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参考1

教育基本法に関する今後の主要検討課題

前文

  時代状況の変化,教育理念の見直し,理念中心の規定に加えて具体的な制度や施策の根拠規定を盛り込むかどうか,といった教育基本法全体の見直しの方向を踏まえ、前文の在り方についてどう考えるか。


教育の基本理念

  現在の教育基本法に掲げられている基本理念は、今後とも大切にすることを前提に、これらに加えて,現在及び将来の教育において重要な基本理念として、中間報告では以下のものが挙げられたが、特に何を規定すべきか。
  なお、検討に際しては、既存の規定との関係や他の理念・原則等の見直しの方向性との関係についても十分留意する必要がある。

個人の自己実現と個性・能力の伸長,創造性の涵(かん)養
感性,自然や環境とのかかわり
社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神,道徳心,自律心
日本人としてのアイデンティティ(伝統,文化の尊重,郷土や国を愛する心)と,国際性(国際社会の一員としての意識)
生涯学習の理念
時代や社会の変化に対応した教育
職業生活との関連の明確化
男女共同参画社会の実現や男女平等の促進への寄与


教育の機会均等

  教育の機会均等の原則は、今後とも大切にすることを前提に、以下の点についてどう考えるか。

  現在の教育基本法の規定は、憲法の「教育を受ける権利」を具体化して「教育を受ける機会」が確保される施策を進めることが重要であるとの趣旨を示しているが、憲法と同様「教育を受ける権利」に改めることについてどう考えるか。
  新たに「生涯にわたり学習する権利」を規定することについて、生涯学習の理念を基本理念に規定することとの関係にも留意の上、どう考えるか。
  障害者など教育上特別の支援が必要な者についての新たな規定を追加することについてどう考えるか。


学校教育等

  教育基本法に新たに学校の役割を規定することを前提に、以下の点についてどう考えるか。

  中間報告においては、「例えば,知・徳・体(知識・技能と学習方法の教授,人格の陶冶(や),道徳教育,体育・スポーツ,芸術など)の教育を行う」旨例示されているが、具体的な学校の役割として何を規定すべきか。
  大学など高等教育の位置付けの明確化、私学振興の重要性を踏まえて規定することについてどう考えるか。
  子どもは,教員その他の指導に従って,規律を守り,真摯(し)に学習に取り組む責務があることを規定することについてどう考えるか。


宗教に関する教育

  中間報告では、国公立学校における特定の宗教のための宗教教育の禁止については引き続き大切にすることが確認されているが、宗教に関する教育の在り方については、様々な意見が示され、意見の集約には至っていない。憲法の規定する信教の自由や政教分離の原則に十分留意しながら,宗教に関する教育の在り方についてどう考えるか。


(参  考)

「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」(中間報告)抜粋

事項 中間報告の記述
前文   なお,教育基本法の前文には,法制定の由来,法を貫く新しい教育の基調,法の目的が規定されていることから,前文については,時代状況の変化,教育理念の見直し,理念中心の規定に加えて具体的な制度や施策の根拠規定を盛り込むかどうか,といった教育基本法全体の見直しの考え方が決まった後で,改めて検討することが必要である。 19
教育の基本理念
  現行の教育基本法は,教育の基本理念として,「教育の目的」及び「教育の方針」を規定している。この「教育の目的」としては,「教育は,人格の完成を目指し,平和的な国家及び社会の形成者として,……心身ともに健康な国民の育成を期して行う」ことが規定されており,平和的な国家及び社会の形成者として有すべき徳目として,「真理と正義」「個人の価値」「勤労と責任」「自主的精神」が掲げられている。これは,「教育の目的」として考えられるすべての徳目を法律に掲げるのではなく,従来の教育に欠けていたと考えられる徳目を特に掲げて強調し,それ以外は「人格の完成」に包含させるという考え方に立ったものである。
  また,「教育の方針」については,「教育の目的」を実現するための心構え,配慮事項について規定されているが,これについては,以前より,短い条文の中に多くの内容が凝縮されていて分かりにくいとの意見があった。

  本審議会におけるこれまでの議論においては,現行法に掲げられている基本理念に加えて,現在及び将来の教育において重要であり,教育基本法に規定すべきと考えられるものとして,以下の(i)〜(vii)が挙げられたところである。これらはいずれも,これからの教育において重要な理念であると考えられるが,基本理念として特に何を規定すべきかについては,今後,本中間報告についての国民各界各層からの御意見を十分に踏まえて,引き続き検討していくこととする。その際には,既存の規定との関係や他の理念・原則等の見直しの方向性との関係についても十分留意する必要がある。
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(i)個人の自己実現と個性・能力の伸長,創造性の涵(かん)
  教育においては,国民一人一人が自らの生き方,在り方について考え,向上心を持ち,個性に応じて自己の能力を最大限に伸ばしていくことが重要であり,このような一人一人の自己実現を尊重することを明確にする必要があると考える。また,大競争時代を迎え,科学技術の進歩が世界の発展と問題解決の原動力として期待される中で,未知なることに果敢に取り組み,新しいものを生み出していく創造性の涵(かん)養が重要と考える。
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(ii)感性,自然や環境とのかかわり
  美しいものを美しいものとして感じ取り,それを表現することができる力は,人の有する普遍の価値であって,文化の創造の基礎にある心であり,力である。特に,日本人は,古来より自然を愛(め)で慈しみ,豊かな文化を築いてきた。しかし今や,子どもの生育環境の中からは,自然が失われつつある。地球環境の保全が大きな課題となっている今日,自然と共に人は生きていることを理解し感じる力を培うことは重要であると考える。
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(iii)社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神,道徳心,自律心
  これからの教育には,個人の尊重とともに,「個人の尊厳」を確保するうえで不可欠な「公共」に主体的に参画する意識や態度を涵(かん)養することが重要である。我が国がより成熟した民主国家となるためには,国民が国家,社会の一員として,自他の権利をより尊重する上で重要な法や社会の規範の意義や役割について学び,国家,社会を主体的に形成していく意識,能力を高めていく必要がある。このため,社会の一員としての使命,役割を自覚し,自らを律して,その役割を実践するとともに,社会における自他の関係の規律について学び,身に付けるなど道徳心や倫理観,規範意識をはぐくむことが求められている。また,互恵の精神に基づき我が国社会や国際社会が直面する様々な課題の解決に貢献しようとする,新しい「公共」の創造に主体的にかかわろうとする態度の育成も重要である。
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(iv)日本人としてのアイデンティティ(伝統,文化の尊重,郷土や国を愛する心)と,国際性(国際社会の一員としての意識)
  グローバル化が進展する中で,これからの時代には,国際社会の一員として生きる国際人としての自覚とともに,世界に生きる日本人としてのアイデンティティを持つことがますます重要になる。国際社会に出ていけばいくほど,自らを日本人として意識する機会が増え,自国の存在について無関心でいることはできず,国際社会における自国の地位を高めようと努力することは自然な動きである。このような思いが,国を愛する心につながるものであり,その前提として,自らの郷土や国について正しい理解を持つこと,例えば郷土や国の伝統,文化を正しく理解し,尊重することが重要となる。
  なお,国を愛する心を大切にすることや我が国の伝統,文化を尊重することが,教育改革国民会議報告においても指摘されているように,国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならないことは言うまでもない。
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(v)生涯学習の理念
  今日,社会が複雑化し,また社会構造も大きく変化し続けている中で,学校教育修了後も引き続き職業生活等に必要な新たな知識・技術を身に付けたり,あるいは社会参加に必要な学習を行うなど,生涯にわたって学習に取り組むことは不可欠となってきている。このことは,教育制度や教育政策を検討する際には,これまで以上に学習する側に立った視点を重視することが必要となることを意味するものであり,今後,自らの自発的意志により,生涯のいつでも,どこでも,自由に学習機会を選択して学ぶことができるような,生涯学習社会の実現がますます重要になってくる。
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(vi)時代や社会の変化に対応した教育
  教育においては,次代に継承すべき価値を大切にするとともに,世代や男女を問わず国民一人一人が時代の変化や社会を取り巻く環境の変化に対応できる能力を身に付けることが重要である。グローバル化や情報化の進展,地球環境問題の深刻化や科学技術の進歩など,国民を取り巻く環境は大きく変貌(ぼう)を遂げており,教育も,これらの時代や社会の変化に常に的確に対応していくことが必要である。
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(vii)職業生活との関連の明確化
  今日,経済構造の変化や価値観の多様化が進む中で,自分の就きたい職業を見いだせない子どもが増えてきており,職業観,勤労観の育成がこれまでにも増して必要となっている。また,若者の就職難が恒常化し,転職が一般化する中で,即戦力となる専門知識や技能が強く求められるようになってきている。一方,女性の人生における職業の位置付けが変化してきている。このため,教育は職業生活に対して適切な準備を与え,社会の要請に応じて常に人々の職業生活を支援するものであることが今後ますます重要になると考えられる。
  このことは,個人の自己実現にとっても,また,社会の発展にとっても重要なことであり,これからの学校教育においては,子どもへの的確な職業観の育成を図り,キャリア教育の充実に努めるとともに,社会においても生涯にわたり職業にかかわる学習機会を充実していくことが必要である。
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  憲法に定める男女平等について,現行法は,男女が互いに敬重し協力し合わなければならないという理念を定めるとともに,男女平等を実質的に確保する手段として男女共学が認められなければならないことを規定している。現在では,男女共学の趣旨が広く浸透するとともに,性別による制度的な教育機会の差異もなくなっているが,社会における男女共同参画は,まだ十分には実現しておらず,男女が互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い,性別にかかわりなく,その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会を実現することが重要な課題となっている。今日,教育・学習のあらゆる場において,男女共同参画社会の実現や男女平等の促進に寄与するという新しい視点が重要となっていることから,このことを教育の基本理念として規定することが適当と考える。
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教育の機会均等
  「教育の機会均等」は,憲法の教育を受ける権利(憲法第26条第1項),法の下の平等(同第14条)の規定を受け,その趣旨を教育において具体的に実現する手掛かりとして規定されたものである。これは,「個人の尊厳」を実質的に確保する上で欠かせないものであり,将来にわたって大切にしなければならない重要な原則である。

  なお,本審議会におけるこれまでの議論においては,現行の規定について,「教育を受ける機会」とあるのを憲法と同様に「教育を受ける権利」と改めてはどうかとの意見や,生涯を通じて学習を行うことを可能とする生涯学習社会を構築するという観点から「生涯にわたり学習する権利」を規定してはどうかとの意見があった。これについては,現行の規定が憲法上の権利を具体化して「教育を受ける機会」が確保される施策を進めることが重要である,との趣旨を表現したものであることや,先に述べたように,今後の教育の基本理念の中で生涯学習の理念を規定することが提案されている点にも留意しながら,引き続き検討していくこととする。
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  さらに,障害者など教育上特別の支援が必要な者についての新たな規定を追加すべきではないかという意見もあった。憲法や教育基本法の精神に基づいて教育を行うに当たっては,障害者に対してはその障害の種類や程度に応じた教育が行われるべきことは当然であり,この趣旨をより明確にすることが必要かどうか,引き続き検討していくこととする。なお,その際には,障害者基本法との関係にも留意して検討することが必要である。

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学校教育等
  現行法は,学校について「公の性質をもつ」と規定し,その設置者について定めるのみであり,学校の役割などについては一切規定しておらず,学校教育法において,各学校種ごとの目的,目標が規定されているところである。しかし,これからの時代の新しい教育の目標の達成を目指し,教育の目的である「心身ともに健康な国民の育成」を実現する上で,今後とも学校教育は中心的な役割を果たすことが期待されている。また,学校は同世代の子どもが共同生活を通じて社会性を身に付けていく場でもある。さらに,今後の教育を進めていく上では,学校,家庭,地域社会の三者の連携・協力をより一層強化することが求められており,そのためには,この三者の適切な役割分担や相互連携の在り方が明確にされることが必要である。このような観点から,新たに学校の役割として,例えば,知・徳・体(知識・技能と学習方法の教授,人格の陶冶(や),道徳教育,体育・スポーツ,芸術など)の教育を行う場であること等を明確に規定することが適当と考えるが,具体的な学校の役割として何を規定すべきかという点については,引き続き検討していくこととする。
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  なお,学校の役割について規定する際には,併せて次の意見にも留意する必要がある。
(i )この学校の中には,当然,大学等も含まれているが,現行法は全体として初等中等教育中心で高等教育の位置付けが明確ではないので,高等教育の視点をしっかり盛り込むべきである。
(ii )高等教育や就学前教育等において私立学校は大きな役割を担っていることから,私学における教育の振興を図ることは重要であり,それを踏まえた規定としていくべきである。
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  なお,子ども一人一人の人格が尊重されなければならないことは当然であるが,そのことを前提とした上で,子どもが教育を受ける際に,恣(し)意に任せて規律を乱す等の言動は容認されるものではなく,教員その他の指導に従って,規律を守り,真摯(し)に学習に取り組む責務があることを規定すべきとの意見があり,引き続き検討していくこととする。
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宗教に関する教育
  現行法は,「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位」は教育上尊重されなければならないことを規定するとともに,国公立学校においては「特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動」を行うことを禁止している。宗教に関する教育については,以下のように様々な意見が出されたが,意見が集約されるには至っておらず,憲法の規定する信教の自由や政教分離の原則に十分留意しながら,引き続き検討していくこととする。
  なお,憲法第20条第3項を受け,国公立学校においては政教分離の原則が適用され,特定の宗教のための宗教教育や宗教的活動が禁止されることは,今後の教育においても重要な原則として大切にしていく必要がある。

  宗教一般に関する教育については,「宗教は,人類の文化遺産の重要な部分を占め,また,個としてどう生きるか,与えられた命をどう生きるかという実存的なものにかかわる重要なもの」,「国際化の時代に様々な宗教について学ぶことは異文化理解の観点から大切である」,「先進諸外国の中にも宗教に関する知識をしっかり教えている例もあり,我が国においても参考にすべき」など,その重要性を指摘する意見が多かったが,いかなる場でどのような内容で行うべきかについては,様々な意見が出された。国公立学校における宗教一般に関する教育について,「科学・物質万能の風潮の中で,目に見えないものを大事にするという観点から,あらゆる宗教に共通する普遍的な宗教心を教える必要がある」「道徳教育の背景として宗教的情操の涵(かん)養が重要である」といった意見がある一方で,「各宗教の宗教観にはそれぞれ相違があり,普遍的な宗教心というものはない」「国公立学校では宗教によらない道徳教育を行うべきで,宗教教育は基本的に家庭や個人の問題である」などの意見があった。また,「学校で子どもを宗教に触れさせようとしても,様々な宗教を教えることができる教員は少ないなどの問題がある」との意見もあった。

  「宗教に関する教育には,宗教についての知識や宗教的な文化,価値について理解させる教育と,カルトやマインドコントロールから自分を守るため適切な判断ができるようにする教育という2つの側面があり,両者は区別して扱うことができる」との意見があり,これらの教育の重要性について異論はなかったが,これに対して,「カルトから身を守ることも含め,自ら考え判断する態度は,必ずしも宗教教育によらなければ育成できないものではない」との意見があった。

  「第2項の禁止のイメージが強すぎて第1項により尊重されるべき宗教に関する寛容の態度や宗教の社会生活における地位について学校で十分教えられていない実態があるので,第1項を見直しより適切な条文にすべき」との意見がある一方,「宗教に関する教育を行う上で現行規定は特に不都合はなく,規定を見直す必要はない」との意見があった。また,「宗教教育」という見出しについては適切ではないとの意見があった。
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