているところだはと思いますが、一つには、選定の要件やプロセス等を定めて、可能な範囲で開示しながらステークホルダーに御理解いただくということがさらに重要になってくるかと思っております。
 また、実際の運営でも、例えば株主総会等でも、取締役会で議題を定めて招集をして、社長が議事進行を務め、株主からの質問に役員が答えるという形で、取締役、執行役ともにステークホルダーに対応しております。
 学校の自主性を保ちながら、多様なステークホルダーの意見を入れていくというのは、評議員会にとっても大きな機能かと思いますので、それを担保できる形で、どういう役割・機能にするか今後の議論になってくるかと思います。
 最後に、評議員会の役割についていろいろと議論されている中で、役割が増える中では、運営をサポートする仕掛けも必要になってくるのではないかという意見もあったかと思います。現在、諮問機関として運営されている部分は大きく変わることはないと考えますが、御議論されていたのは選解任に関するところです。こちらの検討プロセスは、現在行われているような選任委員会のように小規模で議論されると思いますので、その運営につきましては、委員会の責務を担う評議員の職務として取り組んでいただくなど、新たに事務局としても機能を拡充させないで実施できる方法もあるのではないかと思います。
 ただ、現在評議員会のほうも数十名の規模を抱えているところも多いと思います。様々な意見を吸収していくという意味で必要な人数なのかもしれませんが、実効性を高める上では、そこで議論をして意思決定していくというのは難しいと感じていらっしゃる面もあると思いますので、人数、構成などについては検討する余地があるのではないかと思います。機動性を高めていかないと、なかなか社会の変化に対応することが難しくなっているというのは、先ほど皆様からも出ていた御意見かと思いますので、評議員会で実質的に、実効性の高い議論ができるような仕組み、方針を考えていくということが、この後の議論の中で定まっていくといいのではないかと思っております。
 私からは以上です。
【福原主査】
 どうもありがとうございました。ビジネス界での様々な事業組織の運営に当たっての、いわゆるコーポレートと称せられる中でのオペレーション、これを踏まえた、御経験を踏まえた御意見があったかと思います。また、特に外部者の参画ということに対する懸念もあるけれども、また、その一定の有益性がビジネス界では認識されていることなども御紹介をいただきました。
 評議員会につきましても、人数その他について、御意見もいただいたところであります。ありがとうございました。
 それでは、続きまして、梅本委員、いかがでしょうか。
【梅本委員】
 梅本です。私のほうからも何点か意見といいますか、申し上げていきたいと思っております。
 各論点について、今日は総論及び理事・評議員会関係の議論ということになっておりますので、それを中心に申し上げていきたいと思います。
 まず、評議員会を万能の議決機関とする必要は私もないと思っております。法律的に言うと、これは例えば理事会を置かない一般社団法人の社員総会だったり、あるいは会社法で言うと取締役会を置かない会社の株主総会は、こういう何でも決議できるという意味で万能の議決機関なんですけれども、これは学校法人ではその例には当てはまらないと思っております。
 この点ちょっと以前から誤解があるかなと思っているんですが、先般の学校法人ガバナンス改革会議の報告書で、評議員会はこういう意味での万能の議決機関といいますか、法人のあらゆる事項について議決できる機関にせよということまではこの報告書も言っているわけではないと思います。これは公益財団の評議員会も同様と思います。
 ただ、他方で、学校法人におけるいわゆる一定の重大な事項といいますか、その範囲についてどこまで重大な事項と言えるのかというのは、今後議論を重ねる必要はあるかなと思いますが、重大な事項については、評議員会の決議なりあるいは承認をするということにして、評議員会をその事項についての議決機関とすべきではないかと私は考えております。
 この点で評議員会をやはり現在の私学法のとおり、諮問機関と位置づけるべきだというお考えが多い、法改正は不要という意見もございましたけれども、それは率直に私は大変残念に思っているところです。
 結局、先般の日本大学の不祥事もそうなんですが、学校法人で発生する不祥事の温床といいますか、不祥事が発生しやすくなる私立学校法が抱えている構造的な欠陥というのが、端的に言うと学校法人の理事長なり、あるいは業務執行する理事に、評議員だったり、理事、監事という法人役員の人事を含めた決定権が集中してしまう、そういう制度設計が法律の文言で言うと、「寄附行為の定めるところ」という言葉が私学法でいっぱい出てくるんですけれども、この寄附行為の定めるところという言わば魔法の言葉、マジックワードでもって、法律上も可能となってしまっていっていると。その結果として、理事長等を実効的に監督する機関が、事実上、誰もいなくなることもあり得る。それが法律上の制度上も可能となってしまっている。ここに尽きるんじゃないかと思っております。これは学校法人の実効的なガバナンスというものを考えたときに、私立学校法が有している最大の問題点ではないかと思います。
 この委員会の最大のテーマであります学校法人のガバナンスの改善、そのために私立学校法はどのように改正すべきなのかという点を考えますと、この役員の人事の決め方という問題を改革すること、そのための私立学校法の改正に進むということは、私はやっぱり避けて通ることはできないんじゃないかと思っております。
 ガバナンスという言葉なんですが、いろんな人がいろんな意味で使いまして、ちょっと理解しづらい言葉なんですけれども、最大公約数的といいますか、基本的な意義としては、法人の業務を執行する人、学校法人でいえば理事長さんだったり、業務執行を担当する理事さんがいらっしゃいますが、そういう方々に対する監視なり監督すること、あるいはそのための体制、仕組み、それ自体、そういう意味で使うことが多いと思います。
 その監視・監督のやっぱり最たるものというのが理事長、あるいは理事に対する人事権です。つまりこれらをどうやって選任して、場合によっては解任するのかと。この人事権の発動という部分、人事権がほかならぬ理事長さんに集中してしまうこと、これを法律も許していること。要するに業務を執行する人と監督する方が一致してしまうというのを法律も許容してしまっているということからすると、そのような法律はやっぱり法人のガバナンスという観点から見れば、はっきり言って不合格であると言わざるを得ないと私は思っております。
 私立学校法というのは、学校法人のガバナンスの最低限を定める法律ですから、その肝腎要の法律が、寄附行為の定めるところという、一見もっともらしい言葉でもって、結局各法人の判断に委ねられてしまっているというのでは、もはやそのような法律は、ガバナンスの最低限を決めるという意味での法律の体をなしていないと私は思っております。
 本委員会は、国会での以前の法改正時の議論であったり、あるいは閣議決定を踏まえて、学校法人のガバナンスのさらなる強化のために、私立学校法の改正を議論しているわけなので、以上申し上げた私立学校が抱えているガバナンス上の構造的な欠陥、これをいま一度見つめ直していただければなというのが私の考えです。
 前回、私から、学校法人は沿革として財団法人として出発して発展してきたということで、財団法人のガバナンスの在り方というのは、理論的に大変困難な問題を含んでいて、公益法人制度改革においても、財団法人における評議員会の存在意義について議論があったんですが、制度改革から10年以上経過して、おおむね公益財団法人における評議員会の運営というのは、よくなされてきているのではないだろうかと申し上げました。
 ただ、財団法人における評議員会の存在の正当性といいますか、レジティマシーの問題ですが、やっぱり理論的に考えると難しくて、そういうちょっと若干正当性に疑問符がつく機関に議決権を与えてもいいんだろうかというのは、公益法人、財団法人サイドではいろいろとまだ議論がございまして、それがこのたびの公益法人協会さんからの意見書にも表れているのではないかと思っております。
 今現在、内閣府等では、公益法人のガバナンスのさらなる強化のために、もう既に議決機関とされている評議員会をさらに権限強化しよう、あるいは個々の評議員さんにも権限を認めようというような方向で、実際議論が進んでおりまして、これは反対意見もちょっとございまして、私も個人的には疑問に思っている点もございます。
 しかし、学校法人さんの場合は、公益財団法人とは違って、財団法人としての側面を有しつつも、やっぱり学生なり教職員なり卒業生なり、いっぱい多様なステークホルダーというのが存在して、こういう方々の意見を広く学校の運営に反映させるという観点から、評議員会制度が発達してきたという、学校法人さん独自の歴史というのを有していると思います。
 そういう意味では、学校法人というのはこのような多様なステークホルダーの方々に奉仕するという意味で、社団的な性格も有しているのではないかと思います。そうしますと、そのようなステークホルダーによって構成される評議員会というのは、公益財団法人とは違って、学校法人においてまさしく正当性というか、レジティマシーを有する機関と言えまして、そのような評議員会が一定の重要な事項について、議決権を有するというのは理論的にも何ら問題ないんじゃないかと思っています。
 その趣旨で、現在既に私立学校法の42条2項、評議員会の諮問事項とされている同法の42条1項の事項について、寄附行為に定めるところによって議決を要する事項とすることを可能としているわけでございます。
 そうしましたら、この42条2項の趣旨をさらに一歩進めて推し広めて、一定の重要な事項に関して、寄附行為の定めるところじゃなくて法律上明確に評議員会を議決機関とするというのは、特に問題ないんじゃないかなと私は思っております。
 あとやはり、学校法人というのは公益法人と比較にならないくらい助成金を得て、大きな公的な資金というのが投入されています、ガバナンス改革会議の先般の報告書では隠れた補助金という言い方をしていましたけども、その表現方法はともかくとしても、やはりそのような公的な資金が多く投入されている法人のガバナンスが、公益財団法人の制度設計よりも後退したものでよいというのは、これははっきり申し上げて全く説得力がないといいますか、到底、国民・社会からの信頼を得ることもできないんじゃないかと思います。この点もぜひ皆様にもお考えいただければなというところでございます。
 時間がたってしまい、いろいろ各論的に申し上げたいんですが、今後の議論において引き続きまた意見を申し上げていきたいと思います。
 私からは以上です。
【福原主査】
 どうもありがとうございました。端的に問題点を専門家の立場から御指摘をいただいたものと拝察いたします。特に、役員人事の決め方、人事権の所在というのはなかなか動かし難い、動かしたくないという思いが多いかと思います。田中先生もおっしゃいましたけれども、一理事長だけじゃなくて、一部の方にそれが偏ってしまうということが、いろいろな問題を引き起こす温床になってしまうということは、やはり経験上皆さん御存じのことかと思います。そういったことを踏まえて梅本委員の御意見を拝聴いたしました。
 では、有識者のほうとしてさらに尾崎委員、いかがでしょうか。
【尾崎委員】
 尾崎でございます。聞こえますでしょうか。たくさん、いろんなことが発言されたもので、私の中ではなかなか消化不良でございますが。
【福原主査】
 この後にフリーディスカッションの時間もありますので、ここでは御意見の要点だけでもどうぞ。
【尾崎委員】
 冒頭、福原主査がおっしゃったように、ここは合意形成の場であるということになりますと、少なくともその誤解されているのではないかと思われるような事項が幾つかありまして、そこで、そこを少し解消しておかないといけないのではないかなというのが私のまず最初の意見でございます。
 これは先ほど佐野委員のほうもおっしゃったのですが、これはあくまでも改革会議の最終報告書を前提にしておりまして、私もまた改めて読んでみたのですが、まず、文部科学省のほうでおまとめになられたこの主な論点の0-2のところに書いてある「万能の決定権限を付与する」という、ここのところが誤解を生んでしまっているのではないかという気がするわけです。
 何でもかんでも評議員会で決めてしまうという制度改革を提案されているのではない、ということだと思います。「万能決定機関」というのはちょっとその報告書の中では理解は、私、できなかったもので、報告書におきましては、新たな改革案というところがありまして、これは改めて言うまでもないことなのですが、「適切な教学の自治について十分尊重されるべき」であるとか、「様々な適切な開示に基づいて、強固なガバナンスなくしては教学の自治なし」と、こういうふうなことを言っていると。
 したがって、適時適切に情報開示がなされるべきであって、次に、「評議員会による学校法人の業務の基本方針の決定の役割と、理事・学長等の業務執行の役割、評議員・監事・会計監査人による監視・監督の役割を明確にしたガバナンス体制をつくるべきである」。ここについては、ほぼ異論がないのではないかと思うわけです。
 そして、次の次の段落ぐらいのところにも、「理事長・理事・学長などの執行部門が機動性を持って執行する一方で、独善に陥ることなく広く社会にその姿勢を理解されるために、評議員・監事・会計監査人などのこういうふうな機関が設置され、監視・監督の体制が十分に整備、強化される必要がある」、こういう御提言であると理解するわけです。
 そうなりますと、まさにこういう自律的なガバナンスをやっていく上で、執行はやはり理事会・理事長を中心とした理事会がすると。これに対して、評議員会は、最高の決定機関であるとともに、監督機関である。この理屈は、株式会社法で言うと取締役会と代表取締役あるいは業務執行取締役の関係、あるいは取締役会と執行役、代表執行役の関係と考えると、私にとってすっと落ちてくるのです。
 つまり、日々の重要事項の決定は全て取締役会にありまして、株主総会は、さらに重要な事項の最高意思決定機関として存在しているのです。ですから、日常的な業務は全て取締役会、つまり日常的な学校法人の運営に関する権限は理事会にあるということは何ら手をつけていない、と私は理解したわけです。
 したがって、重要な事項として何であるかというと、この報告書を見てみますと、そこに挙がっていることは、会社法でも株主総会の権限でされておりますいわゆる基礎的変更、定款変更であるとか、合併であるとか、こういうふうなものは評議員会で決めると。そしてさらに、ここにちょっと実は取締役会の事項であるところの多額の借財、重要な資産の処分、こういうふうなことが入ってきておるわけです。これは考えてみますと日常的な借財、多額でないものについては理事会ができるはずである。その理事会で決めるものをさらに少額になりますと、代表取締役あるいは業務執行取締役の権限事項にするという、これはもうもとより可能になっているはずなのです。
 ですから、そこのところにおいて、ここのところは株主総会でありそうで、かつ取締役会的だと考えますと、株主総会の最高意思決定機関であるという位置づけになっています。
 しかし、先ほど梅本委員からも御案内がありましたように取締役会を設置していない会社については万能機関ですが、取締役会という、この場合は、学校法人で言うと理事会がある組織におきましては、評議員会は万能機関ではあり得ません。
 法律またはここで現在会社法では、少し問題がある、定款で定めれば何でもできるということで、最近、「物言う株主」は、定款変更という提案権をしてきているケース結構あるのですが、それはちょっと会社法の議論でございますが、基本的に法令で定めた事項、あるいは寄附行為でこれは重要な事項と定めたものについては、評議員会で決めるという定め方については、全く私は違和感がないわけです。
 そして、会社法にも、取締役会の決定事項は幾つか挙がっておりまして、多額の借財だとかが挙がっていますが、その他重要事項ということについては、取締役に委任できないという形の条文の仕方になっています。ということは、取締役会で決めなきゃいけない。つまり学校法人では理事会で決めなければいけない。つまり、大きなプロジェクトをやるときに、まず、理事会では決定しなければいけない。さらに法人全体に絡むようなプロジェクトであるとかこういうものになりますと、学校法人で言うと評議員会の議決を経ない限りいけないと。
 先ほど42条の規定がありましたが、これは、「決議を要するものとすることを妨げない」ということですから、理事、評議員会だけで決定できるということは、私はこの条文からいくとそう読める、読めるかもしれませんが、そうではなくてこの場合は評議員会の議決もなければ、法人の決定にならないという条文として理解しておりまして、意思決定のポイントとして、評議員会をそういうふうに考えているのだと。
 そうなりますと評議員会の決定機関としての側面でありますから、学校法人において、ステークホルダーである教職員あるいは卒業生、こういった人たちあるいは地域住民、こういう人たちが評議員会に入ってきて、最終的な重要決定はそこに関わるという仕組みは、決して私は違和感がないわけです。
 ですから、何でもかんでも部外者が決定してしまうというのは、私にとって誤解であると理解しています。これは私の誤解でないことを期待したいのですが、そういう点で、従来の運営を完全に変えるのではなくて、「法人の最終決定」は評議員会、そしてそこにはいろんな人が入ってくるという仕組みがあっていいのかもしれません。
 しかし、今は人数の上限の定めがありませんから、文科省の問題提起では、上限を置くことはどうですかという言い方をされているように理解しております。これが第1点でございます。
 そして今回の議論については、よく文部科学省からのあれだとかあるいは認証評価を受けているから大丈夫なのだとか、こういうことをおっしゃっていますが、あくまでも自律性、自主的なガバナンスを高めるための制度設計の議論だと私は理解しております。
 したがいまして、最低限どんなことを決めるべきであるかは、ハードローであるところの私学法で決めるべきだと思います。
 しかし、例えばその他重要事項、これは法律で決めていいと思うのですが、具体的にどうすればいいか。これは場合によっては省令、場合によってはガイドライン、場合によってはソフトロー、こういうふうなことで決めてはどうかということを書かれればよろしいかと思います。
 法律としては、法人の「重要事項」はやはり評議員会で決めるべきであるというガバナンス構造を取っているということをそういう外観をつくり上げていく。先ほど佐野委員がおっしゃったような、そういう外観をつくり上げていく作業だと思います。したがって、先ほど「三重構造」だということがあったかもしれませんが、最終的な決定は評議員会、その間で理事会と御相談されて、そしてそこで決める。つまり、そういう方々が加わった会議体でも説得できるようなことを、最終的な重要事項を評議員会決議によって「法人として決定する」わけでございます。評議員会の権限とするということを全く危惧しておりません。
 なお、認証に関しては主として教学マターみたいなのが入ってきているかと思いますが、実はこれはあくまでも法人マターの議論でございますので、法人として自主自律ということにふさわしい内部機構をつくっているか、あるいはそういう組織をつくっているか、そのときにつくるための最低限のことを法律で決めておく。そして細目についてはソフトロー、ハードローとソフトローの使い分けをうまくしていくということが求められているのではないかと感じた次第です。
 御意見を聞きながら、まず、そういう危惧されていることは、この改革会議は少しもそんなこと言っていない。つまり攻めのガバナンス、守りのガバナンスですが、まず、守りについては、最低限これぐらいのことをしましょうということを言っている。そして、攻めるためには最低限これは絶対必要ですよねということを言っている。そして、先ほど来から出ているように区分立法の議論というのでしょうか、規制区分というのは、これは運用の問題あるいは立法の問題かもしれませんが、そこはまた別の議論として、やはり小規模のものについてはコストパフォーマンス、コストベネフィットの点で果たしてどうかという御議論は当然あろうかと思っております。
 ちょっと早口で申し訳ありませんが、以上、私の感想でございます。
【福原主査】
 ありがとうございました。用いられている表現や用語によって生じてしまっている疑問、疑念、懸念、こういったものを氷解させることも、当委員会の役割ではないかという御示唆も頂戴をいたしました。また、区分規制の必要性も頂戴をしたところでございます。
 あとお一方、御意見いただいた後、ディスカッションに及びたいと存じますので、では、米澤委員から御意見いただきたいと思います。
【米澤委員】
 今、尾崎委員からおっしゃっていただいたように、これが基本的には法人マターのお話をしていて、教学マターの話をしていないというところも含めて、各団体のお考えを拝聴いたしまして、学校法人の自主性と公共性に関わる議論として、各論点をかなり正確に理解されて、その上でそれぞれ冷静に、また現実を踏まえた方向性を示していただいたことに、心強く感じております。
 前回、座長よりありましたし、今回も何度も出ていますが、ゼロベースではなくて、今までの有識者会議、改革会議双方の議論を踏まえてというお話があったと思いますけれども、これに対して私立大学協会、それから中学校高等学校連合会、私立小学校連合会などからは、現行法の下で自律的、自主的な運営努力を行うべきだという見解が示されているということは拝聴いたしまして、本会議での丁寧な対話による共通理解が必要なのではないかというふうには、改めて思った次第でございます。
 理事会、それから評議員会の在り方についてなのですけれども、1949年の私立学校法成立当初にも、やっぱりこういう議論はあったということなのだと思います。ここは先ほどから何回も出ているところで、これはきちんと整理された研究もあるんですけれども、やはりその社団的な役割として考えた場合に、例えば評議員会というものをここでどういうような役割として、どこまで理事会の役割とするかということについては議論がありました。また、評議員会の定数が理事会の2倍ということは、論理的に考えれば、評議員会の代表を理事会に送り込むような発想が歴史的にはあって、その中で、その時点で理事会にどちらかといえば重きを置くというように決めた歴史的経緯があったということになるのだと思います。
 このことで私が申し上げたいのは、そこに何か最終的な絶対的解はないというか、2つの間の相対的な問題というのは、最初から最後まで残るのだと私は思っています。
 また、今までの会議や関連する議論においても、多くの問題提起、論理が整理をされているわけですけれども、その中身を見る限り、現在の法制度の在り方について再考の余地は私はあるのではないかという印象を持っております。その辺については、さらに何らかの形でコンセンサスが得られるかどうか、考える必要があるかと思います。
 私が教育の立場から入っているということもありまして、やはり児童、生徒、学生、保護者、それから卒業生が活躍する産業界や社会を理解できる形で学校法人、それから私立学校の在り方について、一定の具体的な方向性を示す責任が本会議にはあるという思いもございます。
 私はこのように対話の場が常に開かれることは望ましいと思うんですけれども、必ずしもそうではない可能性、あるいはリスクというのを考える必要があるかと思います。そういう意味で、いろんな考え方があるということも既に示していただいた中でなんですけれども、この多様な性格を持つ私立学校の関係者がそろって、具体的かつ大所高所に立った議論ができるということを積極的に活かすということを一つのオプションかなと思いますし、現代の状況としては単純に不祥事に関わる問題だけではなくて、少子高齢化とかデジタル化などの今日的課題も含めて、私立学校が置かれている状況というのは私は率直に考えて決して明るいわけではない、よく考えなければいけないところがたくさんあると思います。そういうことを話す場として、我々がこの場を活用するかどうかという意思に関わっているかなと感じております。
 その上で、その学校長と理事会、教職員の在り方の関わりを中心とした教育研究に関わるガバナンスについては、先ほど冒頭に申しましたように、別の法律である学校教育法を中心とした議論であって、今回の主要な検討対象ではないのですけれども、実態として考えるときに、やはりそこの部分を単純には切り分けられないというところがあるのではないかということはずっと気にはなっております。
 なるべく切り分けたつもりで話をしますけれども、理事や理事長以外の私立学校の教育研究活動に関わる関係者の意見を法改正や政策を通してどう酌み取るかについては、法制度に関わるものを含めて、速やかに解決、再考すべき論点が今でも多くあるような気がいたします。評議員会に関わる議論というのは、この論点に関わるものの議論を今行うことが私は重要だと考えていて、この際、有識者会議で論点として挙げられている校長理事の問題とか、あるいはその理事・評議員の兼職の問題等の関係は、少し総合的な、包括的な観点から議論すべきではないかと感じた次第でございます。
 前回もコメントさせていただいたんですけれども、公共性の議論に関してもう少し、大所高所から深めていく必要があるような感じがいたします。この点は、改革会議とそれからその前の有識者会議の間で、かなり論点の立て方が違うと考えております。改革会議は、私の見方が狭いのかもしれませんけれども、どちらかというと公益法人としての在り方の中でこの問題を整理しようとしているように思います。その主要な論点としては、本日具体的に意見表明がなされていると理解しております。
 他方で、私立学校、学校法人の公共性が2022年というか、21世紀半ばまでを見通して具体的に何を意味するかについては、もう少し議論ができると思いますし、そのことについて有識者会議はある程度踏み込んだ議論をしているものが、改革会議ではあまり焦点を当てられないというところに、印象というか、少々疑問が残っているところでございます。
 有識者会議が整理をしているところがあるんですけれども、有識者会議の報告書の9ページ目を見ますと、こういうふうに整理してあります。設置する学校・学部の価値を見いだして、資源の投入と価値の創出を目指すステークホルダーとして、過去の接点と現在の接点と未来への先行投資と3つに分けまして、過去の接点に関して、今の44条に規定されています設立者、それから寄附者や卒業生のあたりの話をしております。
 それに対して現在の視点に関しては、在校生・教職員、保護者・寄附者、産業界・学界・地域社会を想定しているんですけども、これが法的には今表れていないということになります。法的に表すべきかどうかはちょっとまた別の議論です。
 その上で、未来への先行投資について、大学教育研究の性質を踏まえたステークホルダーの時間的・空間的な広がりがあるというのは一つの大きな指摘であると思います。これをもう少し掘り下げるとこういうような話になると思います。
 卒業生というのが、1949年の時点でいかに大事だったのかということは、これは想像できる範囲だと思います。その時点で大学に関しては、国立、公立も含めてエリート段階というか、非常に数が限られた方々が享受していたにすぎず、私立学校に関しても、そういうような面はあったでしょう。その中で、学生ではなくて学生を経験した卒業生というものにある意味で、ユーザー、受益者としての立場というのをここで代表させていると理解するのが普通の考え方かなと思います。
 ただ、これはぜひ実態を伺いたいところはあるんですけれども、ロジカルに考えると、例えば幼稚園の園児というのを考えた場合に、幼稚園の園児が25歳になって成人になるまで20年近くかかるわけです。その間卒業生としてカウントされないということになるわけですけれども、これが新設の幼稚園が始まった後どうなっていくのかということは少し考えてしまうし、実際にこのことについての解説書も出ております。
 その一方で、今の現在のところを考えたときに保護者、例えばPTAというものが、ここでどういう役割を果たし得るのかと考えた場合には、公立の小学校とか中学校であれば、普通に実は学校評価に参加するということが、かなり行われてきていることになります。その保護者はどういうふうにここで扱うのかということは考えるべき論点だと思います。また、今度は大学あるいは専修学校に関して考えた場合には、18歳以上の学生が主体になっているという中で、成人の定義をこれから18歳以上とするとなってきたときに、彼らの成人としての意見を聞かないのはどうなのかということは、実は大きな論点であると思います。
 1949年の時点、学生運動が50年代、60年代にあったものの前と考えれば、それは理解できるわけですけれども、現在の視点で考えたときに、例えば国立ですけど、私たちの東北大学では、まだ始まったばっかりでありますけれども、学生評議員という制度をつくって、意見を聞くとか、少しいろいろな議論を始めております。そういうことについて、少し大所高所に立った議論が、本来はここで出てきてもいいのかなと思うところでございます。
 当然ながら、自主性を考えた場合に外から出てくるよりも、ぜひ関係者の間からこういう話を伺いたいなというところがございます。
 以上、基本的には現在の議論の在り方というのが、ある程度大所高所に立って話すべきだということを考えます。その際、改革会議と有識者会議の議論が連続しているもの、段階を踏んだものと捉えるだけではなくて、複合的に考えていく必要があるんではないかというふうには思います。
 以上でございます。
【福原主査】
 どうもありがとうございました。国際性と将来性、そのことを踏まえて我が国の私立学校の経営の在り方という、大変スパンの長い、視野の広い御意見を拝聴して、ややもすると議論が技術的で、いろんな隘路(あいろ)に陥りやすいのですけれども、そういうところを打開する意味で、米澤先生の御見識から御紹介いただいたことは、大変勇気づけられた思いがいたします。
 改めて、各私学団体の皆さん方の御意見や有識者の皆さん方の御意見をいただいて、私学法改正を議論するこの時期、我が国においてこの時期に私学法を改正することは一体どういう意味を持っているのか、社会的意義を持っているのか、また、学校ガバナンスの改革ということを論ずる必要性などを、もっと浮き彫りにしていただいたのではないかと思います。さて、本日はあと残る時間、いろんな御意見、今のを踏まえて御意見を頂戴したいと思います。今日何かフォーカスした論点について合意を得てしまうとか何か決定するということは、これは難しいと思いますので、次回以降に譲りたいと思います。この後、時間いっぱい御意見をいただくのですが、今米澤先生からもおっしゃっていただいきましたが、私たちはこの時期にいろいろなことを論じたいのですけれども、この委員会に課せられたミッション、またタイムスケジュールということもございます。この後の議論をいただくときの御配慮をいただくということを含めまして、ここで、これまでの議論とここの議論を踏まえてどういうふうな形で、私学法の改正という具体的な作業に結びつけていこうとされているのか、そういったことを文科省のほうから法案の提出に向けて何か紹介していただ
 ければ幸いと存じます。いろいろな方々から、いや、これ議論してどうなんだとか、この後もいろいろ国会審議のスケジュールがあるようだけれども、この議論は一体どの辺りでどこまでまとめたらいいのかという疑問の声もあるように思います。この委員会でも、恐らく次回以降意識して御意見をいただくことになるかと思いますので、そのあたり、忌憚なく、我々のミッションをもう一度確認できればと思います。事務局からよろしくお願いします。
【相原補佐】
 私学行政課の相原ですが、まず、本会議のミッションとしては、前回、第1回の会議で御説明いたしましたように、12月21日に大臣から公表した対応方針に沿っていくということでありますが、対応方針は大きく言えば丁寧に合意形成を図っていくということ、そして、改革の成案を得られ次第、国会に法案を提出するという進め方が示されておったかと思います。
 この1月17日にも国会が開会いたしました。それで国会の開会時に、この通常国会に政府全体で提出される予定の法案というのは58本ということで公表がされておったと思います。これは考え方としては、3月上旬という通常のスケジュールにおける法案の提出という予定ということで理解いただければ思います。それ以外に、そのスケジュールに遅れて提出することを検討中のものが12本というのが政府全体の位置づけです。1月18日に、末松大臣が会見におきまして、文科省としては3本が提出予定、検討中が2本、そしてこの検討中の法案として、多くの記者様からも御質問いただいております私立学校法の改正法案も含まれております、そして現在、この場であります学校法人制度改革特別委員会におきまして議論をいただいて鋭意作業を進めているところ、重要な課題に対応していくために注目の大きい法案であると、国会提出に向けてしっかりと準備を進めたい、とおっしゃられております。
 私どもとしては、この対応方針、あるいは大臣の御発言にありますように、最終的にこの通常国会への提出というのを見据えた形で、準備というのは図っていく、ただ、報じられたようにいろんな状況は、国会情勢等もあるかと思いますが、それはあくまで政治の御判断でありまして、あくまで政府といたしましては、このような形で検討というのをしっかり進め、法案の提出に向けた準備をしております。そのための合意形成を今一定のたたき台を基に図っていく、このようなプロセスと理解をしておるところです。
 よろしくお願いします。
【福原主査】
 どうもありがとうございました。改めて確認をさせていただきました。
 それでは、本日は残る時間、全体の総論、とりわけ理事・理事会、評議員・評議員会、その双方の関係に関する論点につきまして、意見交換をさせていただきたいと思います。既に御意見のお申出があるかと存じますが、挙手を受けて、私から指名させていただきます。
 まず、田中委員どうぞ。
【田中委員】
 ありがとうございます。私大連の田中でございます。有識者の先生方の御意見に私も非常に賛成しておりまして、大学というところが学校法人、全ての学校法人、私学は公益性が重要であるということ。特に、佐野委員と米澤委員からは、そのことを強くおっしゃっていただきまして、ありがとうございました。
 それで、梅本委員、尾崎委員の御指摘のとおり、ガバナンス改革会議の論点に誤解があるというところは承りましたので、そこは注意してまいりたいと思いますが、ハードローによる改革の必要性があるということで、私学法の改正が必要という御指摘は、佐野委員からも梅本委員、尾崎委員からも明確にいただいておりまして、それは私も反対しておりません。
 私大連としてもハードローの改革の必要性はあると思っておりますが、しかしながら、米澤委員がすごく強調されていた公共性ということについては、議論がまだ十分でないと思います。特に尾崎委員がおっしゃっていらした会社法に適用するとすとんと落ちるというところに、私どもは大変な疑問を持っておりまして、会社法における株主総会が評議員に相当し、取締役会が理事会に相当するという御意見ですと非常に問題、そこに誤解が生じます。
 というのは、株主総会における株主というのはステークホルダーでありまして、利潤を追求している、公共性よりも利潤追求している企業体がもうけるか、もうけないかはステークホルダーであります株主が非常に神経をとがらせるところであります。ですから、もうからないような判断をした取締役会に対して厳しく断罪するということがあります。学校法人は利潤追求でございませんので、もうけるかどうかということではなくて、評議員が直接に学校法人のステークホルダーになっている場合は少ないんです。異なる職業を持っていて、卒業生であるとか様々な形ですが、大所高所から学校法人の公益性を守るためにアドバイスをする諮問機関であるというのが、評議員会であります。
 ですから、これを株主と同じに同等に扱われるとすると、非常に大きな誤解が起きると思っております。その点は異なると思っておりまして、株主ではない、いわゆるその理事会が執行し、意思決定をするというのは、尾崎委員のおっしゃるとおりでございますし、米澤委員も佐野委員も皆さんおっしゃっているんですが、しかしながら、その意思決定が公益性に通じている、そして、最大のステークホルダー、最大の受益者であり、学校法人の利益を受けて説明責任を果たすべき相手は、学生、生徒、児童でありその保護者であります。この方たちが納得するような教育の在り方というものを学校法人は担保していく必要がある。しかしながら、現実にはそれができない事例が私学で幾つか起こっております。それの原因が私が申し上げている安全弁がないということだろうと考えております。
 これは梅本委員と米澤委員が特に御指摘されていたと思うのですが、特に梅本委員がおっしゃっていた、ごく少数の個人に全ての権限が集中してしまうということを止められないというのは大きな問題で、これは制度上の弱みだと思います。ですから、そこにおいてハードローで止めるような仕組みが必要だと思っております。ただ、今回のガバナンス改革会議の最終報告の最大の欠点は、評議員は理事を選解任できるが、理事会は、理事は評議員を選解任できないと断定的に一方的に決めていることですね。これをしてしまうと、その少数の評議員が最終的な決定的権限を用いるということを止められないんです。
 評議員の中に、例えば寄附者が多く含まれて、その中には工務店や建設会社の社長も含まれる場合が多いです、学校法人の場合。そこが最終決定を持っていて、理事を解任できるんですが、逆ができないとなると評議員会が暴走する可能性あります。
 ですから、日本大学のようなところの、暴走した方が理事を辞めて評議員を目指して評議員の会長になったときに、誰もそれを止められなく可能性があるのが、今回の学校法人ガバナンス改革会議の最終報告の決定的な致命傷なんです。
 これを認めてしまうと、本当に暴走が止まらなくなると考えておりますので、やはりモニターをする、監査をする監事の意見をしっかり聞いて、理事会と評議員会がそれぞれモニターをする。本来協調すべきでありますが、意見が異なるときはモニターをして、お互いに監視をするという仕組みが必要だということをずっと申し上げております。これがいわゆる政治学におけるチェックアンドバランスです。
 ずっとデモクラシーの重視されてきたチェックアンドバランスです。。そのチェックアンドバランスがないような提案が、今回の学校法人ガバナンス改革会議の最終報告だということを申し上げている次第でございます。
 以上です。
【福原主査】
 ありがとうございました。相互に御質問あるいはこの機会にということで、それではまず、重永委員が、その後、あと関係して尾崎委員、どうぞ。
 重永委員から、まず。
【重永委員】
 ありがとうございます。2点ございますけれども、本日の回答ということではなくていいんですけれども、今後の方向性でちょっと議論をお願いしたいのが、一つは、尾崎先生、梅本先生のほうから、改革会議のほうの改革案、評議員会に最高の権限を持たせるということについて、私どもが前回あるいは今回申し上げたような懸念について払拭できるのかどうかということですよね。現行と実際上の運営がほとんど変わらないということが言えるのかどうかというところが、一つ今日お話を伺っていて感じたところです。
 それからもう1点は、規模の問題、いろんな先生方から出されていますけれども、文科省管轄の大学法人、それも大規模な法人と小規模な大学法人等あると思いますが、一番大きなところは大学法人と、高校以下だけを有する高校以下の法人、あるいは幼稚園の法人というものを分離して議論することというのはあり得るのかどうか、ここも私どもとしては、ちょっと今日の話から関心を強く持ったところでございます。
 以上2点でございます。
【福原主査】
 どうもありがとうございました。それでは、田中委員からの御意見に対するものでしょうか。尾崎委員、手が挙がっています。どうぞ。
【尾崎委員】
 田中先生からの御批判いただいたので、一言言っておかないといけないなと思って発言させていただきますが、福原先生よろしいでしょうか。
【福原主査】
 どうぞ。
【尾崎委員】
 株主総会とか取締役会、そういうふうに先生おっしゃるわけで、確かに株主というのはリスクテーカーであります。ですから、会社がおかしくなれば、株主は投資したものが回収できないという意味では、リスクと裏表になって会社のことを考えていると。
 しかし、だからといって全ての事項を決定できるというふうにはしていないわけです。上場会社などは全て取締役会が中心として経営をしておりまして、そしてそのリスクを株主は負っていると、最終的には負うと。その限りにおいて取締役を選任できるという関係が生まれてきている、ある意味でガバナンスにおける緊張関係というのでしょうか、権限移譲関係というのでしょうか、そういうふうな関係になっているわけです。
 ですから、ステークホルダーとして、評議員会が大所高所からアドバイスいただいている、結構なことだと私も思っておりまして、そういう評議員の方々がいらっしゃればよろしいと。そのアドバイスを受けながら理事会はそこで御説明されて、評議員会の御決定をもって「法人の決定」をすると言っているだけの話でありまして、重要事項というものをそこで決めておくという決めの構造の問題であると私は理解しているわけです。
 要するに株主がいるから、株主総会があるから、取締役会があるからとか、そういう話ではなくてコーポレーションという、これは株式会社と違ってそもそも法人という組織においては、階級構造というのでしょうか、決定のプロセスにおいて最終責任を負うのは誰ですかと、こういうことになってくるのだと思います。
 執行についての最終責任を負うのは理事会で、理事長である、そのとおりでございます。しかし、「重要事項」についてのある意味でリスク分散というとおかしいのですが、評議員会のほうも責任を取るというくらいのふるえをもって最終決定を、これは法人の最終決定ですので。ですから、基本計画を決定する、理事会が決定するのも結構、当然しなければいけないわけですが、その議案を評議員会にかけて、評議員会で大所高所から御意見いただいて、そして、突き返されるということもあってもいいのだと思います。
 しかし、突き返されても、理事会で決定すればそれでいいというのではなくて、やはり「法人の決定」という仕組みという点で構造的につくっていく。そのときに会社法というのはそういう構造がありますねということで、私、今申し上げた次第で、評議員会というのは何でもかんでも決められる組織にしてしまいますと、これはもう変な組織になってしまうわけですので、そういうことは言っていない。
 逆に言うと評議員の個人的責任というのは、この改革会議等でもやはり言っている議論がありますので、そういう人が果たして得られるかという議論が次に出てくるかと思いますけれど、機関構造的にいくならば、やはり理事会の暴走を止めるにはそこしかないという一つの方法です。監事が止めても別に構わないのですが、今日は監事の議論ありませんで、理事長が監事を選ぶというか、そのときも評議員会のチェックが入ってということなのでしょうけれど、監事の議論はちょっと別に置いときまして、評議員会はそうするという仕組みになっていると。
 理事の選解任についてどうして評議員会かといいますと、これも改革会議のほうでも透明性を確保した選定委員会みたいのをつくってはどうかみたいなことをちゃんと書いているわけで、つまり理事の選定プロセスの透明性確保が非常に重要なのだと。そしてそれも最終確認が評議員会でされていく。法人組織として評議員会で理事の決定をする。そうなりますとその理事についての選任権の裏に解任権もありますので、評議員会は理事が非常におかしなときは解任すると。しかし、一方的に評議員会が解任できるというシステムをしてしまうのではなくて、今言っているのはあくまでも構造的な話でございまして、解任事由についてどうするか、自由解任制がいいのかどうか、これなんかも別の議論でございます。
 ですが、構造的にいくならば、評議員会が全ての役員の人事権を持っていて、そしてそこでの決定をもって、理事長の正統性をそこから生まれてくる。ただ、逆に言うと評議員会の正統性はどうですかと、公益法人の方からの疑問が実はあることあるわけですけれども、仕組みとしては、分かりやすいということを申し上げた次第で、別に利潤が上がるか上がらないかとかそんなこと言っているわけではないわけでございます。
 そして、評議員会はあくまでも様々なステークホルダーの方が入っていくということはもう当然よく言われているとおりでありまして、学校というのは、大学というのは、そういう意味では昔から仲間意識というのでしょうか、そういうコミュニティーがあるわけですので、そういう意見を反映させながら、また地域の意見を反映させながら、評議員会が「法人の重要事項」の最終的決定する。具体的な執行は理事会であるというのが私の理解です。
【福原主査】
 どうもありがとうございました。メカニズム、意思決定のメカニズムですか。田中委員どうぞ。
【田中委員】
 尾崎先生のおっしゃっていることに反論するつもりはございません。尾崎さんがおっしゃっている構造はまさにおっしゃっているとおりで結構なんですが、ですから、私どもは、特に私立大学連盟はその評議員会の役割について、抑えようということを申し上げているわけじゃないんです。
 例えば本日のこちらの事務局で用意していただいた資料の論点の3ページ目、2ポツ、評議員・評議員会の(1)の2-2を御覧いただきますと、画面共有していただいても結構ですが、「大臣所轄学校法人等の評議員会について、2-1に加えて、意見陳述の対象のうち一定の重要事項(寄附行為の変更、任意解散、合併、中期的な計画の作成又は変更、報酬等の支給の基準の策定又は変更)を決議・承認等の対象とする特例を設けることをどう考えるか」と言っていらっしゃいます。これは非常に妥当だと思います。
 これを評議員会が決めるということ、そして、提案権は理事会にあると思いますので、理事会が執行機関ですので、意思決定をし、提案をし、ですから、内閣と同じでありますので、評議員会は国会のように承認するかどうかということであります。それは結構なんですが、例えばこの中でやはり一方通行であることが問題だということです。例えば理事会が競争入札をして、大規模な支出を決める。大がかりな工事、80億とか100億かかるような支出の工事を決めて、競争入札として決めたものを評議員会が否決し、その評議員会の会長を務めている建設会社に受注すれば質が高いという理由で、その公募のときの仕様にかなっているのは、自分の提案であるということで理事会の結論を覆す提案が出てきたとします。そのときに、評議員全員がその会長に忖度してしまって決めてしまったとすると、それを止める仕組みが今回の学校法人ガバナンス改革会議の最終報告にはないということを私は申し上げたのです。それ以外の意思決定に関しては尾崎先生のおっしゃるとおりでよろしいと思うんです。ただ、その一方通行の決定権を定めていることに致命的な欠点があるんじゃないですかということを申し上げています。
 以上です。
【福原主査】
 どうもありがとうございました。メカニズムやそのスキームとしての意思決定の形と、それとガバナンスの仕組みというものの、そういった点をそれが何に由来しているのかということを私たちが理解し、また、社会にも理解していただくその根拠、論拠を有識者の方々も探しあぐねていただいているのではないかと思います。さて、理論と実務、また、現状と将来、そういったものが交錯する御議論の中でいろいろ意見、あと1、2、ございましたらどうぞ。有識者のほかの方でも結構ですし、いかがですか。
 佐野委員どうぞ。
【佐野委員】
 今の議論といいますか、やり取りを伺っていて多分ストンとこない人が多いのかなと思ったところは、決定ということ、議決機関の決定ということなのか、それと同意なのかというその辺の区分がちょっとつきにくかったのかなという印象を持ちました。つまり重要事項は最終的に評議員会の決定だということが、受け取りようによっては責任を伴わない決定をして、対外的に責任取るのは理事長、理事会なのかというところ、その辺の結びつきが今の御説明だけではちょっと分かりにくかったので、評議員会がその重要事項に限ってですけれども、最終的な意思決定をする機関のようになってしまうのか、責任はどうなっているのか、その辺がちょっと分かりにくかったように思うので、そこにフォーカスして議論が今後そのテーマであるんだとすれば、やはりその役割と責任についてセットでお話しいただくと分かりやすいのかなという印象を持ちました。
 以上です。
【福原主査】
 どうもありがとうございます。財団法人等ですと設立時評議員の制度があって、それが寄附行為という名前の下に様々なその法人のリソースを拠出している人たちで寄附行為、そちらのほうは定款という名前に変わっていますけど、それをつくっていますから、この法人の発生時には創立者の意見やその拠出者の意見としての組織、つくった組織とその活動に関する根本規則という意味での寄附行為というのがあるので、これの管理人としての評議員会のグループがあって、それを理事会に、それを経営してくれる人を選んで委ねていると思います。ですから、評議員かつ理事という人が多かったのは確かです。そういう発生時の事情がなお残っている、それが維持されている学校法人もあれば、それからもう創立者や建学の精神といったものが、どなたか属人的なものから離れて存在するようになって、評議員会というのがまた別の、今、田中先生が御懸念されたような形を取り始めてしまっている場合もあるようです。そのような中で、果たして評議員の権限はどうなのか、評議員会にはどういう正当性に基づいてどういう権限を与えるのかということが、御意見聞いていても、たいへん異なってくるようであります。また、大学設置の学校法人とそれ以外とでも大きく異なっているということも見受けられるところでございます。
 ほかに、ありますか。どうぞ尾崎先生。あとでまた御意見をいろんな形で出していただきますので、ポイントを絞って御意見をどうぞ。
【尾崎委員】
 短く。評議員の責任について今日、私、申し上げなかったのは2-11、12で議論すると思っていたから、申し上げておりません。これとセットです。これとセットにならないとおかしい、これだけです。
 それと議事録を置くべきであるというのは、田中先生の危惧はそういう議事をしたということは議事録で明らかにし、問題のある学校法人であるということがそれで逆に明らかになるのではないかと思っております。
【福原主査】
 ありがとうございました。期せずして、早稲田大学で御議論いただいたようでございます。それはそれとして、さて、そこで今日お忙しい中お約束していただいた時間が来ており、今日も先ほど申し上げましたように、今日の設定したところで何か合意を得るというわけではございませんので、これまでの御議論、もうまとめる時間もございませんけれども、幾つかの点がフォーカスされたのではないかと思っております。
 とりわけ、先ほど私が申し上げたような形で、評議員会という機関が意思決定の機関としてどうあるべきかというのと、それから、ガバナンスの仕組みの中でどう位置づけられるべきであるのかということが理論と実務それぞれの観点で、バリエーションがあることも確認がなされたところでございます。
 そういう中で、評議員会の機能の在り方、これらは今後の監事との連携や会計監査人制度の導入の在り方とも深く関わってくるわけですが、今日はそこまでは立ち入りませんでした。
 そこで、次回は2月の22日を予定しておりますが、そこでは、一定の方向を得たいと思います。今日は自由に意見を出していただいたばかりですが、皆さんから、資料をよく読み込んでいただいて、御意見いただいたかと思いますが、改めて配信しております資料、また今日出た意見によって、いろいろな思いが交錯していることかと存じますので、22日に向けて、今日言い足りなかったとか、やはりこうではないかという御意見等、できるだけ事前にお寄せいただくと幸いです。それを見て、今後、22日に発言をしていただく方の御指名もしやすいと思いますし、また、そこで関心のあるところをフォーカスして、進行させていただきたいと存じます。次回22日には、ある程度の成果を期待して、議論をさせていただきたいと思っております。
 本日は、そのようなことで、大変貴重な意見を相互に認識し合ったということで、私の方としては、閉じさせていただきます。次回以降の会議に生かして議論を深め、進めていきたいと存じております。
 また、有識者の先生方には、専門的知見をお尋ねする機会を持ちたいと存じますので、よろしく御協力をお願いしたいと思います。
 では、本日の委員会は以上といたしますが、次回の会議につきまして、事務局から案内をいたします。よろしくお願いします。
【相原補佐】
 既に主査からもお話ありましたが、第3回会議は資料5にございますとおり2月22日火曜日10時から12時半。また、第4回会議につきましては、3月9日13時から16時ということで予定をしております。
 本日も大変短期間の中で、また、学校関係者におかれては特に入試等も忙しい時期でございますが、御意見をこのようにまとめて提出いただきましたことを改めて、御礼を申し上げます。
 また、これらの意見追加、あるいは更新ということもあろうかと思います。その辺りもまた担当のほうに御相談いただければと思っております。
 以上です。
【福原主査】
 どうもありがとうございました。それでは、本日の会議につきましては、以上で終了いたします。
 時間の関係で言い尽くせなかった事柄がある場合、また、委員会の運営方法その他につきましても、何なりと御意見、書面にて、メールにて事務局にお送りいただければと思いますので、よろしく御協力のほどお願いいたします。どうもありがとうございました。

 ――了――


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