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スポーツ振興小委員会(第2回)議事要旨

1. 日時
  平成18年5月19日(金曜日)10時〜12時

2. 場所
  丸の内東京會舘11階「シルバールーム」

3. 議題
 
(1) 関係団体からの意見発表について
財団法人日本中学校体育連盟
財団法人全国高等学校体育連盟
財団法人日本武道館
福岡県教育委員会
東京都足立区教育委員会
(2) その他

4. 出席者
 
  衛藤委員長、浅見委員長代理、角田委員、伊藤委員、緒方委員、北村委員、三浦委員
(文部科学省) 馳文部科学副大臣、素川スポーツ・青少年局長、西阪スポーツ・青少年総括官、石野企画・体育課長、篠崎生涯スポーツ課長、小見競技スポーツ課長、嶋倉企画・体育課室長

5. 議事
 
(1) 関係団体からの意見発表について
 財団法人日本中学校体育連盟の三辻専務理事、財団法人全国高等学校体育連盟の梅村専務理事、財団法人日本武道館の青木事務局長、福岡県教育委員会の森下課長、東京都足立区教育委員会の大山課長より、それぞれ資料に基づき概ね以下のとおり意見発表があった。

  [財団法人日本中学校体育連盟(中体連)からの発表]
 中体連は、学校教育活動の一環として、各学校における保健体育の授業を基盤にして、中学校における体育・スポーツ活動の振興、中学生の体力の増強、競技力の向上、中学生の心身ともに健全な発達、人間形成等を目指して活動しており、具体的には、全国中学校体育大会(全18競技)の運営、運動部活動・クラブ活動の充実、全国各地の諸大会やブロック大会の充実等を図ってきている。
 最近の教育改革、特に教育行政の規制緩和、教育課程の見直しや、少子化の進展、価値観の多様化など教育を取り巻く環境の変化に伴い、運動部活動や競技大会の運営の在り方に関する課題が山積している。
 運動部活動は、運動・スポーツに興味を持つ同好者が組織する生徒と教師(顧問)の自主的・主体的な活動であり、平成17年度においては全国の中学生のうち65パーセント程度が所属しているが、年々生徒数や学校の小規模化により、チームを作る部活動の実施が困難になっている。また、顧問教師の高齢化傾向がみられるとともに、専門的指導のできる教師が減少したり、部活動の顧問になることを敬遠する傾向がみられる。その一方で、部活動の指導の過熱化や勝利至上主義的な傾向もみられる。
 これからの運動部活動の在り方としては、学校教育活動の一環としての位置付けを明確にするとともに、学校体育大会については、地域や行政による財政的支援を充実することが求められる。また、時代の変化に対応した大会運営の在り方や、外部指導者を活用することについての扱いをはじめとした地域、保護者、関係機関との連携、地域スポーツと学校における運動部活動との連携などについて検討することが必要である。
 中体連としても、運動部活動の意義を十分踏まえ、さらに努力していきたい。

[財団法人全国高等学校体育連盟(高体連)からの発表]
 高体連は、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)をはじめとする高等学校の運動部活動を推進してきており、全国の高校生の登録は、ここ5年間で生徒数は約65万人減少しているにもかかわらず、登録率は約5パーセント増加している。
 現在の取組状況としては、まず、地域指導者の運動部活動への導入を促進しており、活用数は増加傾向にある。
 活動中の事故に対する補償について、大会参加を公務とすることに制約があるため、公的補償が大変厳しい状況にあり、各都道府県高体連から各都道府県教育委員会に対して適正な措置が講じられるよう働きかけている。なお、インターハイについては、全国高体連においても対応している。
 複数校合同運動部活動については、現在、全国454校において何らかの形で実施しているが、学校の統廃合に伴う複数校合同チームのインターハイ等への参加を認めるとともに、部員不足等に伴う複数校合同チームについては、各都道府県高体連と専門部が連携し、大会において参加を認めるなどの対応をしている。
 大会の在り方として、勝利至上主義的な運営については、高校生の健全育成を目指す運動部活動の発表の場としてふさわしくないことから、参加資格を厳守するとともに、大会そのものが公正で適切なものとなるための対策を検討している。
 大会に対する多様なニーズへの柔軟な対応については慎重に検討しているが、地域スポーツクラブ等のインターハイ参加条件の弾力化については、高等学校の総合体育大会であることから当面行う予定はないが、今後ゆっくりと考えていきたい。
 高校生の心身の健全な発達やスポーツ障害を予防する観点から、調和のとれた生活時間の配分を確保するため、日常の練習時間や大会開催頻度の適正化を図っていく。
 異校種間での合同練習など交流・連携による運動部活動の活性化についても取り組んでいきたい。
 インターハイについては、まもなく全国を一巡するところであるが、大会の一層の質的向上を図り、平成23年度からのブロック開催につなげていきたい。開催地の負担軽減のため、大会の規模(期間・種目・予算等)は当面拡大しないなどの工夫に努めたい。
 高体連としては、財団法人日本体育協会傘下の競技団体と連携し、優れた資質を有する選手の育成を図っている。引き続き、都道府県レベルで競技団体と連携することにより、地域の強化拠点への選手派遣などの取組を一層推進していきたい。

[財団法人日本武道館(武道館)からの発表]
 近年、経済や科学の発展、情報化の進展等がめまぐるしい中、非行、いじめ、不登校、凶悪事件の低年齢化、働く意欲や学ぶ意欲の低下など青少年問題が深刻であるが、原因は様々であり、確たる解決策が示されていない状況である。便利さや豊かさの中で、人と人との絆を失いつつある。これを解決するには「人づくり」が極めて重要であると考えており、特に学校教育における「武道」による人づくりを、一つの方策として提案したい。
 武道館は、1964年の創建以来、我が国の伝統文化である武道の普及振興や、武道による青少年の健全育成を目標として様々な事業を展開してきた。
 人は体も頭も使わないと退化するものであるが、武道は、日本固有の伝統文化として術から道に発展し、心と体を一体として磨くものである。武道はよく「心・技・体」といわれるが、心も体も鍛えなければ強くならない。人と人とが触れ合わなくては、人の痛みもわからず、人に優しくもなれない。このように、武道は人づくりのために大変意義があることから、学校教育における武道の振興を明示してほしい。
 武道を行うには、基本的に相手を必要とすることから、人と人との関係において自己を律することが求められ、忍耐力や克己心が培われ、そこから協調性が生まれる。
 武道は「礼に始まり礼に終わる」というが、「礼」とは単なる挨拶ではなく、相手に対する感謝と敬意の念を表すものである。相手は「敵」ではなく同士であり、勝敗に関係なく同じ道を歩むパートナーである。例えば、試合で自分が相手に勝てばこれまでの自分の鍛錬の成果を確認させてもらったことになり、自分が相手に負ければ、相手が自分の欠点・弱点を教えてくれたことになる。
 このように、武道の振興は大変意義深いものであり、人間形成に不可欠な伝統文化である。

[福岡県教育委員会(福岡県)からの発表]
 福岡県では、県民の生涯を通じたいきいきとしたスポーツライフを支援するための基本的方向性を示した「福岡県スポーツ振興基本計画」(平成16年度から10年計画)を策定し、これに基づきスポーツ振興施策に取り組んでいるが、特に、全国でも珍しい取組と思われる本県の「タレント発掘事業」を中心に紹介したい。
 福岡県は競技力の指標として、国民体育大会8位以内の入賞を掲げているが、近年その目標は達成できていないことから、優れた素質を持つ選手を早期に発掘し、長期的・計画的に育成する一貫指導システムの構築が必要不可欠であると考えている。このため、従来運動部活動が中心となって行われてきた選手発掘・養成の仕組みを活かしながら、新たな選手発掘システムを構築することをねらいとして、県体育協会や県立スポーツ科学情報センターと連携し、平成16年度より「タレント発掘事業」に着手したところである。
 具体的な事業内容としては、1セレクトプログラム(見つける)、2能力開発・育成プログラム(育てる)、3パスウェイプログラム(活かす)の大きく3本柱となっている。
  1セレクトプログラムは、優れた素質を持った選手を、12歳以下、13歳〜15歳、16歳以上の3つに分類して発掘するものであり、種目を特定せずに個人の能力を開発・育成しながら、適性種目の選択を目指している。
  2能力開発・育成プログラムは、家庭、学校、トレーニングフィールドが共通理解をもって育成にあたるための環境整備や、トップパフォーマンスのレベルを向上させるため、発育発達を考慮した適時性のあるプログラムの実施を行うものであり、プログラムの内容としては、身体能力だけでなく知的能力の育成や保護者のサポートがある。
  3パスウェイプログラムは、能力開発・育成プログラムにより開発・育成された児童が持つ個人特性(運動能力)に応じ、適切な種目を選定するとともに、それらの種目を実施できる環境の整備とアスリートとして自己の能力を発揮できる道すじを構築するものである。
 本事業の実施により明らかになった課題としては、新体力テストの実施率が低く、自己の客観的能力の把握が行われていないこと、発育発達状況に応じた運動の実施が、学校を含めて行われていないこと、部活動の減少や専門的な指導者の不足による子どものスポーツ実施環境の悪化、ジュニア指導者の子どもたちの将来的展望や医・科学的根拠がない指導による、オーバーユース・バーンアウト現象の発生、地方によってスポーツ振興の考え方に差があり、国が国際競技力向上を考える場合に歪みが生じることなどがある。
 その他、スポーツ振興基本計画の進捗状況と今後の課題としては、総合型地域スポーツクラブの設立にまだ温度差があり、県体育協会等関係団体との連携を一層深めるとともにクラブマネジャーの養成を行う必要があること、広域スポーツセンターについては、未設置市町村との調整のほか、事務局体制等今後の運営のあり方についても検討する必要がある。一貫指導システムについては、競技者育成プログラムの普及等一貫指導の理念に基づく指導法の普及を図る必要がある。また、部活動の方向性を示す必要があり、中体連や高体連等学校体育団体及び各競技団体と連携し、地域のクラブチームの参加等参加基準の弾力化等を推進する必要があると考えている。

[東京都足立区教育委員会(足立区)からの発表]
 足立区では、少子高齢社会の到来や余暇時間の増大等の社会環境の新たな変化を踏まえ、平成14年度から6年間の「足立区生涯スポーツ振興計画」を策定し、足立区教委、足立区体協、足立区生涯学習振興公社が一体となって各種スポーツ事業を実施している。
 足立区の生涯スポーツ振興計画は、健康の維持増進と生活習慣病の予防、高齢者の社会参加の促進と医療費の削減、障害者の社会参加の促進、健やかな子どもの発育の促進、青少年の健全育成、地域における教育力の向上、活力ある地域社会の創出を目的として、将来、いずれかのスポーツサークル等に所属し、日常的に運動・スポーツ活動を実践している区民人口の割合が30パーセントになること、成人の運動習慣者の割合が50パーセントになることを目指している。
 施策の柱としては、区民一人一人のライフステージに応じたスポーツ活動の促進、生涯スポーツ社会に向けた地域づくり、自立した地域スポーツ社会の創出に向けた推進組織の整備、生涯スポーツ振興事業の体系的な実施である。
 総合型地域スポーツクラブ(以下「総合型クラブ」という。)の育成・支援については、特に学校週5日制の実施を受け、子どもたちの遊び・運動・スポーツ活動を地域でどのように保障していくのかという視点から、総合型クラブを核として「学社融合」や「まちづくり」を推進している。
 総合型クラブの活動エリアとしては、歴史的に地縁のつながりによる活動が定着している25地区町連単位を基本としているが、足立区の取組の特徴としては、一つは、クラブづくりを推進するための一貫した組織体制である。足立区生涯学習振興公社内に地域クラブ推進課を設置するとともに、社会体育専門職員を集中配置し、体育指導委員会事務局や足立区公認指導者の事務局も担っている。
 もう一つは、地域の体育指導委員、青少年委員、スポーツ指導者、スポーツ・文化団体をはじめ、町会や自治会・学校など地域の様々な組織団体を巻き込んで取り組んでいることである。
 総合型クラブの会員の意識調査によれば、総合型クラブが、参加しやすく、子どもが体育・部活動への意欲を高めるための地域の教育の場となっており、また、健康増進に役立つなど、その効果が実証されている。
 さらに、足立区では、学校施設を地域の学びの核となる施設と位置付け、子どもの教育を軸とした地域の教育力を高めていこうという「コミュニティキャンパス構想」を掲げてスポーツのみならず、子どもの学習まで支援できる地域クラブの創設を目指しているところである。
 総合型クラブに係る課題としては、運営スタッフ、活動場所、財源の確保などが挙げられる。今後の長期計画としては、町会・自治会連合会区域に概ね1箇所、区内全域では合計25箇所のクラブ創設を目指している。

 関係団体からの発表等につき質疑応答・意見交換が行われた。
 (以下、○:発表者、△:委員、□:事務局)
[質疑応答・意見交換]
委員  インターハイは中高一貫校も参加できるが、その場合の年齢制限は、相当する年齢としているのか。

発表者  然り。

委員  中体連・高体連ともに、災害補償について同じような問題を抱えているようだが、これは比較的組織的に対応しやすい問題かと思うので、両者で連携して取り組むべきである。また、勝利至上主義の問題については、高校生についても選手の移籍の問題があるのか。

発表者  学校は生徒に選ばれる側であり、生徒は、希望する学校を主体的に選ぶことになるが、中には自由闊達に学校を移籍する生徒もいてエスカレートしている。また、最近、外国人選手がだいぶ入ってきており、勝利優先の傾向が見られるので、留意しているところである。

委員  今までの伝統的な運動部活動、つまり一つの種目について週に何時間も拘束されるような形態のものについては見直し、スポーツを楽しみたいという子どもたちの欲求に学校側がどう応えていくのか、という点について中体連や高体連にご検討いただきたい。

発表者  小学校から中学校に上がる子どもたちにとって関心が高いのは部活動である。問題意識をもって取り組んでいきたい。

委員  専門的指導のできる教師の減少傾向が見られる、という点については、教員になる者は本質的に運動部活動の顧問を担う専門性を身に付けているものではなく、そもそも専門的指導のできる教師はいないところからどう確保していくか、という問題であると考えている。また、中学・高校の運動部活動を活性化していくほど、地域のスポーツクラブの育成と矛盾することになり、中体連・高体連と足立区のそれぞれの活動の在り方をどうしていくべきか、ということについて課題として検討する必要がある。

発表者  合同部活動や外部指導者の活用等により、地域と連携しながら部活動の活性化を図っていきたい。

委員  武道は、スポーツ少年団の数も減ってきているので、啓発活動が大切だと思う。スポーツ少年団で行っていた種目が中学校では部活動の部にないケースもあるため、そのような子どものために、気軽に楽しめるスポーツの部活動についても検討していく必要がある。

発表者  武道は、町の道場や警察の道場などで練習をしているケースも多い。施設と指導者の確保が重要である。また、小学校から中学校に上がる時の受け皿については、全体的に考えて欲しい。

委員  足立区の取組は素晴らしいと思う。コミュニティキャンパス構想における「学校の開放」という考え方は、「学校の共同利用」として欲しいと思う。自主的・主体的な区民による運営を行うための一番のネックは何か。

発表者  クラブ設立後すぐの資金的な課題とスタッフの確保である。

委員  指定管理者制度を採用している県や市の施設では、学校体育大会等の利用に当たって従前とっていた減免措置がなくなったり、減免率が小さくなっているため、利用者としての負担が大きくなってしまっている。何らかの対応をお願いしたい。

発表者  中体連としても年に2回行っている主管課長会議でもお願いしているが、現実には減免申請等もなくなってきている。

事務局  ご指摘のような実態があるとすれば、ご意見はもっともだと思うが、実態を把握していないので勉強したい。

(2) 閉会
 今後の日程について事務局より説明があった後、閉会となった。
  (了)


(スポーツ・青少年局企画・体育課)

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