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中央教育審議会

 1998/6 議事録 
中央教育審議会第219回総会 (議事録) 

   中央教育審議会  第219回総会

議  事  録


平成10年6月10日(水)10:00〜12:00
  霞が関東京會舘      34階      ロイヤルルーム  


    1.開    会
    2.議    題
          幼児期からの心の教育の在り方について
    3.閉    会


  出    席    者

    委  員              専門委員                    事務局
      木村座長            油井専門委員                狩野政務次官        
      河野座長            安藤専門委員                富岡生涯学習局長    
      薄田委員            猪股専門委員                辻村初等中等教育局長
      江崎委員            衣笠専門委員                御手洗教育助成局長  
      沖原委員            佐野専門委員                佐々木高等教育局長  
      川口委員            佐保田専門委員              高  総務審議官      
      小林委員            シェパード専門委員          杉浦政策課長       
      坂元委員            末吉専門委員                その他関係官        
        木委員            牟田専門委員                                    
      田村委員            和田専門委員                                    
      土田委員                                                            
      根本委員
      横山委員


○  おはようございます。ただいまから中央教育審議会第219回総会を開催させていただきます。本日も、鳥居副会長が御欠席でございますので、前回と同様、私のほうで司会進行を務めさせていただきたいと存じます。また、会長の選任の件も、副会長が御欠席でありますため、本日はお諮りいたしませんので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。
  それでは、早速でありますが、事務局から資料の確認をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

<事務局より説明>

○  それでは、早速でございますが、議事に入らせていただきます。
  きょうは、答申の文案について御議論いただきますが、その前に、前回の総会から今回までに行われました二つの会合について、簡単に御報告をさせていただきます。
  一つは、5月28日に香川県の善通寺市立東中学校に伺いまして、中学校の生徒、保護者、先生と語り合う会を実施いたしました。当日は、大変お忙しい中、薄田委員、沖原委員、坂元委員、横山委員の各委員にも御参加をいただきまして、大変ありがとうございました。
  語り合う会では、中学校の生徒たちやその保護者、先生の方々から、自由濶達な御意見を述べていただきまして、大変有意義だったと思います。
  殊にこの中学校は、地域的にかなり難しい場所にありまして、一時は多くの問題を抱えた学校でございます。それを校長先生が  ―私見では、校長先生の大変なリーダーシップということが言えるかと思いますが、それによりまして抜本的に状況が改善されたという中学校であります。
  生徒さんが殊に活発であった点が印象的でありましたけれども、保護者の方からは、「中間報告で言われているようなあたりまえのことを、原点に戻ってもう一度見直すことが大事ではないか」という御支持もいただきました。また、「長所も欠点も子どもの存在を全体として受け入れてやる必要があるのではないか」という御意見もいただいております。
  それから、先生方からは、「『一生懸命に努力する学校・教員を支えよう』という提言は、教員としては大変勇気づけられる」という御意見の表明がありました。また、「単に問題行動を起こす生徒を押さえつけるのではなくて、例えば生徒会を中心に生徒の自浄能力を養っていくことが大切である」。これはただいま申し上げましたように、大変問題のあった学校でございますので、非常に説得力に富んだコメントであったかと思います。
  それから、「メディアによる有害情報への対応については、個人レベルでは限界があり、やはり国レベルで規制が必要なのではないか」というかなり強い意見が出されております。
  それから、生徒たちについて、例えば道徳の授業等について聞いてみましたが、「自分たちの意見が自由に言える授業なのでおもしろい。中学生になると、何がよくて何が悪いかはわかっているので、決まったことを聞かされるのはおもしろくない」という意見がありました。それから、「先生の意見で道徳の授業が締めくくられてしまう場合もあって、授業がおもしろくないこともある」という意見が出ました。全体としては、おもしろいという意見があったかと思います。ただ、教材が通り一遍でつまらないという意見も出ておりました。
  それから、最近の子どもたちは将来に対して夢を持てないという話がありましたので、私、一人一人全員に、どういう夢があるのかということを聞きましたら、驚きましたが、非常にはっきりとした将来に対する希望を持っております。この点については非常に感心をさせられました。
  たぶん現場に行かれた委員の先生方皆様、同じ印象を得られたと思いますが、生徒のほうがうんとしっかりしているという気がいたしました。遠慮されていたのかもしれませんが、親御さんのほうがやや御意見が出なかったということで、生徒は非常に活発でありました。以上が善通寺の御報告でございます。
  次に、6月6日、土曜日でありますが、これは中央教育審議会公聴会という形で行わせていただきました。あらかじめ意見を発表したい方については、意見を寄せてくれということを申し上げまして、小委員会の諮問事項に応じまして、二つに意見発表を分けさせていただきました。最初が「幼児期からの心の教育の在り方について」、それから2番目が「今後の地方教育行政の在り方について」。御発表いただきましたのは、それぞれ4人の方であります。御発表の要旨については、そこにまとめてございますので、御覧いただきたいと存じます。
  この発表が終わりました後に、委員の先生方から発表者に対して質問をするという形のセッションを設けさせていただきました。当日は、市川委員、薄田委員、江崎委員、河野委員、小林委員、土田委員、横山委員が御出席をいただいております。
  引き続きまして、一番最後になりますが、意見交換として、当日、120人ぐらいの一般参加者の方がいらっしゃいまして、御意見をいただきましたが、高崎でやりましたが、恐らく発表された方の半分以上は高崎以外の方です。遠くは長崎、宮城、新潟、大変に御熱心に公聴会に参加いただいております。非常に活発な御意見をいただきました。
  「意見交換」のところで主な意見をまとめてございますが、一番最初の意見を御覧いただきますと、「乳幼児期の家庭教育の重要性を指摘していることについては、賛成」である。それから、「次世代の親が適切な親になることができるような教育が重要ではないか」ということ。それから、「宗教的な情操教育が必要ではないか」、そんな御意見が出ております。それに対して、必要と思われることに対しては委員の先生からコメントをさせていただきました。
  この高崎での公聴会で出た意見は、マスコミの影響については、かなり多くの意見が出ていたように思います。出た意見の比率の中では、たぶん一番高い比率ではなかったかと思っております。公聴会についての簡単な御報告でありますが、全体的にはうまくいったと思っております。
  以上が、「中学校の生徒、保護者、先生と語り合う会」、香川県においてのものと、それから高崎における中央教育審議会公聴会の概要でございました。
  次に、4月以降に、委員の皆様方御存じかと思いますが、二つの中間報告について、広く国民各層から意見募集を行いました。その概要をまとめてありますので、それについて事務局のほうから御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

<事務局より説明>

○  それでは、答申の文案の審議に入りたいと思います。前回の総会におきまして、答申の文案の作成につきましては、副会長と私に御一任をいただいておりますが、お中間報告に対していただきました関係団体の意見や前回総会での御意見などを踏まえ、私の責任で修正させていただいた文案をお手元に配布させていただきました。中間報告からの修正箇所には下線を付してあります。中間報告からの修正点として大きな修正としては、二つの項目を新規に追加いたしました。また、答申の前文として「はじめに」を加えております。そのほか、いくつかの点について修文を行わせていただきました。
  それでは、まず私のほうから修正点の概要について御説明申し上げます。きょうお手元に配らしていただきましたのは、修正箇所を抜き出したものでございます。
  それでは、順を追って説明申し上げます。「目次」を御覧いただきたいと思います。「目次」のところで、これまでありませんでした「はじめに」というものを入れさせていただきます。
  それから、「第2章」の「i)家庭の在り方を問い直そう」というところの「d」「家族一緒の食事を大切にしよう」という項。
  それから、「第3章  地域社会の力を生かそう」の「(1) 」の「d」「子どもの電話相談の窓口を広げよう」。これは項目として追加したということでございます。
  それでは、「はじめに」のところを御覧いただきたいと存じます。答申の前文として、中間報告の際の会長からのお願い文とほぼ同じ内容の文章を、「はじめに」として追加をさせていただきました。これまでの答申のスタイルと比べますと、異例な形になっておりますが、これはこの会でも何度も議論がされましたが、答申全体が国民に対する呼びかけであるということでございますので、「はじめに」をつけて、国民全体へ呼びかける内容とすることが適当と考えたということでございます。
  それから、「全文追加」のところでありますが、先ほど「目次」のところで御紹介いたしました「(d)家族一緒の食事を大切にしよう」という項をつけ加えさせていただきました。これは先ほどの国民からの御意見にもございましたし、書面ヒアリングでの御意見、それから委員からも強い御意見が出ておりますので、これをつけ加えさせていただきました。それから、資料等もつけ加えさせていただいております。
  それから、「(a)やってはいけないことや間違った行いはしっかり正そう」については、関係団体からのヒアリングの意見にもありましたし、この委員会でも何度も出ております。また、公聴会、それから小学生、中学生と語り合う会でも、様々な同様の意見が出ておりますので、このような記述をつけ加えさせていただきました。
  それから、次の「(b)手助けの必要な人を思いやれるようにしよう」でありますが、書面ヒアリングで御意見をいただきましたので、このような表現を入れさせていただいております。
  次が、「(c)人間としての生き方やこれからの社会について子どもに語りかけ、子どもの将来の夢と希望を聞こう」というところで、先ほど申し上げましたように、子どもたちはむしろ非常にしっかりした夢や希望を持っているではないかということで、そういう表現を1行目に入れさせていただきました。
  次の「(g)無際限にテレビやテレビゲームに浸らせないようにしよう」というところでありますが、これは委員からの御発言で、バーチャルリアリティーとリアリティーの問題でありますけれども、そこのところを取り込ませていただいております。
  それから、「第3章」へまいりまして、「24時間親が気軽に悩みを相談できる体制づくりをしよう」というところで、書面ヒアリングにおいて、もう少し現在あるリソースを使ったらいいではないか。つまり、民生委員、児童委員などのかかわりも重要ではないかという御指摘がありましたので、そのことを入れさせていただいております。
  それから、高齢者の活用。これも書面ヒアリングでの御意見でありますが、高齢者の活用についてのコメントをいただきましたので入れております。
  次が「子どもの電話相談の窓口を広げよう」ということで、全文追加という形でそのような記述をさせていただいております。
  なお、コラムの中の「子どもに対する24時間相談体制」というのは、既に中間報告に掲載した部分でありますけれども、その場所を変えたということであります。
  次のところは、「いじめられた時の児童生徒の対応」というデータをつけ加えました。
  それから、「企業中心社会から『家族に優しい社会』への転換を図ろう」ということで、これについては従前からたくさん意見が出ておりましたし、また公聴会等でもかなり積極的な意見がございましたので、多少の文言をつけ加えさせていただきました。
  次は、「スポーツ・文化活動や青少年団体の活動を積極的に展開しよう」という欄でありますが、これは書面ヒアリングで複数の団体から御意見をいただきましたので、少し記述を変えさせていただきました。
  それから、総理の私的諮問機関である「次代を担う青少年について考える有識者会議」でも心の教育に関連する御意見をいただいていますので、一番最後の青少年団体の活動については、有識者会議の御意見を全面的に入れてございます。
  それから、「自由に冒険のできる遊び場をつくろう―『ギャングエイジ』にふさわしい遊びを」という項でありますが、ここでも有識者会議からコメントをいただいておりますので、ほぼそのコメントの該当部分の部分を「(エ)」として入れさせていただいております。
  それから、「テレビ・ビデオ等の関係者による自主規制などの取組を進めよう」ということでありますが、これはなかなか微妙な問題でございます。先ほど申し上げましたように、小学生並びに中学生と語り合う会、公聴会でも、これについて意見が非常にたくさん出ておりますが、全体的に従来の表現ですと、マスコミに対してややきついかということで、そこに「優れた番組が少なくない一方」というふうな、全体のバランスをとるような表現を入れさせていただきました。
  それから、前回の総会で御意見がありましたところですが「また、各放送局に対して、より多くの良質な子ども番組を提供する努力をあわせてお願いしたい。」、それを入れさせていただいております。
  それから、「幼児の自然体験プログラムを提供しよう」という項で、これは書面ヒアリングの御意見で、幼稚園のすべての園児がキャンプに参加するのは困難ということで、要するにそれぞれの幼児の発達の状況が違うということですね。個人差があるということで修正させていただきました。
  それから、道徳教育に関することでありますが、先ほどの香川県の例でも、生徒からそういう意見が出ておりましたが、教材の工夫ですね。そういうことと授業のやり方等についての文章を入れさせていただいております。
  それから、全国連合小学校長会から御意見が出ておりましたが、校長が積極的な姿勢を示すことが大事だということがございましたので、これについても入れさせていただいております。
  それから、「もっと体験的な道徳教育を進めよう」という項でありますが、これは書面ヒアリングや新潟での小学校の生徒、保護者、先生と語り合う会などで強い意見が、殊にこれは新潟で強い御意見をいただいておりますので、そういうことをつけ加えさせていただきました。
  次が「(c)子どもたちの心に響く教材を使おう」ということで、これは道徳教育のところでも教材のことを触れておりますけれども、これからの時代に、もう既にそういう試みが行われているようですけれども、「多様な学習活動が展開できるように……道徳学習用ソフトの研究開発を推進することも有意義である。」という表現をつけ加えさせていただきました。
  その次、「(d)よい放送番組ソフトを教材として有効に活用しよう」。これは著作権の問題が書面ヒアリングの際に出ておりますので、その辺のことを少しつけ加えさせていただきました。
  次が「(a)スクールカウンセラーに相談できる体制を充実しよう」の項であります。「(ウ)」として、中間報告では、スクールカウンセラー以外の「退職教員、青少年団体指導者、ボランティアなどの協力を得て、子どもの相談に応じることができるようにすることが望まれる。」と記述しておりましたが、スクールカウンセラー以外の相談員の必要性についても記述することが適当であると考え、項を新たに起こして記述を明確化しております。
  次のコラム「スクールカウンセラー活用調査研究」の中の対象学校のところですが、そこへ具体的な数字を入れさせていただきました。
  それから、かなり議論を巻き起こしました「スクールカウンセラーの養成の充実を図ろう」のところなのですが、前回も御報告申し上げましたが、「臨床心理士」の国家資格創設については、医師会等からのかなり慎重な御意見がありましたので、少し一般的にいたしまして、一番最後の行でありますが、「臨床心理士などの『心の専門家』の国家資格制度の創設を含め」と、このような記述にさせていただいております。
  それから、最後になりますが、「『心の居場所』としての保健室の役割を重視しよう」というところでありますが、これも医師会の御意見に基づきまして、学校における子どもの悩みに対する相談に際し、学校医とも連携を図ることが望ましいということが出ておりますので、その辺の記述をさせていただいております。
  以上、簡単に修正箇所について御説明申し上げましたので、これからみなさまからご意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○  新しい項目を設けていただいて、「子どもの電話相談の窓口を広げよう」ということでやっていただいて、本当にありがとうございます。
  ただ、今までの枠組みの相談現場を広げようというふうにどうしてもとられてしまうんです。ということは、今までのやり方がうまくなかったという、ここに反省がなきゃならないはずなんで。その次を御覧いただきますと、電話相談に相談したというのが1.0とか、0.7とか、こんなわずかなんですよね、ほかの相談に比べて。これは今までのやり方が、相談ということであって、つまり子どもの声に、問題解決していこうということが優先して、子どもにどうしても指示をしたりする状況があるんで、子どもが避けて通ってきているわけです。子どもに既に嫌われているわけですね、現場は。
  そうではなくて、子どもの声をとにかくひたすら聞こうよと。そして、自分の声を聞いてくれる大人がいるということを、子どもに伝えていこうと。つまり、子どもの大人に対しての信頼をそこで回復していこうよというのが、一つのねらいだと思うんです。
  ですから、今、私どもがやっている事業では、「相談」という言葉を取ってしまったわけです。「相談」というと、どうしても問題解決ということになってしまうので。とにかく聞き取ろうよと。それが今の子どもの現状であるということを考えると、「窓口を広げよう」ということではなくて、子どもの電話をつくろうということなんでしょうか。電話の利点というのは、匿名性であったり、自分がうまく言えなくなったら切ればいいわけで、そこに電話の特性があって、気軽にというか、割に身近にあるということの特性がありますから、そういう特性もやはり書いたほうがいいのではないかと思うし。
  それから、保健室的なニュアンスもあるわけですね。つまり、子どものはけ口というか、子どもを受けとめるスペースも必要ですし、それと同様に電話によってそういうものを受けとめていくことが重要ではないか。本当にそんなことをしなくちゃならないというのは、言ってみれば悲しいことですけれども、現状として子どもの現状はそこまできているのではないかという実感を私は持っております。ですから、甘やかしとか、そういうことではないと思うんです。
  それから、受けとめるほうに、ボランティアとしてそういう子どもの声を受けとめようという人たちを、これから大いに活用していくことが重要だと思うんです。この間の3月にやりました実験では、受け手のほうがかなりいろんな気づきとか、子どもに対する理解みたいなものがそこで生まれてきているんです。相談を受ける方は親であったり、学生であったり、いろいろな職種の方ですけれども、そこに大人自身がかかわっていくという部分があるわけなので、そういう部分を大切にしたいと思うし、そういうボランティアが今重要ではないかと考えるんで、その辺のところを少し書き添えていただけないか。これは本当にお願い、ただひたすらお願いをするわけでございますけれども、ということでございます。
  その前の、「24時間親が気軽に悩みを相談できる」という項目ですけれども、親のほうに24時間が必要なのかどうかという問題ですね。それは24時間であるに越したことはございませんけれども、親の場合はそれほど不安定であるとかということではなくて、子どもが夜半に不安定になって、パニックになるということの中で、24時間ということが語られるようになったと思うんです。ですから、こっちの24時かというのは、子どものほうにこそ必要なのではないかという気が私はいたします。
  そういう意味で、この辺のところをひとつ御考慮いただけたら幸せでございます。いや、幸せというよりは、ぜひそういう方向で、子どもというのが余りにも小さいんです、親に比べて。子どもの現状を受けとめるということの記述が私は少ないような気がしてなりません。その辺のところをよろしくお願いしたいと思います。
  もう一つ、記述の中で、「奉仕活動」と書いてあるところがあって、第一次答申のころから、「奉仕」という言葉をあまり使うのはやめようよみたいな流れがあったと思います。「自然体験活動、奉仕活動を推進するほか」と書いてありますけれども、ここはやはり「ボランティア活動を推進するほか」というほうがいいのではないかと思いました。

○  「企業中心社会から『家族に優しい社会』への転換を図ろう」というところです。よくするという観点からですが、セカンドパラグラフの「これからは……」というところですが、「父親が家庭教育にもっと参加し、母親も社会の中で自己実現を目指す」云々というところですけれども、その前のところで男女共同参画社会と言いながら、実はこの表現は非常にジェンダーの意識にとらわれていると思います。現状で働く母親が非常に数多いわけですから。簡単な修文で済むと思います。例えば「これからは働く親が家庭教育にもっと参加し、また社会の中で自己実現を目指す」というふうにすれば簡単だと思いますので、ぜひそこを直したほうがいいと思います。

○  「(c)子どもたちの心に響く教材を使おう」のところで新たに加えたところで、ちょっと言葉がわからないものですから、これでいいのかなという気がしたものですから、お聞きしたいんですが、「民間の人々の豊かな発想」という、この「民間」というのはどういうことを意味しているのか、わからないものですから。学校以外という意味ですか。

○  そういう意味ですね。直接教育に関係のない方ということですね。それでいわゆる「民間の方」ということですが。

○  「民間の人々」というのは、今、文部省のほうで8本、ことし1本2,000万円で、新しい道徳、心を育てるコンピュータ・ソフトウェアを、学校の先生とか、教育委員会とか、民間の方々の協力で応募させて、それに予算をつけるようなことが始まっておりますが、たぶんそういうことを意味しているのではないかと思います。

○  普通の人が読むとわからないのではないですかね。これは家庭の人もかなり関心がありますので、読まれると思うんです。そのときに、それはちょっとわかるかな。私はわからなかったんですけれども。何か表現を工夫されたほうがいいかもしれません。

○  小さなことでございますけれども、「(b)スポーツ・文化活動や青少年団体の活動を積極的に展開しよう」できょうつけ加えたところですが、「ひとつの地球」というのに括弧が入っておりますが、これは何かのスローガンなんでございましょうか。というのは、「地球はたった一つしかない」という意味なのか、「地球はひとつ」という意味なのか。何かもとのスローガンがわかれば。何となく「地球はひとつ」というほうがいいような気がするんですが。細かいことでございますけれども。

○事務局  「次代を担う青少年について考える有識者会議」のほうでこういう提言がございましたので、それを私どものほうにも取り入れたということでございまして、この提言の中に、かぎ括弧でくくりました「ひとつの地球」というのがございまして、それをそのまま採用させていただいたということでございます。

○  「ひとつの地球」というと、例えば英語にするとどうなるのでしょうか。細かいことで申しわけないけれども。

○  有識者会議の御意見というか、報告をそのまま入れたんですが、ご趣旨を生かせばたぶんいいのではないかと思います。それでは少し考えさせていただきます。

○  先ほどお話のありました「電話相談」のところですが、もし御意見のように多少の修正があるとするならば、もう一、二年たつと、子どもたちはインターネットをますます使うようになると思うので、例えば子どもの悩みを自由に書き込めるバーチャル保健室であるとか、あるいは時々それを見て専門家がコメントを出せるといったような形のものが、もうそろそろ入ってもいいような気がしますので、無理にとは申しませんが、御検討をしていただければと思います。それが一つでございます。
  もう一つは、今の教育ソフトのこともありますし、研究会、ディベートなどで、いろいろ「心の教育」の問題を議論しろということを言っていただいているので、これは入れなくて、この「心の教育」の答申を出した後の問題にしてもいいし、書き込んでもいいと思うんですが、例えば心を育てるための実践論文募集というようなことをやって、先生編、父兄編、子ども編といったもので、文部大臣賞なり中教審会長賞を出すとか、あるいはそこまで書かなくても、いろいろなところの出版社なり新聞社なりが心を育てるための実践記録を集めて賞を出すようなことをやってはいかがかとか、例えば標語コンクールとか、ビデオコンクールとか、ホームページコンテストといったようなもので、「心の教育」を全体の国民運動に盛り上げるような工夫ができないか。これは出した後のストラテジーでもいいし、書き込めれば、一部道徳のソフトだとか、ディベートだとか書き込んであるんで、あとがき編かな、どこか書き込む場所があれば書き込んでいただいてもいいし、出た後のやり方として考えていただいてもいいので、ちょっと御検討いただければと思います。

○  「スポーツ・文化活動」のところですけれども、「運動能力が低下してきている。スポーツ活動は、健康でたくましい体づくり……ルールを守り、公正さを重んじる精神、思いやりの心、忍耐心や克己心」とあるんですが、「楽しさ」という言葉が見あたりません。スポーツは本来楽しい、ということをもう少し書いていただければありがたいと思うんです。

○  新しくつけ加えた「食事」のところですが、「スナック菓子、ファースト・フード等を好む偏った食事内容や」云々で、「糖尿病、肥満症をはじめとする」とありますが、何かこれはスナック菓子やファースト・フードが糖尿病、肥満症の犯人みたいな感じがします。ちょっとこの辺は神経を使われたほうがいいのではないかなと思います。

○  非常に盛りだくさんで、大体全部カバーしていると思いますけれども、ちょっとマニュアル的になっているような印象を私は受けたんです。もうちょっと根本的なスタンスを明確にする必要があるのかなという印象でございまして、我々は少し世代が古いですから、例えば「智」とか、あるいは「徳」とか、あるいは「仁」、中国風に言えば「仁」というのは「愛」ですね。それから、「勇気」といったような、何か基本的な価値観について、ここには「正義感、倫理観や思いやりの心など豊かな人間性」というのが書いてありますけれども、もうちょっとその辺がはっきりしたものを組み込められないのかということが一つ。
  それから、これは前にも私は申し上げましたけれども、これから市場経済  ―今、市場経済にどっぷりにつかっているわけですけれども、それから先ほど御指摘のあった情報通信、バーチャルリアリティーの世界というようなもので、子どもの教育ということで、私の孫なんかを見ておりまして感じますが、人間疎外の問題といいますか、人間性が疎外されていくということについて、大人がよほど考えてやらないと、本来あるべき姿に育っていかないのではないかという点が非常に気になるということが一つでございます。
  それから、私の過去の経験から言いますと、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と、それぞれみんな一人の先生なんですね。これは偶然そうなったのかもしれませんけれども、その先生というのは、岡先生、根岸先生、山口先生、源湃   先生、岡先生と、最後は岡先生でまた終わるんですけれども、この5人の人の人格が翻って考えますと随分影響を受けておりまして、みんな亡くなっちゃいましたけれども、生きておられるときには何十年来の連中が一緒にその先生を囲んで集まるということをずうっとやっておりました。やっぱり先生のファクターというのを、これはどういうふうに書き加えられるべきか。
  それから、大学を出るまでの間に読んだ本を、今、私はまた読み返しておるんですけれども、その中で、幼稚園の後期から小学校のころに読まされた本に、山本有三が編集した『心に太陽を持て』というのをお読みになった方がおると思いますが、その本が私の書斎の書架にボロボロになって置いてあるんですな。今の子どもを見ていると、テレビをとにかく非常によく見る。これはテレビのこともだいぶ書いてありますけれども、読書ということですね。
  この間、ブックセンターへ行きまして、20冊ほど古典に関連する少年少女用の本を買ってきまして、それを孫に与えましたけれども、結構熱心に読んでおるんです。だから、読書というものの必要性を、テレビを制限するということもさることながら、もうちょっと読書について触れることができないのかということ。
  それから、自然に学ぶという、自然体験のことがこの中に出ておりますけれども、これは全く今お話がございましたスポーツを含めまして、海、山に親しむ機会が、私たちの世代には猛烈にありました。最近、海岸へ行くと大きなプールがあって、子どもは危ないからプールで泳げ、海のほうでは泳がないということをやっているところもございますけれども、私どもから見ると何をやっているんだと。1回か2回おぼれそうになって初めて危機管理に対する運動神経が養われると思うわけでございまして、やはり自然に学ぶということは相当に強調すべきではないか。
  そういったことを私の年になってずうっとあれしますと、結局、古典というか、どこからどこまでを古典というのかあれですけれども、古典を学ばせるということと、自然に学ぶということと、それから勤労ということですね。勤労なんて言うと、これは随分世代が古いとおっしゃるかもしれないけれども、人間として働くことの意義をね。西洋流に言うと、どちらかというと働くことはパニッシュメントというか、働かなくて生活できるのが一番いいんだという考え方があるかもしれませんけれども、我々日本人はやはり働くということに価値を見出すといったようなことを何か工夫できないのか。我々は中学時代に、よく中学の農園に連れていかれまして、いろいろ農作物をつくらされた経験がございましたけれども、自然にどろにまみれながら物をつくっていく喜びというか、そういうものを子どもたちが学んでいく必要があるのではないかということを考えております。最近、この年になりまして、古典と自然と勤労というようなことの必要性を痛感しております。えらい漠然としたコメントで恐縮でございますけれども。
  これはもう本当にコンプリヘンシブな、一種のマニュアルというか、すべてを包含しておるので結構だと思いますけれども、ちょっと切り口を変えると、私が申し上げたような見方もあるのかなということで、御参考までに申し上げました。

○  ありがとうございました。たぶんそういう御発現があろうかと私は思っていたんですが、一番最初の御意見のところは、既に第一次答申、第二次答申でかなり言ってあるんですね。そういうことで、これは「心の教育の在り方」を特定した課題ということで、マニュアル的だという批判は確かに出ておりますが、冒頭申し上げましたように、幼児期からの心の教育に関する小委員会のほうでは、それぞれの人に合ったやり方があるだろうということで、議論を国民のレベルで巻き起こしてもらいたいということで、網羅的にしたということでございます。
  それから、読書のことについては、既にこの中に入っております。かなり詳しく書いております。

○  「家族一緒の食事を大切にしよう」についてですが、これでほとんど結構なんですけれども、できればちょっとつけ加えていただきたいのが、例えば幼児、子どもというのは、お母さんやお父さんのまねをするのが大好きなんですね、模倣が。それが本能なんです。それで育っていくわけです。お父さん、お母さんが「いただきます」「ごちそうさま」を言ったり、それから「仏様にあげてから食べようね」と言ったり、「粗末にするとバチが当たるよ」ということを子どもと一緒にやっていると、子どもがだんだんそういうものを尊重するようになっていくんです。そうすると、食事というのは、しつけの原点がいろいろあるわけです。したがって、「いただきます」「ごちそうさま」に代表される、「食事どきのしつけをここで育てよう」という指摘をどこかに入れていただくと、なおいいかなと思います。
  ただ、「感謝の心を育てる上で有意義であろう」とか、いろいろ入ってはおりますけれども、そんなようなことを感じたわけであります。やり方によっては、それこそ「仁」「議」「礼」「智」「信」、いろんなものに食事のときに楽しく触れることができるのではないかと思います。

○  ほかにございませんでしょうか。よろしいですか。
  それでは、幼児期からの心の教育に関する小委員会を中心にして、かなりきめ細かく議論をやってまいりました結果でございます。きょういただきました御意見につきましては、副会長と相談しながら、取り入れられるものについては取り入れて修文いたしますが、いずれにいたしましても時間の関係で、申しわけございませんけれども、副会長と私に修文についてはお任せいただきたいと存じますが、よろしゅうございましょうか。
  それでは、御意見も一わたりいただきましたので、議論についてはこれで終わりとさせていただきます。
  きょうは、狩野政務次官にお見えいただきまして、ずっと御在席いただきましたので、一言御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○狩野政務次官  本日は、「心の教育」の答申の文案について、大変有益な御意見をいただきまして本当にありがとうございました。私自身も勉強させていただいたと思って、心から感謝申し上げております。
  また、今までに多くの教育関係の方々の御意見や、また公聴会、そして語り合う会の子どもたち、保護者、先生方の御意見、それから国民の皆様方の御意見を聞かせていただいて、私が想像していた以上に、多くの方々がこの問題に対して真剣に考えておられるということを感じました。改めて心の教育の重要性を認識をしたわけでございます。
  文部省といたしましても、この答申をいただいた後に、いかにしてこれを広めていくか、またこれを施策としてどういうふうに取り入れていくかということが大きな課題となってきていると思います。私自身も全力を尽くしてこの問題に取り組んでいきたいと思っております。
  本日は、「心の教育」の答申に関する最終的な御審議となりましたけれども、これまでの委員及び専門委員の皆様の御尽力によって、立派な答申がまとめられつつあることに対しまして、改めて感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

○  どうもありがとうございました。先ほど申し上げましたように、きょういただきました御意見は、取り入れられるところは取り入れさせていただきたいと思いますが、かねがね申し上げておりますように、我々の答申は最大公約数ということでやむを得ないのかなと思っております。したがいまして、かなり強い御意見も出ましたけれども、それを全部入れられるかどうかというのは、今後少し検討してみたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  次回の予定は、最終回になりますが、6月30日、霞が関東京會舘・ゴールドスタールーム、35階です。この席上で答申を大臣に提出する予定でございます。よろしくお願いいたします。、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
                                                                                 

(大臣官房政策課)

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