17文科生第151号
中央教育審議会
次に掲げる事項について,別紙理由を添えて諮問します。
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新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について
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2 |
青少年の意欲を高め,心と体の相伴った成長を促す方策について |
平成17年6月13日
文部科学大臣 中山 成彬
(理由)
1 |
新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について(略)
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2 |
青少年の意欲を高め,心と体の相伴った成長を促す方策について
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次代を担う青少年の健全な育成は,21世紀の我が国社会の在り方に関わる重要な課題である。このため,青少年が豊かな心と健やかな体を育み,夢や目標を抱き自立した人間として成長することができるよう,これまでの中央教育審議会答申等での提言を受け,学校教育の改革とともに家庭や地域社会の教育力の再生を目指し,社会全体で青少年を育てる環境の整備を進めてきたところである。
しかしながら,青少年の生活習慣の乱れや体力の低下などが依然として大きな課題となっており,特に,青少年の学ぶ意欲や自主的,主体的に取り組む姿勢に課題があること,大人への準備を避け現状での安住を好む傾向があることなどが指摘されており,青少年が自立した人間として成長するにあたって,行動の原動力である意欲の向上を図ることが急務の課題である。
このような状況を踏まえ,青少年の意欲を巡る現状とその背景を検証するとともに,青少年の意欲を高め,心と体の相伴った成長を促すために講ずべき方策について,次のような事項を中心に,青少年の生活全体を視野に入れた検討を行う必要がある。
(1) |
青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について
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(2) |
青少年の意欲を高めるための方策について |
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文部科学大臣諮問理由説明
平成17年6月13日
21世紀を迎え,世界はまさに国際的な「知」の大競争時代にあると思っております。天然資源に恵まれない我が国においては,人材こそが資源であることを再認識し,「子どもは社会の宝,国の宝」であるという考えに基づき,学校や家庭,地域など社会全体で,新しい時代を切り拓く心豊かでたくましい人材を守り育てていかなければなりません。
現在,主要先進諸国では,各国とも国家の命運をかけて教育改革に取り組んでおります。時代や社会の変化の中で,我が国が様々な課題を乗り越えて真に豊かで教養のある国家として更に発展していくためには,切磋琢磨しながら,新しい時代を切り拓く,心豊かでたくましい日本人の育成を目指し,国家戦略として,教育のあらゆる分野において人間力向上のための教育改革を一層推進していかなければなりません。
また,教育改革の推進に当たっては,緊急を要する事項に迅速に対応するとともに,様々な角度から検討を要する事項について速やかに検討を進め,具体的な方策を打ち出していく必要があります。
このため,新しい時代にふさわしい教育の実現にとって不可欠な二つの事項について,中央教育審議会に検討をお願いすることといたしました。
以下,それぞれの項目について,若干敷衍して説明させていただきます。
1 |
新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について(略)
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2 |
青少年の意欲を高め,心と体の相伴った成長を促す方策について
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次に,青少年の意欲を高め,心と体の相伴った成長を促す方策について御説明いたします。
青少年については,基本的な生活習慣や態度が身に付いていない,体力が低下している,自制心や規範意識が十分に育っていないなど,様々な課題が指摘されてきました。このため,これまでの中央教育審議会答申等での提言を受け,学校教育の改革とともに,家庭や地域社会の教育力の再生を目指し,社会全体で青少年を育てる環境の整備を進めてきたところであります。
しかしながら,最近の青少年については生活習慣の乱れや体力の低下などが依然として大きな課題となっており,特に,青少年の学ぶ意欲や自主的,主体的に取り組む姿勢に課題があること,大人への準備を避け現状での安住を好む傾向があることなどが指摘されております。
意欲とは行動の原動力であり,行動なくして自立した人間として成長することができないのは自明であることから,青少年の意欲の減退は極めて憂慮すべきことであります。
このような状況をふまえ,青少年の意欲を巡る現状とその背景を検証する必要があると考えております。その上で,次代を担う青少年の意欲を高め,心と体の相伴った成長を促すために講ずべき方策について,青少年の生活全体を視野に入れ,最近の心理学等での研究成果も勘案しながら,次の事項について御審議をお願いしたいと考えております。
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(1) |
青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について |
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第一は,青少年の意欲を高めるために重視すべき視点についてであります。
今日の我が国社会の急速な変化は青少年の生活様式や価値観に大きな変容をもたらし,例えば,「よく体を動かし,よく食べ,よく眠る」という子ども時代として当たり前の生活を送ることを難しくさせております。また,都市化や情報メディアの日常生活への急速な浸透の中で,青少年が自然や地域社会との関わりの中で様々な直接体験をする機会が減少するとともに,青少年の家族や友人,地域住民等との人間関係が希薄化しております。
このような生活習慣の乱れや直接体験の減少,人間関係の希薄化等の青少年を巡る現状が青少年の意欲にどのような影響を及ぼしているかを明らかにした上で,青少年の意欲を高めるためにどのような視点を重んじて方策を検討すべきかについて,御審議いただきたいと思います。
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(2) |
青少年の意欲を高めるための方策について |
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第二は,青少年の意欲を高めるための方策についてであります。
これまで,青少年の健やかな心と体を育む観点から,調和の取れた食事,適切な運動,十分な休養・睡眠といった基本的な生活習慣の徹底が重要であるとの認識の下,子どもの体力向上のための方策を推進してきたところであり,また,栄養教諭制度の創設をはじめとした食に関する指導の充実に努めているところであります。今後は,青少年の意欲を高める観点から,幼少年期から青年期にわたる生活全体を視野に入れて,青少年の望ましい生活習慣について改めて検討する必要があると考えております。
また,青少年が自ら体を動かし体験する中で様々なことを身に付け成長することにかんがみ,外遊びやスポーツ活動の推進とともに,自然体験や社会体験,奉仕活動などの体験活動の充実を進めてきたところであります。今後は,これらの活動をより一層推進するとともに,特に,各々の活動が青少年の意欲を喚起し向上させる実効性の高いものとなるための方策を検討する必要があると考えております。
さらに,青少年が情報メディアに過度にのめり込むことによる悪影響が懸念されていることから,青少年の情報メディアとの適切な関わり方や,情報メディアを意欲的に活用していくに当たっての留意点等についても検討する必要があると考えております。
これらを踏まえ,青少年の意欲を高めるという観点から,基本的な生活習慣の徹底や体験活動,スポーツ活動の推進,有害情報から青少年を守るための取組などのこれまでの諸方策をどのように充実させていくべきかについて,御検討いただきたいと思います。
また,これらの方策にかかる具体的な取組の検討に当たっては,学校,家庭,地域社会はもとより,企業やメディアなども含めた国民一人ひとりの取組を促すための方策についても御議論いただきたいと思います。 |
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以上,今後の審議に当たり,当面,特に御検討をお願いしたいと考えている事項について申し上げました。2つの諮問事項について,幅広い観点から忌憚のない御意見を頂きますようお願いいたします。
なお,これらの諮問事項については,その内容が広範多岐にわたることから,これらを一つ一つ着実に実現していくため,本審議会におかれましては,審議の区切りのついた事項から逐次答申していただきますようお願いいたします。 |
中央教育審議会 スポーツ・青少年分科会委員名簿(第3期)
分科会長 |
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松下 倶子 |
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独立行政法人国立青少年教育振興機構理事長 |
副分科会長 |
衞藤  |
東京大学大学院教育学研究科教授・附属中等教育学校長 |
委員 |
安彦 忠彦 |
早稲田大学教育学部教授 |
加藤 裕治 |
全日本自動車産業労働組合総連合会会長 |
佐藤 友美子 |
サントリー株式会社次世代研究所部長 |
角田 元良 |
聖徳大学人文学部教授・附属小学校長 |
増田 明美 |
スポーツジャーナリスト、大阪芸術大学芸術学部教授 |
臨時委員 |
明石 要一 |
千葉大学教育学部長 |
浅見 俊雄 |
東京大学名誉教授・前国立スポーツ科学センター長 |
雨宮 忠 |
独立行政法人日本スポーツ振興センター理事長 |
伊藤 勝 |
岩手県立盛岡第四高等学校長 |
上村 春樹 |
財団法人全日本柔道連盟専務理事 |
梅田 昭博 |
社団法人日本PTA全国協議会会長 |
岡島 成行 |
大妻女子大学家政学部教授 |
緒方 重威 |
弁護士 |
香川 芳子 |
女子栄養大学長 |
勝野 眞吾 |
兵庫教育大学理事・副学長 |
北村 敏子 |
日本スポーツ少年団指導者協議会運営委員会前副委員長 |
齋藤 能 |
東京福祉大学社会福祉学部教授 |
永井 順國 |
女子美術大学芸術学部教授 |
松坂 規生 |
東京都青少年・治安対策本部総合対策部健全育成課長 |
丸谷 宣子 |
神戸大学発達科学部教授 |
三浦 修一 |
前神奈川県横浜市立原中学校長 |
三木 四郎 |
大阪教育大学教育学部教授 |
村上 とも子 |
前東京都文京区立明化幼稚園長 |
森 隆夫 |
お茶の水女子大学名誉教授 |
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五十音順・敬称略
平成18年4月1日現在 |
中央教育審議会 スポーツ・青少年分科会 開催状況
「青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について」関係
(第31回) 平成17年7月20日(水曜日) |
議題: |
中央教育審議会「青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促す方策(諮問)」について(自由討議)
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(第32回) 平成17年9月14日(水曜日) |
議題: |
青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について |
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【有識者ヒアリング】
杉原一昭氏 |
(東京成徳大学大学院心理学研究科長) |
津本忠治氏 |
(大阪大学名誉教授・理化学研究所脳科学総合研究センターユニットリーダー) |
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(第33回) 平成17年10月18日(火曜日) |
議題: |
青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について |
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【有識者ヒアリング】
平野吉直氏 |
(信州大学教育学部教授) |
奈須正裕氏 |
(上智大学総合人間科学部教育学科教授) |
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(第34回) 平成17年11月29日(火曜日) |
議題: |
青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について |
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【有識者ヒアリング】
平山宗宏氏 |
(母子愛育会日本子ども家庭総合研究所長) |
小沢治夫氏 |
(北海道教育大学教育学部教授) |
香川靖雄氏 |
(女子栄養大学副学長) |
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(第35回)平成17年12月15日(木曜日) |
議題: |
青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について |
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【有識者ヒアリング】
佐々木輝美氏 |
(国際基督教大学教養学部教授) |
坂元章氏 |
(お茶の水女子大学文教育学部教授) |
堀田龍也氏 |
(独立行政法人メディア教育開発センター助教授) |
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(第36回) 平成18年2月3日(金曜日) |
議題: |
青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について |
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(第37回) 平成18年3月29日(水曜日) |
議題: |
青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について |
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【有識者ヒアリング】
川中大輔氏 |
(財団法人コンソーシアム京都) |
竹原和泉氏 |
(神奈川県横浜市立東山田中学校コミュニティハウス) |
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(第38回) 平成18年5月26日(金曜日) |
議題: |
青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について |
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○ |
「これまでの議論の整理(案)」について(自由討議) |
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(第39回) 平成18年7月7日(金曜日) |
議題: |
青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について |
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(第40回) 平成18年7月27日(木曜日) |
議題: |
青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について |
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(第41回) 平成18年9月13日(水曜日)(予定) |
議題: |
青少年の意欲を高めるために重視すべき視点について |
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