学校法人制度改革特別委員会(第1回)議事録

1.日時

令和4年1月12日(水曜日)15時30分~17時30分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 委員会の運営規則等
  2. 学校法人制度改革の検討に当たっての経緯及び課題
  3. 学校法人制度に関する意見交換
  4. その他

4.出席者

委員

福原主査、米澤委員、尾崎委員、梅本委員、佐野委員、西岡委員、田中委員、小原委員、川並委員、嵯峨委員、重永委員、尾上委員、福田委員

文部科学省

義本事務次官、森高等教育局私学部長、滝波高等教育局私学部私学行政課長、相原高等教育局私学部私学行政課課長補佐

5.議事録

<議題1:委員会の運営規則等>
 ・事務局から、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会長の指名により、福原委員が本会議の主査を務めることとなった旨、説明があった。
 ・事務局から、資料2の学校法人制度改革特別委員会運営規則(案)について説明があり、原案の通り決定された。
 ・運営規則の公開に関する規則に基づき、この時点から会議が公開となった。

(プレス入室)

【福原主査】
 それでは、第1回の学校法人制度改革特別委員会につきまして、これより公開の議事に入りたいと存じます。
 議事に入るに先立ちまして、事務次官より皆様に挨拶をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【義本事務次官】
 事務局の文部科学省を代表しまして、一言御挨拶させていただきたいと存じます。着座にて失礼いたします。
 13人の委員の方々におかれましては、このたび大学設置・学校法人審議会学校法人分科会学校法人制度改革特別委員会の委員に御就任いただきまして、誠にありがとうございます。また、本日の第1回会合には、Zoomでの参加も含めて御参加いただきまして、誠に御礼申し上げたいと存じます。
 学校法人のガバナンスにつきましては、また後ほど事務局から御説明させていただきますけれども、これまでの累次の法改正によりまして、時代の要請に合わせてガバナンスの強化が図られてきたところでございます。他方、国会の附帯決議ですとか、あるいは骨太方針の閣議決定によりまして、他の法人制度と同等のガバナンスを発揮するための改革の検討が要請されているところでございます。
 これまで学校法人ガバナンス改革会議等におきまして、専門家によります審議を重ねた結果、理事に対する監督、牽制を重視し、評議員会を最高監督・議決機関に改めるなどの提言をいただいたところでございますが、その一方、教育研究への影響などにつきまして、私学関係者の方々から強い懸念も寄せられているところでございます。
 このような背景から、本特別委員会におきましては、これまでの議論の経緯等も踏まえまして、ゼロベースでの議論を行うということではなくて、これまでの議論の蓄積を参考にしながら、昨年の12月21日に策定いたしました私立学校ガバナンス改革に関する基本対応方針に示された4つの論点を中心にしまして、関係者の丁寧な合意形成を図る場として設置されたところでございます。委員の皆様方におかれましては、改革の経緯や趣旨について御理解いただくとともに、学校法人の沿革や多様性にも目配りしながら、バランスの取れた議論を展開いただきまして、合意形成の道筋をつけていただきますよう、この場をお借りしまして、お願い申し上げたいと存じます。
 本日から会議始まりますけれども、相当密な形で議論を進めますので、いろいろな形で日程をお繰り合わせいただくことをお願いいたしまして、御挨拶とさせていただきます。
 本日からよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【福原主査】
 ありがとうございました。
 続きまして、ここで私から一言挨拶申し上げたいと存じます。着座のままで失礼をいたします。
 このたび、大学設置・学校法人分科会学校法人制度改革特別委員会の主査を務めさせていただくことになりました、福原でございます。皆様、どうぞよろしくお願いをいたします。
 学校法人のガバナンスにつきましては、国会の附帯決議や閣議決定を踏まえまして、他の法人制度を参考として、業務執行の牽制や、違法状態の是正の枠組みにつきまして、文部科学省に設置された有識者会議で検討がなされてきたところでございます。
 昨年取りまとめられました学校法人ガバナンス改革会議の報告書に対しましては、様々な懸念が寄せられたということを踏まえまして、文部科学省より今後の検討の方向性や進め方につきまして、昨年12月21日に、私立学校ガバナンス改革に関する対応方針が公表されたところでございます。
 私といたしましては、昨今の不祥事事案も踏まえますと、適切な制度設計を行いまして、一層のガバナンス改革を推進することは、引き続き重要な課題だと考えております。同時に、不祥事防止にとどまりませず、学校法人の沿革や多様性に配慮して、学校法人組織を強靱にして、教育、研究、社会貢献の機能を高めることが、真に実効性のある改革につながると考えているところでございます。
 本委員会は、様々な分野での知見をお持ちの有識者の先生方の御意見、また、現場での運用まで見据えた、各私立学校関係団体の御意見を基に、公開で議論を尽くし、広く社会に受け入れられる提言をまとめていきたいと考えております。その際、ゼロベースで議論を行うというのではなくして、これまでの議論の蓄積を踏まえながら、改革に関する対応方針で示されました検討の方向性に沿って、評議員会の在り方をはじめとする各論点について、冷静に議論を積み重ねながら、合意形成を丁寧に図っていきたいと存じます。
 時間的にも、内容的にも、極めて困難な任務となることが予想されますけれども、委員の皆様の御協力をいただきながら、精力的にこの次期審議を進めてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしく御尽力、御協力のほどお願いを申し上げます。
 私からは以上でございます。
【相原補佐】
 主査、ありがとうございました。
 では、カメラ等の撮影はここで終了させていただきたいと思います。関係者の御退室のほう、よろしくお願いいたします。

(プレス退室)

<議題2:学校法人制度改革の検討に当たっての経緯及び課題>
【福原主査】
 よろしいでしょうか。それでは、用意いたしております議題2に入りたいと存じます。
 まず、本日配付されております資料につきまして、事務局から確認かたがた、御説明をいただきます。よろしくお願いします。
【相原補佐】
 それでは、配付資料の確認でございますが、本日の資料は、議事次第に記載しておりますとおり、資料の1から6まで、そして参考資料の1から3まで、いずれも公表資料でございます。また、それ以外に机上資料ということで、私立学校法、社会福祉法等の法律の関係条文も別途お配りさせていただいております。
 以上でございます。
【福原主査】
 それでは、学校法人の制度改革の検討の経緯及び課題につきまして、ここで事務局から説明を得たいと思います。よろしくお願いいたします。
【相原補佐】
 それでは、資料を少し飛びながらになりますが、御説明のほう、まず事務局よりさせていただきます。まず、資料の5をお願いしたいと思います。資料5の2ページをお願いします。
 これまでの検討の経緯といたしまして、まず、私立学校法につきましては、第1条の目的にもございますが、私立学校の特性に鑑み、運営の自主性を重視するとともに、幅広い意見の反映を通じた公共性の高揚というのを目的としているところでございます。先ほど挨拶の中でも紹介あったように、これまでの法改正を通じて、ガバナンスの強化というのも図られてきております。
 一方で、国会の附帯決議、閣議決定によりまして、不祥事防止のより実効性のある措置、社会福祉法人等と同等なガバナンスを発揮するための改革の検討というのが要請されてきているという状況でございます。
 次の3ページをお願いします。
 ここにこれまでの附帯決議、それから閣議決定、骨太の方針2019、あるいは骨太の方針2021ということで、抜粋を掲載しているところでございます。ここでは、骨太の方針2019に基づきまして、まず、薄い緑色の箱1つ目になりますけれども、学校法人のガバナンスに関する有識者会議という専門家の検討が、まず令和2年から1年以上かけまして、ここは大学を設置する法人というのを念頭に置いた議論がなされまして、今後の基本的な方向性について取りまとめをいただいたということでございます。そして、骨太の方針2021に基づきまして、2つ目の薄い水色の箱でございますけれども、昨年7月から5か月にわたりまして、学校法人ガバナンス改革会議を開催いたしまして、公益法人、社会福祉法人等の他法人との比較という部分から、特に法制化が必要な事項というのを中心に、新法人制度の改革案や規模等に応じた取扱いについて、専門家の議論をいただいて、昨年12月3日付で改革会議の報告書というのをお取りまとめいただいたという経緯でございます。
 資料3-1を御覧いただきたいと思いますが、こちらが最初に2019年の骨太の方針に基づいて開催された、有識者会議の状況ということでございます。
 こちらの会議につきましては、次のページになりますが、大きく大学を設置する法人の基本的な方向性ということで、取組のほうを示していただきますとともに、制度の詳細、運用、あるいは学校種等に応じた検討というのが、文科省に検討を要請されたというところでございます。
 資料の3-2に、この取りまとめの本体をおつけしております。こちらに考え方、詳細等が示されておりますところ、また後ほど御参照いただければと思います。
 次に資料の4-1をお願いいたします。
 こちらが、骨太の方針2021に基づきまして、昨年7月から12月にかけて開催いたしました会議でございます。こちらでは、会計士、弁護士等の専門家、あるいは他の法人制度の専門家等を中心として、法制化する事項を中心とした検討というのをいただきまして、次の2ページ目でございますけれども、学校法人ガバナンスの抜本的改革と強化の具体策ということで、提言をいただいたということでございます。
 この主な内容は、こちらにございますように、例えば評議員会を最高監督・議決機関とする。あるいは一定の重要事項について、評議員会の議決を要することにする。理事会・理事による評議員の選任・解任は認めない。あるいは、現役あるいは退職後5年までの理事や教職員と、評議員の兼任は認めない、こういった評議員、評議員会を中心としたガバナンスへの転換という提言等をいただいておりましたところでございます。これに対しましても、先ほど御挨拶等も賜りました中でもございましたが、様々な御懸念というのが寄せられたという状況もございました。
 そのような情勢を踏まえまして、昨年12月21日付で、次にまた資料の5に戻っていただきたいと思います。1ページ目お願いします。
 12月21日付で、私立学校ガバナンス改革に関する対応方針というのを文部科学省として策定、公表させていただいたところでございます。文科省としては、このような状況を踏まえまして、今後の検討の方向性ということで、赤枠に囲っておりますところですが、監事、会計監査人、内部統制システムといった在り方、理事の解任、理事長の解職といった在り方、評議員会・評議員の在り方、そして子法人の扱い、過料、刑事罰といった私学法の中での位置づけ、このような論点というのを一定の方向性を持ってお示しし、これらにつきまして、次の青い箱、進め方の箱でございますけれども、関係者の合意の形成を丁寧に図るということをもって、年内の結論ということといたしまして、それを踏まえて、今この審議会におきまして、検討を開始したというところでございまして、検討の結果、成案を得られ次第、速やかな法案の提出を目指すということで、ここで掲げておるところでございます。
 このような経緯の中、先生方には、改革の具体的な方向性、法案の中身の方向性ということについて、どのようなことが実際に実施可能であるのかという部分を、率直に専門家の御意見、現場の御意見を踏まえて検討を進めてまいりたいと思っておりますので、また事務局のほうも、材料のほうを提供していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【福原主査】
 ありがとうございました。
 それでは、本日は初回キックオフということでございますので、私のほうから、今後のこの委員会の進め方について、提示をさせていただきたいと思います。
 まず、資料5を改めて御覧いただきたいと思いますが、こちらに示されております検討の方向性における主な4つの論点につきまして、次回、第2回以降、各回に1つずつ取り上げて議論をしていく予定としております。
 次回、第2回の会議に先立ちましては、昨年12月の学校法人ガバナンス改革会議報告書を参考としつつ、その見直しを含め、有識者委員とも相談をさせていただいた上で、各論点の検討の方向性に即した制度の具体化に向けた考え方を、各私学団体に事務局から意見照会をしてもらう予定でおります。提示された論点ごとの意見照会事項につきましては、後日事務局より、別途連絡を致す予定でおります。そこで、各私学団体におかれましては、提示されました論点ごとの意見照会事項を、組織内であらかじめ意見集約を図った上で、この特別委員会の会議に臨んでくださるようお願いをいたします。
 また、本委員会の次回以降の各会議では、各委員間で、各論点についてどこまで実現可能かを議論していくことで、丁寧な合意を図っていければと考えております。以上のような形でこの特別委員会を進行させていただきたいと思いますので、あらかじめよろしく御承知おきいただきたいと存じます。ありがとうございました。

<議題3:学校法人制度に関する意見交換>
【福原主査】
 それでは、議題3といたしまして、学校法人制度に関する意見交換の時間を設けたいと存じます。初回ということでもありますので、それぞれの専門のお立場ですとか、私学団体としての考えにつきまして、忌憚のない自由な御発言をいただければと思います。
 各委員におかれましては、これから順次、まず私学団体の代表者の委員の方々から順次、数分以内の時間で御意見、御所見を述べていただきまして、続いて有識者の皆さん方からも御意見をいただいてまいりたいと存じております。意見に限らず、質問でも構いませんので、発言をいただければと思います。
 なお、細部の各論にわたる御意見ももちろん出るかとは存じますけれども、本日はそれに対して、一問一答で事務局より何か返答するという形ではなくして、皆さんの団体、また、それぞれのお立場からの御意見を本日は承って、2回以降の当委員会の審議の進行に十分注意をさせていただくための意見交換ということでございますので、どうぞ今後の特別委員会の進め方を模索する意味でも、貴重な御意見、御経験に基づく御所見を開陳いただければと存じます。
 それでは、各私学団体より、名簿の順にお願いをいたします。
 冒頭恐縮でございますけれども、日本私立大学連盟の会長であられる、早稲田大学の総長、田中愛治先生に御意見いただきたいと。よろしくお願いいたします。
【田中委員】
 私立大学連盟会長の田中でございます。それでは、せっかく機会を頂戴いたしましたので、手短に意見を申し上げます。
 私学にとって、そのガバナンスを見直すというのは、喫緊の課題であると存じております。昨今、世間を揺るがしているような問題もございまして、やはり私学は、誰が理事を務めていても、誰が評議員を務めていても、きちっとした透明性のある意思決定をし、会計的にも公明正大に行うという責任を負っていることは論を待たないと思っております。私学といっても、大体ランニングコストの10%は、国民の税金であります私学助成の経常費補助をいただいておりますので、そういう意味では社会全般に対しても責任がございます。
 ただ、私学の場合は、やはり最大の説明責任を負っているのは、学生さん、もしくは生徒さんに対してであり、また、その保護者の方たち、学費を払っている生徒さん、学生さんとその保護者の方たちに対して、最大の説明責任を負っていると思っております。それをはっきりさせる必要があると思っております。
 その中で、例えば理事会が暴走するとか、判断を間違う、利益相反があるにもかかわらず意思決定をするというようなことがあった場合に、どのようにそれを食い止めるかというのは、もちろん評議員会にモニターしていただく必要はあると思うんですが、評議員会の場合はどうしても開催のインターバルが長いんです。そんな頻度がなく、2か月に一遍ぐらいのタイミングで開催されています。また、評議員の構成員は、大体本務の御職業をお持ちで、片手間で大学や高校、中学、小学校を見ているわけでありますので、その教育について現場の声を聞くチャンスが少ない。非常に限られている。とすると、ここで大事なことは、ガバナンスには2つあると思うんですが、守りのガバナンス、今申し上げたような不祥事を起こさないという守りのガバナンスもありますけれども、迅速な意思決定をする攻めのガバナンスも必要だと思います。特に次世代の人材を育成するという使命、ミッションを負っている小、中、高、大学、幼稚園も含めてですが、の学校、教育機関ですね。教育機関は、最先端の教育の在り方、学問の進め方を見ながら、教育を施して人材育成しなければならない。そのためには、かなり迅速に意思決定をしなきゃならないです。特にコロナのような不測の事態に直面したときとか、東日本大震災のような事態に直面したときには、相当迅速に意思決定をする必要がございます。そうすると、評議員会に全ての意思決定とか、最高の議決の権限が集中してしまいますと、明らかに攻めのガバナンスが落ちるということになります。
 片や守りのガバナンスも必要ということになりますと、やはり理事会の動きをモニターするものが必要だということで評議員会になると思いますが、もし評議員会に権限が集中してしまえば、恐らく、私は政治学を学んでまいりましたけれども、権力を狙う人物というのは、必ずその権力のあるところのポストを狙いますから、評議員会の会長などのポストを狙っていって、評議員会の会長を得れば、自分の思うがままにその学校も私物化できると思うわけでありますので、それも許してはならない。ですから、評議員会に対しては理事会がモニターし、理事会に対しては評議員会がモニターする、その判断基準はどこがするかというのは、やはり監事、監査をされる監事の権限を強化するべきだと思います。監事の方がアドバイスをし、これは法令違反であるとか、規約違反であるとか、社会通念上規範を逸脱しているということを指摘していただいて、理事長、理事に問題があれば解任の動議を出していただき、それを理事会が解任できなければ評議員会が解任すると。同じことは評議員に対しても適用すべきで、評議員の中に、社会規範に逸脱や法令違反、規約違反がある場合には、監事の御指摘により、評議員会自らが解任できなければ理事会が解任するというような、相互にモニターする権限が必要だと思っております。やはり攻めのガバナンスと守りのガバナンスの双方が必要だというふうに考えておりますので。やはり評議員の方というのは、日々の教育にはほとんど携わっていらっしゃらない、研究教育に携わっていらっしゃらないので、それをモニターするということが大事だと思います。
 それからもう1点申し上げると、理事長と学長を分ければいいということにはならないと思っております。教育上何が重要かということを考えるべきです。もちろん学校法人によって、理事長と学長が分かれている場合と同一の場合とあると思いますが、それぞれの特徴があると思います。ただ、早稲田大学の例を申し上げると、イェール大学のdeputyprovostであった方、亡くなられたんです。11月に急逝されたのですが、その方に1年半ほど学外理事をお務めいただき、毎月1回はイェール大学から飛んできていただいていました。その方に伺うと、イェール大学もハーバードも、学長が理事長と同じ権限を持っていて、イェールの歴史上、研究教育に不案内な経営者が学長になったことはないと言っていました。全員がその学長専務ということはなく、研究教育をしてきた者しか学長をやらなかったということを言っていました。
 そうではない私立大学がアメリカにはございます。学長専務で、30歳代から学長専務のアドミニストレーションをやっている大学もアメリカにはございますけれども、超一流大学では、やはり教育研究が分かる者が運営をするということをしてきたということがございますので、そういうことも視野に入れていただきながら、御議論いただければと思っております。
 以上でございます。
【福原主査】
 ありがとうございました。もう次回以降の御議論に、また反映させていただくべき御所見も含まれておりました。本日は初回ということでございますので、改めて各論等には御意見を賜ってまいりますので、本日は疑問に思われるようなところ、また、今後の委員会の執行に当たって、私、また事務局において配慮すべき点など、御示唆いただければとも思います。
 では、続きまして、日本私立大学協会の会長で、玉川大学の理事長・学長をお務めの小原芳明先生、よろしくお願いいたします。
【小原委員】
 福原先生、ありがとうございます。それでは、私のほうから何点か述べさせていただきます。新聞報道には、提言に対して私学が反発したということが書かれておりましたけれども、その反発した理由を幾つか述べさせていただきます。
 まず提言に至るまでの手続論、これが我々にとっていかがなものかという意見を持った次第です。
 次に、よく使われている税制優遇を受けていると言っていますけれども、同じ一条校である国立大学、そして県立大学が受けていない税制優遇というのは、一体私学が何を受けているのかということが明らかにされていません。
 次に補助金ですが、これは英語でいうとtaxexpenditure、プラスでもマイナスでも、何の含蓄もない表現です。ところが、日本語では「隠れた補助金」が使われています。その「隠れた」というところに、何か気まずいイメージというのを抱かせております。それを受け取っているのが理事長、理事会で、その根底に性悪説的な考えがあり、今回の提言が出されたのではないかといったことに我々は反発した次第です。
 また、私学の不祥事、たしかありました。しかし、全体の数からすると、それは果たして言えることなのか。よく言われるように、木を見て森を語る的な、非論理的な議論がなされてきたのではないかといった観点から、私学が反発したのです。
 私どもは、令和元年に改正された私立学校法に基づいて、令和2年度からそれに従っていろいろ制度改正を行ってきて、今、まさしくその下で運用を始めたところです。そのときの附帯事項に、法律の施行後5年をめどとしてこれを見直すというようなことがあります。今回の提言は、5年もたたないうちに見直されているということにも、我々は反発してきました。これは朝礼暮改です。したがって、まず最初に我々の要望することは、今の私立学校法に基づいて運用をして、その成果を見るということです。
 それから2つ目に、私立学校には、大学だけの学校法人もありますけれども、それ以外の学校種を抱えている学校法人もあります。数にしますと、7、992法人が私立学校法人ということになっております。これを大学、特に今回の提言の内容を見ますと、いわゆる都市型、大手の大学ならば適用可能なような内容です。しかし、これ私学全体を見ますと、幼稚園とか中学校だけ、高等学校だけといろいろなものがありますから、そういったものに対して、大学を持たない私立学校に対しても一律に適用するということは、大混乱を来すんではないかなということから、我々は大きな懸念を抱いている次第です。
 今回新たに制度設計をしていくことになりますが、その際に私がお願いしたいことは2点あります。新たな制度は、果たしてviableで、かつconduciveかということの2つの観点から、審議を進めていただきたいと願っております。viable、すなわち新しい制度というものが、私立学校、学校教育に運用可能なのか否かです。
 今回の提言のときのヒアリングでありましたけれども、全国知事組織のほうからは、提言内容は「絵に描いた餅」と、運用不可能性が指摘されておりました。ですから、新たに審議会で検討するときも、果たして現実的にそれがviableなのか、運用可能なのかという観点からも、しっかりと審議を進めていきたいと考えております。
 もう一つのconduciveというのは、いろいろな活動に資するかということです。私立学校も教育を行っており、公共性のある活動です。しかし、幼稚園から高等学校の教育活動に資する体制になるのかどうか、あるいは大学、短大にとっては、教育研究に資する体制になるのか、この辺り、活動に資する体制なのかの観点から検討をお願いしたいと考えております。
 特に提言にありましたように、学外者による評議員、これが最終議決機関ということになると、果たして学校に専任でいない人が、教育活動、あるいは研究活動にどれだけ資する意思決定ができるのかどうか、我々にとって非常に疑わしいと考えております。加えて、どういう人が評議員になるのか、学外の人なら誰でもいいのか。ある程度の資格が求められてくるわけですけれども、そういった資格に見合う人材が全国津々浦々いるのか。今言いましたように、ほぼ8、000の学校法人がいます。最低3名の評議員であっても、仮に平均5名とすると、これで4万人の外部の評議員を探さなければいけない。果たしてこれは実現可能なのかどうか。こういうことを考えると、12月の提言は明らかに絵に描いた餅以外何でもないということを我々は考えている次第です。
 したがいまして、今回の審議におきましても、このviable、それからconducive、この2つの観点から審議をお願いしたいと願っております。
 以上です。
【福原主査】
 ありがとうございました。問題提起等頂戴いたしました。
 それでは、続きまして日本私立短期大学協会常任理事で、聖徳大学短期大学部理事長・学園長・学長をお務めの川並弘純先生から、意見の御開陳をいただきます。よろしくお願いいたします。
【川並委員】
 日本私立短期大学協会常任理事の川並でございます。このたびはこのような形で会議を開いていただきまして、ありがとうございました。私は、これから先4つの論点について丁寧な議論を1つずつ行うということでございますので、個々の中身というよりは、アウトラインの話をさせていただきたいと思います。
 学校法人を取り巻く環境というのは、やはり建学の精神、そして規模、そして所管、こういったところで分けられる部分があるのではないかと思います。もともと私立大学、私立学校というのは、教育の理念に燃えた方々の寄附によって設立されたものであり、その建学の理念に支えられてつくられてきたものでありまして、そのバックボーンを考えるに、画一的に全て切りそろえればいいのかということを考えなければならない、一番大事なところではないかと思っております。
 また、規模でございますが、都心の大きな大学から地方の中小規模の大学、短期大学、または小学校、中学校、高等学校、幼稚園とあるわけでございます。特に、我々短期大学でありますが、地方の高等教育を長い間支えてきた、そういう自負があるわけでございますけれども、その短期大学の規模というのは、往々にして小規模でございます。そういった学校を大規模の都心の大大学と並べて論ずることがいいのかどうかも含めて、議論をさせていただけたらありがたいと思っております。
 また、所管でございますが、大学法人並びに短期大学法人、高等専門学校は文部科学省の所管でございますけれども、それ以外の学校法人は、地方公共団体の所管になっております。文部科学省の所管の中で横並びという形になるばかりではなく、地方公共団体の所管になりますと、それぞれの地方公共団体によって、その考え方や学校法人の取扱い方も微妙に変わってきます。果たして所管でくくることがいいのかどうかということも含めて、同じ学校法人の中である程度そろえるべきところはそろえていく、または、それぞれの地域に根差したものとして、地域の特性を生かすところは生かしていく、こういうことが必要になってくるのではないかと思っております。
 そして改革会議の中では、企業のガバナンス、ないしは公益法人のガバナンスと比較してという話が出ておりましたが、本当にこれをイコールで結びつけて比較できるものなのかということも、ぜひ改めて検討をさせていただけたらありがたいと思っております。
 ガバナンス・コードにつきましても、定めよという話で我々作業を進めたところでございますけれども、コーポレートガバナンス・コードは、全ての企業に画一的に課せられたわけではなく、それぞれの事情に合わせて課せられておりますが、学校法人では横並びにとなっていることも、議論が整理されていない部分で、形だけが進んできたのではないかと感じられました。特に改革会議では、非常に乱暴な議論と言っては何ですけれども、私どももヒアリングに参加させていただきましたが、丁寧な会議を行っていただけたのかどうかついては、甚だ感じる部分がございました。このたびは丁寧な議論を尽くし、合意形成をされていくということでございますので、我々も真摯にこの会議に向かわせていただきまして、議論を尽くさせていただき、学校法人のこれからのあるべき姿というものを考えてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【福原主査】
 ありがとうございました。
 続きまして、日本私立中学高等学校連合会の常任理事で、学校法人藤華学院理事長をお務めの嵯峨実允委員より御意見賜ります。よろしくお願いいたします。
【嵯峨委員】
 よろしくお願いします。私ども中高法人としては、現行制度のままで問題ないと考えております。まず、近年でいいますと、平成16年に一度改正がございまして、その後、平成26年の私立学校法の改正では、所轄庁による報告検査や役員の解任勧告などの仕組みを整備されており、所轄庁がそれを活用をし切れていないのではないかと今、現状では思っております。
 また、令和元年の私立学校法の改正では、監事機能が強化され、中高法人で取り組んでいるところである附則第13条では、政府は、この法律の施行後5年をめどとして、私立学校法の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするとされており、まだそれがたっていない時点でこのような討論が行われる、ガバナンス改革会議というものが行われたこと自体に、私どもとしては非常に遺憾な思いであります。
 それから、私立学校の、やはり基本は、私も寄附行為で成立していると思っております。なので、これを定款に変更するということは全く反対でございます。私自身、明治初期から続く日本を代表する企業にも所属していたことがございます。ですが、株式会社と私立学校というのは、もう存在意義も使命も全く違うふうに私は理解しております。
 また、ガバナンスを社会福祉法人とか大企業並みにしたところで、不祥事がなくなるということにはつながっているとはとても思えません。昨今でも大企業におけるとか、社会福祉法人も調べれば出てきてしまいますけれども、いろいろなところで多様な問題はたくさん起きております。それはまた制度の問題というよりは、法律違反を違反として取り締まるべきで、制度の、この学校法人の制度の問題ではないというふうに私たちは理解しております。
 また、大学法人と、やはり中高以下の法人というのは全く規模が違い、本当に幼稚園なんか、私どもの学校に幼稚園も附属でついておりますけれども、小さい幼稚園に近所なんかであるところですと、もう1学年が10人とか、10人いないとかいう単位の幼稚園もございます。こんなところに評議員会だ、理事会だというのを建前のごとくやったところで、これができるとは、全く実現できるようには思えません。それと費用的な問題からいっても、そんなもの負担し切れるということも、まず不可能だと思います。
 また、先ほど違う方もちょっと言っていらっしゃったんですけれども、やっぱり教育現場は今コロナ対策もございます。やっぱりスピード感を持って対応していかなければならないときに、なかなか集まれない評議員会とかが最高決定機関とかになるということは、教育のスピード感や時代におけるあれには本当にマッチしているのかと言われれば、私はこれは全く逆行しているとしか思えません。また、そうですね、評議員会とかに全く知らない方が入るというよりは、やはり卒業生なり、その学校に関わってきた人が入るというほうが理にかなっているとしか思えません。
 それでまた、本当にいろいろな意味で、これから会議をしていく中で、そういう意見も私も言おうかなと思ってはおるんですけれども、やはり悪意を持った人が本当に入ってきたら、これ本当にどんな制度であれ、絶対に完璧ではないので、これは相当の混乱と、勤めている方々の生活にも関わるような事態も起きかねないというふうに私は理解しております。
 本当に、これからこの会議をやっていく上で、また皆さんの御意見を聞きながら、よい方向に持っていきたいと思いますから、今後ともよろしくお願いいたします。
【福原主査】
 ありがとうございました。
 続いて、日本私立小学校連合会の会長で、前東京都市大学附属小学校校長の重永睦夫委員より、御意見いただきます。よろしくお願いします。
【重永委員】
 重永でございます。どうぞよろしくお願いいたします。この特別委員会を設置していただきまして、福原先生はじめ、皆様に誠にありがたく感謝申し上げます。本日の意見表明に当たりまして、私からは、私立学校の活力というのは一体どこから出てくるのか、その活力をそぐような改革はしてはならないというようなことについて、少し歴史的なことにもなるんですけれども、私立小学校の観点から、まず話をさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 私立学校というのは悪者ではなくて、理事長が悪いことをするというようなことが可能性として大きく含まれているというようなことではなくて、日本の近代教育の始まりから公教育を支えてきたという点について、最初に話したいと思います。
 私立小学校というものについて、2つの点を申し上げておきたいと思います。1つは、釈迦に説法を申しますけれども、明治5年に定められた学制施行の初期におきまして、全国で1万2、000半ばを超える小学校がございました。そのうち3分の1以上、4、599校と言われていますけれども、それは私立小学校でございました。民間の力を借りなければ、学制の施行は無理だったということでございます。ただ、時代が下るとともに、国の富国強兵の政策とも相まっていくわけですけれども、だんだん公立小学校が大半を占めるようになっていったわけです。それでも、私立小学校に対する国民の期待は消えず、明治の終わりから大正初めにかけまして、新教育運動というものも起こりましたけれども、そういう流れの中で、多くの新しい私立小学校が設立されました。大正末期において、100校ほどの私立小学校が存在しました。今よりもはるかに人口が少ない時代、子供の数は多いわけですけれども、それでも絶対数は少ない時代でございますが、現代が241校、それの2.5分の1ほどの私立小学校がもう存在していたわけです。こうして、私立小学校は独創的な教育を展開しつつ、併せて国民の皆さんに、学校選択の自由を義務教育の段階から保障するというふうなことを担ってきたと思っております。
 2つ目でございますけれども、今から100年前、大正10年のことなんですが、八大教育主張講演会というものがございました。そこで小原国芳先生が、全人教育論を提唱されました。小原国芳先生は、今日もおいでになっていらっしゃいます玉川大学の小原芳明先生の御祖父でいらっしゃいますけれども、小原国芳先生の全人教育論は、もうそのとき以来100年にわたりまして、日本の小学校児童教育をリードしてきた教育観であります。先頃の中教審答申においても盛り込まれている教育観で、私どもはそこに私立学校の先達が大変大きな影響力を残しているということ、誇りに思っているところでございます。
 もう一つ、私立学校にとって最も大切なことと私が思っていることを申し上げておきます。それは、私学にとっては、創立者と建学の精神が最も大事だということでございます。私ども日本私立小学校連合会は、建学の精神を忘れる、あるいは建学の精神をどこかに置き去りにする、そういう学校というのは発展しないというふうに、合い言葉のように語っているところでございます。といいますのは、私学の創立者というのは、好きこのんで、改革会議の中で、銅像を建てたいから学校をつくるというような象徴的なケースもある、象徴的だから実際にあるかどうかは分からないというふうにはおっしゃっていましたけれども、そういうこともおっしゃった先生はいらっしゃいますが、私はそういう方はいらっしゃらない。むしろ創立者というのは、ほかの学校教育に飽き足らなさを感じる、あるいは公立の教育一色では、やはり国民のためにも、国の発展のためにも、社会の発展のためにもよくないというふうに考えまして、教育が児童個人、国家社会に与える甚大な影響を持つことに深い使命感を持って、自ら学校をつくられているわけでございます。私どもも私の学校の創立者、五島慶太と申しますが、この五島慶太が、事業の点においてはいろいろなことを言われながらも、教育、文化、こういうものについては大変な情熱を注いだということを研究して、伝記等も書いておりますけれども、どこの私立学校の創立者もそのようなことだと思っております。ですから、私学はそもそもの初めから独創的であって、時代に先駆けて未来を切り開こうという進取の精神に彩られていると思っております。この進取の精神を維持するためにも、創立者と建学の精神が私学の魂であることを先生方に御理解いただければと思っております。
 ですから、もう結論を申しますけれども、常に進取の精神を発揮して新しい現代的な教育プログラムを考える、これが私立学校ですから、これがなくなったら、保護者、国民から愛想を尽かされる、その私立学校には誰も子供たちを通わせないというふうな宿命にございます。ここにほとんどの私学が誠実で健全な学校運営を行う基盤があるというふうに御理解いただきたいと思います。
 そういうことで、この建学の精神や理念をますます発展させるには何が必要かという観点で、学校ガバナンスについても話し合っていただければなと思っております。スピード感や時代のニーズに応えられないような改革になりましたら、本当に国家百年の計でございますので、教育は。後々、10年後、20年後、失敗したといったときには手後れでございますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 少々長くなりまして、以上でございます。
【福原主査】
 ありがとうございました。
 続きまして、全日本私立幼稚園連合会副会長であられて、福岡幼児学園理事長、紅葉幼稚園園長の尾上正史委員より御意見いただきます。よろしくお願いします。
【尾上委員】
 改めまして、皆さん、こんにちは。御紹介いただきました尾上と申します。まずもって、このたびこのような機会を設定していただきまして、ありがとうございます。また、日頃私学助成や様々な幼児教育の振興に、ここにいらっしゃる皆様はじめ、多くの御支援をいただいていますことを、まずもって御礼を申し上げます。
 まず、私どもの連合会として、このたびのガバナンス等の改革について、学校法人の適正並びに公正な運営の必要性、あるいは不祥事に対する社会の見る目の厳しさは当然日に日に増していることも承知しており、その社会の信頼に応えることに関しましては、我々連合会も、もちろん積極的に協力していくという基本姿勢は、まずもって申し上げたいと思っております。その上でいろいろ、幾つか申し上げたい点は、先ほど来、小原先生、嵯峨先生のお話の中にもありますように、私ども、およそ会員8、000弱の施設数なんですけれども、ほとんどが1法人1施設、で、100人未満の生徒数というのがもう3分の1強という実態でございます。そういう中に、公益法人並びに社会福祉法人制度改革の、同様のスキームを用いたというような、私はそういう感想を持っておりますが、それを全く同じように当てはめるということは、もう現実的に非常に無理があるというか、私ども対応したくてもしかねるという点がいっぱいございます。
 まず、経常収入ベース、あるいは経常収支差額ベースにおいても、本当に大手、あるいは中堅法人に比して、もう全然桁も違うような実態もございます。もう本当お恥ずかしい話なんですが、園長先生が日頃の会計を行っているという施設は実はたくさんございます。そういった中に今回の様々な改革が導入されますと、本当にそういう厳しい中に、事務職員を雇い上げるとか、あるいは監査法人と契約をするとか、本当細かい話で恐縮なんですが、やりたくてもやれない。財政的にも、正直言って厳しいと。くしくも一昨日、昨日ですか、成人の日が挙行されて、126万人です、このたびの成人が。今私たちの対象の子供たちが80万人、もう割ろうとしておって、もう3割下落ちしております。ただでさえ少子化で、大変危機経営を余儀なくされておる1法人1施設の我々設置者の集合体といたしましては、公明公正な法人の運営に関しては、もちろん協力する気持ちはもういっぱいでございますが、そういった小規模法人の実態というのもぜひ御理解の上、いろいろ御差配していただければありがたいなと思っております。大変失礼な言い方かもしれませんが、大手法人と我々みたいな小法人とを一緒に取扱いするというようなことを、できたら避けていただいて、必要に応じた制度改革ということを要望して、お話に代えさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【福原主査】
 ありがとうございました。
 それでは、私学団体の代表者の方の最後として、全国専修学校各種学校総連合会の会長で、学校法人福田学園理事長の福田益和委員より、御意見頂戴したいと思います。よろしくお願いします。
【福田委員】
 ありがとうございます。全国専修学校各種学校総連合会の福田でございます。今回のこの特別部会、こういう形で設置をしていただきましたこと、まず感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
 もともとのガバナンスの方向性を令和3年の3月に有識者会議がお出しになった時点で、大学を設置する法人ということで、学校法人のガバナンスの、じゃあ具体にということで改革会議が始まったのが、いつの間にか都道府県所管、なおかつ準学校法人も含めての、今回の改革というふうになってしまったような気がしてなりません。そこに、私だけかも分かりませんが、ガバナンス改革会議は、先ほども委員の先生おっしゃっていましたけれども、性悪説に立っての不祥事をなくすためと。不祥事って、学校法人のみならず、あらゆる法人で決してないわけではございませんが、ほんの一部の話ではないかというふうに考えております。
 先ほど学校法人が、日本では私立学校8、000ぐらいの法人があるというお話もございました。ここで少し、今までの各私立学校の団体代表者の先生方は、私も含めて全て幼稚園から大学まで行っておりますので、皆さん御存じなんですけれども、専修学校というのは一体どういうものかということをちょっとお話だけさせていただきたいとまず思います。
 制度としては、昭和51年にできた新しい制度であり、学校教育法の1条には加えられておりません。主に、御承知かと思いますが、職業教育を専らとする、特に専門学校につきましては、高校卒業後の入学資格ということで、位置づけとしては高等教育機関に、また、後期中等教育の高等専修学校、専修学校高等課程というものもございます。今、学生数は、専修学校、各種学校を合わせますと、66万1、000人が直近で学生がおります。そのうちで専門課程、専門学校と称します専門課程が、学生数でほとんどでございまして、60万4、000人、高等課程は3万4、000人でございます。この数字は多いか少ないかということは、学校数で割ってみますと、先ほどの尾上先生の小規模のお話もございましたけれども、例えば専門課程であれば、ただいま申し上げました60万4、000人ですが、学校数で申し上げれば、約2、800ございます。ということは1校当たり217名と。あくまでも平均ですが。後期中等教育機関の高等課程であれば3万4、000人ですけれども、1校で割り算すれば84人という規模でございます。なおかつ、先ほど申し上げましたように、学校教育法の第1条に規定されておりませんので、国の助成金、私立学校振興助成法に基づく助成金は、専修学校には1円も頂いておりませんというところが、前提として申し上げさせていただきたかったところでございます。
 そうしまして、じゃあ専修学校はガバナンスは関心ないのかと。決してそういうことではございません。当然学校法人といいますか、教育機関のみならず、ガバナンスの問題というのは、年々コンプライアンスからこの頃ガバナンスの問題というのが大きくなっておりますし、我々も大きな教育の面で役割を担ってきた私立学校の公益性や公平性、透明性、あらゆる観点から、ガバナンスの強化ということは十分大事だということも理解をしております。
 しかしながら、そういった意味も兼ねて、先ほども委員から発言もございましたが、令和元年の私立学校法の改正で、監事機能の強化等々が具体的に制度改正をされております。したがいまして、この監事による内部統制機能の検証期間といいますか、検証をこれから、まずはこの5年をめどに再検討すればいいではないかということもございました。まずはその検証を行っていただきたいと思います。社会的説明責任を果たすことに、決して我々の団体も後ろ向きだということではございません。必要なことは当然やっていかなければならないとは思っております。
 先ほどの委員の先生方からもお話しいただきましたが、私どもの学校法人、設置する学校法人は2、198校ございます。ただし、このうちの3分の1が学校法人でありまして、3分の2、約1、400校は準学校法人、要するに専門学校しか設置していない法人ということでございます。まず、そこを御理解いただきたいと思いますし、3分の1の法人のほとんどが、幼稚園法人が専門学校を設置したり、専門学校の法人が幼稚園を設置したりというような形での一条校の学校法人ということになってございます。
 いずれにいたしましても、準学校法人であっても、将来的には財務情報等々、公開をしていくことは必要だということは、皆分かってございます。ここに、専門学校につきましては、既に職業実践専門課程制度というのがございまして、この要件で財務情報のみならず、計画、また学生数、いろいろな資格の取得数など、全てディスクローズをするように決められた文科大臣認定の制度でございますが、ここでも情報公開はしておりますし、さらに昨年度よりの高等教育の就学支援の新制度、これにつきましても、まず認定校になるためには、あらゆる情報公開が必置ということになってございますので、これにつきましては、約7割の学校が既に認定をいただいておるということでございます。
 いずれにしましても、ガバナンスやコンプライアンスの強化、社会的説明責任を果たすということは、重ねて申し上げますが、決して後ろ向きではございません。必要なことはやっていくべきだろうと考えてございますが、先ほど来の各業界の委員の先生方がおっしゃったことは、ほとんどが私どもも考えていることでありまして、非常に、特に評議員の問題という評議員会、評議員の問題、そして評議員に対するガバナンスはどうするのかというようなことにつきましては、また2回目以降で議論が進んでいくのではないかと考えてございますので、その折に私なりに、また、専修学校の代表として、意見を申し上げたいと思います。
 いずれにいたしましても、やはり大学と、失礼ですけれども、中高連以下の、要するに3番目から7番目までの委員の先生方とでは、大変違和感がおありではないかなというよりも、あり得ないというふうにお考えではないかなというふうに考えてございますが、先生方の学校種全てが何とか納得できるような形で、ぜひ進めていただくことをお願い申し上げまして、意見の陳述とさせていただきました。ありがとうございました。
【福原主査】
 ありがとうございました。各私学団体の代表の方々から御意見いただきました。また各論の御意見いただくときにも、今のことを踏まえて御発言いただきたいと思います。
 その次には、今回有識者として、専門的知見を用いて研究教育等に従事していただいておられる委員の方々から御意見いただきますが、私学団体の皆さん方からは数分ずつですが、特に有識者の委員の皆さん方からは、今後の、この委員会で議論を進めていくときの視点とか、あるいは問題提起とか、的を絞って二、三分で御意見いただきまして、またこの後、もう少し本日皆さんから意見いただくという、そこのときに御意見をいただきたいと存じますので、簡潔に視点、問題提起をいただければと思います。
 まず弁護士で、法人制度等の研究にも造詣の深い梅本寛人委員より、御指摘をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【梅本委員】
 弁護士の梅本と申します。よろしくお願いいたします。私、もちろん学者ではございませんが、日頃公益法人さん関係の業務をやっております関係で、公益法人制度改革後の公益法人におけるガバナンスといいますか、その内容等について考える機会も多いのですけれども、あくまで実務家でございますので、ちょっと理論的な話、少々不正確な面もあるかと思いますが、御容赦いただければと思います。
 簡潔にということでしたので、意見という形で、第1回目ですので申し上げたいと思うのですが、やはり私も学校法人さんのガバナンスに関して、ふだんからフォローしていたわけじゃないんですけれども、ちょっと年末年始いろいろ勉強もさせていただいたのですが、やはり一番対立点といいますか、大きいのが役員の選び方といいますか、それと関連しての評議員会の位置づけといいますか、その辺りが、ガバナンス会議の報告書と、皆様の御意見とが大きく食い違っている点なのかなというふうに、先ほどからお話をお伺いして、改めて感じました。
 学校法人というのは、法律的にいうと公益法人ですが、その中でも、いわゆる財団法人としての位置づけになるのかなと。歴史的にもそのような形で制度設計されてきたのかなと思いますが、この財団法人というのが、なかなか、ガバナンスという観点といいますか、もっと言ってしまうと、理事とか、理事長とか、その役員を誰がどうやって選んで、どう監督していくのかということを考えた場合に、本質的に財団法人というのは大きな問題があるといいますか、変な言葉ですけれども、ある意味恐ろしい制度だという面がございます。財団というのは、もう御承知のとおりかと思いますけれども、社団とは違いまして、要は設立者、創業者がお金を出して、そのお金に権利能力を法律上認めて、その設立者の意図のとおりにお金を使ってねという制度です。ですので、その意図というか、創業者、学校でいいますと創立者ですか、建学の精神というお言葉もありましたけれども、それが書かれているのが、いわゆる寄附行為における目的、事業の目的ということかと思います。なので、その時々に選ばれた理事長さん以下の役員さんたちは、その寄附行為の目的に従って学校法人というのを運営していく、業務を執行していくということが求められていると。それが、創業の精神に従い、学校の発展にも当然つながっていくという考え方でつくられた制度かと思います。
 ということで、財団法人のガバナンスというので、本質的というか、理屈的にいってしまうと、多分もうそこで終わってしまうというのが財団法人なのです。別にそこに評議員会とか、社団法人でいうと社員総会とか、そういう人たちは全然出てこなくて、あくまで役員が依拠すべきものというのは、設立者、創立者の建学の精神、それに従ってお金を使ってねと。それをガバナンスというか、設立者によるガバナンスというのは、ちょっと言葉として成立するのか分からないのですけれども、シンプルに考えると、財団法人というのはそういう制度なので、ということは誰も監督する人が実はいないという問題を本質的に抱え込んだ制度だと思います。
 公益法人においては、皆さん御承知のとおり、個別の理事、理事会という役員、そういう人たちを選ぶために評議員会という制度がございまして、評議員で構成されるのですが、その評議員会が役員さんたちを決議によって選任し、あるいは解任することもできるということになっています。公益法人の制度改革の当時、やはり今回と同じように、今まで公益法人における、財団法人における評議員会というのはあるにはあったのですが、法律上の根拠もなくて、当時主務官庁制といいましたけれども、行政が公益法人を全部監督するという構造になっておりましたので、その指導基準において、評議員会制度というのは設けなさいということではあったのです。が、あくまで諮問機関といいますか、意見を述べるにすぎないという立てつけだったのですけれども、制度改革において、理事さんなり、理事長を誰も監督する人がいないというのは、やはりガバナンスとしてはおかしいんじゃないかということで、それをどうやって実現するかというのは、いろいろな方法があると思うのですけれども、1つの在り方として評議員会という会議体、これまでもあったものを議決機関に格上げして、そこで役員の選任だったり、法人にとって重要な事項、何でもかんでも全部評議員会が決めるということではなくて、重要な事項については、あくまで評議員会の決議を経てやっていこうという1つの制度改革がなされたと。それによって、公益法人制度は改革されてからもう10年以上たちますけれども、公益法人の実情を見ている限りですと、財団さんにおいてはおおむね評議員会の運営はなされていると。よくなされているというふうに感じております。
 ということで、組織として今の私立学校の制度がいいのかどうかというのはあるのですけれども、やはり役員を誰が選んでどう監督していくのかというのが、やっぱりガバナンスの一番の核心といいますか、大きな問題だと思うのですが、それについて、公益法人においては1つの答えとして、会議体、評議員会というものをつくって、そこで役員を選んで、重要事項については決議するということで進めていこうという当時の立法者の決断があって、それによって改革が進んできたという経緯がございます。
 翻って、学校法人においても公益法人制度と何が違うのかと。いやいや、公益法人はあくまで公益法人であって、社団、財団とは私立学校は違うのだと。もちろん歴史的にも、あとは事業の内容も当然違うということはよく分かるのですけれども、このガバナンスを確保するための法律上の制度の在り方といいますか、法制度として、このように評議員会と理事会という役割分担が、私立学校において、公益法人と同等という言葉がございますが、果たして同等でなくてもいいのか。それでもガバナンスはちゃんと確保できるのか私立学校においても。ということを、ぜひ今後皆様からお聞きできればなと思います。もちろん実情といいますか、学校は学校、公益法人は公益法人で違うというのはよく分かるのですけれども、それでも私立学校は公益法人と同じ制度を入れなくても、やはりガバナンスというのはしっかりできるのだということについて、何か具体的な根拠といいますか、そういうものがもし議論できればなということで、議論に臨みたいと思っております。
 私は以上でございます。
【福原主査】
 ありがとうございました。
 次に、早稲田大学法学学術院教授でいらして、会社法、ガバナンス法の研究で業績を重ねておられます、尾崎安央委員の御指摘をいただきたいと思います。
【尾崎委員】
 早稲田大学法学学術院の尾崎と申します。現在、早稲田大学の法学部大学院法学研究科、大学院法務研究科で会社法などの講義を行っております。この委員会には有識者というカテゴリーで委員に加えていただいておりますが、講義対象とか、私の研究領域にコーポレートガバナンスが含まれていることや、これまで科研費を頂戴して大学法人、つまり私立学校法上の学校法人や、国立大学法人法上の国立大学法人などを対象として、法人ガバナンスの在り方という角度から共同研究してきたこともあるかと思っております。
 先ほど来、委員から御発言がありました財団法人のガバナンス、これは大変難しい問題だということを私たち意識しておりまして、科研費の次の継続するテーマとして、私たち研究会は、今財団法人のガバナンスを研究しております。これはもう世界的にもなかなか難しい部分があるわけでございまして、ここのところを今研究しているところでございます。まだちょっと成果は出しておりません。学校法人のガバナンスについては、今も継続して研究しております。その研究、共同研究の成果の一部は、研究会の各メンバーに論文として執筆していただきまして、『法律時報』という雑誌に短期連載、5本か6本ですが、それを2回させていただいておりまして、これまで私たちの研究成果は公表させていただいております。そういう経緯などがあって、学校法人のガバナンス改革の議論に参加させてやろうということもあってここにいると理解しております。
 近時、いわゆる一般社団・一般財団法人法、公益法人法、社会福祉法人法などにおいて、会社法上のガバナンスシステムが参照されている例が増えていると認識しております。その理由は、恐らく会社法が法人のガバナンス、これはコーポレートガバナンスと呼ばれるものなのですが、その在り方について100年以上にわたって検討し、よりよいシステムをつくるために試行錯誤を繰り返してきた歴史を有している、そして今なお模索し続けているということがあるかと思います。一応の到達点が現在の会社法でございますが、これとても、さらに検討すべきであるという作業が、今なお続いております。ですから、法人ガバナンスの在り方を検討する際に、会社法は参照に値する法制度であると考えられたから、参照されているのではないかと私は理解しております。
 本研究会の検討対象となっております私立学校法も、基本的に学校法人のガバナンスの法律であると言えます。教育研究については、例えば教育基本法とか、学校教育法とか、別の法律がありまして、私立学校法は基本的には教育のところには触れておりません。あくまでも法人ガバナンスの法律です。ただ、学校法人は、先ほど来から御指摘ありますように、会社、さらには社団における社員、株主が不在であるという特殊性があります。また、教育研究をする機関を設置し、これを支える母体という、そういう法人であるという公益性・公共性を意識しなければならない法人であります。ですから、単なる企業とは違うという認識は正しいかもしれませんが、法人ガバナンスという点では普遍的な問題・課題があると思っております。
 今申し上げたように、私たちは私立学校法における学校法人に対しては、これまで会社法制、より広く企業法制で培われた制度や法理がどこまで応用、援用可能かという姿勢で検討してまいりました。少子化現象を見据えて、競争下にある学校法人の経営に、先ほども意見がありましたように、攻めの姿勢が要求されている現在、もとより守りも大事なのですが、学校法人ガバナンスシステムが、これに応えられるものである必要があると思います。これは規模の違いであろうと同じことだろうと思います。やはり今、競争化、少子化の前提の下では、ガバナンスの在り方ということをよりよきものにしていくという検討は、規模や学校種を問わず、大変重要だと思っております。今は企業法制でも、攻めのガバナンスを前提としたコーポレートガバナンスの充実の動きが起こっております。
 その一方で、ESGやSDGsといった公、おおやけ、パブリックを意識した、そういう視点を意識したガバナンス、経営ですね。経営というものの在り方が模索されております。また、様々なステークホルダー、これは諸外国では、例えば従業員であるとか、地域のことであるとか、そういうことを考えて経営しなければいけないというふうな制度も生まれてきております。つまり、コーポレートガバナンス、企業のほうにつきましても、こういう意味で公的な性格を意識するという要素が入ってきております。また、先ほど来から規模の基準という形で、区分という話が出てきておりますが、この区分立法については、会社法は既に経験済みです。最近では、上場会社については、新聞にも出ていました。プライムであるとか、スタンダードであるとか、グロースであるとか、ああいうふうな形で新たな区分がなされようとしております。会社法というのは、そういう区分を意識しながらも、やはりコーポレートガバナンスの基本の法律です。私立学校法も、やはり学校法人の基本法であります。その基本法におきまして、どういうガバナンスシステムが必要か、それを検討することは大変重要であろうと思っております。
 学校法人のガバナンスの在り方を、また制度設計の在り方を検討する上でも、会社法の最近の動きまで取り入れて、参考にすることは十分にあると思っております。この検討委員会とか、改革会議とかいうところから意見や報告書が出ておりますが、これは最先端のガバナンスの議論が随分入り込んでいると思います。それが具体的に学校法人の在り方として、どこまでが普遍性のあるものか、あるいはこれは、それぞれちょっと特殊な部分があるのだということを御議論いただきまして、私は微力ながら、何がしかのお役に立てればと思って、この場にいさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
【福原主査】
 ありがとうございました。
 あとお一方、東北大学国際戦略室の副室長で教授であられまして、高等教育に関して国際的な観点からも多くの研究成果を上げていただいております、米澤彰純委員から御指摘をいただきたいと思います。
【米澤委員】
 米澤でございます。よろしくお願いいたします。ほとんどの方に、多分初めてお会いするような形になると思います。たまたま田中先生と同じ私立高校を出ているので、勝手に知っては申し上げていたんですけれども、私立学校との関わりは、その程度というようなことかもしれません。
 私自身は、今御紹介がありましたように、高等教育のマクロな国際動向みたいなことを専門にしておりまして、その観点で、私立学校、大学も研究業績の一部に、本も含めて入っておりますが、必ずしも学校法人の専門家というわけではございません。また、事前にどうして私なのかという話があったんですけれども、教育の枠で入っているんだと思いますが、基本的には今までの有識者会議、それから改革会議のいずれにも関わっていないということで、第三者性ということで選ばれたというふうに伺っております。したがって、私のここでの役割は、どちらかというと一般的な視点に近いというか、自分の自説を展開することを多分期待されているのではなくて、もうちょっと丁寧な議論を第三者性を持って見守るということを心がけたいなと思っております。よろしくお願いいたします。
 その上で、手短に3点だけ、論点をコメントしたいと思います。1つは一般社会、それから一般の教員、学生、生徒、児童に伝わるような形での議論を心がけていただきたいと思います。本日、既に関係者の方々からいろいろな形で出てきましたので、そういう意味ではあまり心配していないというか、安心しておりますけれども、いわゆる学校のガバナンスとか、あるいは大学のガバナンスというものを、いろいろな国際的な報告も含めて見たときには、ここで話している内容と次元が違う、レベルが違う話をしているんだと思います。あるいはフィールドが違う話をしているんだと思います。
 大学に関していえば、執行部である学長とそのチーム、それから教員、あるいは教職員、そして学生、そして一般社会が関係者として存在し、理事会というのはどちらかというと一般社会を、あるいは経営を担って、教学と対峙するというようなところとして整理されることが多くて、先ほどのハーバード、それからイェールの例でいえば、むしろ学長に教育と経営の権限があって、教育はむしろ一般教員が担い、そして理事会に当たるところのボードの役割は、どちらかというとここでいう評議員会に近いようなものを想定する人も多いと思います。これは多分高校、それから中学、幼稚園においても、一般的にはそういうことがあって、やっぱり園長先生、それから教員、そして理事会というような関係で取られる方がいらっしゃると思いますし、逆にそれが同じ人物でいいのかというのはまた別の議論としてあると思うんです。そこの部分の議論をイメージしたものと、多分ここで話している、非常に各論的に言えば、具体的には理事長、理事会と、それから評議員会というところでの話というのは、多少認識の視野が違うわけです。視点が違うところで話している話を少しどこまで、このことによって、我々今やることによって解決できるのかということについては、多少自制的に考えて、整理した上でやるべきかとは思います。ただ、重要なことは間違いなくやっていると思いますので、そのことを踏まえた上で、開かれた議論ができればいいかなと思います。
 次に、攻めのガバナンスの議論という話が何度か出ているんですけれども、これについては私も大賛成でございます。同時に不祥事は当然起こしてはいけないですし、それを防ぐための手だてというのは徹底的にやるべきだと思いますけれども、最近出た研究で、戦時期の私立学校を扱った伊藤彰浩先生という先生の研究があるんですが、そこでは1930年代の前半ぐらいに、入試の不正を巡って私立が制裁を受けたという事例が載っております。そういう意味で、この構図自体は決して私は新しいことでは全くないと思っているので、それを含めた上で、我々がある意味で冷静に、次の一手を考えることは大事かなと思います。ただ、繰り返しますけれども、不正が起きていいはずはないと思います。
 3番目に、学校法人、私立学校が持っている公共性と、公共的な役割を意識した議論というのをぜひできればなと感じております。私の専門は教育の国際動向と申しましたけれども、既にお話がありましたように、日本で私立学校の、あるいは私立大学の果たした役割というのは非常に大きいということは間違いないわけですが、これは世界的にもそうであって、特にここ30年ぐらいの間に世界で急拡大している。今でも拡大しているし、単純に新興国、途上国だけではなくて、西ヨーロッパみたいな私学がなかったところにも私学ができてきているというような非常に大きな流れの中で、この問題を捉える必要があるとは思います。
 同時に、要するに戦後すぐに制度化された、いわゆる私立学校法、学校法人という制度から見たときに、最近の動き、つまり、例えばマレーシアで1990年代にできた私立高等教育機関法とかは、例えば営利と非営利の区別がそもそも存在していない。あるいはニュージーランドで今ある国家学位資格枠組みを見た場合には、そこではいわゆる学校、大学のほかに、民間教育プロバイダーというのが存在していて、正式な、公的な支援の対象にもなるし、資格の対象になっています。平たく言えば、学校法人は教育活動を行う上で1つのプラットフォームであるけれども、絶対的なプラットフォームではない。これは日本の中でも、私立から公立に動くこともできるというようなことが実態として起きているということを意識した上で、では学校法人はなぜ今必要なのか、何ができるのか、どう公共性を担保するかということは、意識して話さないといけないなと思って伺っておりました。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
【福原主査】
 ありがとうございました。お三方の専門的知見を踏まえた御指摘をいただきました。それぞれの方々の業績等ございますので、また御関心のある方にお目通しをいただくこともありますので、事務局のほうで御紹介をすべき書物があれば、各委員の方々にお伝えをいただければと思います。という私も法律家で、研究業績もございますので、お三方のそれに少し加えさせていただいて、参考資料に供したいというふうに存じます。
 さて、さらにあと3人、大学設置・学校法人審議会の委員で、学校法人分科会の審議並びに活動に従事しておることから、3名が加わっておりまして、お一方が佐野慶子委員、もう一方が西岡佳津子委員、そして私、福原でございます。日頃学校法人分科会といたしまして、設置並びにアフターケア、さらには様々な場面で、学校法人の理事、理事長、学長の方々とお目にかかったり、様々な活動を通じて日頃の見識を高めているところでございますので、そちらから3名が加わらせていただいております。一言ずつ御所見をいただきたいと思います。
 まず、公認会計士でもあられる佐野慶子委員、よろしくお願いします。
【佐野委員】
 私は公認会計士として、学校法人の会計監査を担当いたしましたり、また学外監事であるとか、文科省の委員として、学校法人を実務的に見てきた立場でございます。適切な内部統制制度、それからガバナンス体制を敷きまして、よりよい教育であるとか、研究環境、これを構築して健全な発展を図ると、そういった思いというのは、私学はもとより、また私も含めて、この問題に携わる人の共通の認識だというふうに考えております。
 私学法においては、もう先ほど来いろいろな委員の方から御発言ありましたように、私学の特性、この建学の精神に基づいて私財の寄附から成り立っているという、この私学の特性に鑑みて、その自主性を重んじて公共性を高めることによって、私立学校の健全な発展を図るということが、私学法において明文化されているわけですけれども、これはつまり自主性の尊重、これと公共性確保の調和を図るということが非常に大事だということをスタートに置いているんだと思っております。この私学の自主性、これを尊重するあまりに、公共性を担保する仕組みをないがしろにするということがあってはならないわけですし、また、公共性をうたうあまりに、他の法人形態とは異なっているこの私学の特性、自主性をないがしろにしてはならないということです。このバランスがゆがんでしまいますと、例えば公共性の高い存在であるという意識が薄れて、自主性というところを独りよがりに捉えてしまうようなことがありますと、不正のチャンスを生んでしまったり、また、それを監視できない組織になってしまうと思っているわけでございます。
 さきの有識者会議では、大学法人を念頭に議論もされたということでございますけれども、例えばここでも話題になりました財務情報の公開などについては、平成16年の改正時の事務次官通知で、私学法というのは、法律によって全ての学校法人に共通に義務づけをすべき最低限の内容を規定したものだというふうに御説明があり、全ての法人に対して、このときの改正で関係者に対する閲覧開示というのを条文化されているわけです。その上で、先般の令和元年の改正において、2年の改正ですか、さらに大学法人においては一般に公表することを規定するなどして、実務上の影響であるとか、負担を考慮して一定の配慮をした強化策が盛り込まれる、こういったふうに順次改正がなされてきているわけでございます。
 こういったことをもろもろ踏まえて、今提起されている学校法人のガバナンスの問題について、簡単に3つの角度、視点から、ちょっと改めて考えてみたんですけれども、まず1つ目は、現行の私学法の定めの趣旨を十分踏まえて適用、運用することによって、この自主性の尊重と公共性を担保するということ、この調和が図れる部分があるのではないかということなんです。1つ簡単に例を挙げれば、有識者会議等でも問題になっておりました評議員、この選任については、評議員会が公共性を担保する1つの機関であるということを踏まえれば、1号評議員、2号評議員、職員それから卒業生ですね。この資格のある者を3号評議員として選任することは好ましくないはずであると思うんですけれども、選任を寄附行為に委ねてしまっているということから、場合によっては評議員の全てが学内者、同窓生であったとしても学内者の方もいらっしゃるわけですから、全てが学内者となってしまう余地があって、公共性の担保というところがおざなりになってしまう懸念があるということなんです。こうしたことは、この現在の私学法の趣旨をよく理解した上で適切な運用、適用、これを推進すれば、十分公共性を担保できるというふうになっていくと思うんです。こうしたことによりまして、例えば文科省によります運営調査などでも、改善を指導しているわけですけれども、ここで改善が実行されないというケースが多ければ、そのとき初めて法改正も視野に入れて検討すべき事項だということで、まず、そういった切り口、現在の私学法の趣旨にのっとった適切な運用がされているのかどうか、これを検証するといったことも必要になってくるのではないかと思っております。
 それから2点目。2点目として、先ほど冒頭資料の説明にもありましたのですけれども、数次の改正を経て制度改善を図ってきているわけですが、このほかにも政省令であるとか、通知でいろいろなことを手当てしてきているわけです。また、例えば私どもも所属しております設置審、この下で寄附行為の作成例を提示しております。あるべき道筋を示して、私学の自主的取組に委ねている部分もあるということなんです。さきの有識者会議で、例えば議事録を作成することが書いていないじゃないかと、こういったこともあったわけですけれども、例えばこの議事録については、設置審で提示しております寄附行為作成例で道筋をつくって、私学に自主的取組を促しているというようなこともあるわけでございます。
 それから3番目としては、ちょっと切り口が変わるかと思うんですけれども、何といいますか、自主性と公共性という視点を離れまして、組織として有効な統制力が十分働いているのかという疑念を持たれないようにするということも必要になってくるんだと思います。そういう視点も必要だということなんです。例えば、諮問機関である、今現在諮問機関とされております評議員会、これに決定機関である理事会のメンバー全員が就任できる仕組みになっているということは、はたから見ますと、役員の業務執行についての監視機能、この実効性が十分に保たれているんだろうかとも思われてしまいますし、また、理事の倍数超の人数規模の評議員を待たなければいけないという定めというのは、人材確保の点から必要性があるんだろうかと。これは兼務の問題もあって、そういう項立てになっているわけですけれども、そういった視点から、さらなる検討が必要な箇所だと思っております。
 こういった現行の私学法の中で、その運用を適切に行うことによって、趣旨が十分全うできる部分があるのではないか。また、法律改正に行くまでもなく、政省令であるとか、通知であるとか、文科省のもろもろの委員会での指導監督によって、私学の自主的な取組を促せる部分があるのではないかということ、それから、やはり客観性を持たせるためにも、この自主性、公共性という視点を離れたとしても、組織としての有効なガバナンスが働くような仕組みができているかということを検証する、この辺が重要なことなんだろうと思っているわけです。
 最後になりますけれども、基本的に私も、管理運営面につきましては、現行の理事会、理事、監事、評議員会がそれぞれこの役割と責任を明確にした上で、さらに現状の実務、先ほど来幼稚園から、規模的に100人、200人のところから何万人の大学まであるという、この規模的な問題もあるわけですから、この実情、実務の現状を念頭において、自主性と公共性のバランスを考慮しながら、そのためには何をどうするか、いきなり法改正しなきゃ無理だと、そういうことではなくて、やはり職務を適切に果たすために必要なこと、現在の状況を、先ほど5年間というお話も出ましたけれども、十分検証しながら、法整備するところ、政省令や通知で手当てするところ、また、さらにはガバナンス・コードで手当てするところなどをきちんと仕分して、整理しながらこの議論を進めまして、合意形成の場がうまく形成できればいいのではないかなと思っているところです。
 以上でございます。
【福原主査】
 ありがとうございました。
 ではもう一方、西岡委員から御指摘いただければと思います。
【西岡委員】
 日立製作所で取締役会室長を担当しております西岡と申します。よろしくお願いいたします。
 今回構成メンバーを拝見したときに、企業のメンバーが入ることに、自分自身ちょっと場違いではないかということも感じましたけれども、先ほど尾崎先生にも言っていただきましたが、会社法ですとか、コーポレートガバナンス・コードに対し、企業も非常に悩みながらガバナンスに取り組んでおります。やはりどうやって設計してローンチさせるのかということで、当社指名委員会等設置会社として、ガバナンスに10年以上、取り組んでおりますので、そういった観点で何か経験がお役に立てればと思い、参画することにいたしました。
 日立製作所ですが、もともと2003年から委員会等設置会社に移行しましたけれども、本格的にコーポレートガバナンスに取り組み始めたのは2010年からとなります。当時取締役と執行役の形式はできていましたが、2009年に製造業始まって以来の巨額の赤字を出して、危機に当たって取締役会の機能が限定的であったという反省がございました。そこから構成メンバーですとか、運営ですとか、そういった見直しを10年以上かけて続けてきております。現在取締役13名のうち、社外取締役は10名、そのうち6名は外国人です。海外のグローバル企業の経営を経験した社外取締役が参画されてから、取締役会の雰囲気は大きく変わりました。1議題当たり60分ほど議論するほど、大きなM&A案件とかも最近ありましたので、そういったものも含め、経営の意思決定に非常に関与してきていると感じます。
 ただ、企業もコーポレートガバナンス・コードがあるからといって、ガバナンスが進むわけではありませんで、各企業がどういうふうに経営の方向性を考えるのか、それぞれの状況も違いますので、そこも踏まえた上で、例えば取締役の選定ですとか、委員会の個々の機能ですとか、事務局など仕組みを改善し続けて、こういったガバナンスを実現しているというのが実情かと思っております。
 一昨年から学校法人分科会のほうにも参画させていただいておりますけれども、やはり学校法人のガバナンスの難しさというのは、多様なステークホルダーが存在して、ストラクチャーの設計が難しいという点だと認識しております。教学の独立性と、先ほど佐野委員もおっしゃっていましたけれども、全体としてやはり経営の最適化のバランスをどういうふうに取っていくのかという点で、いろいろと皆様の御意見も踏まえて考えていく必要があると思っております。特に今回の改革会議では、理事会、評議員会の、先ほど皆様からも御意見出ておりましたけれども、役割と責任はどうするのかといったところで、評議員会が理事会の上にあるというよりは、理事会と評議員会の対等な関係として、執行と監督の役割とか、責任分担を明確にした上で、それぞれが機能するように考えていくほうが現実的なのではないかとか、そういったことも今の時点では感じております。
 あとはガバナンス・コードも、複数コードがあったりとか、あとガイドラインというのもありますけれども、やはりどうやって現場の状況を踏まえて活用できていくかという観点が必要だと思っておりまして、企業も、これに完全に従うということではなくて、東証からベストプラクティスという形で共有され、いい事例から学んでいこうということで企業はやっていると思っています。
 まとめますと、いろいろガバナンス・コードもございますけれども、従うことがゴールではなくて、それをばねにいかに組織を成長させていくのか、いい学校をつくっていくかというところを、機関設計がそれを支えていくということが重要と認識しておりますので、ぜひいろいろ現場の状況を教えていただいて、一緒に検討していけたらというふうに考えております。
 以上です。よろしくお願いします。
【福原主査】
 どうもありがとうございました。
 あと私も学校法人分科会から加わってございまして、主査を仰せつかったということから、冒頭で御挨拶をさせていただきましたので、私個人の意見等につきましては、割愛をさせていただきたいと存じます。

<議題4:その他>
【福原主査】
 私の進行の不手際で、時間が参って、お約束いただいておりました時間が参っております。ただいまのそれぞれのお立場からの貴重な御意見を踏まえて、まだ少し言い足りなかったとかいうことをお聞きしなければならないのでございますけれども、皆さんお忙しい中での頂戴している時間が参ってしまいましたので、もし、この後、言い尽くせなかった事柄がある場合には、どうぞ書面で、事務局のほうにメールでもお送りいただいて、次回、また皆さん方にお伝えできるようにもしておきたいと存じますので、お許しをいただきたいと思います。本日の委員の皆さんからの御意見を、次回以降の会議に生かしていきたいというふうに存じております。
 この時期、我が国の学校法人の在り方を論じる意義が大変大きいことが、それぞれの御意見からうかがわれたところでございます。冒頭御紹介がありましたように、この会議は全国で公開をいたしておりますので、この点について関心のある方々、意識の高い方々、本日は400名を超える方々が、今ユーチューブの同時中継でこの議論に耳を傾けていただいていると。そのことをもっても、大変この委員会での皆さん方の御意見を賜ることの意義は、一層大きいのではないかというふうに存じております。この後、限られた時間、限られた回数ではございますけれども、その意義を皆さん方とともに共有をさせていただきまして、可能な限りの成果を上げたいと存じておりますので、引き続き、どうぞよろしく御協力のほどお願いをいたします。
 では、次回の会議につきまして、事務局から御案内をいただきます。お願いします。
【相原補佐】
 それでは、最後に資料の6でございますが、審議日程(案)といたしまして、次回、2月9日の水曜日、そして第3回、2月22日火曜日、いずれも10時からということで予定をさせていただいておりますので、また詳細は後日御連絡をいたします。よろしくお願いします。
【福原主査】
 ありがとうございます。
 なお、公開をしていくということもあり、また、本日のこの特別の委員会の設置が報道されました後も、各方面からいろいろな御意見等を賜っているところでございますが、できる限り次回以降、委員の皆様方にも参考意見としてお目にかけ、多くの方々の御意見も、またこの場で吸い上げていく工夫もしてまいりたいと存じております。
 先ほど申し上げましたけれども、本日時間の関係で委員の方々で言い尽くせなかったこと、また、問題提起や御質問等ございましたら、どうぞ御書面、メール等で事務局のほうにお寄せいただきますことを重ねてお願いをいたしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
 以上とさせていただきます。

 ――了――

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