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中央教育審議会

1996/11
中央教育審議会第1小委員会(第17回) (議事要旨) 

                   中央教育審議会第1小委員会(第17回)議事要旨


日 時 平成8年11月27日(水)午後1時〜3時

場 所 霞が関東京會舘「シルバースタールーム」

出席者 
(委員)    市川,薄田,江崎,河合,河野,國分,小林,坂元,高木,田村,鳥居,永井の各委 員
(専門委員) [第1小委員会] 油井,佐々木,薩日内,末吉,増井
   [第2小委員会] 河田,小澤,山極 の各専門委員 
(文部省側)    草原生涯学習局長,辻村初等中等教育局長,小林教育助成局長,高審議官(高等教育局担当),佐々木体育局長,富岡総務審議官,鴫野政策課長 その他関係官


議事等
1.自由討議
  中高一貫教育について自由討議が行われた。その概要は次のとおり。

(趣旨,メリット・デメリット)
○  思春期は相当難しい時期であり,そうした時期に受験がなく,のんびりできる,ゆとりがあるという点で中高一貫教育は有意義である。そうした意味で,中高一貫教育を導  入した場合は,中学校段階で休みがちであった者や,成績が振るわなかった者も高校段  階にできるだけ受け入れていくことが重要である。また,教師にとっても,6年間にわたって子供をじっくり指導できるし,中学校・高等学校両方で教えることによって幅が広くなるという意義がある。ただ,中高一貫教育は,デメリットもあるので,多様化の一つとして導入を考えていくべきである。

○  中学校段階では,親の意思が強く影響する。中高一貫教育を導入して様々な教育を受ける選択が委ねられても,大学受験に有利になるかどうかという視点から選択が行われる恐れもあり,そうしたことも考えることが必要である。

○  ゆとりを確保したり,縦の異年齢の人間関係を育てたり,進路をじっくり考える上で,  中高一貫教育は有効であり,自分が話し合った高等学校の校長の多くは基本的に賛成で  ある。ただし,私立の中高一貫校を目指した受験競争の低年齢化が進んでおり,私学の存在を考えて議論することが必要である。

○  全国全ての学校を中高一貫教育とするのか,各県で幾つかの中高一貫校を作るということかによって,メリット・デメリットが違ってくるが,多様化の路線として一部に中高一貫校があった方がいいと思う。

○  中高一貫の私立学校では,中高一貫6年間でないとできない教育があると考えて実施してきた。高校へほとんどの者が進学する今日,公立の中高一貫校があってもいい。しかし,希望が多かった場合には,選抜が必要となるが,受験競争が低年齢化しないようにするためにはどうしたらいいか考える必要がある。また,中高一貫校でない学校でもよい教育が行われているところがたくさんあり,そのような学校を分け隔てしないような方策を考えるべきである。

○  中学校段階は,自分の「生きる力」を確立する大事な時期であるが,受験競争に巻き  込まれており,競争を緩和する意味でも中高一貫教育を可能なところから進めていくべきである。中高一貫教育は,友情を深めたり,異年齢集団の活動をしたり,様々な体験  活動をする「ゆとり」があり,学校生活の充実を図る観点から有意義である。また,6年間の中で自分探しの旅をすることができ,進路指導を進める観点からも有意義である。
    中高一貫教育を導入する場合,受験競争の低年齢化を避けるため,入学は,希望者の抽選制をとるべきでないか。また,中学校修了段階では,進路を再決定する機会を与えるべきである。さらに,学校規模は各学年3〜4クラス程度が適当ではないか。

○  中高一貫教育を全面的に実施することは,地方自治体の財政力を考えると難しいが,その導入には賛成である。ただ,中学校に入る際に試験を受けなければならないということは,大きな課題として考えなければならない。

○  中高一貫校では,6年間の中で,学習指導とともに,将来を見通して自分の生き方を考えさせる進路指導を深めることができるのではないか。

○  高等学校段階では子供たちの能力・適性が多様化してくるのであり,これに対応した  学習の機会を提供するためには,中高一貫校は大規模校でないと難しいのではないか。  また,ある程度生徒の均質性がないと教育を行うことは難しいのであり,中高一貫校の入学者選抜を抽選だけで行うことはいかがなものか。

○  公立の中高一貫校を設ける場合,私立と異なり,あまり生徒の同質さを求めてはいけ  ないので,学力だけの選抜ではなく,ある程度の緩やかさを持った選抜の方法を考えることが必要だろう。

○  中学校では,高学年になるにしたがって学習塾に通う者が増えており,高校受験の精神的な軋轢が見られる。できるところから中高一貫教育を進めていくべきと思う。

○  高等学校では,専修学校の学修を単位に認めたり,学校間連携を進めたりするなど,  横断的な多様化が相当進んできている。そうした中,中高一貫教育を導入して中学校と  高等学校をつなぐことを,縦断的な多様化の一つとして考えていくことが大事ではないか。

○  中高一貫教育を多様化の一つとして選択できるようにするとした場合,画一的な平等  主義に対するけじめをつけることが必要ではないか。また,多様な選択を認めていく場合,ある程度の競争は避けられないのであり,そうしたことについて社会的な理解を求めることも必要ではないか。

(導入方法など)
○  中高一貫校をどういう学校にし,どのくらい作るかは,設置者に任せていくことがよいのではないか。ただし,中高一貫校が受験校にならないような何らかの歯止めは必要だろう。

○  これまで,臨時教育審議会で6年制中等学校を提言したが実現しなかった理由として,
  受験競争の低年齢化の恐れや私学との関係のほか,行財政上の問題として高校・中学校の設置者の違いの調整や,義務教育の国庫負担との関係などの問題があった。これらをどうするか考える必要がある。

○  中高一貫教育の形態は,色々あるのであり,6年制中等学校を設置する場合,中学校・高等学校の設置者を同じとする場合,県立高等学校と市町村立中学校との連携を行う  場合,それぞれにメリット・デメリットがあるのではないか。また,連携の場合は,中学校から高等学校へ進むときに,現在とどのように変わってくるのか議論することが必要ではないか。

○  6年制中等学校は,少数の特別な学校となる心配がある。むしろ,中学校と高等学校  との連携を深めることをよく考えることが重要と思う。中学校において,進学のためのカウンセリングを充実させ,自分の適性を見つめさせることが大切である。

○  子供には,早伸びの子供と,遅伸びの子供が混じっており,一定の時点で行われる入学者選抜で勝敗を決めてしまうということが問題である。中高一貫教育を導入した場合,
  6年間の一貫教育を施す生徒だけでなく,高校段階から相当数を入学させるなど,中学校と高校を緩やかに連結し,入学の機会を増やすことが重要ではないか。

○  中高一貫教育には,色々なタイプが考えられるだろう。音楽,体育,理数といった分  野について,目的意識がはっきりした子供を教育していく中高一貫校もあっていい。

○  中高一貫校は,ごく普通の学校を目指すのでなく,特色を持たせるべきではないか。  その中の一つの類型として,特異な才能を伸ばす教育を行うことも考えられるのではないか。

○  中学校と高等学校では,公立学校と私立学校の比率が大きく異なっており,中高一貫教育の導入について考える場合,そうしたことも視野に入れて議論すべきではないか。
  
(その他)
○  中高一貫教育だけでなく,推薦入学を認めるなど,高校入試におけるペーパーテストをできるだけなくしていくべきではないか。

○  マルチメディアを活用していくことなどによって,現在の制度の下でも,中学校と高等学校それぞれの教育の連携を図り,柔軟な活動をすることができるのではないか。

○  ティーンエイジの子供たちを伸び伸びと自由闊達に育てることが重要であり,そのた  めには,大学入試の問題など受験競争の在り方について議論することが必要である。ま  た,大学の4年間は適当な長さであり,小・中・高等学校も4・4・4制にしてはどうかと個人的には思う。

○  4・4・4制は,憲法や教育基本法を改正することも考える必要があり,なかなか難しいのではないか。国・地方の財政を考えると,投資余力は減少傾向にあり,膨大な費  用がかかる選択は現実的ではないと思う。

○  例えば,5・4・3制も視野に入れて検討してはどうか。

○  一人一人の能力・適性に応じた教育を進めるためには,教員の側の多様化を図ってい  くことが必要であり,教員免許状を持った教員だけでなく,広く他分野からの登用を進めるべきである。また,教員免許制度は,教員が,小・中・高等学校で教えるためには,  それぞれに相当する免許状を持っていることを求めているが,これも弾力的に考えていいのではないか。

○  中学校と高等学校だけでなく,大学と高等学校の連携を図っていくことも重要ではないか。

○  小論文や面接を採り入れる等,もっと時間やお金をかけて大学入学者選抜を行っていくべきではないか。

○  今の子供は,異年齢集団での経験が無いまま,同年齢集団の中で競争をさせられており,内面を深めるべき思春期において,そうしたことが阻害されているという問題があ  る。また,個人の能力差や適性をもっと認め,多様な選択をしていくことが重要であり,  同質にとらわれた価値観を親などが改めていくことが必要である。

2.今後の審議の進め方  
  次回会議において,大学・高等学校の入学者選抜の改善について審議し,次々回会議は,中高一貫教育について審議を行うこととなった。

3.次回開催日
  第18回会議は,12月10日に開催し,大学・高等学校の入学者選抜の改善について自由討議を行うこととなった。

(文部省大臣官房政策課)
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