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中央教育審議会

1996/11
中央教育審議会第201回総会 (議事要旨) 

 中央教育審議会第201回総会議事要旨


日 時 平成8年11月15日(金)午前10時〜12時30分

場 所 東海大学校友会館「阿蘇の間」

出席者 
(委 員)    有馬,薄田,江崎,木村,國分,小林,高木,田村,俵,土田,永井の各委員
(専門委員) [第1小委員会] 油井,薩日内,里中,末吉,那須原,蓮見,増井,牟田
   [第2小委員会] 中,山極 の各専門委員
(文部省側)    小杉文部大臣,佐田政務次官,佐藤官房長,辻村初等中等教育局長,小林教育助成局長,雨宮高等教育局,中西審議官(学術国際局担当),佐々木体育局長,富岡総務審議官,鴫野政策課長   その他関係官


議事等
1.自由討議
小杉文部大臣及び佐田政務次官から就任のあいさつがあり,「一人一人の能力・適性に応じた教育と学校間の接続の改善」及び「社会の変化に対応する教育の在り方」について自由討議が行われた。その概要は次のとおり。

(中高一貫教育)
○  中高一貫教育の重要な意義として,高校入試が無くなると同時に,縦の人間関係が生まれるということがある。制度改革をして中高一貫教育を進めていくべきではないか。

○  6年間のゆとりある時間の中で,子供たちが様々な体験をし,自らの生き方を考えていくということは有意義と思う。

○  中高一貫教育については,6年制中等学校を設置する,同一の設置者が高校・中学校を設置する,県立高校と市町村立中学校とを連携させるといった色々な形態があり,それらについてよく検討することが必要である。

○  中高一貫教育の6年間がそのまま大学受験の準備のために使われるのではないかという不安がある。

○  高校の生徒をみると,明確な目的意識を持てず,自分の生き方を自己選択できないような生徒が少なくないが,中高一貫校では,じっくり自己を考える機会が持て,進路指導を強化することができるのではないか。全部中高一貫教育にするということでなく,  中高一貫教育を可能なところから推進すべきと考える。

○  中高一貫校を設置した場合,単位制を積極的に取り入れ,年齢や学年にとらわれないようなシステムにしてはどうか。また,5年間で必要な単位を修得してしまえば,その後は,大学へ進学したい人は進学したり,専門学校へ行ったり,様々な体験をするなど,  自由にしてよいこととしてはどうか。

○  子供たちが「自分探しの旅」をしていく上で,中学校と高等学校の区切りは,将来を考える一つの節目としての意味もある。

○  中高一貫教育は,6年間いじめが続くという問題が生じる可能性もある。

○ 中学校は義務教育である一方,高等学校は義務教育ではなく,多様化が進められている。高校の多様化と整合させる方向で中高一貫教育を議論していくことが必要である。

(大学・高等学校における入学者選抜,過度の受験競争)
○  大学入試は,高校までの学習状況を判断するとともに,入学後の大学教育に対する適  性を判断するためのものと考えると,前者については,高校での履修状況や成績,在学  学校長の推薦,大学入試センター試験などで判断すべきではないか。また,後者につい  ては,論文テストが中心になるべきと思う。
    現在の大学入試の具体的な改善案としては,入試科目と入試時期の改善がある。前者  については,試験の内容を大学生活などで役に立つものとすべきである。また,現在ほ  とんどの大学で入試科目となっている英語を選択科目とするとともに,オーラル・コミ  ュニケーションに重点をおいた試験とすべきである。後者については,7月頃に入試を  行い,9月に入学する機会をもっと増やし,受験機会の複数化を図るとともに,転学部  ・転入学の機会を増やし,流動化を図るべきである。
こうした改善が効果を挙げるため,大学の個性化により,ピラミッド型の序列を「八  ケ岳」に改めるとともに,各種大学卒業資格認定試験(プロフェッショナル・クオリフ  ィケーション・テスト)を実施して就職の際に利用されるようにしてはどうか。

○  英語の獲得点数と,他教科をあわせた全体の成績が相関しており,英語だけを入試からはずすということはどうかと思う。また,入試から英語をはずせば,高等学校以下で  英語の勉強がされなくなることは間違いなく,そういう点についても考える必要がある。

○  総じて外国の大学入学者選抜では,高校の在学時代の調査書が重視されていると思う。  我が国では,高校間格差の問題もあり,調査書があまり活用されていない。今後,大学  が,高校でどういう教科・科目を履修し,どの程度の成績をとることが望ましいかとい  うリクワイアメントを課すなどして,調査書を活用していくことが必要ではないか。初  等中等教育段階で,例えば理科の課題研究やコンピュータ教育に力をいれていく上でも,  リクワイアメントが大事である。

○  大学・短期大学の入学時期については,9月入学の機会をもっと増やしてもいいので  はないか。また,高校の調査書については,高校間の格差の問題はあるが,大学側で高校での学習実態をしっかり調査して,選抜に反映させる方向で検討すべきである。

○  大学入試に際して,高校までの履修状況を評価したり,入試科目のテスト内容を将来を通じて役に立つものにすべきである。入試についても,生徒の主体性を大事にする観点からの改革を進めるべきである。

○  一番問題なのは,学力試験による一発勝負であり,しかも相当数の大学は,スケジュール上,それを一日程度で採点している。そうした制約の下では,入試問題を変えるこ  とはなかなか難しい。入試の一つの改善策として,推薦入学は現在,定員の3割という目安があるが,推薦入学をもっと奨励し,増やすべきである。なお,大学が,推薦入学  と称して高校からの推薦者に試験を課すようなことは止めさせるべきであるが,推薦入学者について,入学後の成績を追跡し,高校側に対して適切な評価を促すことは有意義と思う。

○  大学入試では,高校までのアチーブメントをもっと評価すべきであるし,1点刻みのペーパーテストだけで評価することは非常にまずい。ただし,理工系については,高等  学校で子供たちに十分勉強してもらうことが,大学での勉強の土台となるのであり,受験勉強が全く役に立っていないとは言えない。また,現在の大学入試の英語は,オーラルを重視する方向にあり,相当改善されていると思う。大学入試から英語をはずすということには,語学力を身につける必要性からも反対である。

○  受験勉強で疲れたから,大学で遊ぼうという在り方は問題である。推薦入学は,健やかでゆとりある高校生活を過ごすことができるという意味でも意義がある。また,18歳で大学に入らなければならないということが,一つの大きな問題である。高校を卒業して5,6年経ってからでも入ることができるようにすることをもっと考えていくべきである。

○  大学入試に携わることが教員にとって大きな負担となっており,試験の日数を増やそ  うとすると反発がある。その一方,大学入試センター試験を活用する等,大学入試の実  施を他の機関に任せることについても,「大学の自治」を侵すものとして反対する。そうした矛盾についても考える必要があるのではないか。

○  18歳人口の急減に伴い,全体規模としての大学の間口は広くなっていく。今後問題  にされるのは,全体の大学の入学枠ではなく,一部の有力大学を多くの者が目指してい  るということである。高等学校や中学校で多様化が進んでいることを踏まえ,入試の学力試験の科目については,英語を含め,大学でも高校でももっと自由に考えていいのではないか。

○  高校入試は,英語を選択制にしてもいいと思うが,最近の高校入試は,かなり会話や  ヒアリングを重視する方向で改善されてきている。大学入試については,高校間格差の問題はあるが,高校から提出される調査書を重視していくべきと思う。

○  学校の調査書を,子どもの可能性なども含めた,「生きる力」を評価するものに改め,上級学校の選抜でそれを全面的に信頼してもらえるようなシステムを作っていくことが重要ではないか。

(教育上の例外措置)
○  基本的には,飛び級はいいとは思わないが,初等中等教育段階での留年も当たり前のこととして認めるような社会でないと飛び級もうまくいかない。

○  日本の学校は,大学だけでなく,中学校や高等学校でも,入学すれば何とか卒業でき  るようになっている。飛び級にせよ,留年にせよ,特定の学校だけで実施すると問題が起きるだろう。

○  アメリカの大学入試では,アドミッション・オフィスにおいて,SATなどを使いな  がら,先天的な能力と学力・知識などについて全般的な評価を行う。それに対して我が  国は,学力・知識を偏重し,タレントを重視しておらず,英才を伸ばしていない。行き  過ぎた平等主義が英才的な子どもの才能を殺してしまっているのではないか。学問の進歩は少数の英才がリードしており,その意味でもそうした子供たちをどう育てるかという問題は非常に重要である。

○  システムとして優秀な者は先に進学できるということを積極的に認めるべきである。

(その他)
○  高校への進学率が9割を超える今日,6・3・3制について考え直してみる必要があ  ると思うが,当面,高等学校について,普通科においても専攻科などを活用して,3年卒業のほか,4年修了など多様な大学進学の途は考えられないか。

○  6・3・3制を,例えば6・2・4制に組み直してみることを考えてみてはどうか。
  
○  一人一人の能力・適性に応じた教育を行うためには,画一的な教育を受けた教員だけでなく,幅広い経験をした人を活用すべきである。また,教員養成でカウンセリングの  力を身につけることが重要である。

○  9年間の義務教育について,一人一人の能力・適性を生かす学習になるよう,規制緩和の視点に立った取組を進める必要があるのではないか。

○  心の教育,徳育は非常に大事であるが,実際は,単に集団規律を教えることに止まっている場合が多く,その在り方を検討する必要があるのではないか。

○  日本の社会は,学校の入学・卒業,会社の就職・定年など,横並びの年齢にとらわれ  ており,このことが様々な問題を生じさせている。そうした意味でも,単位制を強くアピールすべきではないか。

○  これからは,「自己実現」ということを基本に,「選択」,「透明性」,「公正」,  「機会均等」といったコンセプトが重要である。また,高校卒業後,就職する者が18  歳人口の約半数いるということに留意して議論を進めるべきである。

○  大学進学率が5割という時代になってきているということを踏まえた本質的な議論をすることが必要になっているのではないか。

2.今後の審議の進め方  
  来年春頃を目途に第二次答申をとりまとめるべく,第1・第2両小委員会を再開して精力的に審議を進めることとし,
i)  第1小委員会は,「学校間の接続の改善」を取り上げ,具体的には,「大学・高等学校の入学者選抜の改善」と「中高一貫教育」について審議する
ii)  第2小委員会は,「社会の変化に対応する教育と教育上の例外措置」を取り上げ,具体的には,
  ア)  まず「国際社会で活躍する人材の育成」や「創造性の涵養」などの問題を含め「一人一人の能力・適性に応じた教育の様々な取組と教育上の例外措置」について審議する
  イ)  これまで,「社会の変化に対応する教育の在り方」として国際化,情報化,科学技術の発展等について審議を行ってきたが,今後,高齢化への対応が極めて重要な課題となることから,「高齢社会に対応する教育の在り方」について審議する
iii)  両小委員会のメンバーは,従来どおりとするが,相互に検討事項が深く関わり合っているので,従前は委員だけが所属する以外の小委員会に出席できたが,新たに専門委員も所属する以外の小委員会に適宜出席できることとなった。

3.次回開催日
第202回総会は,平成9年1月28日に開催し,関係団体からのヒアリングを行うこととなった。

(文部省大臣官房政策課)
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