2 |
一般的にいえば、成人教育の目的は、以下のことに貢献すべきである。
(a) | 平和、国際理解および協力のための事業を促進すること |
(b) | 主要な今日的問題および社会変化についての批判的な理解と、社会的正義を達成するために社会の進歩に積極的な役割を果たす能力を発達させること |
(c) | 人々と彼らの物理的、文化的環境との間の関係についての高まってきた認識を促進すること、および環境の改善への欲求と共通の遺産であり公共の財産である自然の尊重および保護への欲求とを育成すること |
(d) | 国家的および国際的局面の両方で、慣習および文化の多様性に対する理解と尊重を創り出すこと |
(e) | 家族、地方、国家、地域および国際的な水準における多様な形態のコミュニケーションおよび連帯についての高まってきた認識を促進し、多様な形態のコミュニケーションおよび連帯を実行すること |
(f) | 個人的に、あるいは集団で、あるいはこの目的のために特別に設立された教育施設における組織的研究のいずれかで、人格の全面的な成熟の助けとなる新しい知識、資質、態度あるいは行動形態を習得するための才能を発達させること |
(g) | 男女に発達した技術教育および職業教育を与え、かつ個人的にあるいは集団の中で、新しい物的財産および新しい精神的もしくは美的な価値を創造する能力を発達させることによって、個々人が自覚的かつ効果的に労働生活に入ることを確保すること |
(h) | 子どもの養育に関連した問題を適切に把握する能力を発達させること |
(i) | 余暇を創造的に活用する才能、および何らかの必要なもしくは要求される知識を習得する才能を発達させること |
(j) | マスコミ、とくにラジオ、テレビ、映画およびプレスを活用する際、および社会によって今日の男女に届けられる多様なメッセージを解釈する際の必要な識別力を発達させること |
(k) | 学習することを学ぶ才能を発達させること |
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3 |
成人教育は、以下の原則に基づくべきである。
(a) | 成人教育は、参加者のニーズを基礎とし、成人教育の発展における彼らのさまざまな経験を活用しなければならない。教育上最も恵まれていない集団が、集団的な発達の展望の中で最優先権が与えられるべきである。 |
(b) | 成人教育は、あらゆる人間が個人の発達の水準ならびにその社会的活動の関連で、彼らの生涯を通して進歩する能力と決意(determination)に依拠すべきである。 |
(c) | 成人教育は、読書についての関心を喚起し、かつ文化的な願望を発達させるべきである。 |
(d) | 成人教育は、成人学習者の関心を刺激しかつ持続し、彼らの経験に訴え、彼らの自立を強化し、彼らが関係する教育過程のあらゆる段階に積極的な参加を得るべきである。 |
(e) | 成人教育は、日常の生活と労働の現実の条件に適合し、成人学習者の個人的特質すなわち彼らの年齢、家族、社会上、職業上もしくは住居上の背景、およびこれらの相互関連の状態を考慮すべきである。 |
(f) | 成人教育は、ニーズの決定、カリキュラムの開発、プログラムの実施や評価を含むあらゆる段階の学習課程での決定行為に、個々の成人、集団、地域社会の参加を追求すべきである。また、成人教育は、成人の労働環境やその生活の変革を目的として教育活動を計画すべきである。 |
(g) | 成人教育は、成人学習者が所属する国および社会それ自体の社会的、文化的、経済的、制度的要因を考慮して、柔軟に組織され、運用されるべきである。 |
(h) | 成人教育は、地域社会全体の経済的、社会的発展に貢献すべきである。 |
(i) | 成人教育は、成人が自己の日常の問題を解決するために設立した集団的な組織を教育過程の不可欠な部分として承認すべきである。 |
(j) | 成人教育は、すべての成人が、自己の生活経験によって、自己の参加する教育過程において学習者と教師の両方の役割を演ずることができる文化の媒介者である、ということを承認すべきである。 |
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4 |
加盟国は、以下のことをすべきである。
(a) | 成人教育が、自国の教育制度の必要かつ固有の構成要素であり、自国の社会的、文化的、経済的発展の政策における永続的な要素であることを承認すること。それゆえ、加盟国は、性、人種、出身地、年齢、社会的地位、意見、信条あるいは以前の教育水準を根拠とする制約をおかずに、あらゆる範疇の成人のニーズと欲求に見合う機構の創造およびプログラムの作成と実施および教育方法の適用を促進すべきである。 |
(b) | 成人教育が、一定の状況においてあるいは特定の期間において、補完的な役割を果たしうるけれども、成人教育の完全な成功のための先行条件である適切な青少年の教育(youth education)の代替物を意図するものではないことを承認すること。 |
(c) | 女性が成人教育から隔離されている状態を解消する際に、従来男性に留保されていた活動あるいは責任につながる資格を得るための訓練を与える活動を含む成人教育活動の全範囲に平等にアクセスし、かつ完全に参加することを確保する方向で努力すること。 |
(d) | 次のような人々による成人教育および地域社会発展のプログラムへの参加を促進するための措置をとること。それらの人々とは、都市部生活者であれ農村部生活者であれ、定住民であれ移住生活者であれ、最も恵まれない集団の人々、とりわけ文盲の人々、十分な水準の普通教育あるいは資格を獲得できていない青少年、移住労働者や難民、失業者、種族上の少数者、身体的もしくは精神的障害をわずらっている人々、社会的適応の困難を経験している人々、および拘禁刑に服している人々、である。この関連で、加盟国は社会集団間のより公平な関係を育成することをめざした教育上の戦略の探究に参加すべきである。 |
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5 |
各教育制度における成人教育の位置は以下のことを達成するために定められるべきである。
(a) | 当初の教育と訓練へアクセスする際の主要な不平等、とりわけ年齢、性、社会的地位、社会的出身もしくは出身地に基づく不平等を是正すること |
(b) | 生涯教育・生涯学習のための科学的な根拠を確保し、ならびに人々が自己の生活を教育と労働とに割り振る方法におけるより大きな柔軟性を保証すること、とりわけ、全生涯を通して教育と労働の期間を交互に繰り返すようにし、かつ継続的な教育を労働自体の活動の中に統合するよう助長すること |
(c) | 成人の多様な経験のもつ現実のもしくは潜在的な教育価値を承認し、さらに開発すること |
(d) | ある型もしくはある水準の教育から他の型もしくは水準の教育へ容易に移ること |
(e) | 教育制度とそれをとりまく社会的、文化的、経済的環境とをより密接に相互関連させること |
(f) | 教育費を、社会的、文化的、経済的な発展に貢献するという観点から、より効率的にすること |
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6 |
いかなる発展計画の企画と実行においても、読み書き能力を含む成人教育の構成要素の必要性を考慮すべきである。 |
7 |
成人教育政策の目的と目標は、国家発展計画に組み入れられるべきである。すなわち、その目的と目標は、教育政策および社会的、文化的、経済的発展政策の全目標に関連して定められるべきである。 成人教育およびとくに学校教育、高等教育および当初の職業訓練のような他の形態の教育は、生涯教育・生涯学習という主義(tenets)に従って、同等であるが区別された教育制度における等しく不可欠な構成要素として把握され、組織されるべきである。 |
8 |
公当局、教育に従事する機関もしくは団体、任意の団体、労働者ならびに雇用者組織、および成人教育に直接参加する人々が上記の目標をさらに明確にし実行に移す仕事を協力して行うように奨励する措置がとられるべきである。 |
9 |
成人教育の活動は、生涯教育・生涯学習の一部分をなすとみなされているが、理論上の境界線を有していない。それゆえに、その活動は、発展、地域社会の生活への参加及び個人の自己実現という明確なニーズによって創り出される具体的な状況に適合すべきである。すなわち、その活動は、生活のあらゆる側面と知識のあらゆる分野に及び、人々の到達水準がいかなるものであろうとも、あらゆる人々を対象とする。成人教育活動の内容を定める際に、教育上最も恵まれない集団の明確なニーズを優先すべきである。 |
10 |
市民教育、政治教育、労働組合教育および協同組合教育の活動は、あらゆる水準の意思決定過程で社会的な問題の処理に効果的に参加することによって、独自のかつ批判的な判断力を発展させること、および生活条件および労働条件に影響を与える変化に対処するために各自が必要とする能力を身につけ、もしくは高めることをとくに目的とすべきである。 |
11 |
技術教育および職業教育活動は、特別な状況における短期的な解決の達成をめざすアプローチを除外しないが、一般原則として、職業のその後の変化に対応するのに十分幅の広い資格の習得、および労働生活上の問題の批判的な理解力の習得に重点をおくべきである。普通教育および市民教育と技術教育および職業教育とを統合することが必要である。 |
12 | 文化の発展および芸術的創造を促進するための活動は、現存の文化的および芸術的な価値や作品の正しい評価力を促進し、同時に、各個人もしくは集団に内在する表現能力を発揮させることによって新しい価値および新しい作品の創造の促進を目的とすべきである。 |
13 | 成人教育への参加は、性、人種、出身地、文化、年齢、社会的地位、経験、信条および以前の教育水準を根拠として制限されてはならない。 |
14 | 女性に関して、成人教育活動は、女性が自己決定を達成し集団的な勢力として社会生活に貢献できることをめざす今日の社会運動全体に可能な限り統合されるべきである。したがって、その活動は、とくに以下のような一定の側面に焦点をあてるべきである。
(a) | 各社会において、男女平等の条件を確立すること |
(b) | 男女が責任を果たすあらゆる分野において、社会が男女にあらかじめ決めつけた型から彼らを解放すること |
(c) | 完全な個人として女性が存在するための必要条件である市民的、職業的、心理的、文化的および経済的自立 |
(d) | 国境を越えて連帯を高めるために、多様な社会における女性の地位および女性運動についての知識 |
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15 | 農村部に住む定住者あるいは遊牧民に関して、成人教育活動は、とくに次のことをめざすべきである。
(a) | それらの人々が、自分自身の価値の放棄を強制されることなしに、生活水準を改善するような個人的もしくは共同での組織化の技術的手続および方法を活用できること |
(b) | 個人もしくは集団の孤立を終らせること |
(c) | 農村地域の極端な過疎を防ぐためになされる努力にもかかわらず、農業を捨てざるをえない個人もしくは集団に、農村の環境にとどまりながら新しい職業活動に従事すること、あるいは新しい生活方法のためにこの環境を捨てることのいずれかを準備すること |
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16 | 文盲のままでいるか、あるいは財源の乏しさ、限られた教育もしくは地域社会の生活への制限された参加のために社会への適応に困難を経験しているような人々もしくは集団に関して、成人教育活動は次のことをめざすべきである。すなわち、彼らが基礎的な知識(読み、書き、計算、自然現象および社会現象の基本的な理解)を習得することができるようになるのみならず、彼らが生産労働に従事すること、衛生、健康、家族の営みおよび子育てに関する問題の自覚と把握力を促進すること、および彼らの自治を高め、地域社会の生活への参加を増進することがより容易になるようにする。 |
17 | 十分な水準の普通教育もしくは資格をいまだ習得することができていない青少年に関して、成人教育活動は、とくに社会の問題を理解し、社会的な責任を担える能力を発達させ、さらに職業活動の遂行に必要な職業訓練および普通教育を利用可能ならしめるために、彼らが補足的な普通教育を習得できるようにすべきである。 |
18 | 学業証明書もしくは職業適性証明書によって正式に証明される教育上もしくは職業上の資格で、社会的あるいは経済的理由のため以前には取得できなかった資格を取得したいと人々が願う場合、成人教育は、彼らにそれらの証明書の授与に必要な訓練を受けることができるようにすべきである。 |
19 | 身体的もしくは精神的に障害のある人々に関して、成人教育活動は、その障害の結果として損なわれあるいは失ってしまった身体的もしくは精神的能力を回復しあるいは埋め合わせること、および、知識と技術、そして必要な場合には、社会生活のためおよび障害に見合った職業活動の遂行のために必要とされる専門的な資格を彼らが取得できるようになることをとくにめざすべきである。 |
20 | 移民労働者、難民および種族上の少数者に関して、成人教育活動はとくに以下のことをすべきである。
(a) | 受入れ国の社会に一時的もしくは永久的に同化するため、そして適切な場合には、出身国の社会に再同化するために必要とされる言語上の知識および一般的知識ならびに技術的もしくは専門的資格を彼らに取得させること |
(b) | 自己の出身国の文化、今日の発展および社会変化と接触を保てるようにすること |
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21 | 教育を受けた者を含む失業者に関して、成人教育活動は、彼らが職を見つけもしくは再就職しうるように自己の技術的もしくは専門的資格を応用しもしくは修正すること、そして自己の社会経済的状況に対する批判的な理解力を増進することをめざすべきである。 |
22 | 種族上の少数者に関して、成人教育活動は、彼らが自己を自由に表現し、母語で自己および自己の子どもを教育し、自己の文化を発展させ、そして母語以外の言語を学ぶことができるようにすべきである。 |
23 | 高齢者に関して、成人教育活動はとくに以下のことをめざすべきである。
(a) | あらゆる高齢者に対し今日の問題および若い世代についてのよりよい理解力を与えること |
(b) | 余暇のすごし方の技術(skills)を習得し、健康を増進しおよび人生に高い意義を見出すことを助長すること |
(c) | 労働生活を離れようとしている人々の利益のために、退職した人々の直面する問題およびそのような問題に対処する方法についての基礎知識を提供すること |
(d) | 労働生活を離れた人々が自己の身体的、知的能力を保ち、引き続き地域社会の生活に参加し、さらにまた労働生活中には接しえなかった知識の分野もしくは活動の型にアクセスすることができること |
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24 | 成人教育の方法は以下のことを考慮すべきである。
(a) | 成人に特別に影響を与える参加および学習を誘発するものならびにその障害物 |
(b) | 家族、社会および職業における責任の遂行の際に成人によって得られた経験 |
(c) | 成人ゆえに生じる家族、社会、もしくは職業における義務、およびその結果生じる疲労と注意力の減退 |
(d) | 成人が自己の学習に責任を負う能力 |
(e) | 活用しうる教育職員の文化的・教育学的水準 |
(f) | 学習過程の心理学上の特性 |
(g) | 認識できる関心の存在と特性 |
(h) | 余暇の利用 |
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25 | 成人教育活動は、通常、定められた目標と同様に、確認されたニーズ、問題、要求および資源を基礎として計画され実施されるべきである。それらの活動の影響は、評価され、所与の条件に最も適切である成人教育を追求する活動のすべてによって強化されるべきである。 |
26 | 社会的もしくは地理的単位全体を対象とし、地域社会の中での集団の進歩および社会進歩の前進のためにその単位全体に内在するエネルギーをすべて動員する成人教育活動がとくに強調されるべきである。 |
27 | できる限り広範な参加を奨励するために、地方に基礎をおく成人教育に以下のような方法を加えることが、いくつかの場合では適切であろう。
(a) | 通信教育講座およびラジオもしくはテレビ放送のような遠隔の教授プログラム。このようなプログラムを受ける意図のある人々は、共同視聴もしくは共同学習のために集団を作ることが要請される(このような集団は適切な教育学上の援助を受けるべきである) |
(b) | 移動車によって行われるプログラム |
(c) | 自己教授のプログラム |
(d) | 研究サークル |
(e) | 教師、学生およびその他地域社会の構成員による自発的な活動の活用 公共の文化機関(図書館、博物館、レコードライブラリー、ビデオカセットライブラリー)が成人学習者の自由な使用を可能にするさまざまなサービスは、成人教育専門の新しい型の機関とともに、系統的な基礎をもって発展させられるべきである。 |
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28 | 成人教育のプログラムへの参加は自発的な事柄であるべきである。国家およびその他の団体は、生涯教育・生涯学習の精神で個人および集団の教育への欲求を助長するように努めるべきである。 |
29 | 成人教育における学習者と教師の関係は、相互尊重と協力に基づいて確立されるべきである。 |
30 | 成人教育のプログラムへの参加は、用意された訓練過程についていける能力のみを条件とすべきであって、いかなる年齢制限(年齢の上限)、もしくは修了証書や資格の所有に関連するいかなる条件にも左右されてはならない。選抜が必要な場合、その根拠となる適性テストはいずれも、そのようなテストを受ける多様な範疇の志願者に合わせたものにすべきである。 |
31 | 断続的な参加を通しても学習や経験や資格を取得し蓄積することができるようにすべきである。この方法で得た権利や資格は、正式の教育制度、もしくはその制度内での継続的な教育を見込んでおくような性格を有する制度によって与えられたものと同等であるべきである。 |
32 | 成人教育で活用される方法は、競争心に訴えるのではなく、共有の目的意識、および参加、相互援助、協力そしてチームワークの習慣を成人学習者に発達させるべきである。 |
33 | 技術的もしくは専門的資格の向上のための成人教育のプログラムは、できる限り、労働時間中に、季節労働の場合には閑散期に組織されるべきである。このことは、一般原則として、その他の形態の教育、とくに識字のプログラムおよび労働組合教育にもまた適用されるべきである。 |
34 | 成人教育活動の発展に必要な建物が提供されるべきである。場合によって違うが、この建物は、居住設備の有無にかかわらず成人教育の目的に独占的に使用されうるか、あるいは多目的施設もしくは総合施設、あるいは他の目的 とくに、クラブ、作業場、学校、大学、研究所、社会センター、文化センター、社会文化センター、あるいは屋外施設 のために一般的に使用されているかもしくは使用される可能性のある建物であろう。 |
35 | 加盟国は、あらゆる側面の成人教育およびその目標についての共同研究を積極的に奨励すべきである。研究計画は、実践的な根拠をもつべきである。これらの計画は、学際的なアプローチを採用している大学、成人教育団体および研究団体によって実行されるべきである。国内および国際的な段階で成人教育の当事者に、研究計画の経験および成果を普及するための措置がとられるべきである。 |
36 | 成人教育活動についての系統的な評価は、その活動につぎこまれた資源から引き出される最上の成果を確保するために必要である。評価を効果的に行うために、系統的な評価があらゆる水準およびあらゆる段階の成人教育のプログラムに組み入れられるべきである。 |
49 | 教育への権利と労働権の保障の間の密接な関連を配慮しながら、さらに、賃金労働者か否かを問わずあらゆる者が、受けている制約を減らすことによってのみならず、成人教育のプログラムを通して利用可能になることがめざされている知識、資質もしくは適性を自己の仕事に活用する機会、および、個人の実現と発展の源泉ならびに労働生活と社会生活の両面での創造的な活動への刺激を労働の中に見出す機会を与えることによって、成人教育のプログラムへの参加を促進する必要性を配慮しながら、以下の措置がとられるべきである。
(a) | 成人教育のプログラムおよび活動のカリキュラムを作成する際に、成人の労働経験が考慮に入れられることを確保すること |
(b) | 労働の組織および条件を改善すること、とくに労働に伴う苦痛を軽減し、労働時間を短縮し、調整すること |
(c) | 報酬を損なうことなしに、もしくは補償的な報酬の支払いおよび受ける教育にかかる費用を埋め合わせる目的での支払いを条件として、労働時間中に教育休暇を与えることを促進すること、および、労働生活中の教育もしくは最新化を助長するあらゆる他の適切な補助手段を活用すること |
(d) | このような援助を受けた人々の雇用を保障すること |
(e) | 主婦、その他の家事を行う者および賃金労働者でない者、とくに制限された手段しか持たない人々に上記に匹敵する便宜を提供すること |
|
50 | 加盟国は、成人教育に関係する条項、とくに以下のことを規定している条項を労働協約の中に含めることを奨励もしくは助長すべきである。
(a) | 成人教育のプログラムに参加するために、被雇用者、とくに急速な技術革新がおこっている部門に従事している人々もしくは一時解雇におびえている人々に与えられる物理的可能性および財政的援助の性質 |
(b) | 成人教育を通して取得された技術上もしくは専門上の資格が、職種を決定する際および報酬の水準を確立する際に考慮される方法 |
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51 | 加盟国は、また、雇用者に対して次のことを要請すべきである。
(a) | 熟練労働力の要件およびそのニーズに見合うと思われる募集方法を資格のレベルおよび型に応じて予測し、公表すること |
(b) | 被雇用者が職業上の資格の向上のために努力することを奨励するような募集制度を組織しまたは発展させること |
|
52 | 加盟国は、雇用者が職員のために組織した成人の訓練のプログラムに関連して、雇用者に以下のことを確保するよう奨励すべきである。
(a) | 被雇用者がそのプログラムの準備に参加すること |
(b) | そのようなプログラムに参加する人々は労働者を代表する団体と協議して選ばれること |
(c) | 参加者が、そのプログラムの完了と同時に、所与の課程を終了したこと、もしくは所与の資格を取ったことを第三者に納得させることのできる訓練の修了証書もしくは資格証明書を受け取ること |
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53 | 労働者、農民もしくは職人の社会集団に所属している成人がそのような集団のために企画された成人教育のプログラムの実施に参加することを促進するための措置がとられるべきである。この目的のために、これらの成人は、主として自己にかかわる決定を行うことのできるように特別の便宜が与えられるべきである。 |
54 | 国際的、地域的、国家的および地方的なすべての段階で、以下のことが設定されるべきである。
(a) | 成人教育の分野で権限を有する公当局間の協議および調整のための機構もしくは手続 |
(b) | 上記の公当局、成人学習者の代表、および成人教育計画もしくはその計画の発展を促進することをめざして活動を行っているあらゆる団体との間の協議、調整および調和のための機構もしくは手続 これらの機構は、目標を確認し、直面する障害を研究し、成人教育政策の実施に必要な措置を提案し、適切な場合にはそれらを実行し、なしとげられた進歩を評価することを主要な任務とすべきであり、そして、そのために資源が利用できるべきである。 |
|
55 | 一方で成人教育に責任を負う公当局および公的団体と、他方でラジオやテレビに責任を負う公的もしくは私的団体との間の共同行動および協力のための機構が、国家的段階で、適切な場合には、下位の段階で設立されるべきである。 これらの機構は、以下のことをめざした措置を研究し、提案し、適切な場合には、実行することを主要な任務とすべきである。
(a) | マスメディアが余暇の活動および人々の教育に実質的な貢献をすることを確保すること |
(b) | マスメディアを通じて、成人教育の分野におけるあらゆる意見および傾向に関して表現の自由を保障すること |
(c) | 放送番組全体の文化的もしくは科学的な価値および教育的な質を向上させること |
(d) | ラジオもしくはテレビによる教育番組の放送に責任を負う人々もしくはそれに専門的に従事している人々と、その番組の対象となる人々との間の相互交流を確立すること |
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56 | 加盟国は、公当局が成人教育の発展のために固有の明確な責任を果たしながら、以下のことを行うことを確保すべきである。
(a) | 適切な法的および財政的な枠組みを定立することによって、自発的でかつ行政上独立した基盤をもつ成人教育団体およびその連合体の創設と発展を奨励すること |
(b) | 成人教育計画もしくはその計画の促進をめざした行動に参加している権限ある非政府団体に、その職務を実行できるだけの技術的資源もしくは財源を与えること |
(c) | 上記の非政府団体が、本勧告第2項に掲げられた原則を実行するために必要な言論の自由、および技術上、教育上の自治を享受するということを理解すること |
(d) | 公的な基金からの寄附を受けている団体による成人教育計画もしくは活動の教育的および技術的な効率や質を確保するための適切な措置をとること |
|
57 | 公的な基金とくに教育のためにあてられる公的な基金の成人教育へ割り当てられる割合は、本勧告の枠組内で各加盟国が承認する社会的、文化的、経済的発展のための成人教育の重要性に見合うものであるべきである。基金の成人教育への全体的割当ては、少なくとも以下のことを対象とすべきである。
(a) | 成人教育にふさわしい施設を用意するかもしくは既存の施設をふさわしいものにすること |
(b) | あらゆる種類の学習教材の作成 |
(c) | 教授者の報酬およびいっそう高度な訓練 |
(d) | 調査研究費および情報収集費 |
(e) | 所得の損失のための補償 |
(f) | 授業料、および必要でかつ可能な場合には、訓練を受ける者の宿泊費および交通費 |
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58 | 成人教育のプログラムおよびその発展の促進を意図する活動に必要な資金を恒常的に確保するための措置がとられるべきである。地方当局を含む公的機関、信用機関、互助会および存在する場合には国家的保険機関ならびに雇用者は、それぞれの責任と資源に応じてこの資金拠出を行うべきである。 |
59 | 成人教育用に利用しうる資源の最適な利用をするために必要な措置がとられるべきである。この目的のために利用しうるあらゆる物的および人的資源の両方が動員されるべきである。 |
60 | 個人については、資金の不足が成人教育のプログラムへの参加の障害になってはならない。加盟国は、研究目的達成のための財政援助が成人教育を始めるためにそれを必要とする人々にとって利用可能であるよう確保すべきである。恵まれない社会集団の構成員の成人教育への参加は、一般原則として無償であるべきである。 |
61 | 加盟国は、成人教育の発展、その内容と方法の改善、および新しい教育上の戦略を探究するための努力を促進するために、2国間を基礎にするか、多国間で行うかは別として、加盟国の協力を強化すべきである。 この目的のために、加盟国は、成人教育にかかわる特別の条項を教育、科学および文化の分野における協力に関する国際協定の中に規定する努力をすべきであるし、ユネスコにおける成人教育の事業の発展と強化を促進する努力をすべきである。 |
62 | 加盟国は、技術援助および適切な場合には物的または財政的援助を他の加盟国に提供することによって、他の加盟国の自由になる成人教育に関する経験を推し進めるべきである。 加盟国は、援助を希望する国に対し、ユネスコおよび非政府組織を含むその他の国際組織を通じて、当該諸国の社会的、文化的および経済的発展のために、成人教育活動を系統的に援助すべきである。 国際協力が、他国の成人教育の構造、教育課程、方法および技術をたんに移転するという形態をとるのではなく、むしろ関係国の特別な事情に適応した適切な機関および十分に調整された構造の設立を通じて当該国における発展を助長し刺激することを確保する配慮をすべきである。 |
63 | 国家的、地域的および国際的段階で次のことを目的とした措置がとられるべきである。
(a) | 成人教育の戦略、構造、内容、方法および成果ならびに関連する研究に関する情報および文献を定期的に交換すること |
(b) | 母国を離れて勤務することのできる教授者、とくに、2国間または多数国間の技術援助プログラムに基づいて勤務することができる教授者を養成すること このような交流、とくに、同じ問題に直面しかつ同じ解決策を適用することが可能な国の間の交流は、組織的に行われるべきである。この目的のために、とくに地域または地区単位で、関連する実験を公表しかつそれがどの程度適用可能であるかどうかを検討するための会議を開催すべきである。同様に、実施される研究のよりよい成果を確保するために共同機構が設置されるべきである。 加盟国は、国際的に承認される単位制度の創設の援助を目的とし、外国語教育および基礎的な研究のような重要な分野における国際基準の作成および採択に関する合意を促進すべきである。 |
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64 | 視聴覚の器材および教材ならびに教育プログラムおよびこれらを取り入れた教材の最適頒布および最適利用のため の措置がとられるべきである。とくに、次のことを行うことが適切である。
(a) | 頒布および利用は、各国の文化的特性および発展の水準を考慮して、その社会的ニーズと条件に適応させること |
(b) | 商業または知的所有権を規制する規則に起因する頒布および利用の障害をできる限り除去すること |
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65 | 加盟国は、国際協力を促進するために、国際的段階で勧告される基準、とくに統計的資料の提供に関する基準を成人教育に適用すべきである。 |
66 | 加盟国は、この分野において権限のある国際連合の専門機関としてのユネスコが、成人教育の発展の努力において、とくに、訓練、研究および評価の分野で行う活動を支持すべきである。 |
67 | 加盟国は、成人教育が地球的かつ普遍的な関心事であると認識すべきであり、成人教育から生ずる実際的な成果と取組み、教育、科学および文化に関する事項の国際的組織としてのユネスコが推進している新しい国際的秩序の確立を助長すべきである。 |