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中央教育審議会

 1998/3 答申等 
新しい時代を拓く心を育てるために  −次世代を育てる心を失う危機− (中間報告要旨) 


<中央教育審議会「幼児期からの心の教育の在り方について」中間報告要旨>

(この中間報告要旨の図表等は省略)


<目  次>

    第1章  未来に向けてもう一度我々の足元を見直そう

    第2章  もう一度家庭を見直そう

    第3章  地域社会の力を生かそう

    第4章  心を育てる場として学校を見直そう


第1章  未来に向けてもう一度我々の足元を見直そう

(1)「生きる力」を身につけ、新しい時代を切り拓く積極的な心を育てよう
  i)  我が国の文化や伝統、誠実さや勤勉さ、「和の精神」、自然を畏敬する心、宗教的情操などを誇りとしながら、新しい時代を積極的に切り拓いていく日本人を育てていかなければならない。
  ii)  子どもたちが、未来への夢や目標を抱き、創造的で活力に満ちた豊かな国と社会をつくり、地球規模の課題に積極果敢に取り組み、世界の中で信頼される日本人として育っていくようにすることが必要。
  iii) そのため、社会全体で子どもたちが「生きる力」(自分で課題を見付け、自ら学び自ら考える力、正義感や倫理観等の豊かな人間性、健康や体力)を身に付けるための取組を進めていくべきである。

(2)正義感・倫理観や思いやりの心など豊かな人間性をはぐくもう
  子どもたちが身につけるべき「生きる力」の核となる豊かな人間性とは、

        ─────────────────────────────
            i)   美しいものや自然に感動する心などの柔らかな感性 
            ii)  正義感や公正さを重んじる心 
            iii) 生命を大切にし、人権を尊重する心などの基本的な倫理観 
            iv) 他人を思いやる心や社会貢献の精神 
            v)  自立心、自己抑制力、責任感 
            vi) 他者との共生や異質なものへの寛容 
        ───────────────────────────── 

などの感性や心である。このような感性や心が子どもたちに確かにはぐくまれるよう、我々大人が足元を見直し、改めるべきことは改め、様々な工夫と努力をしていこうではないか。

(3)社会全体のモラルの低下を問い直そう
  子どもたちに豊かな人間性がはぐくまれるためには、大人社会全体のモラルの低下を問い直す必要がある。子どもに伝えるべき価値に確信を持てない大人、しつけへの自信を喪失し、努力を避ける大人が増えている。子どもの心を育てるべき大人社会が、こうした「次世代を育てる心を失う危機」に直面していることこそ、根本的な問題。今後、我々大人が率先してモラルの低下を是正し、この危機を乗り越えていこうではないか。

(4)今なすべきことを一つ一つ実行していこう
  子どもたちの「生きる力」を育てるために、今なすべきことは多岐にわたる。我々はそれぞれの立場からなすべきことを一つ一つ実行していこう。
  また、各地域で、教育改革について、様々な意見交換や学習の場、フォーラムなどの機会が多数設けられつつある。このような取組を積み重ねていくことは危機を乗り越える足取りを確かなものにすると考える。


第2章  もう一度家庭を見直そう

(1)  家庭の在り方を問い直そう

(a)思いやりのある明るい円満な家庭をつくろう−子どもたちが真にそれを望んでいる
  子どもたちの調査では、家庭に望むこととして「家族のみんなが楽しく過ごす」ということを一番に挙げている。子どもたちの願いにこたえ、その心を豊かなものに育てていくために、思いやりのある明るい円満な家庭をつくることを出発点にしてほしい。

(b)夫婦間で一致協力して子育てをしよう
  国際比較によると、日本の父親が子どもと一緒に過ごす時間は対象国中で最も少ない。また、父親の果たす役割・努力が十分でない。父親がもっと家庭の中での役割を積極的に担っていくことが望まれる。子育てにおいては、しつけの方針など夫婦間の足並みを揃えることが重要であり、一致協力して話し合いながら子育てにあたってほしい。

(c)会話を増やし、家族の絆を深めよう 
  家族の間で豊かな会話がなされることが大切である。特に、父子間の会話が少なく、また、子どもが成長するにつれて、親子の会話の頻度が少なくなる。
  i)  できるだけ家族が顔を揃える機会を設けること
  ii) 朝のあいさつをしたり、子どもに家事の役割を与えたりして会話のきっかけをつくることなどの努力をしてほしい。

(d)過干渉をやめよう
  家庭の教育力が低下している理由として最も多く挙げられるのが「過保護、甘やかせすぎな親の増加」である。
  i)  子どもが自分で気づき、考えるという習慣をつくる大切さを忘れ、子どもが考える前にすぐ介入してしまうこと
  ii) 親が自分のペースを子どもに押しつけること
  iii)母子の過度の密着は、子どもの自主性や個性を育てることを妨げる。

(e)父親の影響力を大切にしよう 
  父親の存在が希薄化し、子どもたちは、母親の顔色を気にし、母親にとっての「良い子」になろうとする傾向がある。「友達のような父親」像が拡がる中、善悪のルールなどに関するしつけがおろそかになってきた。
  国際比較によると、我が国の父親は、しつけや悩みごとの相談相手として、十分な役割を果たしていない。父親が、母親とは異なった視点や手法で子育てに関わっていくこと(夫婦で複眼的な子育て)など、子育てに影響力を発揮してほしい。

(f)ひとり親家庭も自信を持って子育てをしよう
  親が困難に立ち向かいながら子育てに前向きに努力する姿は、必ず子どもたちの心に響く。悩みを抱え込まずに、子育て支援の人的ネットワークを積極的に利用することも大切。

(2)  悪いことは悪いとしっかりしつけよう

(a)やってはいけないことや間違った行いはしっかり正そう
  1)子どもたちの規範意識の低下が顕著である。
    日本の高校生は、「学校のずる休み」、「売春など性を売り物にする」ことを「本人の自由でよい」と答える者が際だって多い。恐喝、盗み、万引き、麻薬の使用についてさえ、約1割が「本人の自由でよい」と答えている。

  2)i)  親自身が「自分さえよければいいというような考え方をしない」、「ルールに反することをしない」といった当然のことを、自らの姿をもって示す
      ii) 善悪や正邪の区別などについて、幼少のころからしつけを行う
      iii)悪い行いがあれば直ちに正す
      iv) 物心つかないうちは根気強く、言葉が理解できるようになれば理由をはっきりと言って叱る
      v)  気分や感情に流されず一貫性を持って叱る
    といったことに心がけてほしい。

  3)他人から叱られて必要以上に傷ついたり、逆上してしまう場合も見られるが、きちんと叱られる経験が欠けていることがその一因と考えられる。

(b)自分の行いには責任があるということに気づかせよう
  子どもたちの自己中心的な行動や自立の遅れの背景には、「自己責任の考え方の欠如」がある。調査によっても、我が国では、自分のことは自分でしたり、責任感を持たせるようなしつけが家庭で十分になされていない。
  i)  後片づけをきちんとさせる
  ii) 家事を担わせる
  iii)異年齢集団での遊びや地域の活動を体験させる
など身の回りの小さなことから始めよう。

(c)自分の子だけよければよいという考え方をやめよう
  「自分の子だけよければよい」(いわゆる「自子主義」)という傾向が、過干渉や過保護、甘やかしの根底にある。そのような親の考え方が、思いやりの心、正義感や社会のルールを守る心をはぐくむ上で、影響を与えている。

(d)思春期の子どもから逃げず、正面から向かい合おう
  親は思春期の子どもに対して腫れ物に触るような接し方になってしまう。自立を促すとともに、自らの責任を自覚させるようにしよう。

(e)「普通の子」の「いきなり型」非行の前にあるサインを見逃さないようにしよう
  「普通の子」の「いきなり型」非行が増えてきていると言われる。しかし、一見「普通の子」であっても、必ずその前にサインを発している。些細なことで過剰に興奮したり、周囲の人に甚だしく攻撃的になったりするなどは重要なサインである。それを親が見逃しているか、気にはなっているが目を背けていることに問題がある。
  サインに気づいた時には、夫婦間で話し合い、子どもと会話を交わす糸口を見つける努力をし、時機を逸することなく、相談機関や学校の教員・カウンセラーに相談してほしい。

(f)身の回りの小さなことから、環境を大切にする心を育てよう
  環境を大切にし、積極的に行動する力を育てるために、ものを大切にしてゴミを減らす、海や山でゴミを捨てない、など身の回りの小さなことから習慣づけよう。

(3)  思いやりのある子どもを育てよう

(a)祖父母を大切にする親の姿を見せよう
  親に感謝し、親を思いやる心は、広く他者を思いやる心の基ともなる。親が率先して祖父母を大切にする姿を示そう。高校生の国際比較調査では、「どんなことをしてでも親の面倒を見たい」との回答が際立って少ない。

(b)手助けの必要な人を思いやれるようにしよう
  小・中学生では、「乗り物でお年よりに席をゆずること」を「全然していない」、「しないときが多い」と7割近くが回答。親自らが率先して行い、子どもたちが自然にお年寄りに席を譲ることができるようにしつけることから始めよう。

(c)差別や偏見は許されないことに気づかせよう
  親は、自分の子どもがいじめに加わっていたり、言われなく他人を差別し、おとしめるような言動をしていることに気づいたときには、人間として許されないということをしっかりと教え諭そう。

(d)生き物との触れあいを通して、命の大切さを実感させよう
  子どもは近親者の死を目の当たりにすることは少なくなっている一方、テレビ番組等を通じて、虚構の「死」に頻繁に接しており、命の重さに対する感性が希薄化している。自然の中で子どもたちを大いに遊ばせたり、動物や草花を大切に育てるなど、様々な生き物と触れあう機会を意図的に用意することを求めたい。
  子どもが生き物を残虐に殺したり、草花を粗末に扱ったりしたときは、積極的にその意味を問いかけよう。

(e)幼児には親が本を読んで聞かせよう
  子どもが読書の楽しみを知り、親しむようにするには幼少時の体験が重要である。幼児の時から毎日本を読み聞かせたり、「本の時間」を設けたり、添い寝をしながら本を読んであげることは、心の成長に大きな効果がある。
(4)  子どもの個性を大切にし、未来への夢を持たせよう

(a)幼児期から子どもの平均値や相対的な順位にとらわれることをやめよう
  国際比較をすると、日本の親は子どもの成長に対する満足度が最も低く、子ども自身も、自己評価が低い。これは、子どもたちの個性が大切にされていないことを示す。
  平均値との比較や、偏差値などに現れる相対的な順位にとらわれず、子どもの個性を大切にしよう。
(b)子どものよいところをほめて伸ばそう 
  一人一人の子どものよさや個性を伸ばしていくためには、親がそれらを見出し、上手にほめることが必要である。叱るべきところはしっかり叱る、ほめるべきときは本気でほめることが大切である。

(c)人間としての生き方やこれからの社会について子どもに語りかけ、子どもの将来の夢と希望を聞こう
  今日の子どもは、小学生から達成の難しい目標を断念する、ひどく冷めた目を持つ。国際比較によると、我が国の青少年は「今よりも将来のために努力する」ことに同意する者が他国に比べて少ない。親は、自分自身の経験や、よりよい社会づくりに汗を流している様々な人々の生き方などを話題にしながら、語りかけることが大切である。また、子どもたちの夢や希望に耳を傾け、励ます姿勢を示すことを求めたい。

(5)  家庭で守るべきルールをつくろう

(a)それぞれの家庭で生活のきまりやルールをつくろう
  子どもたちは家庭のルールを守ることを通じて、社会のルールの大切さも学ぶ。生活上のルールや道徳上のルールを各家庭できちんと決めていこう。

(b)幼児期から小さくとも家事を担わせ、責任感や自立心を育てよう
  日本の子どもは、年々、家事を手伝う割合が少なくなっている。しかし、子どもたちに家事を担わせることは、責任感や自立心をはぐくむ上で大きな意義を持っている。幼児期から家事を手伝うことの習慣づけに根気強く取り組んでいってほしい。

(c)朝の「おはよう」から始めて礼儀を身につけさせよう
  朝の「おはよう」に始まり、毎日きちんと親や周囲の人々に声を出してあいさつできるよう、小さい頃からしつけをしてほしい。そのため、親自身が子どもにあいさつをして、声をかける習慣をつけよう。

(d)子どもに我慢を覚えさせよう−モノの買い与え過ぎは、子どもの心を歪める  
  「子どもを不幸にする一番確実な方法、それはいつでもなんでも手に入れられるようにしてやることだ」と言われる。モノを安易に買い与えると、子どもは、努力や我慢を忘れ、欲求を制御する力を失う。たくさんのモノや高価なモノを買い与え過ぎないようにしよう。

(e)家庭内の年中行事や催事を見直そう
  家庭内の年中行事や催事は、家族間での会話を促し、家庭内から地域社会へ目が向く良い機会となる。伝統的な家庭内行事は、宗教的な情操をはぐくむ貴重な契機となってきた。様々な家庭内行事を再評価しよう。

(f)子ども部屋を閉ざさないようにしよう 
  子どもが子ども部屋に閉じこもってしまうと、親の注意が行き届かなかったり、親子の会話が減る。親が子ども部屋の様子をしっかり把握できるよう、各家庭で「自分の部屋に鍵をかけてはいけない」といったルールづくりをしていこう。

(g)無際限にテレビやテレビゲームに浸らせないようにしよう
  テレビ、テレビゲームやビデオへの過度ののめり込みは、人間関係の希薄化、直接体験の不足を招き、人間関係をつくる力、他人を思いやる心などが十分はぐくまれない。また、空想と現実との混同、死や生に関する現実感覚の希薄化が生じることが懸念される。各家庭でテレビなどの視聴時間等についてルールを設けるようにしよう。

(h)暴力や性に関するテレビ・ビデオの視聴に親が介入・関与をしよう
  親は、暴力や性に関する情報など、有害な情報と判断する場合は、子どもが接しないよう促したり、接することを止めさせてほしい。特に、極端に暴力的な場面、露骨な性的描写や人権を軽んじるような内容のテレビ番組やビデオ等は親の判断で子どもに見せないようにし、それを家庭でのルールにしていこう。

(6)  遊びの重要性を再認識しよう

(a)「遊び」が特に幼児期から小学生段階で大切なことを認識しよう
  i)  特に幼児期から小学生段階の子どもにとって、友だちとの遊びの意義は大きい。現状は、遊びの機会の減少、屋内での「孤立型の遊び」が目立つ。
  ii) 想像力が求められる遊びができない「遊べない子ども」が現れるようになっている。このことは「遊ばせない親」「子どもと上手に遊べない親」の存在を示す。
  iii)親は、知育優先の考え方を改め、子どもが小さい頃は、友達と一緒にのびのびと遊ばせよう。

(b)自然の中で伸びやかに遊ばせよう
  今日の子どもたちは、自然の中での遊びの機会が失われてきている。親は子どもを自然の中に連れ出して伸びやかに遊ばせ、動植物など自然との触れあいを促し、その楽しさに気づかせる努力をしてほしい。地域の自然に親しむ活動に家族ぐるみで参加したり、時には親から離して子ども一人で参加させるようにしていこう。

(c)心の成長を歪める知育に偏った早期教育を考え直そう
  小さい時から子どもを学習塾に通わせたり、通信教育を受けさせるなど、知育に力を入れる親が少なくない。その結果、幼児の遊びや体験活動の機会を減らすことは好ましくない。また、親が、他の子どもとの相対的な比較に目を奪われたり、早く成果を挙げようと焦ったりして、子どもの心の豊かな成長を歪める場合も多い。このような「早期教育的雰囲気」に浸されていないかよく省みよう。

(d)子どもの生活に時間とゆとりを与えよう
  子どもたちは、ゆとりのある自由な時間を与えられることによって、はじめて心から遊びを楽しみ、遊び方を創意工夫し、のびのびと個性や創造性を伸ばすことができる。
  親は、子どもたちに時間とゆとりを与えよう。

(7)  異年齢集団で切磋琢磨する機会に積極的に参加させよう

    身近な地域のボランティア・スポーツ・文化活動、青少年団体の活動、地域の行事に積極的に参加させよう
    身近な地域のボランティア・スポーツ・文化活動、青少年団体の活動は、異年齢集団の中で、子どもたちの心の成長を促す大切な機会を提供している。しかし、現実には十分な参加状況とは言えない。親は、積極的に子どもたちを参加させてほしい。


第3章  地域社会の力を生かそう

(1)地域で子育てを支援しよう

(a)どの親も通過する母子保健の機会を積極的に生かそう
  どの親も通過する母子健康手帳の交付時や1歳6か月児、3歳児などの健康診査、小学校入学前の健康診断の機会を積極的に生かし、親が子育てやしつけの在り方を学ぶことができるようにしていこう。
  i)  家庭でのしつけの在り方や心の成長に関して配慮すべき点を盛り込んだ簡便な冊子(例えば「親子手帳」、「家庭教育手帳」、「しつけ手帳」)を作成して親に渡すこと
  ii) 集団健診の際に、家庭教育学級等(講演やビデオ等の活用)を開設したり、家庭教育相談のコーナーを設置すること
  iii)様々な家庭教育の学習機会への参加を呼びかけること
  iv) 教育相談機関の存在をカード等の形で案内すること
  v)  父親の子育てへの参加に関する啓発的な資料(例えば「父子手帳」)を作成・配布すること
  vi) これらの取組に当たっては文部省と厚生省、地方公共団体、特に市町村の母子保健担当部局と教育委員会が密接に連携して取組を進めること

(b)24時間親が気軽に悩みを相談できる体制づくりをしよう
  各地域で、子育てに不安を持つ親や思春期の子どもをもつ親が気軽に悩みを相談できる体制を整えよう。
  i)  電話、インターネット等を利用して、24時間子育ての相談に対応できる体制を作ること
  ii) 公的な機関や様々な団体の相談窓口の連絡先を親に十分情報提供すること
  iii)各相談機関では、相談者のニーズに応じて、より適切な相談機関を紹介したり、必要な情  報を他の機関に伝えるなど、連携を密にすること
  iv) 親同士が子育てを学び合い、地域の人々が助け合う子育て支援グループを育成すること

(c)家庭教育カウンセラーを配置し、子育て支援に活用しよう
  各相談機関における専門的なカウンセリングの必要性に対応するため、臨床心理士や精神科医など,専門的な知識や能力を備えた人材を「家庭教育カウンセラー」として活用しよう。

(d)中・高校生がもっと乳幼児と触れあう機会をつくろう
  子どもが乳幼児と触れあう体験が少なくなり、生命の尊さや子育ての苦労を学ぶ機会が少ない。中・高校生が実際に乳幼児と触れあい、世話をする体験を意図的に与えていこう。幼稚園、保育所、保健所、乳児院等で、中・高校生が体験学習やボランティア活動を行う機会を拡大していこう。

(e)家庭教育の学習機会を幅広く提供しよう
  地域の家庭教育に関する学習機会を工夫していこう。
  i)  1歳6か月、3歳児の健康診査等の機会を生かして、家庭教育学級を開いたり、視聴覚教  材を活用した学習機会を用意すること
  ii) インターネット等を活用して、家庭にいながら手軽に学習できるようにすること
  iii)企業内に家庭教育の学習の場を設け、父親の受講を促すこと

(f)企業中心社会から「家族に優しい社会」への転換を図ろう
  父親が家庭教育にもっと参加し、母親も社会の中で自己実現を目指すことができるような男女共同参画社会、夫婦が「ゆとり」を持って子育てをできるような社会、「家族に優しい社会」をつくっていこう。
  i)  労働時間の短縮、育児休業や長期休暇の取得の促進、フレックスタイム制等の弾力的な労  働時間制度の普及
  ii) 育児のために退職した者の再就職の支援
  iii)我が国に特徴的な単身赴任を少なくすること

(2)異年齢集団の中で子どもたちに豊かで多彩な体験の機会を与えよう

  i)  長期の自然体験活動を振興しよう

(a)民間の力を生かして長期の自然体験プログラムを提供しよう
  長期にわたって、親と切り離し、異年齢の子ども同士が自然の中で切磋琢磨するプログラムを積極的に提供していこう。その際、公的な機関だけでなく、青少年団体が企画・運営するプログラムや、民間教育事業者等が運営の主体となる民間の活力を活かしたプログラムが大いに提供されていく必要がある。

(b)親と離れて子どもたちが集団生活を営む「長期自然体験村」を設置しよう
  豊かな自然環境の下、長期間にわたって親と離れ、異年齢の子どもたちが寝食を共にして、自然体験、環境学習等を行う「長期自然体験村」を設置しよう。そのため、既存の公的な青少年教育施設や各省庁、地方公共団体の施設を有効かつ弾力的に活用したり、民間企業が所有する施設や宿泊施設、農家などの協力を幅広く得ること等の取組が求められる。

(c)「山村留学」や「国内ホームステイ」の取組を広げよう
  都市部の子どもたちが親元を離れ、自然環境の豊かな地域で暮らしながら、その地の学校に通学する「山村留学」の取組を進めよう。将来的には、国内で異なった家庭で過ごす体験をする「国内ホームステイ」の取組を広げよう。

  ii)  ボランティア・スポーツ・文化活動、青少年団体の活動等を活発に展開しよう

(a)自分の大切さに気づかせ、社会貢献の心をはぐくむボランティア活動を振興しよう
  ボランティア活動に参加している子どもはまだ少ない。しかし、半数以上の子どもは参加したい意志を持っている。今後は、一層多くの子どもたちがボランティア活動に参加できるよう、行政や民間団体が活動の機会や情報を十分に提供していこう。
(b)スポーツ・文化活動や青少年団体の活動を積極的に展開しよう
  異年齢の子ども同士が切磋琢磨する地域のスポーツ団体や文化団体、青少年団体の活動は、極めて重要である。しかし、参加者数の減少や指導者の確保難と言った問題を抱えるところも多い。
  i)  行政は、指導者の養成、情報提供の充実など、団体活動の一層の振興を支援していこう。
  ii) 各団体においても、子どもたちにより魅力的な活動の場をつくる努力をお願いしたい。

(c)学校は、学校外活動に関する情報提供を行い、参加を奨励しよう
  i)  学校は、学校外活動に関する情報を子どもたちに積極的に提供し、参加を奨励しよう。
  ii) 学校では、ボランティア活動などの体験活動を、高等学校において単位として認定するなど積極的に評価することが望まれる。

(d)自由に冒険のできる遊び場をつくろう−「ギャングエイジ」にふさわしい遊びを小学生になると、「ギャングエイジ」での仲間関係を通じて、ルールを守る心、責任感、人間関係をつくる力などを培う。しかし、ギャングエイジにふさわしい遊び場が減少している。自然と触れあいながら、自由に遊べる空間を子どもたちにもっと提供していこう。

iii)  地域の行事や様々な職業に関する体験の機会を広げよう

(a)地域の行事に子どもたちをもっと参加させよう
  市町村、町内会、商店街、青年会議所、地場産業などの伝統的な祭りや町おこしの活力を子どもたちの心の育成に生かすようにお願いしたい。地域の行事への子どもたちの参加意欲を高めるため、子どもと一緒に活動するプログラムを考えたり、子どもたちが責任を伴う役割に携わるようにするといった工夫を望みたい。

(b)会社や工場での子どもたちの見学・体験活動を広げよう
  働くことの大切さ、自分の希望や将来の職業について考える契機として、様々な職業の活動を見たり体験する機会を子どもたちに提供しよう。積極的に事務所や工場を開放する機会を設けている企業も多い。行政は、子どもたちのために門戸を開けている公の機関や企業等の施設について、学校や地域住民への情報提供に努め、学校引率や家族・子どもたちの見学・体験活動を奨励していこう。

(c)職場見学の機会を拡大し、働く父母の姿を見せよう
  今日、親が働く姿は子どもの目に映りにくくなっている。一所懸命に働くことの大切さを子どもたちの心の中に刻みこむ意識的な努力や工夫をしていこう。企業では、従業員の子どもたちが職場を見学し、社会の中で働く親に接することができる機会を積極的に設けてほしい。

ix)  情報提供システムを工夫し、子どもたちの体験活動への参加を可能にしよう
    コンビニや郵便局等の身近な生活拠点を活用し、子どもの学校外活動に関する情報を  提供しよう
  多くの子どもたちが、自然体験やボランティアなどの学校外活動に参加できるようにするためには、活動についての情報を容易に入手できることが必要である。各地域で、学校外活動に関する情報誌を定期的に作成し、コンビニエンスストアや郵便局など身近な生活拠点に置くようにしよう。情報誌の作成には、民間の協力を得て、公的な支援の下、有料化して作成・頒布することも考えられてよい。

(3)子どもの心に影響を与える有害情報の問題に取り組もう

(a)テレビ・ビデオ等の関係者による自主規制などの取組を進めよう
  次の点の取組を求めたい。
(ア) テレビ番組については、多くの親が子どもへの影響を心配している。放送局内でのチェック機能の充実やPTA等の関係者の意見の反映など、放送を送り出す側の積極的な自主規制の取組の充実
(イ) ビデオについては自主規制を行う団体への加盟の促進、年齢区分によるきめ細かい審査の実施等の取組の促進
(ウ) テレビゲームやインターネットについては、よりきめ細かいガイドラインを策定するなど更なる自主規制
(エ) 出版物については、成人向けのマークの表示などの取組の促進
(オ) レンタルビデオ店、書店、コンビニエンスストアでは、成人向けの雑誌やビデオを一般のものと区分して陳列し、未成年者に入手させないことの徹底

(b)業界団体とPTA等の教育関係団体との定期的な協議の場を設けよう
  次の点の取組を進めよう。
(ア) テレビ、ビデオ等の業界団体とPTA等子育てに関わる教育関係団体との間で定期的な協議の場を持つこと。その際、教育関係団体では、十分な調査研究を行い、効果的な話し合いが持てるようにすべきであること
(イ) 教育関係団体が、必要に応じ、番組のスポンサーと話し合いの機会を持ち、要請を行うなどの取組
(ウ) 各地域において、書店、コンビニエンスストア、レンタルビデオ店等と地域の教育関係団体が有害図書やビデオの販売や貸し出しの問題について協議を行う場を設けること

(c)有害情報から子どもを守る仕組みをつくろう
  有害情報から子どもを守るためには、有害情報を排除する仕組みについての検討が必要である。
(ア) テレビについては、諸外国で導入されている事前表示制度やVチップ制度を参考にしつつ、焦眉の課題として、事前表示やVチップの導入について、放送業界や郵政省などの関係省庁において前向きかつすみやかに検討を進めることを強く要望したい。
(イ) インターネットについては、受信者側において有害情報を阻止できる技術(フィルタリング技術)の更なる開発とその普及に向けて、関連業界と関係省庁が連携し、また諸外国の関係機関とも積極的に協力して、取り組んでいくことを要望したい。

(d)有害情報の問題についての住民による積極的な取組を進めよう
  各地域で、PTA関係団体、青少年団体、少年補導員、学校等が連携を密にして、青少年にふさわしくない雑誌やビデオ等の販売や貸出しについて自主規制を求めたり、条例の制定やその運用の見直しを目標として活動を展開することが望まれる。また、よりよい法的規制の在り方や、有害情報への対処について関係省庁が密接に連携して取組を進めることを強く求めたい。


第4章  心を育てる場として学校を見直そう

(1)幼稚園・保育所の役割を見直そう

(a)幼稚園・保育所で、道徳性の芽生えを培おう
  i)  幼稚園・保育所においては、家庭と連携して、人としてしてはいけないことに気づくこと、何がよくて何が悪いかを考えることに適切な働きかけをお願いしたい。
  ii) 一人一人の子どもの姿を親にしっかりと伝え、家庭で行われるべき大切なしつけが欠けている場合は、親への働きかけをしてほしい。

(b)体験活動を積極的に取り入れよう
  自然体験や社会体験、例えば、動植物の飼育・栽培、地域の行事への参加、高齢者との触れあい、少年自然の家などを利用した活動を取り入れるようにしてほしい。

(c)幼児の自然体験プログラムを提供しよう
  親と離れ、友達と寝食を共にする幼児キャンプなどの自然体験プログラムに、園ぐるみの参加や、個々の幼児の参加を進めていくべきである。

(d)幼稚園・保育所による子育て支援を進めよう 
  幼稚園・保育所においては、次の取組をお願いしたい。
  i)  親同士が交流する子育てサークルの活動の支援
  ii) 子育て公開講座の開設や嘱託医との連携による子育て相談の充実
  iii)親が幼稚園・保育所の保育活動に参加する機会の拡大
  iv) 未就園児やその保護者を対象に、体験入園の機会の設置
  v)  中・高校生が乳幼児と触れあい、世話をする機会を積極的に提供すること
  vi) 幼稚園の教員、保育所の保育者、小学校教員との合同の研修の充実

(2)小学校以降の学校教育の役割を見直そう

i)  我が国の文化と伝統の価値について理解を深め、未来を拓く心を育てよう

(a)我が国や郷土の伝統・文化の価値に目を開かせよう
  国や郷土の伝統・文化や歴史に対する理解を深め、尊重する態度の育成が重要である。そのため、
  i) 各教科や道徳・特別活動での取組を進めること
  ii) 国や郷土の遺跡や文化遺産、伝統工芸や芸能に直接触れ、親しむ体験学習の積極的な取り入れ
  iii)地域の人材の協力を得ること
  iv) 教員自体が、国や郷土の伝統・文化に親しむ学習に参加できるよう、研修等で配慮

(b)権利だけでなく、義務や自己責任についても十分指導しよう
  学校の教育活動全体を通じて、自由や権利を行使する際には、同時に、他者の自由や権利を大切にすること、行動には責任が伴うこと、進んで義務を果たすことの大切さについての指導を今後一層重視する必要がある。

(c)よりよい社会や国づくりへの参加と国際貢献の大切さに気づかせよう
  発達段階に応じて、国や社会の成り立ち、仕組み、参政権の行使等により自らが社会や国づくりへ参加することの大切さ、我が国や世界が直面している課題と国際貢献の大切さに関する理解を深めるようにする必要がある。

(d)人の話を聞く姿勢や自分の考えを論理的に表現する能力を身につけさせよう
  人の話をよく聞く姿勢、自分の考えを論理的に表現する能力を身につけていくことができるよう、ディスカッションやディベートなどを、指導の中に大いに盛り込んでいってほしい。

(e)科学に関する学習を生かし、驚きや自然への畏敬、未来への夢をはぐくもう
  科学に関する学習、特に観察・実験、探求活動を通して、自然の神秘への驚きや感動の体験を与え、自然に対する畏敬の念をはぐくむことができるよう、次のような努力を求めたい。
  i)  観察や試行錯誤しながらの実験などの活動をより多く取り入れること。そのためには教育内容の厳選の努力が求められること
  ii) 博物館等様々な学校外での学習の機会を活用していくこと
  iii)第一線の研究者や技術者等が子どもたちに直接語りかける機会を積極的に設けること 

(f)子どもたちに信頼され、心を育てることのできる先生を養成しよう
  子どもに信頼され、心を育てることのできる先生を養成するため、次の取組を求めたい。
  i)  教え方の指導や子どもとの触れあいを重視する観点から、教員養成カリキュラムの改善・充実を図ること
  ii) 採用に当たっては、面接の重視、ボランティア活動や自然体験活動の経験を採用の重要な資料とすること、地域での実践活動の評価、選考に当たって地域の有識者等の起用
  iii)現職研修については、大学院レベルの現職教育や、民間企業等での体験的な研修を充実

ii)  道徳教育を見直し、よりよいものにしていこう−道徳の時間を有効に生かそう

(a)道徳教育を充実しよう
  次のような方向で道徳教育を充実することが必要である。
  i)  「道徳の時間」の時間数を確保するなど、指導体制を整えること
  ii)  教員一人一人が道徳教育の重要性を認識すること。校長は教員の啓発に努めること
  iii) 特別活動等における体験的・実践的活動との関連を重視して、子どもが自ら考えることを大切にした道徳の授業を実践すること
  iv) 「道徳の時間」を学校教育全体を通して行われる徳育の「かなめの時間」として活用すること
  v)   教材等を工夫して、子どもの心に響き、感動を与える授業を行うこと
  vi)  保護者や地域住民が学校の道徳教育の実施状況に関心を払い、学校の求めに応じ積極的に協力していくこと
(b)もっと体験的な道徳教育を進めよう
  i)  道徳教育で学んだことが実践に結びつくよう、日常的な生活や身の回りの体験を踏まえ、子どもが自ら考える道徳教育を実践すること
  ii) ボランティア活動、自然体験活動、郷土の文化・伝統に親しむ活動と関連させて指導の充実を図ること

(c)子どもたちの心に響く教材を使おう
  i)  子どもたちの心に響き、自分で考えることを促す教材を用いる必要がある。偉人の伝記等を再評価したり、名作、古典、随想、民話、詩歌、論説などの資料の活用が望まれる。
  ii) 行政は、地域の特色を生かした優れた教材の研究開発、各地域・学校で用いられている優れた教材に関する情報の収集・提供などを進め、各学校の取組を支援すべきである。
  iii)「正義とはどういうことか」といったテーマを掲げてディスカッションなどを行うことは有意義である。

(d)よい放送番組ソフトを教材として有効に活用しよう
i)  歴史番組、ドキュメンタリー番組、科学番組などの中には、道徳教育の教材として価値のあるものも多く、それらのソフトを積極的に活用する。
ii) これらのソフトを各学校が随時有効に活用できるよう、視聴覚センター・ライブラリー等の充実を図る。

(e)「ヒーロー」・「ヒロイン」がテレビやインターネット等を通じて子どもたちに語りかける機会を設けよう
  「ヒーロー」や「ヒロイン」が、子どもたちに、目標に向かって努力する意義、ルールを守ることや礼儀の大切さなどについて語りかける機会を数多く設けていこう。このため、
  i)  子どもたちに語りかける「ヒーロー」等の姿をテレビ番組やビデオにして、各学校の利用に供するシステムをつくること
  ii) インターネット等を活用して、子どもたちが直接話を聞いたり、問いかけをしたりするシステムをつくることが望まれる。

(f)道徳の時間に子どもが一目置く地域の人材の力を借りよう
i)  子どもたちが一目を置く地域の人材を積極的に活用していくこと(例えば、地域のスポーツ指導者、伝統文化の継承者、企業の専門家、外国人留学生)。
ii) 行政においては、協力が得られる人材を「学校支援ボランティア」として人材バンク化し、学校が活用できるように支援すること

(g)地域住民や保護者の助言を得て道徳教育を進めよう
  道徳教育の重点の置き方や教材の工夫などについて、校長がリーダーシップを発揮して、保護者(PTA)や学校外の有識者の意見を聞き、必要に応じて助言を求めるようにしていくべきである。

iii) カウンセリングを充実しよう

(a)スクールカウンセラーに相談できる体制を充実しよう
  i)  全ての子どもがスクールカウンセラーに相談できる機会を設けていくことが望まれる。
  ii) スクールカウンセラーなどに相談しやすい環境をつくるため、カウンセリングルームの設置を進めるべきである。
  iii)スクールカウンセラーだけでなく、養護教諭、学校栄養職員、学校医、退職教員、青少年団体指導者、ボランティアなどの協力を得て、子どもの相談に応じることが望まれる。

(b)スクールカウンセラーの養成の充実を図ろう
  スクールカウンセラーの質・量の確保を図っていくためには、臨床心理士等「心の専門家」の高等教育機関における養成の充実、特に社会人入学にも配慮しながら、大学院の充実を図ることが望まれる。

(c)教員はカウンセリングマインドを身につけよう
  教員は、教科指導の実力を持つとともに、カウンセリングマインドを身につけ、子どもたちの悩みを受け止めていくことが大切である。行政は、養成・研修の各段階を通じて教員のカウンセリングマインドの育成のための取組を進めるべきである。

(d)「心の居場所」としての保健室の役割を重視しよう
  「保健室登校」が増加し、保健室は「心の居場所」になっている。各学校は、養護教諭の役割を重視し、心の問題に適時適切に対応していく必要がある。また、養護教諭の複数配置の着実な推進、養護教諭の養成カリキュラムの改善や体系的な現職研修の一層の充実等を求めたい。

iv)  不登校にはゆとりを持って対応しよう

  不登校は心の成長の助走期ととらえ、ゆとりを持って対応しよう
  不登校は、心の成長の助走期ととらえ、周囲がゆとりを持って対応する必要がある。早く登校できるようになることにこだわるのでなく、子どもが不登校を克服する過程でどのように個性を伸ばし、成長していくかという視点を持つことが求められる。
こうした基本的な考え方に立ち、次のような取組を求めたい。
  i)  学校内外の専門家や教育相談機関との緊密な連携や適応指導教室の積極的な活用、マルチメディアを活用した補充指導の実施
  ii) 不登校の子どもたちのための野外体験活動プログラムの実践研究の推進
  iii)「中学校卒業程度認定試験」を不登校の子どものためのバイパスとして活用
  iv)  高校入試の選抜資料として、調査書に代わり、不登校の生徒や保護者がその学校への進学動機や、そこで学びたいことなどを記述した資料を積極的に活用すること

  v)  問題行動に毅然として対応しよう

(a)「まじめさ」や「異質さ」に対する不当ないじめを許さないようにしよう
  i)  力の弱い者だけでなく、規範意識の高い真面目な子どもや主体性を持って生きようとする子ども、周囲に付和雷同しない子どもなどが「異質」と見なされ、いじめの標的にされている。このような不当ないじめを許さないよう全校一丸となった対処を強く望みたい。

  ii)  正義感、人権を尊重する心、互いの個性を大切にする態度を子どもたちが身につけ、仲間の人間関係が前向きに切磋琢磨し合う関係となるよう、積極的な働きかけをお願いしたい。

(b)教師の努力でいじめをなくしていこう
  i)  教師の努力によっていじめが解決に向かう場合が多い。全ての教師が、「どんな理由があっても、いじめは絶対に許されない」との認識に立ち、自信を持って問題解決に取り組むことをお願いしたい。
  ii) いじめをやめさせようと行動する正義感に富んだ勇気のある子どもたちが大勢いる。そうした子どもたちを応援し、いじめを許さない仲間の輪を広げることにより、学校からいじめ  を無くしていこう。

(c)薬物乱用等の危険性についての理解を深めよう
  i)  学校では、教育活動全体を通じて、子どもたちが、「薬物乱用は絶対に行うべきではないし、許されることではない」という認識を身につけるよう、中・高等学校はもとより小学校段階からの取組をお願いしたい。
  ii) その際、学校外の専門家(例えば警察職員、麻薬取締官OB、医師、薬剤師等)から学ぶ 機会を積極的に設けるべきである。

(d)性をもてあそぶ考え方を正そう
  i)  「援助交際」などは、ディスカッションの方法などにより、性的な関係を持つことで金銭を得ることは法律で禁じられている売春に他ならず、人間として恥ずべき行為であること、様々な犯罪に巻き込まれる危険を伴うこと、将来の人生を生きていく上での大きな心の重荷となることなどを気づくようにしていくことが大切である。
  ii)  大人の側に大いに反省を求めたい。各都道府県においては、条例の淫行処罰規定等の厳正な運用がなされるよう、警察の取組をお願いしたい。

(e)一所懸命に努力する学校・教員を支えよう
  i)  情熱を持ち、毅然とした姿勢で、生徒間暴力や対教師暴力などの問題に力を尽くしている学校や教員を支え、励ましていかなければならない。
  ii) 学校や教員が萎縮することなく暴力的な行動に対処できるようにしていくためには、教育委員会の支援だけでなく、保護者や地域の支えが重要。校長は、日頃から保護者(PTA)や学校外の有識者からの助言を得ながら、生徒指導に関する基本的な方針、問題行動への対処の方針、警察等関係機関との連携の方針などを確固としたものとしておき、問題行動が生じた際に迅速かつ果断に対応していくべきである。

(f)警察や児童相談所等の関係機関とためらわずに連携しよう
  学校の指導だけで対応することが著しく困難な場合には、ためらわず警察等の関係機関に相談し、適切な対応を求めていくべき。
  i)  平素から関係機関と情報交換を行い、信頼関係をつくっておくこと
  ii) いかに生徒への働きかけを行っても、他の生徒の学習を著しく妨げたり、心身の安全を脅かすときには、出席停止等の措置をとったり、場合によっては警察官の定期的あるいは随時の学校への訪問を求めること、すみやかな警察への連絡・協力要請を行うことをためらうべきでないこと
  iii)「子どもたち全体が安心して学ぶことのできる環境を確保する」ことは、学校に課せられた責務であり、学校外の反応を気にするなどして、時機を失した措置にならないよう校長の的確な判断を求めたい。
  iv) 専門的なケアを必要とする子ども等について、児童相談所などとの連携を進めること
  v)  警察等との連携方針について、日頃から保護者(PTA)や学校外の有識者と意見交換を行い、意思疎通を図っておくこと

vi)  ゆとりある学校生活で子どもたちの自己実現を図ろう

(a)教育内容を厳選し、自ら学び自ら考える教育を進めよう
  子どもたちが存在感や自己実現の喜びを感じられるような学校づくりを目指した努力が必要である。このため、次のことを求めたい。
  i)  自ら学び自ら考える教育への転換を目指し、教育内容を厳選
  ii) 子どもたちのよさを評価し、個性を伸ばす教育を展開し、子どもたちが成就感や達成感を感じられるようにすること
  iii)教育活動にもっと子どもの選択を生かすようにすること
  iv) 教員と子どもとが語り合うためのゆとりを確保するため、行政側の努力や学校の行事や会議の運営、研究や研修の在り方について見直すこと

(b)トライ・アンド・エラーが可能で、多様な努力を評価する入試改革を進めよう
  i)  本審議会は、第二次答申において、個性尊重の基本的な考え方に立って、選抜方法・尺度の多様化について様々な具体的提言を行った。これらの提言に基づいて大学・高等学校の入学者選抜の改善が図られるよう、関係者の努力を望みたい。
  ii) これからの変化の激しい時代では、18歳の時点での試験の合否はかつてほどの大きな意味を持たない。その後の人生においていかに学び、真の実力を身につけていくかが問われる。企業や学校も「生きる力」を重視し、それを評価していく方向へと変わりつつある。親の価値観を変えていくよう各学校においても、進路指導の機会等を通じて、働きかけをしてほしい。

(c)子どもたちに読書を促す工夫をしよう
  子どもたちの読書量は、学年の進行に伴って減少し、全く本を読まない者も増加している。学校においては次のような工夫をしてほしい。
  i)  読書の楽しさとの出会いをつくること。例えば、毎朝「10分間読書の時間」や、学校独自の読書週間を設けること
  ii) 読書で得た感動を子どもたちが表現する様々な方法の工夫
  iii)学校図書館を「心のオアシス」として活性化し、子どもたちがくつろぎ、進んで読書を楽しむために訪れるような環境づくりをすること


(大臣官房政策課)

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