(学生に学修モデルを示す) ○ 海外の大学生がどれほど勉強しているかという情報を見える形で与えればよい。 各大学が学生に求めるモデル的な学習時間や学習スタイルを示すことが有効。これらの情報は高校生や中学生にもしっかり伝えて、「大学は勉強よりも自由な時間を楽しむ所」という意識を変えることが必要。
(「研究」こそ「答えのない問題」に取り組める場) ○ 「本当に答えのない問題に取り組む」場は(卒業)研究である。研究は、世界で唯一の未踏の問題に取り組むチャンスであり、大学が卒業研究を卒業要件としてきた歴史の意味はそこにある。 今回の提案によって授業科目が増大し、卒業研究の期間を圧迫するようなことがあれば、大学が本来持っていた「答えのない問題に取り組む」最大のチャンスを潰すことになりかねない。 大学生が主体的に教科に取り組めない理由は、「なぜその教科が必要なのか」が分からないからでそれが分かるのは、研究を始めてからである。ひとつの方法としては、学部1年生の段階で一度研究室に配属させ、「研究」の空気を肌で体験し、その後「教育」に帰す、というのが有効。 大学の教員が時間的余裕を持って研究にあたり、学生がその背中を見ることができるような環境の整備をしてほしい。研究こそ学生が生き生きと学べ、個として独立できるチャンスである。
(教養教育の充実を) ○ 教養課程が大学から廃止され失われたのが「論理的に文章を書く力」、「人にわかりやすく話す力」である。「予測困難」な事象にさしあたったときにこの解決に力を発揮するのが幅広い教養である。大学の授業の有効性とは、この最も重要な基礎力の形成と、その基礎を活かして専門性を発揮させることにある。大学生ならば当然知っている、という知識が理系・文系を問わず有るべき。専門性の縦深性は幅広い教養のもとに培われるもの。今や民間は「教養」を学生に求めている。じっくりと国民共通の文化力をとり戻すために大学の教養課程、あるいは教養教育を充実させることが望ましい。
○ 大学は学生が主体的に学ぶとところであるという原点に立ち返る方針には基本的に賛成。 幅広いグローバル化、少子高齢化、情報化といった社会変化に対応するためにも、学部の段階では教養を身につけるということが重要。主体的に学ぶためには学部の枠を超えて授業を履修できるような制度、たとえば、教養学部の復活が必要ではないか。
(学生に厳しい大学に) ○ 大学は社会構造から孤立化しており、大学で学んだことは一切『社会』では役に立たない。 現在の日本社会は子どもの発達段階に応じた教育がなされていない。義務教育期間から高校時代を経て大学に至るまで、段階を踏んで『教育』は行われなければ意味がない。 大学の『一般教養』とは高校時代の復習に僅かばかりの『プラスアルファ』をしただけであり、『時間』の浪費にしかすぎない。 大学はもっと厳しく学生を見つめる視点を持たなければならない。学力不足の者は容赦なく落とすという一面がなければ、学生はやる気を起こさない。
(単位制の見直しを) ○ インターンシップや海外留学等により、学生の意識を変えていく必要がある。そのためには、夏期休業等を十分な期間確保する必要がある。「1単位の授業科目を45時間の学修」「15週(又は10週)にわたる期間」という基準を変更することも検討してみてはどうか。ゆとりと詰め込みのバランスが必要。
(具体的な授業改善方法の提言を) ○ 学修時間の実質的な増加には授業のやり方を根本的に見直すことが必要。講義式ではなく会話式にすること、講義中心から授業参加型にし多数聴講型から少人数制にすること、中多数の場合は、教授に助手をつけて発言者の記録等を取らせ評価を発言力に変えること、授業の前に次回授業の課題を与えたり配布し準備しなかった者には評価を与えないこと、など抽象的な言葉で書くのではなく具体的な授業のやり方を導入しておくべき。 日本のように、ただ講義に出ているようでは使える能力の発達はない。助手の役割も至る所で必要性がある。自ら考え出せるような教育なのだから、アルバイトなどしていられないくらい学ばなければならないし、自分の学部の授業以外にも日本のことについて学んでないと世界に通用する会話ができないし、相手の国に対しての理解もできない。
(図書館機能の充実が重要) ○ 学生の自学自習に必要な知識・情報を収集・提供するとともに、快適な学習空間を備え、学習サポート機能を併せ持った大学図書館を充実させることが極めて重要である。欧米と比べ日本の大学図書館はあまりにも貧弱であり、この状態で学生に主体的学習を求めるのは酷である。図書館の充実に関する記述は、「審議まとめ」の1項を占める扱いをしてしかるべき。
(給費制奨学金の導入と就業体制の見直しを) ○ 学生が学ぶ時間を確保できないのは、教育カリキュラムの問題以上に、社会情勢によるところが大きい。 1.経済状況の悪化に伴い多くの時間が学費を稼ぐためのアルバイトにとられている。 2.就職活動が苛烈を極め、就職活動と内定後の「通信学習」に多くの時間がとられている。 3.就業時間(サービス残業)の長さから社会人学生の実質学習時間が確保できない。 この三点の問題のため、特に修士課程学生などは時間をかけて研究課題を考え問題解決に当たれる時間は皆無に等しい。講義出席の義務化がこれに拍車をかけ、自ら講義の要・不要を判断する能力すら失っている。この状況の解決のためには、 1.現在のローン方式の奨学金を改め、もらいきり形式の奨学金とする(加えて私学助成金を取りやめ、学生への奨学金提供を通じて優秀学生を確保した私学・国公立大学を支える体制とする)。
2.就職時の「学位条件」の提示を「見込み」により見なすこと、および、卒業条件の就業時賃金への反映を法的に禁じ、就業と卒業を切り離す。 3.高等教育を受ける権利を国民の基本的人権の一つとし、雇用者に長時間勤務をさせることで、教育機会を奪ってはならないこととする。 の三点を中心とした制度改革が必要。
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