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中央教育審議会

1997/10
幼児期からの心の教育に関する小委員会 (第2回)議事録 

       幼児期からの心の教育に関する小委員会(第2回)

    議    事    録

    平成9年10月7日(火)  13:00〜15:30
    霞が関東京會舘  35階  シルバースタールーム


    1.開    会
    2.議    題
        幼児期からの心の教育の在り方について(ヒアリング及び討議)
    3.閉    会

    出  席  者

委員 専門委員 事務局
木村座長 明石専門委員 長谷川生涯学習局長
江崎委員 油井専門委員 辻村初等中等教育局長
沖原委員 安藤専門委員 御手洗教育助成局長
河合委員 猪股専門委員 北村審議官(体育局担当)
俵   委員 衣笠専門委員 富岡総務審議官
佐々木(光)専門委員 杉浦政策課長
佐野専門委員 その他関係官
佐保田専門委員
末吉専門委員
那須原専門委員
服部専門委員
平山専門委員
牟田専門委員
山折専門委員
渡邊専門委員
和田専門委員
  
  
    意見発表者
      1  島  内  行  夫  氏(ベネッセ教育研究所所長)
      2  牧  野  カツコ   氏(お茶の水女子大学教授)
      3  西  東  桂  子  氏(『幼稚園ママ』編集長[朝日新聞社])
  
  
  
  
○  ただいまから中央教育審議会の幼児期からの心の教育に関する小委員会第2回会合を開催させていただきます。
  本日は,お忙しいところを本会合に御出席賜りましてありがとうございました。本日は,前回御案内申し上げましたとおり,3名の方からヒアリングをお願いいたしますので,少し時間を延長させていただくことにしております。いろいろ御都合のある委員の方もいらっしゃるようでございますけれども,3時30分までを予定いたしておりますので,よろしくお願いいたします。
  それから,11月6日に幼稚園と小学校を訪問することになっております。万障お繰り合わせの上,御出席いただきたいと思います。
  それでは,本日は子育てや子どもの実態について調査しておられる民間の教育研究機関の方,それから家庭教育に関する研究者の方,育児雑誌の編集者の方をお招きして,ヒアリング並びにそれに引き続き討議を行います。ヒアリングに際しましては,資料に,発表者の方から御提出いただきました意見の要旨が盛られておりますので,適宜御参考にしていただきたいと存じます。
  最初は島内行夫様でございます。島内様は,育児や子育て,子どもの実態などに関するさまざまな調査を実施しておられますベネッセ教育研究所の所長をお務めでございます。本日は,そうした調査結果などを踏まえていただきまして,育児や子育て,子どもの実態について,20分程度御意見をお伺いしたいと存じます。その後,引き続きまして10分程度質疑応答を予定しております。
  それでは,島内様,よろしくお願いいたします。

◎島内意見発表者  よろしくお願いいたします。
  それでは,お手元に資料が二つあるかと思いますが,一つはヒアリングの参考資料ということで,2ページ以降,私の分担になっております。それと,資料集といたしまして「調査データ資料集」がございますが,これも用いて発表させていただきます。
  まず,ヒアリング参考資料の3ページ目からでございます。「はじめに」というところで,ベネッセ教育研究所の子ども調査について,その概要等を述べておりますが,本日,主に発表いたします『モノグラフ』という子ども調査がございます。これについて若干解説をいたしますと,これは『モノグラフ・小学生ナウ』『モノグラフ・中学生の世界』『モノグラフ・高校生』と,小・中・高にわたって,もう少しで20年になろうとしますけれども,1979年以来,継続的に行っている調査でございます。
  この調査の方法については,大学研究者と現場の教師から構成される「モノグラフ同人会」というもので自主運営でやっておりまして,このリーダーには現在,尚美学園短期大学教授の深谷昌志先生,学芸大の深谷和子先生御夫妻にお願いしております。本日はそのほかに,研究所自らの研究といたしまして,その他子どもに関する基本調査等もやっておりますので,それについても若干触れたいと思います。
  また,我々の活動を少し御説明いたしますと,そのほか,昨年からでございますが,国立小児病院の名誉院長の小林登先生を研究所長といたしまして,チャイルド・リサーチ・ネットというインターネット上の子ども研究,そこでの発信ということも行っております。今後,データ等が御必要な場合は,そちらへアクセスしていただいても,我々のデータを発信しておりますので,ぜひご活用ください。
  本日は,さまざまなデータの中から,「心の教育」ということで,一口に「心の教育」と言っても大変広うございますが,主に五つの観点で報告させていただきます。
  一つは,子どもたちの規範意識や社会的レールについて。
  二つ目は,学校を中心とした環境の中で,子どもたちがどのように感じているかということについて。
  三つ目といたしまして,自然体験や心の形成にかかわる事柄のデータについて。
  四つ目といたしまして,子育てに中心的にかかわっていく親の中でも母親の意識と悩み等につきまして。
  最後に,国際比較調査を過去10年間にわたってやってまいりましたので,そこにおける日本の子どもの特徴について発表いたします。
  データをこの後御報告いたしますが,その前に,言いそびれてもいけないと思いまして,最初に意見の趣旨について,4ページに示しましたが,御報告いたしたいと思います。
  意見の趣旨といたしましては,学校及び家庭という「場」の再生が重要ではないかと考えております。ここで言う「場」とは,人々が集まるところでありまして,人々が集まると申しましても,現実に集まるケースと,最近はインターネット等で集まるというケースもあると思いますが,その両方を広く指しておりまして,そこで創出されるいろいろな情報や価値とか,意味ということを,ここでは「場」というふうに申し上げております。
  この考え方といたしましては,下のほうに書いてありますが,清水博さんが最近中公新書で出版された『生命知としての場の理論』というところから,この「場」という概念を引き出しております。
  そこで,五つの観点を簡単に述べますと,まず第1番目に子どもたちと大人たちが交わる学校の場的特質を生かし,やさしさ,たくましさ,正義感といった人としての基本的感情を育てる学校にしていきたい。
  2番目は,同様に21世紀の新しいコミュニケーションの在り方,ルール,作法,表現力等を身につける「場」としての学校にしていきたい。
  こういったことは本来は家庭でやるべきことでもありますが,後の報告でも申し上げますように,家庭というものがなかなかそういった機能を果たし得ない現状においては,改めて学校という「場」を,これまでの教育の概念でいわれた「知情意」でいえば「情」の基礎・基本をはぐくむ「場」として考えてはどうかという御提案であります。
  3番目として,学校を,より社会に開かれた「場」にして,子どもたちに夢や興奮ややる気を起こさせるシナリオづくりを,各学校レベルでやっていったらどうかという御提案でございます。そのためには,教師自身がこれまでの専門的な教師観から,より関係を形成していくようないわばコーディネーター型の教師へ脱皮する必要があるのではないかという御提案をしております。
  4番目といたしまして,少子化というのが進んでおりますが,核家族,少子化の進む家族におけるエモーショナルサポート,すなわち,地域,ボランティア,あるいは民間企業,我々も含めてでございますが,そういったところの家庭に対する支援の強化が必要であるということを,これもデータに基づいて御提案したいと思います。
  最後に,親子が  ―「親子が」というところが一つ重要な点だと思いますが  ―ともに自然体験を行える施設や環境づくり,また日本全体がそういったことを大切にする価値へ政策を転換していくことが必要ではないかということを提案しております。
  これらの提言の背景につきまして,以降,データを簡単に御説明したいと思います。
  説明に当たりましては,「調査データ資料集」というのがございますので,ぜひこれを御覧になっていただければと思いますが,ポイントをざっと述べたいと思います。
  まず1ページ目に,「規範感覚や社会的ルールについて」ということで,中学生の規範意識について,1989年と1996年に調査をしております。これによりますと,「飲酒」,つまり友達の家で酒を飲むというようなことにつきまして,6年間の中で,そういった規範意識が低下しているというグラフになっております。これの詳しい内容については,お手元の『モノグラフ/中学生の世界』「『規範感覚』と『いじめ』」に詳しく述べておりますので,お時間がございましたら,ぜひお目通しいただければと思います。
  2ページにおきましては,その実際の行為について,経年比較のデータを置いております。例えば,「ゲームセンターへ行く」ということについては,これが逸脱行為かどうかというのは評価が分かれるところだと思いますが,それを実行するという割合が高まっている。
  この背景につきましては,1990年の神戸の女子高校生校門圧死事件というのがございましたが,それ以後,文部省からの通知で校則の見直しというのが起こりまして,若干校則の見直しによる規範内容の変化もあるのではないかと思っております。
  余談になりますが,最近,茶髪とか,そういった子どもたちも増えておりますけれども,子どもたちのファッションに対して学校としてどのように指導しているかということを都内の中学校の先生にお聞きしましたところ,「特に他人に迷惑をかけなければ黙認する」ということでありまして,この辺の指導というのは,程度の差はありますが,ゆるやかな状況になっているのではないかと思います。
  3ページ目には,いじめとの関係について述べております。
  それから,少し急ぎますが,4ページ目には,高校生における規範意識について考えておりますが,これは経年でとっておりませんので,「パチンコ」,特に「飲酒」「たばこ」について,肯定する生徒が多いという結果が出ております。
  それから,5ページ目でございますけれども,これについては,最近の中学生の心の状態ということで,「何となくイライラする」,あるいは「体がだるい」「友だちの態度にカッとする」というようなことについて,半数以上,とてもそういうふうに感じる,あるいは割とそういうことを感じるということを言っております。
  少し飛びまして,7ページ目を御覧いただければと思います。「学校が楽しい」ところかということを聞いておりますが,これについては8割以上が楽しいところというふうに中学生は考えていると思います。もちろん,1割以上が「ぜんぜん楽しくない」というところもありますので,この辺をどう見るかということもあるかとは思います。
  時間の都合で少し飛ばさせていただきますが,9ページは,教師と中学生の関係について述べております。これについては,43%が「今の担任になってよかった」と答えておりますが,24%は「今の担任になってよくなかった」と答えています。
  10ページは,教師に対する満足度  ―満足度という表現が教育的かどうかはあるんですが,教師に対する満足度と,教師がどういうことをしてくれたかということで見ますと,「先生のほうから挨拶をしてくれた」とか,「悩み事の相談に乗ってもらった」とか,そういった事柄に対して先生とのコミュニケーションが高い群において満足度が高いというグラフになっております。
  同じく11ページは,先生との接触と満足度の関係を示しておりますが,自分の高校受験のころの話や学生時代の話をしてくれるという項目で,満足度が高くなっております。
  次に,12ページのところですが,これは我々も少し注目しているところでございますが,1990年と1996年において,第1回,第2回というふうに分けまして,「学習基本調査」というものを行いました。高校生が学習の悩みについて回答しているところでございますが,その悩みで,1996年に非常に高くなったところは,「どうしてこんなことを勉強しなければいけないのかと思う」という悩みが一番多くなっております。6年前は,「こつこつと努力できないで困る」という勉強の方法についての悩みが大きかったんですが,昨年の調査では,その動機といいますか,何で勉強しなければいけないのかという理由が高くなっているという結果が出ております。今後,少子化が進行して,大学の全入に近いような状況が続いたり,あるいは学歴主義そのものも崩壊の予兆がございますので,そういった中で,これまで「勉強しなければ,いい学校へ行けませんよ」とか,「いい会社へ行けませんよ」という学習についての外側からの動機づけもあったわけですが,そういったものが次第に薄くなっていくときにおいて,学習の目的をどうすればいいかというところでの悩みが子どもたちにも深くなっているデータではないかと考えております。
  あとは少し急ぎますと,13ページ,14ページにおいては,小学生の自然体験等について聞いております。これも「学習基本調査」での中身であります。
  14ページをお開きいただきますと,これは新教育課程とも関連した設問であったんですが,いろんな自然や生き物等に接触するときの感動と,教科の好き嫌いのグラフを書いたものですが,例えば理科でいいますと,「生き物や自然を『すばらしい』とか『ふしぎだな』と感じる」ほうが,好きという割合が状況が高いというふうに出ております。全面的に,自然体験や社会体験的といったことが学習上の意欲形成にも役立つというデータになっております。
  15ページ,16ページは,後で発表もあるとは思うんですが,「母親は変わったか」というテーマで小学生の子どもを持つ母親に聞いたデータでございますが,これは見ていただければ,「独身時代から,ずっと子どもが好きでなかった」という人は47%でありますし,また「自分はあまり母性的な女性ではない」と答えるのも44.3%ありまして,最近のお母さんが,我々が古典的に抱いている母親のイメージからだんだん変わってきているというデータではないかと思っております。
  少し飛ばさせていただきます。18ページにおきましては,1歳から6歳までの幼児を持つ親について,日本の教育の問題点について聞いております。
  19ページでは,21世紀に望む社会について聞いております。「よい大学を出ていなくても,実力があれば認められる社会」というものを,今の就学前のお子様を持つ母親は望んでおりますが,一方で20ページを見ますと,そうした親の子どもに対する進学希望は,8割以上が大学に行かせたいというふうに願っているということであります。
  21ページは,心の教育とも関連すると思うんですが,21ページの「小学生の母親」というのは,「就学前の子どもを持つ母親」の間違いでありまして,21ページの四角のところは直していただきたいと思います。母親が,子どもが電車に乗るときに,大人を押しのけて乗った場合,「そのまま」にしておくか,「お年寄りがいなければそのまま」にするか,あるいは「立たせる」かという設問であります。母親のグラフを見ますと,約7割以上が,お年寄りがいなければそのままにしておくということで,結果として,子どもが実害を及ぼさなければそれでいいのではないかと。行為そのものを問うより結果がよければいいのではないかといった風潮があるのではないか。これは学校においても,他人に迷惑をかけなければいいのではないかという,いわゆる結果主義というような形での最近のモラルに対する考え方ではないかと,私はそのように受け取っております。
  23ページ以降を申し上げます。冒頭申し上げました国際調査を,これまで過去10年にわたって5回やっておりますが,これは主に都市における子どもの状況について聞いております。これについて結果だけざっと申し上げますと,23ページでは,「あなたは幸せですか」と聞いたときの各都市での子どもの比較でありまして,過去5回やっておりますけれども,大体同じような傾向が出てまいります。一つは,「幸せ感」が日本の子どもたちはもっとも低いということです。
  24ページでは,自己評価について聞いておりますが,「あなたは勉強ができる子ですか」「友達から人気のある子ですか」ということを聞きますと,これは毎回やりますと,必ず日本の子どもが最下位になる。これは日本人の国民性からくるものかもしれませんが,そういったデータになります。
  25ページは,未来に対するイメージといいますか,「お金持ちになる」とか,「有名人になる」とか,「皆から好かれる人になる」とか,「仕事で成功する」というような項目について聞きますと,これも日本といいますか,東京の子どもたちは各都市の子どもに比べると最下位に位置づく。これは今まで5回やっておりますが,大体同様の傾向が出てきますので,これは子どもの問題なのか,それとも国民性がなせることなのか,その辺は今後,分析するべきことだと思いますが,少なくとも比較をすればこういう状況があるということであります。
  最後に,我が社で子ども事業をやっておりますけれども,就学以前の家庭用の通信教育をやっております。「こどもちゃれんじ」と申しますが,会員が約125万人で,就学以前の子供を持つ親であります。そこでの親からの相談文書を分析したところ,こういったデータが出たということです。2歳から3歳までの子どもたちを持つ母親に,悩みのカーブが高くなっております。我々のサポート事業においても,母親に対して専門的なアドバイスというよりも,先輩ママからのいろんなアドバイスとか,いわゆるエモーショナルなサポートというのは非常に有効だと考えておりますので,「エモーショナル・サポート」という言葉は今後のキーワードになるんではないかと我々も考えております。
  最後に,心の教育に関する小委員会に役立つ『モノグラフ』のリストを挙げております。以上でございます。

○  どうもありがとうございました。このデータ集は膨大なもので,なかなか20分の御発表では全部を尽くせないところがありますが,後で私どもゆっくり拝見させていただきたいと思います。
  いかがでございましょうか。今の御発表に対して御質疑等がございましたらお願いしたいと思いますが,どなたか。

○  23,24,25ページあたりのデータを興味深く見させていただいたんですが,幸せ感が低かったり,感動的とか,意気に感じてとか,そういうものがなかったり,素直でないような,シラケ感みたいなものを感ずるわけですが,小さい子どもがこうだという原因の一つに私が考えるのに,例えば今いろんなところで,無認可の子どもを預かる場所ができている。いいところもあるんですけども,一部の話に聞きますと,ここに来ている子どもたちは,お父さんやお母さんが働きに行ってて,大人のために預かってるんだから,預けたお客さんに迷惑かけないようにという指導をして,多少熱が出たりしても連絡しなかったり,あるいはマニュアルでもって子どもを預かって,何時になったら何をする,何時になったら何をすると決めてて,子どもたちが泣いてもそんなに面倒を見ないというふうに,その勤めをやめた人から話を聞いたんです。
  そうすると,子どもがそこで我慢強くなったなんて喜んでいる人もいるそうです,泣かなくなったもんですから。何もしてくれないから泣かない。シラケだとか,絶望感だとか,拒否的態度とか,いわばこういったものの底辺は,最近の好ましくない子育て預かりの中にも原因の一つがあるんじゃないかと思うんですけれども,その辺のところはどういうふうにお考えになっていますか。

◎島内意見発表者  そことの直接的な関連については,このデータの中ではちょっとわかりませんけれども,無認可保育所の中にもいろいろあると思いますので,そういった問題点がある保育所もあるというふうに私どもは聞いております。
  とにかくこれは,今,「子ども学」等でいろいろ御指導いただいている小林登先生の御見解でもありますけれども,幼少期においては基本的には信頼感が非常に大切であると聞いておりますので,子育てにおける信頼感が醸成できるような,我々は「エモーショナル・サポート」と申し上げておりますけれども,そういった情緒的ないろいろな,どうしても母親と子どもだけが孤立したところにいますといろんな問題も出てきますので,周囲からサポートするいろんな環境づくりが必要だと私どもは考えております。それがないと,確かに意欲とか,そういったものは形成できないのではないかと思います。

○  私の経験といいますか,私の子ども3人が実はアメリカの小学校,中学校,高校を出まして,私自身とどういうふうに違うかということを簡単に言いますと,大きな違いというのは,これもそれほど統計を取ったわけではございませんから,私の観察だけですが,学校の友人なんかといる時間が日本の子どもよりもかなり長いんじゃないかと思うんです。それは受験勉強,その他がたぶん関係しているでしょうけれども。私の申し上げるのは,いわゆるティーンズというやつですね,13歳から19歳。この辺が思春期でもありますし,子どもの成長する時期であります。何かそういうことを尋ねられたことはございますかね。国際比較といいますか,友達とどのくらい時間を過ごしているかということですね。
  アメリカのほうが個人主義の国で,日本は集団主義だとよく言われますけれども,私は子どもに関する限りは,子どもたちがグループみたいなものをつくりまして,そのグループにはいろいろ変わった,例えば「ジェットセット」とか,あるいは「グリーサー」とか,名前をつけている。そのグループの間の切磋琢磨みたいなものが,子どもの成長に日本以上に重要な役割を演じているように私は感じておるんですが,そういうことにつきまして何かコメントございますか。

◎島内意見発表者  友人といる時間については,ひょっとしたら遊び時間等でアンケートを取っているかもしれませんが,今すぐにはお出しできませんけれども,後で調べて御報告いたしたいと思います。
  私がここで述べたかったことは,今後,学校のスリム化とかいうことが盛んに言われていますけれども,そこの中で何を重点的にやるかということにおいては,今回載せたものの中には,子どもの友人関係とか,コミュニケーションを育てる場というのが,日本からだんだんなくなっているという状況がございますし,特に少子化というのはそういった状況をますます加速するんではないか,そういった中で,学校という子どもたちが集まって,大人と交流したりする「場」というのが,ますます重要視されるのではないかと思いますので,先生がおっしゃったような子どものかかわりは非常に重要ではないかと思います。○  どうもアメリカ人の育て方というのは  ―我が国では,学校が教育の場だ,それから家庭が教育の場だと。で,先生が教える,親が教える。しかし,それだけじゃなしに,子どもたちの間のコミュニケーション,子どもたちの間の交友関係というものが人間をつくっていくプロセスでかなり重要な役を演じている。日本ではそれをあまり問題にしてないように私は感ずるんでございますけれど。

◎島内意見発表者  学校のことだけを申し上げましたが,私もそのように思います。特に最近のキーワードのような形で,子どの居場所とか,子ども同士が群れてつくる仲間集団が,だんだん消える傾向にありますので,そういったものをどうやってつくってやるか。あるいは,そこにおいては,大人が管理するというより,子どもたちが自発的に形づくる状況をつくらないと,大人がしょっちゅうそれを教育的に評価し,管理するということになると思いますので,かえってそのことは子どもの育つ力をひょっとしたら失わせていくのではないかというふうには私も考えております。

○  外国では遊びとの切れ目がないのかもしれません。日本は遊びとそうじゃない時間との切れ目がはっきりしているような部分があると思うんです。今のお話は,要するに遊びの問題だと思うんです。遊びの中から子どもがいかに育っていくかという部分での国際比較調査というのは,あまりないわけですか。

◎島内意見発表者  遊び時間そのものの比較はまだなかったと思いますが,再度調べまして御報告したいと思います。

○  私,中学生を見ている現場からとらえた感覚ですけれども,それがデータとほとんど重なっているというとらえ方をしました。
  お聞きしたいんですが,一番最後の27ページですが,きょうは第54巻をお手元にいただきましたけれども,この資料と,例えば41,43巻の辺とのクロス集計などはされていらっしゃらないんですか。といいますのは,今の子どもの実態の背景にある体験とか,あるいは生育歴とか,その辺が今の子どもをとらえる重要なポイントじゃないかと思います。そういった意味で,例えば「疲れている中学生」というのはどういうものかわかりませんけれども,これと今日いただいた資料などとのクロス集計をしたものがあれば,実態の背景をつかめるんじゃないかと思うんですが,いかがでしょうか。

◎島内意見発表者  データそのものも母集団がちょっと違いますので,クロス集計は難しいと思うんですが,その辺も即答はできませんけれども,今までの調査の中から御期待に沿えるようなものを探したいと思います。

○  それでは,まだまだ御質問もあろうかと思いますが,時間がまいりましたので,ここまでとさせていただきます。今,幾つか大変重要な事項について質問が出ましたので,島内様,ひとつよろしくお願いします。後ほどで結構ですが何かそういうデータがあったらまたお届けいただきたいと思いますし,機会があればまたヒアリングに応じていただければと思います。どうも本日はありがとうございました。
  それでは,引き続きまして,牧野カツコ先生にお願いいたします。牧野先生はお茶の水女子大学の教授でいらっしゃいまして,家族社会学や教育社会学が御専門です。また,文部省が平成5,6年度に委嘱して行いました「家庭教育に関する国際比較調査」にも携わっていらっしゃいます。本日は,そうした調査結果などをお踏まえいただきまして,我が国の家庭教育の現状と課題について,20分ほどお話しいただければと思います。島内様に対してと同様に,その後10分ほど質疑応答を行いたいと存じます。
  それでは,牧野先生,よろしくお願いいたします。

◎牧野意見発表者  御紹介いただきました牧野でございます。
  私のほうもただいまの島内さんの御報告と同じように,最初に国際比較のデータなどを御紹介させていただきます。資料の9ページからでございます。
  1994年の国際家族年に当たりまして,文部省が日本の家庭教育の特徴を明らかにするための調査を実施いたしました。日本,韓国,タイ,アメリカ,イギリス,スウェーデンの6ヵ国,0歳から12歳までの子どもを持つ父親または母親,それぞれ500人ずつ,6ヵ国でございますので,6,000人以上が調査対象になっているという大規模なものでございます。この中で,たくさんの調査項目がございまして,共通する問題がございましたが,ここでは特に日本の家庭教育の特徴として明らかになったものだけを御紹介させていただきまして,その背景にあるものを日本の家族の特徴から検討してみたいと思います。
  一番最初に「家庭教育についての国際調査から」ということで,「甘い日本のしつけ」と書きましたが,資料の10ページ,「父親の子育て分担」の少なさというところから申し上げたいと思います。
  小さい字で書いてございますが,グラフの上のほう,「食事の世話をする」「しつけをする」「勉強を教える」「遊び相手をする」とか,こうした項目について,父親,母親,主にどなたがやっていますかということです。
  ここで私どもが大変関心を持ちましたのが,父親の分担の程度が,日本の場合には,韓国とそろって割に少ないという傾向が出ましたので,「主に父親がする」という回答と,「父親,母親,両方がする」という回答を合計しました割合を図に示しております。下がゼロ%,上が100%です。例えば,「食事の世話をする」というのは,日本の父親が参加している割合は9.4%ぐらいと,こういうふうに御覧になってください。しつけ,遊び相手など,日本のお父さんは下のほうにあるわけで,全体として20〜30%のところです。お父さんが頑張っているのは,一番右側の「生活費を負担する」というところで,性による役割分担というのが日本と韓国は特に強いという傾向がございます。
  次の11ページを御覧になっていただきますと,「子どもと一緒に過ごす時間」が,日本の場合,お父さんが6ヵ国のうちその時間が最も少ないというのが現状でございました。日本のお父さんは労働時間が長いのではないかと推察されましたが,労働時間が最も長いのは韓国のお父さんでございます,通勤時間も含めて。しかし,韓国は日本のお父さんよりも子どもと一緒に過ごす時間が長い。
  この中で,どんなことをしているかという内容も聞いてございますが,たくさんの項目を挙げた選択肢の中でも,日本のお父さんはやっている種類が少ないということになります。この点で,アメリカのお父さんは非常に活発で,いろんなことをやっております。特に子どもに仕事を教えるとか,子どもと一緒に家事をするとか,趣味をする,スポーツをするなどの項目で,アメリカのお父さんと日本のお父さんとは著しい差が出てまいりました。
  子どもと一緒に過ごす時間の中で,大変特徴的なのが,よその国のお父さんは,子どもが小さい間はかなり接触時間が長くて,大きくなっていくと減少していきます。例えば韓国のお父さんも,日本と同じようにあまり接触時間が多くはないんですけれども,それでも小さい間,3歳以下の場合にはよく接触するという傾向が見られます。日本のお父さんは子どもが小さくても,さほど生活の上で接する時間を増やすということがないという特徴がございました。
  この点で,日本のお父さんが多いのは,子どもと一緒に同じ部屋にいるとか,一緒に寝るというようなところが多いんです。あとテレビを見るというようなこと。もちろん,一緒に食事をするなんていうのも多いのですが,このように,あまり積極的でないのが日本のお父さんの特徴でございます。
  それから,「甘い日本のしつけ」と見出しを出しましたけれども,次のページに「子どものしつけ」というのがございます。子どもの年齢が違っておりますので,どの程度のことがしつけられているかというのを調査するのは難しいのですが,5歳のときに一人でできただろうか,あるいはそれより以下の人は5歳になったらできると思うかどうかという質問をしております。
  「日常のあいさつができる」「行儀よく食事ができる」「身体を清潔に保つことができる」「遊んだ後の片付けができる」,この4項目ですが,日本は2項目で最下位でございます。「遊んだ後の片づけ」と「日常のあいさつ」。それから,残りの2項目が下から2番目ということで,期待値が少ないといいますか,あるいはできていないという,しつけの甘さが出てまいりました。
  3番目は,それでは15歳になったら一人でできるようになると思うかということで,4項目を用意してみたんですが,「部屋のそうじをする」とか,それから「ボランティア活動」というのは国によって特徴がございますが,人のために何か活動ができるようになるなんていう項目二つが最下位で,残りの2項目が下から2番目というようなことで,期待が少ないといいますか,しつけの甘さといいますか,それが出てまいりました。
  次のページですが,日本の親の子どもの成長に対する満足感の低さという結果が特徴的でございます。先ほど島内さんの御報告の中で,子どものほうの幸せ感が少ないという御報告がありましたけれども,母親に「子育ては楽しいか」ということを聞きました結果,日本の母親の満足感が低いんです。成長についての満足感も,ちょっとグラフが見にくくて申しわけございませんが,「満足」「やや満足」「不満」という回答項目の,「満足」と「やや満足」を足しております。「やや満足」まで足せば,90%以上ということで,十分かもしれませんが,特徴的なことは,ほかの国では「満足」と言っている人たちが8割以上,特にアメリカ,イギリス,スウェーデンなど欧米の先進諸国の親たちが大変高い「満足」を示しているのに対して,日本の親たちは満足感が低い。
  特に際立っていますのが,子どもの年齢が高くなるに従って,こんなに下がってしまう。せっかく子育てをしていても,大きくなるに従って,子どもの成長に満足できないという,この状況について考えさせられます。どのように解釈していったらよろしいのか,私なりの解釈も含めながら,次の「現代日本の家族の特質」ということをお話ししてみたいと存じます。
  日本の家族の特徴でございますけれども,戦後,日本の家族が大変小規模になりました。そして,家族が空洞化していると言っていいと思います。平均世帯人員が国勢調査の結果,どんどん下がってまいりまして,一番新しいところで2.88人というふうに3人を割るというような,家族が大変小さくなってきているという傾向があります。
  この中で,日本では,先ほど言いましたように,父親が子どもと接する時間が少ないというようなことで,父親はいるけれども,家庭の中にいないという空洞化ということが言えると思います。その点では,国際比較調査の中で,シングルペアレント,一人親家族はスウェーデン,イギリス,アメリカなどは日本より多くて,10%以上を示していましたけれども,父親はけっこう子ども接しているのです。日本は両親そろっている家が多いんですけれども,形の上では一人親家族と言ってもいいような状態があるのではないかということが言えると思います。これは家族の構造上の問題です。
  私どもは,特に子どもが小さいときの教育というのは,親が直接的に子どもに指導して影響を受ける部分と,家族そのものが持っている構造的あるいは機能的な特質が子どもに与えている無意図的な影響を考えざるを得ませんので,家族がどういう人々で構成されているのか,実質的にだれが子どもの周りにいるのかということを問題にしなければいけないと思います。ですから,大変物が豊かにはなってきましたけれども,人間関係の上で貧しいと特徴づけることができると思います。
  きょうだいが少なくなっているということは,御承知のとおりでございます。平均5人の兄弟数が,今は2人というふうに減っております。6歳未満の子どものいる世帯で見ますと,72.5%が核家族でございます。そのうち,両親がそろっている家族は96%ということですけれども,日本の場合に祖父母も最近ではいないという家族が多いということがわかります。3歳以下の子どもがいる場合の日本の母親の就労率は2割に満ちません。そのうち,フルタイムで働いている人は13%ぐらいでありますから,多くの家で母親が子育てに専念しているのですが,その点では,母子関係は非常に強い。つまり,母親一人の影響を受けて育っている子どもたちが多いと言えます。これは人とかかわる力の弱まりといいましょうか,あるいは人間関係を見て育つという,間関係,人と人との間の関係を見て育つという学習の機会が非常に少なくなっている。つまり,お母さんがおばあさんに対する態度を見て,敬語の使い方を学んだり,子どもに対する態度と違う行動を見て学ぶとか,お兄ちゃんがしかられているのを見て学習するという機能が非常に少なくなってきていると言わざるを得ないと思います。
  既に,就学前で人とかかわる力が弱まってしまっている。先ほど遊びの問題も出ましたけれども,母親との関係では非常にいい子ということで,お母さんにとっては問題がなく育つ可能性がありますけれども,子どもを取り巻く人々が非常に少ないということが,まず言えると思います。
  それから,家族の機能が大変変わってまいりました。戦争直後,日本のおよそ半数が第1次産業に従事しておりましたけれども,御承知のようにサラリーマン家族が増えてまいりますので,父親が家の外で仕事をするということによりまして,家庭が労働の場でなくなりました。家庭は専ら消費の機能をする場所に変わります。労働を通して親の仕事を受け継いでいくということで,子どもたちは親の仕事ぶりを一緒に見て育っていった部分があります。手伝わされたとか,父親の仕事ぶりを見るということで,農作業を通して仕事の仕方とか,心構えを厳しく教えられてきたということがありますけれども,それがなくなってまいります。親は子どもに農地とか,のれんとか,職業を受け継がせることができませんから,子どもが将来,成長して,豊かにいい暮らしをしてほしいというときに何を望むかというと,どうしてもよい学歴をつけてほしい。そういうわけで,よい学校に入ってほしいと思いますし,手伝うよりは,あしたのテストのほうを頑張りなさいということになると思います。
  その点で,母親が非常に学校を中心とした期待感を持って子どもを育てている。先ほど学歴期待の話もございました。ですから,家庭が何か自分の家らしい教育の目的をもって,こんなふうに育てるということよりも,学校でいい成績を上げるとか,学校ということが親の中心的な関心になる。いわゆる偏差値ではかられるような学校での達成ということを,家庭でも期待するということにならざるを得なく,学校でよい成績を上げてほしいということになります。これを大きく「家庭の学校化」と言っていいと思うんですけれども,そういう状況があろうと思います。
  家族が小規模になっていくという点では,ヨーロッパでも,アメリカでも同じですけれども,学校への期待の強さという点では,日本と韓国などもそうなのですけれども,非常に強く出てまいります。
  国際比較調査の中では,親の悩みや心配事というのが,子どもが10歳から12歳になりますと,進学や進路のことが第1位に上がってまいります。スウェーデンやイギリスなどでは,子どもと接する時間というのが悩みの筆頭に上がるんですけれども,世界で最も少ない接触時間の日本のお父さんは,あまり接触時間がないということを悩まずに,子どもの進路や進学のことが第1位に上がってくるのです。子どもに対して学校ということを考えているということがわかります。
  ただ,しつけ項目で,家庭と学校に期待することという国際比較調査の中では,学力というのは家庭でやるべきことの最下位に位置づけられますし,学校では学力というのが第1位に出てきて,これは世界各国共通で,この辺は表向きは日本の親が,家庭で学力をつけたいと思っているというのは,この調査の中では出てこなかったんですけれども,悩みのところであらわれておりました。
  次の家庭教育の課題というのを今までのようなところから簡単に申し上げてみます。家庭教育の課題のところで,私が思いつきました最も印象的な調査を,ちょっと古いんですけれども,14ページのところに掲げてみました。これは日本家庭科教育学会というところが,子どもたちが家庭生活をどう見ているかという調査をしたものです。小学校2年生から高校2年まで,1年置きに5段階でとっておるんですけれども,子どもが大切と考える家庭の働き  ―「あなたは家庭の働きとしてどれが最も大切だと思いますか」というのを挙げてもらいました。ここは第1位に,小学校2年生から高校2年生まで「家族のみんなが楽しく過ごす」というのを挙げているんです。それから,「子どもを良い人間に育てる」というのを2位に挙げております。それから,物が豊かであってほしいと子どもたちが思っているのかというと,これは小さい子どもがやっと3位に挙げている。お金というのを2年生が4位に挙げていますけれども,要するにどの学年も一番際立って高いのが1位「家族のみんなが楽しく過ごす」なのです。これは一般論として家族の機能を聞いたわけです。  どういう項目を挙げたかというと,「表4」に書いてあるような10項目で,これは家政学や社会学で言われております家族の機能として考えられているものを挙げています。
  次に「あなたの家庭にもっとも望むことがありますか」という質問で,「○はいくつつけてもいいです」とたずねました。発達の上で,小さい子どもほど「○」をいっぱいつける傾向がありますから,比率だけ見ていてはちょっとわかりにくいのですが,相対的に横の中でどれを大事にしているかというのを御覧になっていただくと,やっぱり「家族のみんなが楽しく過ごす」というのが,どの学年でも第1位なんです。ちょっと発達的な違いがありますけれども,「子どもを良い人間に育てる」とか,「老人や病人などを大切にする」とか,あるいは「両親が仲良く暮らす」というところなど,あたりまえといえばあたりまえのことを子どもたちは望んでいる。特に「楽しいことである」ということを子どもが望んでいるという,この家庭の雰囲気を子どもたちが期待しているということが非常に印象的であります。古い調査でありますけれども,恐らく今やっても同じような傾向が出るのではないかと思います。これも各学年2,000人,サンプルは全国の学校の先生に依頼しましたから,北海道から沖縄までの子どもたちが各学年2,000人ずつ答えております。男女差もあまりございませんでした。
  このようなことを考えながら,私は,心の教育の場合,人間関係の中での心ということを主に申し上げてみたいと思います。家族が小さくなってきたということの中で,祖父母とか,おじ,おば,いとこというような人たちと接する機会も非常に少なくなってきております。昔,兄弟が5人いたときには,おじさん,おばさんというのがたくさんいました。両親そろって,おじさん,おばさんが,機械的に平均しますと10人ぐらいいる。それぞれ子どもが機械的に5人ずついたとしますと,50人ぐらいいとこがいて,全然接触がない人もいるかもしれませんけれども,泊まりに行ったりするということの中で,ちょっとした緊張,それから他人とは違う学習というのができたと思うんです。
  これからの時代,親たちもきょうだいが少ないということの中で,おじさん,おばさんというのが非常に少なくなる。斜めの関係というか,親にかわっていろいろなことを忠告してくれたりするという人が少なくなります。今は平均すると8人ぐらいのいとこの数なんですけれども,年齢がうんと離れてしまって,あまりつき合いがないということが出てくるように思います。
  これは臨床心理学で子どもの問題を扱っていらっしゃる先生がよくおっしゃっていますが,親類の家に行って泊まるとか,一緒にどこかに出かけていくという体験が非常に大事で,人とかかわる力を持てるという最初の場面ではないか,その最も基本的なところで,まず父親が子どもともっと接する機会を持つことももちろん大事なことではないかと思います。
  それから,「必要な多様な人々とのつきあい」と書いておきましたけれども,母親自身が大変孤立しているという傾向が出てまいります。これは母と子というきずなというのは,子どもにとって非常に大事なんですけれども,お母さんが育児で大変悩むという傾向があります。私自身は,母親の持っている育児不安,あるいは子育て不安というのに関心を持っていたのですが,先ほどの14ページの下の「表5」の中に挙げてございます。母親が育児の中で考えているさまざまなストレスといいますか,不安の感情です。悩みというのは,悩む対象がはっきりしていますが,今の母親たちというのは漠然とした不安を持っております。どうしたらよいかわからなくなるとか,疲れるとか,同じことの繰り返しだという感情を持つんですね。
  育児不安をはかる尺度を14項目つくりまして,3歳以下の子どもを持っている母親たちに尋ねた調査がございます。この中で,育児不安の比較的強い群のお母さんたちというのは,ここに挙げたベスト5のような気持ちを持っているんです。これは神奈川県下で行ったものですが,こういうものがあります。4番目に「子どもがわずらわしくてイライラしてしまう」とか,「おっくうでいやになる」とか,当たり散らしたくなる。もしこんな感情を持っている人が学校の先生で,こういう気持ちで自分の子どもを教えていると思ったら,大抵の親は嫌だと思いますね。どうしたらよいかわからないとか,イライラしてしまうとか,当たり散らしたいなんていう先生にだれも教えてもらいたいと思わないと思う。ところが,24時間接している親はこういう感情で接しているんです。
  育児不安の少ないお母さんたちの特徴というのは,90%以上,「子どもを一人で育てているのだという圧迫感が少ない」。「圧迫感あるか」というのに,そういうことはないと答えています。「育児によって自分が成長している感じられる」,それから「朝めざめがさわやか」「がまんばかりしているとは思わない」「子どもは結構一人で育っていくんだ」というような,幸せな気持ちでわりかし育てている。
  この二つの群の違いがどこからくるかということを調べてみますと,お母さんが孤立しているんです。つまり,人と近所づき合いが少ない,それから相談できる人がいない。それから,最も大きな要因は,父親が一緒に子育てをしてくれていると感じるかどうかということなんです。
  これはこの後,いろんな人がフォローして,同じような調査をたくさんやってくださいましたが,いずれも父親の育児の参加のファクターが大事だということを,追跡でも確かめてくださっております。それから,ネットワークの少なさというのは,母親の育児不安を強めるという問題があります。これは子どもの数にも,母親の年齢にもかかわりがありませんで,核家族かおばあさんがいるかということにも関係がありません。それから,母親が勤めているかどうかということも,私の調査ではあまり関係がなくて,やっぱり父親が一緒に子育てをしてくれているかどうか。共働きでも,一緒に参加してやってくれているというお母さんの場合にはあまり不安が強くないんですけれども,共働きなのに子どものことは妻の責任だと思っていると,送り迎えから何から何まで私ひとりでやらなくちゃならないというので,母親は非常に不安感が強くて,イライラしながら子育てをしているということになります。
  そこで,どういう人たちが手伝ってくれるか。おじさん,おばさんとか,親類とか,母親の兄弟なんかが多いかどうか。これは国際比較調査の中でも,スウェーデンとか,アメリカではたくさんの人たちが子育てにかかわっているということが言えます。先ほど無認可の保育のお話などありましたけれども,むしろ専業主婦で子どもとだけ向かい合っているお母さんが育児不安が強いという傾向がございますので,これからの時代は,専業主婦の母親だからこそ共同で保育をするような場,親も一緒でもいいと思うんですけれども,一緒に子育てができるような場が必要なのではないかというふうにも考えられます。
  最後に,「心豊かな人間を育てるために」と書いたのですが,父親,それから母親自身が,心豊かに子育てを楽しんでいるかということが非常に大きいのではないかと思われます。先ほど島内さんのお話で,「子どもが今幸せですか」というのがありましたが,あるいは私の調査でも,「家族がみんな一緒に楽しく暮らせる」と。特に子どもにとって家庭が楽しい場だと。それから,お父さんが子育てが楽しいと言ってはおかしいんですけれども,一緒に何か教えてやろうとか,子どもと遊ぼうという気持ちで楽しめているのかどうかという問題だと思います。
  今の状況ではそんな余裕もないし,週休2日になっても,土曜日は疲れて寝ているということもあると思いますし,子どもと楽しむ時間のために父親が育児休業を取るというようなことは,まだまだ日本では一般的ではございませんし,母親一人が子育てをしているという中で,イライラしたり,不安に思ったり,親自身が子どもを育てるという,人生の中でそんなに長い期間ではないんですけれども,その期間が大切にされていないということが,子育ての中で非常に大きな問題ではないかと私は常日ごろ考えさせられております。
  以上でございます。

○  どうもありがとうございました。島内様同様,大変興味のあるデータをお示しいただいておりますが,御質問等ございますでしょうか。

○  非常に興味深いデータをありがとうございました。私たちが個人的に人にお会いして感じていることと,この全体的な数字がよく合っている感じがします。
  最後の「表5」ですが,「子どものことでどうしたらよいかわからなくなることがある」というのは,確かにこれはすごくよく聞くんですが,「92.7%」というのは何のパーセントですか。

◎牧野意見発表者  360人ほど母親たちに聞いておりまして,その中で,育児不安が強いという親4分の1をとりまして,それから育児不安が比較的少ないという親を4分の1,両方100人ぐらいずつです。その育児不安が比較的強い群,「あり群」と名づけましたが,その100人ぐらいの親のうちの92%です。どうも失礼いたしました。

○  わかりました。本当にこのとおりで,どこも相談するところがないというか,そういう感じです。

○  12ページ,13ページのグラフを見せていただいて,一つだけちょっと疑問があるんですが,これは男の子,女の子というものの区別は全くなしですか。

◎牧野意見発表者  データはあります。12ページ,13ページも,男の子,女の子に対してもやっております。

○  お聞きしたいのは,男の子を持っている親と女の子を持っている親では,掃除とか,食事をつくるとか,ボランティアとか,アルバイトというのは,随分差があるんじゃないかと思うんですが。

◎牧野意見発表者  あります。男の子のほうが,日本はほとんどすべての項目で甘く出ます。女の子のほうにしつけが厳しく出ます。それから,父親のほうがすべて甘く出ますから,世界で日本のお父さんが一番甘いといいますか,基準が低いです。ちょっと意外でしたけれども,お父さんのほうが,できなくていいと思っていらっしゃる。ちょっと大ざっぱですけれども,傾向はそうです。

○  大変興味深く伺いました。ありがとうございました。しつけの問題についてお話があって,そのとおりだと思いまして,大変勉強になりました。ところで,親子関係の前に夫婦関係があると思いますが,特に諸外国との関係の中で,日本の家庭における夫婦の関係についての特質みたいなものがあれば簡単にお伺いしたいと思います。そのことが親子の関係にどう反映しているのかという点もお話しいただければと思います。

◎牧野意見発表者  しつけが母親に専ら任されているというのを,分担のところでもお話しいたしましたけれども,やっぱりここの特徴が非常にあると思います。ところが,母親自身は一人で任されていますと,仕事もやめたのだから,一生懸命子育てしましょうと,そう思えば思うほど,実は母親は非常に不安が高くなるんです。つまり,責任を感じているお母さんのほうが。
  育児不安の研究の中で,夫婦関係をとらえておりますが,この中で,夫と話している時間に充実感があると答えているお母さんは育児不安が少ない。それから,一緒に子育てをしてくれているというのもそうですが,間接的にですが,夫婦関係がよければ,子どもにとってもいい子育てができるし,ゆとりがあるといいましょうか,それははっきり出てまいります。夫と話している時間に充実感があるという,それがあると思います。。

○  広い観点からいろいろ教えていただきまして,大変参考になりました。その中で,子どもを人間として育てる場合に,基本的な問題の一つとして,善悪のけじめをつけるということが見当たらないのですが,その辺はいかがでしょうか。

◎牧野意見発表者  どんな人間に育てたいかということで,子どもへの期待ということを尋ねたのがございまして  ―実は,その項目を直接尋ねるということをいたしませんでしたのは,なぜかというと,どなたも子どもへの期待として何を期待しますかというときに,善悪のけじめというのは,恐らくみんなが模範回答を回答するのではないかという予測がありましたので,直接その言葉は聞いてはおりませんで,先ほどのしつけ項目とか,そんなようなことで聞いたということになります。日本では子どもへの期待は,粘り強く取り組むとか,自分の意見をはっきり言うとか,きちんとした身なりをするとか,そんな項目は用意したんですけれども,善悪のけじめということを直接聞かなかったのは,それはどの国でも当然高い位置に出てくるというのか,国際比較をするときに出にくいのではないかということで,いたしませんでした。それに近いものがあるかもしれません。もう1回よく読み返すといいかもしれません。

○  10ページの父親の子育て分担というところの表ですが,日本と韓国が非常によく似ているんですよね。「遊び相手をする」というところがだいぶ大きく数値が違っていますけれども。やはり東アジア文化圏といった類似性があるのかどうなのか,もしお答えいただければありがたいと思います。
  もう1点は,家族の特質のところで,中教審の第一次答申の中でも,学校・家庭・地域の役割ということで,家庭の中で,特にお年寄りの役割を子育てへの参加ということで,大変強く主張しているわけです。ところが,現在の家族の3世代家庭と言ったらいいと思いますが,お年寄りそのものも自分たちの生活を楽しんで,むしろ自分の子どもたちの子育てにはあまりかかわっていきたくないという傾向が出ているということも聞いているんです。一つの例として,2世代住宅という建て方がかなり行われるようになってきているように思うんです。そんな家族の変化についてもお話を伺うことができましたらありがたいと思います。

◎牧野意見発表者  最初の韓国と日本の共通点というのは,特に性による役割分担というのが非常に明確になっているという点では,日本以上に韓国のほうが,男の役割,女の役割というのが著しいと思います。ただ,父親の子育て責任ということについては,古い時代の日本と同じように,お父さんが家の中心の人物として責任を持っているということを,これはデータではないんですけれども,感じました。韓国に行きましてヒアリングをさせていただいたお父さんたちというのは,その意識を持っています。ですから,恐らく日本と違う点では,一緒に子育てをしてくれているというか,父親の意向を受けて母親はやっているという思いを持つのではないかと思います。その辺が,父親の子どもと接する時間の長さといいますか,その点にも少しあらわれているかと思いました。
  それから,家族の構造,祖父母の問題ですけれども,意外でしたのは,韓国は核家族が急に最近増えてきたそうで,同居が非常に少なくて,この中では日本が6ヵ国の中で同居率が一番高かったので,これがちょっと意外だったんですが,直接祖父母の役割というのは,国際比較ですので,ほかの国では別居もしているでしょうし,比較しにくいということで尋ねませんでした。けれども今,一緒に住んでいても,若いほうがおばあさんたちに頼らないとか,高齢者のほうも遠慮をする,というところがあるかと思います。私自身は,多様な人々が一緒に子育てにかかわるということで,子どもが人間関係を豊かに持つという点で,特に小さいときに祖父母の役割,いとこの役割というのは非常に大事ではないかと思っております。これはまた別の調査をしなければいけないものかもしれませんが,データの上では明確なものを持っていませんで,申しわけございません。

○  先生の分析の中で,とてももっともだという感じはいたしました。その根っこですね,そのもとになっているのは何かと考えていくと,そこのあたりをこれからの調査でひとつお願いしたい部分で,文明の問題です。文明によって,人間がどういうふうに変わってきているのか。先ほど,就学前の子どもたちが人と接することがうまくなくなっているということは,機会が少なくなったということで,私は文明の問題にかかわりがあると思うんです。人間関係を育てるには,我々はどうしたらいいんだろうかというあたりが,これから我々が考えなきゃならない問題だと思うんです。
  そういう意味で,今,マスコミが生活をリードしていってる部分がありますよね。それに影響されて,それぞれが必要のあることをカットして,省いていくという状況が,今の生活の中にあると思うんです。そういう意味でも,国際比較の中で,いわゆる先進国と言われている国と,そうでない国との生活の違いが明確になってきているような気がいたしますけれども,その辺は今後の先生の御調査の中で取り上げていただけますでしょうか。

◎牧野意見発表者  文明の問題という大変大きなものにつながっていくかもしれません。おっしゃられた中で,人とかかわる機会が増えていくことが人間を育てるということ,祖父母がいることによってよりよい発達になるということを調べたいと思いまして,手始めとして,小ちゃいときにお父さんが子どもと接するということが,子どもの発達にどういう影響があるんだろうということで,最近は父親と子どもの関係の調査をしております。これは3歳の子どもとお父さんとの関係について,父親を調査し,子どもを3歳半の時点で観察をしたデータがございまして,何と3歳半の時点ででも,遊んでいるお父さんの子どもは,発達が総合的によいという傾向が出ております。子どものほうは,保母さんの観察調査というデータです。いろいろな人が一緒に子どもにかかわっていくことが大事なのではないかというデータづくりをしておりますけれども,少し広い面で,祖父母,その他の人々も含めて,人間関係と人間の発達の問題を考えていきたいと思っております。

○  14ページの表ですが,大変興味深く聞かせていただきましたが,360人の母親で,最初の「不安あり群」というのは,父親の協力度が低くかったり,近所づき合いが比較的低かったり,孤立的なグループだというのがわかったんですが,学歴の傾向はいかがでしたでしょうか。どうしてこんなことを聞くかというと,子育てとか,しつけというのは不条理で,理屈どおり,マニュアルどおりいかないわけです。幾ら努力しても努力の評価というのはわからない。そうすると,偏差値世代で,努力していい学校に入って母親になった人は,みんな認められて,努力すれば成功するわけです。ところが,これは成功しない。そこで,イライラが余計高じるという傾向があるかなという不安があったんですが,どうでしょうか。

◎牧野意見発表者  とてもいい御指摘をありがとうございました。この調査では直接は取っておりません。ただ,子育て以外にもやりたいことがあるのに,できているかいないかと聞きますと,「できていない」と答える人が圧倒的に「不安あり群」に多いんです。だから,「やりたいことがあったのに」という思いは,恐らく学歴の高い人が持つかもしれません。今度はその辺も分析したいと思います。

○  大変興味深く,ありがとうございました。私も育児不安のことで調査したことがございまして,先生と全く同じだったんですが,育児不安の要因の一つに,その子を出産する前か,あるいは娘時代に子どもと接触したり,子どものお世話をする,ミルクをあげたとか,おむつをかえたとか,その経験の有無が,子どもの親和性だとか,泣き声がわかるとかというものを,高めたり低くしたという大変はっきりしたデータがあったんですが,そのあたりの御調査があるかどうか。
  そうしました場合,今,個人の御家庭でそういうチャンスを増やすことが非常に少ない。小さいお子さんが少ない家庭が多いので,それこそ中・高の家庭科教育の中で,必ず乳児院に伺うとか,保育所に伺うとか,子どもが泣いたりむずかったりするのに,ごくあたりまえに接する機会をプログラムの中にお入れいただくような御方針をお持ちかどうかということをお聞きしたいと思います。

◎牧野意見発表者  国際比較調査の中で,ベビーシッターの経験ということを親のほうに聞いておりますが,これは欧米の諸国で非常に高い。日本では子どもの世話をした経験というのがほとんどございません。ですから,これは大変大事だと思っております。
  私は,親になるための準備性といいますか,子どもが好きになるという感情がどのように育てられるかということで,高校生を調査しましたときに,やはり子どもとの接触経験で差がございまして,接触経験をした人は子どもが好きになるという傾向ですね。そういうデータがあって,その辺が今おっしゃられたことにかかわるかと思います。今,兄弟が少なくなりましたから,意図的にそういうプログラムを持って,男の子も女の子も子どもとのかかわりを経験する場を用意しないと,現実には弟妹の世話はできませんから,非常に大事だと思います。そのことは,接する中で育てられるということがありますので,大変大事な御指摘をいただいたと思っております。ありがとうございます。

○  私,12ページと13ページのデータで非常におもしろいと思っているのは,答えるのがそれぞれ日本人であり,韓国人であり,タイ人であり,アメリカ人でありということですね。そうすると,私の経験からしますと,英国人なんかは子どもにあまり期待しないんです。例えば,上の3番目,「身体を清潔に保つことができる」とありますけれども,恐らく日本人の清潔感と英国人の清潔観は全然違って,定性的なところだけでしつけができてないと判断するのは,ちょっと問題じゃないか。例えば下のほうの「アルバイト等で報酬を得る」というのは,明らかに定量的なことですから,そのまま出ていると思うんですが,上のところはこのまま受けとると危険かなと思います。
  次のページも同じです。だからこそ日本の母親なり両親がイライラするんですね。子どもに対する満足度,要求度が強いんじゃないかという気がするんですけど,その辺のことは何かお感じになっておりますでしょうか。

◎牧野意見発表者  それは大変大事な御指摘で,国際比較調査のときは,この項目づくりに本当に悩みました。清潔にといっても,歯が磨けるとか,手が洗えるとか,いろいろ入れようと思ったんですけれども,いろいろ考えると,大変難しくて,結局こういうワーディングになったわけです。それから,アメリカ人なんか非常にポジティブに何でも「○」をつけたり,「イエス」とか,「オーケー」と言う傾向がありますから,数字だけでちょっと判断ができないところがある。でも,ポジティブだということが,いずれにしても満足をしているということが,子どもに与える影響ということは考えていけるんではないかと思います。

○  その点については全く同感なんです。言葉は悪いのですが,日本人はどちらかというと子どもを信用してないといいますか,評価しないというところが問題なんだろうと,思っています。

◎牧野意見発表者  そうですね。おっしゃるとおりです。

○  本当に貴重なデータ,貴重なお話をありがとうございました。
  それでは,引き続きまして西東桂子さんにお願いいたします。西東様は,幼稚園児を持つ母親などを主な対象とした月刊の育児雑誌『幼稚園ママ』の編集長でいらっしゃいます。本日は,そうしたお立場や御経験をお踏まえいただきまして,子育てや育児の現状について,心の面を中心にお話しいただきたいと思います。20分程度お話しいただき,前のお二方と同様,10分程度質疑応答を行いたいと存じます。
  それでは,西東さん,よろしくお願いいたします。

◎西東意見発表者  月刊『幼稚園ママ』の編集長をしております西東でございます。
  私は編集者でございますから,研究者,学者という方々とは違う立場にあります。ですから,持ってまいりましたデータも学術的なデータではもちろんないわけで,読者の方々の生態といいますか,実態といいますか,そのあたりをお伝えするのが私のきょうの役割と思っております。
  資料の1番を御覧ください。ここで読者属性を分析をしてまいりましたが,年齢が22歳から44歳ぐらいまで幅があり,ジャンルが明確な雑誌でありながら,20年以上の年齢差がある雑誌は大変珍しい。これは別の表現をしますと,20歳ぐらいの差のあるお母さんによって子育てがなされているというふうにも御理解いただけるわけです。20歳の年齢差がございますと,かなり人生観も違います。子どもへの育児観も違うということで,幼児教育における課題はこれから多かろうかと思っております。
  メーンターゲットとしては,28歳から36歳までの年齢層を設定しております。
  読者の子どもの数は,1人っ子というのが35%,2人というのが57%,3人以上いるというのが8%という数字が出ております。あくまでもこれは読者の分析ですから,今どきのお母さんたちの子どもの数とは合致しないわけですけれども,私どもの雑誌の特徴としましては,お子さんが第1子であるという読者が8割を占めております。当然ですね。第2子,第3子となれば,子育てにも経験が積まれて,こういう雑誌が必要でなくなってくるというふうに御理解いただけると思います。第1子が8割を占めています。
  さて,メーンターゲット,28歳から36歳の世代分析をしてみますと,世代を分析するのは編集者的ないけない傾向かもしれませんが,三つぐらい大変特徴的なことが見えてきたと私たちは思っております。
  その1番ですが,今,お誕生日がきたかこないかで36歳か37歳のお父さん,お母さん,この方たちは共通一次試験第1期生に当たるわけです。私はこのことに気がついたときに,目からうろこが落ちたという状況でございました。このことで,メーンターゲット全体が共通一次世代というふうに一くくりにできますし,あとで申しますような特徴的な傾向が見えてきます。
  2番目,これは私どもマスコミがつくったことですけれども,マニュアル世代であるということが言えます。レジャーガイド的な雑誌を青春時代,OL時代に愛読して,今日,ママになっているわけです。考えなくてもすべて済んでしまうような雑誌に大変親しみを覚えてきた。例えば,何曜日にどこそこに行くと大変楽しいとか,そのときお財布には何万円入っていればいい。一緒に行くのは彼なのか,妹なのか,あるいは友人なのかというあたりが,事細かに書いてあります。これを読んで,ダーッとA地点に遊びに行く,またダーッとB地点に遊びに行くというふうで,このような雑誌に載った載らないで,お店の盛衰にまで影響を与えた雑誌もありました。私たちはこのことをとりまして,「マニュアル世代」と言いまして,どちらかというと自分で考えるより先に情報が欲しいと思うタイプというふうに考えております。それゆえ,私どものような雑誌も生き長らえているのかもしれません。
  分析の3番目ですが,これは確たる根拠はございませんが,大変自己主張が強いなという印象を持っております。「自己主張」の「己」という字なんですが,普通は「おのれ」と書きますけれども,時には「子ども」に変わるわけです。「自子主張」に変わってしまいまして,自分のこと,あるいは我が子のことになると,後先考えずにいろいろな行動に走ってしまうという大きな傾向が感じられます。
  さて,この三つのことを感じた上で,私どもが編集していく中で,傾向としてとらえていることが,資料の2番で,(1) から(6) までございます。詳しくはゆっくり読んでいただくとしまして,特に申し上げたいのは(1)   番です。共通一次試験の悪影響と私が思っておりますことですけれども,すべてのことを点数化して考えがちである。つまり,子育ても点数化して考えがちであるという傾向が大変強うございまして,うちの子どもが,例えば幼稚園,保育園のクラスの何番目ぐらいにいるんだろうかということを大変気にします。
  私は,きのう届いた幼稚園からの「園だより」を見まして,ちょっと愕然としたのですが,幼稚園の先生もマニュアル世代であるわけです。「園だより」の片隅に,今月の平均身長と平均体重ということで,クラスの平均が出ています。これはいろんなお考えがあるかと思いますが,平均値が出ていることは親には大変ありがたいことです。〈あ,そうなのか。このくらいだな〉ということが載っているのは,大変ありがたい情報なので,私はそれには共感しましたけれどもけれども,その脇にクラスの背の順が1番から10何番までフルネームで書いてありました。御丁寧にも,「先月と順位はひとつも変わりがありません」とう注釈がついておりまして,〈そうか。読者もそうであるし,先生もそうである〉と。マニュアル世代であるということが,幼児期の子育てに何か影響を大きく与えているのではないかという印象を持っております。
  次に(3) 番を御覧ください。子育ての悩み,心配を母親自身の弱みというふうに感じる。気楽な気持ちで,どんなふうにしたらいいのかということを身近な人に聞けないという傾向がございます。なぜなら,相談したが最後,「私の弱み」を握られたことになるので,できれば相談したくない。ですけれども,知らなければならないことが目前にあるわけです。で,どうするかというと,このごろ,電話相談が大変隆盛でございます。かくいう私ども『幼稚園ママ』でも,週に1回電話相談を受けておりまして,全国からお電話があります。電話は本数としては4本しかないんですけれども,4時間の間,受話器を下におろす時間がまったくない,鳴りっ放し状態です。1件当たり20分ぐらいの御相談になるわけです。はっきり申しまして,どうして隣のお母さんに聞いてみないかなという相談内容もかなり多いんでございますけれども,そのことで,「あのお母さん,こんなことで悩んでるみたいよ」とうわさされたくないということらしいんですね。善意の第三者への相談が大変目立ってきているように思います。
  それから,(4) 番,(5) 番,(6) 番は共通点が多いのですが,どうも受験勉強優先の学生時代を過ごしていたように思われるお母さんたちでして,人間関係が濃密であるという体験をこれまでしていないように思います。そのことで,つき合いたくない人とはつき合わないで済ましてきたという現実がある。しかし,我が子はつき合わないわけにはいかない。初めてつき合わざるを得ない,関係を持たざるを得ない存在として,子どもというものがあるというふうな印象があるわけです。初めてかかわらなくてはいけない存在なわけですけれども,今までと違って関係が希薄ではないわけですから,深くかかわっていかなくてはいけないわけですから,思いどおりにならないということにいら立ちを覚える。
  私どもでは2号前に「幼児虐待」というテーマを取り上げたことがございます。これは,「みんなそういう気持ちがあるんだから,幼児虐待で悩むことはない」という企画がよその雑誌でなされていたんで,幼児虐待は心配するほどのことはない,やってもいいぞという思想で編集してはいかんのではないかという気持ちに燃えまして,私どもも追いかけて「幼児虐待」のページを持ちました。
  そのときに,実際に幼児虐待をしてしまったという経験者を探したわけですが,これは悲しいかな,あっという間に見つかってしまった。たくさん体験者がいる。かなり激しい実態を誌面に落としました。私がそのことよりも驚いたのは,読んだ後の読後感として「よくわかる」「2年前までは私も幼児虐待に走っていたといえるかもしれない。今は幾分落ちついているので,少しはゆとりを持ってこの誌面を読むことができた」といったような投書が,想像を超える量がきたことです。ほっておいてはいけないぐらいではないかという印象がございます。それは一つには,今話題のアダルトチルドレンというようなことに,お母さんたちが酔っているという状況もあります。私どもはこれからアダルトチルドレンについては取り上げていきますけれども,いわゆる「アダチル」だということで,自分が許されてしまうと思っている親が,このごろ見かけられます。それでエクスキューズして,「だから私,子育てが下手なのよね」,ということになってしまう傾向があるように思われて心配です。
  さて,資料の3番に進みますが,小誌ではお母さんたちに育児不安を抱えているかという質問をいたしました。「抱えている」という方が100%。これは正しい数字だと思います。ここでもし不安がないと答えると,必要以上の無関心,放任ということも見受けられることになりますから,育児不安があると答えたこと自体は,とてもよいことだと私たちは分析しております。その不安は「i)」から「x)」までございますけれども,後で読んでいただくとして,上位二つ,大きな数字が出ております。「子どもの性格や行動」,それから「子どもに接するときの自分の態度や感情」。i)番のほうは子ども本人のこと,ii)番のほうは母親自身の心配事でございます。i)番,ii)番に関して相談する人がおらず,電話相談に走るというふうな先ほどのサイクルになっているわけです。「※」で書きましたけれども,10項目のうち,お一人平均4.8項目に「○」がついております。
  (3) 番で,育児で不安を感じたときに相談する人はいるかいないか。大方の人はいる。96%が「いる」と答えて,やれやれと思いましたけれども,先ほどから申しております傾向がここでも見られまして,i)番を見ていただきますと,「友人86%」。これは相談できる友人がいるように一見思われますけれども,あえてここで括弧書きをさせていただきましたが,学生時代の友人か育児サークルの仲間に相談するという断り書きをしっかり書いてきたお母さんが圧倒的に多いわけです。お近くの同じ幼稚園に通っているようなお母さんには,なかなか相談しにくい。先ほどの事情もあるのではないかと私は思っております。同じ幼稚園のお母さんに相談するといったお母さんは,iv)番の「幼稚園・保育園の先生」に相談するという32%より低くなっております。先生のほうが多い数字が出ており,これも善意の第三者ということなのであろうかと思います。
  資料の4番ですが,上10項目でいろいろな育児不安を御紹介してまいりましたが,3の2のvi)番を見ていただきますと,「子どもの将来」が挙がっております。入学後の心配,成長してからのこと。ここには言葉としてはございませんが,「いじめ」というのも完全に入り込んだ回答になっております。vi)番以外のほとんどの項目でも,「何々だから,それが小学校のいじめにつながるのではないか」というふうにリンクしております。そこにも三つほど例を出しましたが,「わがままなので仲間はずれにされるのではないか」「泣き虫なのでいじめられるのではないか」「友達ができないまま孤立するのではないか」という心配事がかなり大きな声として編集部に聞こえてまいります。
  これまではずっと,いじめの被害者になりたくないという声でございましたけれども,さきの神戸児童殺害事件の後,人を殺さない子にしないといけないというようなことを,今,皆さんお笑いになりましたが,親はかなり深刻に思っておりまして,つまり殺してしまうかもしれないような現実があるということですね。例えば,テレビのスイッチを入れれば,簡単に人が殺される状況にあるわけで,そのテレビを親は見せているわけですから,〈これでいいのかしら〉という不安にかられ,その先,〈いじめの加害者とならなければいいなあ〉と,このごろの親は思っているようでございます。ですから,いじめの心配が解消される教育の現場を,私も読者ともども望みたいと思います。
  さて,資料の5番ですが,私がこまごま申しましたお母さんたちの特徴を受けて,了解した上でお母さんたちにアプローチしていかなければ,なかなか刺さっていかないということがあるのではないかと思います。大変僣越ながら,三つの角度から,今どきのお母さん攻略法を御提案したいと思っております。
  まず,(1) 番,母子関係が大変薄まってきているということを,まず教育の現場の方々に強く認識していただければと思います。母子関係の前に,すぐ外の世界に目を向けてしまうわけで,「何々ちゃん,お友達できたの」というような質問が,帰宅後の第1番目の質問になっているような状況なわけです。少々友達ができるのがおくれても,まず母子関係なんだということを親に認識させなければ,子どもの問題は解決していかないと思います。
  (2) 番目ですが,生き物や自然に接することを通して,生きることのリアリティーを伝えていかなければいけない。ここに四つ五つ母親の意識を書きましたけれども,多くのお母さんたちがこういう声を投書の中で寄せてまいります。例えば,息子がダンゴムシを持って帰ってきて,びっくりして袋ごとほうり出したとか,カタツムリを飼いたいと言われたけれども,きっぱり断ったとか,生き物と接することが大変欠けている。妙に毛嫌いしている母親が増えているように思います。それから,生き物以外でも,高いところは危ないから登らせないといった危険回避ですね。小さいときからやっていけば,徐々に慣れていくことをさせない。小さいうちから,より安全にということで,危険回避をしていく。「排除行動」と私たちは言っておりますけれども,そういうお母さんたちに,危険なこととか,言ってみれば悪であることとか,汚いものとか,そういうものに小さいときから触れて育つことで,健全な生育が求められるのだということは,何度も何度も言っていかないと,なかなか伝わっていかないのではないかと思います。
  (3) 番目ですが,これは『幼稚園ママ』の編集方針とも合致している点でありますけれども,私どもは特に就学前の幼児期は遊びが大切だということを,100%,120%言っていこうと思っております。ですけれども,親の中には遊びだけでいいんだろうかと心配している人もいます。
  私はつい先日,小学校に招かれる機会がありました。なぜ小学校に招かれたかといいますと,今どきの小学校のママに,幼稚園児のお母さんへと同じことを話してくれと。子どもが小さいのと,小学校に上がっているのとでは母親にほとんど変化が見られないので,幼稚園児のお母さんに話すのと同じ話をしてほしいということで呼ばれて,厚かましくも話をさせていただいたんです。私はそのこと自体は大変うれしく思いましたが,その後,校長先生がおっしゃったせりふの中に,これまた危険がいっぱいだなと思うことがございました。
  それは何かといいますと,私が「入学のときに平仮名とか,数字とかを読めなくちゃだめなのかということを親は大変気にしているが,実際のところはどうか」というふうに尋ねました。そうすると,もちろん指導要領にもあることですけれども,「何にもわからなくてもいいよ」と。もし望むとすれば,自分の名前を平仮名で読めればいいかなということだったのですけれども,その後に,「基本は生活習慣だ。ただ,その生活習慣が身についていないまま上がってくる子がいて,小学校としては大変困っている。」と。その次が問題です。「この生活習慣が何でつかないのかというとね,私も近所の公立幼稚園を時々見るんだけど,年がら年じゅう遊んでいるのよ」というせりふが出ましてね。私はそこで,子どもは遊びが商売だというふうに抗議をしてきたんですけれども,小学校のほうでも規律みたいなものを幼稚園で教えてくるべきだと思っていらっしゃる。今のは一小学校の例ですから,普遍的には言えないかもしれませんけれども,もし小学校のほうでそういうふうに望んでいるとすれば,小学校と幼稚園の連関には大変問題があるのではないかということを,資料の7番に書いてまいりました。後ほど読んでいただければ幸いです。幾ら幼児期の教育が大事だ,大事だと言っても,小学校に入った途端,入学式を境に子どもの環境が変わるのでは,子どももついていけないのではないでしょうか。
  私どもはこのごろ,臨床心理士の先生方の御指導をいただくことが大変多いのですが,臨床心理のお立場では,8歳ぐらいまで幼児と考えてよいのではないかというお考えもだいぶ広まってきていると聞きます。私どもも編集を通して,いろいろ取材を進めていく中で,小学校に上がる6歳の線引きというのは,本当にいいんだろうかと思うことがございます。僭越ではありますけれども,小学校1年,2年の教育の中身と幼稚園時代の教育の中身がうまくリンクするともっといいのではないかと考えることがございます。
  順番が逆になりましたが,きょうの最後の御提案が,資料の6番です。今,小学校から高校におきまして,スクールカウンセラー事業というのが大変脚光を浴びております。幼稚園児の母親たちからも「小学校にはそういうものがあるらしいですね」という問い合わせがくるほどになってまいりました。ところが,肝心の心の教育の基盤となる時期,幼稚園児,保育園児の時期には,このスクールカウンセラー事業というのがまだ展開されていないわけです。これはぜひ,予算を取っていただきたい。さっき申し上げました善意の第三者にあたるカウンセラー方が幼稚園,保育園に駐在していることで,子どもにもよい,お母さんも頼りにしたい。ひいては,若い先生たちにもメリットになるのではないかと,私たちはそのように考えております。
  以上,雑誌の編集の立場から気がついたことを幾つか申し上げさせていただきました。

○  大変中身のあるお話をありがとうございました。
  それでは,また10分ほど,西東さんの御発表に対して御質疑等をお願いしたいと思いますが,どなたからでも結構です,どうぞお願いいたします。

○  大変わかりやすく教えていただきましてありがとうございました。
  御提言の中の最後の7番の「幼児教育と小学校教育との連関」というところで,私自身も併設の幼稚園の園長も兼務しているということで,確かにおっしゃるような,小学校入学を境にして子どもへの対応が,小学校の場合と幼稚園の場合と違うなということは痛感します。私自身も朝,幼稚園児を迎えるときは,お母さん方も一緒に来るということが原則になっていますから,お母さん方とも仲良しにもなるし,いろいろな話も聞くことができます。ところが,小学生になると,お母さん方とお会いできるのは父母会のときというようなことで,なかなか教員と保護者の方との話し合いもできないという中で,子育てについて,幼稚園と小学校の段階でちょっと差ができてきてしまうのかなと思うんです。
  今のお話の中で,8歳ぐらいまでをというようなお話もございました。小学校の学習の中で生活科というものが取り入れられていく中で,幼稚園につながる指導といいますか,勉強といいますか,遊びといいますか,そういうものが行われているわけですけれども,西東さんの御経験からして,もっと学校が親に近づいていかなきゃいけないのかなと。そうすると,学校へ呼びつけると言うと大変語弊がありますけど,そういうような手だてを何かお教えいただければと思いますが。

◎西東意見発表者  私の資料の2の(2) のところにも書かせていただいたんですが,今どきの母親は,情報にあふれた青春を過ごしてきたこともありまして,幼稚園,保育園に大変な情報量を求めているわけです。求められた幼稚園側はアップアップしている状況ですけれども,それでも幾分かでも幼稚園側が情報を流すという姿勢を見せてくれることに,大変な安心感を感じているように思い受けます。小学校の情報などは言うに及ばず「大いに不足」と思っていると思います。幼稚園に比べて,訪ねていく回数もだいぶ減りますよね。そのことで,反比例するように情報は欲しいと思っているはずです。ですから,もし面と向かって会う機会が持てないのであれば,紙媒体ででも,学校の先生から何か紙が出ていく,情報が出ていくということが,一つの方法として考えられるのではないでしょうか。
  私は今,仕事上,幼稚園,保育園を相手にしておりますので,小学校の実態まで見極めておりませんけれども,何かトラブルがあったときに,園側がどう出るかということが,親の初期行動を決めるところがあります。すぐに情報が出た,つまり,こういうトラブルがあって大変申しわけなかった,あるいはやむを得なかった,ついては,そういうことのないように,次はこうしたいという情報が早く出れば出るほど,その園に対して親近感と共感を覚えるわけです。おくれればおくれるほど「隠していた」と感じるわけですから,小学校のほうでも,できれば紙媒体を出されていくとよろしいのではないかと思います。

○  私はまさにこのメーンターゲットの世代なんですけれども。ですから,つくづくおっしゃる分析というのは,私たちの世代の特徴を言い当ててるなと思って伺っていました。お伺いしたいのは,幼稚園パパのほうなんですけれども,私たちの世代の男性というのは,割と会社がすべてとか,仕事がすべてという傾向ではないように思いまして,そのあたり,もし何かお感じになっていることがあったらお聞きしたいんですけれども。

◎西東意見発表者  私どもでは「幼稚園パパコーナー」も持っておりまして,子育てはママもパパも両方一緒にというスタンスを見せてはおりますけれども,このごろ,子育てに積極的に参加する父親が増えてきたと言われている割には,現実にはそうではありません。これは地方差もございますけれども,特に首都圏の父親たちはまだまだ足りない。なぜ父親だけ「子育て参加」と言うのだろうか,母親は「参加」と言わないのに,父親は「子育て参加」と言う。この単語が残っている限り,父親の参加度は足りないというふうに認識していただければよろしいかと思うんです。それでも,イベントには行く。例えば入園式とか,運動会とか,イベントには行くようなイベントパパ・レベルまではきましたので,この先を期待したいと思っております。
  それに裏表で関係のあることですけれども,今どきの母親のイライラ,子どもに八つ当たりというようなことも,父親との関係が切っても切り離せない面があります。もちろん,夫婦仲が悪いと子どもに悪影響がはっきり出ている。これはデータで見えてまいります。ですから,このごろの幼稚園はつらいところもありまして,お母さんたちの夫婦仲相談まで受けているところもあるようでございます。それが家庭の基本なので,相談にこたえることでよいほうに向かうのであれば,ひいては子どもの教育に返っていくというスタンスを幼稚園の皆さんはお持ちだと思います。

○  2年ほど前に,私も共通一次世代の結婚観,家庭観という調査をやりまして,約600名の青年たちで,何と学歴が97%が大卒の回収をしました。結婚したお父さんたちは育児を楽しんでいますね。だけども,結婚してるお母さんたちは楽しんでないんですね。要するに,育児が生きがいになっていないということがございます。先ほどの島内さんの提案でも,どうも子どもが好きになれないんだという方が47%ありましたよね。そうしますと,三つの提案は非常におもしろいんですけれども,(1)   番で母子関係を深めるとおっしゃるんだけれども,そういう状況の場合に,母子関係を深めていく提案がございましたら。編集者の立場で,こういう形でやれば,母子関係が深まっていくんだというのがおありでしたらお願いしたいと思います。

◎西東意見発表者  大変学力のある世代なので,理屈で攻められると納得するという面もあるわけです。ですから,これはちょっとルール違反かもしれませんが,幼児期に母子関係がきちんとできていないとこうなるという情報を出すと,身にこたえるという傾向はございます。私どもはそのように逆手にとって編集することもよくございます。

○  幼少期における遊びの重要性について,最近は随分言われるようになりましたが,まだまだの状況です。
  (3) 番で,「遊びを踏まえた体験の重要性を知らせる」ということを御指摘になりましたが,幼少期に十分遊ばせないと,大きくなったら困るということを納得してもらうのに,効果的な事例がありましたらおしえてください。

◎西東意見発表者  これは受け売りでございまして,ある幼稚園の園長先生から聞いた話で,私は大変感激して,外に行くたびに言っておりますけれども,「お母様方は,小学校に上がって成績のいい子ということを目指すよね」と,まず確認するわけですね。そこで同感してあげる。そうすると,お母さんたちはうなずきます。そのときに,「知識というのは入れる器が必要だよね」と戻ってくるわけです。「この器ができるのは幼児期しかない。幼児期に器をつくっておかないと大変。その後,小学校に行って幾ら知識を詰め込んでも,受ける皿がなければ全部こぼれてしまう」というふうに言うと,母親たちに大変効き目があったと。その幼稚園は,本当に四六時中,泥遊びをしている園なんですけれども,こう言ってはなんですが,入園希望者が大変多くて,その園長先生の思想に共鳴しているお母さんも多いというふうに聞いております。
  ですから,伝えていくことがまず大事なのではないでしょうか。それこそ,「入学のときに,平仮名は要らないよ。数字を知らなくてもいいよ」と文部省が言ったことはないですよね。私たち編集部がわざわざ小学校に行って聞くと,答えてはくれます。ですけど,自分のほうから「そんなことは要りませんから,すくすく育ったまんま来てください」と情報を出してはいないと思うんです。このあたりが,今どきのお母さんたちとの,情報が欲しい,あげていないというギャップなのではないかと思います。

○  私,母親の立場でこちらのほうに参加させていただいて,常々思っていたんですが,子育ては母親の基本,妻の責任だと言われ続けて,ずっと主人を当てにしないで育ててきてしまったんですが,確かに40,50代の方は,一緒に参加するという意識は薄いと思うんです。最近の結婚してすぐの方,またはこれから結婚するような若い方は,随分意識的にも変わってきているし,出産にも立ち会うという状況も出てきているので,子育てに関する意識がだいぶ変わっているんじゃないかということで,きょうの資料を見せていただいて,そうではないということがわかってとても残念だったんです。せめてこれからの若い方には,子育ては夫婦が一番の基本であるという意識を持っていただきたいというのが実感だったんですが,若い方が現実に仕事を持って,それから子育てもするということは難しいと思うんですが,意識の上では父親として,子育ては最大のパートナーだという意識を持っているんでしょうか。父親,あるいはこれから父親になろうという若い方の意識がどのように変わっているのか,その辺がわかりましたら。

◎西東意見発表者  私どもの読者は既に父親になっている人ばかりなので,比較のデータとしては難しいと思うんですが,今の御質問と若干ずれる回答になるかもしれないんですけれども,一つの考え方としまして,女性はいつ母親になっていくか,男性はいつ父親になっていくかということを考えたときに,女性のほうは産んで,毎日毎日の繰り返しで母親になっていきますね。ところが,父親は自分で産んでいませんから,どうやって父親になっていかなくてはいけないのかという,通り道の問題があると思うんです。
  私がいつも幼稚園のお母さんたちに言いますのは,自分の夫が子育てに参加度が足りないと思っているとしたら,あなたは自分の夫に,子育てがおもしろいとか,自分の子どもはこの程度まで成長してきているとかいうような会話を持つ努力を,放棄してはいないか,ということです。若い父親は,母親を通してしか子育てを体験できない二,三年というのが最初はあるわけです。この時期に,母親が相棒をテクニックをもってどう巻き込んでいくかというあたりが,将来にものすごく影響を残すと思うんです。ですから,最初の二,三年が肝心なんだということは,実は私どもの読者ではちょっと遅いぐらいでして,ベビー誌に言っていただかないといけないぐらいですね。その年齢のときに,昼間いない父親に,「きょうはこんなことがあって」と話すことがまず基本です,ということをおくればせながら幼稚園児の父親,母親たちにも言わせていただいております。

○  大変いいお話をいただきまして,そのとおりだと思います。今のお話と関連して二つばかり述べたいと思います。
  一つ申し上げたいのは,私が中学生の問題行動や非行を扱っておりますと,この時期の子どもたちの成育史は,100%に近いほど,レポートの17ページにある(2)   のリアリティーの不足ということです。生き物と接したり,虫を見たことも殺したこともない。それから,泥に入ったこともないという子どもたちがほとんどです。そのような子どもたちが,思春期になって感情の統制もできないままけがをさせていくようなケースを多くみてきました。これは発達課題の積み残しといってよい現象で,思春期になって初めて,それまでに眠っていた攻撃性がむき出しになって現れるように思われます。だから,幼児期や学童期の時期にはその時期に応じたことをきちっとやらないと,思春期になってこんなふうになっていくということを,現場で実感しているわけです。
  ですから,ここでおっしゃっている(2) のところは,大変貴重な御提案だと思います。そこに「心の教育」を考えていく上での回答の一つがあるのではないだろうかと考えております。
  第2点目は,さっきのお話にあったように,父親を介入させていくことの大切さを痛感します。例えば15ページにありますように,さっき言われた「自子主張」ですが,母親と子どもの主張だけだと,自分たちは被害者だという意識が強い。これは逆に言うと,自分の子どもが加害者のときには,相手に対して非常に無関心だということにもなるわけです。そこで大事なのは,父親の目から見た社会常識といいますか,第三者的に見て,過度な被害者意識を修正していくような役割をだれかがしてやらないと,どうしても母子の間の密着の中では柔軟性を失ってしまうと思います。そういう点で,特に父親の冷静に物事を見る目の介入が大事であると考えております。

◎西東意見発表者  父親と母親がともに子育てをするんだというのが基本だということを何度も申し上げていますが,一方で父親と母親の四つの目玉が同じ方向で子どもを見てしまったときにどうなるかという問題について,今どきの親たちに自覚が足りません。父親,つまり夫が子育て参加してくれた,それはラッキーですが,同じ視点で子どもを見てしまうから,子どもの逃げ場がなくなるという点がございます。先ほどもおっしゃられましたけれども,例えば何かトラブルがあったときに,昔のお父さんは「おまえ,そうは言っても」と妻をなだめたわけですけど,このごろの父親は母親の倍,激高して幼稚園に電話をかけてしまう,教育委員会に電話をかけてしまうという傾向もなきにしもあらずなわけです。一方でかなり無関心,一方で過剰に関心がある。極端から極端へという傾向がなきにしもあらずですので,父親教育はそのあたりを御配慮いただければと思います。

○  どうもありがとうございました。お三方には大変中身の濃い有意義な話をしていただきました。
  あと時間が20分弱残っておりますので,全体的なこと,あるいはこういうことを聞いておきたかったということがございましたら,お三人の御発表者の方もいらっしゃいますので,それも含めてお願いできればと思います。

○  親になる準備性,いわゆる親性育成なんていう言葉もあるようですが,そういうチャンスを子どものうちに与えておくべきだという御趣旨だったと思いますが,現場の先生方もいらっしゃるので,よく御存じだと思うんですが,そういう試みとしましては,厚生省の側では保健福祉体験学習というのがあります。思春期の子どもたち,中学生から高校生に,地域の中でやっている乳幼児の健康診断の機会などにその場へ行ってもらって,お母さんに頼んで,赤ちゃんをだっこさせてもらったり,一緒に遊んでみてもらうということを,市町村の補助事業としてやっております。東京では残念ながらやっているところはありませんが,地方では結構やっていて,にきび面の中学生ぐらいでも,やった子どもはそれなりに楽しんでくれたり,「自分も赤ん坊のときは親にこんなに苦労をかけたんだなということがわかって,改めて親に感謝しました」などの作文も見せてもらったことがあります。
  ただ,これは学校のほうも結構忙しいので,家庭科の時間などになかなか子どもさんを出してくれないという悩みがあるようで,しょうがないから,夏休みにやる。夏休みにやると,どうしても男の子が出てこないというあたりが,現場としては悩みだそうです。行政が,お節介にみえることまでやらなければいけない時代になっているのかなということを,最近,感じていますが,これはよいことだと思います。
  小学校では,よく1年生から6年生までを一つのグループにして,学校へ通ったり,あるいはお掃除をしたり,遊んだりという,縦割り活動をやっておられるようで,こういうことを小さいうちからいろいろやる機会があることは,少子化の時代に大事だと思っております。補足的に情報提供だけさせていただきます。

○  全体的な問題でちょっと申し上げたいと思いますが,心の教育について考えるこの委員会に,宗教家が一人もおいでにならないんですね。そうなっていることの歴史的な経緯とか,意味というのは,私も十分心得ているつもりであります。しかし,これは,例えばアジア諸国は言うまでもありませんが,アメリカの場合でも,ヨーロッパの場合でも,こういう問題を審議する委員会に宗教家が参加しないということはまず考えられないだろうと思います。そういうことを考えますと,私は,この委員会というのは,異常とまでは言いませんけれども,かなり特異な性格を持っているなと,率直に感じているわけです。
  もちろん,宗教家がなぜ入らないのかという問題については,恐らく少なく見積もっても,戦後50年のタイムスパンで考えなければならないような問題を含んでいる。だから,一朝一夕に,ではどうすればいいかという問題がすぐ出てこないかと思います。しかし,深く考えていきますと,この問題はやっぱり避けて通れないのではないかと思います。
どうしたらいいのか,実は私,今,思い惑っているところであります。心の教育に関する委員会というものが,今後,どういうプロセスをたどるのか,どういう審議の仕方をするのかということを考えると,一応は考えておいていい問題ではないかと思いまして,ちょっと申し上げました。

○  大変大きな問題提起でございました。この問題は非常に難しい問題でありまして,会長,事務局とも随分議論をいたしました。正直申し上げて,宗教家の方に入っていただくとなると,うまい表現がありませんが,どなたに入っていただくか,ということが大きな問題になるだろうと思います。そういうことがありまして,いまだ決心がついてないという状況です。日本の戦後の状況に直接かかわる問題提起だと思います。
  前に15期でしたか,ミッションスクール一校だけ訪問をいたしました。やはり普通校とは全然雰囲気が違っておりました。この問題については,私も自分の個人的な経験をふまえて随分考えてはいたんですが,なかなかうまい結論を得るに至っておりません。少し,考えさせていただきます。

○  3人の先生方のお話をお伺いしまして,幾つか感想を述べさせていただきたいと思います。
  一つは,今のお話ともつながるのかどうかわかりませんけれども,島内さんのお話の中に規範意識というのがありまして,そのときに外的動機づけの無効感という言葉があったかと思います。これは本当に個人的な経験でして,一般化できませんけれども,私の住んでいるところは区内の団地の近くでして,そこにはショッピングセンターがありまして,春にその地域の小・中・高10校ぐらいの校長と,PTA関係と,そのショッピングセンターのデパート,それから専門店の人たちが集まりまして話をしたことがあります。万引きの話なんですけれども,最近,万引きの数はそんなに変化はないんですが,その理由の特徴が最近変わったと。「これが欲しかった」ではなくて,「友達にとってこいと言われた」と言うんですね。これが最近の特徴だと言うんです。外的動機づけの無効感とどうつながるかということですけれども,茶髪にしましても,あるいは子どもたちのグループ化にしましても,価値というものが非常に狭い中で,ピアグループというか,四,五人か五,六人のそこから  ―仲間外れという話も,先ほどもありましたけれども,それが子どもたちにとっては一番大事である。援助交際までいきますと,そこら辺で子どもたちの行動がかなり導かれているんじゃないか。
  そういう意味で言いますと,外的動機づけの無効感という言葉でも,あるいは先ほどの文明の喪失でも,あるいは先回のお話ですと,「ハビット・オブ・ハーツ」とか,「大義」という言葉がありましたけれども,子どもたちが準拠すべき価値みたいなものが,今,全く無効化している。そこら辺をどうしたらいいのかという問題が一つあるんじゃないかと思いました。
  もう一つは,いろいろな調査を紹介していただいたんですけれども,私自身も牧野先生と一緒に国際比較をやりましたし,その前には総務庁で「中学生と母親」という報告書が出ていますけれども,青少年対策本部で日米比較調査も経験しましたけれども,きょうの話とつなぎますと,あらゆる意味で関係的な時間が減っている。ディスコミュニケーションですね。これは夫婦のディスコミュニケーションもありますし,親子のディスコミュニケーション。家族というのを単純に言いますと,日本は親子中心で,アメリカは夫婦中心とよく言いますけれども,実際の親子のコミュニケーションの量は,接触度をやりますとアメリカのほうが多いんです。例えば中学生の子どもと親ということで聞きましても,アメリカのほうがさまざまな話題でコミュニケーションがある。ところが,日本の場合には親子のコミュニケーションがない。さまざまな意味で,ディスコミュニケーションというのが一つありまして,これをどうするか。
  だから,常にかかわらなければいけないということではなくて,関係の質の問題を考えなきゃいけない。それは「クオンティティーケア」じゃなくて,「クオリティーケア」という言葉も出ておりますけれども,多様な活発な関係の取り方,これは親と子の関係でもそうですね。かつて30年前に・筑   という文化人類学者が,日本とメリカの3ヵ月児の子どもと母親との関係を観察したんです。子どもが寝ている部屋の隅に調査員が入りまして。そうすると,日本の母親のほうは常に一緒にいるんです。だけれども,ただじっと見ているんです。ところが,アメリカの母親は,子どもが寝るとどっかへ行って,泣き出すとやってきて,非常に活発な関係を取り結ぶ。それはどちらがいいという問題ではなくて,文化の違いだろうとは思います。先ほどのお話にもありましたように,今,母親がいろんな活動をしたいという中で,量ではなくて質ということを考えますと,それも一つの参考にはなるかなというふうに聞きました。
  最後にもう一つだけ感想として,育児不安というお話がお二人からありまして,勉強になったんですけれども,それをもたらす育児困難といいますか,構造を我々は考えていかなければいけないんじゃないか。父親がかかわっていないとか,それも含めまして,社会の側が楽しみながら育児をすることを可能にしているのかどうか,そこら辺を考えていかなきゃいけないんじゃないかと思います。以上です。

○  今,いろいろなお話を伺いながら,保育現場の親の実態が実によく表現されていたということを実感しました。特に最後の西東さんのお話は,1から10まで,今,進行形の親子の現状を見事にまとめて御報告いただき,一項目ずつ現物をイメージしながら伺っておりました。
  今,ここにデータがありますので,日頃感じていることを,一つ話させていただきたいと思います。
  島内さんの事例で,資料の26ページですが,補足データのエモーショナルサポートのところで,2歳児に不安がピークになっているとありますが,私自身,現場でそう感じています。それは生後二,三ヵ月の赤ちゃんからお預かりしていて,親御さんは0歳のときには一人一人の赤ちゃんが個性的で,兄弟一人一人違うということは,実感しています。ところが,2歳ごろまで育ってきて,自己主張が始まってきたころに,親御さんたちが恐怖を持たれます。このまま自己主張型の人間になってしまったらどうしよう,という不安です。それは学校で適応できなかったら,いじめの対象になったら,先生から嫌われたらと,そこが恐怖の的になって,個性を大事にしていたはずの親御さんも,没個性の方向に育てたくなるようです。何やら画一的ないい子を求めていくということが現実に多くあります。
  そこで,学校が変わってくださると,どれほど0歳からの育児がゆとりのあるものになるかと感じますので,小学校2年生くらいまでは,「あいうえお」や「1,2,3」から始めないで,思い切り方法を変えたカリキュラムにしていただきたいと申し上げようと思っておりました。きょう,8歳までを幼児としてというお話が出て,たいへん救われた思いがいたしました。このあたりのことを思い切って提言をさせていただきたいと思っています。

○  本当に様々な御意見をいただきまして,ありがとうございました。
  時間になりましたので,本日の議論はここまでとさせていただきます。
  今後の審議の進め方について少しお諮りしたいと存じます。年内の会議の日程については,前回御案内したとおりですが,このうち10月の会議につきましては,ヒアリングを続けさせていただく予定でございます。
  さらに,もう一,二回ほど,ヒアリングを交えながら自由に御議論いただくこととしたいと存じます。その後は,ヒアリングと並行しながら,論点を少し整理させていただき,議論の的を徐々に絞っていきたいと考えております。議論の絞り方等については,どういうことを主に議論していただくか,私と事務局で考えたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
  それから,今回,この心の教育に関する小委員会にたくさんの専門委員にお加わりいただきました。その専門委員の方にぜひこの小委員会の席上でヒアリングをお願いできればと存じます。今日が典型的ですが,多くて2度ほどしか御発言いただけませんので,恐れ入りますが,ぜひうんちくを傾けていただければと存じます。
  11月6日,木曜日でありますが,子どもたちや保護者と直接語り合う機会を設けていただきました。最初は幼稚園へ行って,それから小学校へ行くという予定になっています。幼稚園の子どもたち,あるいは小学校の子どもたち,それから幼稚園・小学校の保護者の方と直接,この小委員会のメンバーと話し合う機会を設けることを考えておりますので,ふるって御参加をいただきたいと思います。ぜひよろしくお願いいたします。
  それから,「一日中教審」を準備いたしております。これは第3回になりますが,前回の総会のときに「一日中教審」の開催が決定されております。御出席いただくのは,委員の方と出席を希望される専門委員の方となりますので,御出席を希望される専門委員の方は,事務局へお申し出いただきたいと存じます。
  本日は,以上といたしたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。
  それでは,最後に,きょうヒアリングに応じていただいて,大変貴重な御発表をいただきましたお三方に,拍手でもって感謝したいと存じます。ひとつ今後とも御協力いただきたいと思います。ありがとうございました。
  次回は,10月14日,火曜日,13時から,東海大学校友会館,霞が関ビル33階です。
  どうも本日はありがとうございました。


(大臣官房政策課)
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