第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策

(1)基本的考え方

 従来、教育政策の策定と実施においては、例えば「教育課程」や「教職員定数改善」、「高等教育」など、個別のテーマに焦点を絞り、当該分野の中での完結を目指す傾向が強かった。教育振興基本計画は、これら個別の政策を横断的に捉え直し、教育政策の総合的な推進を図ることを意図するものである。
 また、これまで教育施策においては、目標を明確に設定し、成果を客観的に検証し、そこで明らかになった課題等をフィードバックし、新たな取組に反映させるPDCAサイクルの実践が必ずしも十分でなかった。今後は施策によって達成する成果(アウトカム)を指標とした評価方法へと改善を図っていく必要がある。こうした反省に立ち、今回の計画においては、各施策を通じてPDCAサイクルを重視し、より効率的で効果的な教育の実現を目指す必要がある。
 これらの点にも留意しつつ、以下においては、第1章、第2章に示した現状と課題、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿を踏まえ、今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策を示すこととする。
 その際、取組の全般にわたり、以下のような考え方を重視する。

1 「横」の連携:教育に対する社会全体の連携の強化

 教育は、個人により良く生きる力を与えるものであるとともに、社会全体の存立基盤を形づくる価値形成活動であり、国、地方公共団体、学校、保護者、地域住民、企業、社会教育団体、民間教育事業者、NPO、メディアなど、官・民を通じた様々な関係者の取組により成り立つものである。
 このうち、国、地方公共団体、学校、保護者等教育に直接携わる者に特に大きな責任があることは言うまでもないが、地域住民や企業等も、受身的な立場に止まることなく、自らも社会の一員として教育に責任を共有するとの認識の下、学校運営や教育活動に積極的に協力し、参画することなどが期待される。
 なお、学校については、ややもすれば閉鎖的になりがちで学校外からの協力を得ることについて消極的との批判も多い。学校や教育行政の側においてもこうした意識を改め、学校を広く様々な分野からの協力を得て地域に開かれたものにしていく努力が必要である。また、国や地方公共団体の行政部内においても、「縦割り」といわれる状況を改善し、一体となって教育に取り組む必要がある。

 同時に、今後の国際的な知識基盤社会において国や社会の活力の源泉となるのは「知」の力であることを考えるとき、教育をめぐる各主体がそれぞれの立場での責任を全うするのはもちろんのこと、それにとどまらず、「知」を育む教育の振興に向け、各主体が横の連携を強化し、社会全体で教育に取り組んでいくことが求められる。
 例えば、学校教育と社会教育、また、学校と地域との新しい連携の仕組みを構築することは、今後の重要な課題の一つである。こうした取組を通じ、社会の多様なニーズに応える学習機会が豊富に提供されるとともに、連携による相乗効果として、教育の質が一層高まることが期待される。
 社会全体で連携して教育に取り組むことは、一人一人の主体的な参画によるコミュニティづくりや、より良い社会づくりにも資するものである。同時に、社会の様々な世代の様々な主体が多様な形態で教育に関わることは、働くこと、社会とつながり、社会に参画することの意義を身をもって子どもたちに示し、将来に向けてその視野を広げ、生きる意欲を高めることにもなる。

2 「縦」の接続:一貫した理念に基づく生涯学習社会の実現

 改正教育基本法において、新しい時代の教育の理念が明示されるとともに、これを踏まえ、学校教育法において、義務教育の目標や各学校段階ごとの教育の目標が改めて規定された。

 今後の変化の激しい社会においては、学校教育段階はもとより、生涯を通じて自らを磨き、高めていくことが一層重要になる。一人一人が、より良く生きるための意欲と力を生涯にわたって鍛え、豊かなものにしていかなければならない。そのために必要な力として、これまで初等中等教育に関して「生きる力」を掲げてきた。
 また、OECDにおいても、「知識基盤社会」の時代を担う子どもたちに必要な能力を「主要能力(キーコンピテンシー)」と位置付け、1社会的・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する力、2多様な社会グループにおける人間関係形成能力、3自立的に行動する能力、の3つの観点を重視するようになっている。
 さらに、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)においては、地球的視野で考え、様々な課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組み、持続可能な社会づくりの担い手となるよう一人一人を育成する教育(「持続発展教育/Education for Sustainable Development(ESD)(注1)」)が提唱されており、2005年から2014年までの10年間は、「国連持続発展教育の10年」と位置付けられている。地球的規模での持続可能な社会の構築は、我が国の教育の在り方にとっても重要な理念の一つである。

 これらの理念はいずれも教育基本法の理念と軌を一にするものであり、こうした観点も踏まえながら、個人の発達段階やその時置かれている状況等を踏まえつつ、誰もが生涯を通じて質の高い教育や学習に取り組み、その成果を生かすことのできる社会の実現を目指す必要がある。
 そのためには、それぞれの教育の役割や学校ごとの目標の達成に留意しながら、例えば、家庭教育と幼児教育、幼児教育と小学校、高等学校と大学等の学校間、更には学校教育と職業生活等との連携・接続の改善にとりわけ意を用いていく必要がある。また、一旦学校教育を終えた後に、それぞれのニーズに応じて再度学校教育の場に戻ったり、様々な社会教育を受けたりする機会が設けられていることが重要である。
 あわせて、大学等での先端的な研究によって得られた最新の成果等も生かした教育内容・方法の改善など、教育現場と大学等との連携の強化も進められる必要がある。

  • (注1)2002年に開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグサミット)」において、我が国は「持続発展教育の10年」(以下、「ESDの10年」という。)を提案した。2002年の第57回総会では、2005年からの10年間を「ESDの10年」とすることが決議されるとともに、ユネスコが主導機関として指名されている。

3 国・地方それぞれの役割の明確化

 教育基本法では、第16条第1項において、教育行政が国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならないことを規定した上で、同条第2項及び第3項において、国及び地方公共団体それぞれの役割と責務を定めている。このように、教育の実施に当たっては、国・地方公共団体それぞれの立場での取組が不可欠である。

 教育において、国は、教育制度の枠組みや学習指導要領等の基準を設定し、教育水準の維持・向上に努めるとともに、全国的な教育の機会均等の実現などの役割を担う。あわせて、高等教育に関する質の保証・向上のための支援等を行うことなどが求められる。こうした基本的な役割を踏まえ、政府は、教育振興基本計画に国として今後概ね10年先を見通して5年間に取り組むべき事柄を明示し、定期的に点検を行いながら、取組を行う必要がある。
 一方、地方公共団体は、それぞれの地域の実情に応じた教育を実施するとともに、その教育の質を高めていく責務を負う。特に、初等中等教育や社会教育に関する事務を中心に、教育の実施に係る多くの部分は地方公共団体において担われるものであり、今後、地方分権を更に推進していく観点からも、その主体的な取組の充実が求められる。

 以上を踏まえ、政府の策定する今回の教育振興基本計画では、教育施策全体の方針に照らし、国として奨励し、推進することが望ましいと考えられる施策であっても、地方公共団体が担うべき事務については、国としてはあくまでそれを期待し「促す」に止まる立場であることを明示するなど、相互の役割分担を明らかにすることが必要である。このような自律的な関係を前提としつつ、相互に協力し合いながら施策の推進に努める必要がある。

(2)施策の基本的方向

 以上の基本的考え方を踏まえ、教育振興基本計画において、今後5年間に政府が取り組むべき教育施策の基本的方向を、以下の4点に整理する。あわせて、それぞれの基本的方向ごとに実現を目指す目標の例を示す。

基本的方向1 社会全体で教育の向上に取り組む

 社会の大きな変化の中で、学校や家庭、地域の在り方やその機能も変化してきた。近年、家庭や地域の教育力の低下などが指摘される一方で、地域の人々が積極的に学校の活動に協力しようとする動きが出てきている。団塊の世代が退職後地域に戻り、ボランティア活動等に取り組もうとする動きもある。こうした状況も十分に踏まえ、地域の自発的な意思を尊重しながら、新たな連携協力の仕組みを構築し、関係者が一体となって教育に取り組む必要がある。
 例えば、地域の人々が様々な形で学校の運営を支援することや、学校が学習の拠点として地域に貢献することなどは、相互の信頼を強化し、今後の新しい関係を構築する上で大きな意義を持つであろう。こうした取組の積み重ねが、学校を変え、地域を変えていく。
 また、教育の出発点である家庭教育の充実を期するためには、子育てに対する関係機関や地域住民、幼稚園・保育所等による支援が重要な役割を果たす。
 このほか、社会教育施設の学校教育への協力や当該施設での地域住民のボランティア活動など、教育をめぐる様々な局面で連携は広がりつつある。こうした動きを積極的に支援し、拡大していく必要がある。また、産業界等に対しても、教育への理解と協力を要請するとともに、教育が、社会との積極的な関わりの中でその要請に応えていくことも求められる。
 あわせて、今後社会の急激な変化が予想される時代において、一人一人が個人として自立し、常にその能力を磨きながら、健康で充実した人生を実現できるよう、誰もが生涯にわたって学び、愉しみ、その成果を生かして社会貢献や新たな挑戦のできる仕組みづくりを社会全体で進める必要がある。
 こうした基本的方向に基づく施策を通じて、例えば以下のような目標の実現を目指す。

  • ◆ 誰もが身近な場所で、地域ぐるみの子育て支援や教育支援を受けたり、こうした活動に参加したりすることができるようにする
  • ◆ 学習者が身近な場所で、そのニーズに応じた学習機会を得ることができるよう、大学等における学習機会を確保する

基本的方向2 個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる

 幼児期から高等学校段階までの初等中等教育は、個人がその生涯を生きる基盤を形成するものである。改正教育基本法第6条第2項においては、学校教育について、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならないこと、また、この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならないことが規定された。このことを踏まえ、各学校間や職業生活との円滑な接続に留意しながら、学校段階ごとの発達課題を踏まえた質の高い教育を保障し、一人一人の学ぶ意欲や学力を向上させるとともに、豊かな心と健やかな体を育成し、今後の変化の激しい時代を主体的に、かつ、幸福に生きるための強固な基盤を養う必要がある。
 幼児教育、義務教育である小学校・中学校段階、高等学校段階、さらに、特別な支援を必要とするすべての子どもの可能性を最大限に伸ばし、自立し、社会参加するために必要な力を培うことを目的とする特別支援教育を通じて、改正教育基本法や改正学校教育法の理念を踏まえ、一人一人の「生きる力」をはぐくむことを目指さなければならない。
 このために、教育内容を不断に改善するとともに、主たる教材として重要な役割を果たす教科書の改善を図るなど、その着実な実施により、各学校段階における教育の質の向上を図る必要がある。また、不登校の子どもをはじめ、手厚い支援が必要な子どもの教育やいじめなど問題行動への対応も求められる。
 また、小学校以降の初等中等教育段階については、多様化・複雑化する教育課題への対応として、一人一人の子どもに教職員が向き合う時間を十分に確保しつつきめ細かな対応ができる環境を実現する。
 こうした基本的方向に基づく施策を通じて、例えば以下のような目標の実現を目指す。

  • ◆ 基礎的・基本的な知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力等の育成とともに、学習意欲の向上や学習習慣の一層の確立を図り、確かな学力を身に付けた子どもを育成する。これにより、世界トップクラスの学力水準を確保し、国際的な学力調査等において、学力の高い層の割合を増やすとともに、学力の低い層の底上げを図り、その割合を減少させる
  • ◆ 基本的な生活習慣の確立を図り、子どもに規範意識を身に付けさせる。これにより、「学校生活が充実している」、「落ち着いて授業を受けることができる」と感じている子どもを増やす
  • ◆ 子どもの体力の低下に歯止めをかけ、上昇傾向に転じさせる

基本的方向3 教養と専門性を備えた知性豊かな人間を養成し、社会の発展を支える

 今後の「知識基盤社会」において、「知」の創造と継承・発展を担う高等教育は、個人の人格形成や、生涯にわたる学習活動の場としても、社会・経済・文化の発展・振興や国際競争力の確保等の上でも、重要な役割が求められる。また、環境問題をはじめとする地球規模での課題への対応においても、人材育成をはじめとした役割が期待される。
 このような中で、高等教育に対する様々な需要に的確に対応するためには、大学・短期大学、高等専門学校、専門学校が、各学校種ごとにそれぞれの位置付けや期待される役割・機能を十分に踏まえた教育や研究を展開するとともに、競争的環境の中で相互に切磋琢磨しながら、個々の学校の個性・特色を発揮していくことが必要である。
 特に、改正教育基本法においては、第7条で新たに大学に関する条文が設けられ、その基本的な役割として、教育と研究とを両輪とする従来の考え方が改めて確認されるとともに、教育研究の成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与することが明確にされたことを十分に踏まえる必要がある。
 今後、各大学等においては、それぞれが自律的に選択した教育理念に基づき、自らの個性・特色を明確化した上で、国内外の大学等や産業界、初等中等教育段階の学校等との連携も深めつつ、教育活動の質を保証し、また、不断に高め、豊かな教養と人間性、専門性を兼ね備え、地域から国際舞台まで幅広い分野においてそれぞれの立場で活躍できる人間を育成し、社会の期待に応えることが求められる。あわせて、国際競争力ある教育研究拠点として「知」の創造・継承・発展を担うことが期待される。
 国は、各大学等における自主的な取組を促すため、評価制度の充実など必要な制度改正や各種の情報の提供等に取り組む必要がある。また、この5年間を高等教育の転換と革新に向けた始動期間と位置づけ、中長期的な高等教育の在り方について検討し、結論を得ることが求められる。
 こうした基本的方向に基づく施策を通じて、例えば以下のような目標の実現を目指す。

  • ◆ 学士課程の学習成果として共通に求められる内容等の明確化や厳格な成績評価の導入等大学教育の質を確保するための枠組みを構築し、各大学等における組織的な取組を推進する
  • ◆ 将来的に、国際的な競争力・存在感を備える教育研究拠点を各分野において形成することを目指し、大学における組織的な取組を推進する
  • ◆ 大学の連携等を通じて、地域再生の核を形成するを目指し、大学等における組織的な取組を推進する

基本的方向4 子どもたちの安全・安心を確保するとともに、質の高い教育環境を整備する

 未来に向かって成長する子どもたちが、安全で質の高い空間で学び、様々な体験をし、生活できるようにすることは、教育の不可欠な前提条件である。
 国と地方公共団体の適切な役割分担の下に、学校施設の耐震化をはじめ、安全・安心な教育施設の整備を促す必要がある。子どもたちの安全・安心な環境確保のために、学校と警察等の関係行政機関との連携を図るとともに、ボランティアをはじめとする学校外の人々の協力を得ることも重要である。同時に、全国どの地域においても、一定水準以上の質の高い教育環境を保障することが求められる。
 また、公教育の重要な一翼を担う私立学校については、改正教育基本法第8条で新たに条文が設けられたところであり、私学助成等を通じ、その振興を図る必要がある。
 さらに、能力があるにもかかわらずが経済的理由により修学が困難な者に対する奨学のための取組を進める必要がある。
 こうした基本的方向に基づく施策を通じて、例えば以下のような目標の実現を目指す。

  • ◆ 子どもたちが安全な学校施設で安心して学ぶことができる教育環境を整備する
  • ◆ 能力があるにもかかわらず経済的理由によって修学が困難な者の教育の機会を確保する

(3)基本的方向ごとの施策

 前述の4つの基本的方向に基づき、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿の実現に向け、今後5年間、以下のような施策を中心に取り組む。
 政府は、教育が、国、地方公共団体、保護者、企業等のそれぞれの責務において実施されるものであることを前提に、所要の施策に取り組む必要がある。

基本的方向1 社会全体で教育の向上に取り組む

1 学校・家庭・地域の連携・協力を強化し、社会全体の教育力を向上させる

 改正教育基本法第13条(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)の規定を踏まえ、「連携・協力」を掛け声に終わらせず、それぞれの役割と責任を自覚した上で、誰もが参加できる具体的な仕組みを持つものとして社会に定着させることを目指す。このため、学校・家庭・地域の連携協力のための様々な具体的仕組みを構築するとともに、社会全体の教育力向上に取り組む。

【施策】
◇ 地域ぐるみで学校を支援し子どもたちをはぐくむ活動の推進

 学校と地域との連携・協力体制を構築し、地域全体で学校を支え、子どもたちを健やかに育むことを目指し、「学校支援地域本部」をはじめ、地域住民のボランティア活動等による積極的な学校支援の取組を支援する。こうした取組の成果をすべての市町村に周知し、共有すること等を通じ、広く全国の中学校区で地域が学校を支援する仕組みづくりが実施されるよう促す。

◇ 家庭・地域と一体になった学校の活性化

 保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って学校運営に参画し、地域に開かれた信頼される学校づくりを進めるコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)(注2)の設置促進に取り組む。公立学校の学校選択制について、資源配分の在り方と、これによる学校改善方策に関するモデル事業を希望する教育委員会で実施することを含め、地域の実情に応じた普及を図る。また、地域の実情に応じて、学校の適正配置を進め、教育効果を高める。

◇ 放課後や週末の子どもたちの体験・交流活動等の場づくり

 放課後や週末等に小学校の余裕教室等を活用して、子どもたちの安全・安心な活動拠点を設け、地域住民の参画を得て、学習活動や様々な体験・交流活動等の場を提供する「放課後子どもプラン」などの取組を、関係府省が連携して促し、こうした取組が、広く全国の小学校区で実施されるよう促す。
 あわせて、関係府省が連携して、小学校で自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一定期間(例えば1週間程度)実施できるよう目指すとともに、そのために必要な体験活動プログラムの開発や指導者の育成を支援する。また、自然の恩恵や食に関わる人々の様々な活動への理解を深めること等を目的として、関係府省が連携して農林漁業者などが農作業等の体験の機会を提供する取組を推進する。

◇ 青少年を有害環境から守るための取組の推進

 インターネットや携帯電話、テレビ、出版物等のメディア上の有害情報が深刻な問題となっていることを踏まえ、関係府省が連携して社会の有害環境から子どもたちを守るための取組の体制を整備し、出会い系サイト事業者に対する規制や、いわゆる迷惑広告メールの発信に関する規制を強化するための法規制の整備を進めるとともに、インターネット上の有害情報対策について検討を行う。あわせて、フィルタリング(有害サイトアクセス制限)の理解増進に関する事業者等の取組などについての産業界への協力要請や、保護者をはじめとする関係者の意識向上に向けた啓発活動を実施し、保護者の有害環境対策フィルタリングの認知率を大幅に向上させ、子どもが使用する携帯電話等における装備率の上昇を目指す。また、子どもたちが有害情報等に巻き込まれないよう、地域、学校、家庭を含めた情報モラル教育を推進する。

◇ 関係機関の連携による子供、若者、家庭等に関する支援の推進

 子ども、若者、家庭等に関する関係機関の連携による総合的な支援のあり方について、関係府省が連携して検討するとともに、地方公共団体の取組を促す。

◇ 企業等と教育関係者の相互理解・連携・協力の拡大

 社会全体で教育の向上に取り組むため、企業等と教育関係者の代表が一堂に会し、教育課題について議論を行う場を定期的に設けるなど、相互理解の促進に取り組む。
 ワーク・ライフ・バランスの促進に向け、企業等に対し、雇用者等が、仕事だけでなく、子育てや自らの学習活動、地域貢献活動などに十分に取り組むことができるような勤務条件の配慮を促すとともに、学校や地域での教育活動に対する支援、教育的な観点からの採用の在り方の改善等について継続的に協力を要請する。
 同時に、教育委員会や大学等教育関係者に対し、産業界等との積極的な連携・協力の拡大を呼びかける。

  • (注2)コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)とは、保護者や地域住民等が、一定の権限と責任をもって学校運営に参加することで、学校と地域が一体となって、地域に開かれ、地域に支えられる学校づくりを実現するための仕組みであり、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正により、平成16年9月に制度化された。制度化以降、年々着実に増加しており、平成19年7月1日現在、全国で213校がコミュニティ・スクールに指定されている。

2 家庭の教育力の向上を図る

 改正教育基本法第10条(家庭教育)において、保護者は子の教育に第一義的な責任を有するものであって、生活のため必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めなければならないと規定されている。家庭教育の自主性を尊重しつつ、教育の原点である家庭の教育力を高めるための支援を進める必要がある。あわせて、すべての親が自信を持って安心して子育てをすることができるよう、社会全体で家庭教育を支援する必要がある。

【施策】
◇ 子育てに関する学習機会の提供など家庭の教育力の向上に向けた総合的な取組の推進

 それぞれの家庭が置かれている状況やニーズを踏まえ、かつ、家庭教育の自主性を尊重しつつ、子育てに関する学習機会や情報の提供、相談や専門的人材の養成などの家庭教育に関する総合的な取組を関係機関が連携して行えるよう支援する。こうした支援の成果をすべての市町村に周知し、共有すること等を通じ、広く全国の市町村で、専門家の連携による支援など、身近な地域におけるきめ細かな家庭教育支援が実施されるよう促す。

◇ 幼稚園等を活用した子育ての支援の推進

 幼稚園、保育所及び認定こども園が有する人的・物的資源を活用した、施設の開放、保護者同士の交流、情報の提供、子育てに係る相談・助言などの子育ての支援を促す。

3 人材育成に関する社会の要請に応える

 一人一人の社会的自立を実現するとともに、我が国社会の活力の維持・向上の観点から、教育と職業や産業社会との相互の関わりを一層強化し、人材育成に関する社会の要請を踏まえた教育を促す。このため、キャリア教育を推進するとともに、産業界と連携して、また、初等中等教育段階から高等教育段階に至る教育の連続性に配慮しつつ、職業教育を推進する。併せて、グローバル化に対応し得る国際的通用性のある高度専門職業人の養成を推進する。

【施策】
◇ 地域の人材や民間の力も活用したキャリア教育・職業教育、ものづくりなど実践的教育の推進

 子どもたちの勤労観や社会性を養い、将来の職業や生き方についての自覚に資するよう、経済団体、PTA、NPO法人などの協力を得て、関係府省の連携により、キャリア教育を推進する。特に、中学校を中心とした職場体験活動や、普通科高等学校におけるキャリア教育を推進する。
 また、高校生等に専修学校の機能を活用した多様な職業体験の機会を提供するための取組を促す。さらに、ものづくりに関する児童・生徒の興味・関心を高めるとともに知識・技術を習得させるため、小中学校段階で例えばものづくり体験や、専門高校等における地域産業や経済界と連携したものづくり教育をはじめ、産業、職業への理解を図る。

◇ 専門高校等における職業教育の推進

 職業教育の活性化に資するよう、専門高校が地域社会と連携して行う特色ある職業教育の取組を促す。
 特に、産学連携による専門的職業人を養成するための実践的教育を関係府省と連携して促す。また、産業社会の動向や地域・生徒の実態・ニーズに対応した教育内容の改善や学科等の連携・改編等を促すため、先進的な事例の普及等に取り組む。さらに、専門性の深化を図るため、大学等との連携・接続の強化を促す。

◇ 大学・短期大学・高等専門学校・専修学校等における専門的職業人や実践的・創造的技術者の養成の推進

 国際的に通用する高度専門職業人の養成に向け、「大学院教育振興施策要綱」を改訂し、大学関係者と関連する業界や職能団体等との連携などによる専門職大学院等における教育の高度化への支援を行う。また、ものづくり技術の継承・発展とイノベーション創出を担う実践的・創造的技術者を育成するため、平成20年中に高等専門学校の振興のための計画を策定し、地域と連携した教育内容・方法の開発をはじめとする取組を支援する。大学・短期大学における社会的要請の高い課題に対応する教育の取組を支援する。あわせて、専修学校について、社会の変化に即応した実践的な職業教育及び専門的な技術教育を行う機能が発揮されるための取組を促す。

◇ 産業界・地域社会との連携による人材育成の強化

 人材育成に関する社会の要請に応えるため、大学等と産業界・地域社会とのより幅広い連携協力の下でのインターンシップの充実や教育プログラムの開発などの取組を促す。また、大学等と企業等との共同研究や大学の有する研究成果の提供、産業界・地域のニーズに対応した人材育成等を促す。

4 いつでもどこでも学べる環境をつくる

 改正教育基本法第3条(生涯学習の理念)の規定を踏まえ、誰もが生涯を通じて学び、自己の内面を磨くとともに、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の構築を目指し、情報通信技術も活用しつつ、必要な環境を整備する。その際、特に、個人の自立や住民の学習活動を通じた地域の活性化に重要な役割を果たす図書館や博物館、公民館等の地域の社会教育施設の活用を促す。

【施策】
◇ 図書館・博物館の活用を通じた住民の学習活動や個人と地域の自立支援の推進
  •  図書館が住民にとって身近な「地域の知の拠点」として、誰もが利用しやすい施設としての機能を果たすよう促す。あわせて、司書の資質の向上を図るため、その履修すべき科目の見直し等養成課程の改善を図る。また、「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」を踏まえ、子どもが読書に親しむ機会の提供と諸条件の整備を支援する。
  •  地域住民の参画を得ながら、地域の自然、歴史、文化等に関する質の高い博物館・美術館活動が行われるよう、子どもや地域住民が地域の美術品や文化財に触れる機会等の提供を支援するとともに、広域的な地域連携や館種を超えたネットワークの構築等を促す。また、学芸員の資質向上を図るため、その履修すべき科目の見直し等養成課程の改善を図る。
◇ 公民館等の活用を通じた地域の学習拠点づくり

 公民館をはじめとする社会教育施設について、地域が抱える様々な教育課題への対応や社会の要請が高い分野の学習など地域における学習の拠点、さらには人づくり・まちづくりの拠点として機能するよう促す。あわせて、公民館の運営状況に関する評価の実施や、地域住民に対する積極的な情報提供を促す。また、社会教育施設における学習の成果を活用した、地域において必要とされているボランティア活動等を促す。

◇ 持続可能な社会の構築に向けた教育に関する取組の推進

 一人一人が地球上の資源・エネルギーの有限性や環境破壊、貧困問題等を自らの問題として認識し、将来にわたって安心して生活できる持続可能な社会の実現に向けて取り組むための教育(ESD)の重要性について、広く啓発活動を行うとともに、関係府省が連携してこのような教育を担う人材の育成や教育プログラムの作成・普及に取り組む。
 特に、ESDを主導するユネスコの世界的な学校ネットワークであるユネスコ・スクール加盟校の増加を目指し、支援する。また、大学等と企業、NPO等の連携による、持続可能な社会づくりに取り組む環境人材の育成のための取組を支援する。

◇ 人権教育の推進、社会的課題に対応するための学習機会の提供の推進

 学校内外において、人権尊重の意識を高める教育を推進するとともに、男女共同参画社会の形成に向けた学習、消費者教育、金融教育、法教育、エネルギー教育など、社会生活を営む上で重要な課題に対応するための学習機会の提供を推進する。

◇ 地域住民に身近なスポーツ環境の整備

 心身の健全な発達に重要な役割を果たすスポーツに国民の誰もが生涯を通じていつでも身近に親しむことができる環境を整備するため、総合型地域スポーツクラブ等、地域における総合的なスポーツの場の育成・整備をはじめとした取組への支援を推進する。このような取組を通じ、成人の週1回以上のスポーツ実施率を50パーセントとすることを目指す。

◇ 「学び直し」の機会の提供と学習成果を社会で生かすための仕組みづくり

 誰もが生涯のいつでも必要な時に学び、また、何度でも新たなチャレンジを行うことができる社会の実現に向けて、情報通信技術も活用しつつ、大学・短期大学・高等専門学校・専修学校等において社会人をはじめとする幅広い学習者の要請に対応するための取組を促す。また、全国の受講者がより学習しやすい教育環境を整備するため、放送大学の授業をBSデジタル放送で行うための整備等を支援する。
 さらに、学習した成果が社会で適切に評価され、活用されるよう、学習成果の評価の仕組みについて検討する。

基本的方向2 個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる

1 知識・技能や思考力・判断力・表現力、学習意欲等の「確かな学力」を確立する

 「知識基盤社会」の時代を担う子どもたちに、

  • ア 基礎的・基本的な知識・技能の習得、
  • イ 知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等、
  • ウ 学習意欲などの主体的に学習に取り組む態度

を重要な要素とする「確かな学力」を養い、世界トップクラスの学力水準を確保する。

【施策】
◇ 学習指導要領の改訂と着実な実施

 「確かな学力」を確立するため、国語力の育成、理数教育の重視、小学校段階における外国語活動を含めた外国語教育の充実、十分な授業時数の確保などを目指す小・中学校の学習指導要領について、平成20年度に集中的に周知を図り、平成21年度から移行措置により可能な限り先行実施する。小学校では平成23年度から、中学校では平成24年度から完全実施する。高等学校及び特別支援学校の学習指導要領についても速やかな改訂に取り組む。また、学習指導要領の運用を踏まえ、不断に見直しを行う。さらに、学習指導要領の改訂趣旨や理念が各学校や国民に深く理解されるよう、全国各地での説明会の開催など必要な措置を講じる。
 授業時数や指導内容を増加する新学習指導要領の円滑な実施を図るために、教職員定数の改善をはじめとする教職員配置、算数・数学、理科に係る先行実施のための補助教材の作成・配付などの教育を支える条件整備を着実に実施する。特に、小学校の外国語活動に関しては、平成21年4月に小学校5,6年生に英語ノート(仮称)、各学校に音声教材等を配付し、平成22年度までに教員研修を計画的に実施するとともに、ALT等の外部人材の積極的な活用を支援する。中学校保健体育の武道必修化に伴う施設整備や教員研修、理科の観察・実験等の活動を充実させるための理科支援員等の配置や設備整備を支援する。

◇ 総合的な学力向上策の実施
  •  新学習指導要領を踏まえ、また、習熟度別・少人数指導や専科教員も活用しながら、基礎的な知識・技能の定着と思考力・判断力・表現力等の育成や、国語力の育成、理数教育や外国語教育の充実などを促す。
  •  児童生徒の発達段階に応じた情報活用能力の育成に加え、情報モラル教育の充実を促す。
  •  国民の科学技術に関する基礎的素養の向上、科学技術関係人材の育成に向けて、土台となる理数教育の質・量の両面の充実のため、大学や企業の研究者・技術者等の外部人材を学校において活用するなど、大学との連携等を促す。
  •  6−3−3−4制の弾力化に関し、小中一貫教育やいわゆる飛び級を含め、幼児教育と小学校との連携など、各学校段階間の円滑な連携・接続等のための取組について検討する。
◇ 教科書の改善

 新学習指導要領の趣旨を踏まえ、子どもたちが基礎的・基本的な知識・技能を確実に身に付け、それらを活用する力をはぐくむことができるような教科書の質・量の改善を図る。このため、教科用図書検定基準の見直しなど、児童生徒が理解しやすく教師が教えやすい教科書に向けた内容・記述・体様等の改善方策について検討を行うとともに、教科書検定手続きの一層の改善を図る。

◇ 全国学力・学習状況調査の継続実施とその結果を活用した学校改善への支援等

 児童生徒の学力や学習状況を把握し、教育施策や指導の改善に活用するため、全国学力・学習状況調査を継続的に実施する。あわせて、その結果から児童生徒の学力、学力と学習状況の関係等を分析・検証し、課題がみられる学校の改善に向けた取組への支援や、優れた取組の普及等を行い、すべての教育委員会、学校等において教育に関する検証改善サイクルが確立されるよう促す。また、高等学校についても、多様化する生徒の実情を踏まえつつ、学習成果を多面的・客観的に評価する取組を推進する。

◇ 学校現場の創意工夫による取組への支援

 学校現場の創意工夫による取組を支援するため、学級編成基準の弾力化、習熟度別指導・少人数指導の教員や小学校高学年での専科教員の適正配置、定数の適正化、地域の実情に応じた学校選択制の普及、教材開発などの教員のチームによる取組の支援、図書の充実を図る。

2 規範意識を養い、豊かな心と健やかな体をつくる

 新学習指導要領を踏まえ、生涯をより良く生きようとする力の源泉となる豊かな心と健やかな体を育成する。あわせて、将来社会の責任ある一員として生きる自覚を促し、そのために必要な資質を養う。

【施策】
◇ 道徳教育の推進

 子どもたちの豊かな情操や規範意識、公共の精神などをはぐくむ観点から、道徳教育の充実に向けて、道徳教育推進教師を中心とした全校的な指導体制の下での指導計画づくりなどを促進するとともに、指導方法・指導体制等に関する研究や教材の作成などに総合的に取り組む。特に、教材については、適切な教材が教科書に準じたものとして十分に活用されるよう、国庫補助制度を早期に創設する。また、子どもの発達の視点を踏まえつつ、家庭、学校、地域が一体となって徳育を推進するための諸方策について幅広く検討を行う。

◇ 伝統・文化等に関する教育の推進
  •  伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う観点から、我が国や郷土の伝統・文化を受け止め、それを継承・発展させるための教育の充実を支援する。子どもたちが、学校や地域の文化施設において、優れた舞台芸術の鑑賞や文化芸術活動への参加ができる機会や、地域において伝統・文化に関する活動を計画的・継続的に体験・修得する機会の提供を支援する。さらに、我が国固有の伝統的な文化である武道の振興を支援する。
  •  異なる文化的背景を持つ人々との相互理解を深め、国際社会において主体的に行動できる人材を育成するため、各学校段階における国際理解教育の推進を促す。また、宗教に関する一般的な教養に関する教育の推進を図る。
◇ 環境教育の推進

 環境教育の充実のための取組を関係府省が連携し、家庭、学校、地域、企業等における生涯にわたる質の高い環境教育・学習の機会の多様化を図る。

◇ 勤労観・職業観や知識・技能をはぐくむ教育(キャリア教育・職業教育)の推進

 子どもたちの勤労観や社会性を養い、将来の職業や生き方についての自覚に資するよう、経済団体、PTA、NPO法人などの協力を得て、関係府省の連携により、小学校段階からのキャリア教育を推進する。特に、中学校を中心とした職場体験活動や、普通科高等学校におけるキャリア教育を推進する。
 また、専門高校等が地域社会等と連携して行う特色ある職業教育の取組を促すとともに、高校生等に専修学校の機能を活用した多様な職業体験の機会を提供するための取組を促す。さらに、ものづくりに関する児童・生徒の興味・関心を高めるとともに知識・技術を習得させるため、小中学校段階で例えばものづくり体験や、専門高校等における地域産業や経済界と連携したものづくり教育をはじめ、産業、職業への理解を図る。

◇ 体験活動・読書活動等の推進
  •  生命や自然を大切にする心や他を思いやる優しさ、社会性、規範意識などを育てるため、全国の小学校、中学校及び高等学校において、自然体験、集団宿泊体験、職場体験、奉仕体験等の様々な体験活動を行う機会の提供について関係府省が連携して推進する。
  •  豊かな感性や情緒を育むとともに、豊かな言語力を育成する観点から、朝読書をはじめとする読書活動の実施を促す。あわせて、「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」等に基づき、学校図書館の機能の発揮を図るとともに、司書教諭が発令されていない学校においても有資格者の発令が促進されるよう、司書教諭の講習を引き続き進める。
◇ いじめ等の問題行動等に対する取組の推進

 いじめ、暴力行為、不登校等への対応の推進を図るため、関係府省が連携して、非行防止教室の開催やスクールサポーターの活用など、未然防止、早期発見・早期対応につながる効果的な取組や、関係機関と連携した取組を促進する。また、外部の専門家等からなる「学校問題解決支援チーム」などを活用し、学校の適切な対応を促すとともに、問題行動を起こす児童生徒への毅然とした指導を促す。さらに、教育相談を必要とするすべての小中学生が適切な教育相談等を受けることができるよう、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の活用など教育相談体制の整備を支援するとともに、自殺防止に向けた取組を支援する。

◇ 不登校の子ども等の教育に対する支援

 不登校の児童生徒への学校内外における相談体制の整備を進めるなど、不登校の子ども等の教育に対する支援を図る。

◇ 子どもの体力向上に向けた総合的な方策の推進

 子どもの体力の向上を目指し、子どもの体力の全国的な状況について把握・分析を行い、その結果を踏まえ、学校や地域における体力向上の取組を推進する。また、運動部活動を始めとする学校体育において、生涯にわたって積極的にスポーツに親しむ習慣や意欲、能力を育成するとともに、その充実を図るため、外部指導者の積極的な活用を促す。さらに、子どもが安心して意欲的にスポーツが行えるよう校庭の芝生化等を促す。これらの取組を通じ、子どもの体力を上昇傾向に転ずることを目指す。

◇ 食育の推進、地域の医療機関等との連携による心身の健康づくり

 子どもたちに望ましい生活習慣や食習慣を身に付けさせるため、栄養教諭を中核とした学校・家庭・地域の連携による食育の充実を推進する。あわせて、食の指導の充実を図るため、学校給食において地場産物を活用する取組を促す。
 また、学校、保護者、地域の保健部局や医療機関等の連携により、健康教育を推進し、様々な心身の健康問題を持つ子どもが安心して学校生活を送ることができる環境を整備する取組を推進する。さらに、子どもたちの様々な健康問題に対応するため、すべての小中学校において、教育面と管理面からなる学校保健に関する計画の策定を目指すとともに、小学校から高等学校までの養護教諭未配置校等へのスクールヘルスリーダーの週1回程度派遣を目指す。

3 教員の資質の向上を図るとともに、一人一人の子どもに教員が向き合う環境をつくる

 教員は、子どもたちの心身の発達に関わり、その人格形成に大きな影響を与える存在であり、その資質・能力を絶えず向上させるため、適切な処遇や教員の養成・研修の充実、厳格な人事管理を促す必要がある。
 教員が、授業等により一人一人の子どもに向き合う環境をつくるため、必要な教職員定数の措置や外部人材の活用、教育現場のICT化、事務の外部化等に総合的に取り組む。

【施策】
◇ メリハリある教員給与体系の実現

 良き教師を確保するため、メリハリのある教員給与体系を実現する中でのがんばる教員の処遇の充実を図る。

◇ 教員が子ども一人一人に向き合う環境づくり

 教員が子ども一人一人に向き合う時間を確保する観点から、必要な教職員定数を措置する。スクールカウンセラー等の学校の専門的・支援的スタッフや外部人材の活用、学校と地域との連携体制を構築し、地域住民が事務等について学校を支援する取組を促す。その際、教員に広く一般社会から教育に熱意と能力・適性を備えた人材の導入の促進を目指し、社会人採用のための特別免許状や特別非常勤講師制度の活用等を促す。あわせて、調査の見直し、教育現場のICT化、事務の簡素化・外部化、学校事務の共同実施などに取り組む。

◇ 教員養成・研修等の推進
  •  実践的能力を備えた質の高い教員を養成するため、「教職実習演習(仮称)」を必修化するとともに、その能力の向上を図るため、教員養成に係るカリキュラムや、教職課程に係る事後評価、認定審査の在り方などを見直し、逐次実施する。その状況も踏まえつつ、教員養成の在り方の抜本的な改革について検討する。あわせて、専修免許状の取得を促す。
  •  実践的な指導力を備えた新人教員を養成するとともに、現職教員を対象にスクールリーダーとなる教員養成を行うため、教職大学院の整備・活用や、教職大学院等と教育委員会との連携を促す。
  •  任命権者に対し、社会人経験者をはじめ多様で質の高い人材の確保のための採用方法の改善等を促す。また、教育委員会に対し、悩みを抱える教員のための相談窓口の設置を図るよう促す。
  •  学校の責任者である校長をはじめ管理職等の資質向上のための研修や、重要課題について指導的役割を担う教員等に対する研修を推進する。また、初任者研修をはじめとする教育委員会の行う教職員研修の充実に向けた取組を促す。
◇ 教員免許更新制の円滑な実施

 教員免許更新制の実施に向けた準備に着実に取り組むとともに、平成21年4月の制度開始後は、円滑に実施されるよう、周知等必要な取組等を行う。

◇ 教員評価の推進

 学校教育に対する信頼を確保し、教員の資質を向上させるために、教員評価に関する取組を促す。

◇ 優秀教員表彰の推進

 優れた教員の功績を評価するとともに、広く教員の意欲を高め、あわせて社会全体に教職に対する信頼感と尊敬の念を醸成するため、優秀教員の表彰に関する取組を促す。

◇ 指導が不適切な教員に対する厳格な人事管理

 指導が不適切な教員が子どもたちの教育に当たることのないよう、厳格な人事管理の実施を促す。

4 教育委員会の機能を強化するとともに、学校の組織運営体制を確立する

 改正教育基本法第16条第1項において、教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならないことが明確化された。各自治体における教育行政については、この趣旨にのっとり、合議制の執行機関である教育委員会と、その構成員である教育委員が、自らの責任を十分に果たし、住民の期待に応えつつ、公正かつ適正に行われることが必要である。
 このため、地方の自主性や自立性を尊重し、適切な役割分担を踏まえつつ、教育委員会の機能の強化と、学校の組織運営体制の確立に向けた積極的な取組を促す。

【施策】
◇ 教育委員会の責任体制の明確化

 教育委員会の責任体制の明確化を図るとともにその体制の充実を促す。このため、教育委員の資質向上のための研修や情報提供を実施するとともに、各地方自治体における熱意と責任感を持った教育委員の人選や、地域住民の意思の反映などによる機能の活性化、合議制の教育委員会において管理・執行する必要がある事項の明確化、市町村教育委員会の共同設置、地域住民の意思の反映や議会による検証を可能とするよう、教育委員会の会議や活動内容の公開、第三者の知見を活用した活動状況の点検・評価などを促す。

◇ 市町村への権限の移譲

 県費負担教職員の人事権を移譲することについて、すべての市町村において一定水準の人材確保を図ることができるよう、小規模市町村の行政体制の整備の状況を踏まえつつ、広域での人事調整の仕組みや給与負担、学級編制、教職員定数の在り方などとともに、引き続き検討する。

◇ 新しい職の設置等による学校の組織運営の改善

 各学校において、改正学校教育法により新設された副校長、主幹教諭等の職の活用も図りつつ、校長のリーダーシップの下、例えば、校長裁量経費や教員の公募制の導入、校長の在職期間の長期化等、優れた民間人の校長等への登用等、組織的・機動的な学校運営が行われるよう、各教育委員会等の取組を促す。教育委員会において、管理職の登用を含め、人事管理を厳格に行い、公正かつ適正な管理運営体制を確立するよう促す。
 あわせて、学校が、地域との連携を深めながら、人材や時間を有効に活用し、子どもたちにきめの細かい指導を行うことができるよう、また、外部の専門家等の協力も得て保護者や地域の多様な要望により適切に対応することができるよう、学校の組織運営体制の改善に向けた各教育委員会・学校の取組を促す。

◇ 学校評価の推進とその結果に基づく学校運営の改善

 教育活動等の成果の検証とその客観性・透明性の確保を通じて学校運営の改善と発展を目指すとともに、適切に説明責任を果たし、保護者・地域住民等との連携協力の促進を図るため、学校評価システムの充実に向けて取り組む。具体的には、教職員による自己評価をすべての学校において実施するとともに、保護者等による学校関係者評価について、できる限りすべての学校において実施されることを目指し、各学校・教育委員会の取組を促す。また、それらの評価結果の公表などの積極的な情報公開を促すとともに、評価結果について設置者への報告がなされるよう各学校・教育委員会の取組を促す。専門的・客観的な視点からの第三者評価についてさらに検討を深め、その仕組みの確立に向けて取り組む。

◇ 家庭・地域と一体になった学校の活性化

 学校の組織運営体制を確立する観点からも、家庭・地域と一体になった学校の活性化を推進する(前述15頁を参照)。

5 幼児期における教育を推進する

 改正教育基本法第11条(幼児期の教育)の規定を踏まえ、生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の重要性にかんがみ、幼稚園と保育所との連携の強化を図りつつ、その質の向上など幼児教育の推進に向けて取り組む。

【施策】
◇ 認定こども園の活用など幼児教育を受けられる機会の提供の推進

 国民の多様なニーズに応えるため、認定こども園については、利用者のニーズや施設の認定申請の希望状況を踏まえつつ、今回の計画期間中のできる限り早期に認定件数が2,000件以上になることを目指し、制度の普及啓発や幼保連携型認定こども園への円滑な移行に向けた運用改善など必要な支援を講じる。
 また、小学校就学前の幼児のうち3歳児については、幼稚園、保育所又は認定こども園への就園の普及啓発に努めていく。

◇ 幼児教育全体の質の向上
  •  幼児教育の質の向上に向け、教育内容の整合性を図った新しい幼稚園教育要領と保育所保育指針を幼稚園・保育所で平成21年から実施するとともに、幼稚園・保育所と小学校の連携を促す。また、幼稚園が行う「預かり保育」についても、新しい幼稚園教育要領に規定した内容の周知を図る。
  •  幼稚園における学校評価の実施とその結果の公表についても、幼稚園の特性を踏まえて、前述の小学校や中学校等と同様の取組を推進する。
  •  教職員の資質向上のため、幼稚園・保育所の教職員に対する合同研修を促進するとともに、養成段階における幼稚園教諭免許と保育士資格の取得の促進はもとより、現職者においてもそれらの併有を促す。さらに、幼稚園教諭一種免許状を有する現職幼稚園教員の増加を促す。
  •  幼稚園の保健安全対策に関する取組を促す。
◇ 幼児教育の無償化の検討を含む保護者負担の軽減

 幼児教育の将来の無償化について、歳入改革にあわせて財源、制度等の問題を総合的に検討しつつ、当面、就学前教育についての保護者負担の軽減策を充実するなど、幼児教育の振興を図る。

◇ 幼稚園等を活用した子育てへの支援の推進

 幼児期における教育を推進する観点からも、幼稚園等を活用した子育てへの支援を推進する(前述17頁を参照)。

6 特別なニーズに対応した教育を推進する

 改正教育基本法第4条第2項において、障害のある者への教育上の支援について新たに規定された。障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う特別支援教育を推進する。あわせて、外国人児童生徒など、特別なニーズを有する者に対応した教育を推進する。

【施策】
◇ 特別支援教育の推進

 幼稚園から高等学校までを通じて、発達障害を含む障害のある子ども一人一人の教育的ニーズを把握し適切な支援を行うため、特に、特別支援教育支援員の配置を促すとともに、障害のある児童生徒の在籍するすべての公立小・中学校において、必要に応じて「個別の指導計画」が作成されるよう促すなど、体制整備を推進する。
 また、特別支援学校については、外部専門家の活用を含めた教員の専門性の向上や就職率の改善のための取組への支援を推進する。あわせて、障害のある子どもと障害のない子どもとの相互理解を深めるための活動を推進する。
 特別支援学校の在籍児童生徒等の増加に伴う大規模化等に対する地方公共団体等の取組を支援する。

◇ 外国人児童生徒等の教育及び海外子女教育の推進

 小・中学校等における外国人児童生徒等の受入体制の整備や指導の推進のため、外国人児童生徒等の指導にあたる人材の確保や資質の向上、指導方法の改善、就学の促進等の取組を推進する。
 また、在外教育施設に在籍する児童生徒への教育を推進する。

基本的方向3 教養と専門性を備えた知性豊かな人間を養成し、社会の発展を支える

1 社会の信頼に応える学士課程教育等(注3)を実現する

 高等教育の大衆化が進行して同世代の過半数が進学する「ユニバーサル段階」、そして、少子化により18歳人口が減少し、いわゆる「大学全入」時代を迎える中で、大学等における教育の質の確保が重要な課題となっている。
 このため、大学等が社会的ニーズや学習者の様々なニーズに的確に対応するとともに、それぞれの掲げる教育研究上の目的の下、教養と専門性を備えた人間を育成することができるよう、各学校の位置づけや期待される役割・機能を十分に踏まえた質の高い教育の展開を支援する。大学については、教学経営において特に重視すべき3つの方針、すなわち「学位授与の方針」、「教育課程編成・実施の方針」、「入学者受入れの方針」の統合的な運用による優れた実践の普及を促進する。その際、それぞれの個性・特色を一層明確にする教育や大学教員の教育力向上のための取組を促す。

【施策】
◇ 社会からの信頼に応え、求められる学習成果を確実に達成する学士課程教育等の質の向上

 学士課程で身に付ける学習成果(「学士力」)の達成等を目指し、各大学等において教育内容・方法の改善を進めるとともに、卒業認定も含めた厳格な成績評価システムを導入するよう支援する。さらに、教育環境の改善・充実を図り、すべての大学等において教員の教育力の向上のための取組が実質化されるよう、教員の教育業績の評価、学生による授業評価の結果を改善へ反映させる組織的取組等を促すとともに、優れた取組を行っている大学等を支援する。
 こうした各大学等における教育改善の取組を推進するため、教員の教育力の向上のための拠点形成とネットワーク化を推進するなど、個別の大学等の枠を超えた質保証の体制や基盤の強化を支援する。
 さらに、ICTを活用した教員の教育力向上・教材作成や、国内外の教育コンテンツ等の情報収集・発信、海外の中核的機関との連携強化等を支援する。

◇ 共通に身に付けるべき学習成果の明確化と分野別教育の質の向上

 学生が教育分野にかかわらず共通に身に付けるべき学習成果について、国際的通用性の確保にも留意しつつ、明確化に取り組むとともに、分野別の教育の質の向上・保証を行うため、「学習成果」や到達目標の設定などの取組を促す。あわせて、教育の分野別質保証の在り方について日本学術会議との連携を図りつつ、それぞれの質の保証に向けた枠組みづくりを進める。

◇ 高等学校と大学等との接続の円滑化

 各大学等が入学者受け入れ方針の明確化を図りつつ、高等学校段階の学習成果を適切に評価する大学入試の取組を促すなど、高等学校と大学との接続の円滑化を図る。また、高等学校段階での学習成果を客観的に把握し、高等学校の指導改善や大学入試などにも幅広く活用できる方法について、中央教育審議会の審議を踏まえ、高大関係者が十分に協議・研究するよう促す。また、高校生が大学教育に触れる機会等を充実するため、大学等の高大連携に関する優れた取組を支援する。大学への飛び入学については、「特に優れた資質」の判定や大学における指導体制など現行制度のより柔軟な運用を図り、各大学における積極的な取組を促す。

  • (注3)学士課程教育等
    学士課程教育及び短期大学士課程教育を指す。

2 世界最高水準の卓越した教育研究拠点を形成するとともに、大学院教育を抜本的に強化する

 国際競争力のある世界最高水準の大学づくりのため、「大学院教育振興施策要綱」(平成18〜22年)に基づき、世界的な卓越した教育研究拠点の重点的な形成を支援するとともに、大学院における優れた組織的な教育の取組を支援する。あわせて、意欲と能力のある若手研究者等が活躍できる環境づくりを支援する。

【施策】
◇ 世界最高水準の卓越した教育研究拠点の形成

 博士後期課程の学生を含む優れた若手研究者の育成機能の強化や国内外の大学・機関との連携強化等を通じて国際的に卓越した教育研究拠点の形成を支援する。特に、平成23年度までに、世界的に卓越した教育研究拠点の形成を目指し150拠点程度を重点的に支援する。また、学術の発展と人材育成の充実のため、国公私立を通じた共同利用・共同研究拠点の整備を支援する。

◇ 大学院教育の組織的展開の強化

 産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を養成するため、コースワーク(注4)の充実等、大学院における組織的・体系的な優れた教育の取組を促す。また、大学院修了者等の一層の活用や、国内外に開かれた入学者選抜や大学院への早期入学等を含め、より開かれた大学院入学を促進するための方策等について検討し、「大学院教育振興施策要綱」に適宜反映する。

◇ 若手研究者、女性研究者等が活躍できる仕組みの導入

 若手研究者の自立的な環境整備のためのテニュア・トラック制(注5)の導入、多様なキャリアパスを切り拓くための人材養成等の組織的な取組、女性研究者がその能力を最大限発揮できるよう、研究と出産・育児等を両立するための取組を促す。

  • (注4)学習課題を複数の科目等を通じて体系的に履修すること
  • (注5)若手研究者が、厳格な審査を経てより安定的な職を得る前に、任期付きの雇用形態で自立した研究者としての経験を積むことができる仕組み。

3 大学等の国際化を推進する

 海外の有力大学等との連携を通じ、我が国の大学等の国際化を図る国際化や国際競争力の向上を図るとともに、国際的な環境で学生や教員が学ぶことができる機会の充実に向けた取組を促す。このため、「大学教育のグローバル化を目指した当面の施策についての基本的な考え方」に基づく取組を推進する。

【施策】
◇ 留学生交流の推進

 大学等の国際化や国際競争力の強化を図るとともに、諸外国との相互理解や我が国が安定した国際関係を築く上での基礎となる人的ネットワークを形成するため、新たに2020年頃の実現を目途として「留学生30万人計画」を策定し、計画的に推進を図る。今後5年間においては、留学生数の大幅な増加を目指す。あわせて、その質の確保を図ることに留意しつつ、外国人留学生に対する取組を推進する。
 また、国際的に活躍できる人材の育成を図るとともに、大学間交流の活性化、ひいては日本社会のグローバル化に資する観点から日本人学生の海外留学・体験のための取組を推進する。

◇ 大学等の国際活動の充実

 大学教育の質の向上と国際競争力の強化を図るため、国際活動のための事務局体制等の基盤強化や、海外の有力大学等との連携によるダブル・ディグリー等の複数学位制や単位互換、英語等の外国語による教育、9月入学(秋季入学)、サマープログラム等の充実に向けて、大学等の取組を促す。

4 国公私立大学等の連携等を通じた地域振興のための取組などの社会貢献を支援する

 地域社会においてニーズの高い教育や、地域の活性化等の社会貢献のため、国公私の大学等の協同で行う取組を支援する等、各大学等がそれぞれの特色を活かして行う地域振興に貢献する取組を促す。

【施策】
◇ 複数の大学間の連携による多様で特色ある戦略的な取組の支援

 全国各地域において、大学間の連携により、各大学等の教育研究資源を複数の大学間で有効に活用し、地域人材の育成・イノベーション創出等の地域貢献機能の強化・拡大及び教育研究の多様化・特色化を図るための取組(国公私を通じたコンソーシアム)が、充実したものとなるよう、支援する。また、国公私を通じ複数の大学等が学部・研究科等を共同で設置できる仕組みを平成20年度中に創設する。

◇ 生涯を通じて大学等で学べる環境づくり

 個人のキャリア形成や地域活動への参画等のため、生涯にわたる学習へのニーズが高まっていることに対応し、大学等における社会人等受入れに必要な環境の整備を促すとともに、大学等と産業界等との連携による取組への支援により、大学等における社会人受入を拡大することを目指す。

◇ 地域の医療提供体制に貢献するための医師育成システムの強化

 医療人養成の中核的機関である大学・附属病院の運営基盤を強化するとともに、地域の医療機関との緊密な連携体制の構築を通じた医療分野における大学等の地域貢献の取組を支援する。特に、地域医療、がんなど社会的要請の強い分野について、専門性の高い医療人の養成を促す。

5 大学教育の質の向上・保証を推進する

 高等教育の量的拡大や多様化の一層の進展を踏まえ、学習者の保護や国際的通用性の観点から、高等教育の質を保証する取組を促す。その際、個々の機関の設置目的や使命等も踏まえ、それぞれの機能や役割に則して多元的な評価が行われるよう留意するとともに、個別の大学等の枠を超えた質保証の体制や基盤の強化を促す。
 また、大学等の設置認可や認証評価制度、情報公開を含めた包括的な教育の質保証の在り方について、中央教育審議会において検討し、認証評価制度の第2サイクルに向け、必要な措置を講じる。

【施策】
◇ 事前評価の的確な運用

 我が国の大学等が国際的に通用するための最低限の要件を明確化する観点から、事後評価との適切な役割分担と協調を図りつつ、教員組織、施設・設備等に関して大学設置基準等の見直しを行うとともにその的確な運用を進める。

◇ 共通に身に付けるべき学習成果の明確化と分野別教育の質の向上

 大学教育の質の向上・保証を推進する観点からも、共通に身につけるべき学習成果の明確化と分野別教育の質の向上を推進する(前述28頁を参照)。

◇ 大学評価の推進

 大学評価システムの確立・定着に向け、認証評価(機関別、専門職大学院専門分野別)、自己点検・評価、分野別評価等の大学評価に関して、大学等と評価機関が行う効率的な評価方法の開発等を促すとともに、参考となる多様な事例を集積・提供すること等により、認証評価等の大学評価の充実と教育の質の向上を図る。

6 大学等の教育研究を支える基盤を強化する

 次世代をリードする人材の育成に向け、学術の中心である大学等の基礎的な教育研究を支えるとともに、競争的環境の中で、各大学等が主体的にそれぞれの特色ある発展と教育研究の質の向上を図るため支援する。

【施策】
◇ 大学等の教育研究を支えるとともに、高度化を推進するための支援

 大学等における教育研究の質を確保し、優れた教育研究が行われるよう引き続き歳出改革を進めつつ、基盤的経費を確実に措置する。あわせて、人材の育成や大学の教育研究の高度化に資する科学研究費補助金等の競争的資金等の拡充を目指す。その際、科学研究費補助金の間接経費(注6)について、30パーセントの措置をできるだけ早期に実現する。
 また、国立大学法人運営費交付金については、1教育研究面、2大学改革等への取組の視点に基づく評価に基づき適切な配分を実現する。その際、国立大学法人評価の結果を活用する。あわせて、企業や個人等からの寄付金、共同研究費等の民間からの資金の活用について、各大学の自助努力を後押しするための税制上の措置の活用を含む環境整備等を進める。

◇ 大学等の教育研究施設・設備の整備・高度化

 優れた人材の育成や創造的・先端的な研究開発を推進するため、大学等の施設・設備について、安全性の確保だけでなく、現代の教育研究ニーズを満たす機能を備えるよう、重点的・計画的な整備を支援する。このため、「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」(平成18〜22年度)を着実に実施する。

◇ 時代や社会の要請に応える国立大学の更なる改革

 国立大学の再編統合、学部の再編や学部入学定員の見直し、徹底したマネジメント改革、学部の壁を越えた教育体制など、時代や社会の要請に応えるための国立大学法人の自主的な取組を促す。また、一つの国立大学法人による複数の大学の設置管理等についての検討を行う。

  • (注6)競争的資金を獲得した研究者の属する機関に対して研究費の一定比率が配分され、研究の実施に伴う研究機関の管理等に必要となる経費に充てるもの

基本的方向4 子どもたちの安全・安心を確保するとともに、質の高い教育環境を整備する

1 安全・安心な教育環境を実現する

 子どもたちが安全・安心な質の高い空間で学び、生活できる教育環境の整備に取り組む。

【施策】
◇ 学校等の教育施設の耐震化等の安全・安心な施設環境の構築

 基本的な教育条件を全国を通じて確保するため、学校施設の整備を支援する。また、児童生徒等が安心して学び、生活する場であるとともに、応急避難場所としての役割も果たす小中学校等の教育施設の耐震化等の安全・安心な施設環境の整備を支援する。特に、大規模な地震が発生した際に倒壊又は崩壊の危険性の高い小中学校等施設(約1万棟)について、優先的に耐震化を支援する。地方公共団体等に対し、今回の計画期間中のできる限り早期にこれらの耐震化が図られるよう要請する。あわせて、バリアフリー化、アスベスト対策等の施設環境の整備を支援する。

◇ 地域のボランティア等との連携による学校内外の安全確保

 学校や通学路等において子どもたちが安全に過ごせるよう、学校と地域のボランティアや関係機関との連携による地域ぐるみで子どもの安全を守る環境の整備や、子ども自らが安全な行動をとれるようにするための安全教育の取組を推進する。その一環として、小学校におけるスクールガードリーダーを、5校に1人程度の割合で配置することを目指す。あわせて、地域ぐるみで子どもの安全を確保するため、すべての小中学校において、教育面と管理面からなる学校安全に関する計画の策定を目指す。

◇ 放課後や週末の子どもたちの体験・交流活動等の場づくり

 子どもたちの安全・安心を確保するとともに、質の高い教育環境を整備する観点からも、放課後や週末の子どもたちの体験・交流活動等の場づくりを推進する(前述15頁を参照)。

2 質の高い教育を支える環境を整備する

 子どもたちが、質の高い充実した教育環境の中で学ぶことができるよう、教材や図書の整備を図る。また、「わかる授業」の実現や「確かな学力」の向上、事務体制の効率化や家庭や地域との連携に資するよう、学校における情報化の推進に取り組む。あわせて、国においては、各地方公共団体におけるこれらの取組をいわゆる「公教育費マップ」の公表などにより国民にわかりやすく説明し、効率的・効果的な取組を促す。さらに、教育に関する研究成果等の蓄積・活用等に取り組む。

【施策】
◇ 学校図書館の整備の推進

 学校図書館資料を充実させるため、平成19年度から23年度までの「学校図書館図書整備5カ年計画」に基づく単年度約200億円の地方財政措置の活用も促しつつ、学校図書館図書標準の達成を目指す。あわせて、司書教諭が発令されていない学校における有資格者の発令が促進されるよう、司書教諭の講習を引き続き進めるとともに、学校図書館の諸事務にあたる職員の配置を促す。

◇ 教材の整備の推進

 教材費の地方財政措置を活用し、学校現場に十分な教材が行き渡るよう、計画的な教材整備を促す。また、学習指導要領の改訂等を踏まえ、新たな教材整備年次計画を策定する。

◇ 学校の情報化の充実

 教育用コンピュータ、校内LANなどのICT環境の整備と教員のICT指導力の向上を支援する。また、教材・コンテンツについて、その利用等を支援し、ICTの教育への活用を促すとともに、校務の情報化、ICT化のサポート体制の充実を促す。IT新改革戦略に基づき、平成22年度までに、校内LAN整備率100パーセント、教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数3.6人、超高速インターネット接続率100パーセント、校務用コンピュータ教員1人1台の整備、すべての教員がICTを活用して指導できるようになることを目指すとともに、教育委員会や小中高等学校等への学校CIO(注7)の配置を促す。
 また、平成23年の地上デジタル放送への移行を踏まえ、その効果を教育において最大限活用するための取組を支援する。

◇ 教育に関する研究成果等の蓄積・活用

 個々の学校における教育内容・方法等の改善や教職員の資質向上を支援するため、教育に関する様々なデータや研究成果の蓄積とその活用に取り組む。
 また、大学と教育委員会等のネットワークにより、大学の先端的な英知を教育の改善に活かす取組(「大学発教育支援コンソーシアム」構想)を支援する。

  • (注7)学校CIO(Chief Information Officer)
    教育において、学校の情報化を計画的かつ戦略的に進めるための統括責任者又は統括責任機関をいう。

3 私立学校教育を振興する

 私立学校は、建学の精神に基づく多様な人材育成や特色ある教育研究の展開を担うなど、我が国の学校教育の質・量両面にわたる発展に重要な役割を果たしている。このような私立学校の特性と役割にかんがみ、その自主性を尊重しつつ、私立学校の教育研究に対する支援を行う。あわせて、定員割れとなり、十分な授業料収入等の自己収入を確保できないこと等により、収支のバランスが悪化している学校法人も増加する中で、学校法人の自主的な努力による健全な経営の確保を促す観点から、学校法人に対し、経営に関する指導・助言等の支援を行うとともに、積極的な財務情報等の公開を促す。

【施策】
◇ 私学助成の推進

 教育条件の維持向上、私立学校に在学する幼児から学生までに係る修学上の経済的負担の軽減、私立学校の経営の健全性の向上のため、私学助成を推進する。

◇ 学校法人に対する経営支援

 学校法人の健全な経営を確保することを目的として、学校法人の自主的な経営改善努力を促すため、経営相談や経営分析を通じた指導・助言などの支援を行う。また、各学校法人が財務情報及び入学者数等の情報を積極的に公開するよう促す。

4 教育機会の均等を確保する

 能力があるにもかかわらず、経済的な理由により修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じる。

【施策】
◇ 奨学金事業等の推進

 教育の機会均等の観点から、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な学生等に対して、奨学金事業等を推進する。また、各都道府県及び市町村においても、適切な就学援助や高等学校奨学金事業が行われるよう促す。

◇ 学生等に対するフェローシップ等の経済的支援の推進

 優秀な人材を育成するため、競争性を十分確保しつつ、フェローシップやティーチング・アシスタント(注8)、リサーチ・アシスタント(注9)等の経済的支援を行う。特に、博士課程(後期)在学者の2割程度が生活費相当額程度を受給できるようにすることを目指す。

◇ 幼児教育の無償化の検討

 幼児教育の将来の無償化について、歳入改革にあわせて財源、制度等の問題を総合的に検討しつつ、当面、就学前教育についての保護者負担の軽減策を充実するなど、幼児教育の振興を図る。(前述26頁を参照)。

◇ 私学助成の推進

 修学上の経済的負担を軽減する観点からも、私学助成を推進する(前述34頁を参照)。

◇ 民間からの資金の受入れ促進等のための取組の推進

 企業をはじめとする多様な主体による教育の振興に資する寄附の促進、教育機関の自助努力や教育に関する取組を行う民間団体等の自立的・継続的な活動の支援、家計の負担が大きい高校生・大学生の教育費負担の軽減等のため、税制上の措置の活用を促すとともに、社会における寄附文化の醸成に向け取り組む。

  • (注8)ティーチング・アシスタント(TA)
    優秀な大学院生に対し、教育的配慮の下に、学部学生等に対する助言や実験・実習・等の教育補助業務を行わせ、大学院生の教育トレーニングの機会を提供するとともに、これに対する手当を支給し、大学院生の処遇改善の一助とすることを目的としたもの。
  • (注9)リサーチ・アシスタント(RA)
    大学等が行う研究プロジェクト等に、大学院生等を研究補助者として参画させ、研究遂行能力の育成を図るとともに、これに対する手当を支給するもの。

(4)特に重点的に取り組むべき事項

 今後(3)で述べた5年間に取り組むべき施策の中でも、とりわけ以下の事項については、特に重点的な取組が求められる。

◎ 確かな学力の保証

○ 新学習指導要領の実施

 基礎的・基本的な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力等の育成などを通じ、「確かな学力」を養うとともに、「生きる力」を育成することを目指す小・中学校の新学習指導要領について、平成20年度に集中的に周知を図り、平成21年度から可能な限り先行実施する。小学校では平成23年度、中学校では平成24年度から新学習指導要領に基づく教科書を用いて完全実施する。
 また、新学習指導要領の円滑な実施を図るために、教職員定数の改善をはじめとする教職員配置、教科書・教材、学校の施設・設備など教育を支える条件整備を着実に実施する。

○ 学力調査による検証

 教育における検証・改善サイクルの確立に向け、児童生徒の学力・学習状況を把握するため、全国学力・学習状況調査を継続的に実施する。
 また、高等学校についても、多様化する生徒の実情を踏まえつつ、高校生の学習成果を多面的・客観的に評価する取組を進めるとともに、その結果を高等学校の指導改善等に活用することなどを通じた教育の質の保証と向上を促す。

◎ 豊かな心と健やかな体の育成

○ 道徳教育や伝統・文化に関する教育、体力向上に向けた方策、体験活動の推進

 道徳教育について、新学習指導要領に基づき充実強化を図る。特に、道徳教育推進教師を中心とした全校的な指導体制の下での指導計画づくりなどを促進するとともに、適切な教材が教科書に準じたものとして十分に活用されるよう、国庫補助制度を早期に創設する。また、子どもの発達の視点を踏まえつつ、家庭、学校、地域が一体となって徳育を推進するための諸方策について幅広く検討を行う。
 あわせて、新学習指導要領に基づき、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う観点から、我が国や郷土の伝統・文化を受け止め、それを継承・発展させるための教育の推進を促す。
 子どもたちの体力を上昇傾向に転ずることを目指して、体力の全国的な状況について把握・分析を行い、その結果を踏まえ、学校や地域における体力向上の取組を推進する。
 全国の小学校、中学校及び高等学校において、自然体験、集団宿泊体験、職場体験、奉仕体験等の様々な体験活動を行う機会の提供について関係府省が連携して推進する。

○ いじめ等問題行動等に対する取組の推進

 教育相談等を必要とするすべての小中学生が、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等による相談等を受けられるよう促す。

○ 幼児教育の推進

 幼稚園と保育所の連携を進め、教育内容の整合性を図った新しい幼稚園教育要領と保育所保育指針を幼稚園・保育所で平成21年度から実施するとともに、幼児教育に携わる教職員の資質向上のための取組を促す。あわせて、認定こども園については、今回の計画期間中のできる限り早期に認定件数が2,000件以上になることを目指し、制度の普及啓発や幼保連携型認定こども園への円滑な移行に向けた運用改善など必要な支援を講じる。

◎ 教員が子ども一人一人に向き合う環境づくり

○ 教員の資質向上

 メリハリのある教員給与体系を実現する中でのがんばる教員の処遇の充実、実践的指導力の育成のための教員養成課程の改善、多様で質の高い人材の確保のための採用方法の改善、厳格な人事管理や研修の充実の促進、平成21年度から教員免許更新制が円滑に実施されるよう必要な取組等を行う。

○ 教員の子どもと向き合う環境づくり

 必要な教職員定数を措置するとともに、退職教員や経験豊かな社会人などの外部人材の活用、調査の見直し、教育現場のICT化、事務の簡素化・外部化などの取組を支援する。

◎ 手厚い支援が必要な子どもの教育の推進

○ 特別支援教育

 発達障害を含む障害のある子ども一人一人の教育的ニーズを把握し、適切な支援を行うため、障害のある児童生徒の在籍するすべての公立小・中学校において、必要に応じて「個別の指導計画」が作成されるよう促す。

○ 不登校の子ども等の教育に対する支援

 不登校の児童生徒への学校内外における相談体制の整備を進めるなど、不登校の子ども等の教育に対する支援を図る。

◎ 地域全体で子どもたちを育む仕組みづくり

○ 家庭教育支援

 子育てに関する学習機会や情報の提供、相談などの家庭教育に関する総合的な取組を関係機関が連携して行えるよう支援する。こうした支援の成果をすべての市町村に周知し、共有すること等を通じ、広く全国の市町村で、専門家の連携による支援など、身近な地域におけるきめ細かな家庭教育支援の取組が実施されるよう促す。

○ 地域が学校を支援する仕組みづくり

 学校と地域との連携・協力体制を構築し、地域全体で学校を支える「学校支援地域本部」などの取組を促す。こうした取組の成果をすべての市町村に周知し、共有すること等を通じ、広く全国の中学校区で、地域が学校を支援する仕組みづくりが実施されるよう促す。

○ 放課後等の子どもたちの学習活動や体験活動等の場づくり

 放課後や週末等に子どもたちの安全・安心な活動拠点を設け、学習活動や体験活動等の場を提供する「放課後子どもプラン」などの取組を通じ、広く全国の小学校区で放課後等の子どもたちの学習活動や体験活動等の場づくりが実施されるよう促す。

◎ キャリア教育・職業教育の推進と生涯を通じた学び直しの機会の提供の推進

○ キャリア教育や専門高校における職業教育の推進

 中学校を中心とした職場体験活動をはじめ、キャリア教育の推進を促す。あわせて、すべての専門高校において、地域社会との連携強化等を重視するなど、職業教育の活性化を促す。

○ 専門的職業人や実践的・創造的技術者の養成の推進

 大学・短期大学、高等専門学校・専修学校等における実践的な職業教育を促す。特に、国際的に活躍できる高度専門職業人を養成するため、専門職大学院等の教育の高度化を促すとともに、各分野の評価団体の形成を促進する。さらに、実践的・創造的な技術者を養成するため、高等専門学校の振興のための計画を策定し、その実現に向けた取組を行う。

○ 生涯を通じて大学等で学べる環境づくり

 個人のキャリア形成や地域活動への参画等のため、生涯にわたる学習へのニーズに対応し、大学・短期大学、専修学校等における社会人等受入れに必要な環境の整備を促すとともに、大学等と産業界等との連携による取組への支援により、大学等における社会人受入を促す。

◎ 大学等の教育力の強化と質保証

○ 社会からの信頼に応え、求められる学習成果を確実に達成する学士課程教育等の実現

 学士課程で身に付ける学習成果(「学士力」)の達成等を目指し、各大学等において教育内容・方法の改善を進めるともに、厳格な成績評価システムを導入するよう優れた取組を促す。また、教員の教育力の向上のための実効ある取組を全大学等で展開していくよう優れた取組を促す。さらに、大学等の設置認可や認証評価制度、情報公開を含めた包括的な教育の質保証の在り方について、中央教育審議会において検討し、必要な方策を講ずる。

○ 国公私を通じた大学間の連携による戦略的な取組の支援

 全国各地域において、大学間の連携により、各大学等の教育研究資源を有効に活用し、地域貢献等を推進するための取組が充実したものとなるよう支援する。また、国公私を通じ複数の大学等が学部・研究科等を共同で設置できる仕組みを平成20年度中に創設する。あわせて、大学等が社会的要請の高い人材育成ついて地域や産業界と連携して行う優れた取組を支援する。

◎ 卓越した教育研究拠点の形成と大学等の国際化の推進

○ 世界最高水準の教育研究拠点の形成と大学院教育の振興

 平成23年度までに、世界的に卓越した教育研究拠点の形成を目指し150拠点程度を重点的に支援する。あわせて、すべての大学院において、大学院教育の組織的展開の強化を図り、国際通用性を確保し、高度な課題探求能力が育成されるよう、その優れた取組を支援する。また、大学の教育研究水準の高度化を目指し、科学研究費補助金の拡充を目指すとともに施設・設備の整備や、国公私立大学を通じた共同教育研究拠点の整備を支援する。

○ 「留学生30万人計画」の策定・実施

 大学等の国際化や国際競争力の強化、諸外国との相互理解の増進を図るため、2020年頃の実現を目途として「留学生30万人計画」を策定し、計画的に推進を図る。今後5年間においては、留学生の大幅な増加を目指す。

◎ 安全・安心な教育環境の実現と教育への機会の保障

○ 学校等の教育施設の耐震化の推進

 小中学校等の教育施設の耐震化等の安全・安心な施設環境の整備を支援する。特に、大規模な地震が発生した際に倒壊又は崩壊の危険性の高い小中学校等施設(約1万棟)について、優先的に耐震化を支援する。地方公共団体等に対し、今回の計画期間中のできる限り早期にこれらの耐震化が図られるよう要請する。

○ 学校における安全・安心の確保

 子どもの安全と安心を確保するため、小中学校において教育面と管理面からなる学校安全と学校保健に関する計画が策定されることを目指す。あわせて、学校と警察等の関係機関行政機関、地域のボランティアや医療機関等との連携により、子どもの安全・安心や食育など健やかな心身を育む取組を推進する。

○ 教育への機会の保障

 就園奨励費、幼児教育無償化の歳入改革にあわせた総合的検討、就学援助、奨学金、私学助成、税制上の措置の活用を通じた教育への機会の保障を図る。

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