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教育は、人格の完成を目指し、個人の能力を伸長し、自立した人間を育て、幸福な生涯を実現する上で不可欠のものである。同時に、教育は、国家や社会の形成者たる国民を育成するという使命を担うものであり、民主主義社会の存立基盤でもある。さらに、人類の歴史の中で継承されてきた文化・文明は、教育の営みを通じて次代に伝えられ、より豊かなものへと発展していく。
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近年、我が国においては、少子高齢化、高度情報化、国際化などが急速に進む中で、社会保障、環境問題、国際的な競争の激化、イノベーション、社会における安全・安心の確保など様々な課題が生じており、これらに自ら対応していける人材の育成が求められている。 天然資源に乏しい我が国においては、人材こそが最大の資源であり、国民一人一人の資質・能力を形成する教育が、ひいては我が国の国民生活の一層の向上と社会全体の発展の原動力となる。
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我が国の教育をめぐっては、国民の教育水準を高め、戦後の我が国社会の発展の基盤となったと評価される一方で、現在、子どもの学ぶ意欲や学力・体力の低下、問題行動などの多くの課題を抱え、決して満足すべき状況にないことも事実である。さらに、官民の分野を問わず発生し社会問題化した多くの事件の背景には、我が国の責任ある立場にある人材の規範意識や倫理観の欠如があり、このことは我が国の民主主義そのものを蝕みかねない大きな問題であるとの指摘もなされている。こうした立場に立つ人材の育成の在り方をはじめ、教育の現状を厳しく見直す必要がある。
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教育の普遍的な使命と新しい時代の大きな変化の潮流を踏まえ、今こそ我が国は「教育立国」を宣言すべきである。教育を通じ、一人一人が自己を磨き、能力を高めながら持続可能で豊かな社会を創造し、更には知的な活動を通じて世界に貢献することのできる国づくりこそが、今後の我が国が目指すべき道と考える。明治初期の我が国は、激動の時代の中で、教育に大きな投資を行うことによって近代国家としての礎を築いた。このことに改めて思いを致し、行財政上も教育に格段の力を注ぐとともに、教育立国の実現に向け社会全体で改革に取り組む必要がある。
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このような認識の下、教育振興基本計画においては、今後の社会の変化の方向も踏まえつつ、それぞれの立場で自己実現を目指しながら、社会の一員としての自覚と責任を持って生きる国民の育成と、より公正で活力ある社会の実現に向けて、教育が担うべき課題を明らかにしたい。このために、改正教育基本法で明示された新しい教育理念に基づき、我が国の教育をめぐる現状と課題を分析した上で、今後10年先を見通しつつ、5年間に取り組むべき改革の基本的方向と具体的な方策について示すこととする。 |