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資料7




最近の各種報告・提言等で示された教育の目標の例
   
〔社会全体の展望〕
    ○一人一人が能力や個性を発揮できる活力ある社会
    ○グローバル化、国際化の進展
  ○知識型社会への移行
    ○情報化の進展
    ○科学技術の急速な発展
    ○自然との共生
  ○安全で安心して暮らせる社会
  ○少子・高齢化の一層の進行
  ○男女共同参画社会の実現
   
〔人材養成・教育の目標〕
    ・豊かな心の育成
  ・我が国における伝統文化の尊重
  ・基礎知識・基礎学力の習得
  ・個性、才能を伸ばす教育の実現
  ・創造性に富んだリーダーの養成
  ・規制緩和による多様な学校システム
  ・国際競争力のある大学の実現
  ・教育における国際化・情報化の推進
  ・家庭や地域の教育力の向上と学校、家庭・地域の役割分担
  ・生涯学習の振興
 

各種報告における今後の社会の展望・教育の目標について
     
     
〔社会全体の方向〕
     
◎経済財政諮問会議「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(平成13年6月26日)   
  ・グローバル化した時代における経済成長の源泉は労働力人口ではなく「知識/知恵」
  ・21世紀の日本が目指すのは、
     − 国民が自信と誇りに満ち、努力するものが夢と希望を持って活躍し、市場のルールと社会正義が重視される社会
     − 豊かな自然との共生
     − 安全で安心に暮らせる社会
     − 世界に開かれ、外国人にとっても魅力ある社会
     
     
◎経済財政政諮問会議「構造改革と経済財政の中期展望」(平成14年1月25日)
  ・中期的に実現を目指す経済社会の姿
     − 「人」を何より重視する経済社会
    1「人」が能力と個性を磨き、伸び伸びと発揮する
      2「人」が活躍できる仕組みの構築(生涯現役社会、男女共同参画社会の構築)
      3「人」を育む社会環境、自然環境の形成
     − 世界の人々にとっても魅力ある国
     − 国民が、雇用の拡大、活力ある高齢社会の構築、地域経済の活性化などの課題にも積極的な挑戦ができる
     
     
◎IT戦略本部「高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画」(平成13年3月29日)
  ・5年以内に世界最先端のIT国家となる
  ・「世界最先端のIT国家」とは、
    1すべての国民がITメリットを享受できる社会、
    2経済構造改革の推進と産業の国際競争力の強化が実現された社会、
    3ゆとりと豊かさを実感できる国民生活と個性豊かで活力に満ちた地域社会が実現された社会、
    4地球規模での高度情報通信ネットワーク社会の実現に向けた国際貢献が行われる社会
     
     
◎総合科学技術会議「科学技術基本計画」(平成13年3月30日)
  ・科学技術の急速な発展
  ・知を基盤とした人類社会になると予想
  ・科学技術基本政策の基本的な方向として目指すべき国の姿は、
    1   知の創造と活用により世界に貢献できる国
    2   国際競争力があり持続的に発展ができる国
    3   安心・安全で質の高い生活のできる国
     
     
◎(社)経済団体連合会「グローバル化時代の人材養成について」(平成12年3月28日)
  ・個性や創造性を活かし、倫理観と責任感に裏打ちされた新しい経済社会システムの構築は待ったなしの状況になっている
  ・世界に例をみない速さで少子・高齢化が今後進むことから、深刻な労働力不足に陥ることも懸念される
  ・「活力あるグローバル国家」を創造し、魅力ある日本を構築することが必要
     
     
◎(社)経済同友会「21世紀宣言」(平成12年12月25日)
  ・我々が目指す新しい日本の姿は
  それぞれの可能性に積極的に挑戦し、生きがいを実現していくことができるような社会
  多様な個人のエネルギーを生かすことのできる社会
  ・そのためには、具体的課題として、
    1技術と知識のイノベーションが活発に起こり、それらの融合によって新しい価値が創造され、生産性が高く、活力ある経済を実現すること、
    2責任や義務の意識を持つ自立した個人が支えられる民主主義を確立し、それによって運営される社会を実現すること、
    3世界に開かれ、多くの投資、多様な人材を惹きつける魅力があり、アジアそして世界の発展に寄与し、世界の平和と反映に積極的に貢献する国を実現すること、が必要である
     
〔人材養成・教育の目標〕
     
◎経済財政諮問会議「構造改革と経済財政の中期展望」(平成14年1月25日)
  ・国際競争力のある大学の実現に向けた改革
  ・自ら考え創造する力を持った人材の育成、初等中等教育の多様化、活性化   
     
◎総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第1次答申」(平成13年12月11日)
  ・グローバル化、国際競争が一層していく中で、次のことが不可欠
  質の高い教育の提供、社会のニーズに応える優れた人材の育成
  大学における教育機関や教員間の競争
  初等中等教育における多様化の推進、需要者による選択と参画の確保
     
◎教育改革国民会議報告−教育を変える17の提案−(平成12年12月22日) (別紙参照)
  1子どもの社会性を育み、自立を促し、人間性豊かな日本人を育成する教育を実現する
  2一人ひとりの持って生まれた才能を伸ばすとともに、それぞれの分野で創造性に富んだリーダーを育てる教育システムを実現する
  3新しい時代にふさわしい学校づくりと、そのための支援体制を実現する
     
◎「21世紀日本の構想」懇談会「日本のフロンティアは日本の中にある」(平成12年1月)
  ・教育の目的
    1人間として生きるために不可欠な基本的約束事−人間及び自然との付き合い方−を教える
    2社会人として生きるための基礎知識−言葉の習得と論理的思考の訓練−を習得させる
    3職業人として必要な基礎知識と技能を有する人を育てる
     
◎子どもの未来と世界について考える懇談会提言(平成11年2月3日)
  ・世界に通用する人間、いわゆる地球人の資質・素質
    1豊かな情操に裏付けられた個性と主体性
    2正しい自己認識と自己理解を前提とした「他」(他者、異なった文化・自然環境)の認識理解
    312を前提とした、他の個人とのコミュニケーションと関心や興味の共有
     
◎OECD教育大臣会合「万人のための能力への投資」コミュニケ(要旨)(2001.4.3-4)
  ・   知識型社会への移行の加速に伴い、万人に高い能力を備える必要性が大きくなっている。1996年、OECD各国の教育担当大臣は、これらの新たに生じる必要性を確認し、「万人のための生涯学習」という共通の目標を採択した
  ・   今後は、「万人のための能力への投資」の促進が課題、教育・訓練及びその他の学習機会への投資は、国及び国民の将来への投資である
       
◎(社)経済団体連合会「グローバル化時代の人材養成について」(平成12年3月28日)
必要とされる人間像
     (1)求められる基礎的能力
    1主体性:主体的に問題を発見、設定し、解決に導くことのできる能力
    2プロの意識:しっかりした職業観、自己責任の観念、アカウンタビリティ、高い倫理観
    3知力:基礎知識・基礎学力、コミュニケーション能力、日常会話をはじめとする英語力、情報ネットワーク活用能力
     (2)国際的に通用する能力を持った人材(指導的立場の人材)
    1時代の変化を先取りして、将来ビジョンを示すことのできる人材。社会の変革を実現し世界をリードできる独創的な人材
    2さまざまな意見をまとめて人材を糾合し、物事を確実に成し遂げる人材
    3国際場裡にあって各国のリーダーと対等に渡り合える人材
    4新しいビジネスを創造し、実行する起業家精神旺盛な人材
    5各分野における高度な専門知識、最先端の知識を持った人材
教育のあり方に対する基本的考え方
     − 「複眼的」で「複線的」な教育・人材育成システムの実現
    個人個人の多様な能力を評価する「複眼的評価」、さまざまな選択肢を持つ「複線的システム」
    1多様な選択機会の確立(教育側における競争原理の導入)
    2入口管理から出口管理への移行
    3大学教育の充実
    4創造性と体験を重視した小・中・高校教育の推進
    5家庭、地域社会の教育力の回復
    6帰国子女教育、外国人留学生への支援と海外への人材育成協力
   
◎(社)経済同友会「21世紀宣言」(平成12年12月25日)
  ・競争力の源泉としての人材育成の重要性がますます高まる
     具体的には、
    1基礎・基本、教養(リベラルアーツ)の習得
    2生きる力、問題発見・解決能力
    3グローバルなコミュニケーション能力
    4多様な個性の伸長と創造性の育成   を目指す必要がある
  ・社会の一員としてパブリック・マインドを高めることが重要
     
◎(社)経済同友会「iJAPAN構想(中間提言)」(平成12年9月19日)
  ・IT社会実現のためには、次の課題に取り組むことが必要
    1情報教育にバランスした人文・情操教育の強化
    2新しい知を創造する人材の育成
    3IT技術者の育成・確保
    4情報リテラシー教育の強化

   

教育改革国民会議報告−教育を変える17の提案−(抜粋)
平成12年12月22日
 
 
1.私たちの目指す教育改革
 
(教育は人間社会の存立基盤)
   人間が人間である最大の特徴は、広い意味での教育を通じて成長することである。教育を通じ、先人が築いてきた知恵や文化を身に付けるとともに、新しい考え方や行動を編み出してゆく。また、教育によってそれぞれの才能を開花させ、一人の人間として自立するとともに、家族や社会の一員として、さらに国民、地球市民として、他の人を尊重し、誇りと責任を持って生きていくことを学ぶのである。教育の問題は、教育を受ける一人ひとりの人間が社会的自立を果たし、よりよき存在になるために重要であるにとどまらず、社会や国の将来を左右するものであり、教育こそ人間社会の存立基盤である。
 
(危機に瀕する日本の教育)
   日本人や日本社会は、これまで、その時代の中で教育の営みを大切にし、その充実に力を注いできた。明治政府発足時、第二次世界大戦の終戦時など、幾度かの大きな教育改革が行われてきた。そして、日本の教育は、経済発展の原動力となるなど、時代の要請に応えるそれなりの成果を上げてきた。
   しかし、いまや21世紀の入口に立つ私たちの現実を見るなら、日本の教育の荒廃は見過ごせないものがある。いじめ、不登校、校内暴力、学級崩壊、凶悪な青少年犯罪の続発など教育をめぐる現状は深刻であり、このままでは社会が立ちゆかなくなる危機に瀕している。
   日本人は、世界でも有数の、長期の平和と物質的豊かさを享受することができるようになった。その一方で、豊かな時代における教育の在り方が問われている。子どもはひ弱で欲望を抑えられず、子どもを育てるべき大人自身が、しっかりと地に足をつけて人生を見ることなく、利己的な価値観や単純な正義感に陥り、時には虚構と現実を区別できなくなっている。また、自分自身で考え創造する力、自分から率先する自発性と勇気、苦しみに耐える力、他人への思いやり、必要に応じて自制心を発揮する意思を失っている。
   また、人間社会に希望を持ちつつ、社会や人間には良い面と悪い面が同居するという事実を踏まえて、それぞれが状況を判断し適切に行動するというバランス感覚を失っている。
 
(大きく変化する社会の中での教育システム)
   21世紀は、ITや生命科学など、科学技術がかつてない速度で進化し、世界の人々が直接つながり、情報が瞬時に共有され、経済のグローバル化が進展する時代である。世界規模で社会の構成と様相が大きく変化し、既存の組織や秩序体制では対応できない複雑さが出現している。個々の人間の持つ可能性が増大するとともに、人の弱さや利己心が増大され、人間社会の脆弱性もまた増幅されようとしている。従来の教育システムは、このような時代の流れに取り残されつつある。
   校長や教職員、教育行政機関の職員など関係者の意識の中で、戦前の中央集権的な教育行政の伝統が払拭されていない面がある。関係者間のもたれ合いと責任逃れの体質が残存する。また、これまで、教育の世界にイデオロギーの対立が持ち込まれ、教育者としての誇りを自らおとしめる言動がみられた。力を合わせて教育に取り組むべき教育行政機関と教員との間の不幸な対立が長らく続き、そのことで教育に対する国民の信頼を大きく損なってきた。教育関係者は、それぞれの立場で自らの在り方を厳しく問うことが必要である。
(これからの教育を考える視点)
   私たちは、このような現状を改革し、日本と世界の未来を担う次世代の教育をよりよきものにするために、次の三つの視点が重要であると考える。
 
   第一は、子どもの社会性を育み、自立を促し、人間性豊かな日本人を育成する教育を実現するという視点である。
   自分自身を律し、他人を思いやり、自然を愛し、個人の力を超えたものに対する畏敬の念を持ち、伝統文化や社会規範を尊重し、郷土や国を愛する心や態度を育てるとともに、社会生活に必要な基本的な知識や教養を身に付ける教育は、あらゆる教育の基礎に位置付けられなければならない。このような当たり前の教育の基本をおろそかにしてきたことが、今日の日本の教育の危機の根底にある。家庭や学校はもとより、社会全体がこの教育の基本の実現に向けて共通理解を図り、取り組む必要がある。
   子どもの行動や意識の形成に最も大きな責任を負うのは親である。家庭は、命を大切にすること、単純な善悪をわきまえること、我慢すること、挨拶ができること、団体行動に従えることなど、基礎的訓練を行う場である。また、成長に応じて子ども自身の責任も重くなる。
   しかし、子どもや親が孤立していたのでは、教育は十分に効力を発揮し得ない。親自身の教育が問題という場合も少なくない。また、核家族化、都市化などにより家庭の様相が大きく変貌している。このため、親だけには任せず、社会の英知を集め、家庭と教育機関と地域社会がそれぞれの使命、役割を認識し、連携して支援をすべきである。なぜなら子どもは、それぞれの家庭の子どもであると同時に、人類共通の希望だからである。
 
   第二は、一人ひとりの持って生まれた才能を伸ばすとともに、それぞれの分野で創造性に富んだリーダーを育てる教育システムを実現するという視点である。
   教育の大切な役割は、一人ひとりの持って生まれた才能を引き出し、それを最大限に発揮させることにある。人は皆、他人と違って生まれてくる。植物には、湿度の高い場所を好むもの、酸性土壌を好むもの、肥沃な土壌でないと育たないもの、直射日光を嫌うものなど実に様々なものがある。そうした特性に応じた育て方が必要である。このことは私たち人間も同様である。
   戦後教育は、「他人と違うこと」「突出すること」を良しとしなかった。戦後の教育で大事にされた平等主義は、たえず一律主義、画一主義に陥る危険性をはらんでいた。同時に、他人と同じことを良しとする風潮は、新しい価値を創造し、社会を牽引するリーダーの輩出を妨げる傾向すら生んできた。時代が大きく変わりつつある今日、日本の教育の場を、一人ひとりの資質や才能を引き出し、独創性、創造性に富んだ人間を育てることができるようなシステムに変えていくことが必要である。
   初等教育から高等教育を通じて、必ずしも早く進学し卒業することを良しとする訳ではなく、一人ひとりがそれぞれのやり方、生き方に合った教育を選択でき、かつやり直しがきく教育システムの構築が必要である。また、社会が求めるリーダーを育てるとともに、リーダーを認め、支える社会を実現しなければならない。
   第三は、新しい時代にふさわしい学校づくりと、そのための支援体制を実現するという視点である。
   これからの学校は、子どもの社会的自立の準備の場、一人ひとりの多様な力と才能を引き出し伸ばす場として再生されなければならない。
   教える側の論理が中心となった閉鎖的、独善的な運営から、教育を受ける側である親や子どもの求める質の高い教育の提供へと転換しなければならない。それぞれの学校が不断に良くなる努力をし、成果が上がっているものが相応に評価されるようにしなければならない。
   教育委員会や文部省など教育行政機関も、管理・監督ばかりを重んじるのではなく、多様化が進む新しい社会における学校の自主性、自律性確立への支援という考え方を持たねばならない。教育行政や学校の情報を開示し、適切な評価を行うことで健全な競い合いを促進することが、教育システムの変革にとって不可欠である。
   親は我が子が安心して通える学校であって欲しいと願っている。そのためには、学校が孤立して存在するのではなく、親や地域とともにある存在にならねばならない。良い学校になるかどうかはコミュニティ次第である。コミュニティが学校をつくり、学校がコミュニティをつくるという視点が必要である。
 
(教育改革への基本的考え方)
   言うまでもなく、教育は社会の営みと無関係に行われる活動ではない。今日の教育荒廃の原因は究極的には社会全体にあると言える。しかし、社会全体が悪い、国民の意識を変えろ、と言うだけでは、責任の所在が曖昧になり、結局、誰も何もしないという無責任状態になってしまう。
   私たち教育改革国民会議は、今後の教育を改革し改善するために、誰が何をなすべきかを具体的に示した改革案を提示する。改革案を検討するに当たって、私たちは次の二つのことを基本として考えた。
 
   一つは、基本に立ち返るということである。
   教育において、社会性や人間性が重要であることは言うまでもない。しかし、急速な社会状況の変化と豊かさの進展の中で、そのことを改めて考えることが重要である。伝統や文化の認識や家庭教育の必要性の強調は決して、偏狭な国家主義の復活を意図するものではない。このことは、グローバル化の進展の中で日本人としてのアイデンティティーを持って人類に貢献することができる人間を育成するという観点から、基本的な事項であると考える。また、画一性の打破や個々の才能の重視、学校教育や教育行政の在り方についても、これまで、様々なことが言われてきた中で、今一度、基本に立ち返った改革・改善の提案をした。
 
   一つは、改革の具体的な動きをつくっていくということである。
   時代にふさわしい改革と改善を実施し、具体的な動きをつくっていくことが必要である。近年でも、臨教審をはじめ改革案は幾度も出され、改革への努力が行われてきた。しかし、実際の教育の場でそれが実現されるスピードが遅い、改革がなかなか進まないという不満が広く存在する。改革、改革と言っても、結局何も変わらないのでは、国民が感じている不満、閉塞感が深まるばかりである。
   今求められているのは、何よりも実行である。それぞれの立場で、できることは直ちに実行し、やる気のある者はどんどん活躍できるようにしていくことが重要である。私たちは、失敗を恐れず、必要な改革を勇気をもって実行しなくてはならない。また、実行の結果を見守り、評価し、さらなる改革につなげなければならない。
 
   私たちはこの二つの基本的な考え方に立って、教育を変える17の提案を行う。道は厳しい。しかし、厳しくなかった道はどこにもなかった。私たちは、国民の皆さんとともに教育の未来を希望し続ける。
 
5.教育施策の総合的推進のための教育振興基本計画を
   
   教育改革を着実に実行するには、教育改革に関する基本的な方向を明らかにするとともに、教育施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、科学技術基本計画や男女共同参画基本計画のように、教育振興基本計画を策定する必要がある。
   基本計画では、教育改革の推進に関する方針などの基本的方向を示すとともに、具体的な項目を挙げ、それぞれにつき、整備・改善の目標や具体的な実施方策についての計画を策定する。具体的な項目としては、例えば、
1人間性豊かな日本人の育成の視点からは、生涯学習、社会教育、幼児教育、家庭教育、体験学習、学校での奉仕活動、芸術・文化教育、スポーツなど、
2創造性に富む人間やリーダー育成の視点からは、中高一貫校、大学の施設等の教育・研究基盤整備、プロフェッショナル・スクールや研究者養成型などの大学院整備、若手研究者及び研究支援者の養成・確保、科学研究費、奨学金、私学振興助成など、
3新しい学校づくりの視点からは、IT教育、英語教育、環境教育、健康教育、障害のある子どものための教育、科学教育及び職業教育、公立学校の教職員配置、教員の研修、公立学校の施設整備、私学振興助成など、
4グローバル化に対応した教育の視点からは、海外子女教育、学生・生徒・教員など教育のあらゆる分野の国際交流、留学生支援など
が考えられる。
   過去の教育改革においても、「教育は社会の基盤」「最も基本的社会資本である教育・研究に積極的に投資すべき」と幾度となく言われてきた。少子化が急激に進展し、21世紀は知識社会と言われる中、教育への投資を国家戦略として真剣に考えなければならない。
   教育への投資を惜しんでは、改革は実行できない。教育改革を実行するための財政支出の充実が必要であり、目標となる指標の設定も考えるべきである。この場合、重要なことは、旧態依然とした組織や効果の上がっていない施策をそのまま放置して、貴重な税金をつぎ込むべきではないということである。計画の作成段階及び実施後に厳格な評価を実施し、評価に基づき削るべきは削り、改革に積極的なところへより多くの財政支援が行われるようにする。さらに、納税者に対して、教育改革のために税金がどのように使われ、どのように成果が上がっているのかについて、積極的に情報を公開するようにする。
   
6.新しい時代にふさわしい教育基本法を
 
   日本の教育は、戦後50年以上にわたって教育基本法のもとで進められてきた。この間、教育は著しく普及し、教育水準は向上し、我が国の社会・経済の発展に貢献してきた。しかしながら、教育基本法制定時と社会状況は大きく変化し、教育の在り方そのものが問われていることも事実である。このような状況を踏まえ、私たちは、次代を託する子どもたちが、夢や志を持てるような新しい教育のあるべき姿について考え、具体的な対応策を提言してきた。それとあわせて、教育基本法についても、新しい時代の教育の基本像を示すものとなるよう率直に論議した。
 
   これからの時代の教育を考えるに当たっては、個人の尊厳や真理と平和の希求など人類普遍の原理を大切にするとともに、情報技術、生命科学などの科学技術やグローバル化が一層進展する新しい時代を生きる日本人をいかに育成するかを考える必要がある。そして、そのような状況の中で、日本人としての自覚、アイデンティティーを持ちつつ人類に貢献するということからも、我が国の伝統、文化など次代の日本人に継承すべきものを尊重し、発展させていく必要がある。そして、その双方の視野から教育システムを改革するとともに、基本となるべき教育基本法を考えていくことが必要である。このような立場から、新しい時代にふさわしい教育基本法には、次の三つの観点が求められるであろう。
 
   第一は、新しい時代を生きる日本人の育成である。この観点からは、科学技術の進展とそれに伴う新しい生命倫理観、グローバル化の中での共生の必要性、環境の問題や地球規模での資源制約の顕在化、少子高齢化社会や男女共同参画社会、生涯学習社会の到来など時代の変化を考慮する必要がある。また、それとともに新しい時代における学校教育の役割、家庭教育の重要性、学校、家庭、地域社会の連携の明確化を考慮することが必要である。
   第二は、伝統、文化など次代に継承すべきものを尊重し、発展させていくことである。この観点からは、自然、伝統、文化の尊重、そして家庭、郷土、国家などの視点が必要である。宗教教育に関しては、宗教を人間の実存的な深みに関わるものとして捉え、宗教が長い年月を通じて蓄積してきた人間理解、人格陶冶の方策について、もっと教育の中で考え、宗教的な情操を育むという視点から議論する必要がある。
   第三は、これからの時代にふさわしい教育を実現するために、教育基本法の内容に理念的事項だけでなく、具体的方策を規定することである。この観点からは、教育に対する行財政措置を飛躍的に改善するため、他の多くの基本法と同様、教育振興基本計画策定に関する規定を設けることが必要である。
   これら三つの観点は、新しい時代の教育基本法を考える際の観点として重要なものであり、今後、教育基本法の見直しを議論する上において欠かすことのできないものであると考える。
 
   新しい時代にふさわしい教育基本法については、教育改革国民会議のみならず、広範な国民的論議と合意形成が必要である。今後、国民的な論議が広がることを期待する。政府においても本報告の趣旨を十分に尊重して、教育基本法の見直しに取り組むことが必要である。その際、教育基本法の改正の議論が国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならないことは言うまでもない。



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