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中央教育審議会

1996/9
中央教育審議会第198回総会 (議事要旨) 

 中央教育審議会第198回総会議事要旨


日 時 平成8年9月10日(火)午後1時〜3時30分

場 所 霞が関東京會舘「ゴールドスタールーム」

出席者
(委 員)    有馬,市川,薄田,江崎,川口,木村,河野,國分,小林,田村,俵, 土田,永井,根本 の各委員
(専門委員) [第1小委員会]  油井,薩日内,里中,末吉,那須原,蓮見,増井 
   [第2小委員会] 青木,河田,小澤,シェパード,山極 の各専門委員
(文部省側)    井上事務次官,草原生涯学習局長,辻村初等中等教育局長, 小林教育助成局長,雨宮高等教育局長,林田学術国際局長, 佐々木体育局長,富岡総務審議官,鴫野政策課長   その他関係官




議事等
1.自由討議
「一人一人の能力・適性に応じた教育と学校間の接続の改善」及び「社会の変化に対応する教育の在り方」について自由討議を行った。その概要は次のとおり。

(中高一貫教育)
○ 中高一貫教育については,今までも相当議論をされてきたが,メリット・デメリット について十分議論する必要がある。

○ 中高一貫教育については,子供たちに「ゆとり」を持って6年間を過ごさせるという ことはいいことだが,高校2年の段階で高校における全ての教育内容を終えて,残り1   年間で大学受験の準備のための教育を行うということでは意味が無い。

○ 中高一貫教育については,「中だるみが生じる」というデメリットが指摘されるが, これは,別の言葉で表せば「ゆとり」があるということである。大学レベルの教育研究   に触れる機会を与えるなど,その時間を有効に使ってもらうようにすればいいと思う。

○ 「中だるみ」を避け,活気をもたらすには,編入学を行うことが一つの方法ではないか。

○ 現在の制度の下で,私立学校が行っている中高一貫的な教育は,結果として小学校段 階からの受験競争を引き起こしてしまっている。中高一貫教育の導入を検討するに当たっては,そうした点も十分に考える必要があるのではないか。

○ 高校を卒業してすぐに大学に行かなければならない現状では,進路を決める上で,高 校の3年間は時間が短い。中高一貫6年間の中であれば,自分の進みたい方向をゆっく   り考える時間があるのではないか。

○ 小学生の保護者には,私立の中高併設校への進学を目指す傾向があり,受験競争が小 学校段階にも降りてきている。中高一貫教育を検討するに当たっては,発達期にある生徒の人格完成を図っていく,「ゆとり」の中で「生きる力」をはぐくむという観点が大切である。

○ 目の前の受験にとらわれず,思考を深め,人間的成長を遂げていく上で,中高一貫教 育で「ゆとり」を確保することは有意義であると思う。

○ 中高一貫教育は,選択可能な多様な教育の一つとして位置づけるべきである。

○ 中高一貫教育については,その導入により,どのように教育内容を厳選するか,選択 制を拡充するかといった中身が重要である。また,中高一貫教育は,全ての学校で一斉   に導入するということは考えられないのではないか。

(大学・高等学校における入学者選抜,過度の受験競争)
○ 今後,議論すべき点として,大学の入学者選抜の問題は非常に重要である。ペーパーテスト偏重から離別し,評価尺度の多元化・複数化,推薦入学制度の改善等を徹底するにはどうしたらいいか議論をすべきと思う。

○ いい学校を出て,楽に暮らしたいという漠然とした期待が本人にも親にもあり,それ がゆがんだ形で出てきている。大学の2次試験を多様化する必要がある。日本全国でそれぞれの大学が特色を持った教育を行い,バラエティーに富んだ人材の育成を行うことが重要である。

○ 入試は,「生きる力」をはぐくむというねらいに即したものとすべきであり,ペーパ ーテストの1点,2点の差で合否を決めるようなやり方は避けるべきと思う。

○ 創造力がある多様な人材を育成するためには,大学・高等学校が自らの学校に相応し いと思える人材を自由に選ぶということが必要と思う。

○ 大学入試については,色々な原理で人を採るということを考えるべきではないか。

○ 学歴偏重社会の風潮が子供を追い立てていることが問題である。高等学校以下の子供 にどうやって「ゆとり」を持たせるかという視点から大学入試の在り方を考えていくこ   とが重要ではないか。

○ 日本の受験競争の現状は,国際的にも異常に映るようである。改善の方策の一つとしては,分離・分割方式の後期の入学定員を増やすということがあろう。また,大学を選   ぶ学生の側から見ると,各大学に特徴がないということが問題であり,大学の努力が必 要である。さらに,大学入試センター試験については,高等教育を受ける資格試験的な位置づけとするのはどうか。

○ 中学生・高校生にとって,大学入試のための勉強が,自分の生き方を考える上で妨げ となっており,大学入試の在り方を考えることが必要ではないか。

○ 入学試験については,色々な方法で学生を採るということが一番大事と思う。ただ, 選抜の方法が多様化してわかりにくくなり,受験生が,入試に関する情報収集のために余計な苦労を強いられるのはどうかと思う。

○ 中高一貫教育の導入が意義あるものとなるかどうかも,最終的には大学入試の在り方にかかってくると思う。単にペーパーテストによるのではない選抜が行われるようにする必要がある。

○ 生活から離れた受験学力を偏重するのでなく,「ゆとり」の中で,職業体験やボラン ティア活動体験等を十分にできるようにし,目的意識を育て,「自分探しの旅」を保証   してあげることが大切である。そうした観点から入試の在り方を考える必要がある。

○ 大学入試は,技術的には相当の改善が行われており,受験競争の緩和のためには,別 のところにも手をつけなければいけないのではないか。

○ 大学入試が非常に多様化してきており,高校生は,高校入学時から大学への接続の方 法を考えなければならないという問題が生じている。その結果,多くの高校生は,自分   の進路を決定する上で,3年間という期間をますます短いものと考えるようになってき ている。

○ 日本の大学は,入るのが難しく,出るのは易しいということで,高等学校以下の勉強 が,大学入試のための勉強になってしまっている。大学入学の間口を広げたり,単位互   換を進めるなど柔軟な対応を進めるべきではないか。

○ 受験そのものは,人生のなかでチャレンジする関門の一つとして意味のあることと思 うが,失敗を敗北とみなす価値観が問題である。失敗の体験を再生への出発点として大   切にするという社会的な価値観をつくっていくことが必要ではないか。

○ 日本の大学は,例えば,アドミッション・オフィスを設けて長期間にわたってあらゆ  る手段で入学者選抜を行うアメリカの大学に比べると,あまりに安易に選抜を行っている感がある。しっかりとした選抜を行える体制を大学に整えることが必要ではないか。

○ 高等学校については,入試改善とともに,各学校の個性化・特色化を進めていくことが必要である。

○ アメリカの大学では,高校の調査書,SAT,推薦状,自己推薦等で総合的に選抜を 行っており,日本の大学も選抜方法をもっと柔軟なものとしてもいいのではないか。また,他の大学等からの編入学も弾力的に行えるようにすべきではないか。

○ これからの大学入試においては,高校の内申書を重視すべきではないか。また,そのためにもアドミッション・オフィスのような体制を充実させることが大事ではないか。

(教育上の例外措置)
○ 将来の日本の科学技術分野で指導的な役割を果たす人材を育成する必要があり,そう した観点からも,創造性や独創性の涵養は重要な課題である。

○ 特別な能力のある子供について,高等学校の3年間を修了しなければ大学を受験できないという現状でいいのかどうか検討すべきではないか。

○ 教育上の例外措置については,過度の受験競争をあおり立てるような仕組みになってはいけないと思うが,特別な能力のある子供を伸ばしていくことは大切である。

○ 優秀な高校生に対しては,学校の教育課程外で大学の公開講座等の学習機会を提供することが有意義である。

(その他)
○ 大学に入ってくる学生に,何を勉強したいのか,将来社会にどのように貢献していこ うかといった明確な目的意識が見られなくなっているが,これは大きな問題である。
教員に創造的な能力を養うため,大学院を活用するなど,初等中等教育段階の教員の 養成方法を充実することが必要である。

○ これからの日本は,雇用の問題,高齢化・少子化の問題,アジア諸国の台頭といった厳しい環境に置かれ,衰退の道をたどる恐れがある。教育の問題についても,そうした危機意識を持って考えることが必要である。

○ 高齢化への対応は,教育の問題を考える上でも避けられない課題であり,これに焦点 をあてた審議を行うことが適当と思う。

○ 「一人一人の能力・適性に応じた教育」を行うためには,これまでの教育の在り方を  大きく見直し,自由を重んじ,個人の能力を引きだすということに焦点をあてていくこ  とが必要である。

○ 国際化が進む中,学校間の接続の問題を考える際には,外国の教育との接続の問題も 視野に入れるべきではないか。

○ 大学の9月入学についても検討していくべきではないか。

○ 一人一人の能力・適性に応じた教育を進める上で,学校規模が小さいということが重 要ではないか。

○ これからは,日本にとってアジア諸国との関係が非常に大切になるが,科学技術の面 でアジア諸国への貢献を行うことが特に重要である。


2.「21世紀に向けた教育の在り方に関する提言」の募集及び「一日中教審」の開催に ついて
  審議の取り進めについて,国民の理解と協力を得るため,有馬会長からの提案により,昨年と同様,国民に呼びかけて「21世紀に向けた教育の在り方に関する提言」を募集するとともに,委員が公開の場で国民の提言を直接聞く機会として,11月4日に「一日中教審」を開催することとなった。


3.今後の審議の進め方等
○  後半の検討課題は,いずれも極めて重要であり,相互に関わりが深い事柄であるので,今後,十分に自由討議を行った上で,具体的な検討事項を絞り込み,以後,小委員会を再開し,具体的に審議を進めていくこととなった。

○  今後の審議についても,第189回総会で決定したとおり,会議及び議事録の公開は行わないが,議事要旨を公開することが確認された。


4.次回開催日
第199回総会は,9月25日に開催し,「一人一人の能力・適性に応じた教育と学校間の接続の改善」及び「社会の変化に対応する教育の在り方」について自由討た。

(文部省大臣官房政策課)
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