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中央教育審議会

 1998/6 議事録 
中央教育審議会第220回総会 (議事録) 

   中央教育審議会  第220回総会

議  事  録


  平成10年6月30日(火)12:30〜14:00
  霞が関東京會舘      35階  ゴールドスタールーム


    1.開    会
    2.議    題
          「幼児期からの心の教育の在り方について」答申
    3.閉    会

    出    席    者

    委  員              専門委員                    事務局
      鳥居副会長          明石専門委員                町村文部大臣        
      木村座長            油井専門委員                狩野政務次官        
      河野座長            安藤専門委員                佐藤事務次官        
      市川委員            猪股専門委員                梶野生涯学習官      
      薄田委員            衣笠専門委員                辻村初等中等教育局長
      沖原委員            里中専門委員                御手洗教育助成局長  
      河合委員            佐野専門委員                佐々木高等教育局長  
      川口委員            佐保田専門委員              高  総務審議官      
      國分委員            末吉専門委員                杉浦政策課長        
      小林委員            平山専門委員                その他関係官        
        木委員            牟田専門委員                                    
      田村委員            山折専門委員                                    
      俵  委員            和田専門委員                                    
      土田委員                                                            
      根本委員                                                            
      横山委員                                                            


○  それでは、ただいまから中央教育審議会第220回の総会を開催いたします。
  本日は、皆様御多忙のところを本会合に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。皆さん御存じのとおり、有馬会長が委員を辞任されまして、現在、会長が空席となっておりますので、会長が決まるまでの間、私が議事を進行させていただきますので、よろしくお願いいたします。
  なお、本日は、新会長の選出、それから「幼児期からの心の教育の在り方について」の答申提出を予定しております。
  それでは、最初に配付資料の確認をお願いしたいと思います。事務局、どうぞお願いいたします。

<事務局より説明>

○  それではただいまから会長の選任に入りたいと存じます。

<会長の選任については以下のように議事が進められた>
  1、事務局より中央教育審議会の会長の選任方法について、中央教育審議会令及び中央教育審議会運営規則の説明がされた。
2、会長に根本委員を推挙する旨、発言があった。
  3、会長に根本委員が選出された。

○  ありがとうございました。以後、議事進行は会長にお願いをしたいと存じます。どうぞ会長よろしくお願いいたします。

○  それでは、ただいま皆様の御推挙によりまして、新たに会長職をとることになりましたけれども、御案内のとおり、有馬先生の参院出馬に伴う特殊の事情によって、私に番が回ってきたわけでございます。私自身、大変身の引き締まる思いでございますし、大変に恐縮しております。
  ただいま御指摘がございましたが、中教審に対する期待は、国民の中にも日増しに強くなってきておりまして、昭和27年に中教審が発足してから46〜47年たったわけでございますが、その幾つかの節目の中でも、特に私どもが直面している事態というのはエクストラオーディナリーなものではないかと私は思っております。
  そういう点からいたしまして、今回、「幼児期からの心の教育の在り方について」、大臣に答申いたしますが、その次の地方分権に伴う教育行政の問題につきましても、皆様の御協力を得て立派な答申ができるようにしたいと思っております。
  ひとつ、微力ではございますが、私なりに努力してまいりますので、何とぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。どうもありがとうございます。
  それでは、審議に入らせていただきますけれども、まず修正点についての説明ということでございまして、その修正点につきまして、主なところを御説明いたします。
  まず、資料の中の20ページでございますけれども、前回総会での委員の意見により、食事の機会を活用したしつけの重要性に関する記述を追加するとともに、より正確な記述とするため必要な修正を行いました。これが第1点でございます。
  次に第2点、88ページでございますが、前回総会での委員の意見に基づきまして、電話相談に当たっては、大人が子どもの声を十分聞きくという姿勢で対応することにより、子どもにとって身近な相談相手となるという趣旨の記述を追加することといたしました。  次に第3点、150ページでありますが、前回総会での委員の意見に基づきまして、「民間の人々の豊かな発想」という表現を、「芸術家や心理学者、産業界の関係者などの豊かな発想」という具体的な表現に修正してあります。
  最後に、そのほか、前回総会での委員の意見に基づく修正や、より表現の正確性を期するための修正など、必要な修正を行ったところでございます。以上が修正点ということでございます。
  それでは、答申をお渡しする前に、一言御挨拶いたします。このたび、新たに会長に選出されましたけれども、大変に責任の重さを痛感しております。
  昨年の8月に大臣から、三つ子の魂百までと申しますけれども、「幼児期からの心の教育の在り方について」検討してもらいたいという御要請がございました。ことしの3月に中間的な報告をいたしました。その後、国民のかなり広範囲にわたります皆様の御意見を集約いたしまして、前会長有馬さん、それから鳥居さん、座長の木村さんが中心になられまして、委員の方々の絶大な協力によって、今日お渡しいたします答申ができ上がったわけでございます。
  内容的には、前提といたしまして、何よりも我々大人の社会のモラルの低下を防止しなければならないという大前提に立っております。その上で、家庭・地域・学校というトライアングルがしっかりと子どもたちの教育に当たって機能するように、かなり具体的な提言を中に含めております。したがいまして、この提言を実現するに当たっての行政、あるいは予算措置等々ございますけれども、これはぜひとも文部省のほうにおいて前向きに取り上げていただきたいと思っております。
  ここにマスコミのテレビも入っておりますけれども、問題が問題だけに、これはまさに国民一人一人の問題でございます。マスコミの方々の絶大なバックアップがなければ、この難しい改革はなかなかできないのではないかと痛感しております。そういう点でも、ひとつ政府の中にあって大臣の手腕に御期待したいと思っております。
  それでは、答申をお渡ししたいと思います。本審議会は平成9年8月4日、文部大臣から「幼児期からの心の教育の在り方について」諮問を受け、審議を進めてまいりました。このたび次のとおり結論を得ましたので、答申いたします。

          〔根本会長から答申を町村文部大臣に手交〕

○町村文部大臣  ありがとうございます。委員の先生方、専門委員の皆さん、どうもありがとうございました。

○  それでは、大臣から一言御挨拶賜りたいと思います。

○町村文部大臣  ただいま、根本会長から「幼児期からの心の教育の在り方について」の答申をいただきましたが、御挨拶の前に、新会長に御就任をなさいまして、今後何かと文部省挙げて御指導をいただくことになりますが、ひとつよろしくお願いを申し上げます。  昨年の8月ということでございますから、1年弱でございますが、大変短い期間ではございましたが、木村座長を初め、また委員の皆さん、専門委員、大勢の皆さん方の大変熱心な御審議、御努力によりまして、大変立派な答申をおまとめいただきましたことに対しまして、心から感謝を申し上げます。
  3月に中間報告が出され、それをかなり広範にあちこちに説明をしたり配ったりということをしておりますし、私どものほうにも数々の反応がございます。私もこの4月に入りましてから、中間報告とあまり変わらないという前提に立って、相当あちこちに説明をいたしましたが、非常に反応が多うございます。総じて、本当にこういう方向で心の教育を進めなければいけないなという肯定的な、あるいは大いに我々もやらなければいけない自らの問題だとか、こう受けとめてくださる方が非常に多いような感じがいたしております。それだけに、家庭、そして地域社会、学校、それぞれが果たすべき役割の大きさを感ずるわけでございますし、もちろんその前提として、根本会長が言われました大人社会の責任の大きさを踏まえてのことであろうと思います。
  また特に家庭の問題、家庭のしつけ、家庭の教育は、今まであまり大きな行政的な取り上げ方もしてまいりませんでしたし、大切だとは言われながらも、いろいろな分野で正面切って取り上げられたことが少なかったんだろうと私は思うんでありますが、今回のこの答申を契機に、それぞれの家庭あるいは地域社会、学校、特に家庭において、できればこれが家庭の話題になるぐらいになってもらいたいという期待をしているわけでございますし、大いに議論になるように私どもも努力をしていきたいと考えておるところでございます。
  今、会長から早速に、これをぜひ実現するために文部省も頑張れという檄を飛ばしていただきまして、大変ありがたい御指導でございます。私どもは既に、これは里中先生の御協力もいただいたりして、簡略版の絵の入ったパンフレットを100万部以上つくって、今、鋭意それを各方面に配布し、説明をしているところでございます。
  また、4月に「教育改革プログラム」というのを再改訂いたしましたが、その4本柱の第1番目に「幼児期からの心の教育」というのを掲げておりまして、ここに御指摘のある問題に加えまして、広い意味での豊かな心を涵養するための、例えば週5日制を1年早く実施いたしますとか、あるいはきょうお手元に配らせていただきましたが、教育課程審議会のほうでも学校で学ぶべき内容を厳選するといったようなことを含めて、広い意味の豊かな心を育てる教育を総合的に進めていかなければいけない、かように考えております。  そして、つい先日成立をいたしました補正予算の中にも、この御提言を受けまして、全中学校に「心の教室」というものを開くということで、特に夏休みに突貫工事でやっているところもあるようでございますが、2学期からはすべての中学校に「心の教室」を開設し、そしてそれぞれの実情に応じてでございますが、そこに「心の教室」相談員といったような方々に常時いていただいて、保健室は大変込み合っている学校もあるようでございますから、保健室に皆さん行かないで、そちらのほうに行っていただいて、こうした心の問題を学校は学校としてしっかりと受けとめられるようにしよう。そのための所要の予算も計上いたしました。
  また、特に幼児期からの心の教育ということで、家庭教育に、急にどれだけの効果があるかわかりませんけれども、母子手帳を配付し診断をする際に、要するに妊娠をしたときと、1歳半、3歳、それから就学前と4回の母子保健の機会がございますので、母子の健康に加えまして、若いお父さん、お母さんの教育の場としてもこれを活用したらどうだろうかということで、鋭意厚生省とも相談いたしまして、きょう御答申をいただきました内容を中心として、親子手帳というものをつくり、そこでただ渡すだけではなくて、できれば保健所のそばのコミュニティセンターなどで部屋を借りて、しかるべき専門家の方々から、「こういうことを、お父さん、お母さん考えてみてくれませんか」ということで、そういう場を活用して具体的な提言として、若いお父さん、お母さんを教育すると言うと言い過ぎかもしれませんが、考える素材を提供したい。その一つの大きな根拠を今回の答申としていただきたい。
  そのほか、カウンセリング体制の充実でありますとか、さらには道徳教育の充実、こうしたものも補正予算の中に今回組み入れて、先般成立をいたしましたが、これもひとえに皆さん方からの貴重な御提言を、私どもとしては最大限受けとめて、取り急ぎできるものという形でさせていただきました。また、さらに来年度に向けて、予算、法律、その他の面での具体化を図れるものもあろうかと思いますので、一層の努力をしてまいりたいと考えております。なお、補正予算の詳細は、後ほど事務方のほうからまた説明させたいと思います。
  いずれにいたしましても、大変熱心に御審議をいただき、かなりの短期間でおまとめをいただいたことに心から感謝を申し上げ、またさらに、たぶん8月、9月ごろになりましょうか、先ほど会長からお話のあった「今後の地方教育行政の在り方について」につきましても答申をいただく。先般、中教審の委員のある方から、「随分文部省は人使いが荒らい」といっておしかりを受けましたけれども、大変にお忙しい皆さん方に再三にわたって御協力をいただいております。そうした皆さん方の御努力が世に評価をされ、そして少しでもいい教育が我が国において実現できますように御指導をいただき、それを受けて私どももそれらを具体化していくということに、今後、さらに努力をしてまいりたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
  ちょっと長くなりましたが、一言御礼の御挨拶にさせていただきます。どうもありがとうございました。

○  大臣、ありがとうございました。それでは、続きまして狩野政務次官から御挨拶を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

○狩野政務次官  本日は、大変貴重な提言が数多く盛り込まれた答申をいただきまして、本当にありがとうございました。皆さん方が長時間にわたりまして御審議をいただきましたことに対して心から感謝申し上げます。
  私も就任以来、「幼児期からの心の教育の在り方」を審議する皆様方の貴重な御意見を拝聴させていただきましたけれども、提言内容は大変重要なことでありますし、私も孫を持つ身としても、これは何が何でもぜひとも実現していきたいと考えております。私としても答申の内容が着実に実現されるよう努力してまいりたいと思っております。
  委員の皆様方、専門委員の皆様方の大変御熱心な御審議により、各家庭、学校、地域において、子どもたちの心をはぐくむための指針となる大変重要な答申をおまとめいただいたことに改めて感謝申し上げ、私のお礼の言葉とさせていただきます。ありがとうございました。

○  どうもありがとうございました。それでは、答申の提出に当たりまして、答申の取りまとめに大変に御苦労を賜りました座長に代表して御感想を賜りたいと思います。

○  心の教育に関する小委員会の代表ということで、大変緊張しておりますけれども、偏見と独断で感想を申し述べさせていただきたいと存じます。
  昨年8月に、当時の小杉大臣のほうから「幼児期からの心の教育の在り方」に関する諮問をいただきまして、私に座長をやれということを言われましたときには、大変当惑いたしました。一体どうまとめていいのかということで、本当に困ったんですが、しばらく考えておりまして、ここでも何度か申し上げましたけれども、世界の子どもたちに比べまして日本の子どもたちが異常な状況に置かれているということをかねがね実感しておりましたので、日本の子どもたちをそういう状況から少しでも救い出すための具体的な提言ができればいいのではないかと考えるようになりましてから、少し気が楽になりました。
  今回の審議会には、新しく専門委員として大変に多くのその道の権威である専門家の方々にお加わりいただき、専門委員の方々から非常に貴重な御意見をいただきました。また、小委員会では20人を超える関係者、専門の方からヒアリングという形で御意見をいただきました。これらの御意見を答申に盛り込むことができて、答申の内容の厚みが非常に増したのではないかと思っております。
  審議会が始まりましてから、佐倉の幼稚園、新潟の小学校、香川県の中学校、さらに埼玉での「一日中教審」及び高崎での公聴会など、多くの保護者を含めた小学生や中学生と語り合う会、さらには一般の方から中教審の中間報告に対して御意見を伺う会に出席いたしまして、非常に熱気に満ちた御議論をいただいたように思います。特に高崎では、発言者の半分以上が県外の方で、宮城、新潟、鹿児島ということで、非常に驚いた次第であります。それだけ心の教育という問題が日本人それぞれに深刻に受けとめられているということを実感した次第でございます。
  香川県の中学校、それからもう二つ、和歌山県でも私個人的に県教委に呼ばれまして中学生と語り合う会をやったんですが、その結論として、中学生は病んでいると言いますけれども、中学生は非常に健全である、将来に対する夢もはっきり持っておりますし、社会に対する鋭い目も持っているということで、そういう意味では驚きました。
  それに比べると、これは私自身のことも含めてですが、大人のほうがややだめかなという気がいたします。香川県では、私は高等学校が香川県なんですが、いわば香川県の中でも田舎のほうの中学校なんですが、その中学生たちが非常にはっきり意見を述べているのには本当に驚きました。それに比べると、お母さん、お父さんのほうがちょっと頼りないなという気がしたのでありますけれども、いずれにいたしても非常に感心をいたしました。
  私、昨年の11月から3月まで、学長が終わったということで、英国へ長期出張させていただいて、その間、他の委員の方々にはだいぶ御迷惑をかけたんですが、やはり中教審のことが頭を離れませんで、英国人といろんな議論をしたり、それから自分でいろんな小学校を見に行ったりしたんですが、やはり決定的に違うなと思ったのは、改めて20年ぶりに住んでみて、車で5分走ると緑したたる公園があって、必ず子どもがそこで群れて遊んでいるという状況ですね。たまたま冬の温度が高かったということもあるんですが、どこへ行っても子どもたちが遊んでいる。そういう姿を見まして、日本の子どもたちにもああいう環境を与えてやる必要があるということを強く感じた次第でございます。
  それから、この中間報告が出ましたときに、「あたりまえのことしか言っていない」と言われて、私もだいぶ困ったんですが、これは名前を申しませんけれども、日本にいらっしゃる大変著名なアメリカ人のジャーナリストから、「心配することはない」というお話をいただきました。というのは、「あたりまえというのは、できてあたりまえなんで、できてない、頭の中で考えたことはあたりまえじゃないんだ。日本人というのはどうも頭の中で考えたら、それであたりまえと思っちゃうことがあるんで、心配することはない」という非常に強い激励を受けたので、それについても非常に気が楽になりました。
  いずれにいたしましても、先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、心の問題というのは個人個人の問題であろうと思いますので、この答申を一人でも多くの国民の皆様に読んでいただいて、やはり議論をしていただくことが最初ではないかと思います。30年前、それから20年前、合計3年ほど英国に住みましたが、英国の調子が非常に悪いときでも、絶えず彼らは議論しているんです。〈何でこんな議論してるんだろう。こんなことをしてるんだったら働いたほうがいいのではないか〉と思ったことがあるんですが、それが実は見事に今の英国の活性化に結びついているということを今度思い知りまして、やはり一人一人が自分の問題としてとらえて議論することが大切なのではないかと思っている次第でございます。
  先ほど申し上げましたけれども、委員の皆様に非常に活発な御意見をいただきまして、私、モデレーターに徹したつもりでありますけれども、非常に楽をさせていただきました。あとはこの答申が、ここで私どもが提案しました具体的な方策が、どれだけ実行されるかだろうと思っております。
  皆様方を代表しての感想ということになりませんけれども、感じたことを申し述べさせていただきました。

○  どうもありがとうございました。本当に御苦労さまでございました。
  それでは、次に、この答申を受けまして、文部省の取組について、事務局より説明をいただきたいと思います。

○事務局  それでは、答申を受けての取組ということでございますが、既に中間報告をいただいて、取り組めることは取り組むということで進めておりますので、既に取り組んでおりますことを中心にして御説明をさせていただきたいと思います。あらかじめお断りしておきたいと思いますが、ただいまの大臣のご挨拶とかなり重複するとは思いますが、お聞き取りをいただきたいと思います。
  まず中間報告の広報につきましてですが、既に里中専門委員の御協力を得まして、中間報告のエッセンスをわかりやすいパンフレットの形にしまして、100万部作成いたして、全国の幼稚園から高等学校までを初めといたしまして、関係方面に配布いたしております。特に幼稚園と小学校につきましては、各学級につき1部ずつ配布するというようなこともいたしておりますし、学校を通じてそれぞれの学校単位のPTAにも配布させていただいております。さらに、従来、文部省としてはこうした審議会の答申を配っておりませんでした保育所とか、児童館等の児童福祉施設、あるいは児童相談所、保健所はもとより、各県の警察本部の少年課など、そういった関係機関にも幅広く配布をさせていただいております。
  それから、当然のことですが、日本PTA全国協議会とか、全国子ども会連合会等の全国的な団体にも配布して、周知していただいております。
  それから、企業関係につきましては、経団連、あるいは同友会等を初めとして、経済関係団体に送付をさせていただきましたが、特に日本経営者団体連盟につきましては格別の御協力をいただきまして、傘下のすべての企業に配布させていただきました。約2万2,000社とお聞きしておりますが、特別に各企業それぞれまで御配布をさせていただいたところです。
  それから、文部省の発行しておりますいわば新聞であります『文部広報』においても、中間報告の特集号を発行いたしました。これは約80万部を幼稚園から高等学校など、教育関係を中心に幅広く配布をさせていただいております。
  その他といたしましては、中間報告を文部省のホームページに掲載いたしたとか、あるいは文部省編集の雑誌であります『文部時報』の臨時増刊号として刊行いたしたほか、テレビにも文部大臣を初め、有馬前会長にも御出席をいただき、「心の教育」についての説明をさせていただいたところであります。
  それから、政府全体の広報誌につきましても御協力をいただきまして、『時の動き』とか、『フォト』などに掲載をして、幅広く広報に努めておるところでございます。
  加えて、全国団体のいろんな会議等にもお招きをいただきまして、中間報告について御説明をさせていただきました。特に経団連につきましても、理事会で特別に御説明をということで、私どもの次官が参って御説明させていただいたということでございます。
  以上が中間報告の広報についてでございますが、本日いただきました答申につきましても、再度里中専門委員の御協力をいただいて、パンフレットを作成し直しまして、中間報告の際と同様の部数を広く配布したいと思っております。
  それから、中間報告のときの総会でも、各委員から御指摘がございましたように、特に家庭への周知につきましてお話がございましたが、これも平成10年度の補正予算において10億円を計上して、家庭でのしつけの在り方を盛り込んだ簡便な冊子として「家庭教育手帳」を作成して、妊娠時の母子健康手帳交付時、あるいは1歳6ヵ月児の検診時とか、3歳児検診時、それから小学校入学前の検診と都合4回の機会に、すべての受診者の親に、今、一つの年齢の子どもが120万人ですから、合計でほぼ500万部を各家庭へ配布したいと思っております。それから、「家庭教育啓発パンフレット」は、小・中学生を持つすべての家庭に学校を通じてしたいということで、いわばゼロ歳から中学生までの家庭には少なくとも全部行き渡るという形でしたいと思っております。
  なお、これらの冊子等の内容につきましては、御答申でいただいた提言を十分参考としながら、英知を集めてこれから作成したいと考えております。
  また、こうした取組に関連いたしまして、配布等につきましては何分にも厚生省の御協力も必要でございますので、文部省と厚生省が協力して、子どもたちが健やかに育つための環境づくりを進めるために、先般6月19日に文部省と厚生省で教育児童福祉施策連絡協議会を設置いたしました。同協議会において家庭教育手帳の作成とか、母子保健の機会を利用した家庭教育学級や健康相談等の実施について緊密に連携を図って、施策を進めてまいりたいと考えております。
  次に、先ほど申し上げました家庭教育手帳等のほかに、平成10年度の補正予算において、緊急対策として心の教育の充実に関する施策も盛り込んでおりますので、御紹介申し上げますと、まず答申でその必要性が提言されております「心の教室」の整備として、学校の余裕教室などを利用して、教育相談室やカウンセリングルーム等を整備するとともに、教職経験者や青少年団体の指導者などを相談員として配置するために338億円を計上いたしたところでございます。
  そのほかにも、教員のカウンセリングマインドを充実するために、先生や養護の先生に対するカウンセリングに関する研修に必要な経費を計上しております。
  それから、道徳教育の改善充実のために、子どもたちの心に響く教材を使おうという御提言をいただいておりますが、これに関連いたしましても、コンピュータを活用した道徳用学習ソフトや各地域の特色を生かした道徳教育の研究開発などの所要の経費を計上させていただいておるところでございます。
  配付資料には特に記載をしてございませんが、主な御提言の事項でこれまで取り組んだことといたしましては、例えば有害情報に対する取組につきましては、報告を受けましたその直後の4月に、文部省内に有害情報に関する検討会議を発足させまして、その検討結果を踏まえ、5月には担当の局長から日本民間放送連盟に対し、青少年の健全育成に配慮した番組制作、放送時間帯の設定など適切な自主規制、それからVチップや事前表示の制度の導入についての前向き、かつ速やかな検討、番組内容についてのPTA等の教育関係団体との定期的な協議の場の設定などを要請いたしました。そのほか、出版倫理協議会、あるいは日本ビデオ倫理協議会等の自主規制団体に対しましても、有害情報に関する自主規制の取組の充実について要請を行ったところでございます。
  また、行政機関として郵政省に対してもVチップや事前表示の制度の導入についての前向きの御検討を要請したところであり、郵政省では去る5月14日に「青少年と放送に関する調査研究会」を発足させ、青少年の健全育成と視聴者政策の在り方についての検討を開始いたしたところでございます。この検討会には、当審議会からも薄田委員に御参加をいただいております。郵政省としてもそういうことで取組に着手をしていただくということでございます。
  それから、有害情報につきましては、総務庁に対しましても、御提言いただきました青少年健全育成条例の内容の改善や効果的な運用等についてお願いをいたしておりますし、自主規制につきましては、ビデオ業界やコンピュータソフト業界等における自主規制の徹底について要請を行っておるところでございます。
  それから、きょうお手元に教育課程審議会の「審議のまとめ」を配付させていただいておりますが、本審議会の平成8年7月の一次答申において、ゆとりの中で生きる力をはぐくむため、教育内容の厳選を行い、「総合的な学習の時間」を設けることなどが提言されておりまして、この「審議のまとめ」は基本的にその趣旨に即して教育課程の改善を図るということで取りまとめられております。その中で、中間報告で道徳教育の改善の充実についても多岐にわたって御指摘を受けておりますが、そうした中身もこの「審議のまとめ」の中に取り込んで改善を図っておるわけでございますので、後ほど御覧をいただければと思っております。
  以上、主として既に取り組んでおりますことについて御説明を申し上げましたが、これから取り組むべきこと等につきまして、文部省自身が行うべきことは必要な予算措置を図るなど取り組んでまいりますし、教育委員会を通じて学校や各地域にお願いすべきこと、あるいは関係団体にお願いすべきこととか、あるいは経済団体を通して各企業にお願いすべきことにつきましては、様々な方法、手段を講じまして、この趣旨が実現されるよう努力をしてまいりたいと存じますので、引き続きよろしく御指導をいただければと思っております。

○  ありがとうございました。  それでは、このテーマの討議はこれで終わりまして、次のテーマ、地方教育行政に関する小委員会の審議状況につきまして、ご説明を願いたいと思います。

○  地方教育行政に関する小委員会の検討においては、私は、ただいま出されました心の教育を実践し実現するのは、やっぱり地方教育行政を通してだという点からいろんな御意見が出され、審議が進んでいるように思っておりますので、ぜひこの際、心の教育に関する小委員会の委員の皆様方にも、地方教育行政に関する小委員会の審議がどう進んでいるか御承知おきいただきたいと思って、簡単に報告させていただきます。
  この3月27日に文部大臣に提出しました「今後の地方教育行政の在り方について」の中間報告では、「学校の自主性・自律性の確立」、それから「地域コミュニティの育成と地域振興に教育委員会が果たすべき役割」、そして「学校以外の教育機関の運営の在り方」、この問題については、今後の見直しの基本的な方向だけを中間報告では示して、中間報告の後に引き続いて具体的な改善措置について審議を深めていくこととしておりました。そういうことのために、4月以降、地方教育行政に関する小委員会では、「学校の自主性・自律性の確立」等の問題について、委員の間での討議、それから関係の28団体からヒアリングを行うなど、これまでに8回の会議を重ねてまいりました。
  まず4月8日、15日、24日は、第15回から第17回という小委員会になりますが、ここでは「学校の自主性・自律性の確立」の問題について、委員の間での討議を行いました。委員からは、学校管理規則の在り方が一つ、それから学校予算に係る校長の権限の在り方、それから職員会議や主任制等校内組織の在り方、そして学校が地域住民の意向を把握・反映するための仕組み、それからこれはマスコミ等でもかなり関心を持たれました校長・教頭の任用資格の在り方などを中心として、意見が出されました。
  続いて、5月13日に第18回小委員会を開催いたしました。そこでは、「地域コミュニティの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割」及び「学校以外の教育機関の運営の在り方」の問題について討議を行いました。委員の間では、学校と地域との連携の在り方、それから教育委員会と大学との関係の在り方、それから地域文化振興における教育委員会の役割、そして教育委員会の行う生涯学習行政の在り方などを中心として意見が交されました。
  5月18日に第19回の小委員会を開催いたしました。これから後は、各関係団体等からの中間報告についてのヒアリングを行ったわけでございます。まずこの第19回では、教育委員会の関係団体からいろいろヒアリングをしました。団体からは、学校の自主性・自律性を確立するとの改革の方向性に賛成する。しかし、改革方策の具体化に当たっては、各地方公共団体が地域の実情に応じて実施できるようにすべきだという意見、それから職員会議の位置づけや主任制度の在り方等校内組織の在り方については、積極的な見直しが必要だという意見が寄せられました。また、学校が保護者や地域住民の意向を把握・反映するための仕組みについては、やはり設置者の判断にゆだねることが必要だ、こうした意見などが表明されました。
  6月2日に第20回小委員会を行いました。ここでは各学校種ごとの校長会、それから私立学校関係団体からヒアリングを行いました。各関係団体からは、まず学校予算に係る校長の権限を拡大する必要がある。それから、学校の人事については、校長の意向を十分反映できるような仕組みを考えるべきである。さらに、校長・教頭への適材確保のための任用資格の見直しについては慎重な検討が必要だ。それから、学校が保護者や地域住民の意向を把握・反映するための仕組みの導入については、校長の学校経営を側面から援助していくものとすべきだ、こうした意見などが出されました。
  6月15日は第21回小委員会でございます。ここでは教職員団体、それから事務職員関係団体及び養護教諭・学校栄養職員関係団体から、中間報告についてのヒアリングを行いました。出た主な意見は、学校においては学校経営事務部門を確立することが必要ではないか。それから、校務分掌、主任制、職員会議等の校内組織の在り方の見直しが必要だ。それから、教育諸条件の整備が必要だなどの意見が表明されました。
  6月22日に第22回の小委員会を行いました。ここではPTA団体及び社会教育・体育・文化関係団体からヒアリングを行いました。出た主な意見は、学校運営に保護者や地域住民の意向を把握・反映するための仕組みの導入に当たっては、PTAの意向を十分反映できるようにすべきである。それから、地域の教育力向上のため、教育委員会には積極的なコーディネートの役割が期待される。それから、総合型地域スポーツクラブの育成が必要である、こうした意見が表明されました。
  小委員会では、今後、これまでの審議、それから関係団体等の意見を踏まえて答申の取りまとめに向けた審議に入ります。そして、8月の末から9月をめどに文部大臣に答申を提出することにしたいと考えております。
  以上、中間的な御報告を申し上げます。

○  ありがとうございました。せっかくの機会でございますので、委員の方あるいは専門委員の方、何か御感想などございましたら承りたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。

○  先ほど御報告がありましたように、現場のほうにはパンフレットが配布されております。このパンフレットはそれなりにとても意味があると思いますが、これだけを見て「『心の教育』の答申は読んだ」と思い込んでいる方が増えているのではないかと心配になっております。全文はわかりやすい表現で、具体的なヒントを多く含んでいます。全文すべてではなくても、関心のある章だけでも全文を読んでほしいと思います。文部省のほうからも、パンフレットだけで満足してしまう方がないように呼びかけていただきたいと思っております。

○  いつも言われることですけれども、私もよく「そんなに新しいことないじゃないか」って言われて、先ほどお話にありましたように、「すべての方がここに書いてあることをしていただければ、こういう会議は必要でないんだ」ということを私は周りの方に伝えるんですけれども。
  今振り返ってみますと、体を鍛えるとか、スポーツを通しての仲間づくりというのを、私はもう少し発言すればよかったかなと。テレビで、中学生のシリーズをやっているんですけれども、私はあれは非常におもしろいと思って見ているんですが、その中でも友達というものの在り方が今非常に不安定な状態で、子どもたちは随分苦労している部分が多いと思うんです。そういうときに、スポーツを通して、そこで本音でぶつかり合える友達が初めて出てくるのではないか。ある面で大人になりますと、自分のここだけは言うのは嫌だとか、何かのときに相手に弱みを見せるのは嫌だというような大人社会としての現状がありますが、そういうものを今の中学生あたりは随分持っています。我々が育った年代というのはお互いに腹を割ってといいますか、裏も表もない、それが親友の在り方だったんですけれども、そういうところがないのをこの間のテレビの中でも感じるわけです。その辺、スポーツを通していけば仲間づくりというものができていくかなと。これを読ましてもらって、私はもう少しこのあたりを声を大にして言えばよかったかなと、ちょっと反省しております。

○  先ほどから意見が出ていますが、あたりまえという意見もありましたけれども、よくこそこういうことを言ってくれたという意見もだいぶありました。あたりまえのことをはっきり言ってもらってうれしかったというか、その辺に自信をなくしていた親の方が、これでいいんだというか、これでやっていきたいという基本を示したところもあったと私は思っております。本当にこれは実現するのが大変なんで、いろいろ頑張って実現していきたいと思っています。

○  ありがとうございます。それでは、本日の審議はこれで終わりたいと思いますが、もう一つのテーマにつきまして、座長以下、私どもも協力して、立派な答申を取りまとめたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  どうも本日はありがとうございました。

(大臣官房政策課)

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