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中央教育審議会

1997/12
今後の地方教育行政に関する小委員会 (第6回)議事録 

       地方教育行政に関する小委員会(第6回)

          議    事    録

    平成9年12月12日(金)13:00〜15:30
    東海大学校友会館    33階    阿蘇の間


      1.開    会
      2.議    題
          今後の地方教育行政の在り方について(ヒアリング及び討議)
      3.閉    会


      出  席  者

委員 専門委員 事務局
河野座長 安藤専門委員 長谷川生涯学習局長
有馬会長 岡田専門委員 辻村初等中等教育局長
市川委員 小川専門委員 御手洗教育助成局長
薄田委員 尾木専門委員 野坂審議官(学際局ユネスコ担当)
小林委員 如月専門委員 富岡総務審議官
田村委員 児島専門委員 その他関係官
永井委員 佐野専門委員
横山委員 蓮見専門委員
藤波専門委員
堀内専門委員
鱒渕専門委員
村松専門委員
山極専門委員
和田専門委員


  意見発表者    

  (◎…意見発表者)

  1  全国国公立幼稚園長会
       ◎大  迫  さかゑ(会長、港区立青南幼稚園長)
          羽  田  紘  一 (副会長、台東区立育英幼稚園長)

  2  全国連合小学校長会
       ◎三  上  裕  三(対策部長、豊島区立時習小学校長)
          内  海  静  雄(事務局長)

  3  全日本中学校長会
       ◎安  齋  省  一(総務部長、世田谷区立八幡中学校長)
          高  木  清  文(総務副部長、青梅市立第一中学校長)

  4  全国高等学校長協会
       ◎久  野     猛;  (常務理事、東京都立日比谷高等学校長)
          山  本     明;  (事務局長)

  5  全国特殊学校長会
       ◎大  南  英  明(会長、東京都立青鳥養護学校長)
          山  口     勇  (事務局長、東京都立王子養護学校長)

  6  全国公立小中学校事務職員研究会
       ◎加  藤  善  久(会長、市川市立養護学校事務長)
          神  谷  敏  明(副会長、横浜市立北綱島養護学校事務主査)

  7  全国公立高等学校事務職員協会
       ◎栗  田     久  (会長、東京都立戸山高等学校事務長)
          湯  田  省  三(副会長、東京都立小山台高等学校事務長)

  8  全国公立学校事務長会
       ◎金  子  博  隆(会長、東京都立九段高等学校事務長)
          牛  丸  宗  尚(副会長、東京都立光明養護学校事務室長)

  9  全日本教職員連盟
          塚  原     孝  (委員長)
       ◎細  川  浩  二(事務局長)

  10  全日本教職員組合
       ◎松  村  忠  臣(中央執行副委員長)
          浦  岡  紀  子(中央執行委員)

  11  日本高等学校教職員組合
          斎  藤  元  秀(執行委員長)
       ◎飯  塚  信  良(書記長)

  12  日本教職員組合
       ◎川  上  祐  司(委員長)
          山  中  正  和(副委員長)
          前  田     武  (執行委員)


○  それでは、ただいまから第6回地方教育行政に関する小委員会を開催いたします。
  本日はお忙しい中をご出席いただきましてありがとうございます。前回御了承いただいたとおり、各学校種ごとの校長会、教職員団体等の学校関係の12団体からヒアリングをお願いいたします。そして、ヒアリング団体と関連するテーマであります「学校と教育委員会との関係」及び「地域住民と学校との関係」について主に討議を行いたいと思います。
  なお、ヒアリングに際しましては、意見発表者から御提出いただいた意見の要旨を記した資料をお配りしておりますので、適宜御参照いただきたいと思います。
  それでは、初めに全国国公立幼稚園長会会長の大迫さかゑさん、港区立青南幼稚園長でございます。それから、全国連合小学校長会対策部長の三上裕三さん、豊島区立時習小学校の校長でございます。それから、全日本中学校長会総務部長の安齋省一さん、世田谷区立八幡中学校長でございます。さらに、全国高等学校長協会常務理事の久野猛さん、東京都立日比谷高等学校の校長でございます。そして、全国特殊学校長会会長の大南英明さん、東京都立青鳥養護学校の校長でございます。
  それぞれお一人ずつ御意見を伺って、その後、4人の方について質疑応答をお願いしたいと思います。
  それでは、まず大迫さん、よろしくお願いいたします。

◎大迫意見発表者    全国国公立幼稚園長会の大迫でございます。よろしくお願いいたします。
  国公立幼稚園では、幼稚園教育要領に基づきまして、各幼稚園の実態等に応じて教育課程を編成し、さらに指導計画を作成して教育活動を進めております。このことによりまして、全国的に国公立幼稚園は一定の教育水準を保っていると自負しております。文部省の示す第3次幼稚園教育振興計画の推進とともに、幼稚園教育のさらなる充実を図るために、これからお話しいたしますことについて、十分御審議いただきますようお願いいたします。
  それでは、三つの具体的な審議事項につきまして、幼稚園教育の立場からまとめさせていただきましたので、項目順に具体的にお話しさせていただきます。
  まず初めに、1点目の主体的かつ積極的な地方教育行政の展開について述べさせていただきます。幼稚園は明治9年創設時より、3歳から5歳までの幼児を教育する学校として、一貫して幼児の側に立った教育の推進に努めてきました。つまり、幼稚園教育は学校教育、生涯学習の出発点であります。義務教育化されておりませんが、学校教育として位置づけられております幼稚園教育を、いずれの自治体におきましても一層充実推進することに努めていただきたいと考えております。例えば、次の三つの点でございます。
  一つは、教員の研修制度を確立し、教育水準の向上を図るということでございます。幼稚園の教育内容・方法の充実を図るためには、教員の研修が最大の課題であります。幼稚園の設置数は、各都道府県によってかなり格差があり、幼稚園教員の研修の在り方もさまざまであります。したがいまして、各都道府県ではますます幼稚園教育を専門とする指導主事を必要とするとともに、幼稚園教育の水準を維持向上するためには、教員の研修は都道府県教育委員会において実施することが望ましいのではないかと考えております。
  二つ目は、教員の任用・処遇についてでございますけれども、これは自治体ごとに極端な差の起きないよう配慮していただきたいと考えております。現在でも教育公務員である幼稚園教員が行政職として位置づけられている実態があります。
  三つ目は、3年保育、預かり保育などについて、国公立幼稚園においても積極的に推進できるように配慮していただきたいと考えております。昨今、義務教育でない幼稚園教育に対しまして、財政難等を背景といたしまして、国公立幼稚園の統廃合、それから保育年限の規定、3歳児の入園児数を制限したりする自治体が出現している実情がございます。幼児教育の機会均等と住民のニーズを満たす上からも、3歳から5歳までの幼児のすべてが幼稚園教育を受けられるような方策を、各自治体で責任を持って推進していただきたいと強く要望しております。
  次に、2点目の学校運営の自主性の確立についてでございますけれども、このことにつきましては、園長の権限で執行できない地域住民からの意見や要望が数多く寄せられることも予想されます。これらの場合は、三者が協議できるように制度化を図るようお願いしたいと考えております。例といたしましては、子育て支援や幼児教育センターを要旨に挙げておりますけれども、先ほど申し上げました3年保育のこと、預かり保育のことにつきましても、学校運営という幅を超えまして、当然、声が寄せられることが予想されておるからです。
  次に3点目の地域住民との連携協力につきましては、これは皆様御存じのように、幼児を取り巻く環境が著しく変化する中で、家庭の教育力も低下している現状にあります。幼児の成長を援助することと同時に、保護者の子育てを支援することが、幼稚園や保育所の役割となっております。そこで、地域に住む保育や子育ての経験者の協力を得られるように、各自治体が工夫するようお願いいたしたいと思っております。

◎三上意見発表者    それでは、全国連合小学校長会を代表しまして意見を述べさせていただきます。
  まず、学校と教育委員会の関係についてでございますが、「21世紀に向けた地方教育行政の在り方に関する調査研究協力者会議」の『論点整理』の7ページに「見直しの方向」が示されておりますように、地域や学校、子どもの実態に応じた特色ある学校づくりを進めるために、学校の自主性・自律性を確立するとの御指摘に全面的に賛成であります。
  本会としましては、その実現に向けて以下の3項目の御審議をお願いいたします。
  一つは、特色ある学校を築いていくためには、人的・物的・予算等の諸条件の整備が必要であります。その中で、校長の権限を拡大する方向で御検討いただきたいと存じます。検討課題としましては、学校予算の編成・執行及び教職員の人事に関して、校長の権限を拡大していただきたいことです。また、権限を拡大することによって、当然、責任と義務が伴うものと受けとめておりますが、その職責に見合う校長・教頭の給与等の処遇改善について御検討をお願いいたしたいと思います。
  二つ目は、学校は地域や保護者からの信頼なくしては存在し得ないと考えますが、そのために学校の責任者としての校長が経営手腕を十分に発揮できるよう、学校経営の組織運営並びに地教委による指導・助言の在り方等について、責任の所在を明確にする必要があります。特に、学校と行政とのパイプ役として期待されている指導主事が、本来の職務を十分に果たせるような環境を整えていただくことと、あわせて町村教委にも指導主事を配置する方向で御検討をお願いいたします。
  三つ目は、教育委員会は、学校の自主的・自律的な運営を確立する観点から、学校の管理運営規則や教育委員会内部の組織機能の見直しについて御検討いただきたいと思います。例えば、学校から地教委への届出、報告、承認願、申請等の事務量は膨大なものがあります。それらの事項を見直し、校長の判断にゆだねる部分を拡大することによって、事務を整理・統合することが必要であると思います。ただし、学校事務を大幅に増やすことは、学校スリム化の方向に逆行することにもなりますので、教育委員会はあくまでも学校の自主性を支援する方向で、内部の組織機能について見直しを図っていただきたいと考えます。
  次に、地域住民と学校との関係についてでございますが、『論点整理』の27ページに、中教審の第一次答申が引用されていますように、学校は教職員が一体となって新しい教育の方向を目指し、保護者や地域住民の意向が反映される学校を実現するという提言に対しまして、本会としましてはこの趣旨に基本的に賛成であります。これまでも全国の各小学校においては、地域と密接なかかわりを持ちながら、地域の学校としての役割を果たすため、さまざまな特色ある教育活動が展開されてきております。しかしながら、社会の急激な変化とともに、地域社会も変容を見せてきており、保護者や地域住民の考え方や意識も多様になってきております。
  そこで、提言の趣旨を実現させるためには、一般行政、教育行政、地域住民や保護者などの関係者と学校の教職員が一体となって、新しい学校の在り方を求めていく必要があると考えます。例えば、地域住民、保護者の代表と学校の管理職との会合に一般行政の方や教育委員も加わって、これからの学校の在り方について意見を交わす機会を年に一、二回設定するなど、保護者や地域住民の意向を学校経営に反映させるための具体的な方策を検討していただきたいと考えます。
  なお、保護者や地域住民の意向を学校経営に反映させる上で配慮すべきこととして、あくまでも学校の主体性を尊重し、校長の権限を損なわないようにすることと、学校現場に主義主張による対立等の混乱を持ち込まないようにすることが大切であると思います。
  二つ目は、地域の人材を積極的に活用したり、学校と地域との交流を一層活発に行ったりするための予算措置等の条件整備を進めるよう御検討をお願いいたします。

◎安齋意見発表者    全日本中学校長会の安齋でございます。2点にわたって意見を述べさせていただきます。
  まず、初めに地方教育行政の活性化についてでございますが、地方分権の動き、あるいは規制緩和の動きというのは、時の流れであるというふうに受けとめております。したがって、そういう中で、今後の教育行政の在り方を考えていかなければなりません。
  まず第1には、現在の教育委員会、特に小規模な市町村における教育委員会が、指導行政としての機能を十分果たし得ていないという問題があろうかと思っております。ともすると教育委員会のこれまでの学校への対応が、監督・命令・承認という傾向がなきにしもあらずでした。上意下達のこういった傾向を支援・助言という形に改めていくためには、どうしても教育委員会の指導行政の機能を充実させる必要があるだろうと考えます。
  また、教育行政の一般行政からの独立というのも極めて大きな問題です。教育行政がそれぞれの地方の事情に合った学校をつくっていくという意味では、自由な発想がより一層求められると考えるからであります。
  こういった二つの課題を解決するためには、長期的には学校区の設置といったようなことが必要であろうかと思っておりますけれども、我が国の国情、あるいはさまざまな細部に至る詰めを今後行っていくという意味からは大きな課題と受けとめ、当面は教育委員会を市町村の共同によって設置するとか、あるいは町村合併ということで、適正な規模の教育委員会をつくることが必要であると考えております。しかし、このことはもう一方、大き過ぎる教育委員会を適正な規模にするという点については、全く意味をなさないということで、必ずしも十分な方法であるとは考えていないわけであります。
  その上で、教育委員会について、先ほど申し上げましたように、今後、教育委員会の支援・助言の機能といったものを一層充実するためには、地方の教育をデザインする能力が強く教育委員会には求められると考えております。企画立案の機能を指導行政の機能にあわせて強化する必要があるだろうと考えております。
  また、現職研修も教育委員会の極めて重要な仕事の一つでありますけれども、より充実するためには、それぞれの地方の大学との連携のもとに、長期休業中の教員の研修を何らかの形で義務づけたり、あるいはその結果を処遇に反映するなどの工夫が必要ではないかと考えております。
  最後に、教育長に人材を得ることも一層重要になってくると思います。先ほど、首長部局からの独立ということを申し上げましたが、そういう意味からすれば、教育長の外部からの招聘や公募といったことも今後考えていく必要があるだろうと思います。
  第2点には、多様化する住民のニーズに対応した地方教育行政や学校の在り方についてでございます。
  教育委員会の活性化ですが、合議制の教育委員会の活性化がさらに一層求められるわけでありますけれども、地域住民に教育委員会の活動がより見えるような形での合議制の教育委員会が必要ではないか。そのためには何が問題になっているか、それをどう解決しようとしているか。すなわち、開かれた教育行政を住民の前に明らかにしていく必要があるだろうと思っております。
  また、同時にそのことは開かれた学校づくりでもあり、保護者や地域住民の意向を学校運営にどう反映させるかということも重要であります。こういったことの具体的な方策も今後検討されなければならないと思いますが、もう一方、住民の意向を的確に反映するというためには、校長の権限拡大と自己責任の明確化があわせて必要ではないかと考えております。
  今申し上げましたような学校運営の立場から、もう一つは教育活動という立場から、学校と地域との連携は、今後、一層重要視されてくる。そういう意味からいけば、各学校にということではありませんが、地教委あるいは幾つかの学校を単位としたものに対して地域との連携、あるいは学校運営の立場からの連携、教育活動の立場からの連携を一層進めるための、その仕事を専門とする職員の配置等が必要ではないかと考えております。

◎久野意見発表者    全国高等学校長協会を代表して意見を申し述べさせていただきます。
  まず、総論という形になりますけれども、戦後50年たつということであり、あるいは小学校や中学校からも話がありましたけれども、学校の自主性・自律性を強めていこうという立場からも、今後、教育行政制度を見直しする必要があると、そんなふうに私どもは考えています。その場合、一番肝心なポイントになるところは、教育行政の中立性と安定性をいかにして確保していくかということであると考えております。
  以下、私ども校長協会として一番関心のある部分に絞ってお話し申し上げます。
  まず、学校と教育委員会との関係ですが、一番大事なことは、それぞれの学校がいかに教育課程を弾力的に編成できるか。そして、特色ある学校づくりができるか。この点に教育改革の成否がかかっていると言ってもいいかと思います。
  その場合、現状も考えあわせて、いわゆる管理運営の適正を確保するということを前提にして、学校運営の弾力化を一層推進する必要があるだろうと考えております。私どもで言えば、東京都公立学校の管理運営に関する規則がございまして、それによっていろいろと制約が加えられているわけでございますが、こういったものについて抜本的な見直しが必要であろうと考えているわけでございます。
  学校の設置管理に関する責任は教育委員会にあるわけですが、学校の運営の責任は校長にあるということを前提にぜひ見直しを図っていただきたい。特に予算の執行権といいますか、その権限を大幅に校長に拡大するようにお願いしたいと考えています。しかし、それぞれの学校の自律性を強調する余り、学校の適正な管理運営をめぐって不当な関与を容認するといったようなことは、もちろん私どもとして望むところではありません。ぜひ校長のリーダーシップを支援するという方向で、校長の権限を強めるという方向で御検討いただきたいと考えています。
  もう一つ、私立学校と教育委員会の関係でございます。昨今、私立と公立のありようの違いが話題になっておりますが、そうした中でやはり私立学校についても、地域全体の教育にかかわるという意識をもっと強く持っていただきたいなと、そんなふうに考えることがございます。同じ公教育を協力して担っていくんだということで、ぜひ私立学校についても、教育委員会との緊密化をこれまで以上に強めていただきたいと考えております。逆に言えば、私立学校のほうも、教育委員会が持っている機能であるとか、情報などを、もっとこれまで以上に活用なさるのは大変いいことではないかと考えたりもしております。
  最後に、これも私どもは大変関心があるところなんですけれども、地方分権推進委員会から勧告が出ていると伺っておりますが、教育長の任命承認制の廃止という点でございます。いろんな場面で高等学校は都道府県の教育長から直接御指導をいただくこともあり、関心が特に強いわけでございます。教育長にどんな方がなられるかというのは、高校教育に大きな影響力があります。教育長に求められる資質・能力をどういうふうに確保していくかというのは、大変関心がございます。つまり、そういうことに十分留意して、制度をおつくりいただきたいと願うわけでございます。申し上げるまでもありませんが、教育の中立性の確保ということを十分配慮していただきたいたと考えております。

◎大南意見発表者    特殊学校長会の大南でございます。よろしくお願いいたします。
  3点について申し上げます。
  まず第1点は、盲学校、聾学校、養護学校の児童生徒の障害の状況等を考えますと、学校教育は教育委員会との関係だけではなくて、福祉・労働関係機関との相互の連携を深める必要があると思います。それは具体的には3点ございまして、まず一つ目は、児童生徒の障害の状態が重度重複化、多様化をしております。そのことによって、日常的な児童生徒の健康管理あるいは救急処置等のために、医療機関との連携を日常的に深めておく必要があると思います。
  二つ目は、生徒の卒業後の進路で、福祉との関係が最近かなり強くなってきております。その点で、福祉関係機関との連携を深めておくことが大事だと思います。福祉関係の方から言われますと、学校の教員は福祉のことをあまりよく知らないではないかと指摘をされているわけでございますが、私どもも勉強してまいりますが、ぜひこの点についても御検討をいただければと思います。
  三つ目は、障害のある方の法定雇用率が引き上げられましたが、卒業後の就労を促進し、企業での定着を図るために、公共職業安定所をはじめ、職業センター等、労働関係機関との連携を密にしていく必要があると思います。
  第2点は、学校運営の自主性の確立ということで、今までそれぞれの校長会からお話がございましたが、各地でいろんな工夫や努力がなされているわけですけれども、教育委員会との信頼関係を私どもはつくっていく必要があると思いますし、それから校長の学校経営の手腕が発揮できるような、学校の主体性が失われないような関係づくりが必要ではないかと思います。
  また、「学校を組織として活性化するために、副校長、教頭の複数配置等を」ということを書きましたが、盲学校、聾学校、養護学校の中には、教職員数が130ないし150にもなる学校がございます。これだけの学校を校長が一人で切り回していくというのは非常に困難な状況もございますし、幼稚園年齢の幼児から短期大学に該当するところまで非常に年齢層の幅が広い、あるいは複数の学科を持っているというような状況もございます。そういう点では、副校長あるいは教頭の複数配置を検討していく必要があろうかと思います。また、校長、教頭の人選に当たっては、適格者と言うのはちょっと不適切な言葉かもわかりませんけれども、校長、教頭にふさわしい人材を配置するようにお願いを申し上げたいと思います。
  第3点ですが、地域住民との連携協力です。これは中央教育審議会の第一次答申の中に、交流教育の推進ということがございました。この交流教育は学校間の交流だけではなくて、地域住民とのことも含まれていると思いますが、それぞれ地域の人的資源の調査を行い、交流活動に生かしていくことが必要だと思いますし、交流活動を進めていく中で、地域住民との具体的な連携の在り方、あるいは住民の協力の仕方が見つけられてくるのではないかと思います。
  二つ目は、地域に開かれた学校づくりということは、最近、いろんなところで言われているわけですけれども、具体的に保護者や地域住民の希望や意見を反映しながら、学校行事の計画実施、あるいは学校の施設設備の開放ということが大事になってくるのでないかと思います。学校建設あるいは改修に当たっては、地域に開放のできるようなシステムといいますか、方法を考えていく必要があると思います。
  三つ目に、学校週5日制が完全実施をされていくことになりますが、これは今度は幼児・児童・生徒が住んでいる各市町村段階で、休日等の地域での生活を充実したものにしていくために、担当する者の配置をしていくことが必要です。このことについては、盲学校、聾学校の、養護学校の教員が協力をしていくことが必要であると思っております。
  以上でございます。

○  大迫先生と安齋先生と大南先生に一つずつ伺いたいんですが、まず幼稚園の2番目の、幼児の教育センター的な役割を個々の幼稚園が果たすということで、具体的にどのようにイメージしていらっしゃるのか。それに対して、行政はどういうような支援をしていくことが必要なのかということです。
  それから、安齋先生には、住民の意向の反映・評価ということで、専任の職員を配置するということでありますけれども、もうちょっと具体的に、どんな職でいくのかというようなこと。
  それから、大南先生には、学校5日制を含む障害児にかかわる知識・理解を有する担当者の配置ということで、これは区市町村教育委員会とおっしゃっていますが、障害のある方の学校でいうと、県立とのかかわりの中でどう調整が必要かというようなこと。以上でございます。

◎大迫意見発表者    幼児教育のセンター的な役割ということですけれども、これは地域住民の子育ての支援ということで、子育て相談や遊び場の提供をすることです。特に保育所と幼稚園の合築というようなことが言われておりますが、そのときには、教育内容にもかかわってきますので、ぜひ保育者である、幼稚園教員と保育所の保母両者の研修ができるような幼児教育のセンターが欲しいということでございます。

◎安齋意見発表者    専任の職員を配置するという具体的なイメージについてのお尋ねがございました。私ども、この点については十分詰めておりませんが、例といたしましては、指導主事の兼務とするとか、あるいは再雇用職員を配置するとか、あるいは教育委員会に専任の職員を置くとか、そういうさまざまな方法があろうと考えております。

◎大南意見発表者    区市町村教育委員会に担当者の配置をということでございますが、これは盲学校、聾学校、養護学校を退職された方がいらっしゃいますし、特殊学級の経験者もおられると思いますので、ぜひそういう方をキーマンにしていただいて、具体的に活動にかかわるのは、盲・聾・養護学校等の教員に依頼することです。これは東京で今行われつつあるわけですが、盲・聾・養護学校の全教職員に1年間のうちどれぐらいボランティアとして、どういう特技があって、どこの地域ならばできるかというアンケートをして、それをそれぞれの区市町村が持っているというシステムをつくりつつありますけれども、そういうことがいろんな地域で可能ではないだろうかと思います。

○  三上先生と安齋先生にお尋ねしたいんですけれども、2点ございます。1点は三上先生にお尋ねしますが、いただきました資料の5ページのところですが、「II―(1)   ―i)」に「地域の代表である教育委員と地域住民との関係の在り方について検討する」とありますが、もうちょっと具体的に言っていただくとどういうことになるかということでございます。
  もう一つは、三上先生と安齋先生のお話を伺っていまして、三上先生のほうからは、地方教育行政と一般行政とがもう少し結びついたほうがいいのではないかという観点のお話があったかと思います。学校や何かに一般行政の人も出てきてほしいというふうなお話があったわけです。安齋先生のほうからは、むしろ教育行政と一般行政とはもっと独立したほうがいい、教育行政の独立という観点を強調されたと思いますが、それぞれどういう問題点をお感じになって、それぞれの御発言が出てきているのか、その背景を少しお話しいただければと思います。

◎三上意見発表者    教育委員と地域住民との関係の在り方ということでございますが、現状でも各地教委においては、教育委員さん方が地区を回りまして、地域懇談会といったことで地域の方々からじかにナマの声を聞くという場を設定しているところもございます。しかし、すべての地区ではございません。教育委員さん方と地域の方々との直接的な話し合いの機会は、現状ではまだ少ないように思っております。
  したがいまして、学校と地域との話し合いなどの場に、ぜひ教育委員さん方にも加わっていただきたい。あわせて、その場に一般行政の関係者の方々にも加わっていただいて、幅広く学校運営の在り方等についての意見を反映させる、そういう機会をつくっていったらどうかということでお話し申し上げました。以上でございます。

◎安齋意見発表者    私のほうから、教育委員会を首長部局と切り離して対等な関係にしてはどうかということを申し上げたわけでございますが、現在、多くの教育委員会がそうだと思いますが、議会への対応が極めて重要な教育委員会の仕事になってきております。指導主事は学校への指導・助言ということよりも、議会対応をどうするか、答弁資料をどうするか、あるいはそのための資料をどう収集するかということに、実は翻弄されているのが現状ではないかと考えているわけでございます。
  もう一つは、教育委員会そのものが予算権等も持っておりませんので、具体的な地方の教育をデザインできない、デザインしても具体的な力がない、こういうことが一方にあろうかと思います。先ほど、長期的にはということを申し上げましたが、短期的には、当然予算権もないわけですから、私の申し上げた二つの点では解決策にはならないわけですが、長期的にはそういうことをイメージして、独立の関係にしたほうが、より豊かな教育行政が創造できるのではないかと、こう考えて申し上げたわけでございます。

○  久野先生にちょっとお伺いしたいんですが、全国高等学校長協会は、私立学校のことについてこういう発言を正式に文章としてお出しになれらたんですが、これは全国高等学校長協会の中で、私立学校代表者も入れた会議か何かをして、このような文章をまとめられたのでございましょうか。

◎久野意見発表者    この文章を作成するに先立って急遽会議を開いたということはございません。ただ、かねてからさまざまな形の公立と私立の隔たりみたいなことをたびたび話題にしております。学校週5日制を迎えての問題とか、中学校からの受け入れをどうするかといったような問題とか、そういうところでなかなかうまくいかない。もっと教育委員会でうまく調整してもらえないかといった意見は、私立側にもおありなのではないかと思います。

○  小学校と中学校からの御意見を聞きながらお伺いしたいと思いましたのは、『論点整理』のほうでも、校長先生のところに権限を移していく、その意味で、基礎的なところで分権化するということになっていて、それに対して基本的には御賛成であると伺っているわけですが、そのときに人事権と予算権ということで議論をすることが多くて、ここでもそれが取り上げられているんですけれども、具体的に言うと、人事権ということで、どういうことがあればやりよくなるということなのか。予算の編成に参加するということと、執行の自由を大きくするということとはまた違うと思いますけれども、その辺、予算についてもどういうことをやれたら随分やりやすくなるんだということについて、もしお聞かせいただけることがあれば伺いたいと思います。

◎三上意見発表者    それでは、校長の権限拡大に関連しまして、人事権に関することでございますが、特色ある学校づくりを進めていく場合、何といっても人的な整備が一番重要であります。校長はそのことで一番頭を痛めているかと思います。現状でも、地教委を通しまして、校長の意見はいろいろ聞いていただいているところですけれども、実際は校長の思うような教員の配置が十分できていないという現状があろうかと思います。したがいまして、現在の制度の中でも、できるだけ校長の意見具申を反映させていただけるような方向での御検討をお願いできればという意味でございます。
  予算権につきましては、学校への配当予算は校長の権限で執行できるような仕組みになっておりますけれども、区教委からの令達の仕方は、節・目、それぞれ科目に分かれており、その範囲内での執行という制約がございます。特色ある学校づくりを進めていく上で、かなり思い切った予算の執行ができるような校長の権限が得られればということで申し上げました。

○  大迫先生にお伺いします。先ほど、個々の幼稚園が幼児教育のセンター的な役割ということでお話を伺ったんですけれども、それは理解したんですが、ただ、ここにも3年保育、預かり保育と書かれているように、幼稚園と保育所の関係がだんだん近寄ってきていると私どもは受けとっているんです。そういう中で、一緒になるようなときのための幼児教育のセンター的な役割というお話を先ほど伺ったわけです。例えば、所轄が違うわけですけれども、地方教育行政の中においては、そういうものが一歩ずつ進められているというような取り方でよろしいのでしょうか。

◎大迫意見発表者    今、地方教育行政の中では、幼稚園・保育所両者の保育者を対象とする研修機能を持っている幼児教育センターは、それほど進められているとは思いません。それで、ぜひそういうことも考えていかなければならないと考え、申し上げました。

◎安齋意見発表者    先ほどの委員の御質問に中学校に関することもありましたので、お答えします。予算の問題については、小学校と全く同じ考えでございまして、流転用や高額備品の購入についての校長の権限を一層拡大していただきたいということでございます。
  人事につきましては、私どもとして一つの意見にまとめることができませんでした。校長の権限の拡大と言いましても、広域的な人事ということを考えたときに非常に難しい問題が出てくると思います。人事における校長の権限をどこまで拡大するのかということは、これからの課題だろうと思っています。もうちょっと吟味検討が必要であると思っております。

○  中学校長会の方から、教育委員会の首長部局からの独立ということをお話しでございましたけれども、それは教育委員会の仕事をどの範囲というふうに想定なさって独立を主張なさるんでしょうか。範囲によって違うような気がします。

◎安齋意見発表者    教育委員会の仕事は現状どおりです。学校教育、それから社会教育、その範囲を考えております。

○  小・中・高に共通した問題としましては、学校管理規則の見直しを御提言いただいているんですが、これは要するに地教行法の、例えば33条そのものに問題があるとお考えなのか。おのおのの市町村の教育委員会レベルの規定ぶりに問題があるとお考えなのか。全国組織の校長会でいらっしゃいますので、当然、全国で違っていることもあろうかと思いますが、それを通して校長会として見直しというご提言をいただいていますので、法のレベルの問題をお感じかどうか、その点についてお答えいただきたいと思います。

◎三上意見発表者    小学校の立場でございますけれども、今お話にございましたように、全国でさまざまな規則が決まっているかと思いますが、管理運営規則が定められてから相当の年数がたっているわけですけれども、今の世の中の変化に対応して、やはり中をもう一度見直していただくことと、そしてこの中に校長の職務等についても触れてございますが、校長の権限の拡大などに伴って、そういった職務内容についても御検討いただきたいということでございます。
  それから、先ほども申しましたけれども、教育委員会へのいろいろな報告等の文書等は膨大なものがございますが、そういった面についてももう一度見直しを図っていただきたいということでございます。

◎安齋意見発表者    地教行法の問題というよりは、教育委員会規則の問題であると考えています。例えば、都道府県教育委員会が公立学校の管理運営に関する規則の基準を示しますと、ほとんどの市町村がそれと同様のものを出してしまう。それぞれの地域の実態に合った、先ほどデザインの問題を申し上げましたが、自分の地域学校教育をデザインして、そこに合った規則をつくっていくことが必要です。ぜひ地方の力でもって変えていくということでよろしいのではないかと考えております。

○  質疑応答は以上にさせていただきます。
  どうもきょうはお忙しいところを貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。今後もよろしくお願いいたします。
  続きまして、全国公立小中学校事務職員研究会会長の加藤善久さん、市川市立養護学校の事務長でございます。それから、全国公立高等学校事務職員協会会長の栗田久さん、東京都立戸山高等学校の事務長でございます。それに全国公立学校事務長会会長の金子博隆さん、東京都立九段高等学校の事務長でございます。
  お三人の方からそれぞれ御意見をお伺いしまして、その後、質疑応答をお願いいたしたいと思います。
  それでは、加藤さんからよろしくお願いいたします。

◎加藤意見発表者    失礼いたします。私ども全国公立小中学校事務職員研究会  ―略称「全事研」と申します  ―は、全国の義務制の小・中・養護学校に勤務する事務職員の団体であります。
  まず、私ども全事研に発言の機会を与えていただきましたことに対し心より感謝申し上げます。私は全事研の会長として、全国4万5,000人の事務職員の声を代表して発表いたしますので、よろしくお願い申し上げます。
  まず、現在の学校は、授業などを行う直接的な教育系列と、その管理運営を行う事務・経営系列の二つの軸を持つ組織体であります。私たち事務職員は経営系列の責任者であります。資料の冒頭に、「校長は経営者として位置づけ、事務職員からも登用する」という少々乱暴な意見を書かせていただきましたのも、これからの学校には経営、すなわちマネジメントの視点が必要だと考えるからであります。しかし、残念ながら、今の学校の実態は、せっかく有能な事務職員が配置されていても、十分に活用されていません。これまでの地方教育行政の中で一番立ちおくれているのが学校事務部門の整備であります。
  学校教育法28条にいう「事務職員は事務に従事する」、学校教育法施行規則22条5項にいう「事務主任は校長の監督を受け、事務をつかさどる」という規定がありながら、地方教育行政の中でその趣旨が十分に具体化されておりません。例えば、全国的に見ると、事務職員の職務内容を明示しているのが、群馬、東京、山梨、静岡、愛知、香川、徳島、愛媛、高知の9県であります。運用規程を持つ県を含めましても13県にすぎません。学校予算執行にかかわる通知「財務取扱要綱」等も、札幌市、高崎市、千葉市、横浜市から東京都区まで30数市であります。全国3,300の市町村のうち1%にも満たない数字であります。
  しかし、私たち事務職員は、学校教育に貢献し、支えているという自負、教育行政を担っているという自負のもと、誇りと自信を持って仕事をしています。特に、通知の出されている都市におきましては、学校予算にかかわって、事務職員が財務の責任者として積極的に生き生きと仕事をしています。今後、全国の教育委員会において、職務内容の明示が速やかに行われ、かつ財政制度の確立のため、学校財務取扱規則や学校運営費標準の規定化が必要であると考えています。
  学校運営を担う部門である事務室は、本来なら高校並みに4名から5名の事務職員がいてもおかしくないと考えています。しかし、私たち小中学校の事務職員は、1校1名ないしは2名という配置の中で、幅広い職務を遂行しています。今後、教育委員会と学校との役割分担の見直しの中で、多くの権限が学校におろされても、十分に対応できると断言します。
  これからの学校事務の効率化・能率化を考えるとき、真に行政サービスを担う学校事務は、例えば各学校で定型的に行っている事務、教職員の給与・諸手当等は、学校間連携で集中して行うとかの工夫も必要です。また、学校間連携は、経験の浅い事務職員をベテランの事務職員が指導・助言・支援するというOJT、職場内研修という視点でも極めて有効であります。事務職員の研修についても、まことに不十分であると言わざるを得ません。学校に1名しかいないという状況にあって、研修制度の充実は必要不可欠ですし、また事務職員にとって実効ある研修の計画立案は、やはり事務職員が行ってこそ実のあるものとなります。
  事務職員出身の指導主事を教育委員会に置くことも必要だと考えます。奈良県、大阪市、京都市では、事務職員の指導主事が大きな成果を上げております。事務職員制度が確立し、学校経営において学校事務が十分にその機能を発揮することなしには、学校教育の活性化はないと考えています。
  以上、児童生徒の健やかな成長を願う学校職員として、また21世紀を見据えた新しい学校の在り方について、学校で唯一の行政職員としての立場から意見を述べさせていただきました。

◎栗田意見発表者    全国公立高等学校事務職員協会の栗田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
  「今後の地方教育行政の在り方」について、全国の公立高等学校事務職員研究団体の意見を申し上げる機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。私どもは、このたびの「今後の地方教育行政の在り方」についての御審議に当たって、学校運営全般の御検討をいただくことに対して、大きな期待を持って審議を見守っているところでございます。
  これまでは、学校の教授指導面へのさまざまな提言を示されて、学校教育が進められていることは、周知のとおりでございます。
  しかしながら、現在、学校現場ではそれぞれ学校の伝統や地域性等を配慮しながら教育目標を立てながら、その達成に向けての教育活動に取り組んでおります。しかし、現在取り組まれております教育改革の推進では、これまでの内容と異なり、学校教育の根幹にかかわるものがあると思っておりまして、その実現には新たな取り組みと重大な決意が必要であると考えております。
  したがって、全国公立高等学校事務職員協会代表の立場から、主として「学校の自主性・自律性の確立」という観点から、2点について御意見を申し上げたいと思います。
  まず、第1点でございます。学校運営活性化のための管理運営組織の整備ということでございます。
  学校を取り巻く環境の変化は、情報化の進展、あるいは少子化傾向、生涯学習への対応、学校教育の国際化など急速であり、学校教育に対する要請や期待する内容も様変わりして、現実の運営面との間に乖離が生じております。この乖離した状況を改善すべく、高等学校では教育改革が進められていると認識しておりますけれども、これまでの教育指導面からの改革推進の取り組み方だけでは、実効ある高等学校教育の改革はできないと、そのように指摘しておきたいと考えます。
  まず、既に御指摘にありますように、「学校運営における校長のリーダーシップ」をいかに発揮できるようにするかでありますが、学校運営を組織的に強力に進めることができるように、校長を補佐する管理運営のための組織の整備が必要であるということを述べたいのであります。
  新しい学校の管理運営組織では、OA機器を活用しながら校務を再編成するということと、現在の職員会議を中心とした学校運営の在り方を見直して、教育課程の編成など校務分掌を一度解体して、学校が迅速・的確に諸課題に対処するための意思決定機関としての学校組織の確立が必要であると考えているわけでございます。
  学校の管理運営組織を、例えば、教育指導組織と経営事務管理組織とに分け、この両者の相互牽制によって緊張関係を維持しながら、教育目標の達成を目指すことが必要であります。そのことにより学校は国民の期待に沿った公の教育機関として組織的、計画的に、しかも継続的に行う意識的な教育活動を確実に押し進めることができるものと確信します。そういうことによって、教員が主として行う教授・指導活動以外の業務は、すべて事務管理として行うことを提言したいと思っております。教授・指導にかかわる情報管理についても、情報開示請求でありますとか、プライバシーの保護でありますとか、その処理手続等の透明化などの扱いは、他の情報管理と同様でございますので、事務職員はこれらの情報管理活動を、従来の「情報を処理する」活動から、情報を活用して特色ある教育活動を展開するための「政策を創造する」活動と位置づけて、より一層重要な役割分担に耐え得るよう、自己の持つ能力をさらに高めて、自己啓発に努めているところでございます。
  2番目でございます。校長の職務権限の拡大についてでございます。
  学校の職場は、職員数の上だけではなく、歴史的にも本質的にも教員社会であると言われています。そこでは、すべてを建前で議論するが、本音は別にあり、また何を議論するにも「教育上の配慮」がついて回るという現実があります。学校の経営責任は、法律的には設置者である教育委員会ということになっておりますが、この基本に立って、教育委員会と学校が協働の関係に位置づけられることも明白であります。
  しかし、個性を生かした教育目標を掲げた特色ある学校づくりを進める観点から、「学校の自主性、自律性の確立」を図り、地域社会に開かれた学校とするためには、学校の運営管理の責任者であります校長に予算編成の権限の付与、執行権限の拡大などの職務権限の大幅な拡大がぜひとも必要であります。
  しかし、その際、学校予算編成については、一定の制約はやむを得ないとしても、学校の必要に応じた所要額を把握し、積み上げ積算した上で、予算編成を行うこととします。そのためには、さきに述べました新しい学校運営管理組織の整備が必要であると思っているわけでございます。学校の経営の感性は、学校だけが特別ということではなく、企業等一般社会でも通用するものでありますが、学校職員全員がそれを共有し、一丸となって組織目的を達成することにあります。そして、その目的達成度は、児童生徒や保護者等を含む市民の満足度によって測られるものと思います。その評価項目は地域社会に開かれたものでなければなりません。
  児童生徒、市民の方向を向いて仕事をするということ。
  仕事のマンネリ化をいつもチェックするということ。
  コスト意識を忘れない。
といった、組織構成員の経営感性を高め、組織の有機的な効率化を図る必要があると考えております。
  学校教育の推進は教員だけのものではない、学校内だけで完結する時代は過去のものになりました。21世紀社会に向けての学校組織には、特に事務管理組織の整備が急務であり、そのための人的・制度的なフレームワークの整備が緊急の課題であると考えています。
  以上、2点について、意見の表明を終わります。

◎金子意見発表者    全国公立学校事務長会会長、金子でございます。大変貴重な時間をいただきまして、感謝申し上げます。
  私たちの会は、政令指定都市を含みます53都道府県市の公立の高等学校並びに盲・聾・養護学校4,600余名の事務長で組織している会でございます。私たちも、事務研究会並びに協会さんが申し上げたとおり、4点にわたりまして意見を述べさせていただきます。
  第1点、学校における意思決定権についてでございますが、現行の法体系では、学校における意思決定権は校長にあると定められておりますが、校長は事実上、教職員以外から任用されることがないため、行財政の知識及び意識が一般的に希薄であると思っております。
  しかしながら、公立学校は行政の一機関である以上、私たちは歳入・歳出・契約・給与・人事・服務・財産管理・物品管理・文書管理等、幅広く管理業務を所管しております。また、今日、情報開示、住民監査等、いろいろな社会面の上で業務が増えております。また、少子・高齢化に伴います福祉施設との複合利用等、行政的・管理的業務は増加の一途をたどっております。
  また、一方において、生徒の多様化に伴います各種の教育改革や、いじめ、不登校等、また体罰等の教員の不祥事の急増など、早急に解決しなければならない教育上の課題が山積しております。
  学校における上記の現状をかんがみまして、公立学校が引き続き生徒、保護者、また住民の信頼を維持し、責任を持って諸課題の解決に取り組むためには、校長の権限と責任をスリム化し、より一層教育指導面に専心できる体制を確立することが望まれております。
  そのために、学校における意思決定権を教育指導面と行財政面とに分化し、前者の権限を校長に、後者の権限を事務長とすることが、現実的な方策と考えております。このことによりまして、教育の諸課題解決と人間性豊かな教育の実現が図られ、あわせて行政機関として責任のある効率的執行体制が確立されるものと考えております。
  また、校長職の活性化のために、一定の要件のもとに行政職員や民間人からも校長任用が図れるよう、積極的な制度改正を検討することをお願いしておきます。
  二つ目といたしまして、ちょっと乱暴かもしれませんが、教員の職階制の導入でございます。現在の教員社会における職階は、校長・教頭・教諭のほぼ3段階でありますが、教諭職につきましては職階は存在しておりません。主任制度は年度ごとに校長が任命するにすぎず、組織としては必ずしも機能していないのが実態でございます。したがって、校長・教頭の下部は、教員が横一線にいる状態でございます。学校の教員社会には組織は存在しておりません。しかし、教諭は数十名から大規模校では百数十名に及んでおります。これだけの集団を職階なしで指揮監督し、校長は適切なリーダーシップを発揮して、学校運営に当たるように求められても、実効性に欠けるのが実態ではないでしょうか。
  校長が適切なリーダーシップを発揮するためには、少なくとも教諭職を3段階に格づけする必要があると考えております。以前にも文部省が5段階方式を御提案した経緯が過去にございますが、これは例えばの件でございますが、常勤講師・教諭・主任教諭とし、おのおの昇任は能力実証を義務づけ、主任教諭を一定年限経験後に、教頭昇任試験の受験資格を付与する、これらの方法が現実的ではないでしょうか。
  3番目。学校内における諸会議の在り方についてお願いいたします。
  学校には、職員会議を初めといたしまして、各種の会議がございます。また、各種委員会  ―東京を例にとりますと、校内予算の配分に関する委員会、教員の担当分掌を定める委員会、教育課程を検討する委員会、施設に関する委員会等、多く存在しております。しかしながら、これらの会議は、教育委員会の管理規則等で定められたものではございません。学校ごとに校内内規に定め、運営しているのが実態でございます。
  学校運営に関するほぼすべての事項が、この各種会議、各種委員会で審議され、事実上決定されております。したがって、校長の意思決定権は相当部分が空文化し、責任の所在が極めて不明確な運営がなされております。また、校長が職員会議の結論に反する意思表示をすれば、会議は紛糾し、しばしば学校運営に支障を来しているところでございます。学校における日々の運営を円滑に進めるために、各種の会議が必要なことは当然でございますが、これら職員会議等を意思決定権者の補助機関として、教育委員会の管理規則等で所要の規定整備をお願いするところでございます。
  4番目。学校と教育委員会の情報ネットワークでございます。
  公立学校が、生徒、保護者、住民に対して責任を持って教育サービスを提供していくためには、教育委員会と学校が一体となって、設置者責任を果たしていく体制の確立が不可欠と考えております。そのために、学校事務室または学校と教育委員会の情報ネットワークの構築が必要と思います。各学校で生ずる個々具体的な課題を、教育委員会として確実に受けとめ、学校と教育委員会が一体となって課題解決を図るシステムが、責任ある文教行政の姿ではないでしょうか。ぜひ学校の自律性を担保する上で欠かせないことと思っております。
  以上、4点御意見を述べさせていただきました。ありがとうございます。私たちも教育を語る事務長になるべく、研さんを積んでいるところでございます。よろしく御審議のほどお願いいたします。

○  小・中学校と高校では事務職の仕組みが全然違うので、主に小・中の全事研のほうに質問したいんですが、一つは、これからの学校経営の能力の向上とか責任、親とか地域へのいろんなサービスということを考えた場合、学校事務職員の果たす役割というのは、これから増すだろうということを前提にして、その在り方をどう変えるかということにかかわって質問します。
  一つは、「学校事務の識見と経験を有する事務職員を指導主事として、教育委員会に置く」ということですが、今、全国的には二つ三つ実際やられているということですが、実際どのようなことを指導主事として学校事務職員がやっているのかということ。
  もう一つは、教育委員会に学校事務職員出身の指導主事を置くというのは、従来の指導主事とか、管理主事とは違うような新たな指導主事の領域をつくっておけということなんでしょうか。つまり、学校経営とか、学校事務の領域は非常に重要になるから、そのような教育委員会の指導を高めるために、新たな領域の指導主事を置けという意味で、ここに書いているのかということ。
  二つ目は、10ページですけれども、校長を補佐するということで、教頭が教育指導部門で、事務職員は経営部門で補佐するということですが、これは事務職員の今の職務の明確化が不十分で、そうしたことをきちっと例えば学校管理規則等々に明記するというふうな、職務の明確化ということで進めていこうとするのか、それとも例えば教頭複数制をとって、一人の教頭に学校事務職員を登用できるような道を開いて、教頭への登用の仕組みをつくった上で、校長をそういう形で補佐するというふうなことを見通しての考え方なのか、それとも両方含めてやってくれというような主張なのかということを聞きたいんですが。

◎神谷全国公立小中学校事務職員研究会副会長    それでは、私のほうからお答えをさせていただきます。全事研の副会長をやっています神谷と申します。
  まず1点目の指導主事の部分ですけれども、先ほど申しましたように、現在、奈良県で事務指導員という形で配置をされております。あと政令市では大阪市と京都市で事務指導主事ということで配置をされておりまして、その職務内容ですけれども、事務職員の研修についてのプログラムを企画をすることが主な業務内容になっているようです。あわせて、学校訪問という形で、校長先生あてに学校運営のいろんな問題点等について意見をお伺いしたり、指導・助言をするということが主な内容になっていると聞いております。
  私どもも全国的に見ましてもまだまだ研修制度が少ないという中では、優秀な事務職員も数多くいますので、指導主事という立場で、学校経営について考えていくこともぜひお願いしたいと思っています。管理主事ということになりますと、あくまで行政の教育委員会側の立場という部分がありますので、私どもはあくまで教科だけではなくて、領域の部分という意味合いで、学校経営、学校運営についての指導・助言を行うということもできるのではないかと考えています。
  2点目の経営部門については、二つ考えがあるんですが、一つは先ほど先生がおっしゃられましたように、事務職員の職務内容が全国的にはっきりしているという状況ではまだまだないんですけれども、そういう確立の部分と、あわせて教頭が複数ということも、これは一つの考え方なんですが、教育部門は教頭、それから経営部門は副校長というようなことも考えられるのではないかと思っております。

○  全事研の加藤さんにお伺いします。いろいろ示唆に富む提言もあるんですが、一、二お尋ねをしておきたいと思います。
  御指摘のように、今までの学校が経営というか、マネジメントという点において、非常に弱かったというか、そういう視点が希薄であったということは、そのとおりだと思うんです。その意味で、事務職員の責任と権限を明示する必要性の妥当性については、私も基本的に理解はするんです。
  ただ、全体的な文言からしますと、校務分掌等の中でも経営部門ということだけで完結するような考え方がどうもあるんですが、やはり教授スタッフと経営スタッフを考えても、今の小・中学校の場合は、そこは相互に協力し合うという相互乗り入れがないと、教育活動の面と経営管理面というふうに画然と分けるというのは、現実的には非常に無理があるだろうと思います。就学援助事務とか、いろんな事務にしても、それぞれの学級担任とも協力しなければなりませんから。そういう意味で、完結的に事務職員、あるいは副校長等を設けたとしても、そこは相互乗り入れをしながら、全体の教職員の協力、協働によって、学校全体を活性化するということが必要だと思うんですが、あえてそういうふうに分けられたというのはどういう意味なのか。
  それから、将来的にはそういうことも考えられるかもしれませんけれども、今の教特法の関係からいって、学校事務職員の方が校長をやるということは、現実的には教特法そのものの改正ということまで伴う問題でありまして、そこまでいくというのは相当な年月を要する問題ではないかと思うんですが、あえてそういうことを、やや暴論に近いというお断りはあったんですけれども、どういう議論経過があって、そういうことをなさっているのか。
  それと小・中の場合、かなり小規模の学校が全国的に多いわけで、高校のように事務長制を義務制の場合に入れるというのは、今すぐというのは非常に無理があるのではないかと思うんですが、その辺のところについて一つお尋ねしておきます。

◎加藤意見発表者    お答えします。まず、基本的には、教育系列と経営管理系列というふうに柱立ててやっていくという考え方は、今の義務制においても必要だと考えます。ただ、人的スタッフとして、1名ないし2名という非常に少ない、また、ただいま御指摘のように、3学級とか、4学級とか、そういう規模になってきますと、当然、一人という話になってくるわけですけれども、それでやっている事務の内容は大変広範にわたります。ただ、現実には今のスタッフの中で、事務内容の質的なものを見て、主たるものについてはやはり事務職員が少なくともかかわっていく。当然、先生方の協力も得なければなりません。そういう形で協力していただくということが、これからも当然続くだろうと思っています。ただ、スタッフ的には、これからも人的に保障されるという見通しもありませんので、今の中で、特に事務管理系列の内容を充実させるということと、そこがしっかり根本的に頑張らないと、学校経営全体がゆがんだ形になってくるだろうと思っております。
  ですから、就学援助等のような場合に、担任がそれを行った場合に、当然、本来の指導活動というか、専門としている部分をなおざりにしてそれに当たるということになりますと、本来の教育活動に支障が出るだろうと思っています。そういう意味では、父母とより近いところにいる事務職員が、それをしっかり担当して処理していくということ。そういう部分での職務内容の明確化とかかわってきますけれども、もう少し明確にして、事務職員の役割をはっきりさせていきたいということです。
  それから、事務職員が校長にというのも、乱暴だというふうに私は言いましたけれども、すぐに現実に我々が校長になるなどというふうには考えておりません。ただ、今の閉塞した状態といいますか、いじめ、不登校等の問題を抱えていて、学校全体が病んでいるときに、私たち自身も学校職員として非常に心を痛めております。その中で、教員がそれで専業なんだというふうに割り切らないで、もう少し広く知恵を出し合うという、教職員が協力する形でそれに取り組んでいくことが必要だと思います。開かれた学校というのは、何も地域とか、学校以外の者に対して開かれているだけではなくて、学校内部においてもそれを開いていくことが必要ではないかと考えます。ですから、全教職員が一丸となってそれに取り組むという体制、お互いの共通理解の中で専門分野をしっかりやるという方向性が必要ではないかと私は考えます。

○  全事研の方にお尋ねしたいんですが、運営費標準を改めて御提起されているんですが、30数年前にこれが出されたときは、たぶん教育費確保が難しくてという、そういう背景は理解できるんですけれども、今の時点で、逆に学校の自主性を制限する側面があるかと私は思うんですが、あえて今の時点でそれを拡大せよという御提言は、今言った点とかかわってどうでしょうか。

◎神谷副会長    運営費標準については、導入されている都市と、それがない都市とありまして、ない都市のほうが多いんですけれども、一番の問題は、学校が1年間子どもの授業を含めて管理運営をやっていくときの財源として、最低保障の運営費標準がなければ、非常に希薄な予算の体制になっているのではないかと思うんです。そういう意味で、最低保障を確保するということでは、運営費標準は必要だろうと考えています。あと具体的に、それで束縛をされるかどうかという部分については、運用の部分で現実的に中野区だとかでやっておられるところがありますので、運営の中では、学校の独自裁量という部分に矛盾を来さないで運営していけるのではないかと考えております。

○  お三人の方に御出席いただきまして、お忙しいところをありがとうございました。大変貴重な御意見をいただきまして、今後の貴重な参考にさせていただきます。
  それでは続きまして、全日本教職員連盟事務局長の細川浩二さんから御意見を伺って、その後質疑応答を行いたいと思います。
  よろしくお願いいたします。

◎細川意見発表者    意見発表を、私、事務局長の細川が申し上げたいと存じます。よろしくお願いいたします。
  まず、大きく3点挙げてございますが、まず1番目といたしまして、学校と教育委員会との関係の在り方についてでございます。
  まず最初に、学校の経営責任の明確化と自主性・自律性の確立を求めたいということでございまして、地方分権の推進及び地域社会に開かれた学校づくりという観点から、今後は従来のような単なる学校運営というようなことではなくて、自主性と自律性を持った経営という形で学校の経営を進めていただきたいと考えております。その際、次に申し上げる諸点について留意することが重要だと思います。
  まず、予算執行、人事管理及び教育課程の編成等について、学校のとりわけそのリーダーたる校長の裁量権を拡大することと同時に、本庁の課長級以上の格づけをすること。現在、格づけで申し上げますと、課長補佐級といったところでございます。
  次に、特色ある学校づくりを支援し、また地域住民の意向等を踏まえた学校経営を行うことが非常に大事かと思いますが、そういった際に、校長の諮問機関  ―地域住民も参加した形での諮問機関を設置する。ただし、その際には、一部の偏った考え方のみが取り入れられることのないよう、その人選及び運営の仕方について十分な工夫をすることが必要ではないかと考えております。
  なお、これにつきましては、現在、PTAという組織もございますけれども、もちろんこういった組織の再活性化ということも視野に入れての提案でございます。
  続きまして、国民教育としての義務教育といったことの重要性を考えた場合に、義務教育諸学校におきましては、学習指導要領の内容、これは大綱的基準ということで判例でも確定しておりますが、そういった内容と学校の教育目標や教育課程が極端に違うような形で学校の教育が実施されるといったようなことが起こっては困りますので、そういったものと学習指導要領の内容との整合性をチェックしながら、一部の教職員集団等の教育介入あるいは偏向した教育の実施等で不当な学校支配が行われることのないように、必要に応じて強制力を持った改善命令等が出せるような学校外の監査機能もあわせて必要ではないかということで、自主性・自律性の確立とともに、経営責任の明確化もあわせて行わなければならないという流れの中で、こういった留意点が必要ではないかと思います。
  続きまして、学校を支援する教育委員会でございます。これにつきましては、従来のともすれば学校を管理する委員会といったような形のものから、自主性と自律性を持った活動を教育委員会がどしどし支援をしていただきたい。また、学校が例えばいじめ、校内暴力等の生徒指導上の諸問題を初めとした、何らかの危機に直面したような場合には、速やかに人員あるいは予算面での一時的な措置でも結構ですので、そういったものを可能にするような条件整備が必要であると考えております。
  大きな2番ですが、教育委員会の事務処理体制の在り方についてでございます。まず、都道府県教育委員会と市町村教育委員会の役割につきましては、それぞれが役割分担を明確化するとともに、重複がないようにお願いしたいということでございます。そこに例として挙げておりますが、国・都道府県・市町村が同様のテーマで研究指定を行っている場合が多々ございます。こういったことを交通整理して一本化することで、学校におりてくる研究費も潤沢になるのではないかと考えます。
  それから、市町村教育委員会の拡充ですけれども、これは地域密着型の教育経営の主体であるという認識を持って、市町村教育委員会については拡充をお願いしたい。
  それにつきましては、完全学校週5日制の実施を踏まえながら、今後、学校・家庭・地域社会が連携をするといった場合、従来からも言われておりますが、なかなか実効性がありません。したがいまして、市町村教育委員会が連携の旗振り役として中心になって、こういったものを総合的に演出したり機能させるという条件整備の役割をしていただきたいということでございます。そのためには、ある程度の業務につきましても、市町村から都道府県への移管といったことも含めて、新しい形での市町村教育委員会の在り方を考えていただきたいということでございます。

○  貴重な意見発表をありがとうございました。
(質疑なし)
  それでは、続いて全日本教職員組合中央執行副委員長の松村忠臣から御意見を伺って、その後質疑応答をお願いしたいと思います。松村さん、よろしくお願いいたします。

◎松村意見発表者    失礼いたします。御紹介をいただきました全日本教職員組合の松村と申します。
  求めに応じまして、「地方教育行政の在り方」について、私たちの基本的な考え方を述べさせていただきます。文書でも提出をさせていただきましたように、地方教育行政の在り方を考える上で、重要な点だと思われる第1は、やはり子どもと教育をめぐる状況をどう見るのか、とりわけ教職員や学校のリアルな実態を教育行政としてどのように見ていくのか。言葉をかえるならば、子どもたちの人間的な成長や発達を保障するという教育の目的から見て、何が今、教育行政、とりわけ地方教育行政の課題なのか。その中で、地方教育行政が担うべき課題は何かということを、明らかにしなくてはならないと考えております。
  御承知のように、いじめや登校拒否・不登校の増大、さらには最近私どものさまざまな会議でも、「学級崩壊」と呼ばれるような新しい「子どもの荒れ」という事態が進行しております。これらの事態が一体何を意味するのか。私たちは、これは子どもたちの叫びであり、学校教育、あるいは教育行政や社会のあり方に対する警告ではないかとか考えております。
  そうした中で、とりわけ教育行政が進めている教育課程行政、あるいはこれに深く関係をした教職員の研修、あるいはここ数年地方教育行政のもとで進められています高校入試制度の改変や多様化など、また教育委員会の本来の仕事である教育条件の整備など、地方教育行政がそのシステム、運営、施策を全面的に真摯に分析、検討、総括をすることが求められているのではないかと思います。
  私が改めて言うまでもなく、学校は何よりも子どもたちが本当に学ぶことを喜びと思えるような学校、そして学ぶことを通して未来に向かって希望をはぐくむ、本来楽しくて、最もいきいきとした人間的な場でなくてはならないと考えます。直接学校教育にかかわる教育行政は、とりわけ今言った学校と教育の営みにふさわしい内容と方法が考えられなくてはならないと思います。
  そうした観点から考えますと、私たちの意見書に示しておりますように、これは極めて当然とも言えるものであると考えますが、五つのことを主張させていただきました。時間の制約上、すべてにわたって述べることはできませんので、三つの点を中心にお話しさせていただきたいと思います。
  第1は、地方教育行政は何よりも憲法や教育基本法、地方自治の原則、さらには子どもの権利条約をはじめとした、人権や教育に関する今日の国際的な合意事項に基づいて進め、教育基本法第10条が示しておりますように、教育条件の整備を主たる任務として行われるべきだと考えます。現状を見ますと、この理念と原則にそぐわない地教行法、あるいは管理規則など、そういった制度、行革や財政危機などを理由にした教育予算の削減の施策など、これらは直ちにそういった精神から見直されるべきだと考えます。
  二つ目は、学校の自主性を何よりも地方教育行政は尊重し、教職員の教育活動の自主的な権限を保障する立場に立つことです。自由と自治のもとでこそ、真に教育という営みにふさわしい教育活動が展開されるものと私たちは確信をしています。教育課程にかかわる行政、研修、指導主事訪問、指定研究などは、今、どれほど学校の自主性を損ない、学校から生き生きとした教育活動、あるいは子どもと教職員のゆとりを奪っていることでしょうか。指導・助言を超えた画一的な統制につながるようなシステムや運営を改め、地方教育行政と学校の関係を根本的に見直していただきたいと思います。
  第3点目は、子ども、父母、地域住民の教育参加をどう保障するかという、その制度を検討し、実現していただきたいということです。教育委員会の公選、あるいは最近、国際的にも学校委員会であるとか、あるいは学校評議会など、そういったシステムが創設されていますが、それらに加え、子どもの意見表明権に基づいた、そういった権利を保障する場であるとか、あるいは教職員団体の地方教育行政の政策決定への参加の保障など、今日の先進国と言われる国際常識をぜひ我が国においても積極的に取り入れられ、自治と参加型のシステムづくりの創設に向けて真摯な検討をお願いしたいと考えます。
  私は、今、戦後50年、日本の学校教育はかつてない閉塞状況を迎えていると言っても過言ではないと考えます。それらを生み出した地方教育行政の運営・システムを真摯に検討され、本審議会が国民に直接責任を負う教育という営みにふさわしい審議と運営をしていただくことを重ねてお願いし、私どもの意見表明とさせていただきます。

○  一つ伺います。20ページの一番上から5行目に、先ほどもおっしゃいましたように、「教育委員の公選」ということがございます。これは一般行政から独立性を保障するという点では、そういうことになると思いますが、考えようによりますと、教育に知見のある人が選ばれずに、地方の政治、あるいは派閥争いに教育が巻き込まれる恐れがあると思いますが如何でしょうか。
  もう一つ、「(4) 」の「2」のところでございますが、「学校委員会」「学校評議会」というのは、例えばPTAとはどういうふうに違うんでございましょうか。

◎松村意見発表者    1点目の教育委員会の公選制の問題ですが、私はおっしゃるような問題が絶対あり得ないとは思いませんが、しかし、それは運用の問題であって、公選制そのもの自体がそういったものを必然的に生み出すというふうには考えていません。先ほど申しましたように、憲法や教育基本法、自治の原則で、住民が真に教育の主人公として参加を保障されるのであれば、それは一定の紆余曲折はあっても、住民の民主主義的な意識の高まりによって、そういったゆがみは必ず是正されるものだと確信をしています。ちなみに、一般行政においてもそういったことがあるわけですから、私は制度そのものよりも、それをどう住民や国民が主体的に受けとめ、運用する力を持ち得るかという民主主義の問題にかかわっているのではないかと考えます。
  二つ目の、学校委員会もしくは学校評議会ですが、我が国には御承知のようにPTAという組織がございますので、どのようにこれらの組織に参画するかということについては、私たちもなお検討が不十分でありますが、例えばPTAの中からそういった委員を選出される制度であるとか、あるいはまた違ったところから選出することも含めて、学校教育の内容や学校の教育活動の具体的な内容に少しでも住民の意見が反映され、参画できるようなシステムの在り方であれば、PTAがどのようにかかわっていくかということについては、今後、具体的な課題として検討をしていけばよいのではないかと今のところ考えております。

○  20ページ、「(3) 学校の自主性」のところの「3」に、「校長は……学校の代表者である」、そして「……教育活動がすすめられるよう、その自主的権限を保障する」とお書きいただいていますけれども、校長の自主的権限なのか、それともその次にある「教職員の民主的協議と合意にもとづく……その自主的権限」、どちらなのでしょうか。

◎松村意見発表者    質問の内容に対しては、私は、校長さんも教育をつかさどるという点では、教育行政から独立した権限をお持ちだと思います。中教審の小委員会で、校長のリーダーシップあるいは権限を強化するということを言われているようですが、私どももそのリーダーシップの中身が本当に教育の条理にふさわしく、全教職員が民主的な協議と合意によって、創意工夫が生き生きと生かされるような、そういう学校づくりのために校長が重要な役割を握っているし、そういうリーダーシップをとることについては大いに賛成です。それを可能にするような自主性と権限をぜひ教育委員会、教育行政は保障していただきたい。現行はあまりにも、地方教育行政の教育委員会などに気を遣って、自らの判断のできない、あるいは困難な問題にきちっと集団的にリーダーシップを発揮して対処できない管理職があることを残念ながら指摘せざるを得ません。そういった意味で、校長にもそういった権限、自治の保障を、私たちはぜひ要求するものです。

○  同じく「(3) 」番に関してなんですが、御意見の中身は、学校にもっともっと自主的権限を保障しろということだろうと思うんです。それと同時に、親のほうから見て、義務教育の学校も含めて選択の自由を与えろということが言われているのは、御承知のとおりです。この件について、学校にもそういう自主運営権を認めるんだったら、親のほうにも選択権を認めろというようなことについては、どんなふうなお考えをお持ちでしょうか、お聞かせいただければと思います。

◎松村意見発表者    私は、学校の選択権というのは、基本的には権利として父母や地域住民にも保障されるべきだと思いますが、現行の制度のもとで、一体何を基本にして学校の選択権を保障するのかという際に、今後予測をされる、例えば中高一貫教育に基づく6年制、あるいは中高一貫校が設立をされた場合に、そこへの入学者が多いような学校が、偏差値教育によってもし選択される可能性があるとするならば、私たちはそういう内容について検討してみなくてはならないものだと思います。ただ、今の通学区制が戦後の教育の中でどのような役割を果たしてきたのか。そのことを教育の機会均等の原則、あるいは戦後の教育制度の単線構造という点から、私たちはその意義を十分に認めなければならないと同時に、本当に学校が個性や創造性を発揮して豊かに教育活動ができ、そして父母がどの学校を選択しても、小学校、中学校という義務教育にふさわしい共通教養や、個性豊かなものが基本的に保障されるような学校が創造されるのであれば、私たちは父母の学校選択権が具体的に実を結ばれるような制度として検討することもあり得るのではないかと思います。ただ、現行では、それだけが先行されますと、機会均等の原則がゆがめられる危険性がないかということが、私たちは一番憂慮し危惧する点です。

○  それでは、続いて、日本高等学校教職員組合書記長の飯塚信良さんから御意見をいただいて、その後、質疑をお願いいたします。

◎飯塚意見発表者    それでは、私どもの意見を発表させていただきます。お手元の資料にありますように、「主体的かつ積極的な地方教育行政の展開」と「学校運営の自主性の確立」ということで、この大きな2点について発表させていただきます。
  まず1番目の地方教育行政の展開につきまして、国と都道府県の役割分担の見直しにつきましては、教育の地方分権を推進する必要性は十分あると考えております。しかしながら、全国的に一定の教育水準を保つ必要がありまして、教育力に差が生じては問題がある。このような観点から、地方分権の問題に取り組むことが必要であると考えております。国に関しましては、教育水準の維持のため、学習指導要領について、今現在検討されておりますが、十分なる基礎・基本を重視したような形でのガイドライン化を示していただき、それに基づき、県教委や学校裁量を拡大することが必要であると考えております。それとともに教育環境を整備・充実することも不可欠であるかと思っております。
  このためには、当然、教育予算の充実・確保、定数法の改善  ―2年間の延長ということになりましたが、次の定数改善を考えていただきたいと考えております。また、教職員の賃金の改善につきまして、教育行政において教育水準の維持・向上を図るため、国としての役割を今後とも十分果たしていただく必要があります。
  次に、県教委に関しましては、地域に根差した教育をするという観点から、県独自の教育予算の充実、定数配置等について、今以上の積極的な取り組みが必要であると考えております。
  続きまして、2番でございますが、地域住民の意向を反映する仕組みの導入につきましては、多種多様なニーズを持った生徒が高校に入学しております。また、さまざまな考えを持った保護者が教育とかかわっております。多様な保護者の意向を、どの部分を共通的な意向として把握するかということについては、現実には困難な状況にあります。地域住民の意向の反映といたしましては、教育委員の公選制の考え方が一部では主張されているという状況でありますが、保護者の多様な意向に接している私たちといたしましては、選挙のような形で住民の意向を特定するということにつきましては、よい結果にはならないと考えております。
  教育は、激変させるというものではなく、継続的な営みで、緩やかに変化していくものと考えております。住民の意向の反映につきましては、公選制などによるものではなく、組織的な主張に影響されないような工夫が必要でありますし、学校や地域ごとに多様な意見を調整する場を設定していただき、学識経験者、保護者、教育委員会事務局、教職員団体の代表などで協議していただき、共通理解を深めることが必要と考えております。
  大きな2点目でございます。自主性の確立についてということでございます。
  学校運営の自主性・自律性を確立するためには、各学校の裁量を拡大する。また、特色ある学校運営を明確にしていくことにつきましては、賛成をいたします。校長、教頭の人選が、ここでは大変重要な課題ということになります。教育上の豊かな見識、幅広い視野を持つとともに、迅速に処理ができて、調整力の豊かな人物が登用されなければならないと考えております。管理職登用につきましては、民間からという声もございますが、教育現場の複雑多岐にわたる校務運営を民間の人にゆだねることにつきましては、混乱を招く結果になりかねません。民間からの考え等につきましては、地域住民の意向を反映する仕組みが確立すれば解消するというふうに考えております。
  学校の管理職として求められる資質・能力は、先ほども申しましたように、豊かな見識、幅広い視野、調整力の豊かさも含めて、十分議論した上で慎重に判断すべき問題であると考えております。
  学校の裁量を拡大するということでございますが、学校が管理職を中心に、一体となって教育課題に取り組むためには、単に校長の権限を拡大するだけでは不十分である。校長を支える学校の組織運営体制を抜本的に見直すことが必要であると考えております。これらに関して県教委は、学校が自主性を発揮できるよう、施策等の情報提供や法制上の問題相談というようなサポート体制を確立することが必要と考えております。
  学校の教員の人事等につきましては、校長の人事権を拡大すべきという見解もありますが、公平・公正に行われる観点から、現行のような県教委が大局的・全県的なバランスを考えた人事を行われることが望ましいと考えております。
  以上、大きく2点に分けての発表とさせていただきます。

○  「2」の「学校運営の自主性」のところですけれども、一番最後に、校長の人事権につきまして、それを拡大することに否定的というか、かなりネガティブなお話かと思いますが、たぶん今までで初めてだろうと思います。そうしますと、一番上にあります学校運営の自主性・自律性には、基本的に賛成されていらっしゃる。その上で、校長や教頭の人選が重要であるという文脈と、これはどう調合されているのか。それが1点です。
  それから、人事権の拡大について否定的な理由といいましょうか、それを行うと公正・公平に行われないという読み方ができるんですが、具体的にはどういったことで公平さがそがれるとお考えなのか、お伺いしたいと思います。

◎飯塚意見発表者    第1点の、人選ということでの資質ということと、校長の人事権の拡大の整合性ということでございますが、現場におりますと、校長の資質が現場としては問われると言われております。結局、今の校長登用につきましては、現場のことを中心に考えておらず、残りの年数を大過なく過ごせればいいというような考え方を持っているということもあるわけでございます。そういったところにおいて、これからの教育行政でリーダーシップを発揮していただくためには、そこに載せてありますような人物を必要とする。
  また、人事権の拡大ということにつきましては、これはやはり校長の権限で教員を集めるというところについては、若干の私的事項も入るのではないか。そうしますと、あるところは落ち込む、あるところは当然雰囲気がよくなるという状況も生まれるということであって、校長に人事権を拡大するということについてはいかがなものかと考えておるわけでございます。

○  それでは、きょうはお忙しいところを御出席いただき、貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。
  それでは、続いて日本教職員組合委員長の川上祐司さんから御意見をお伺いして、その後質疑応答を行いたいと思います。それでは、川上さん、よろしくお願いいたします。

◎川上意見発表者    地方教育行政の在り方に関する御意見を時間内で4点に分けて申し上げたいと思います。
  第1点は、今、学校ではさまざまな課題を抱えております。特に小学校では少子化の影響もありまして、子どもたちに基本的生活習慣がついていない。あるいは、他への思いやりがない。集団遊びができない。指示がないと動けない。我慢できないなどの事象があらわれておりまして、低学年にいくほどこの傾向が強くなっております。また、父親の存在感も薄く、保護者と学校との間に意思の疎通を欠くことが見られます。保護者は学校を飛び越えて教育委員会に、教育委員会は保護者の意向を受け、学校を指導する。問題の原因が教師の指導不足にあるのかどうかということでありますが、こうした現象は全国にあらわれているということであります。
  それだけに、十分な解決を見ないまま問題が先送りされて、とりわけ中学校では生徒指導に大変なウエートを置いているのが、全国の学校の置かれている極めて深刻な状況であります。これまでと違う子どもたちの行動様式と接触をしながら、毎日、子どもたちと真剣に向き合っている私ども教職員や学校に対して、教育委員会はどういうふうに支援すべきか、あるいは現場を一番掌握している学校が、的確に対応するにはどうしたらいいか。
  また、保護者の関係についても、家庭教育や就学前教育の在り方が影響しているだけに、これらのことを踏まえた地方教育行政の在り方が検討されなければならないと思っています。こうしたことをまず前段に指摘しておきたいと思っています。
  そこで、日教組としての地方教育行政の在り方に関して、改革すべき考え方や具体的内容は、皆さんに意見を提出しておりますが、ここではポイントについて述べておきたいと思っております。
  地方教育行政においては、従来、教育委員会が行っていた行政施策について、首長部局との施策の統合、一元化が進められております。地方自治体における教育の重要性を考えた場合に、これを否定するわけにはいきませんが、このことは一面、教育行政を担当する教育委員会の行財政能力の低下や行政委員会としての独立性が後退をしているということではないかと思います。
  これに対して、教育委員会の活性化が強く叫ばれ、さまざまな施策が提言されてきましたが、実効ある効果を上げられなかったのは、やはり学校抜きにしていたところに大きな原因があったのではないかと思っています。子どもたちが実際に生まれている家庭、実際に育っている家庭、あるいは地域・学校を基礎とし、そこで展開され、生じている教育問題にこたえる形での教育委員会の在り方を追求すべきではないかと考えています。
  教育は、地域住民の日常生活と直結する分野であります。それだけに学校は、そこでの子どもたちの行動や、あるいは地域社会の動きに対しては直ちに判断する権限や、授業の中にその状況を組み込むことができる速効性と、そのことを保障する財政措置がなければならないと考えます。しかし、現実は学習指導要領などに細かに例示されているため、強い基準として機能し、学校でできるカリキュラム編成の範囲は狭く限定をされております。
  さらに、予算措置、例えば地域の人を呼んで授業を効果的に進めようと思っても、そのための経費が計上されていないために、ボランティアでお願いしているのが実態であります。学校が独自の判断で何かをしようと思っても、教育委員会の支援を得られないのが現状であります。
  そこで、必要なことは、学校をこれまでのように管理の対象としてとらえるのではなくて、学校がさまざまな活動ができるよう裁量権と責任を与えて、自己決定できる組織に変革すべきだと考えます。具体的に学校に移管すべき権限の内容は、協力者会議の『論点整理』で指摘されている事項に加えて、教育課程や学級編制が地域や子どもに合わせて編成できるよう弾力化とともに、あるいは教科書の採択権についても、学校に付与すべきであります。学校にさまざまな事務などが移管をされれば、当然、校長を支える経営管理部門の整備充実と、その中心にある事務職員の役割分担を明確化すべきであります。また、学校の組織については、これまでの学校で培われてきた習慣や教育の条理を踏まえながら整備することを基本に検討すべきであります。
  第3は、学校のスリム化、授業の精選が指摘されているわけでありますが、学校は年々多忙化をしております。特に冒頭述べましたようなことから、より子どもと触れ合う時間が必要になってきます。さらに、最近は教科や特別活動に加えて、人権教育、あるいは環境教育、国際理解教育、薬物乱用防止教育、エイズ教育、あるいは消費者教育など、教科をまたがる横断的なものの必要性が叫ばれています。これについては、学校教育の目的がそうした課題について、一人一人の子どもたちが自ら考え判断し、行動できる力を育成するところに大きな意義があり、単なる啓発・宣伝とは性格を異にすると考えております。それにもかかわらず、啓発・宣伝・情報等がナマの形で未整理状態のまま学校に持ち込まれようとしています。学校では、これらを限られた授業時間内でどう配分すべきか、研修会や会議をしなければならないので、ますます過密になってきます。
  これに加えて、行政ですべきものや家庭ですべきものが教育の名のもとに安易に学校に持ち込まれたり、その解決が学校にのみゆだねられるという状況も生じております。このような課題について、もちろん毎日子どもたちと真剣に向き合っている教職員、学校が、困難な状況のもとに取り組んではいますが、抜本的な解決を図るためには、学校を取り巻くさまざまな教育課題を国や教育委員会が責任を持って交通整理すべきでないかと考えております。そして、学校の取り組みを支援するためにも、外部に対しては防波堤となるぐらいの気概を示していただきたいと考えております。国や教育委員会は、初めに管理ありきではなくて、子ども、教職員の目が輝くような教育行政を展開していただきたい。教育行政関係者はこの点を十分考えていただきたいと考えているところです。
  また、現状は、学校が直ちに対応しようと思っても、学校のカリキュラム編成をサポートする体制が、地方の教育委員会や国にないのが実態であります。学校からの問い合わせに、科学的・実証的に分析をし、対応する常設の専門機関が必要と考えております。国や地方にカリキュラムセンターをつくり、学校に情報を提供できるようにすべきではないかと考えます。
  最後になりますが、これからの学校に必要なことは、教育委員会と学校が、あるいはもちろん地域を含めて、教育に共同して責任を負うパートナーシップ、対等な協力関係を基本に教育を進めることが大事であります。これらパートナーシップは、学校と保護者、地域、さらには子どもたちの間にも存在をさせ、それぞれが抱えている思いを出し合って、現にあるギャップを埋めるための努力を開始しなければ前進はあり得ないということを申し上げて、御意見とさせていただきたいと思います。以上です。

○  多岐にわたる提言がありまして、本当だったら時間があれば、それら提言についていろいろ意見交換をしたいんですが、時間が限られていますので、単純に補足説明をお願いしたい質問を4点。
  26ページにすべて入っているんですが、一つは、26ページの最初の「エ」の「校長、教頭の在り方を検討する。……こうした観点から任用・資格」制度を「見直す」ということですが、具体的にどのようなことを考えられているのかというのが、1点。
  二つ目は、「5」の「学校からの予算要求制度等を策定する」という点ですが、確かに私自身も、今の学校予算の制度はいろいろ問題があるので、見直すということを前提で考えているんですが、この学校からの予算要求制度は、いわゆる概算要求制度みたいなことを考えているのか、もう少し説明をいただきたい。
  三つ目は、「6」の「イ」のところで、「指導主事制度を見直す」。そこでアドバイザーとして位置づけるということで、指導主事制度の見直しを提言しているんですが、例えばこのようなアドバイザーとして位置づけた場合、例えば身分とか、任用の仕方は現行制度とかなり違ってくるのかどうか、どのようなことを考えているのか。
  最後は、「(3) 」の「3」ですけれども、「都道府県と政令指定都市の人事行政の在り方」です。私もこれは、地方分権推進委員会の議論を見ても、都道府県と市町村との関係はかなり多様化する方向に動いていますので、これを教育行政でどう考えるかということはこれからの課題だと思うんですが、ここではただ、中核市への委譲が進めば人事行政は複雑になるという問題状況だけ指摘されているんですが、そうした問題を含めて、ではどうあるべきなのかという何か御意見があればお聞かせいただきたい。

◎前田日本教職員組合執行委員    私のほうから代わりに答えさせていただきます。
  1点目の問題ですが、文部省の協力者会議の中でもいろいろ御指摘されていますように、これからの学校は経営とかマネジメントという部分を大変重視しなければならないだろうと考えています。そういった側面からすると、今の校長並びに教頭の一つの資格要件として教員免許を持っていなければならないという、いわゆる教員でならなければならない。校長の場合には、確かに事務職員や養護教諭からも免許さえあれば任用できるようになっておりますけれども、実際はそうなっていないということの中で、そういった意味からすれば、もう少しオープン的な意味で考えていく必要があるのではなかろうかと考えております。
  2点目の、学校からの予算要求ですが、実態から申しますと、ほとんどが教育委員会から学校への見積配分。つまり、本来、学校というのは、これだけの教育課程を推進するためにはこういった予算が必要だということで、それを各教育委員会に請求していくシステムができ上がっておりません。そういうふうにやっている市町村も若干ありますけれども、基本的にはそれぞれ学校というところは地域や子どもの実態を踏まえて教育要求をしていくべきだろうと考えておりますので、そういった制度をつくっていくべきだろうと考えています。
  指導主事の問題につきましては、指導主事も市町村あるいは都道府県によって違うのかもしれませんが、今の実態を多く見ておりますと、指導主事の皆さんは教育委員会事務局のスタッフというか、ラインに組み込まれているのではなかろうかと考えております。そういうことの中で、いわゆる事務局の事務的なことにほとんど追われていて、学校へ行って教育課程の編成の問題だとか、学校で起きているさまざまな問題についてアドバイスをするというふうになっていないんだろうと思います。また、今の指導主事というのは、教科や領域についてはそれぞれの考えがありますけれども、例えば、冒頭に言いましたように、これからの学校というのはさまざまな学校経営だとか、あるいは保健の問題とか、事務の問題だとか、栄養の問題ということになってくれば、さまざまな分野を含めた学校についてのアドバイザーということを考えていくことが必要だろうと思っております。そういう意味で、今の実態を踏まえて、教員だけから指導主事になるのでいいのかどうかということも含めて、少し任用制度について考えてもいいのかなと思っています。
  それから、人事行政の在り方ですが、これは御承知のように、今の学校の教職員というのは、都道府県の県費負担制度ということの中で、都道府県が任命権を持っている。しかしながら、基本的には特に義務制の場合には設置者管理主義ということの中で、身分は市町村にございます。政令市の場合にはその一部を都道府県から委任されておりますが、そういうことの中で、任命権と服務監督権ということでよく言われる例なんですけれども、例えば「この問題についてどう思いますか」「いや、それは任命権の問題ですから、県教委でやってください」と。県教委へ行きますと、「いや、それは学校運営の問題ですから、服務監督権者である市町村でやってください」ということで、常にキャッチボールされている。つまり、人事行政そのものが二元化しているのではないか。
  確かに、教育の機会均等ということで、教職員の一定の水準を保つということの中で、例えば国庫負担制度の中で、水準を保つことは必要ですけれども、その結果としては、行政の分野についてはいろいろな問題があるということの中で、むしろ具体的にどうのこうのとすることではなくて、その辺、将来的な地方分権のことを含めて検討すべきではなかろうかと考えています。以上です。

○  これからの学校の自主性、主体性を高めるというのは非常に大事なことであります。その中で、二つの視点、すなわち教育課程の経営という視点と、もう一つは学校内の組織運営ということから御質問したいと思います。
  前者の教育課程の経営については、23ページの基本的な理念のところで、二つ目の学校組織運営は25ページにちょっと出ていますので、それに関連して質問したいと思います。
  最初の教育課程の経営についてですけれども、「はじめに」のところにも若干書いてありますが、よく国の教育課程の基準が硬直化しているために、学校でなかなか主体的・自発的な教育課程編成ができないと言われるわけですけれども、むしろ実際には逆で、国の基準は非常に多様化・弾力化しているにもかかわらず、例えば具体的には中学校の選択履修の幅を拡大してください、高校の選択幅を拡大してくださいと国で言っているにもかかわらず、むしろ学校現場のほうで非常に硬直的で、横並び的な発想しかできていないのが現状ではないでしょうか。そして、ただ教科の授業時数や単位数を増やせということに割合陥っている。この辺はどうしてなのか、その辺のところをひつと御質問したいと思います。
  2番目の学校組織運営の面で、25ページですけれども、「4」の「学校経営組織を見直し、教職員の役割分担を明確にする」。そこで、「校長の適切なリーダーシップのもと教職員の協力・協議による学校経営体制」、そして「この視点に立って職員会議を検討する」と書いてあります。そういった職員会議というのをどういうふうに考えているのか。特に校長のリーダーシップが問われているときに、職員会議の在り方によって、必ずしも管理執行が十分に発揮できていないということも多々あるわけであります。むしろ校長、教頭、主任等のリーダーシップを発揮できるような職員会議の運営をこれからどのように考えたらいいのか。職員会議をどういうふうに考えているのか、その2点をお願いします。

◎山中日本教職員組合副委員長    最初の御質問の件でありますけれども、確かに国のほうでは基準を弾力化して進められているというのは、私どももよく存じ上げているところです。ところが、現場がなぜ動かないのかということは、一つはシステムの問題で、先ほど私どもも発表いたしましたけれども、教育委員会が思い切ってサポート機能に徹しているかどうか。限りなく命令的な指導・助言というものになっていやしないか。この点、先ほど指導主事の問題も申し上げましたけれども、全体的に学校設置の責任者である市町村を中心として、その辺がもうちょっと弾力的な関係になっていくことが一つあると思います。
  もう1点は、これは私どももよく聞くんですけれども、例えば中学の地理の授業で、その先生の得意な分野を中心に全体を組み立ててやりたい。その先生がその授業について2週間なり3週間そういう授業をやることは、今でもできるんです。そのことはだれも否定はしませんし、校長先生がだめだと言うことはないんです。しかしながら、受験という枠の中で、そのほかにまた受験を一通りやらなければならないという中で、先生方がやりたいことや柔軟性を持つためにかえって詰め込みにならざるを得ない。今の受験、しかも教科書の中から出るという仕組みの中での課題は、やはり受験制度の問題にメスを入れないと、この問題はなかなか解決が難しいのではないかと思っております。

◎川上意見発表者    職員会議の位置づけ、性格は、これまでさまざま議論をされてきましたけれども、私たちは学校の教職員が一致協力してさまざまな問題に対応するための考え方を統一する会議の場所だと考えております。したがって、職員会議がそれぞれの学校で有効に機能し得るように、学校の役割が果たせるように、それぞれ考えていくべきだと考えております。教職員の意思を統一する重要な会議の場所というふうに考えております。

○  貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。これからの審議の参考にさせていただきます。どうもありがとうございました。

○  1点だけ申し上げさせていただきます。
  特にきょうの公聴会での意見発表に関連しまして、短時間でもあったので、ごく非常に重要な点だけに絞って発表があったかと思いますが、例えば校長の権限拡大について、各校長会から、学校管理規則のような法規面での見直しが重要ということが全部出されましたけれども、それ以外にも、例えば学校から教育委員会、あるいは教育事務所、あるいは市町村の教育委員会から都道府県の教育委員会に対しての報告等について、かなり煩瑣な面があろうかと思います。これが形式化されたり、あるいは形骸化されたりして、例えば緊急のような場合に必ずしも機能しないような場合もあろうかと思います。
  したがって、今、私が特に時間をいただいて申し上げましたのは、きょうのヒアリングの意見発表の中で出された面に漏れている部分についても、この審議会で目を配って、実質的に学校改善に生きる、あるいは校長がリーダーシップを発揮できるような組織の整備ということで検討する観点があるということをぜひ申し上げたくて、発言させていただきました。

○  どうしても私らは現場におりますので、住民と学校との関係に一番関心があるわけでございます。そういった中で、義務教育というのは、自ら学ぶ力とか、自ら判断する力を育てるということでありまして、それは生涯学習の基本をやっているということが言われているわけでございます。ですから、私は学校と住民との関係を考えたときには、生涯学習の視点で考えていくべきであろうと思っております。学校は子どもが中心であります。また、行政は住民が中心であるわけでございます。
  そういった中で、開かれた学校というときに、さきにも話がありましたが、学校から開いていく部分と、住民が開いていく部分と両方あると思っております。そういったときに、行政もそこへ参加していく。そういうときに、実は私どもは、汚れた川をどうするかというときに、単に公共下水道だけつくればいいというものではなく、一般家庭から出る排水が川の汚れの7割を占めるということを言われていますので、子どもにもそれを知ってもらいたい。そのために、実は私どもで、以前にお話しした出前講座というのものがありまして、これは行政編で、市の職員が小学校の授業に出向いていってその話をして、「お母さん方にもよくお話ししてよね」ということを言ったり、あるいは住民の俳句をやっている方が国語の授業に行って俳句の指導をしたりとか、そういうことによって、学校と住民、行政が大きくかかわっていく。
  それと今まで住民の方が学校と  ―PTAの方はいろいろ学校へ物を言えると思うんですが、一般住民の方はなかなか言えない部分がある。そういったときに、学校に「市民の声ボックス」のようなものを置いて、教育だけでなく、行政についても発言してもらったらいいのではないか。あと24時間のフリーダイヤル電話とか、いろんなことがある。そうすることによって、住民と学校、また教育委員会とのつながりが出てくるのではないかと思っております。

○  ありがとうございました。地域住民と教育委員会との関連の問題は、次回の会議でもヒアリングということで予定しておりますので、そこのところへ議論は持ち越していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
  次回の12月17日の第7回小委員会では、今も申し上げましたとおり、PTA関係2団体、社会教育・体育・文化関係4団体及び三つの私学団体からヒアリングを行います。そして、「地域住民と教育委員会、学校の関係」「私立学校と地方公共団体との関係」及び「地域コミュニティーの育成と地域振興」についての討議をお願いいたします。
  1月の日程については、2回の会議を予定しております。1月以降の会議においては、論点を絞りながら討議を進めさせていただきたいと思います。その論点については、今後、具体的に考えさせていただきますが、私のほうで論点に関して「検討課題のメモ」というようなものを作成して、そのメモに基づいて御審議いただきたいと思います。
  これで本日の会議は終了いたします。
  次回の小委員会は、12月17日、13時から、霞が関ビル35階、ゴールドスタールームで開催いたしますので、よろしくお願いいたします。

(大臣官房政策課)
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