資料1-2 国家戦略会議議事要旨(高等教育局関連部分抜粋)

 平成24年第5回 国家戦略会議 議事要旨

~高等教育局関連部分 抜粋~

 

1日時

平成24年6月4日(月曜日)19時~20時

2場所

官邸4階大会議室

3出席者

議長 野田 佳彦 内閣総理大臣
副議長 岡田 克也 副総理
副議長 藤村 修 内閣官房長官
副議長 古川 元久 国家戦略担当大臣兼内閣府特命担当大臣
議員 川端 達夫 総務大臣
議員 安住 淳 財務大臣
議員 平野 博文 文部科学大臣
議員 小宮山 洋子 厚生労働大臣
議員 白川 方明 日本銀行 総裁
議員 岩田 一政 日本経済研究センター 理事長
議員 緒方 貞子 国際協力機構 特別顧問
議員 長谷川 閑史 武田薬品工業株式会社代表取締役 社長
議員 米倉 弘昌 住友化学株式会社代表取締役 会長
長浜 博行 内閣官房副長官
竹歳 誠 内閣官房副長官
石田 勝之 内閣府副大臣
柳澤 光美 経済産業副大臣
大串 博志 内閣府政務官
本多 平直 総理大臣補佐官

4議題

  1. 教育システム改革、グローバル人材育成の推進
  2. その他(生活支援戦略、若者雇用戦略)

~前略~

(岩田議員)
 それでは、2点ほど申し上げたいと思います。まず大学の教育システム改革ですが、ここに書かれていない問題を申し上げたい。ポストドクターの問題は非正規雇用、つまりドクターは終わったが、研究の手伝いみたいな仕事をやっている30代後半あるいは40代の人が1.7万~1.8万人いる。その間にせっかく大学院までやったスキルがむしろ劣化してしまうという、人的資本が劣化する問題があります。
 この問題は、日本が抱えている基本的問題、つまり高度成長のときは人材を企業が育てる余裕があったのですが、今はその余裕がなくなってきて、個人が、働く人が自分でスキルを身につけなければいけない、ところが、その個人が身につけたスキルと企業が欲するスキルが必ずしもうまくマッチしていない。ミスマッチの問題がこのポストドクターの問題ではないかと思います。
 その観点からすると、私はイギリスの例を申し上げたことがあるのですが、文科大臣の資料の中にも入っておりまして、ナレッジ・トランスファー・プログラムという、企業のR&D活動に大学院生が週に1回行って参加する。つまり産業が必要としているスキルがどういうものかという、そこのミスマッチを解消する上で、こういうインターンシップというのはむしろ単位に積極的に組み込むような形でやっていったらいい。
 私は大学にいたときに、ポリテクニックというフランスの大学校があって、これはエリート校ですが、私がたまたま専攻主任を大学でやっているとき、向こうから連携したいと言ってきた。留学生をお互いに交換するプログラムをやりたいと言ったのですが、うまくいかなかった。それはどうしてかというとポリテクニックの方が、学生を1年間派遣するわけですが、1か月の企業研修を要望してきた、ところが、日本にはそういうことをやる環境が全くない。
 ですから、文科大臣の報告にもありましたが、海外のインターンシップということが書かれているのですが、海外から日本の企業がそういうインターンシップを受け入れるという、双方が必要ではないかと思います。
 もう一つはグローバル人材ですが、明治時代にお雇い外人というものがあって、明治25年ぐらいまでは東京大学も相当外人の教師を雇っていました。そのときの試験問題は英語でやっています。加藤高明という有名な政治家で法学部出身ですが、法学部の試験は英語で答えが書いてあって、むしろ明治時代のときの方が、東京大学では英語でずっと授業をやっていたわけです。そのときの方がむしろ国際人材を育てたのではないかと思います。
 その関連で言うと、文科大臣の報告で強調されていますのは、英語の入試についてTOEFLで私もいいと思うんです。なぜかと言うと、私は大学院で外国人の留学生の試験の中の項目に日本語もあるのですが、英語もあります。ところが、アメリカ人の留学生が英語で落第する。試験に受からない。それは非常に奇妙ですが、よく見ると英語の力を見ているのではなくて、実は日本語の能力がどのぐらいあるかという試験問題にどうしてもなりがちなんです。これは前から矛盾を感じていたので、むしろこういうグローバルスタンダードでやった方がいいと思います。

(米倉議員)
 日本の教育システムが本当に変わったということが実感できるようなメッセージを出すことが、非常に重要なことです。

~略~ 

 もう一つは、大学における教育制度。これも改革はもとよりでありますけれども、研究開発の面においても基礎研究の分野に入るような研究について、大いに大学でやっていただきたい。日本の企業は基礎研究もやりますが、これは大きな科学の目で見ると応用研究に属するようなものを基礎研究と称してやっている場合も多いので、本当に日本の科学技術のレベルを支えるような、ノーベル賞学者がどんどん出てくるような研究開発をやっていただきたい。
 グローバル人材の育成ですが、これは本当に官民あげてやるべきことだと思います。経団連では今年度から大学生で海外に留学したいという学生に対して、1人あたり100万円を支援するシステムをつくりました。初年度の支給対象者は34名になりますが、こうした取組みを大いにやっていこうと考えています。また、高校生への留学支援についても従来から実施しています。これは人数的には15人、7か国に留学していただく仕組みです。このような民間ベースの取組みが拡充するよう、政府としても考えていただきたい。

(長谷川議員)
 まず、平野大臣が「目標を明確化し、PDCA サイクルで進捗をフォローアップする」と自ら宣言されたことを評価しますが、PDCAでフォローするに際して、実態を伴う形でやるために、いつまでに、何を、どこまで、だれがやるのか、といったことを是非工程表で明確に示していただきたいと考えます。
その観点に立てば、文章の末尾に「~の推進」であるとか、「~の適正化」という表現が多く見受けられますが、それでは成果目標が具体性に欠け、不適切と考えざるを得ませんので、もう少し自らをコミットするような形にしていただきたい。
 米倉議員、岩田議員もおっしゃったように、すべての改革は待ったなしですので、もう少しスピード感を持っていただきたい。中でも国立大学、私立大学の問題について、平野大臣が説明されたように、「ミッションに基づいたメリハリのある支援」を行おうとするならば、例えば国立大学の運営費交付金はその大半が学生及び教員数に基づいて機械的、自動的に算定・配分されており、その趣旨に反すると思われます。やはり国立大学あるいは私立大学に対し、額は少ないにしても助成金を出すに際しては、ミッションなり目標を明確に設定させ、その成果に基づいたメリハリのある配分へ変更されることによって、初めて競争原理が働き、そこに切磋琢磨が生まれますので、是非そのような観点からご検討いただきたいと思います。
 ただし、大学の統廃合あるいは合併、連携などに際して、地方の中核大学は地域活性化、あるいは地域に役立つ人材の育成という少し異なる観点での使命も担っておりますので、別途配慮が必要ではないかと思われます。
 高等専門学校について、12ページの右下にある以外、ほとんど記載がありません。分厚い中間層を支えるのは私立大学や国立大学だけではありません。技術立国の一部を支える教育機関としての高等専門学校は、現在も極めて重要なニーズを満たしており、その就職率もほぼ100%となっており、今後更なる強化をお考えいただければと思います。
 経産省の推計では、グローバル人材は向こう5年間で2.4倍のニーズがあるとの説明がありましたが、これに関しても現実は先行しており、既に国際化した日本企業は、日本に来ている留学生はもとより、海外における日本人および日本人以外の留学生、さらには直接近隣国の有名大学に出向いて学生の採用を行っています。このように、採用側のニーズに見合うような人材を必ずしも国内の大学で育成していないということが、学生がなかなか就職できないといったことに拍車をかけており、もはや待ったなしですので、改革を目に見える形でスピードアップしてやっていただきたい。その観点から言えば、米倉議員もおっしゃいましたが、目に見える一番いい例は大学の先生です。グローバル人材を育てようと思ったら、日本人の先生だけでできるはずがありません。いつごろまでに、何割ぐらいをノンジャパニーズにするということを明確に決めていただいて、さらに交付金とタイアップするなど何らかのインセンティブをつけて具体的にやっていただく必要があります。でないと、我々企業、特にグローバル化した企業としては、日本人で優秀な人を採りたいという気持ちは山ほどあるにも関わらず、ますますノンジャパニーズを採用する方向に向かわざるを得ません。対象は違いますけれども、国内バイオベンチャーに投資する先がないから海外ベンチャーを買収せざるを得ないということと理屈は同じですので、是非大学教員の改革もお考えいただきたいと思います。
 もう一つ、民間企業でできることはしっかりやるけれども、通年採用などについては、産業側に求めるだけではなく、国家公務員に対しても是非試験的、試行的にやっていただいて、自らも範を示していただきたい。定年制にしても、総理は今般、国家公務員の定年も民間に求めるのと同じように65歳にするとおっしゃいましたが、法制化して民間に強制しながら自分たちはやらないというのではやはりバランス感覚に欠けますので、そういった採用についても、あるいはインターンシップやキャリア採用についても、是非国家公務員にも同様の対応を講じていただければと思います。

~後略~

(緒方議員)
 グローバル人材について、さまざまな検討がなされ、さまざまな意見が出されてきたことを私は大変心強く思っております。文科省でもいろいろな工夫を検討されて、御説明もいただきました。グローバル人材と言ったときの一番大事なポイントは何かというと、多様な人材をつくることではないかと思います。言葉も大事ですが、他にもいろいろと大事なことがあり、教育の結果として、多様性を尊重する、そして自分も多様な意識と見解を持って物事に当たることができる人材が出てくることをもう少し重視していただきたい。
 グローバル人材の育成には、大学ばかりではなく、小中高も含めた全体的な改革が必要であり、英語だけの問題でもありません。入試だけの問題でもないと感じています。今の議論では、学生にどういう教育を提供するのかというところに相当重点が置かれていますが、グローバル人材をつくる上では、むしろどういう教員を育てるかがまず非常に重要であり、グローバル人材を育てられる教員の育成確保を改革の中に入れていただく必要があります。私自身、20年大学で教員をしていましたし、学部長等もやってきましたが、大学の先生方のサバティカル(研究休暇)であるとか研修訓練にも御配慮いただく必要があります。
 実用的に大事なことがたくさん並べられていますが、どういう形で日本の大学、教育システムの中から多様な人材をつくっていくかということをいまひとつ重視して、お考えいただく必要があります。
 これは、産業界にもお願いする必要があります。ほとんどの企業が同じような時期に、同じようなプロセス、システムで大学新卒者の採用を行っています。採用試験の実施時期がだんだん早まり、大学3年生から就職活動をはじめなければならず、大学での教育にも影響が出ていると聞いています。産業界で多様な人材が本当に必要でしたら、採用基準・条件に留学など多様な経験があることをもっとはっきりと打ち出し、また、通年採用など、そういう学生に配慮した採用のシステムを作り出すと、学生も就職を心配しないでもっと海外に出ていくのではないかと考えます。産業界と学界が一緒になって、グローバル人材を育て上げ、成長させていくための考え方や方法について御検討いただくことが望ましいと思います。企業側においても、採用試験において留学や社会経験などの多様なバックグラウンドを評価し、そして評価していることをもっとはっきり出していただく。長谷川議員や米倉議員もそういうことを考え、既に取り組まれていると承知しておりますが、産業界全体のシステムとしてもう少し強調していただく余地があるのではないかと思います。
 大学における英語教育だけでグローバル人材ができるものではないと思います。語学の問題と同時に、世界中のさまざまな人がそれぞれに持っているさまざまな考えをよく理解できる、オープンな頭を持った若い人たちをどういう形で育てていくかというのは、大学の教員、教師側の問題であると思いますし、そういう人材が必要というシグナルを是非、産業界からももっと強く出していただけたらと感じました。

~後略~

(野田内閣総理大臣)
 第一に、教育システムの抜本改革につきまして、本日、取組方針の御報告がございました。小中一貫教育制度の創設等による六三三制の柔軟化、国立大学の再編成や私立大学の質保障の徹底推進、世界で戦える大学の倍増など、教育改革は次世代の戦略的な育成の上で極めて重要です。
 本日の議論も踏まえまして、平野大臣の下で改革の道筋を一層明確にし、数値目標や工程等について更に検討を深めていただきたいと思います。

~後略~

(了)

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-- 登録:平成24年06月 --