3 人口減少期における我が国の大学の全体像について

(1) 人口減少期における大学全体の健全な発展の在り方について

  •  今後の少子高齢化社会及びグローバル化の進展の下での将来の我が国の大学の量的規模についてどう考えるか。
○ 日本の大学教育の量的規模は,国際的にも過大とは言えず,社会人学生も少ない。大学は,リーダーとなるべき人材育成と底上げのために積極的に役割を果たすべきであり,量的規模の在り方も,それに相応すべきである。

○ 大学の在り方の検討に当たっては,大学の経営の観点からの議論ではなく,人材養成,生涯学習,地域における教育活動など,社会からの要求の観点で議論を組み立てる必要がある。
  •  留学生,社会人又は高齢者等を対象とする大学教育の規模の見込み及び国際的な比較における我が国の大学進学率の現状についてどう考えるか。
○ 社会人や,意欲があっても経済的事情により進学をあきらめた者は,大学全入に関して語られる際の志願者数の算定に含まれていない。大学の規模を語る際には,そうしたことにも留意する必要がある。

○ 量的規模の検討に際しては,大学への進学需要,卒業後の労働需要のほか,質の観点が挙げられる。学生が十分に勉強しないと言われる現在の状況を前提として考えるのではなく,大学の質を強化し,学生に学修のインパクトを与えるよう改めていくことを前提とするならば,適正規模がさらに拡大してもよいという考え方もあり得る。

○ 我が国は社会人学生の入学が停滞していることが欧米諸国と異なる。社会人学生を積極的に受け入れるとしている大学院の専攻は800程度存在し,全体のほぼ半数となるが,実態としては,ほとんどが従来型の大学院であり,十分に社会人に対応したものとなっていない。一部の成功している事例もあるが,夜間開講を一部行っている大学院は1/4程度にとどまり,その他は,夜間や週末の受入もやっていない。大学が多様なニーズと潜在的な需要があると想定される中で,どのように対応するかが問われている。
  •  人口減少期における我が国の大学の果たすべき役割,及び機能別分化等を通じた我が国の大学の健全な発展等に関する将来像についてどう考えるか。(例:機能別分化に基づく各大学の大学院・学部の定員のバランス等)
○ 大学の機能別分化の検討に当たっては,国際的な研究拠点大学や地域の拠点大学として評価される条件に関して,国際的に見て明確な基準が必要である。また,それらの大学が,どの程度我が国には必要なのかとともに,その誘導措置についても検討すべきである。(再掲)

○ 私立大学については,地域別,規模別に振興策を促進する観点から,基盤的経費補助金についてきめ細かな配分基準を構築する。また,大学設置基準により,各大学は,教育研究上の目的を定め,公表することとされており,これの明確化を通じ,大学の機能別分化を促進しつつ,質の向上を図る必要がある。
  •  人口減少局面において,大学の自主的な入学定員の見直し又は学部・学科等の再編・縮小等を促す仕組みの導入の是非についてどう考えるか。
○ 「人口減少時代にあって,大学は多すぎる」という意見は逆である。国力の維持・向上には一人一人の価値を高めることが大事であり,大学はそのための最重要機関である。数を減らす観点から大学の再編統合を考えるのではなく,最適形態がどうあるべきかの観点から検討する必要がある。

○ 地方中心に大学の経営が困難な現実があり,その現実の問題をどう考えるか分析が必要である。

○ 大学院の整備が進められてきたが,修士課程修了者や博士課程修了者が,それぞれどんな役割を果たすべきか,どの程度の養成数が必要か,などについて国際的に見て適正かどうかという観点を踏まえた検討が必要である。

○ 我が国の大学生の約半数が,私立大学の文系に在籍している状況を念頭に置きつつ,大学の在り方について議論する必要がある。

○ 収容定員を縮小化した場合の専任教員数の基準の在り方について検討する必要がある。

○ 入学定員の取扱いの適正化を促進するため,定員超過の取扱いをより厳格にする必要がある。また,入学定員の充足率のみで測るのではなく柔軟な対応が必要である。

○ 定員の扱いを厳格にするに当たっては,例えば,大学院生の多い大規模校では,多額の研究予算を必要とする現状があるなど,大学の経費構造や予算確保の在り方について考慮する必要性に留意すべきである。
○ 志願者への情報公開の促進が必要である。事業報告書において,教育研究活動だけでなく,財務内容,志願状況等経営状況を記載することが必要である。
○ 学校法人における決算資料等においては,各大学の経営状況が明確で分かりやすいものとする必要がある。
  •  準則化以後の設置基準・設置認可の課題,及び公財政支出の効果的・効率的な活用と設置認可とのバランス等についてどう考えるか。

(2) 大学の機能別分化の促進と大学間のネットワークの構築について

  •  大学の適正規模及び個性化・特色化を通じた機能別分化の在り方,並びにそのための公財政によるバランスの取れた支援方策についてどう考えるか。
○ 学生のために大学の教育目標・理念は明確に設定する必要がある。学生の視点では,どのような大学に行ったらよいか全くわからず,とにかく入りやすいところに行こうとする傾向にある。

○ 地方の大学において,その地域で何が求められているかを明確にしていくことで学生を確保していく取組が見られている。
  •  各大学の人的・物的資源の全国共同利用化及び有効活用等の促進方策についてどう考えるか。
○ 全国共同利用型の施設に対しては十分な支援が行われる必要があるのではないか。

○ 私立大学にも共同利用の研究拠点を設ける制度が導入され,学外の者を含めた運営委員会を設置し,国公私を越えた取組が進んでおり,成果を上げている。

○ 教育や学生支援の機能を有する拠点の共同利用を促進することが必要。その際,そこが教育活動の場であることにかんがみ,利用する学生の利便性や各大学の教育理念・目的との関係に十分配慮する必要がある。
  •  国公私を通じた大学間連携(大学コンソーシアム等)の促進方策についてどう考えるか。
○ 大学が,人口減少と同時に,国際化の流れにさらされたときに耐えうるよう,大学の在り方全体を見渡した多角的な議論が必要である。これからは,大学の機能別分化の促進と,大学間のネットワークの構築がキーワードとなる。大学間ネットワークについては,国際レベル,全国レベル,地域レベルなど様々なものが考えられる。

○ 大学の地域連携や,大学間ネットワークを組もうとする動きが国公私を通じて進められており,このこと自体は評価できる。ただし,こうした動きが進んだ場合にどうなるか,特に,地方大学の在り方について,人材養成の観点からどう考えるべきか,また,教育を中心とする大学における教員の研究活動の在り方などが課題となる。

(以下の1.―7.は,平成20年12月5日の大学分科会で提示した「大学の機能別分化と大学間ネットワークについて検討の論点(案)」)

1. 機能別分化の分類の考え方について
(検討例)

  •  平成17年の「将来像答申」に掲げられた機能別分化の類型は,米国のカーネギー教育振興財団の大学分類(当時)も参考とされているが,我が国大学の現状に照らし考えられるそのほかの分類の在り方。
  •  我が国の大学の今後に着目し,新たな大学分類について検討することの可否。

2. 公的な質保証システムや公財政支援を通じて,機能別分化を促進する方策について
(検討例)

  •  認証評価において,大学の機能別に複数の尺度を導入する,または,機能別に認証評価機関を認証する仕組みをつくることの是非。
  •  博士(後期)課程について,設置認可や認証評価を通じて,学位授与状況を踏まえた適切な在り方を促す方策。
  •  国公私を通じた各種の公財政支援において,各大学の機能に応じて,申請における選択制を導入することの是非やその在り方。

3. 自主・自律的な質保証活動を促進する方策の在り方について
(検討例)

  •  複数大学による自主的な団体を形成して,一定の教育内容・水準を担保するネットワークを推進する方策。
  •  地域コンソーシアムや教育課程の共同実施を通じて,当該大学グループ全体として,様々な機能を果たすこととし,その中で,各構成大学が特定の機能に特化することを誘導することの是非。

4. 学術研究における共同利用・共同研究と同様に,優れた教育や学生支援を行う機能や施設を全国共同利用拠点として認定することによる機能別分化の促進方策について
(検討例)

  •  拠点の認定の基準や範囲の考え方(例:留学生への日本語教育施設や宿舎,水産実習船,英語教育,産学協同の促進機能,知的財産の管理)
  •  認定を通じて,全国的に卓越した取組だけでなく,地域や大学の特性に応じた特色ある取組や,複数の大学が共同して新たな拠点を形成する取組を促進する方策
  •  これら拠点に対する支援方策。

5. 科学技術・学術政策の分野においては,既にネットワークづくりや拠点形成に関する様々なプロジェクトが実施されている(例:大学間連携による知的財産活動体制の構築,産学官連携拠点の形成,ナノテクノロジーネットワーク)。これらを通じて形成された連携協力を継続するための仕組みを大学制度に位置づけることの是非やその必要性について。

6. 国立大学の機能別分化の促進について
(検討例)

  •  博士後期課程,附置研究所,一部学部等の教育研究組織に関し,機能別分化に沿った見直しを行うことについて。
  •  その際,教育課程の共同実施や複数大学による拠点形成を活用することについて。

7. その他,各公私立大学に対して,機能別分化を促す方策の是非とその在り方について

(3) 全国レベルと地域レベルのそれぞれの人材養成需要に対応した大学政策の在り方について

  •  全国レベル及び地域レベルにおける計画的な人材養成の在り方及び当該人材養成需要に対応した大学政策の在り方についてどう考えるか。
○ 大学は,初等中等教育段階における教育者養成のすべてにかかわっており,教育を担う人材の養成という観点からの大学の機能についても議論が必要である。

○ 国立大学の機能別分化や,地方国立大学に求められる役割を明確にすることが求められる。地方国立大学の意義が地域貢献だけでは,公立大学に任せればよいという結論となる。地域における存在意義を高めることができるか検討しつつ,機能別分化を進めることが必要である。あわせて,世界的な教育研究拠点をどうつくっていくかも必要な視点である。
  •  大学の教育研究活動に関する「地域性」と「国際性」のバランスについてどう考えるか。
○ 地方の大学は,特色づくりを進めて生き残りを図ろうとしており,これは今後も求められるが,一方でグローバル化の要請もあり,その調整がどうあるべきか検討が必要である。

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高等教育局 高等教育企画課 高等教育政策室

(高等教育局 高等教育企画課 高等教育政策室)

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