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参考2

第14回基本問題部会における主な意見の概要(案)

1. 日  時  平成14年9月20日(金)  14:00〜16:00

2. 場  所  グランドアーク半蔵門「富士(東)」(4階)

3. 議  題 教育振興基本計画および教育基本法について

4. 配付資料
資料1   教育の課題と今後の教育の基本的方向について(素案)
資料2   教育基本法・日本国憲法(条文)
資料3   今後の日程(案)
   
参考1   新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について  (中間報告柱立て案(メモ))
参考2   第13回基本問題部会における主な意見の概要(案)

5. 出席者
委 員: 鳥居会長,木村副会長,市川委員,梶田委員,加藤委員,黒田委員,國分委員,  永井委員,中嶋委員,山本委員,渡久山委員

事務局: 小野事務次官,御手洗文部科学審議官,田中総括審議官,近藤生涯学習政策局長,矢野初等中等教育局長,工藤高等教育局長,永野国際統括官,銭谷文化庁次長,有本生涯学習政策局審議官,金森初等中等教育局審議官,木谷高等教育局審議官,名取主任社会教育官,徳重主任体育官,小田大臣官房政策課長,布村生涯学習政策局政策課長,高橋主任教育改革官,その他関係官

6. 概  要

鳥居部会長より挨拶
  今日までの教育が抱える問題の総括と、新しい方向性はどのようなものかという観点から、基本理念を掲げ、それに基づいて基本法や基本計画についての考えを打ち出そうという趣旨で、前回、3章立ての中間報告柱立て案とそのうち第1章のスケルトンを審議いただき、その方向性については賛同をいただいたところ。今日は、第1章を文章化したものを作ったので、これを基に議論してほしい。
  第1章については、2章、3章を含めた全体を貫く基本認識の部分である。表現ぶりや、過不足がある点について指摘してほしい。
   
自由討議
  よくできていていいと思う。ただ、基本計画を作る、基本法を変えるということの必然性をわかってもらうために、世の中が変わってきたという以外に、短くていいので最初にパンチがほしい。例えば、成人式で市長の前でクラッカーを鳴らすといった社会的常識のなさや若者の犯罪行為が多いことなど、子どもや若者がこのままでいいのかという声が社会で高まっている。こういったことを踏まえ、もう一度抜本的に考える必要があるということについて、インパクトの強い表現が半ページほどあると後半の伏線になって良い。

  よくできていると思う。しかし、なぜ今改正なのかという疑問が出てくるのに答えることが大事。明治維新の時のスローガンは「文明開化」、第2次大戦後は「戦後復興」であり、今回は「日本社会の立て直し」や「再建」といったことになるのだろう。今の案でいろいろ並んでいる社会の変化についての事項の中から、内包性の大きなものを3つくらい持ってきて、それに対応するために日本社会を立て直す、という構成がいいと思う。例えば、1情報化や職業も含めた「知識社会への対応」、2特に日本で深刻な「少子高齢化」、3「グローバル化」あるいは「国際化」を頭に持ってきて、これらに対応していくために社会の建て直しが必要でありその社会を支える人間の形成が必要、とすることにより、わかりやすく整理でき、全体も導ける。一般の国民に分かりやすくしないといけない。

  現状と課題について、臨教審以来努力したにもかかわらず改革以上に変化が早かったから危機が起きているという基本的トーンがあるが、世間には、誤った教育改革の結果が「失われた10年」を生んだとの認識もあるところ。また、これまでの教育改革にもかかわらずなお法改正が必要と言うのは、基本法が悪かったのか教育政策が悪かったのか、どちらが原因なのかという議論がある。特に初等中等教育については、マスコミでも大きく取り上げられており、無視できない。
  3頁の2(21世紀の教育が目指すもの)について色々なことが書かれているが、なぜか肝心のことが書かれていない。少子化については総人口の話ばかりで、在学者数が減って学校教育が危機に陥っていること、また、大競争時代の知識社会では、デジタル・デバイドのみならず国民の間に、知識、教養、所得格差などの格差が広がることが書かれていない。また、知識社会から落ちこぼれるであろう沢山の人間にどういった手をさしのべるかが書かれていない。
  国・地方を通じる財政の逼迫について書かれていない。教育の改善策は色々考えられるが、財政上の制約との関係をどうするのかについて、あらかじめ考えておく必要がある。

  冒頭に基本的コンセプトを書くことは必要。前回の議論でも発言があったように、本当の意味の民主主義・平和主義を教えることが大切であるという点をうまく書き込むことが大事。イデオロギー論争を避けて知的に書くことは可能だと思う。これを書くことは避けて通れないところであり、書かないと法改正のモチベーションが希薄になるし、アピールも伝わらない。日本としてどういう教育を迫られるのかという問題意識を明確にすることが必要。
  1頁の「高校進学率の上昇にみられるように教育が普及」したというのは、数字の上にすぎない。数字の上の普及が教育の形骸化をもたらした面もあり、進学率が低い頃の方が教育が充実していたかもしれないし、進学率をもって普及と言えるのか。
  1頁下の「東西の冷戦構造の崩壊」との記述については、米ソ冷戦構造は終焉したが、アジアにはまだ冷戦が残っており、事実としておかしい。最近は「新しい冷戦」ということも言われる。
  9頁3「新たな知が新たな産業を起こし・・」のところ、知が産業を起こすのは事実だが、科学技術や産業革命で国が発展した頃とは違う。「新たな成熟社会につながる」といった表現がよい。

  柱立ては大変よい。1章は、2〜3章を導くための分析となるので、2,3章をやってからもう一度振り返らないといけないと思う。
  基本法を改正し基本計画を作ることのインパクトが弱いという意見はもっともだが、逆に課題があるとする問題提起が極端になっているところもある。特に、2頁の最初のパラグラフや7頁の国民意識の変容では日本人の精神構造などは木っ端みじんにやっつけられている。反省はいいが、ここまでひどいのだろうか。表現に工夫ができないか。

  基本法改正と基本計画策定が大前提の議論になっているようだが、この場で「見直しは必要ない」という結論はありうるのか。
  大前提として1章に書かれている問題の原因は、基本法に根源があるとは思えない。また、個々人の意識や価値観を変えれば済むのか、社会システムに問題があるのかの区別がないために、説得力を欠いている。例えば、8頁の「モラルの低下」について、選挙や行政への申し立てなど、社会の仕組みが国民の声を反映できるようになっていないということもあるはずだが、ここでは、個々人の意識の問題が強く出過ぎている。
  今日までの教育改革に対する批判、特にゆとり教育については両論がある。11頁に「個に応じた指導の充実と、学びの幅の拡大」として書かれている個性に応じた指導についても、これがかえって基礎的な力を育てないという批判もあるなど議論のあるところ。
  7頁の「科学技術の進歩」のところ、「新たな倫理観、生命観の涵養」とあるが、ライフサイエンスやバイオが進展したことによって「倫理観、生命観」が新たなものになるのか。むしろ「変わらない倫理観、生命観」が重要なのではないか。

  もう少しきちっと書いてほしい部分は、4頁の「就業構造の変貌」のところ。就業構造が変化したから中高年の離職が余儀なくされている事実はあるが、そうならないために何をすべきかを書かないといけない。高卒新卒者の就職が難しい状況やフリーターの増加には注目すべき。学歴と就業のミスマッチが起きているということである。若者は生きがいと働きがいを一致させたいと考えているが、それが産業界の考え方と合っていない。自分の生きがいを大切にしつつ、資本主義の中で生きる力を付けさせることが重要である。

  原因の分析をもっとする必要がある。
  日本人という言葉がたくさん使われているが、それは「日本民族」か、「日本国籍を持つ外国人」も含まれるのか、「ボーダーレス時代の日本人」なのか。
  カタカナを使いすぎである。
  2頁の「価値観が揺らぎ」は「価値観の多様化」と言うべき。また、「閉塞感」は言い過ぎ。この部分には、大人の社会のモラルハザードについても書かないといけない。
  その次の○の「学校教育に過度に依存」はなぜかといえば、かつての学歴社会の中で学校は受験のための教育を担っていたからであって、そのことを書いた方が良い。「教育の原点である家庭」とあるが、学校教育も重要であるので、「重要な役割を担う家庭」のような表現の方が良い。
  3頁の「国家や社会の構成員」の前に、国家・社会の形を示すために「民主的で文化的な」を入れるべき。また、15期中教審で提言されたように「人権を尊重する心」も入れてほしい。
  4頁の最初に「女性の高学歴化・就業率の上昇による晩婚化」が少子化を引き起こしたように書かれているが、これについては異なる認識があるのではないか。全体的に、男女共同参画の視点が少ない。また、人口変化の細かい数字はいらないのではないか。
  その下の○、地域の変容については、外国人との共生・共同生活が重要になってきているので、外国人子女の教育の問題も含めて扱うべき。
  9頁、「豊かな心を育むことが時代を超えて大切にされてきた」とあるが、戦前の教育はそうだったか。時代認識を踏まえて書き換えてほしい。
  「世界水準」を求めるのであれば、財政的裏付けをどうするのかを書く必要がある。また、システムについても、どこをどう直さなければならないかを書いてほしい。
  11頁の「豊かな教養」の部分の記述は大時代的な感じがする。

  異文化との共生には国内的なものも国外的なものもある。7頁の1〜2行目には、イデオロギーのことは書かなくてもよいと思うが、民族・宗教・文化というのは3つ並べて「民族や宗教や文化」と書いてほしい。
  先ほどの冷戦についての表現は、「東西冷戦」として間の「の」をとればよいと思う。

  基本法として何を改正のポイントとするのか、基本計画で打ち出すポイントとは何にするのかを考えてこの第1章を作らないといけない。網羅的になるとインパクトがなくなる。
  基本法については、戦後のある時期の平和主義・民主主義・国際主義・非宗教化が、新しい平和主義・新しい民主主義・新しい国際主義・宗教の共生に変わる、ということを言う必要がある。また、子どもの権利条約が批准されたが、基本法には子どもの権利について書かれていない。韓国の教育基本法のような「学ぶ権利」から一歩進んだ子どもの権利の視点がほしい。また、男女雇用機会均等法の下の、母性の重要性までも含めた新しい男女の在り方というものを教育の中でどう貫くかという視点も重要である。新しい時代に向かった新しい理念を打ち出さないといけない。
  基本計画については、文化的・倫理的に尊敬される国を教育の力で作っていこうという視点からもう少し書き込まないといけない。
  基本法・基本計画に共通すべき考え方は、日本列島に住む人々が連帯を深め、共通の目的を見つけて手を携える気運を盛り上げ、ナショナル・アイデンティティを確立していくことではないか。今の第1章は、その考え方を導くためのダイナミックな訴えとしては弱い。第1章があって、だから…という風に、第2章、第3章の各論につなげてほしい。

  資料1は、タイトルを見なければ普通の答申の第1章と同じで、基本法の改正や基本計画の必要性をいうためのものと思えない。また、問題の分析について、その原因が社会の変化だけにあるのか、あるいは私たちに反省すべき点があるのか、基本法は良いがその運用が良くなかったのか、そういうことの考察があった上で2章につながっていくべきと考えるが、書かれていない。これで一般の国民が納得できるのか。
  全体的に、過去は良くて現在は悪いというトーンが強すぎる。
  また、文が長すぎて、何のために基本法の見直しをするのか、基本計画の策定をするのか、わからなくなってしまう。もっと短く、現状の問題点がすっと頭にはいるようにしてほしい。
  強引に原因と結果を結び付けているように見えるところが何カ所かある。
  新しいパブリック、自己と他の関わりを書くことはよいと思うので、もう少し入れるといい。

  12頁に「人材教育立国」という表現がある。これは諮問段階では「人材教育大国」となっていたと思う。いずれにせよ、日本は昔から教育立国と言われてきたが、今の時点で求められる「教育大国」とは何かについて説明することが必要。

鳥居部会長  第2章以降に踏み込まないと第1章についての議論は完結しないとの意見はおっしゃるとおりであるし、実際にも第3章まで議論した後で、また第1章に戻ってくることになると思う。今後の流れとしては、今日の議論の結果を踏まえて修正した資料1を30日の総会にかけ、その後、基本法や基本計画の議論に踏み込んだ段階で再度検証せねばならない事項もあるはずなので、その部分について議論をしたうえで再び第1章に戻り、若干の書き足しをする、という形になるのではないか。

  総会の持ち方について提案したい。基本法や基本計画についての議論をする場合には、基本問題部会の臨時委員にも出席を願ってはどうか。今後、部会と総会とで齟齬なく議論を重ねるには、臨時委員からの発言や情報提供が必要だ。

鳥居部会長  これについては、事務局と相談して検討したい。

  大臣から諮問をいただいたのが昨年の11月だが、次回の総会でようやく第1章の文章が示され、その後、第2章、第3章と進む。諮問から約1年が経つが、われわれが基本法の改正条文を審議するのはもっと先のことになるのか。今後の見通しを教えてほしい。

鳥居部会長  とりあえず中間報告を出し、そこで、基本法改正と基本計画策定に当たっての基本的方向を示す要綱のようなものを示したい。そうすれば、少なくとも法改正の柱、計画策定の柱が示されることになる。それをたたき台にして、中教審が基本法改正案や基本計画の最終版を提示するのか、それともその作業は立法府なりに任せるのかということについては、これから先の問題となる。

事務局  基本法については、基本法の在り方について御審議いただき、改正の方向性をお示しいただきたい。計画についても、基本的な考え方を御提示いただき、そのうえで国民各界各層や碩学泰斗の意見を聴取の上、最終的な答申をいただければと思う。

鳥居部会長  地方公聴会やヒアリングの予定についてはどうか。

事務局  今後のスケジュールについては、10月に第2章、第3章について部会及び総会で御議論いただき、できれば10月中に中間報告をいただきたい。11月には部会としてのヒアリングや地方公聴会を実施するとともに、パブリックコメントの手続も行いたいと考えている。そして、11月末以降に審議を再開し、答申に向けた取りまとめをお願いしたい。

  基本法の在り方についてまとめるのであって、基本法の条文案そのものについての答申を求められているわけではないということか。

事務局  法案自体については、政府提案となるのならば、文部科学省でまとめたものを内閣法制局が審査した上で、国会に提出し御議論いただくこととなる。

  中教審が鼎の軽重を問われないようにすべきである。個々の条文を取り上げてここをこう直せというのを並べるだけでは、中教審の意味がない。そういうことを述べるにしても、どうして基本法改正が必要かについての骨太の検証を前提にすべきだ。細かい議論を展開し、いろいろなところから攻められるのを怖れてはいけない。大胆にラショナーレを明確にしたものをまずは提示すべき。

鳥居部会長  お配りした「参考1」を見れば、事務局も現行法について逐条的に検証していくというつもりではないことが分かると思う。委員各位におかれては、今のうちにいろいろとご意見をいただき、ここに表れた考え方を育ててほしい。

  とにかく、第2章と第3章の「1.」に当たる部分はインパクトの強いものを作ってほしい。

  3頁の「教育の役割と継承すべき価値」の部分について、「時代を超えて変わらない価値のあるもの」と「時代の変化とともに変えていく必要があるもの」しか示されていないが、前回の部会の議事概要を見ると、この他に「教育によっては教え込めないものがある」ことを言いたかったのではないだろうか。少なくとも、こういうものがあることを前提として認識できるような書き方にしておかないと、教育によって何でもできる、という教育万能の考え方にはまりこむ可能性がある。また、継承すべき価値というが、例えば規範意識については継承されるものもあるが、その背後にある「公正」といった人間の本質的価値観もあり、これは伝えるという作用がなくても社会の中で受け継がれていくものではないか。この部分は、今後「継承すべき価値」について論理展開するに当たって、本質的な部分になると思われる。

鳥居部会長  前回の議論の中では、不易と流行という言葉についていろいろな意見が出た。今回その言葉が消えたのは、これはたしかに日本の教育学界における伝統的な用語だが、例えば「流行」という語については一般における意味との間に乖離があることを踏まえ、内容をより適切に表す言葉に書き改めたためである。

  すっと胸に落ちるものにするためには、例えば1頁めについては、最初の3つの○を削除して、4つ目の○から書き出してはどうか。また、いじめ云々の記述には、国民も辟易しているはずなので削除し、学校教育への過度の依存につなぐと、より分かりやすいものができると思うが。

  個人的には「不易流行」は好きな言葉だが、「流行」を言い替えるならば「不易」も言い替える方が良いかもしれない。


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