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中央教育審議会

1997/1
中央教育審議会第2小委員会(第16回) (議事要旨) 

               中央教育審議会第2小委員会(第16回)議事要旨


日  時    平成9年1月21日(火)午後1時〜3時

場  所    虎ノ門パストラル「アイリスガーデン」

出席者 
(委    員) 有馬、市川、薄田、江崎、木村、田村、俵、土田、鳥居、永井、根本  の各委員
(専門委員) 河田、シェパード、中、山極、増井、牟田  の各専門委員
(文部省側) 草原生涯学習局長、辻村初等中等教育局長、工藤教育助成局審議官、早田大学課長、富岡総務審議官、その他関係官


議事等
1.自由討議
  「一人一人の能力・適性に応じた教育の様々な取組と教育上の例外措置」について、討議を行った。その概要は次の通り。

○物理というのは、自然科学の分野では一番基本的な分野であり、また、数学と物理は接近している分野である。高等学校の生徒が大学に体験入学し、大学の物理を受けると、大変興味を持つ。こうしたことから、特例措置の対象としては、数学と物理を一緒に取り扱った方がいいと思う。また、その方が、高等学校の先生が才能を見つけやすいのではないか。

○例外措置の対象は、物理・数学という一つでくくることがいいと思う。ただし、物理も実験物理と理論物理では異なり、理論物理志向は、割に早く才能を見つけられると思う。また、数学・物理だけでなく、化学などでも相当早くから能力のある人がいるし、対象分野はもう少し広い方がいいと思う。

○コンピューテーショナル・フィジックス(計算機物理)やコンピューテーショナル・サイエンス(計算機科学)という新しい分野が出てきており、そういうコンピュータなどに非常に能力がある子供たちにも、注目していいのではないか。

○例外措置以前の通常の教育の在り方が一番問われているのではないか。稀有な才能を有する子供についても、人格形成が大切であり、バランスの取れた教育をしていかなければならない。特に、理科系の子供たちに対しても、リベラルアーツをしっかりと教え込むことが必要である。また、人格形成の問題と同時に、たくましい精神力、変化に対応できる持久力を持った忍耐心の強い子供をつくることが大切である。

○稀有な才能を有する子供の能力の伸長のための取組としては、次の3つが考えられる。
  一つは、高校生が学校外で、大学の公開講座やセミナー等に参加する機会を拡大し、それを高等学校の単位として認定していくことである。
  二つ目は、高等学校において、特定の分野の科目について、大学レベルの教育を行うことで、場合によっては、そこで学んだことを、大学の単位として一応認定することも考えられる。この場合、対象分野は、物理・数学に限ることはないと思う。
  三つ目は、18歳未満の者に、大学入学を例外的に認めることであり、数学と物理の分野では、これを認めてもいいのではないか。

○物理・数学の分野で、稀有な才能を有する人を埋もれさせないよう、早く発見して、適切に処遇する教育システムは、まず第一に必要である。その方法としては、大学の単位の取得を若いうちから取れるようにするという仕組みがあっていいと思う。
  社会科学や人文科学の分野でも稀有な才能というのはあり得るわけで、そうした才能を有する人が苦手の科目で苦労することを避けるために、学校を多様化させることが一つの方法だと思う。
  ただ、暗記力が優れていることだけでは、稀有な才能として特別扱いしない方がいい。

○教育上の例外措置を通常の教育システムにのせることは困難であり、高等学校で教えるというのではなく、大学の先生が、趣味的に取り組み、それを国が支援するという形でいいのではないか。

○教育上の例外措置は、一人一人の能力・適性に応じた教育であり、「エリート教育」では決してなく、「エリート教育」とは一線を画して考えるべきである。

○稀有な才能を有する者の教育上の例外措置も、多様化の中の一つと考えるべきであり、同様に、習熟度の遅い子供に対する配慮も考えることが必要である。
  芸術や体育の分野でも、稀有な才能を伸ばすためには、非常にお金がかかるので、大学である程度の専門的なサービスを行うことを考えてもいいのではないか。
  また、稀有な才能まではいかないが、優秀な人はいるので、習熟度別学習での対応を考えていけばいいと思う。

○音楽や体育の分野では、稀有な才能を持った人が自分を開示できる場があるが、数学や物理については、日本では全くないことが問題なのである。

○稀有な才能を有する子供が大学に入ってきた際、その才能を伸ばせるような、大学教育・大学院教育の改革が必要である。

○一人一人の持っている多様な個性を生かすという観点からは、17歳で大学へ入学させるという方法よりも、むしろ、大学入試の改善を進め、多様な基準で生徒を選抜していけばいいのではないか。それが、子供の個性を伸ばす、良さを生かすということにつながると思う。

○日本は年齢の壁が非常に強いが、17歳での大学入学が認められれば、そういうものが相当壊れ、多様化が進むのではないか。現在、大学学部3年次から大学院に進学できるようになっているが、はじめは学生に抵抗感が強かったが、今は驚くほど抵抗感が無くなっている。

○稀有な才能を有する子供の能力を伸ばすことは非常にいいことだと思うが、一人一人の能力を大切にするということであれば、当然、留年や落第もあっていいし、そういういろいろな場合を考えて取り組んでいくことが、例外措置をスムーズに運ぶことになると思う。

○教育上の例外措置については、高等学校と大学の連携を促進する一つの大きなきっかけになるもので、基本的には賛成である。
  稀有な才能を有する者の大学への選抜方法についてであるが、現在、各大学で体験入学を行っているが、この体験入学に参加する高校生の中から、大学の専門の先生がすごい才能を有する生徒を見出し、そういう生徒を選抜すればよいのではないか。高校2年生から能力のある者は受験していいという制度をつくると、受験競争を刺激することにもなり、今抱えている問題を解決することにはならないと思う。

○個性を尊重するという観点で、稀有な才能を潰さないため、何らかの方法を考えることには賛成であり、物理・数学の分野で特に必要だと思うが、それだけに限定はしなくてもいいのではないか。

○今の受験は、記憶力のみを競い合うという面が強いが、稀有な才能を有する子供に対して何らかの措置を取ることにより、人間には記憶力ではない才能があるということを指摘することになり、意味のあることだと思う。しかし、受験に有利なものとして利用されることがないように、十分気を付けなければならない。

○教育上の例外措置については、システムとしては義務教育段階ではなじまないと思う。しかし、例えば、選択教科の中で、稀有な才能を有する生徒が出てきて、中学校の教員だけでは十分に対応できない場合などは、高等学校と連携することも考えてはどうか。

○受験に関係の無い体育や芸術は、学校外で稀有な才能が育つが、受験があるために、物理・数学に稀有な才能があっても、それを育てるシステムが世に受け入れられないという事実があると思うので、分野は物理・数学に限定するという方向でよいのではないか。

○基本的な教育がしっかりしていることは当然だが、基本的には、教育は多様化すればするほどいいと思う。物理、数学などで才能のある人を例外措置の対象とすることはいいが、それだけではなく、障害のある子供たちに対する特別教育なども、もう少しあっていいと思う。

○改革の理念を明確に打ち出した上で、具体的な方策を示すべきで、個々の問題だけを取り上げ、多様化を進めると、悪い意味での差別化につながりはしないかなどの心配が生まれる。
  稀有な才能を有する者の教育上の例外措置については、大学入試の問題に端を発し、いろいろな議論が生まれてきているのであり、大学入試の関門をできるだけ低くし、卒業を難しくするというふうに持っていった方が、ずっと効果が上がると思う。

○高校において大学レベルの教育を行う場合、大学の単位を与えるとなると、高等学校の先生では難しく、大学の先生が関与することが必要となるであろう。むしろ、大学において、科目等履修生などで、高等学校の生徒に大学レベルの教育を行い、場合によっては大学の単位を認めるという考えの方があり得るのではないか。

○18歳という大学入学年齢制限を外せば、自然にいろいろなパイロット事業が生まれてくると思われ、中央教育審議会としてあまり限定をしない方がいいのではないか。

○数学と物理の分野で、大学入学年齢制限の緩和ができれば、大学と高校のコミュニケーションが相当深まっていくと思う。

○今までは、一人一人の子供の年齢に応じた教育をやり過ぎた感がある。一人一人の子供の能力に応じた教育を進めるためには、年齢の制約を取り去るべきである。
  人間の能力はいろいろあり、記憶能力の優れた人間もいるし、論理に優れた能力の人間もいる。その子供たちを、学校で退屈させず、その才能を伸ばしていくことが一番重要なことである。


2.次回開催日
第17回会議は、2月12日に開催し、本日に引き続き、「一人一人の能力・適性に応じた教育の様々な取組と教育上の例外措置」について討議を行うこととした。  

(文部省大臣官房政策課)
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