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中央教育審議会

1997/1
中央教育審議会第1小委員会(第19回) (議事要旨) 

                   中央教育審議会第1小委員会(第19回)議事要旨


日  時  平成9年1月17日(金)午後1時〜3時

場  所  霞が関東京會舘「シルバースタールーム」

出席者
(委    員)    有馬,市川,薄田,江崎,河合,河野,國分,高木,田村,永井の各委員
(専門委員) [第1小委員会] 油井,佐々木,薩日内,末吉,那須原,増井,牟田
   [第2小委員会] 中,山極 の各専門委員
(文部省側)    草原生涯学習局長,辻村初等中等教育局長,小林教育助成局長,雨宮高等教育局長,富岡総務審議官,その他関係官


議事等
1.自由討議
  中高一貫教育の導入について,座長の「検討課題のメモ」に基づいて討議が行われた。その概要は次のとおり。

(中高一貫教育の意義と選択的導入について)
○  中高一貫教育の導入は,子供たち一人一人の能力・適性に応じた教育を実現していくという観点から考えていくべきである。また,中高一貫教育の導入は,中等教育全体の多様化・複線化あるいは多線化に資するものと考えられる。

○  我が国が成熟社会となり,教育に対する社会の要請が多様化する中,単線型の学校制度では十分対応できなくなっていることが,今日,中高一貫教育の導入を議論する背景となっていると思う。  

○  中高一貫教育の導入に当たっては,受験競争を激化させないということを大前提とすべきである。ゆとりある教育の実現が建前となってしまい,大学進学に有利という保護者や地方自治体の「本音」に流されないように留意する必要がある。

○  中学校の3年間は子供の多様な成長や変容が見られる時期であり,全てを6年間の一貫教育にするということでなく,むしろ現行制度上の例外的な措置として中高一貫教育の導入を考えていくべきではないか。

○  中高一貫教育には,多感な時期である中学校時代にゆとりを与えたり,異年齢の縦の人間関係をつくることができるといった利点がある。制度には必ず一長一短があるが,問題点の部分を解決しながら中高一貫教育を導入していくべきである。その際,一部の学校だけでは入学志願者が殺到する可能性もあるので,できるだけ幅広く導入していくべきではないか。

○  多様な子供たちに対応していくためには,中高一貫教育をこれからもっと重視していかなければならない一つの教育の在り方と考え,選択的に導入していくことが適当と思う。

○  中高一貫教育には明らかなメリットがある一方,デメリットもあり,子供の個性や親の考え方により選択できるよう,教育制度の多線化を図っていくということでいいのではないか。全部を中高一貫教育にするとすれば,悪しき画一主義にもどってしまう。

(実施形態,教育内容など)
○  一人一人の能力・適性に応じた教育を実現するため,今までは,各学校段階における  教育内容・方法の多様化によって対応してきたが,これからは,教育制度も多様化していく時代になってきているのではないか。そうした観点から,中高一貫教育の導入は意  義がある。
    また,一人一人の能力・適性に応じた教育を実現するという観点からすれば,中高一貫教育の実施形態については,市町村立中学校と都道府県立高等学校の連携,同一設置  者による中学校と高等学校の設置,6年制中等学校のいずれも視野に入れて検討すべきではないか。
    教育内容のタイプについては,公立の中高一貫校を設ける場合,学力による選抜をしないとすれば,多様な生徒が入学することとなり,その多様なニーズに対応するために  は,総合学科タイプを推奨すべきではないか。普通科タイプ等については,設置者の判断で設置することも視野に入れるべきだが,受験準備教育に偏しないようにする必要がある。
    
○  市町村立中学校と都道府県立高等学校とが連携し,中学校から高校へ進学する時に試験を課さないという形態が,多くの子供にとって望ましいのではないか。6年制中等学校の設置は,芸術科や体育科タイプにはふさわしいが,普通科タイプ等の場合は,小学校段階の子供自身が進路を選択できるか疑問であり,いかがか。

○  中高一貫教育を選択的に導入するという考え方に賛成である。ただ,市町村立中学校と都道府県立高等学校とが連携する形態については,高等学校が多様化している現状を踏まえると,市町村立中学校から特定の高校以外に進学できないということでは好ましくないだろう。また,6年制中等学校の設置ができるような制度改革を行っていくべきである。

○  中高一貫教育を導入する際には,その学校の教育方針を保護者や子供たちに明示し,それに魅力を感じる保護者や子供たちが選択するということが望ましい。その意味では,市町村立中学校と都道府県立高等学校とが連携する形態では,教育方針を明確に示すことは難しく,いかがなものか。
    公立の中高一貫校の場合,どのように入学者を定めるかということについては,義務教育段階で入学試験を課すことはなじみにくい一方,抽選では学校の教育目的を達成しにくいことが予想されるなど,難しい課題である。
    設置主体については,公立と私立とが連携する第三セクター的な方法もあるのではないか。

○  中高一貫教育には国民的要望があり,これにかなった形で導入すべきである。その意味で,教育内容のタイプを芸術や体育などに限ることはどうかと思う。小学校段階では進路選択が難しいので,中高一貫校は総合学科タイプが望ましいのではないか。
    普通科タイプの場合,これをエリート校的なものにしないとするならば,地方自治体が積極的に中高一貫教育を導入しようとするかどうか,また,入学者の決定方法として学力試験を課さずに多角的な方法を採るということは一つの考え方であるが,それぞれの学校でどこまで工夫できるか,といった課題があり,更に考えることが必要だろう。

○  保護者の間で通常で想起される中高一貫教育の実施形態は,6年制中等学校の設置である。その他の類型では,異年齢集団での社会性の育成といった中高一貫教育の利点があまり生かされないのではないか。

○  子供の多様化に対応するため,中高一貫教育の在り方についてもう少し柔軟に考えてもいいのではないか。各都道府県が創意工夫して,3つの実施形態の中から選択して,できるところから中高一貫教育を導入していくのがよいのではないか。

○  教育制度の多様化・多線化を進める観点から,中高一貫教育を導入していくことに賛成である。導入に伴って必要となる行財政措置について検討すべき課題もあるが,各県  に1〜2校ぐらい6年制中等学校を設置してもよいのではないか。

○  6年間まとまった教育を行い,自分を発見し,個性を見出せるというメリットからすれば,6年制中等学校を設置するという実施形態が望ましいが,子供それぞれの成長過  程で違った学校に進学し,新しい環境の中で刺激を受けるなど,他の実施形態にもそれなりの価値があると思う。

○  中高一貫教育を導入する場合,高等学校段階の定員を大きくし,他の中学校から進学できる余地を残すべきである。また,中高一貫教育を行う中学校に入学した者が他の高等学校へ円滑に進学できるように配慮すべきである。

○  中学校,高校時代は子供たちの成長が著しい時代であり,中高一貫教育の導入に当た  っては,進路変更ができる可能性を十分に確保した上で,ゆとりある教育を目指すべきである。

○  中高一貫教育の導入については,行財政上の観点からも,9年間の義務教育という現行制度を前提にして考えていくべきであろう。

○  私立にも国立にも中高一貫教育を行う学校はあるが,国民に広くそうした教育を受ける機会を提供するため,公立にも中高一貫教育を導入することは必要ではないか。

○  地方では,私立の中高一貫校の存在はまだ目立ったものにはなっていないのではないか。

○  有力大学に進学する生徒の出身校を見ると,東京のみならず地方の私立の中高一貫校がその割合を増やしており,そうしたことも視野に入れて考えるべきではないか。

○  私立の中高一貫校の相当数は,特定の大学に付属し,当該大学へ多くの者が進学する形をとっており,受験に有利であることを特徴とするものはごく一部である。有力大学  に進学する生徒の出身校について,私立の割合が増えているのは,主として都立高校の  割合が低下したことによるものであり,地方の有力公立高校は大きく変わっていない。

○  中高一貫教育の導入に当たっては,そのメリットを享受する機会が全くない地域があることは平等性の観点から望ましくないので,留意すべきではないか。また,学校週5日制の実施を目指し,教育内容を厳選する上で,中高一貫教育は対応しやすいのではないか。

○  中高一貫教育は,中学校段階へ進むときに,どのような希望を持ち,どのような学校生活を送りたいかを考えるひとつのきっかけになるものであり,そうした小学校の進路指導の在り方という観点からも,中高一貫教育の導入について考える必要があると思う。
    また,現行の3年間の公立中学校では特色を出しにくい面もあるが,中高一貫校では6年間の中で特色ある教育課程を組み,多様な子供のニーズに応えていくことができるのではないか。

○  私立の中高一貫校を見ると,異年齢集団による活動がそれほど活発とは思わない。例えば,生活を伴った教育として,中高一貫の寄宿学校を設けることを考えてもよいのではないか。

○  入試のためにゆとりがない生活を強いられるという問題が大きいとするならば,中高  一貫教育を選択的に導入するのみならず,高校入試の改善を併せて進めていくことが,  従来の中学校・高等学校を選択する子供たちとの公平性という観点からも重要である。  また,中学校を卒業して就労する者のことを意識した議論も必要ではないか。

○  小学校との接続をどうするかが大きな問題である。例えば,小学校卒業程度の学力をチェックして,その後抽選という方法があり得るのではないか。


2.今後の審議の進め方  
  次回会議において,大学・高等学校の入学者選抜の改善について,次々回会議は,中高一貫教育の導入について審議を行うこととなった。


3.次回開催日
  第20回会議は,平成9年2月5日に開催し,大学・高等学校の入学者選抜の改善について討議を行うこととなった。

(文部省大臣官房政策課)
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