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中央教育審議会

1996/12
中央教育審議会第1小委員会(第18回) (議事要旨) 

                       中央教育審議会第1小委員会(第18回)議事要旨


日  時  平成8年12月10日(火)午後1時〜3時20分

場  所  霞が関東京會舘「シルバースタールーム」

出席者(委    員)有馬,市川,江崎,河合,木村,河野,國分,小林,高木,田村,土田,鳥居,永井の各委員
      (専門委員)[第1小委員会]油井,薩日内,末吉,那須原,蓮見,増井,牟田
                  [第2小委員会]青木,山極 の各専門委員 
      (文部省側)草原生涯学習局長,辻村初等中等教育局長,遠藤財務課長,高審議官(高等教育局担当),富岡総務審議官,鴫野政策課長,その他関係官

議事等
1.自由討議
  大学・高等学校の入学者選抜の改善について自由討議が行われた。その概要は次のとおり。

(高等学校の入学者選抜の改善)
○  高校入試については,選抜方法・尺度の多様化,受験機会の複数化,推薦入学の枠の  拡大,内申書の重視など,県によって差はあるが,かなり改善が進められており,その  方向を更に進めてほしい。
    現在,高校の学校間格差が存在するが,高校の多様化を推進していくことが格差を無  くしていくことに結びつくのではないか。また,将来的には,高校進学を希望する子供  たちが高校へ入れる方向を目指すべきと思う。
      
○  受験機会の複数化をはじめ,高校入試は随分変わってきている。ただ,公立高校の入  試については,教育委員会主導の県内統一的な改革となっており,高等学校の多様化が  進んできていることを踏まえ,それぞれの特色を生かした入試ができるよう,学校裁量  を大幅に認めていくべきではないか。推薦入学については,普通科でももっと拡大すべきである。

○  高校入試は,基本的には,ペーパーテストでなく,推薦入学を拡大し,面接を重視す  る方向が望ましい。公立高校の入試について,学校の裁量に任せすぎると,現在の学校  の教師の意識を考えた場合,学力の高い子供を集めようという方向に一斉に走る恐れが  ある。その意味で教育委員会が指導力を発揮することも必要である。

○  中学校の不登校の子供たちは,思春期の時期にあるのであり,焦らせることは望ましくない。不登校の子供に対する高校の門戸の開き方を考えることが必要である。例えば,
  中学校からの推薦は困難であっても,個人として志願して高校に受けとめてもらうという方法も考えられるのではないか。

○  高校入試が多様化してきていると言っても,一部にとどまっており,学校間の相互牽制もありなお画一的である。例えば,学力検査の実施教科数は,ほとんどの私立学校が3教科であるのに対して,公立学校はほとんど5教科となっており,原則を3教科に  するということを検討してもいいのではないか。

○  公立高校の入試については,大学入試における大学の場合と異なり,当事者である高  校の姿が見えていない。高校自身が,どういう子供を入れたいのかを明確にし,各学校  の裁量で,学力試験が3教科であっても5教科であってもいいし,内申書の評価の方法  や内申書と学力試験の比重を考えるということが望ましい。また,中学校と高校の間の  ハードルを低くする観点から,入学定員をもう少し弾力的に考えてもいいのではないか。

○  高校入試について議論するに当たって,これからの高校は,どういう人間を世の中に送り出していくべきかという議論を深めることが重要である。進路指導については,教員が授業のかたわらで行うのでなく,専門家を育成して配置していくことが必要ではないか。

○  高校教育に親が期待しているのは,いかにしてよい大学に入れるかということであり,
高校入試の問題は,大学入試の問題との関連で考えるべきである。高校入試の改革自体は,選抜尺度の多元化や受験機会の多様化というよい方向に進んでいると思う。また,内申書と学力検査の比重については,同じ学校の入学定員の中で,ある部分は学力検査  一本,ある部分は内申書のみ,ある部分は両方を評価するというような多様化があって  もいいのではないか。さらに,高校入試の在り方については,公立学校のみならず,私立の学校に目を向けて検討することが必要である。

○  戦後,高校から学校文化が失われてしまったが,多様な能力のある子供が集まって高校社会を構成することが重要であり,高校入試は,多様な人材を採るということを基本  にすべきである。各学校が,学力のある者,体力に秀でた者,一芸に秀でた者などをそ  れぞれ採るようにすべきである。

○  これまで,調査書は,そこに記載された各教科の評定の合計をみるというかたちで利用されてきたが,これからは,個性を重視するという観点に立って,信頼性を確保しながらどのように利用のあり方を改善していくかが重要な検討課題である。

○  調査書については,もっと絶対評価を加味しながら,学校生活や学習状況が反映されるようにすべきである。また,高校を志望する理由や将来どういう進路を目指すのかといったことを,調査書と面接を通じて評価することも考える必要があるのではないか。

○  各高校の特徴や教育内容などの情報を中学生などに提供していくことが重要ではないか。

○  高校入試の問題は,私立学校と公立学校の在り方を一緒に考えることが必要である。私立高校には,ペーパーテスト偏重の選抜を行っているところもある。

○  学校週5日制により,子供たちの人間形成を図る上で,地域の団体に所属しての活動  など学校外での活動が果たす役割が大きくなるのであり,推薦入学について,地域の団  体等が高等学校や大学に対して直接推薦を行う方法も考えるべきではないか。さらに,  そうした学校外での活動を面接やレポートによって評価する等,時間をかけて選考を行うことが大切ではないか。こうしたことは,地域社会や家庭の教育力の向上にも資すると思う。

○  中高連携など中学校から高校への進学に当たって試験を課さないという方向を進めていくべきではないか。

○  地方では,有力大学を目指すということは一般的ではなく,親は,子供が高校卒業後,社会できちんと生きていけるよう,高校までの教育の充実を望んでいる。

(大学の入学者選抜の改善)
○  大学入試についても,高校入試と同じように,調査書を重視することが必要である。  英国では,高校のスクールレコードやインタビュー等を重視し,ほとんど大学独自のペーパーテストには頼っていない。また,調査書については,国際比較研究を行って書き  方を工夫したり,大学と高校が連携してよりよいものとすべく努力していくべきではな  いか。

○  大学が自らの教育を自己点検し,単位認定や卒業認定を厳しくすることが必要である。
    また,解答の正誤だけではなく,思考力,判断力,表現力を問うような出題を行うべ  きであるが,そのためには入試の採点に手間暇をかける必要がある。入試に時間をかけ,4月までかかってもいいのではないか。
    推薦入学は拡大すべきであるが,その際,現在一部に見られるように,推薦入学において学力試験を課すことは止めるべきではないか。
    ボランティア活動などの経験や本人が提出するレポートなどをもっと評価することが必要ではないか。
    セメスター制度を導入する等の工夫を行い,4月だけでなく9月に入学する途をもっと開くなど,受験機会の複数化を進めるべきではないか。

○  ペーパーテストをなるべく少なくしていくべきである。また,選抜方法の多様化の一つとして,子供の潜在的な能力を評価していくことも重要である。

○  文科系に進む人が,理科系の学問を知らなさすぎる。特に私立大学の文科系ではその傾向が見られる。例えば,文科系の入学者選抜に当たって,数学や理科ができる人が入りやすい途を開いてはどうか。

○  大学入試センター試験については,高等学校関係者の意見をもっと反映させるべきで  ある。また,調査書の書き方は相当工夫の余地があるが,大学側がこれを信頼していくことが重要であり,調査書を活用し,各大学ではできるだけペーパーテストをしないということが本来ではないか。

○  大学入試はかなり改善されてきているが,21世紀を展望し,「生きる力」を重視することを踏まえると,手間暇をかけた丁寧な入試を行い,生徒の目的意識や学習意欲な  どを評価していくことが必要ではないか。個別の大学入試については,ペーパーテスト  で課す科目をもっと減らし,1ないし2科目くらいに絞ってもいいのではないか。その一方で,高校の調査書をもっと活用し,潜在的能力や意欲などを見るとともに,大学の  学問と関連する教科を高校でどれだけ学ぶべきかを大学がリクワイアし,その成績を評価していくことが必要ではないか。客観性を確保しつつ,こうした選抜を行うためには,  アドミッション・オフィスを充実し,高校と大学の連携を密にしていくことが大事と思う。

○  大学間の転学をもっと簡単にできるようにすべきである。また,統一的な資格試験を実施し,それに合格した者は日本国内のいずれの大学にも入学できることとし,各大学  は定員の2倍程度の入学を認め,入学後ある水準に達しない者には退学してもらうようにしてはどうか。

○  大学入試センター試験を資格試験にすることは実際には大変難しいと思う。
    各大学では,大学入試センター試験をベースにして学力試験を最小限にし,面接などで評価する方がいいと思う。入試は,手間暇をかけたものにすべきであるが,予算の制約もあるので,工夫をしている大学に対して予算を重点配分するということも考えてはどうか。

○  大学入試によって高校教育が阻害されないようにするという観点からは,単に入試科目を減らすのではなく,調査書を活用する等して,むしろ幅広く評価を行うようにすべ  きではないか。また,過度の受験競争の解消を図るためには,入試を改善することより  も大学教育の多様化を図ることや,特定の大学を卒業した者が非常に優遇されるという学校歴社会の状況を改善することが重要ではないか。

○  中高一貫教育を導入するならば,受験競争の低年齢化を広げることのないようにする  ためにも大学入試・高校入試の改善が必要である。また,TOEFL受験者の平均点を国際比較すると,日本は相対的に低下しており,大きな問題である。英語の大学入試の  在り方が,高校以下の英語教育の改善を阻害しているのではないか。

○  子供たちに「ゆとり」を与え,「生きる力」をはぐくむために入試を改善していく必  要があるが,そうした子供たちあるいは親の側からの視点と,大学側の論理をどう調整していくかが課題である。また,大学も多種多様であり,一律に論じるのは難しい。

○  入試に課す科目や試験の内容を決定する際にも,大学と高校の教員あるいは高校と中学の教員が一緒に話し合うようなことができればいいと思う。また,大学入試については,大学の自治にこだわらずに,アドミッション・オフィスに任せていくべきではないか。

(その他)
○  子供たちに「ゆとり」を与え,人間教育を充実させるため,中学校をもう1年増やすことを考えてもいいのではないか。

○  高校進学率が95%を超える一方,大学進学率は約4割であり,高等学校を卒業した後,大学へ進学するよりも就職する者の方が多い。そうしたことも視野に入れて議論する必要があるのではないか。

○  様々な職業に就く人々を視野に入れ,日本全体の知識の水準をどう高めるかを議論することが必要である。また,義務教育修了後,いつでも入れるような自由度を持った高等学校の制度を考えてみてはどうか。

○  高等学校における職業教育を充実することが重要ではないか。

2.今後の審議の進め方  
  次回会議において,中高一貫教育の導入について,次々回会議は,大学・高等学校の入学者選抜の改善について審議を行うこととなった。

3.次回開催日
  第19回会議は,平成9年1月17日に開催し,中高一貫教育の導入について討議を行うこととなった。

(文部省大臣官房政策課)
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