審議会情報へ

中央教育審議会

 1998/5 議事録 
今後の地方教育行政に関する小委員会 (第18回)議事録 

 地方教育行政に関する小委員会(第18回)

  議  事  録


  平成10年5月13日(水)    13:00〜15:00
  虎ノ門パストラル  新館1階  鳳凰西の間  


    1.開    会
    2.議    題
        今後の地方教育行政の在り方について
    3.閉    会


    4.出    席    者

委員 専門委員 事務局
河野座長 安藤専門委員 富岡生涯学習局長
市川委員 佐々木(初)専門委員 近藤審議官(初中教育局担当)
薄田委員 尾木専門委員 御手洗教育助成局長
國分委員 堀内専門委員 早田主任体育官
坂元委員 鱒渕専門委員 寺脇生涯学習振興課長
田村委員 村松専門委員 工藤生涯スポーツ課長
横山委員 山極専門委員 竹本地域文化振興課長
      高   総務審議官
      杉浦政策課長
      その他関係官

○  それでは、時間になりましたので、第18回地方教育行政に関する小委員会を始めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
  それでは、今回の配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

  〔事務局より説明〕

○  それでは、前回までのこの小委員会では、学校の自主性・自律性の確立の問題について、一通り御議論をいただいたところでございます。本日は、中間報告の「第5章」の「地域コミュニティの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割」、そして「第6章  学校以外の教育機関の運営の在り方」について、御討議をいただきたいと思います。御討議をいただくに当たって、事務局から審議の参考になる資料を用意しておりますので、説明していただきたいと思います。3人の方から説明をお願いいたしますが。

  〔事務局より説明〕

○  それではこれから討議に入りますが、改めて申し上げるまでもなく、学校の自主性・自律性の確立の問題と並んで、きょうのことであります地域コミュニティの育成のことなどは、中間報告を御覧いただきながらお聞きいただいたと思いますが、ここでは大きな方向性を打ち出して、きょうまでの審議において、具体的な改善策を提案するということになっていたものでございます。そのこともお含みの上で、ただいまの説明をお聞きいただいて、質問も含めてこれから討議をお願いしたいと思います。
  それでは、「地域コミュニティの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割」、それから「学校以外の教育機関の運営の在り方」について、あわせて御論議をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○  前の「第4章」と違いまして、この地域コミュニティの育成あるいは地域振興に教育委員会の果たすべき役割というのは、どちらかといえば学校というよりも学校以外の教育委員会の役割みたいな形になるわけですが、私は全体を見まして、基本的にまとめてありますし、方向性もきちんと打ち出してありますので、特に問題はないんですが、ただ結論とすれば教育委員会は大変なんであります。学校教育だけではなくてすべて、社会教育も、あるいは社会教育以外のことも教育委員会が背負っていくという立場になります。そういった意味では、このまとめはセーブした形でまとめていただいているのかなという感想を持っております。
  ただ、今のいろんな参考の資料によりまして、地域コミュニティの育成ということ、教育委員会の役割ということで、生涯学習との関連のお話をいただいたわけですが、どの市町村でも先ほどの説明にありましたように、何らかの形でまちづくりには関与しておりますし、首長さん方はそういった意味での教育委員会に対する期待も大きいように思っております。
  中教審の第15期の答申の中で、地域との連携が非常に大事であるということが言われているわけですけれども、例えば私たちのほうでももう32年になりますが、県下全体でそれぞれ市町村が中心になって教育振興運動というようなものを持っておりまして、これはPTAや学校だけではなくて、町内会、地域とも密接にかかわった運動を32年間ぐらい展開してきておるわけです。今度第15期の答申で地域連携の内容が具体的に示されましたので、もう一度今までやってきたことに、先ほどいろいろ御説明いただいた資料を参考にしながら、新しいものをつけ加えて展開していきたいと思っております。ここでも「地域の教育機能の向上」というところでまとめをしておりますが、地域社会が一体となって、学校教育だけではなくて、家庭教育を支援する体制を整備していくことが必要だということは大賛成でありまして、これは即取りかからなければならないことだろうと思っております。
  まず基本的には賛成でありますが、あと細かいことはまた後で述べたいと思います。

○  地域コミュニティの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割についてということの部分でございますけれども、公民館活動のいろんな面での充実ということに関しまして、私も2ヵ所ほどの公民館活動を担当している者として感じていることを言わせていただきますと、前もって予定をされている使用に関しては何のトラブルもないわけですけれども、急に使いたくなったということに関しての取り扱いについては、その公民館によってちょっと違っているということ。そういう面では、きょうすぐ使いたいなと思っても、空いていながらなかなか使えないというところがまだある。そういうものに関しても少し弾力化をしていただいて、使いたいときに使えるという即応性のある対応をしていただければ、もっともっと住民に対してのプラスの方向が生まれてくるのではないかとまず思われます。

○  質問と意見なんですが、まず御質問申し上げたいのは、三つの御説明をいただきまして、それぞれ大変よく地域が活動していらっしゃると感じました。どうも学者の系統を引きずっているものですから、こういうデータがあるかどうかお伺いしたいんですが、まちづくりとか、体育だとか、文化で、それぞれここに挙がっているような地域で子どもの不登校だとか、いじめとかのパーセントが、ほかの地域よりも少なくなっているのかどうか。それはマイナスの面が少ないという意味ですけれども。また、プラスの面で、いろいろな芸術祭とか、体育とか、いろんなところの入賞のパーセントは、それぞれ増えているか。健康だったら、長寿の平均値が高いのかとか、その辺のデータがもしありましたら教えていただきたいということ。もしなければ、今、統計がかなりあるので、何かの機会にお教えいただければありがたいということが、これは一つ質問でございます。
  それから、全体についての意見でございますが。これは前から何回か申し上げているんですけれども、中教審の第一次答申以来、地域・家庭・学校の連携は大変大事だと思うんです。で、「第4の領域」というのも今日出てきております。そういう観点からいきますと、これは慎重にやらなければいけないんですけれども、文部省が国民心身育成総合カリキュラムみたいなものをつくる。必ずしも強制力がなくていいんですが、緩やかなモデルで、人間の一生涯の発達であるとか、それから障害に応じてとか、地域の特性は地域でおつくりになればいいんですけれども、興味に応じて  ―理系的な興味とか、文系的な興味とか、いろんなのがありますが、そういう生涯にわたる総合的な国民教育カリキュラムみたいなもののモデル案を幾つかつくる。各地域はそれぞれの地域に合わせた地域住民全体の芸術文化、自然科学、教育、その他のカリキュラムをつくる。その一部として今、文部省が教育課程審議会で全国共通の学校教育のカリキュラムでつくっているのを位置づけるという構造ですね、そういう解釈をする。
  今、文部省で一生懸命やっているのは、全国に基準を持たせた学習指導要領を中核とするものをつくって、基礎・基本を教育しようとしているわけですけれども、その部分は当然全国共通ですが、それを含み込む大きな緩やかなカリキュラムをどこかでつくっていただいて、拘束性は必ずしも持たさない。いろんな地域が自分に応じたそういうものをつくる。それの責任者が教育委員会で首長部局の応援もいただいて教育委員会がつくって、その組織だとか、予算がどのように動くかということを検討してみる。
  実際はかなり難しいと思いますので、拘束性を持たさない地域教育カリキュラムを検討する  ―ナショナルカリキュラムというのが出ていますが、あのときのナショナルカリキュラムはたぶん学校教育カリキュラムでしょうけれども、そこにもう少し幅広い「第4の領域」が担当するような地域全体のカリキュラムの構成の仕方とか、カリキュラムのモデル像とか。それを国民全体では一生かかってこのようなことをすると、21世紀の生きる力を備えた日本人になる、大和の人になるよといったようなものがつくれれば大変すばらしいと思うんです。具体的にやれば幾つかのモデルができてくるような気がするので、一つのコメントといいますか提案でもあり、そういう機会があれば一緒に努力してやってみたいなという感じを持って申し上げました。
  もう一つ、きょうの三つの例は大変すばらしい例なので、これはもうやっていらっしゃると思いますが、ぜひデータベースにして、運用の問題ですので、地域行政、文化行政なり、スポーツ行政なり、科学指導行政なり、社会教育の行政なりがなかなか難しい問題があるという地域は、そのデータベースを引けば、それを参考にできるような社会情報センター的なものといいますか、国民教育情報センターのほうがいいかもしれませんね、そうしたものの整備をぜひ御検討いただければ大変ありがたいと思います。

○事務局  そういったまちづくりをしているところの成果がどのようにあらわれているかということであろうと思いますけれども、現在のところはそれと関連づけた調査は、特に今、その辺を目的にはいたしておりませんが、そういう御指摘を受けて、各市町村と御相談する中で、何らかのそういった成果をある程度客観的に示すことができれば、そういったことができるように考えてまいりたいと思っております。
  特に生涯学習が盛んなところでは、医療費があまりかからないのではないかという仮説を、私どもの国立社会教育研究所のほうでその仮説が成り立つのかどうかという研究に着手を始めておるようでございますので、そういった成果ともどもある程度まとまりましたらまたお示しさせていただきたいと存じます。

○事務局  一般的にスポーツ活動が健康・体力づくり、あるいは長寿にどのような効果があるのか、あるいは心の教育の面ではどうかといった点でございますが、残念ながら具体的にそれを科学的に立証するような資料は、探してはいるんですけれども、なかなか見当たらないという状況でございます。
  ただ、総合型地域スポーツクラブでございますが、これは着手してまだ間がないわけでございますが、実は先ほど説明から省略させていただきましたが、サッカーくじですね。スポーツ振興投票が、昨日、法律が可決されたわけでございますが、スポーツ議員連盟等の御議論におきますと、この収益の使い道といたしまして、総合型のスポーツクラブといったものが一つの有力なものとされているということもございまして、私どもちょうど文部省補助のモデル事業の第1期3年間が終わったところでございますので、それの報告書などもまとめまして、今後、新たに取り組もうという市町村に対する指針ともするといった一つのPR活動を今後大いに展開していく必要があるだろうと考えております。そういったものの中で、いろいろな成果、また問題点もあるわけでございますが、そういったものをまとめて公表していきたいと考えております。

○事務局  まず質問の第1点目で、子どもの不登校とか、いじめのパーセントが、こういった地域の指定されているところと全国的なレベルとどれぐらい違うのか、そういったデータがあるかどうかということでございますが、現在のところはございません。ただ、私どもの関係している文化のまちづくりの対象地域でそれを拾い集めれば、全国的なものとの比較は可能だと考えております。
  次に、芸術文化関係の入賞のパーセントはどうかというお話でございましたけれども、これはどの賞をピックアップするかによって、非常に有名なものでしたらそんなに各地であるわけではないですので、これについては資料をつくるのは難しいかと思います。
  次に、御意見で、資料のデータベース化についてなんですけれども、私どもで地域文化情報  ―これはまだパソコン通信なんですけれども、そこに各都道府県の教育委員会等に呼びかけて、文化のまちづくりの関係の新しい動き等の記入を要請しております。そういうことで、このデータベース化については、現在、ちゃんとしていると考えております。

○  一つは、スポーツ・文化活動で、先ほど御紹介があったように国が補助金を出して、幾つかのモデル地域を設定してやっているわけですね。考えてみますと、それは国が誘導策として、また呼び水としてやっているわけで、地域から本当に声が出てきて何かやっているという印象を受けない。そういうことだから、呼び水を出しているということがあるのかもしれませんが、補助金が出るとか出ないとかではなくて、自治体なり何なりが自らの意思で、自らの財源で展開するということになっていかないと、本物にならないのではないかと思います。
  そこで、そういうふうになるにはどうしたらいいかということなんですが、全然別の観点ですが、たしか第一次答申の際の議論で、学校スリム化との関係で、部活動が非常に過熱してしまっているということがあり、また部活動が学校の先生のかなり負担になるというようなことで、私は極論的にもう部活動なんていうのはやめたらどうだと。学校での体育とか、あるいは芸能関係は、小学校の中学年くらいまでやって、あとは地域のスポーツクラブなり、あるいはいろんな芸術文化の活動、教室等にゆだねるというくらいのことをやったらどうだと言ったのですが、まあまあそこまで言わないでもというようなことで落ちついた記憶があるので、改めて今一次答申を見てみましたら、学校スリム化のところで、「地域において活発な文化・スポーツ活動が行われており学校に指導者がいない場合など、地域社会にゆだねることが適切かつ可能なものはゆだねていくことも必要であると考える。」と、こういう表現を使っているわけです。
  今の実態、特に中学校あたりになりますと、高等学校の受験に際して、部活動をどのくらいやっていたかというようなことがかなりポイントになるということから、受験のためのいわば手段として部活動をやるという傾向もなきにしもあらずということですので、何もそれは学校でやらないで、地域でいろんなスポーツ活動を  ―一定の認定行為なんかが必要かもしれませんが  ―やれば、それは内申書かなんか知りませんが、部活動をやったと同じようなことをやったことになるということになれば、何も学校の部活動でなくて、地域のスポーツ活動、あるいは芸術文化活動に参加したいという意欲が、これも受験の手段になってしまうかもしれませんが、出てくる。そうすると、そういう需要があれば、地域あるいは教育委員会もそれにこたえるための諸施策を講ぜざるを得ないという観点が一つ入らないだろうかという気がいたします。
  その場合に、何でもかんでもスポーツクラブ、あるいは芸術文化活動なりについて公費でやるということ  ―もちろん公費でやれればそれに越したことはないですが、やはり財源というものがあり、特に最近自治体でも財政難になっているわけですから、おのずからそこに受益者負担ということで、何も公の経費、公の事業としてでなくて、民がそういうことをやって、それに住民が受益者負担で参加するという仕組みも考えていかなければならないのではないだろうかと思います。
  もう1点、これはまた別のことですが、先ほど事務局の説明の中で、公民館とか、図書館の規制緩和ということで、いろんな審議会とか、協議会を廃止するというのがありました。確かにそれはそれぞれの都市なり自治体の自主的な判断でやっていくということで、それ自体は結構ですけれども、私も詳しく知っているわけではありませんが、話に聞くと公民館の運営審議会なり図書館協議会なりが年に1回か2回、1年間の事業計画を出して、異議なしというような、極論を言えばそういう形でいわば形骸化した運営がなされているようにも聞いているわけです。ただでさえ公の事業は住民の意思、ニーズにこたえるというよりも、官の側、公の側で「これがいい」と思うことをやると言われ、必ずしもニーズと一致しないというような面が見られるわけですから、法律で必置する必要はないかもしれませんけれども、やはりそれにかわる何らかの住民のニーズをくみ上げて、それを事業の中に生かしていくというような仕組みを別途考える。自治体の判断、あるいは社会教育施設の判断でそういうこともやっていかないといけないのではないか。
  3点目ですけれども、これは学校との絡みで、あるいは前回のテーマのほうと結びつくのかもしれませんが、学校が今まで以上に地域と今のような問題も含め、あるいは地域のニーズを含んで学校運営に生かしていこうということになると、学校のほうもそれに対応する組織も考えなければいかないのではないか。しかし、そういう問題になりますと、個々の先生とかということでなくて、校長とか、教頭という全体を見る立場の人たちの仕事になるわけで、校長さんがじかにやらないまでも、最終的には校長さんでしょうけれども、教頭さんあたりが校長さんの手足となって地域といろいろな連携に走り回るというようなことを、教頭の仕事を大きなものとして位置づけていく必要がありやせんか。その場合、大規模校になりますと、一人の教頭ではやりきれないという問題も出てくるかと思いますが、そういう点からも、場合によっては教頭の複数化ということも、そういう面からも考えていっていいのではないだろうかと思います。

○  私も意見を申し上げようと思っていましたが、今ご発言の第1点目で御指摘になられた点については全く同感で、かなり前からいわゆる学校の部活動については両面ありまして、確かに子どもにとっても、また実際指導している教員にとっても、それが非常に大きな生きがいになっているという人も全体的には多数なわけですけれども、ただ一部地域によっては試合に勝つための手段として、国体があったり、全国大会があったりというと、特段に過熱するという状況もありまして、全体的にはかなり負担になっているという面は否定できません。したがって、徐々に社会体育といいますか、きょう説明のあった総合型スポーツクラブというようなところに移行していくべきだと私も基本的に思っています。
  ただ、そうは言っても、現実にはなかなか一気にいかない面があるんでしょうけれども、幸いさっき説明があったように、きのういわゆるスポーツ振興サッカーくじ法案も成立したことで、財政的な面でも、大臣が全国的な施設の整備なり指導者の育成等も含めたプランをつくるようなことを、文教委員会で決意を表明されたという報道もあるんですが、今後、ひとつ体育局あたりでそういう面について検討していただくと同時に、何か一次答申より少し踏み込んで、その辺のところを何か書き込めないのかどうかということについて、私も第一次答申よりは踏み込んで具体的な方向性を提起できるようなことを文案として書き込んだほうがいいのではないかと思っております。
  第2点目は、ここにも書かれているんですが、地域コミュニティの拠点としての学校、公民館の活用ということで、先ほどの説明でも学校開放が何らかの形で8割から9割ぐらい小・中では行われている。これは非常に前向きで結構なことですけれども、実態としては限定されている場合が多いんです。一々教育委員会の許可をもらうとかというところが設置者によっては多いわけです。なぜそうなるかというと、今の学校の体育館や運動場も含めて施設等は、必ずしも地域に人に使っていただくという前提では建てられていなかったという点が基本的にあるものですから、最近の新設された学校などを見てみますと、そういう点ではいろいろ配慮されているわけです。したがって、改築とか新しく建てかえの時期が来ている学校も多いわけで、学校の新設や改築というときに、これからは単に子どもの教育の場から、第一義的にはそうですけれども、だんだん生涯学習の拠点としての学校ということから、設計段階から地域住民の代表の意見を入れて設計に生かすとか、そういうことを少し考えて、子どもだけが使うという限定的なものではなくて、一般の生涯学習の場としてももっともっと施設を開放する。
  ただ、体育館等は利用しやすいんですけれども、さあ理科室を貸せとか、音楽教室を貸してと言われても、後のことを考えると、学校としても躊躇されるというのは、今の設計上はそういうふうにできていないものですから、そういうことを今後心がけていくべきだということで、学校施設等の新築・増築とか、改築に当たって、地域住民の意向をそれに反映できるようなことを設計段階から考えるべきだということを、「地域の教育機能の向上」の中で多少書き込む必要があるのではないかと思います。
  それから、地域振興における教育機能の向上ということで、基本的には別に異論があるわけではありませんが、特にこれは心の教育のほうとも関連があるんでしょうけれども、今、少子化がかなり進んでいる背景の一つに、子育てについての不安を持っている若い人が多いということですから、幼稚園、保育所が、単に現在通園している在園児の教育、保育ということでなくて、それのみにとどまらず、地域全体の子育て支援といいますか、育児の相談とか、そういうものができるような関係のものを、教育委員会の機能や学校の機能としても持たせる。また、幼稚園、保育所と  ―かつてはそうであったんですけれども、小学校の低学年と年に二、三回連携をして、いろいろと交流をしておった時期もあるんですけれども、最近あまりそういうことも聞かないので、幼稚園、保育所と小学校が年に一、二回は、子どもが学校に上がる前に定期的にいろいろ意見交換をするとか、そういうことも子育て支援という意味から非常に重要ではないかということを、この文章を見て感じます。

○事務局  先ほど御指摘のあった点でございますが、私の説明が足りませんで、公民館運営審議会を廃止するというのを確かに生涯審の答申の中で書いておるわけでございますが、そこのところの説明が私うまくできませんで恐縮でございましたけれども、答申の中では、審議会を廃止して、そういう協議機関をなくしていくということではなくて、現在の社会教育法に定められた公民館運営審議会の必置規制の形になると、限られた人しか運営に参加できないという嫌いがあるのではないか。また、先ほど御指摘がございましたように、残念ながら運営審議会が形骸化しているということがあるのではないかという観点で、実は審議会の答申では「今後は、公民館運営審議会の設置を任意化することとし、その委員構成等についても地域の実情に応じて決めることができるよう弾力化するとともに、地方公共団体の自主的な判断の下に、公民館運営審議会以外の方法による住民の意思の反映の仕組みをも取りうるようにすることが適切である。」という提言を出しておりまして、御指摘のとおり、このことによってかえって意見反映の仕組みがなくなるようなことがないようには十分注意してまいりたいと存じております。

○  幾つかございますけれども、一つは2002年から完全学校週5日制が実施されるということの中で、土曜日・日曜日に子どもたちが地域で過ごすということになります。それだけに地域にある社会教育施設の整備を十分にしていただき、またそれに子どもたちができるだけ積極的に参加をしていくというように私たちも働きかけていきたいと思っております。
  そのようなことのために、博物館であるとか、図書館というものを、ただ子どもたちが見てということよりは、その中で自分たちが体験ができる活動に内容をさらに充実していただきたいという思いがしておりますし、またそうした施設、あるいは教育委員会以外の行政でおやりになる学習施設が、こういう言い方が適切かどうかわかりませんけれども、割合と世の中の景気に左右されて財源が乏しくなると、こういうものが真っ先に縮小されてしまうという傾向はぜひ避けていただき、先ほどご意見もあったように、一生涯を通じた教育のカリキュラムの中の一つの面として充実していくということを、これから私もだんだん年とってくると、公職を退けばそういうものに期待したいと思っております。ある意味では、そうした公的な施設であっても、財政的な基盤を自分で確立できるような方策が何か考えられないのか。採算の取れる受益者負担もあるでしょうし、その利益を施設自体が上げていくということも考えていく必要があるかなと思っております。
  また、そうした施設を気楽に使えるような体制ということで、私の家族の者も公民館を利用している中で、人的な面で、管理の人が来るまではあけてもらえない、そのために準備が大変だ、また土曜・日曜日には正規の職員の方が見えないので、何がどうなっているか、アルバイトの方の対応でもって大変困る面もある。そのような運営面でも、もっと行政としてのきめの細かいサービスも求めたいと思っております。
  それから、あと学校の施設の利用について、横山先生がおっしゃったように、確かに学校はお貸しできるような施設にはなっていないんですけれども、それでもこれからはどんどんとお使いいただけるようなふうにしていかなければいけない。また、その辺の管理のところが大変難しゅうございまして、教頭あるいは校長の対応ということになりますと、今でもかなりアップアップしていますから、人材の整備という面もお願いしたいと思っているところでございます。

○  学校週5日制の完全実施に関連して、中間報告の中でそのことも視野に入れながら、学校・家庭・地域社会の連携を促進する仕組みを整備していくことが必要であるという指摘をしている。ここが私は今後、非常に重要なところであると思うわけです。
  そのことに関連して、先ほど様々な取り組みについての成果を上げた活動について御説明をいただいたわけでありますけれども、今後、この点についてさらに突っ込んで答申に書き込んでいくとするならば、着目すべき点が二つあるかなと私は考えているんです。
  一つは、地域の格差に着目するという視点が重要ではないかと思っております。先ほど御説明がありましたところでは非常に大きい成果を上げているんですけれども、その一方で、仮にこうした組織をつくっても形式的になっていて機能しない地域で、学校週5日制の一部導入に伴って、地域からも学校からも様々な問題が提起されているという実態があろうかと思うんです。それに対して一体どういうふうにして地域コミュニティの育成を図るような推進組織をつくっていくかということが課題で、そこに向かってのもう少し突っ込んだ提言が必要かと思います。
  そこには財政という視点も一方にありますが、もう一つ視点として考えるべきと思いますのは、運営面あるいは組織への着目という視点が重要ではないかと思います。成果の上がっていない地域を調べてみますと、教育委員会の推進組織のほうも、組織はなるほどあるんですけれども、十分に機能しない形になっている場合が多い。一方で、今度はその地域における学校も、先生方の組織、つまり校務分掌と学校では言っていますけれども、その校務分掌が必ずしもそうした推進体制に開かれたものになっていないという問題を抱えているように思います。
  例えば、地域コミュニティの育成の成果を上げた例をお話しいただいたわけでありますけれども、一つ例を挙げて申し上げますと、大体どこも所管の部局があり、これを推進する組織として生涯学習推進本部、あるいは総合推進本部、名称は様々でありますけれども、こういう組織をつくって、恐らくこれが十分機能することによって、地域コミュニティの育成が推進されているんだと思うんですが、この推進本部が教育委員会なのか、あるいは首長部局かもしれませんけれども、そこがどんなふうな組織をつくって、実際に機能するような運営面に向かって動いているのか。そこのところが今後の答申で明確になって、場合によってはモデルプランの示唆という形で、各教育委員会あるいは地方自治体の努力目標といいましょうか、こんなことをやればこういうことができるということのヒントが得られるような形で答申がされればいいのではないかと思います。
  学校についても同様でありまして、今、せっかく地域が盛り上がってきても、学校の先生方の組織が閉じている場合もございまして、そこに向かってどういうことが大事なのかということが答申されていくことが必要かと思います。
  一つ例を挙げて申し上げますと、例えば登校拒否の子どもを多く抱えている地域の教育委員会では、多くの教育委員会で最近、名称は様々でありますけれども、適応教室というようなバイパスを一つつくっておいて、そこにまず子どもたちが適応していく。そこでエネルギーを蓄えて、学校の正常な教育活動に入るという施策を講じていて、これはどこでも非常に成果を上げていて、今まで家に閉じこもっていた子どもたちが、この適応教室にはみんな出てきて元気になるんですが、長く続けて成果を上げてきたところの新たな問題は、その子どもたちが適応教室だけに安住してしまって、なかなか学校に行くまでのエネルギーが蓄えられないうちに、3年なり6年なりが終わってしまうという問題に直面をしています。
  とすると、こうしたところにも、今の地域における教育活動、あるいは連携におけるコミュニティの育成ということが、地域の盛り上がりがここに機能していって、そのことを視野に入れて学校の教育課程も弾力化される。その弾力化の部分で、まず子どもたちがカリキュラムに主体的にかかわっていき、そして正常な形で登校できるようになる。このように機能する道筋をつくっていくことが、今回の中間まとめの文言で言いますと、「連携を促進する仕組みを整備していく」、ここは非常に重要であるし、そこをどうしていけばいいかということについて少し突っ込んだ具体的な示しどころかなと思うわけであります。

○  先ほど事務局から御説明いただきまして、一つはふだん、地域教育とか、生涯学習を考えたときに疑問に思っていたことが、依然としてやっぱり解けないなという思いをしましたので、3点にわたって意見を述べさせていただきます。
  1点目は、今回も「地域」とか、「コミュニティ」という言葉が頻繁に出てくるんですけれども、具体的な施策とかシステムを考えると、これは「市町村」である。前半の我々の論議の中で、例えば学校教育の在り方、あるいは指導行政の在り方で、広域化論というのは結構論議したんですけれども、この領域で、じゃ市町村という単位にこだわってというか、無前提に市町村ということでいいんだろうかという疑問を実は前から持っていたわけです。
  例えば、卑近な例なんですけれども、私の居住している近くに二つの市が接しているんですけれども、市境の両側におのおのの市が体育施設をつくったわけです。たまたまその地域は土地の問題とか、いろんな利便性でよかったと思うんですけれども、かなり偏っている。そうすると、これは一つにしちゃって、違うところに違う施設をつくったほうが住民にとっては随分よかったのではないかということを感じたこともあったわけです。
  ですから、一概に生涯学習等の広域化論ということになるかどうかわかりませんが、あまりにも行政という軸で考えた場合に、〈生涯学習・コミュニティ振興〉=〈市町村単位〉であるという話になってきているのではなかろうかと、疑問といいましょうか、前から思っておりました。この辺、どう考えたらいいかということについて、また御意見をいただければありがたいと思っております。
  二つ目は、項目として挙がっていますけれども、ほとんど論議されていない大学との関係ということなんです。これも私の個人的な経験で恐縮なんですけれども、私どもの大学である一つのイベントをしたときに、地元の教育委員会の後援をもらおうとしたわけです。そうしますと、これは大変煩雑な手続が要りまして、期日の直前にやっと許可がおりる。後援をいただくというのは、教職員とか、地域の方々に教育委員会からいろいろアピールをしていただきたいというのがねらいであったんですけれども、実際には当日の二、三日前に後援の許可をいただくということで、意味をなさなかったわけです。
  これだけではないんですけれども、地域教育を考えた場合に、私は都市部におりますので、大学がゴロゴロありまして、あまり意味がないということかもわかりませんが、もう少し地方に行きましたら大学の数も限られている。逆に言えば、いろんな意味での地域教育のリソースで大学の占める位置は大きかろうと思っているわけです。それが教育委員会からのアプローチがほとんど見えていない。主に学校教員の研修等については、国立の養成系を中心としましていろんな形で関与があると思いますけれども、ここで論議していますように、地域の住民と大学とをどう結んでいったらいいかというときに、教育委員会が果たしてそれなりの役割を果たしているだろうかという疑問を持っております。いろんな条件があると思いますけれども、これからの生涯学習だとか、地域教育を考えた場合に、大学の持っているリソースといいましょうか、いろんな形でのメリットをもう少し具体化していくような手だてが教育委員会の仕事としてあっていいのではなかろうかと思っております。所管等を考えますと、高等教育とか大学というのは教育委員会とほとんど関係ないということになっていると思いますけれども、地域単位でそういったものを見ていく必要があるのではなかろうかと思います。
  3点目は、主に地域文化振興のお話に領域的には近いかと思うんですけれども、いろんな地域の文化振興を子どもを対象に考えていった場合に、だれが一体コーディネートするんだろうかという問題を感じていたわけです。実は私、自分の大学で留学生のお世話等をさせていただいているんですが、一番手っ取り早くお願いするのが音楽や美術や体育の先生なんです。日本語もまだおぼつかない留学生なわけですが、文化関係の行事等に参加をさせていただけないかと。音楽の先生ならば、自分も含めてコンサート等の紹介をしてくれる、あるいは自分がコンサートをやるから来なさいと言ってくれるし、美術の先生は美術館巡りとかそういったことをしていただく。日本人の学生に言いますと、「それはいいことですね」と。「自分にはそんなことをさせてもらえません。何で留学生だけそういういい思いをするんでしょうか」という話になっちゃうんです。彼らは子ども時代も含めまして、だれもそういったことについてアレンジをしてくれない。施設設備はある、イベントもある。お客さんになる子どももいる。だれがつなぐんだろうかという話なんです。
  やはり学校という単位は、スリム化の話もありますけれども、違う面から言いますと、そういったコーディネートの役割が加わってもいいのではなかろうかと思っているわけです。それは学校単位になるか、教育委員会という単位になるかわかりませんけれども、今言いましたようにイベントとか施設と、実際の対象者になる子どもたちとの間がうまくつながっていないというときに、学校の先生ならばもちろん子どもと接しているわけですし、そこに教育委員会を媒介にすればイベントを主催する側ともつながっていく。もう少しシステマティックにやっていきましたら、地域単位でいろんなものが活性化していくのではなかろうか。
  文化庁のやっていらっしゃることをよく知りませんので、こんな言い方をすると怒られるかもしれませんけれども、何か特定の地域だけであって、さっき助成の問題もあったと思うんですけれども、ごくごくあたりまえにすべての市町村、すべての地域で、こういったことが日常的に行われるというイメージにはどうもなっていないのではなかろうか。今、立ち上がりの時期だと思いますけれども、それを普遍化していくためには、学校なり既存のシステムを何らかの形で使っていくことの検討があってもいいのではなかろうかと考えております。

○  日頃薄々感じているということはたくさんあるんですけれども、ちゃんとした意見というところまではまいらんのですけれども、週休2日制をドイツで最初に、数十年前だと思うんですが導入されて、週休2日制と言わないかもしれません、とにかく余暇時間が非常に増えたときに、スポーツ施設を地域に充実して、それがうまくいったということが私どもの読むものの中によく出てくるわけです。
  そのときに、今は既にスポーツでなくても、そのほかの施設、あるいはオペラみたいなものでも、どんな事業をやる場合でもそうなんでしょうけれども、ずうっとお話が出ているように、施設とお金と人と運営組織というあたりが皆問題になると思うんです。教育委員会が所管をしていて、広い意味では責任を持つとしても、その全部を引き受けるだけのリソースはないだろうと思うんです。そこでボランティアという言葉も出てくるし、もしかすれば全国的なNPOのようなものができて、地域ブランチがあって、そのNPOに対して、今経済は調子が悪いですから、こんな話は夢物語かもしれませんけれども、企業が寄附などもしてというお金の流れももともとあり得たかなと思っていたんですが、そういうようなシステムがドイツなんかうまくいったというふうに書いてあるんですけれども、もし事務局のほうで御存じなら、特に組織面なんですけれども、どういうふうにしてうまくいったんだろうなということをかねて思っていたんです。
  スポーツなんかですと継続的にそこに参加するときには、上達するということが楽しみになるだろうと思うんです。そういうときに指導員がいる。そのとき、指導員としては学校の先生なんかがやってくれたら、それが体育の先生なんかだったら非常にすばらしい指導員だろうと思うんですけれども、スポーツなんかですと、学校の先生以外でもみんなゴルフに行っちゃっているという感じもあるんですが、それぞれの領域で経験があって、指導員としてやるボランティア的な人もあり得るんだろうと思うんです。だもんですから、そういうものをうまく組織化できるかどうかということも、もう既にやっているのか、これから重要になるのか、そのあたりが外国ではどうなっているのかという興味をかねて持っていたんですが、万が一御存じなら教えていただきたいと思います。

○事務局  ただいま地域の文化振興に関してだれがコーディネートするのかという御質問があったんですけれども、確かにこのことについては我々も頭の痛い問題と考えております。文化振興マスタープランをこの3月につくったわけですけれども、そのときにもやはり話題になっておりました。そのとき話題になったのは、子どもたち対象のこともありますので、例えば最も優れた芸術とそのすそ野の部分をどうつなぐか、そのコーディネーターをどうするかとか、そういった話も出ておりました。
  私どもで現在やっておりますことといえば、文化会館に職員がいますけれども、その中の指導担当の職員というのは、現在、1,000名ぐらい専任でいるんですけれども、そういう人たちに文化会館のコーディネート、どんな運営をするか、どんな事業を持ってくるかとか、そういった研修の事業をやっております。ただ、基本的には文化会館の職員というよりも、むしろその地域でのボランティアといいますか、何かある事柄について、音楽なら音楽、美術なら美術、そういったことに素養のある人で熱心にやってくれる人がいるところは、実を言うと今のところ盛り上がってやっているということで、そういう意味では組織化というところまではなかなか進んでいないというのが現状でございます。

○事務局  学校の運動部活動につきましてですが、確かにいろいろな御指摘を受けているわけでございます。体育局におきましても、昨年、運動部活動の在り方についての調査といったようなものをいたしております。それによりますと、教員の側といたしましては、確かにいろいろな負担がある、問題があるという認識があるわけでございますが、これは質問の立て方にもよるのかもしれませんが、9割方は肯定的な意見である。学校の関係者は、学校の運動部活動は必要なものであるというふうな認識であるという結論が出ております。
  ただ、そうでありますけれども、行政の側といたしましても各学校に対しましては過熱ですとか、あるいは練習の行き過ぎといったようなことがないように指導するというのはもちろんですが、外部の指導者の協力をも得られるような必要な手だて、ある程度の手当ても講じておりますし、また各学校に対しても地域のスポーツクラブとの連携を進めるようにという指導をしているという段階でございます。
  それから、先ほどの総合型の地域のスポーツクラブと市町村の教育委員会の関係でございますが、スポーツクラブというのは、やはり住民の方の自発的な活動、自主的な運営ということでございますので、市町村教育委員会の役割は若干微妙でございますが、それを後ろから支援するというところが非常に大事でなかろうかと思っております。私どものモデル事業を見ましても、3年間のモデル事業が終わった後、どのように定着するかということが一番大事なわけでございますけれども、例えば教育委員会が主導的に指導して手取り足取りやったというところは、必ずしもその後うまくいかないような気配が感じられるとか、いろいろなことがあるようですので、そういった事例をこれからいろいろと集めていく必要があるということでございます。また財政的にも、参加する地域住民の方から適切な会費を取って、自前の財源を持って運営するということが、やはり自主的なクラブとしては必須のものになるのではないか、そういった方向も見えております。
  ドイツの先進的な事例なども徐々に研究を進めつつあるわけでございまして、ドイツでも公的な財政的な援助もある程度経常的に出されているところもあるようですので、そういったことも参考にしていきたいと思っております。

○  感想並びにちょっと自分自身がわからない点が幾つかあります。今までの中間まとめの中にもありますが、教育委員会の活性化、役割というのが非常に広範囲にわたっているということが大きいかと思います。今まで生涯学習の推進ということで、その所管というのは首長部局か、あるいは教育委員会でやるかという話もあったわけですが、今回の資料を見させていただきまして、90%以上というか、ほとんどのところでとりあえず宣言されているところにおいては教育委員会が所管しているということがわかりました。
  やはり教育委員会が行うということで、地域の振興・育成ということになりますので、まちづくり、人づくりというポイントが大きいかと思います。そういう広範な視野に立っての行政を仕切るということなものですから、教育委員会に対する強力な首長さんの理解、支援が、まさにこの推進のためには欠かせないだろうということがあります。そのために、教育委員会の組織として質と量の面で強いものにしていく必要がある。ですから、行政の中での専門的な教育をつかさどる分野の教育委員会に対する職員の配置の問題、それから事業を起こす上で財源の確保が教育委員会に与えられた大きな課題であるし、また権限というか、生み出すもとになるのではないかということで、やはり首長さんの力というか、その辺行政のほうである程度支援していく。先ほどのお話で地域によってはあまり行政がという部分がありましたが、進んでいないようなところにおいては牽引していく必要があるのではないか。地域性というのが大きいなという感じがします。
  一つ行政内部の推進という意味では、地域の住民の立場に立って行政を行うということで、各種事業の総合調整という部分を教育委員会が持っているわけです。ですから、首長部局とか、教育委員会の総合調整というのは出ていますが、それはもちろんのこと委員会内部の連携、縦割り行政の是正という意味では生涯学習というものが叫ばれて、その部分も少しずつ解消されて連携がとれるようになってきている。今回の資料でもそういう部分が見えてはいるんですが、教育委員会内部での連携が今後ますます必要になるだろうということで、組織面と連携という二つの運用面で重要なポイントになると思います。
  それから、地域の住民側の要望あるいは意見をいただくための組織ということで、住民あるいは学識経験者を募っての組織づくりの必要も出てくるのかなという感じがしました。
  質問というか、先ほどスポーツ関係で体育施設の開放型から共同利用型へという方向に進んでいきたいということで、資料のほうにも載っていたかと思うんですが、開放と共同利用型のニュアンスですね。通常ですと、学校の施設を地域の方に開放するというのは普通言われていますけれども、通常、学校の授業が終わった後の5時前後あたりからの開放ということで、時間的なものとか、曜日などを考えますと、開放という感じが私自身は強いんですが、共同で利用するというのはどういうことを考えられているのか。その辺、今後の地域の振興、ましてや生涯学習の核となる学校との関係をどういうふうに考えていけばいいのかなという部分が質問というか、私のわからない部分だったものですからお願いしたいと思います。
  もう1点は、先ほど民間との関係で、生涯学習において講座関係を見ますと、教育委員会と首長部局が80%以上受講者があって、公益法人やカルチャーセンターは非常にわずかな数値として配付資料に載っていますが、この辺、民間等の育成を今まで多少画していた部分があるけれども、オープンになってきているというのとちょっと矛盾があるなという感じがしました。それと実際問題、民間と教育委員会なり行政とが住民に対しまして、いろんな講座をどのように連携すればいいのか。やはり民間は利益面が追求されてくる。行政は多くの住民の参加があればということが基本的にはあると思うんですが、その辺でこういう事業がありますよという情報を住民に流すに当たって、どうしても民間の方との連携はしづらい部分があるのかなと。そういう意味での打破というか、民間のスポーツなり文化なりをやられている団体について情報として流すに当たって漏れなくやれるような方法が必要ではないか。どうやったいいのか。そういう点で、自分自身考えておりますが、何かありましたらお願いします。

○事務局  学校体育施設につきましての学校施設の開放から共同利用へということでございます。これは昨年9月の保健体育審議会の答申で特に強調されたところでございまして、基本的なことはそれほど大きな変化はないと思うわけでございますが、これまでの学校開放の問題といたしまして、必ずしも地域のスポーツのニーズに柔軟にこたえきれていないといった点を反省して、よりきめ細やかに対応していこうということからの御提言ではなかったかと考えております。

○事務局  民間との連携につきましては、学校教育はもちろんのこととして、社会教育の場面でもまだまだ民間は営利のものであり、けしからんものではないかという意識もまだまだ地域によって強く残っているわけでございます。今、私どもといたしましては去る3月末に調査研究協力者会議の報告として、今後の行政と民間との連携の在り方についてという報告書も出したところでございまして、現在、各都道府県・市町村の生涯学習、社会教育関係の部局に対しまして、民間との連携のやり方とか、それからどういうふうな団体ならそれはどんどんやってもいい  ―確かにいろいろな団体があるという中で、連携のやり方につきまして事例をお示しいたしまして、そこのところを広げていっていただくように、そういうことに親しんでいただく努力をいたしておるところでございます。できるだけ早く各教育委員会にこういった考え方が十分ご理解いただけますように、さらに努力を進めさせていただきたいと思っております。

○  生涯学習を中心とする社会教育等々というのは、昨今充実していると見ております。関係者の御努力のおかげかなと思っております。学校教育が充実しているというのは、家庭教育もそうですけれども、社会教育の充実がそうさせているのではないかと見ております。
  そういう中において、教育委員会としては、最近は変わっておりますけれども、ややもすると学校教育を中心とした地方教育行政という前提が今まで伝統的に強かったわけですけれども、これからはそれとともに生涯学習を視野に入れた行政が非常に大事になりますし、学校教育行政と社会教育行政の連携がさらに強く必要になってくるかなと思っております。
  それから、学校にありましては、もちろん各学校の特色を生かす、地域の実態に応じた教育課程の編成といったことは昔から言われておりますし、またそういうところで多くの学校は努力しているわけでありますけれども、これからはもっともっと地域に基礎を置いた教育課程の編成といったようなことが問われていくかと思うんです。その突破口を開くのは、今度の教育課程、あるいは第15期の中教審答申でうたった「総合的な学習の時間」です。
  「総合的な学習の時間」というのは、中教審では時間数までは示しませんでしたけれども、教育課程審議会の中間まとめで見れば、例えば小学校5、6年でいいますと、国語の時間数が一番多いんですが、これは当然。次が算数で、3番目に多い時間数を占めているのが「総合的な学習の時間」なんです。そういう面では、非常に重く受けとめておかなければいけないわけですけれども、そういったところで各学校の創意工夫が期待されるかなと思います。さらに、例えば高等学校における学校外の体験的な活動を単位認定するといったような新しい動きもありますので、これからそういった地域との連携で期待されるかなと思います。学校においてはそのように感じております。
  それから、教員研修におきましても、初任者研修や年次研修でもボランティア活動を含めたものをやっておりますけれども、さらに一層地域との連携といいますか、そういった社会教育、あるいは学校の先生も将来いろんな形でリーダーシップをとってリーダーになって、土・日なんかのいろんな学校外の活動で参加してもらうという面での研修が必要になってくるかなと思っております。

○  地域の教育委員会で末端のほうに行きますと、日常的に感じるんですが、教育委員会の仕事の中心は教育財産の管理運営だという意識が非常に強いわけですね。今度は使うのが学校だけではなくて、地域に使ってもらう。開放から共同利用へという言葉がそれを端的に示しているんだろうとお伺いしていたんですけれども、この意識改革をかなり徹底しないと、実際上は、時々御意見の中にもありましたし、私自身もいろいろ感じることが多くあったんですけれども、非常にいい学校の施設等を地域が簡単に利用できない。今まで何十年間にわたって積み上げてきたものがありますので、これは意識改革するのは大変だなという率直な感じがありますので、ぜひその辺はかなり強く書かないと難しいなという感じを持っております。
  それから、ちょっとお伺いしたいんですが、2点ほどあるんですけれども、一つは博物館の数が増えていて、利用数が減っているというのは何か理由があるんだろうかということが一つでございます。
  もう一つは、先ほど御指摘がありましたが、大学と地域との連携というのは、連携状況を何らかの形で発表しているんでございましょうか。例えば、国立、公立、私立という分野にすると、どこどこ種類の大学はあまりやってくれないとか、ちょっと聞くものですから、そういうものを発表なさっておられるのかどうか。その2点をお伺いしたいと思います。

○事務局  博物館の利用状況の数字が下がっているという点でございますけれども、これは博物館の人気がなくなったということでは必ずしもないのではないかと思っております。と申しますのは、実は博物館というのは、ここに書いてございますのは博物館法に登録いたしました博物館の数とその利用状況ということでございまして、現実には地方なんかに参りますと、個人立あるいは民間立の博物館というのは、博物館法上は登録していないけれども、現実に博物館、美術館の活動を行っているもの等もございます。そういったもの全体を含めますと数はかなり増えていると思いますし、利用状況も増えていると思うんでございますが、従来型の博物館法登録を受けた博物館の利用者数が減っていることは事実でございまして、これは社会教育行政の在り方についての答申でも指摘をしておられますような、いろんな規制がかかることによります硬直性というようなことも反省をしなければいけない原因の一つになっておろうと思われます。御指摘のとおり、数が下がってきていることにつきましては、利用者本位の博物館運用が行われますような努力を私どもがしていかなければならない宿題を負っておると考えております。
  また、大学との連携についてでございます。これは実はトレンドの比較がございませんけれども、最近、急激に連携組織ができ始めているところでございまして、まだそこの内容を国公私立別にどうかという分析をするに至っておらない状況でございます。ただ、私どもの実態的な認識からすると、私立が御熱心だという認識を持つわけです。公立の場合は当然自治体がつくった大学でございますので、連携もしやすいわけでございます。そういった意味で、私どもは国立大学の奮起を促すという必要性があるのではないかという行政的認識をいたしておりますけれども、数字的な裏づけにつきましては、現在、公開講座の実施状況等も含みまして、各大学の状況を分析していく作業に取りかからなければならないという認識を持っておるわけでございますが、何分大学との連携自身が最近急激に起こってきている事柄でございまして、そういった数字的な積み重ねが現在のところではないというのが実情でございます。

○  先ほどからも出ているんですけれども、「第4の領域」という言葉が第一次答申の中にありました。このことは従来の学校、家庭、地縁的な地域社会との結びつきとは違うということで書かれているわけですけれども、従来のことですと、学校・地域・家庭が連携してということが何十年来言われている。これを何とか違ったものにしようということがうたわれているわけですから、今回の答申の中ではぜひとも実質的な方向をしっかりと出していただきたいという思いがあるのと同時に、人づくりのために文部省を初めとしていろいろやっているわけですけれども、地域の住民たちというのは物づくりや金づくりのほうにどちらかというと一生懸命であります。そういう人たちを巻き込んだPTCAという形で「第4の領域」のようなものをつくっていく。
  しかし、連携、連携と言っても、ただ意見の交換だけでも連携ですけれども、この連携だけでは今までどおりであって、どうにもならない。どこが主体的な立場をとるのか。また、役所のほうでは後ろから支援をすると言うけれども、後ろから支援というのは実際的にはどういうものなのか。また、資金的な面を考えたときに、もっともっと中に入り込んだ組織づくりができるのではないかという思いがあります。連携、連携と言っても、主導的な立場のものがない連携というのは不完全なものであって、すぐに消えてしまうような連携であっては困る。今まではそういう連携の仕方で、どっかの立場が悪くなるとすぐに消えてしまうような連携の在り方だったと私は思っております。
  実際的にいろんな取り組みをしても、例えば学校側のほうが立場が悪くなるとスッといなくなる。私たち保護者のほうがぐあいが悪くなると、そんなことはやめましょうと言ってやめてしまう。そういうものであっては、いつになってもしっかりとした連携がとれない。やはり一つの形づくりをしっかりとしていかないと、この「第4の領域」には踏み込めないのではないかと思います。今、人間が人間づくりを忘れてしまったような時代になっている。これをもう一度見直していかなければならないと思いますし、これは地方教育行政の問題だけでなく、心の教育のほうにも関連してくる問題ですので、ぜひとも「第4の領域」をしっかりと打ち出して、最後のまとめをしていただきたいと思います。

○  1点だけこれはぜひお願いしたいと思うことを申し上げたいと思います。
  スポーツの指導者についてでございまして、先ほど部活について過熱というようなお話がありましたが、これは非常に地域差がありまして、都市部ではむしろ部活をやりたいんだけれども、部活をやる先生がいないとか、あるいは子どもの数が少なくなったというようなことで、逆な面もあるわけでございます。ここには校長さんもいらっしゃるわけですが、学校のほうから外部のそういった指導者を部活等で使いにくいということの理由としては、恐らく一つは事故が起こったときにだれが責任を負うのかというのが一つと、それから外部の人間が教師の代理が務まるのかということになるのではなかろうかと思っています。
  事故については、これは相当に注意しても起こるときには事故は起こる、教員が仮にやっても起こるんだろうと思います。
  教師の代理が務まるのかという意味では、指導者といっても限りなく専門家、あるいは高度な指導者もおれば、ボランティアみたいな指導者も数多くいらっしゃるわけでして、そこいら辺のところを文部省がということでもないんですけれども、学校においても指導者として通用するような、何かそういった基準ができないものか。例えば、外部指導員なんていう言葉を使っているところもありますが、言葉自体も外の力をかりるにしては名称がよくないし、資格もきちっと決まっているわけではないということで、ぜひそのあたりをきちっとすべきではないかということを答申で盛り込んでいただければと思っております。
  一つと言っておいて、もう一つだけ感想みたいな話ですけれども、生涯学習というのは地域でいろいろあって、いろんな段階があるんだろうと思うんですけれども、私なんかが痛切に感じているのは、カルチャーセンターもそうなんでしょうが、学習したものが何か役に立つんだということが、これからはポイントになるのではないかと思います。ボランティアとも関係があるんですが、地元に現代美術館という美術館があるんですが、現代美術というのはわかりにくいものですから、ボランティアの説明員を募集したところ、応募の数が非常にあったわけです。一定の勉強をしていただいて活躍しているわけですが、それが必ずしも生涯学習かということにもなるんでしょうけれども、ともかく今後は学習したものが何かの形で役に立つんだということも一つのポイントだろう。これは感想でございます。

○  最後に事務局より改めて中間報告の中で、この件に関連して、大きな方向性の中に入れておけばよかったなとお思いになるようなことがおありかどうか、感想を含めて一言、どうぞ。

○事務局  先ほどお話がありましたけれども、生涯学習、生涯スポーツも、文化振興も同じなんですが、まだ点の事業が非常に多いんです。もともとそういう性格のものなんですけれども、これから面といいますか、全国的な展開をするシステムを考えなくてはいけないだろうと私どもも思っております。
  例えば、いろんな手法があると思うんですけれども、第1小委員会のほうの心の教育でああいう中間報告を出していただいたものを、個々の人だけでなくて、面としてお伝えする手法はないかということで、100万部ほど刷っていただくんですか、それだけでなくて、今度の補正予算で10億円ぐらいの計上をさせていただいたんですけれども、母子保健手帳ではなくて、家族手帳のようなものをつくって、そういう趣旨を盛り込んだものを、厚生省と連携しまして、すべてのゼロ歳児から1歳未満、3歳、5歳のお母さん方やお父さん方に渡そうという面の事業をやるという準備を進めております。そういう面で展開できることを少し考えていただいたり、我々も考える必要があると思っております。
  例えば、先ほど学校を活用するということで、たしか第1小委員会の心の教育のほうでも、いろんな学校外の活動などを学校の先生が子どもたちや親に伝えるということをこれから取り組んだほうがいいということを言っていただいているんですけれども、学校の先生がそこまで勉強して果たして伝えてくれるかどうかということを考えますと、気が遠くなるようなところもございますので、何とかそういう点の事業を面に置きかえていくということをこれから考えていく。それを教育委員会や首長部局そのものだけが抱えて直轄事業でやるものだけでは限りがありますので、コーディネーションを教育委員会の参加でやっていくということでとらえていく必要があるのではないかという感じを持っております。これは生涯学習審議会のほうも悩んでいただいているところですので、両審議会の御意見が重なって深まってくだされば、行政的にも大変いいのかなと思っていますので、御期待申し上げています。

○  それでは、きょうの審議は以上にさせていただきます。大変貴重ないろんな御意見をいただきましてありがとうございました。審議のまとめに向けて考えさせていただきたいと思います。
  さて、次回の小委員会以降は関係団体からヒアリングを行うことといたします。まず次回、5月18日の第19回小委員会でございますが、ここでは教育委員会関係の5団体からヒアリングを行いたいと思います。
  また、次々回、6月2日、第20回小委員会では、各学校種ごとの5校長会及び3私学団体からヒアリングを行いたいと思います。その後も教職員団体やPTA団体等からヒアリングを実施したいと思いますが、具体的な日程及びヒアリング対象団体等については、引き続き私のほうで考えさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  なお、本審議会においては、答申の取りまとめに向けて中間報告に対する国民の意見を聞く機会として、6月6日に公聴会を開催することにしております。この公聴会には委員、さらに専門委員の全員の方においで願うということになりますと、人数が多くなり過ぎますので、まことに恐縮ですが、委員の方のみに御出席いただくことにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  きょうは本当にありがとうございました。本日の会議はこれで終了いたします。
  次回の小委員会は、5月18日、13時から霞が関東京會舘・ゴールドスタールーム、35階でございます。よろしくお願いいたします。

(大臣官房政策課)

ページの先頭へ