ここからサイトの主なメニューです

法科大学院教育の更なる充実に向けた改善方策について(提言)

平成24年7月19日
中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会

はじめに

1.我が国の法曹養成制度は、旧司法試験における競争の激化により、受験者の受験技術優先の傾向が顕著となるなど法曹となるべき者の資質の確保に重大な影響を及ぼす事態に至った反省を踏まえ、司法制度改革の理念に基づき、いわゆる「点のみによる選抜」から「プロセスとしての養成」へ大きく転換することとなり、その中核的機関として法科大学院制度が平成16年度に創設されて以降、本年度で9年目を迎えている。

2.この間、法科大学院は7期にわたり、法曹をはじめとして民間企業や公務部門など、社会の様々な分野に修了者を送り出している。特に、法曹資格を取得した者は一万人以上となっており、現在では、弁護士の全登録数のうち約四分の一を法科大学院修了者が占めるに至っている。

3.これら法科大学院修了者については、法曹関係者のみならず広く法律実務に携わる関係者から、自発的・積極的な学修意欲が高い、判例や文献等の法情報調査能力が高い、法律家として求められる文書作成能力が相当程度習得されている、コミュニケーション能力に優れているなど、法科大学院の教育課程を通じて高い能力を習得しているとの評価を受けており、新たな法曹養成制度が目指した質・量ともに充実した法曹を育てるという理念が実現しつつある。

4.法科大学院では、法理論と実務との架橋を強く意識した教育が、少人数のクラス編成を基本とし、双方向的・多方向的で密度の濃い授業を通じて実践されるなど、従前の大講義型を中心とした教育から変化を遂げており、大学改革の先導的なモデルとしての意義も大きい。

5.この法科大学院の教育については、「法曹の養成に関するフォーラム」の関係者ヒアリングの中でも、(1)多角的な側面から一つの事象を検討することで法的能力を涵養すること、(2)双方向で議論することや、自分の議論の筋道を立てて相手を説得すること、(3)多人数の前でプレゼンテーションすること、(4)リーガル・クリニック等を通じて実務的な体験をすること、(5)一部の法科大学院では英語による授業や交換留学制度を通じて国際化対応能力を涵養すること等が行われ、また、(6)多様なバックグラウンドを持つ学生から様々な経験を学ぶ機会にもなっているとの指摘や、利害特定能力・利害調整能力・論理的説得能力という社会のあらゆる場面で機能する価値の高い能力を学ぶ場となっているとの指摘も受けている。

6.しかし、その一方、一部の法科大学院で教育の実施状況等に問題点が生じていたことから、本特別委員会では、平成21年4月「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」(以下「特別委員会報告」という)を取りまとめ、法科大学院の教育の質の向上を図るため、総合的な改善方策を提言したところである。

7.この提言に基づき、これまで、各法科大学院においては教育の改善に向けた取組を進めており、相当数の法科大学院で成果をあげているところである。
 しかしながら、こうした改善が進められているにもかかわらず、司法試験合格者数が、政府目標とされた年間3,000人を大きく下回っていること、また、法曹有資格者の就職の道が期待通りに開かれておらず、特に弁護士としての就職が厳しい状況にあることなどを背景に、法科大学院への志願者数の減少が続くとともに、一部の法科大学院において十分な成果があげられず、司法試験の合格状況をはじめ、法科大学院間の差が拡大しつつあるといった課題が深刻化しているなど、法科大学院を中核とした法曹養成制度全体は、これまでにも増して厳しい環境に置かれていると言わざるを得ない。
 以上のような実態が、法科大学院制度全体に対する社会的信頼の確立の障害となっていることは否定しがたいところであり、法科大学院制度全体を早期に安定させるため、これらの課題への対応が必要である。 

8.また、法科大学院は、多様なバックグラウンドを持つ者を受入れ、法曹として養成するという司法制度改革の目指す理念を踏まえて制度設計されているが、現状では、社会人や非法学部出身者の入学者数は減少傾向にあり、また、標準修業年限修了率や司法試験合格率でも法学既修者と法学未修者との差が大きく、かつ、この差は次第に拡がりつつある。
 このように、法学未修者についてはその受入れ体制とともに、教育課程や教育方法の在り方の問題が顕在化してきており、速やかな対応が迫られていると言える。

9.このため、本特別委員会は、改めて法科大学院が置かれている現状と課題を確認し、法科大学院教育の優れた点は評価し、それを更に伸ばす一方で、現在、法科大学院制度が抱えている課題の解決に向けた迅速な取組を推進することを通じて、司法制度改革の理念を踏まえた法曹養成制度が適切に機能することを図るため、法科大学院教育の更なる見直しの方向性及び具体的な改善方策について提言することとする。

10.本特別委員会としては、各法科大学院に対して、法曹養成の中核的機関としての役割を適切に果たすべく、教育の質の更なる向上に向けた改善方策に速やかに取り組むことを、また、文部科学省に対して、本提言を踏まえた実効性のある施策を迅速かつ計画的に立案し、実行に移すことを強く期待する。

 

1 これまでの改善状況と主な課題

1.特別委員会報告に基づくこれまでの改善状況

○ 入学者の質の確保
・各法科大学院が、教育の質の向上を図るため入学定員の適正化を実施した結果、入学定員はピーク時より約2割の減となった。
・質の高い入学者を確保するため、競争倍率(受験者数/合格者数)の確保を促した結果、実入学者数はピーク時より4割以上の減となった。
○ 修了者の質の確保
・法学未修者の教育を充実するため、1年次の法律基本科目の単位数を増加させることができるよう省令を改正し、50校が単位数を増加させた。
・修了者の質の確保のため、各法科大学院が成績・進級判定を厳格化した結果、標準修業年限修了者の割合が約7割まで低下した。
○ 教育体制の見直しの推進
・深刻な課題を抱える法科大学院において、自主的・自律的な組織見直しを促進するため、公的支援の見直しを実施した。
・教育体制の見直しにより、現在までのところ、法科大学院5校が学生の募集停止を実施又は表明した。
○ 質を重視した評価システムの構築
・修了者の進路等の評価項目への追加、重点評価項目の設定など認証評価基準・方法の改善のための省令改正を実施した。
・各法科大学院の教育の改善状況について調査を実施し、結果を公表した。

  平成21年の特別委員会報告において、入学者の質と多様性の確保、修了者の質の保証、教育体制の充実、質を重視した評価システムの構築に向けた改善方策について提言を行った。
 文部科学省及び各法科大学院においては、この特別委員会報告の提言に基づき、次に掲げる取組を実施しているところである。

〈入学者の質の確保〉

 各法科大学院において、教育の質の向上を図るため、入学定員の適正化に取り組んだ結果、入学定員は、ピーク時の平成19年度の5,825人から、平成24年度は4,484人と、約2割の縮減となっている。
 法科大学院の入学者選抜において選抜機能を十分に働かせ、質の高い入学者を確保するため、文部科学省では、入学者選抜における競争倍率(受験者数/合格者数)2倍の確保を徹底するよう促してきた。その結果、入学者選抜において競争倍率2倍を確保できなかった法科大学院は、平成22年度に40校あったものが、平成24年度には13校まで減少するとともに、入学者の質の確保に向けた取組などの結果、実入学者数は、ピーク時の平成18年度の5,784人から、平成24年度は3,150人と、4割以上の縮減となっている。
 適性試験についても、特別委員会報告において、適性試験の統一的な入学最低基準点の設定に係る考え方が示された。これについては、更に本特別委員会において検討を行い、入学後の学修状況や司法試験合格状況等を考慮し、入学最低基準点を総受験者の下位から15%を基本として各法科大学院が設定すること、及び法科大学院の募集要項等に明示することの必要性を明らかにしたところである。
 なお、多様性の確保に関しては、後記「2.入学者及び修了者の状況」のとおりである。 

〈修了者の質の確保〉

 法科大学院修了者の質の確保の観点から、特別委員会報告では、共通的な到達目標の設定を提言した。これを受けて、平成22年9月、法曹三者を含めた学識経験者等により、法科大学院修了者が共通に備えておくべき能力等の到達目標モデルが作成され、全法科大学院及び関係機関に対して提示された。現在、各法科大学院では、このモデルを踏まえ具体的な到達目標を設定するとともにカリキュラムの改善に向けた取組を推進しているところである。
 また、法学未修者教育の一層の充実を目指して、文部科学省においては、法学未修者1年次における法律基本科目の基礎的な学修を確保するため、各法科大学院が法律基本科目の単位数を最大6単位まで増加させて1年次に配当することを可能とする省令改正を行った。この改正により、平成23年度現在、50校において1年次の法律基本科目の配当科目数が増加されるなど、法学未修者の教育の充実が図られているところである。
 さらに、法科大学院における厳格な成績評価・修了認定の徹底を促した結果、進級制を導入する大学が、平成18年度の56校から、平成23年度には70校まで増加するなど取組が進むとともに、平成18年度に修了した者のうち標準修業年限で修了したものが80.6%を占めていたところ、平成23年度に標準修業年限を迎えた修了者では68.7%まで低下してきている。

〈教育体制の見直しの推進〉

 法科大学院の教育体制の充実、見直しについては、特別委員会報告とともに、その後本特別委員会で行われた更なる議論を踏まえ、平成22年9月、文部科学省において、深刻な課題を抱える法科大学院における自主的・自律的な組織見直しを促進するため、入学者選抜の競争倍率や司法試験合格率等を指標として、国立大学法人運営費交付金及び私立大学等経常費補助金の減額を行う公的支援の見直しを発表し、平成24年度予算より実施している(平成24年度予算での見直し対象となった法科大学院は6校)。
 なお、現在までのところ、教育体制の見直しにより、5校の法科大学院が学生の募集停止を実施又は停止することを表明している状況である。

〈質を重視した評価システムの構築〉

 特別委員会報告では、法科大学院がその役割を十分果たしているかを評価できるよう、認証評価における評価基準・方法を改善すべき旨の提言を行った。
 文部科学省においては、この提言を受けて、平成22年3月、(1)評価項目の改善として、新司法試験の合格状況を含む修了者の進路に関する事項を新たな評価項目として追加するとともに、(2)評価方法の改善として、法曹養成の基本理念を踏まえ、特に重要と判断した項目の評価結果を勘案しつつ、総合的に評価するなど、適切な適格認定を行うことができる評価方法となるよう、関係省令を改正し、各認証評価機関もこの省令改正を踏まえ、自らの評価基準等を改めたところである。
 現在、これら改正された認証評価基準や適格認定の方法に基づく2巡目の認証評価が、平成23年度から開始されているところである。
 また、本特別委員会においても、特別委員会報告の取組状況を各法科大学院に確認するため、平成22年1月から、5回に及ぶ改善状況調査を実施してきており、個別の法科大学院における課題を指摘・公表するなどしてその改善を強力に促しているところである。

 

2.入学者及び修了者の状況

○ 法科大学院の入学者数は、平成18年度以降減少傾向にあり、特に法学未修者の減少数が大きい。
○ 標準修業年限修了率は、初期と比べ、法学既修者はほぼ同程度であるのに対し、法学未修者では大きく低下している。
○ 司法試験合格状況については、平成22年頃までに合格者数を年間3,000人とするという政府目標(閣議決定)が達成されず、平成20年以降2,000人をやや上回る数で推移している。一方、受験者数は増加している結果、単年の司法試験合格率は年々低下している。
○ 司法試験の累積合格率(全合格者数/全修了者数)は、法学既修者では6~7割程度であるが、法学未修者では3~4割程度である。

〈法科大学院の入学者数と修了の状況について〉

 法科大学院の入学者数は、初年度の平成16年度が5,767人(うち法学既修者2,350人/法学未修者3,417人)であり、平成18年度には5,784人と最多となった。その後、各法科大学院が入学定員の削減や厳格な入学者選抜といった取組を行った結果、入学者数は絞られており、平成24年度は3,150人(うち法学既修者1,825人/法学未修者1,325人)となってきている。中でも法学既修者に比べ法学未修者の減少の幅が著しく大きくなっている。
 また、法科大学院の標準修業年限修了率は、平成16年度入学者では法学既修者92.6%/法学未修者75.1%であったが、平成21年度入学者では法学既修者89.6%/法学未修者56.8%となっており、法学既修者においてはそれほど変化がないのに対し、法学未修者においては大きく低下している。

〈司法試験合格状況(各年)〉

 司法試験合格者数については、平成14年に閣議決定された司法制度改革推進計画において「平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3,000人程度とすることを目指す」とされている。しかし、その合格者数は平成20年までは順調に増加したものの、その後は2,000人をやや上回る数の合格者数で推移しており、現在に至るまで年間3,000人の政府目標は達成されていない。
 このため、司法試験の各年の合格率は、法科大学院修了者が初めて受験した平成18年に48.3%となって以降、毎年の修了者が新たに加わることによる受験者数の増加に伴い、年々低下しており、直近の平成23年では23.5%(法学既修者35.4%、法学未修者16.2%)となっている。なお、近時、各法科大学院においては、教育の質の向上のため入学定員の縮減、入学者選抜における競争倍率の確保、成績評価・修了認定の厳格化等を進めてきており、既に毎年の修了者数も減少に転じていることからすると、仮に近年と同程度の合格者数で推移するとすれば、上記のような司法試験合格率の低下に歯止めがかかるものと見込まれる。

〈司法試験合格状況(累積)〉

 これまでの法科大学院の全修了者数(平成17年度~22年度の累積修了者数:25,825人)に対する司法試験の累積合格者数(計11,105人)の割合は43.0%である。
 年度ごとの修了者別に見た場合、既に法科大学院修了後5年が経過した平成17年度及び18年度の修了者についての最終的な累積合格率は、平成17年度修了者にあっては69.8%、平成18年度修了者にあっては49.5%という結果になっている。
 平成17年度の修了者は法学既修者のみであったが、法学既修者及び法学未修者の両者がはじめて修了した平成18年度修了者のそれぞれの累積合格率を見ると、法学既修者は前年と同様6割を超えて63.4%、法学未修者は39.5%である。
 法科大学院修了後に3年以上5年未満を経過した平成19年度及び20年度修了者についても、なお受験機会を残す者もいる段階ではあるものの、上記と同様の傾向が認められ、法学既修者の合格率は6割を超えているのに対し、法学未修者の合格率は3割程度に留まっている。

 

3.主な課題

(1) 法科大学院間における差の拡大
○ 法科大学院間で司法試験合格状況に大きな差が生じている。
○ 入学者選抜の競争倍率が2倍に満たない法科大学院も未だ存在している。
(2) 法学未修者と法学既修者間における差の拡大
○ 標準修業年限での修了率において、両者の間で差があり、かつ、その差が拡大してきている。
○ 司法試験の合格率において、両者の間で相当な差が生じている。もっとも、法学未修者の司法試験合格者数は増加している。

〈法科大学院間における差の拡大〉

 各法科大学院の司法試験の合格状況について、公的支援の見直し指標でもある全国平均の半分未満の合格率を仮の指標として、単年度の合格率で比較してみると、指標に達しない法科大学院は平成19年司法試験では17校であったのに対し、平成23年司法試験では32校に増加している。また累積合格率で比較してみると、全体では43.0%であり、指標を上回る法科大学院の累積合格率が50.7%であるのに対し、指標に達しない法科大学院の累積合格率は15.5%に留まっている。また、入学者選抜における競争倍率を見ても、平成24年度入学者選抜の実績で、競争倍率2倍に満たない法科大学院が13校存在している。
 このように、法科大学院の出口においても入口においても、法科大学院の間に大きな差が生じており、このうち、特に課題を抱える法科大学院に対する対応が必要と考えられる。

〈法学未修者と法学既修者間における差の拡大〉

 新たな法曹養成制度の理念では、法科大学院入学者における多様性の確保が重視され、そのことを念頭に法科大学院の教育課程は基本的に3年を標準修業年限として制度設計されている。しかし、現状における法学未修者と法学既修者それぞれに関する各種データを比較・分析すると、いくつかの課題があることが分かる。
 例えば、直近の平成23年の司法試験合格率は、法学既修者が35.4%であるのに対し、法学未修者は16.2%に留まっており、しかも、そのような両者の差は当初から継続する傾向となっている。また、司法試験の累積合格率を見ても、法学既修者が60.5%であるのに対して、法学未修者は27.9%であり、単年の合格率についてと同様、大きな差が生じている。もっとも、平成19年司法試験と平成23年司法試験を比較すると、法学未修者の合格者数自体は増加している(636人→881人)。
 司法試験の中でも、平成23年における短答式試験の合格率は、法学既修者が81.4%、法学未修者が54.1%と両者の差は27.3ポイントであるのに対し、短答式試験の合格者が論文式試験を経て最終合格する率は、法学既修者が43.5%、法学未修者が30.0%であることからすると、法学未修者にとっては、特に短答式試験が課題となっているものと考えられる。
 司法試験の合格状況のみならず、法科大学院における標準修業年限修了率においても、法学未修者が厳しい状況にあることが認められる。平成23年度の修了者のうち、法学既修者は86.6%が2年で修了しているのに対し、法学未修者については、3年で修了している者は56.8%に留まっている。
 なお、平成19年司法試験と平成23年司法試験の合格者において、法学未修者のうち、法学部出身者は合格者数を増やしている(344人→621人)のに対して、非法学部出身者はやや減少(292人→260人)しており、法学部出身者に比べて非法学部出身者がより厳しい状況にある。また、平成21年度入学者の標準修業年限修了率(法学未修者)を見ると、法学部出身者が60.4%であるのに対して、非法学部出身者は50.4%となっている。

 

2 今後の見直しに関する基本的な考え方

○ 本特別委員会は、政府の「法曹の養成に関するフォーラム」における制度の在り方の検討を待つまでもなく対応できる実施上の課題については、速やかに具体的な改善方策を検討・実施していくことが必要と認識している。
○ 改善方策の検討・実施に当たっては、法科大学院教育の優れた点を改めて評価し、これを更に伸ばすことにより、法科大学院が法曹養成制度の中核的機関としての責務を果たし、社会全体から確固たる信頼を得るように努めることを基本とすべきである。
○ その際、法科大学院ごとの状況の違いや地域ごとの実情の違い、法学未修者教育の充実に関する課題の存在、既に講じてきた施策の進捗状況や効果等を踏まえて、きめ細かな改善方策を検討・実施していくべきである。

<法科大学院特別委員会の検討状況>

 本特別委員会では、特別委員会報告後にワーキング・グループを設け、個別の法科大学院の教育の改善状況について継続的な把握を行ってきた。
 具体的には、入学者選抜や授業内容、成績評価・修了認定、教育体制、司法試験合格状況等において課題を抱える法科大学院に対し、現状分析や課題の洗い出し、改善の取組状況などの調査を実施し、その結果をこれまで5回にわたって報告・公表することを通じて、これらの法科大学院に対して改善の取組を促してきたところである。
 本特別委員会のワーキング・グループの調査結果等に鑑みると、調査対象とされた法科大学院の多くが改善に向けた取組を行っており、短期間にもかかわらず、相当の効果を上げているところが見られる。その一方で、一部の法科大学院では依然として危機意識に欠け、教育の質の改善に関する取組が十分でないところも見られる状況にある。
 本特別委員会では、これまでも改善状況調査を通じて指摘を重ねてきているものの、これら一部の法科大学院の状況については、速やかにその適切な改善が図られなければ、法科大学院制度全体への信頼が損われるおそれもあると考える。

<政府の検討状況>

 このような状況の中で、平成23年5月に関係6大臣(内閣官房、総務省、法務省、財務省、文部科学省、経済産業省)の申し合わせにより、法曹の養成に関する制度の在り方について検討することを目的として政府内に設置された「法曹の養成に関するフォーラム」では、法科大学院の視察や関係者へのヒアリング等を通じて、現状把握と意見交換を重ね、平成24年5月には、法曹養成制度に関する「論点整理」が取りまとめられた。
 また、平成23年11月の行政刷新会議による提言型政策仕分けでは、「法科大学院の需給のミスマッチの問題については、定員の適正化を計画的に進めるとともに、産業界・経済界との連携も取りながら、法科大学院制度の在り方そのものを抜本的に見直すことを検討する」旨の取りまとめが行われた。そして、本年4月の総務省の政策評価においては、法曹養成の現状についてコスト等も含めて調査した上で、法科大学院における教育の質の向上や法学未修者教育の強化、入学定員の更なる削減、他校との統廃合の検討などの勧告が行われた。

<今後の見直しに関する基本的な考え方>

 法科大学院を取り巻く厳しい状況に鑑み、本特別委員会は、政府の「法曹の養成に関するフォーラム」における制度の在り方に関する検討を待つまでもなく対応できる実施上の課題については、速やかに具体的な改善方策を検討・実施していく必要があると考える。
 具体的な改善方策を検討・実施していくに当たっては、法科大学院教育の優れた点を改めて確認し、これを更に伸ばすことにより、法科大学院が法曹養成制度の中核的機関としての責務を果たし、社会全体から確固たる信頼を得るように努めることを基本とすべきである。
 その際、法科大学院ごとの状況の違い、地域ごとの実情の違い、法学未修者教育を充実させるという課題があること、既に講じてきた施策の進捗状況や効果等を踏まえて、よりきめ細かな改善方策を検討・実施していくべきである。

 

3 今後検討すべき改善方策

 前記1、2において、法科大学院に関するこれまでの改善の取組状況、法科大学院の現状と課題、今後目指すべき改革の方向性について確認してきた。
 これらの改革の方向性を着実かつ効果的に進めるために必要な改善方策については、主に、以下に掲げる4つの観点から取り組むべきである。
 本特別委員会としては、その具体化に向けて更に検討を深め、随時提言をおこなうこととする。文部科学省においても、本特別委員会の提言を踏まえ実効性のある施策を迅速かつ計画的に立案し、成案がまとまったものから速やかに実行に移すことを期待する。 

1.法科大学院教育の成果の積極的な発信

○ 法科大学院の教育の成果を広く社会に積極的に発信する取組の促進
○ 法科大学院修了者が高度の法的素養を備えた人材として、広く社会で活躍できるよう支援するため、その進路状況のより正確な把握、就職支援の充実方策の検討・実施

 まず、第一の取組としては、法曹養成制度の中核的機関として法科大学院の教育の優れた点について国民の理解を広め、社会全体からの信頼を確固たるものとしていくことが必要である。このため、法科大学院教育の成果を積極的に発信していくとともに、法科大学院修了者が社会の様々な分野で活躍できるような環境を整えていくことが重要である。

<法科大学院教育の成果の積極的な発信>

 司法制度改革に基づく新しい法曹養成制度は、真に国民の期待と信頼に応える法曹を養成し、司法制度の人的基盤を質・量ともに充実させることを目指すものである。
 その中核的機関としての法科大学院の今後の見直しに当たっては、後記「2.」のとおり、重大な問題意識を持って、課題を抱える法科大学院の改善方策を迅速に実施していくことが必要であることは既に述べたとおりである。
 ただし、法曹養成制度の課題ばかりが過度に強調されることによって、次代を担う人材が法曹への途に挑戦することを躊躇するようなことが仮に起こるとするならば、司法制度の人的基盤を質・量ともに充実させるという目標の達成は覚束なくなってしまう。
 したがって、改革の第一としてまず取り組むべきことは、各法科大学院において、司法制度改革の理念に基づく法科大学院教育の優れた成果を広く社会に積極的に発信し、社会の理解と信頼を得ていくことである。
 もとより、各法科大学院の日々の教育活動及び教育内容が学生によって優れたものと評価されること、その学生たちが修了者として、法曹をはじめとする社会の各方面で高い評価を受けることが何よりも基本であり、後記「4.」のとおり、法科大学院教育の質の改善に取り組むことが重要な課題であることはいうまでもない。
 そのような教育の質の改善を前提としつつ、より効果的・効率的な成果の発信を行うため、法科大学院協会を中心として、法科大学院自身が主体的に情報発信に取り組むことが必要である。例えば、各法科大学院において、学生が法律事務所、民間企業、地方公共団体等で研修を行う「エクスターンシップ」等の授業を、法科大学院の教育効果を対外的に発信する機会という側面をも持つものと捉えて、より積極的に実施していくことや、各法科大学院が、民間企業や地方公共団体等とのネットワークを構築して、法科大学院教育の意義や内容が広く知られるよう努めることが考えられる。
 同時に、各法科大学院においては、率先して修了者の進路状況の正確な把握と充実した就職支援策を進め、それらの結果として、法科大学院教育の成果である「法務博士(専門職)」の存在が社会に広く認知されることを目指すことが強く期待される。
 また、文部科学省においては、法科大学院修了者が専門的な法的知識や考え方を身に付けた有為な人材として広く社会で活躍できるよう支援するため、修了者の進路状況のより正確な把握や就職支援の充実方策の検討が必要である。
 併せて、法科大学院が社会で適切に評価されていく環境を整えるために、文部科学省においても、法科大学院協会と協力しながら、法科大学院教育の現状や学生が置かれている学習環境や経済状況などの実態について、よりきめ細かく把握し、発信し、必要な改善方策を検討していくことも重要である。

 

2.課題を抱える法科大学院を中心とした入学定員の適正化、教育体制の見直し等の取組の加速

(1) 課題を抱える法科大学院における取組の促進
○ 中教審/改善状況調査の対象校を絞り込み、より重点的なフォローアップを実施
○ 課題を抱える法科大学院に対する改善計画の提出要請・ヒアリング・公表の実施
○ 認証評価で不適格となった法科大学院に対する改善状況の報告・確認の徹底
(2) 法科大学院に対する公的支援の更なる見直し
○ 入学者選抜の競争倍率と司法試験合格率に加えて、入学定員の充足状況を新たな指標とすることを含む、公的支援の更なる見直し
(3)組織改革の加速に向けた取組
○ 課題を抱える法科大学院において、自主的・自律的な取組が促進されるよう、組織見直しに向けたモデル及びその推進方策を提示

 第二の取組としては、課題を抱える法科大学院を中心とした入学定員の更なる適正化等による入学者の質の確保を進めるとともに、課題を抱える法科大学院における自主的・自律的な教育体制の抜本的見直しが加速されるようにすることが重要である。

<課題を抱える法科大学院における取組の促進>

 課題を抱える法科大学院についての具体的な改善方策として、個々の法科大学院の取組の促進を行うことが重要であり、特別委員会報告において提言された施策の実施状況に関するフォローアップのため、本特別委員会が現在実施している改善状況調査については、対象とする法科大学院を絞り込み、重点的に書面調査・ヒアリング・実地調査を実施することが適当である。
 また、文部科学省においては、上記調査で浮き彫りになった課題等への改善の取組を明らかにさせるなど、課題を抱える法科大学院に対する改善計画の提出要請・ヒアリング・公表を実施することも考えられる。その際、法科大学院が法曹養成のための専門的教育機関として設置されたものであり、かつ、原則としてその修了者のみ司法試験の受験資格が認められていることを踏まえれば、入学者や修了者の質の確保とともに、司法試験の合格状況も重要な指標の一つとして考慮される必要がある。なお、その場合、現在の司法試験の合格状況については、法科大学院教育と司法試験の在り方との間にギャップがあるのではないかとの指摘があることにも留意する必要がある。
 さらに、今後多くの法科大学院が2巡目の認証評価を受ける時期に入るが、その際、不適格認定を受けた法科大学院に対しては、不適格と判断される原因となった事項の改善が図られるまで、文部科学省から継続的に報告・確認を求めるなどの取組を実施することが適当である。 

<法科大学院に対する公的支援の更なる見直し>

 また、課題のある法科大学院の組織見直しを促進するため、平成22年9月に文部科学省から発表された「公的支援の見直しについて」は、平成24年度予算より6大学を対象として実施されることとなっている。
 現行の仕組みでは、法科大学院への入学者選抜における競争倍率と司法試験の合格率等の2つの観点を指標としているが、現在、競争倍率の確保を重視することなどにより、定員充足率が5割に満たない状態が継続している法科大学院が多く見られるなど、入学定員と実入学者数が大きく乖離する事態も生じている。その是正を図るという観点から、上記指標に加え、法科大学院の入学定員の充足状況を新たな指標として追加する方向で、文部科学省において速やかに検討し、公表・実施することが必要である。
 ただし、そのように新たに入学定員の充足状況を指標に追加するに当たっては、課題を抱える法科大学院において入学者の質の確保が軽視されることにならないよう指標の組み合わせなどに工夫が必要である。
 また、新しい指標の適用方法や更なる見直しの開始時期については、入学者選抜の実施等において現場に無用の混乱が生じないよう配慮することが必要である。

<組織改革の加速に向けた取組>

 具体的な改善方策としては、上記に示した課題を抱える法科大学院を中心とした入学定員の更なる適正化を進めるとともに、抜本的な組織見直しに向けた取組が促進されるようにすることが必要である。
 文部科学省においては、国公私立の法科大学院を対象に、各大学における改革の参考となるような、組織見直しに向けたモデル及びそのための推進方策を提示することにより、共同教育課程や連合大学院、統合等の自主的・自律的な取組が促進されるようにすることが必要である。
 なお、抜本的な組織見直しの検討を行う際には、当該地域における法曹養成の在り方についても留意した施策を併せて検討することが必要である。例えば、学部教育の充実、他の法科大学院との連携・協力関係の強化、地方自治体等との協力などが考えられる。

 

3.法学未修者教育の充実

○ 着実な取組を実施している法科大学院における法学未修者教育に関する優れた取組の共有化の促進
○ 共通的な到達目標モデルを踏まえたカリキュラム策定の促進、夜間開講や3年を超える教育課程を設定できる長期履修制度の活用の促進、入学前に法的知識・考え方などを学べるようにするための取組の促進
○ 入学者選抜、教育期間、教育手法、入学前の教材の開発など法学未修者教育の充実方策の多面的な検討
○ 法学未修者教育充実のための新たなワーキング・グループを設置し、改善方策について集中的に検討

 第三の取組としては、法学未修者教育の充実方策の実施である。

<法学未修者教育の充実方策の実施>

 現状において、制度全体として法学未修者の教育に課題があることは明らかである。一方で、法学未修者教育において着実な成果を上げている法科大学院も存在することから、こうした法科大学院における法学未修者教育についての優れた取組の共有化を図ることが必要である。
 また、各法科大学院が共通的な到達目標モデルを踏まえたカリキュラム策定を行うよう、引き続き促していくことが必要である。さらに、社会人等の多様な人材の法科大学院での学修を支援するため、夜間開講や3年を超える教育課程を設定することができる長期履修制度の活用を促進するとともに、法科大学院での学修の準備として入学前に法的知識・考え方の基礎などを学べるようにするための取組を促進することが適当である。
 このような法科大学院の取組を支援するためにも、入学者選抜において法学未修者の適性を適切に把握する機能の強化、法学未修者コースに入学する非法学部出身者の教育期間の在り方に関する研究、法学未修者に対する効果的な授業の進め方など教育手法の確立、入学前の法学未修者用の教材開発など、法学未修者教育の充実方策について多面的に検討する必要がある。
 このため、本特別委員会の下に新たなワーキング・グループを設置して集中的に検討する体制を構築することが必要である。

 

4.法科大学院教育の質の改善等の促進

(1)入学者選抜の改善
○ 適性試験の検証など入学者選抜の改善を実施
(2)プロセスとしての法曹養成の中核的機関として求められる教育課程の確立
○ 法科大学院は、専門的な法知識を確実に修得させるだけでなく、創造的な思考力、法的分析能力、法曹として必要な倫理観等が着実に涵養されるような充実した教育課程となるよう改善
(3)質の高い教育環境の確保 
○ 教員の資質能力向上の観点から、研究者教員と実務家教員が共同して行うなどのFD(ファカルティ・ディベロップメント)を促進
○ 研究者教員と実務家教員の役割分担を踏まえつつ、その分担する教科や配置割合などについて改めて検証し、必要に応じた措置を検討
○ 双方向的・多方向的な授業を有効に実施するために必要な適正なクラス規模など学生数の在り方について検討
(4)認証評価結果の主体的な活用を通じた改善
○ 今後2巡目の認証評価が本格化することから、評価基準・方法の改善を踏まえて行われた評価結果を活用して、各法科大学院が積極的な教育の改善に取り組むよう促進
(5)法曹の継続教育に対する法科大学院の積極的貢献
○ 現に実務に携わる法曹関係者が、先端的・現代的分野、国際関係、学際分野を法科大学院において学び直す機会の創出に向けた取組を促進

 第四の取組としては、プロセスとしての法曹養成を更に充実していく観点から、法科大学院教育の優れた点を伸ばしていくことが重要である。着実な取組を実施している法科大学院の成果を共有化することを含め、教育の質の改善等を更に促進する必要がある。

<入学者選抜の改善>

 適性試験については、既に本特別委員会としても、各法科大学院において適性試験の総受験者の下位から15%を入学最低基準点として設定することを促すなど改善方策を打ち出しているが、さらに、文部科学省においては、入学者の質の確保を一層強化する観点から、適性試験管理委員会と協力しながら、適性試験の結果と法科大学院入学後の学内成績や司法試験の成績との相関関係を含め、その内容等について検証し、必要に応じて改善に向けた取組を促すことが適当である。
 また、法科大学院への志願者数が減少する傾向にある中、法曹を志望する優秀な学部生や社会人等がより積極的に法科大学院に入学する環境を整えていくため、前述した法学未修者教育の充実と併せて、法学部教育との連携強化を推進するとともに、飛び入学や早期卒業など既存の仕組みの活用を検討することも考えられる。
 なお、入学者選抜については、現在、社会人や非法学部出身者を確保することが入学者の質の確保の観点から難しくなりつつあるとの指摘もあるが、多様な人材を確保するとの司法制度改革の理念を可能な限り実現するよう努めるべきであり、前記「3.」の法学未修者教育の充実方策とも併せて検討することが求められる。

<プロセス養成の中核的機関として求められる教育課程の確立>

 法科大学院における教育では、専門的な法知識を確実に習得させることはもとより、創造的な思考力、事実に即して具体的な法的問題を解決していくため必要な法的分析能力及び法的議論の能力等の育成、並びに法曹としての責任感や倫理観の涵養等、プロセス養成の中核的機関として求められる様々な役割を果たすことが不可欠である。
 このため、各法科大学院においては、共通的な到達目標モデルも踏まえつつ、法律基本科目、法律実務基礎科目、基礎法学・隣接科目、展開・先端科目のそれぞれについて一層充実した教育がバランス良く行われるよう、自らの教育課程を不断に見直し、その改善・充実に取り組むことが必要である。

<質の高い教育環境の確保>

 教員の資質能力の向上のためのFD(ファカルティ・ディベロップメント)については、特別委員会報告でも推進のための提言をおこなってきたところであるが、各法科大学院において理論と実務の架橋を強く意識した教育を実施していくため、研究者教員と実務家教員とが共同して行うFD活動を更に促進することとし、そのため、国内外からの外部講師の招聘や講習会等への参加、着実な教育成果をあげている法科大学院の授業見学など教員の資質能力を向上させる機会の確保等により積極的に取り組む必要がある。また、共通的な到達目標についても、FD活動に取り組むことを通じて教員間の意識を共有化する必要がある。
 質の高い教員を確保する観点から、文部科学省において、現在の法科大学院における研究者教員と実務家教員との役割分担を踏まえつつ、それぞれの教員が担当する教科の分担の仕方や教員の配置割合などについて改めて検証し、必要に応じた措置を検討することが必要である。
 一方、今後の法科大学院を支える教員を質・量ともに安定的に養成することが重要であり、法学研究者の養成を担う既存の修士課程・博士課程とも連携しながら、法科大学院の教員、更には法学部をはじめとした我が国の法学研究を支える人材を実効的に養成することが求められる。このため、各法科大学院においては、法科大学院生のうち大学教員として法学教育・研究に取り組むことを志望する者に対する適切な支援を行っていくことが必要である。
 また、昨今、入学者が一桁の人数に留まるなど極端に学生数が少ない法科大学院が見られるなど、同一学年における学生数も減少していることから、双方向的・多方向的な授業等を効果的かつ継続的に実施するとともに、異なる意見や見識を持った複数の学生が、互いに影響を与え合う学習環境を維持するという点で危惧が生じている。そのため、特に、双方向的・多方向的な授業を有効に実施するために必要なクラスの適正規模など法科大学院における学生数の在り方について検討が必要である。
 このほかにも、各法科大学院においては、国際関係の授業科目の開設や海外留学生の積極的な受入れとともに、海外留学を希望する学生へのサポートや海外での法曹資格の取得など、グローバル化に対応できる教育環境の一層整備に努めることが期待される。

<認証評価結果の主体的な活用を通じた改善>

 各法科大学院にとって2回目の認証評価が、見直しが行われた評価基準・方法に基づいて実施される中で、各認証評価機関においては、形式的な評価に留まることなく、教育の質についての実質的な評価を実施するよう努めるとともに、各認証評価機関の評価基準・方法については引き続き更なる改善に向けた検討を進めていくことが求められる。
 その際、各認証評価機関では、特に適格認定に当たって、その公平性・公正性が確保され、認証評価への信頼が得られるよう留意することが重要である。
 また、文部科学省においては、今後行われる認証評価の実施状況やその結果について報告を受け、情報収集・分析等を行うことを通じて、見直された認証評価の仕組みが適切に運用されているかどうかを把握し、必要に応じて更なる改善方策を検討することが必要である。さらに、各法科大学院においては、その評価結果をより積極的かつ主体的に法科大学院教育の改善に活用すべきである。

<法曹の継続教育に対する法科大学院の積極的貢献>

 現に実務に携わる法曹関係者に対して、先端的・現代的分野、国際関係、学際分野等を学び直す機会を提供することは、グローバル化や知識基盤社会が急速に進展する現代社会において充実した法的サービスを提供し続けていく上で重要であるとともに、法曹関係者の資質能力の一層の向上を図る観点からも望ましい。
 このため、各法科大学院においては、法曹関係者の要望を踏まえながら、最新の法学研究の成果に基づく専門的知識等を提供するための研修コース等を設けるとともに、実務の現場で生じる諸課題について法曹関係者が学ぶことができるような機会を設けることが求められる。特に、司法修習終了直後の法曹有資格者に対する支援についても積極的に取り組むことが重要である。

 

4 今後の政府における検討に期待すること

 司法制度改革の理念を達成していくため、法科大学院の在り方に密接に関連する課題として、下記に掲げる事項については、政府全体で早急に検討し、対応を講じていくことが期待される。
(1) 司法制度改革の理念を踏まえた検討
 今後の社会における法曹として活躍が期待される人材に求められる資質とは何か、また、そのために必要な法曹養成制度の在り方とは何かについて、司法制度改革の理念を踏まえた検討が必要
(2) 多様な人材の確保に向けての検討
 司法制度改革が目指してきた多様な人材の確保の観点から、法科大学院での教育に加えて、司法試験の在り方をどう改善していくかなど、総合的な検討が必要
(3) 好循環に転換するための継続的・総合的な検討
 これまでの施策として入学定員の削減を行い、実入学者数の減少を含めて見直しの取組が進められており、こうした取組の効果を損ねることにならぬよう、司法試験の受験回数制限や予備試験の取扱いなどについては法曹養成に関する制度全体の見直しの中で慎重な検討が必要

 以上、本特別委員会として、法科大学院教育の現状と課題、今後の改革の方向性、改善方策について提言するが、現在、政府全体としても、内閣官房、総務省、法務省、財務省、文部科学省、経済産業省からなる関係6大臣の申し合わせに基づき設置された「法曹の養成に関するフォーラム」において、法曹の養成に関する制度の在り方に関する検討が進められ、本年5月10日には、その論点整理が行われた。それに基づき、今後は、法曹有資格者の活動領域拡大の方策、これを踏まえた将来の法曹人口や法曹養成制度の在り方等について検討を深めていくことが予定されている。
 本特別委員会としては、その際、法科大学院教育の改善を含めて司法制度改革の理念を達成していくため、下記に掲げる事項について政府全体として早急に検討し、その対応策を講じていくことを期待したい。
 まず、第一に、司法制度改革の理念を踏まえた検討が行われることである。グローバル化が一層進展するとともに、地域における法曹ニーズの拡大や少子高齢化の進展など、社会情勢が変化している我が国において、今後、法曹として活動する人材に求められる資質とは何か、また、そのために必要な法曹養成制度とは何かについて、これまで進められてきた司法制度改革の理念を踏まえて検討することが必要である。
 第二に、多様な人材の確保に向けて検討を行うことである。具体的には、司法制度改革が目指しているところの多様な人材の確保の観点から、法学未修者教育の充実をはじめとした法科大学院での教育に加えて、司法試験の在り方も含めた総合的な検討が必要である。
 第三に、法曹養成制度が好循環に転換することを目指した継続的・総合的な検討を行うことである。そのため、法科大学院自体についての当面の方策として、入学定員の適正化や実入学者数の削減を含めた見直しを進めているところであるが、その一方で、司法試験の受験回数制限や予備試験の取扱いなどに変更が生じた場合にはこうした取組の効果を著しく損ねるおそれがあることから、これらについては、法曹養成に関する制度全体の見直しの中で、整合性がとれるよう慎重に検討することが必要である。
 本特別委員会としては、法曹養成制度全体を見据えた形で上記3点の検討が行われることを通じて、今後、法科大学院を中核とした法曹養成制度が好循環に転換し、司法制度改革の理念を着実に実現することを期待したい。

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)

-- 登録:平成24年07月 --