5.日本人の海外留学

 「留学生30万人計画」は、日本の大学等に留学する外国人留学生を念頭にまとめられるものであるが、海外から優秀な人材を受け入れるばかりでなく、大学等間交流の活性化や世界で活躍できる優秀な日本人の育成の観点から相互交流も重視すべきであり、日本人の海外留学の促進も重要である。

 

(1)日本人学生の海外留学の意義

 日本人の若者が海外留学をし、国際感覚を磨くことは、個人としては、国際体験を通じた国際理解・知識の拡大、語学力の向上など学生の能力や可能性を広げ、留学を通じ国境を超えた幅広い人的ネットワークの形成につながる。また、国としても、国際的な競争環境の中での国際的通用性のある人材の育成や受入れと同様に人的ネットワークの形成による相互理解と友好関係の深化が世界の安定と平和に資するといった安全保障の観点、我が国大学等の教育研究水準の向上など重要な意味を持つものである。
 また、自大学等の学生の海外留学の促進は、大学等にとっても、双方向の相互交流に基づく大学等間交流の拡大や、オフショア・プログラム、日本語教育・日本文化の普及など日本の高等教育機関の海外展開に活用することもできるなど得るものは大きく、一部の大学では学部段階の一定期間海外留学を義務づけるといったところもみられる。

(2)日本人の海外留学を促進するための方策

  1.  平成16(2004)年に海外留学をした日本人の数は82,945人と過去最高の数を記録している。しかしながら、学部レベルが多く、また、このうち半数以上が米国に留学しているものの、近年米国に留学する日本人学生の数が減少している。この理由は明確ではないものの、留学目的や意識・意欲の変化などが挙げられている。
     若者の留学離れは、国際感覚や研究能力を磨き、人的ネットワークを形成するなどによる、国際的に通用する人材の育成の機会を狭めるものであり、グローバル化が進む中で、我が国が取り残されることになりかねない。他方、今後我が国に30万人の留学生を受け入れようとする中で、受入れ機関や地域の中核となる人が海外留学経験を有することは大きな意味があり、そうしたことから、日本人の海外への留学の促進が必要である。
  2.  このため、国や日本学生支援機構では、長期や短期の海外留学のための奨学金制度の取組を引き続き推進するとともに、各大学の優れた留学ブログラムを支援する取組も同時に推進していく必要がある。
     また、諸外国とのアカデミック・イヤー(学年暦)の違いが留学を阻害しているとの指摘もあることから、大学等への秋季入学を促進する方策の検討も必要である。
  3.  大学等においては、外国語教育、特に英語教育を充実させるとともに、単位互換、ダブルディグリー等の魅力ある留学プログラムの充実を図り、学生へのインセンティブ付与に取り組むとともに、学生が安心して留学できるような緊急時における連絡体制やセーフティネットの確立、また、大学等のみならず企業等も含め、海外留学が将来の進学・就職に大いにメリットがあるといったことを明確にしつつ留学しやすい環境の整備、就職時の進路指導の強化など様々な取組を積極的に展開することが必要である。特に、国際的な拠点を目指す大学等では、海外留学を卒業要件に位置づけて全員必修とするなどの思い切った措置も考慮が必要である。その際、大学等間交流による交換留学が有効であり、その拡大が望まれる。
     なお、平成23年度から全面実施される新学習指導要領により、小学校5、6年生に外国語活動が導入されるなど今後初等中等教育における外国語教育の充実が図られることとなるが、このような初等中等教育段階からの外国語教育が、日本人学生の海外留学に必要な語学力を向上させる基礎として重要であることはいうまでもなく、大学等はもちろんのこと初等中等教育段階からの外国語教育の充実が必要である。
  4.  同時に大学等や地方自治体、企業でも海外留学のための奨学金をはじめとした支援制度を実施しているが、これらについても引き続き推進されることが期待される。

(3)留意点

  1.  日本人の半数以上が米国に留学し、欧州と合わせ約7割が欧米に留学している。相互交流の観点からは、受入れ留学生の多いアジア諸国への留学、体験についても配慮・誘導が必要である。その際、アジア太平洋大学交流機構(UMAP)などの既存の域内交流の枠組みの活用に加え、新たな地域交流のあり方も考慮されることが望まれる。また、大学等の交流拡大によるネットワーク強化や学生の将来のキャリア形成の観点から、これまで日本の存在感が少ないと言われる中東やアフリカ、南米諸国への短期相互交流についても考慮されることが期待される。
  2.  留学のレベル別に考えると、学部レベルでは、日本の大学に在学中に1年以内の期間、特定の科目の単位取得、異文化体験、語学学習などを目的とした短期留学を積極的に推進することが重要である。また、大学院レベルでは、今後、各大学の取組が期待されるダブルディグリー等の海外の大学との共同プログラムを通じた海外留学が重要で、次世代を担う優秀な人材育成の観点から博士課程在籍者の海外留学の促進にも留意すべきである。
  3.  なお、米国への留学については、日本人学生は、学部63%、大学院20%となっているが、中国は学部15%、大学院71%、インドは学部15%、大学院71%、韓国は学部45%、大学院38%と他国に比べ大学院レベルの海外留学が少なく、将来の国際競争力低下につながるとの懸念もあり、大学院段階での海外留学に対して特に配慮が必要である。

 最後に、これまで述べてきた以上の様々な方策をとって「留学生30万人計画」を着実に推進させるためには、必要な予算を措置しつつ将来の我が国の在り方を見据え施策を積極的に行っていくべきである。「留学生30万人計画」の推進が我が国の社会や大学等を大きく変革し、我が国が世界に開かれた尊敬される国として発展を続ける基礎となることにすべての関係者が思いを致すことを願うものである。

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