第13回教育振興基本計画特別部会議事概要（暫定版）

1．日時

2月29日（金曜日）14時30分〜16時30分

2．場所

東海大学校友会館「阿蘇の間」（霞が関ビル33階）

3．出席者

4．概要

• （1）今回の答申素案をもって事務的に各府省と折衝を始めることについて事務局から提案があり、意見交換の後了承された。
• （2）答申素案に関する意見は次のとおり。
  • 　青少年を有害環境から守るための取組として、有害情報に関するある程度の法規制も必要なのではないか。
  • 　「◇地域住民に身近なスポーツ環境の整備」ではスポーツの効用についても記述すべきである。
  • 　基本的方向2の「規範意識を養い、豊かな心と健やかな体をつくる」の全体について、自分らしい生き方をしている人たちや、実際に不登校から立ち直った人など、当事者の目線で話ができる人と触れあう機会を持つことが大切である。
  • 　今の答申素案には、分科会まで了解された話以外にも、その下の部会レベルで議論中の内容が入っているところもある。中教審として議論が十分された内容を盛り込むべきである。
  • 　高大接続の新テストの記述は不適切である。また、社会人採用のための特別免許状や特別非常勤講師制度の活用等を促すという内容は乱暴ではないか。再生会議の報告書で言及されているものをただちに盛り込んでいいというものではない。
  • 　教員に対しては、財界からも様々な支援を行いたいと考えている。社会人採用のための特別免許状については、教育に協力したいと考えている社会人のためにも、教育界のためにもよいことだと考える。
  • 　前回の部会において配付した「教育振興基本計画の在り方について、および大学教育の転換と革新」は、大学分科会の意見を代表するものではなく、大学の経営困難を救うことを意図するものでもない。高等専門学校等も含めた議論が計画部会では必要だと考えている。
    　重要なのは、高等教育機関における教育の質の保証、社会人が高等教育機関で学べるための制度や社会的な仕組みの整備、就職における新卒者重視の改善、雇用者による採用における個人の能力やスキルを重視することである。
    　また、日本の大学進学率も実際には先進国の中では低い等の事情もあり、財政措置を含めた対応策が必要となる。
  • 　「◇教育課題に対応するために必要な教職員定数の措置等」について、特別非常勤講師制度や社会人採用のための特別免許状の活用よりも、必要な教職員定数の改善が第一に重要である。外部人材の導入は子どもにはいいが、学校側には負担となるため、その対応を考えなければますます学校の負担が増し、結果として教員が子どもと向き合う時間が減ることになる。
  • 　「◇家庭・地域と一体になった学校の活性化」には、公立学校の学校選択制について書かれているが、公立学校の学校選択制は地域と学校の関係を破壊するものであり、学校と地域の連携にはつながらない。
  • 　体力向上に言及されている箇所をみると、学校体育はすべて体力向上のためにあるという古い考え方になっている。生涯にわたって体力維持をできるマニュアルを教えるということも学校体育の重要な役割である。「◇子どもの体力向上に向けた総合的な方策の充実」については、「子どもの体力の向上や生涯学習の実現を目指し・・・」と書くべきである。
  • 　学校教育で問題となるのが、指導要領と実際の達成とのずれである。少人数学級をしっかりと謳わなければ効果は上がらない。
  • 　「◇家庭・地域と一体になった学校の活性化」には公立学校の学校選択制と児童生徒数等を勘案した予算配分による学校改善方策が書かれているが、地域の実情によっては、学校選択制が効果を出しうるところもあると思う。例えば、東京都品川区の場合には、生徒が集まらない学校にケアをすることによって、改善が見られるところもあるので、学校選択制を必ずしも否定しない。ただし、この記述は、再生会議の最終答申で言及されたものであり、中教審で議論したものではない。答申に盛り込むのはいかがなものかと思う。
  • 　選択制自体は否定しないが、地区によっては学校統廃合の手段となっているところもある。また、噂で学校を選ぶ保護者がいる場合もある。バウチャーについては反対する。
  • 　学習指導要領と条件整備はセットで考えられるべきものである。具体的数値を明記するのは難しいかもしれないが、教職員定数の改善は喫緊の課題というぐらいは書いて欲しい。特別支援教育については、特別支援教育の推進の支援員についても書いて欲しい。
  • 　地域によって教育をめぐる環境が全く違うということを書いて欲しい。例えば小学校での自然体験についても、地域によっては、普段から豊かな自然と触れあうところもある。地域と学校がすでに一体となっているところもある。
  • 　義務教育費は都道府県ではなく市町村が負担している。また、都道府県レベルでの義務教育では、投資という概念が薄くなることから、都道府県と市町村を分けるべきである。現場を重視して、投資について考えるということを記述すべきである。
  • 　「行政が・・・する」という書きぶりが多いが、地域によっては住民のほうが教育に熱心で、行政を叱咤している地域もある。やはり地方と都市は実態が異なるということを記述して欲しい。
  • 　基本的方向3について、企業の高等教育に対する貢献の話が少なく、「◇大学等の教育研究を安定的・継続的に支えるとともに、高度化を推進するための支援の充実」に少し書かれている程度である。大きな大学は信託基金等を設けて企業から金集めているが、中小大学が資金提供を依頼できるようなきっかけをつくって欲しい。日本では企業の社会に対する貢献というエートスが少ない。公財政支出に頼るのみならず、財界からの資金の活用を積極的に導入していくべきである。
  • 　経団連としてもできるだけの貢献をするべく頑張っている。金を欲しいという要望に答えるのはなかなか難しい面もあるが、今回の計画の中で記述して頂いたことについては、経団連も対話の機会を設けて話し合いをすることを約束する。
  • 　留学生30万人計画について、5年後の留学生数を決めるべきである。これまでのトレンドを考えると2025年に30万人になるというシミュレーションもあり、達成年度を2025年としてはどうか。30万人は容易ではなく、やはり5年ごとぐらいに具体的な数字を出すべきである。
  • 　素案に書かれている内容は、ここ1年余り議論してきたもの。財政当局とも自信を持って折衝し、理念と財政措置の拡充を打ち出していくべきである。
  • 　具体的な額を盛り込むかどうかはまだ議論が必要だが、必要な財政措置を拡充していくという方向は良いと思う。
  • 　各省庁との調整が難しいところもあるだろうが、中教審の答申としては有害情報に関する法規制を盛り込むべきである。
  • 　社会人採用のための特別免許状の部分については、社会人にお手伝いして頂くというニュアンスで記述するべきである。
  • 　進捗状況の点検については、現場にとっては、各省からそれぞれ点検の調査が来ると大きな負担となるため、文部科学省が一本化するべきである。評価に際しては、原因を分析して、国民に示して欲しい。
  • 　教職員定数等については、国が画一的に扱うのではなく、地方に任せて、金も渡して欲しいと考えている。記述ぶりも現時点のものにとどめておいて欲しい。地方に任せると教育力の低下を招くという議論もあるが、地方は学校と住民が一体となった教育を行っており、教育力の低下を招くことはない。
  • 　教育投資について、限られた財源の中で優先順位を決めて予算をつけていくべきである。
  • 　「学力の高い層の割合を増やすとともに、学力の低い層の底上げを図り、その割合を減少させる」（11ページ）について、特に重点的に取り組むべき事項の中では、外的条件のみが書いてある。学校教育の教員として取り組む仕組みといった内容に関わることも書くべきである。「諸条件の整備については検討中」と言う点も踏まえて、書いて欲しい。
  • 　特別支援教育に関し、本答申案では、指導要領案と並びをとり、「個別の指導計画を策定する」と整理している。一方、障害者基本法に基づく新障害者プランでは「個別の支援計画を作成する」とあるため、整理が必要である。
  • 　第3章（1）「国、地方それぞれの責任の明確化」について、地方でも計画の策定が始まっており、地方の計画策定を応援する仕組みについて言及して欲しい。
  • 　「教育基本法条を踏まえ、・・・」という文言が入っている項目とそうでない項目があるため、全体を整理すべきである。
  • 　第4章の「子どもたちをめぐる社会の変化等の中で、教育が対応すべき課題も日々刻々と変化している。」には、子どもたちだけではなく、大人もまた対応すべきであるため、そのような記載にすべきである。
  • 　「◇青少年を有害環境から守るための取組」に関し、法規制をきっちりして、年齢別の使用制限、ゲームソフトの年齢制限等、子どもの心をいたぶるものをしっかり排除する仕組みを確立して欲しい。特に重点的に取り組むべき事項に取り上げるぐらいの扱いにして欲しい。
  • 　答申をまとめる際の課題の一つが、国と地方の関係の明確化。「地方の実情に応じて」というところで意図するところを汲んで欲しい。社会人教員は評判がいいが、なかなか普及しない。課題として書いておくべきではないか。省庁の縦割りについても考えないと現場が混乱する。
  • 　社会人の活用の仕方の問題。地方との分担。各分科会との整理。数値目標もこれで十分なのかどうか。答申の中に、財政投資についてどういう文言をどのように入れるのか。留学生については大学分科会の留学生部会でご義論いただくが、このあたりが課題として残っている。

―了―