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中央教育審議会

1996/9
中央教育審議会第199回総会 (議事要旨) 

 中央教育審議会第199回総会議事要旨


日 時 平成8年9月25日(水)午前10時〜12時20分

場 所 霞が関東京會舘「ロイヤルルーム」

出席者 
(委 員)    有馬,市川,薄田,川口,木村,河野,小林,坂元,高木,田村,俵, 永井 の各委員
(専門委員) [第1小委員会] 油井,薩日内,末吉,那須原,増井,牟田
   [第2小委員会] 河田,児島,シェパード,中,山極 の各専門委員
(文部省側)    井上事務次官,草原生涯学習局長,辻村初等中等教育局長,小林教育助成局長,雨宮高等教育局長,佐々木体育局長,富岡総務審議官,鴫野政策課長 その他関係官


議事等
1.自由討議
「一人一人の能力・適性に応じた教育と学校間の接続の改善」及び「社会の変化に対応する教育の在り方」について自由討議を行った。その概要は次のとおり。

(中高一貫教育)
○ これまでの教育の多様化は,それぞれの学校段階で「横」の多様化が進められてきて いるが,これからは学校段階間の「縦」の多様化が必要になってくる。中高一貫教育の   導入については,そうした観点から考えるべきである。特に,理数や音楽等の専門教育  を主とする学科については,中高一貫教育の導入を積極的に考えるべきではないか。

○ 現在のように中学校・高等学校が3年間ずつ区切られていては,なかなか一貫した生 徒の評価が難しいのではないか。生徒の資質を的確に評価するため,全ての学校でなく   ても,できる範囲で中高一貫教育の導入を推進してほしい。

○ 中学校1年生から高等学校3年生までがどのようなつながりをもって教育を受けるか が重要な問題である。ある中学校から,別の学校である高等学校へ進むという現在の在   り方を考える必要があるのではないか。

○ 中高一貫教育のメリットについては,臨教審での議論等を踏まえる必要がある。一部 の私立進学校に見られるように,6年間の教育内容を5年間で終わらせ,残る1年間を   受験勉強に専念するというような在り方はメリットとは言えない。

○ 中高一貫教育を導入した場合,後期中等教育段階では,専門高校や総合学科等の授業 を受けて単位を取得できるようにする等,色々な方法を柔軟に考えるべきではないか。

○ 中学生の時期は子供にとって極めて変化の激しい時であり,早く中学校を卒業して別 の学校である高等学校へ行きたいという生徒もいる。また,中高一貫校でドロップアウ   トした子供にはどのように対応するのかといった問題も考える必要がある。

○ 学校が子供を選抜するのではなく,子供が学校を選択するというように「選抜から選 択へ」という変化が必要になってきている。中高一貫教育の導入について検討するに当   たってもそうした観点が重要ではないか。また,専門教育を実施する上で,中高一貫教 育は有効な方法ではないか。

○ 高校改革について地方でもっと親に理解されるようになれば,中高一貫教育の問題に ついても意識が変化するのではないか。

(大学・高等学校における入学者選抜,過度の受験競争)
○ 受験競争により,家計や子供が,それぞれ経済的あるいは時間的に相当の負担を負っ  ている。大学入学試験については,大学の教員ではなく,高校教育のことをよくわかっ  ている者が問題を作るというのも一つの方法ではないか。

○ 大学への入学試験については,高等学校教育の多様化に対応して,「生きる力」を評 価する等,総合的な学力を測るような内容を目指すべきではないか。また,長期的には,   情報通信ネットワークを活用して他大学の授業を自由に受けることができるようになれ ば,学生が一つの大学に所属する意味が問われ,大学の制度も根本的に変わってくる可   能性がある。

○ 過度の受験競争の問題の背景として,最終学歴が大学卒の者の方が,高校卒の者に比 して,大企業への就職に有利であり,圧倒的に所得が高いということがある。また,大  企業は,いわゆる有名大学の卒業者を中心に採用を行っている。入試のみならず,そう  した企業や社会の在り方を考えることが必要である。

○ 企業は必死になって人材採用について模索しており,大学側が魅力のある人材を社会 に提供すれば,おのずと企業はそうした大学に目を向ける。企業の入社試験を改めるこ   とも大事だが,まず大学側の努力が必要ではないか。

○ 大学に入ってくる学生には,もっと自発的に学習し,問題を発見する能力等を身につ けていることが望まれる。そうした学生を選抜する上で,現在のような方法でよいのか   という視点に立って,入試改革を前向きに検討する必要がある。

○ 高校進学率が96%に達する状況を踏まえると,高校教育の内容は,一般教養的なも のと上級学校に接続するための専門的なものの2本立てとし,大学入試もこれに対応し   たものにすべきではないか。現在の大学入試センター試験の問題は良問であるが,将来 は資格試験的なものとし,一般教養を問うようにしてはどうか。また,大学入学の時期   を見直したり,9月入学を導入するなど,年度内に2回程度入試を実施することも検討  してはどうか。

○ アメリカの企業は,採用に当たって,学歴だけにはこだわらず,ワーク・エクスぺリ エンスなど様々な要素を考慮している。また,アメリカには,小さくても質の高いリベ   ラルアーツカレッジが多数あり,それぞれ企業からも評価されている。そうした意味で は,アメリカ社会は学歴社会ではないと思う。
    アメリカの大学入試では,高校の成績,推薦状,SAT等により総合的な評価が行われている。

○ 親の意識としては,入学試験に大きな権威を持たせる在り方よりも,希望する大学に入ることができ,卒業できるかどうかは本人次第という在り方の方が受け入れられやす   いと思う。

○ 大学が多層化でなく多様化をしていくためには,第三者機関によって大学教育の質を チェックするシステムをつくることを検討すべきではないか。それによって入試もかな   り改善するのではないか。また,中学校では英語嫌いが目立つが,その要因として入試 において英語が主要教科として位置づけられていることが考えられ,入試から英語を外   すことを検討してはどうか。

○ 企業における採用の在り方とともに,行政機関における採用の在り方を見直すことが必要ではないか。

○ 高等学校と大学との連携が不十分であり,両者の協議会のようなものを設け,大いに議論をすることが必要ではないか。

○ 大学入試の問題はかなり改善されてきている。偏差値の高い大学を目指した競争を緩 和するためには,長期計画を立てて大学間の単位互換を推進することがより有効ではな   いか。また,現在進められている大学改革については,一般教養と外国語の教育が軽視 されているきらいがある。

○ 人々が私立進学校や有名大学を目指そうとするのは,就職の際にブランドとして有利 さが保証されているからである。しかし,企業は,株主に対して利益追求の責任を負っ   ているのであり,学校名にこだわらない採用を求めることには無理がある。理想の実現 のため,まず教育の改革を進めることが必要である。

○ 企業側が,具体的にどのような能力を持った人材を求めているかを大学に示すことが必要ではないか。

○ 現在進められている様々な大学改革は,学生が勉強をする意欲を持っているというこ とを前提にしているが,実際は楽に卒業をして学歴を得たいという者が多いのではない   か。大学へ進学することが得でなくなれば,本当に勉強したい者が進学するようになる のではないか。

○ 中学校では進路指導に関連して高校関係者から説明を受けるが,普通高校からの説明は,有力大学への進学の実績についての説明がほとんどである。高校の序列化を解決するため,高校側の意識改革や,個性化・多様化を一層推進していくことが必要である。

○ 考える力をきちんと評価するように入試改革が行われない限り,初等中等教育段階で 「生きる力」をはぐくむ教育を行うことはできない。

○ 高等学校の多様化・個性化を進める上で,親の側が,自分たちの子供の能力や適性を 学校と一緒になって考え育てていこうというように意識を改革することが必要である。

○ 子供たちに心を育てる時間を与えるため,高校入試を無くし,中学校からの推薦を基 本とする制度に改めてはどうか。また,大学入試は,資格試験と専門的な試験を組み合   わせる方法を検討してはどうか。

○ 大学入試センター試験の後,各大学が個別に面接や推薦など多様な入試を実施するこ とがよいのではないか。特に,分離分割型入試の後期の定員を増やしていくことが望ましいのではないか。また,大学入試センター試験は,既に資格試験的な利用もなされて いる。

○ 特定の大学への入学を目指して激しい競争が行われ,それが全ての子供を巻き込み, 低年齢化しているということが問題であり,これをどのように改善するかという観点か   ら入学者選抜の在り方を考える必要がある。

(教育上の例外措置)
○ 「生きる力」や創造性を伸ばすという観点に立って,自らの見識に基づいて,18才 未満の学生を受け入れる大学があってもいいのではないか。

○ 学校段階間の「縦」の多様化を図る観点から,教育上の例外措置を講じ,制度に風穴 をあけることが必要ではないか。

(高齢社会への対応)
○ 我が国は,世界的に例を見ない急速な高齢化に直面しているのであり,子供たちに高 齢社会についての理解を深めてもらうことが重要である。そのためには教育の役割が大   きいのであり,高齢社会に対応する教育の在り方について具体的に議論をする必要があ るのではないか。

○ 高齢化が進行する中,高齢者が生きがいを持てるようにすることが重要であり,高齢 社会への対応を考える際には,生涯学習社会の実現と関連させて検討することが必要で   ある。

○ 高齢化とともに,男女共同参画の問題に対応する教育の在り方について議論をすべきではないか。また,創造力がある質の高い人材を,高校・大学でどのように育成してい   くかを議論していくべきではないか。

○  高齢者と共に生きていく社会をつくるため,高齢者を子供の教育において積極的に活用することなどを通じて,子供の情操をはぐくんでいく場がもっとあっていいのではないか。

○ 少子化が進む中,教育関係予算を削減すべきとの意見が見られるが,教育改革を進めるため,適切な財政措置を講じることが必要である。

○ 生涯学習において,高齢者に生きがいを持ってもらうことが重要な役割となってきて おり,地方自治体がそうした取り組みを行うことを奨励すべきではないか。

(その他)
○ 子供たちに学びたいという意欲をはぐくむことが重要な問題である。文明が発展し, 情報があふれる中,子供たちに対して過保護になっているということを考える必要があ   るのではないか。また,中学校のカリキュラムを精選することが難しい場合は,中学校 を4年制にすることも検討してはどうか。

○ 大学進学率が5割近くに達するといった状況を踏まえ,教育と社会のシステムとの関 わり合いについて考えることが必要ではないか。

○ 学ぶ者が主体的に選択できる制度や内容を備えるということが,一人一人の能力・適性に応じた教育を深化する上で大事ではないか。また,日本の伝統文化を維持・発展す   るために必要な技術を持った人材を育成することが重要であり,そうした観点から,専 門高校の充実などを図っていくべきと思う。


2.次回開催日
第200回総会は,10月14日に開催し,「一人一人の能力・適性に応じた教育と学校間の接続の改善」及び「社会の変化に対応する教育の在り方」についてヒアリング及び自由討議を行うこととなった。

(文部省大臣官房政策課)
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