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中央教育審議会

1997/1
中央教育審議会第203回総会 (議事要旨) 

              中央教育審議会第203回総会議事要旨


日 時 平成9年1月31日(金)午前10時〜午後3時20分

場 所 霞が関東京會舘「ロイヤルルーム」

出席者

(委 員) 有馬,市川,薄田,江崎,川口,木村,河野,坂元,高木,田村, 永井  の各委員
(専門委員)
[第1小委員会] 油井,佐々木,薩日内,末吉,那須原, 蓮見,増井,牟田
[第2小委員会] 中,山極 の各専門委員
(文部省側) 井上事務次官,辻村初等中等教育局長,遠藤財務課長, 中西審議官(学術国際局担当),富岡総務審議官,その他関係官



  (意見発表者)

A  全国国公立幼稚園長会
     池田英雄氏(会長,港区立赤羽幼稚園長),
     大迫さかゑ氏(副会長,港区立青南幼稚園長),
     羽田紘一氏(庶務部長,台東区立育英幼稚園長)
B  全日本私立幼稚園連合会
    佐保田亘正氏(会長,東菅幼稚園園長・理事長(川崎市)),佐々木敞一氏(事務局長)
C  全国連合小学校長会
     桐谷澄男氏(調査研究部長,江東区立明治小学校長)
     堀内虎満氏(教育改革委員会委員長,千代田区立九段小学校長),内海静雄氏(事務局長)
D  日本私立小学校連合会
     人見楠郎氏(会長,昭和女子大学附属昭和小学校長,理事長),
     長谷川良昭氏(副会長,大乗淑徳学園理事長),河井和雄氏(事務局長)
E  全日本中学校長会
     佐野金吾氏(会長,新宿区立西戸山中学校長),安齋省一氏(総務部長,品川区立伊藤中学校長)
F  全国高等学校長協会
     和田征士氏(会長,都立戸山高等学校長),久野猛氏(理事,大学入試対策委員,都立日比谷高等学校長),山本明氏(事務局長)
G  日本私立中学高等学校連合会
     堀越克明氏(会長,学校法人堀越学園理事長),
     久保田宏明氏(常任理事,駒場東邦高等学校長・中学校長)
H  全国特殊学校長会
     鈴木峻氏(会長,都立光明養護学校長),大南英明氏(副会長,都立青鳥養護学校長),山口勇氏(事務局次長,都立王子養護学校長)
I  日本PTA全国協議会
     松井石根氏(副会長,会社役員),坂内和子氏(事務局次長)
J  全国高等学校PTA連合会
     木本由孝氏(会長,北海道高等学校PTA連合会会長),
     森健男氏(副会長,高知県高等学校PTA連合会会長),
     岡本光生氏(進路対策委員長,東京都公立高等学校PTA連合会会長)
K  経済団体連合会
     和田龍幸氏(常務理事),伊藤一秀氏(社会本部人材育成グループ長)
L  日本商工会議所
     細田安兵衛氏(東京商工会議所常議員,教育問題委員会副委員長,株式会社榮太樓總本鋪代表取締役会長),
北川正博氏(日本商工会議所・東京商工会議所企画調査部課長)
M  日本経営者団体連盟
     河野俊二氏(副会長,教育特別委員会委員長,東京海上火災保険株式会社取締役会長),田中宣秀氏(教育部長),石田敬二氏(教育部教育企画課長)
N  全国中小企業団体中央会
     宮川睦武氏(理事,山梨県中小企業団体中央会会長,株式会社甲斐延代表取締役社長),橋本一美氏(労働部長)
O  全日本教職員組合
     山口光昭氏(中央執行委員長),長谷川英俊氏(書記長),馬場雅史氏(中央執行委員)
※  経済同友会は書面(別紙14)による意見発表

議事等
1.ヒアリング
    「一人一人の能力・適性に応じた教育と学校間の接続の改善」及び「社会の変化に対応する教育の在り方」について,団体からのヒアリングが行われた。その概要は次のとおり(○:委員・専門委員,△:意見発表者)。

A  全国国公立幼稚園長会
  池田氏から別紙1のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  幼児期から,入学者選抜をめぐる競争の影響が目に見えてきているのか。

△  地域によって違うが,自分の知っている範囲では,土曜日を小学校受験の勉強にあてて幼稚園に来ない子供がいた。

△  私立の幼稚園,小学校や中学校などへの受験で失敗した子供の中には,公立学校に入っても虚脱感にとらわれ,うまく適応できない例が見られる。小さい時に,人として生きる力をつけることの意味を,保護者や教員が認識することが重要である。

○  「幼稚園教育が学校教育の体系にどのように位置付けられるのか論じて欲しい」という意見の内容について補足してほしい。

△  小学校以上の学校教育との関わりの中で,幼稚園ではどういうことを「生きる力」として育成していけばよいのかということを論じてほしいということである。  

○  遊びの重要性についてどう考えているか。

△  幼児期における遊びは,発達を促すものとして重要な意義を持っており,一般に考える遊びとは違う。

○  子供の時代にしっかりと遊ばずに勉強をしてきた子供は,意欲が育たないと思うが,どうか。

△  そう思う。一生懸命遊ぶ子供は,一生懸命学習したり,仕事をするようになる。

○  幼稚園から園児の親に対して,勉強ばかりが重要ではないということを,どのように働きかけているのか。

△  おけいこごとや塾通いより人との関わりが大事であるとこちらが言っても,親は,「有名校に入らないと,将来どうなるかわからない」と言うが,我々は,遊びの大切さを事あるごとに説明するようにしている。

○  幼稚園においては教科書がないが,その点についてどう考えるか。

△  幼稚園では,遊び,動くことが重要であり,教科書は不要と思う。仮に教科書があれば,保護者など周囲の大人が大人の解釈を教え込むことになる恐れがある。ただ,子供がその年齢なりに興味・関心を持てる絵本や物語などを,子供の生活の中に取り入れることは大事と思う。

B 全日本私立幼稚園連合会
  佐保田氏から別紙2のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  少子化が進む中,託児所を充実すべきという意見もあるが,どう考えるか。

△  子供にとっては,生まれてから,信頼できる家族に囲まれるという原体験を持つことがまず大事である。託児所や保育所の役割は重要であるが,次善のシステムだと思う。

○  子供たちの教育では実体験を持たせることが重要だが,幼稚園の教員や保育所の保母自身に体験が不足しているのではないか。

△  幼稚園団体が実施する研修などで,キャンプを行ったり,子供と一緒に砂場を創るなどの様々な実体験を新任の教員に持たせるようにしている。

C  全国連合小学校長会
  桐谷氏から別紙3のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  中高一貫教育の実施形態を3つ挙げているが,量的にはそれぞれどのように考えているのか。

△  数字までは具体的に考えていないが,できるところからやるということでいいのではないか。「市区町村立中学校と都道府県立高等学校との連携」はやりやすい形態と思う。

○  中高一貫教育を導入した場合,子供や保護者がどのくらい応募しようという意欲が出てくると思うか。

△  中高一貫教育を導入した場合の一番の問題は,受験競争の低年齢化であり,小学校段階において,子供たちや保護者に対して進路指導や啓発を徹底することが重要と思う。

○  中高一貫教育の導入が可能な分野として,芸術・体育を特に挙げているのは何故か。

△  入学者選抜における面接などにおいて,芸術や体育は比較的能力を見出しやすいという観点から,そのように考えている。

D  日本私立小学校連合会
  人見氏から別紙4のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  小・中・高等学校などの連携についてどう取り組んでいるか。

△  私立学校は多様であるが,幼稚園から高等学校まで設けている当方では,幼稚園から入る者については小学校まで8年間一貫,中学校から入る者については高等学校まで6年間一貫,ということを原則に考えている。

E  全日本中学校長会
  佐野氏から別紙5のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  仮に6年制中等学校を設ける場合,現行の義務教育制度や学習指導要領との関係についてどう考えるか。

△  現行の中学校は義務教育として,社会で生きていくために必要な能力を身に付けさせるという性格がある。6年制中等学校と義務教育との関係については検討を要するが,中学校相当部分について,中・高6年間を見通した教育課程の前期3年間ととらえれば,現在よりも余裕のある教育課程を編成・実施できるのではないか。

○  公立中学校では,十分に個性・適性を伸ばす教育ができているのか。また,都市部において,私立中学校志向が強まっている背景は何か。

△  中学校では,個性を尊重する観点から,選択履修の導入・実施などに苦労して取り組んでいるが,一方で偏差値の高い学校を志望する保護者の声もあり,それへの対応も求められるという状況がある。また,私立中学校へ子供を進学させる家庭を見ると,高校や大学への進学を考慮して進路を決定しているように思う。

○  高校入試の問題は,県下一斉でなく各学校が作るべきと考えるがどうか。

△  具体的な話題になってはいないが,東京においてグループ選抜が単独選抜となったことは学校現場で好評である。

○  学校・家庭・地域社会の連携を推進していくためには,何らかの人的措置が必要であるとの意見に同感である。

F  全国高等学校長協会
  和田氏から別紙6のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  中高一貫教育について,高等学校側は積極的との印象を受けるがどうか。

△  6年間のゆとりの中で教育課程を編成できれば,余裕を持った教育が可能となり,心の教育などを充実することもできるのではないかと考えている。

○  教育上の例外措置について,その対象者をどのように探すかという点に関して,どう考えているのか。

△  公立学校では公平さや手続きの透明性が大事にされるので,高校側だけで特定の子供が希有な才能を持つと判断し,大学に送り出すことについては,保護者との関係もあり,難しいと思う。ただ,希有な才能を持つ子供が今の教育制度の下で埋もれてしまうこと  は心配であり,何らかの手だては必要と思う。そのため,希有な才能を持つ子供を選ぶ  に当たっては,例えば大学側が関与すればいいと思う。

○  高校において,大学教員の協力を得てアドバンスト・クラスを設け,その中から特に優秀な子供を大学に入学させてもよいと思う。例外措置の対象者となる可能性のある者は全体の0.5%くらいいると思う。

△  全体の0.5%もの多くの者に飛び級で大学入学を認めれば,高等学校教育への影響が大きすぎる。年間3〜4人程度の数で考えていくべきと思う。

○  6・3・3制については,どう思うか。

△  高等学校関係者では,修業年限が3年では短く,4年は欲しいとの思いがある。

○  弾力的な教育課程の編成・実施を望む趣旨は何か。

△  必修教科・科目の単位数等について幅を認め,各学校がこれを踏まえて教育課程を編成していくことが望ましいと考えている。

G  日本私立中学高等学校連合会
堀越氏から別紙7のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  私立の中高一貫校がいいというのに,なぜ公立の中高一貫校を設けることには反対するのか。

△  子供や保護者は,私立学校の建学の精神に共感して,高い授業料を払ってでもその学校に行きたいということで志願するのである。そうした意味で,テストを行うことは構わないのではないか。もちろん,公立・私立ともに受験競争の弊害を除いていく努力はすべきであるが,新たに公立学校の一部に中高一貫校を設ければ,受験競争に拍車をかけることになるのではないか。

○  学校週5日制を実施しない私立学校には,いわゆる一流大学等への進学を目指しているところが少なくないということをよく考えてほしい。

△  私立学校全体が学校週5日制を実施しないとは言っていない。学校週5日制という教育界の流れに逆らうことはできないと思うが,全ての私立学校に一律にこれをやらせようというのは多様化を目指す今の時代に逆行するものではないか。

○  子供の個性を伸ばし,選択の幅を広げていくことが重要であり,公立・私立を問わず,従来の中学校・高等学校とともに中高一貫校もあっていいのではないか。それに,私立学校は大都会に多い。中高一貫校に人気があるのは,入試を実施して高い学力の子供を入れていること,公立と異なる教育課程を組んでいることなどがあり,そういうことも  視野に入れて日本の教育全体を考えるべきである。

△  私立学校が受験準備教育を行っているという認識は改めていただきたい。大学への進学実績は結果としてそうなっていると考えてほしい。また,私立学校はすでに新しい試みを先取りして行っており,それらの実験的な教育を認める柔軟性を持ち,むしろ支援していただきたい。

H  全国特殊学校長会
  鈴木氏から別紙8のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  盲・聾・養護学校と,幼稚園や小・中・高等学校との連携を緊密にすることが,障害のある子供たちとその他の子供たちそれぞれにとって有意義と思う。

○  大学における障害者の受け入れについては,障害者のための枠を設けるべきと考えているのか。

△  受け入れ方法については色々と配慮されているが,障害の種類によっては,一般の受験生とは別の枠を設けてほしいと考えている。

○  障害別に設けられた学校間の交流について,どう考えるか。

△  肢体不自由,精神薄弱などを合わせた学校が既に幾つかあり,そうした試みが行われている。

○  障害者の生涯学習の機会や場所についてどう考えるか。

△  現在,養護学校等を卒業した人のための青年教室,成人学級などが設けられているが,
  もっと数を増やしたり,身近なところで学習できるようにしてほしい。

I  日本PTA全国協議会
  松井氏から別紙9のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  地域・家庭・学校の連携をうまく機能させるためには,PTAの役割が重要であるが,従来は母親が中心であったように思う。父親や教員が参加するようになればいいのではないか。

△  PTA,地域,学校などが,それぞれどういった問題に対してイニシアチブをとって取り組んでいくか明確にしていく必要がある。また,PTAの全国組織は,単なる事業団体としてではなく,提言型の活動をしていくことが重要と思う。さらに,父親や教員がPTA活動にもっと参加するようにしていくことは十分可能と思う。

○  受験競争の過熱の背景には,保護者の意識の問題があるとよく言われるが,どうやったら是正できるか。

△  親に対する啓発事業などを通じて意識改革をしていく必要があると思う。


J  全国高等学校PTA連合会
  木本氏から別紙10のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  中高一貫教育についてどう考えているのか。

△  中学校から高等学校へ入り,3年間ですぐに大学受験ということではゆとりがない。子供たちにゆとりを持たせて大きなハードルを越えさせたいと考えており,中高一貫教育は意義があると思う。

K  経済団体連合会
  和田氏から別紙11のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  毎年の教員採用を安定的に行うべきとの意見だが,どういう方法があるか。

△  教員一人当たりの児童・生徒数を減らしたり,教育関係の補助金について,国のためということで財政当局に理解してもらう必要があろう。

○  学校名を問わない選考方法を採った企業ではよい結果が得られているか。

△  学校名を問わない方がかえっていわゆる「ブランド大学」の比重が高まってしまった例もあり,今後更に採用方法の工夫をしていくことが課題である。

○  大学入試センター試験を資格試験にするという趣旨はどういうことか。

△  それほど厳密に考えているわけではないが,大学入試センター試験は,子供が高等学校でしっかりと勉強したかどうかを評価するものとし,選抜そのものは各大学の自主性に委ねるべきではないか。

○  アメリカなどでは,大学の卒業生に対して,プロフェッショナル・クオリフィケーション・テスト(職業適性試験)を課して,その結果で採用するような動きも出ているが,どう考えるか。

△  形は違うが,専門職制度を設けて試験を行う企業が少し増えてきている。

○  バブル崩壊後,企業でリストラが進められ,中途採用が大きく減っているが,どう考えているか。

△  4月1日に就職するということへのこだわりを崩し,労働市場を流動化させるため,中途採用を広げていくよう努めたい。

L  日本商工会議所
  細田氏から別紙12のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  中小企業には週休2日制をとっていないところがまだたくさんあるが,どういう方向に進みそうか。

△  法律で週休2日制が定められている以上,これを進めていかなければならないが,実態としては苦労している。また,流通やサービス業界などでは土・日曜日が繁忙で休業できない企業が多く,学校週5日制については,家庭や地域の実情を踏まえて平日に学校を休めるようにするなどフレキシブルに進めてほしい。

M  日本経営者団体連盟
  河野氏から別紙13のとおり意見発表があった後,次のような発言があった。
○  受験競争の緩和を図るためには,親の意識改革が必要であり,企業の採用が学校歴偏重から変わりつつあるということを大いに広報してほしい。

N  全国中小企業団体中央会
  宮川氏から別紙15のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  中小企業では土・日曜日を休みにできないところが多いというが,どうか。

△  今の経済状況では,週休2日制を進めていくことは難しいというのが現状である。

O  全日本教職員組合
  山口氏から別紙16のとおり意見発表があった後,次のような質疑応答があった。
○  能力の高低を問わず同じ授業をすることが本当の平等と考えているのか。

△  そもそも子供の能力というものは汲みつくせないほど多様で豊かなものである。それを発達させるのが教育である。その上で,到達度の高低に応じた工夫を行うことが重要であり,例えば,遅れた子供への特別な手だてとしての補習を実施したり,クラス内でグループ分けをしながら丁寧な手だてを講じることが考えられる。

○  家庭・学校・地域社会の連携と,一人一人の能力・適性に応じるということの関連についてどう考えるか。

△  家庭・学校・地域社会の連携の下で,子供たちが健やかに育つことは,子供たちの発達を保障する観点からも大変重要な意義を持っている。

○  大学入試について大学の自主性を尊重する一方で,中学校・高等学校は全部一貫教育とすべきとしているのはいかがか。

△  高等教育・中等教育については,内容的あるいは質的な相違があり,おのずから選抜の在り方にもそうした相違が反映する側面があるのではないか。

○  中高一貫教育を公立学校の一部に導入することには反対とのことだが,私立学校はいいのか。

△  私立学校については,建学を含め一種の自主性があるということを前提に考えるべきであるが,公教育の一環としては統一性を保ってほしいという意見を持っている。


2.次回開催日
  第204回総会は,平成9年2月27日に開催し,第1・第2両小委員会での審議を踏まえ,全体的な審議を行うこととなった。


(注)別紙1から16は省略してあります。


(文部省大臣官房政策課)
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