第2 大学の自主性・自律性に基づく機能別分化と大学間連携の促進

1 機能別分化の促進

(1) これまでの展開

 「将来像答申」では,各大学の個性・特色に応じた機能別分化の方向性が提示されている。各大学が,その自主性・自律性に基づき,保有する幾つかの機能の比重の置き方の違いを踏まえて,緩やかに機能別に分化していくことが想定され,それに基づく高等教育政策の充実が提言されており,現在までに,こうした方向性を踏まえた仕組みが整備されつつある。
 そうした機能別分化の進展とともに,複数大学が,設置形態を超えてコンソーシアムを整備する取組も活発になっている。各大学コンソーシアムでは,地方公共団体,産業界等とも連携しながら,各大学の個性・特色を生かした教育プログラムの提供,産学連携,高大連携等が行われている。
 今後の大学運営では,個々の大学が,自らの選択に基づき,限られた資源を集中的・効果的に投入し,それぞれの強みを生かしながら発展するとともに,複数の大学が連携協力することで,大学全体として多様な機能が提供され,地域・社会が抱える課題の解決や雇用創出につながる人材養成等を行うことが求められる。
 その際,これまでの関連方策が,どのような効果・成果をもたらしたか検証し,それを踏まえて,新たな目標を設定し,今後の活動の展開に生かしていくことが必要である。

(2) 施策展開における留意点

 今後の施策展開に当たっては,次の留意点が考えられる。

  1. 大学への公財政支援に当たっては,それが,各大学の個性・特色を生かし,各大学がどの機能を選択しても,または,どの機能に重点を置いても,その努力に応じて支援が得られるようにする。また,取組の進展や社会的要請に応じて,常に見直し,改善を図る,
  2. 設置形態に関わらず,複数の大学により行われる大学間連携を,その目的・機能・地域配置等に配慮しながら,重点的に支援する,
  3. 各大学の個性・特色を活かすための機能別分化の方策の効果・成果を検証し,新たな取り組みに活かす,
  4. 全国,地域レベルでの高等教育の機会均等の確保に,特に留意する。

 また,各大学が自らの強みを生かし,それぞれの機能を発揮できるよう,効果的な支援を進めていくためには,国公私立大学を通じて,各大学の様々な評価が適切に行われることが重要である。大学の特色を踏まえた評価の検討に当たっては,大学の規模,地域,分野等に応じて評価軸が異なること,また,大学の自己点検・評価,認証評価や国立大学法人評価等をはじめ,様々な評価の仕組みがあることを踏まえ,評価制度全体としての調和が図られることが期待され,各大学の機能に応じた適切な基準・指標と,その活用方法等に関し,調査研究・開発等を進めていくことが求められる。
 これらの方向性を踏まえ,各大学には,それぞれの個性・特色の明確化を図るよう,各種の施策に積極的に取り組むことが期待される。

2 大学間連携の促進

 大学教育の一層の充実を図る観点からは,各大学が自らの強みを持つ分野へ取組を集中・強化するとともに,他大学との連携を進めることによって,大学教育全体としてより多様で高度な教育を展開していくことが重要である。
 大学間連携に関するこれまでの施策として以下を挙げることができる。

(1) 大学間コンソーシアムや戦略的大学連携支援プログラム

○ 平成22年には,全国に48団体。
○ コンソーシアム形成は,質保証の様々な試みの実施契機。
○ 国公私を超えた大学間の戦略的な連携取組を支援。大学は,概ね10年程度を見通した将来目標や連携効果を含む具体的な「大学間連携戦略」を策定。

  • 分野別・機能別に応じた教育内容・方法の開発・実施による質保証(単位互換,標準コアカリキュラムの開発,共通テキスト・教材の作成,出口管理の徹底,相互認証等)
  • 大学・自治体・産業界など地域が一体となった人材育成(地域人材育成プログラム,就職サポート,地域課題対応型の取組等)等

(2) 大学における教育課程の共同実施制度(平成22年度開設)

○ 連合大学院や単位互換等の大学間連携の仕組みでは,複数大学が連携して行った教育は一つの大学名でしか学位が表示されない。
○ そこで,大学設置基準等を改正し,共同で教育課程を編成・実施し,複数大学が連名で学位授与を行うための新たな仕組みを導入。
○ これにより,複数の大学がそれぞれ優位な教育研究資源を結集し,共同でより魅力ある教育研究・人材育成を実現。

(3) 教育・学生支援分野における共同利用拠点の創設

 大学教育の一層の充実を図る観点からは,各大学が自らの強みを持つ分野へ取組を集中・強化するとともに,他大学との連携を進めることによって,大学教育全体としてより多様で高度な教育を展開していくことが重要である。このため,各大学が連携協力し,それぞれが有する人的・物的資源を共同利用し,その有効活用を図る取組の一層の促進を図ることが求められる。
 平成15年以前の国立大学では,国立学校設置法施行規則において,大学附置の全国共同利用施設が個別に規定されていた。しかしながら,法人化後にこの規定は廃止され,その設置改廃は各国立大学の判断に委ねられることとなった。
 学術研究分野に関しては,平成20年に国公私を通じた共同利用・共同研究拠点が制度化(学校教育法施行規則の改正)され,既に拠点も認定されている。また,拠点に対しては別途財政支援も講じられている。
 一方で,優れた教育や学生支援を行う機能や施設に関しては,同様の仕組みは設けられていなかった。そこで,大学分科会の審議を踏まえ,複数大学が連携して実施することが効果的・効率的な教育上の取組や学生支援に関し,複数大学が共同で利用するための拠点を整備・運営する場合の文部科学大臣認定制度を平成21年度に創設している。
 これにより,大学の教育施設は,教育上支障がないと認められるときは,他の大学の利用に供することができ,その上で,大学教育の充実に特に資するときは,教育関係の共同利用拠点として,文部科学大臣の認定を受けることができることとなった。
 具体的な拠点の例として以下の施設・機能が想定される。

  • 留学生を対象とした日本語教育センター
  • 多様な支援機能を備えた学生用宿舎
  • 大型練習船,演習林,農場,スポーツ施設
  • 英語教育や情報教育の拠点
  • FD・SDセンター

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