資料2 我が国の大学の競争力強化と国際展開に関する主な意見等
1.全般的事項
- 我が国が今後継続的に発展をしていくためにも、国内において人材養成の基盤をつくっていくということが大切である。
- これまでの大学院教育の振興について、いくつかの施策が行われてきたが、具体的な施策間の役割分担が明確でなく、どの施策がどの部分をカバーするかについての検討が足りなかった面があるのではないか。施策全体を体系的に整理することが重要である。
- ある一定割合を限った上で、外国に教育をアウトソーシングすれば、日本の大学院教育あるいは高等教育はよりよい状況になっていたとさえ考えられるのではないか。例えば、シンガポールはアウトソーシングの手法を利用し、一部の優秀な人材を外国で教育を受けさせた上で自国に呼び戻し、彼らが知識創造立国の担い手となっている。
- 日本の産業界は、国内の大学に比べ、海外の研究機関に約2.5倍の投資を行っている。そうした現状から、自国の大学をハイレベルに育てるという意識を各界の人々にも一層持ってもらう必要がある。
2.我が国の大学の競争力
- 10年程前に大学院重点化が始まり、大学院の規模は倍以上になったが、その間、大学院の質の低下が著しい。質を確保するためにも、大学院の評価をしっかりと行う必要があり、その評価は国際的な視点で行わなければいけない。また、質の保証には、その水準に対する指標のようなものが必要ではないか。
- 日本の大学の国際競争力については、欧米のトップクラスの大学と比較すると、大学全体として、それらに太刀打ちできるところは少ないが、分野あるいは研究室・専攻単位、個人単位では非常に優れた部分もある。
- 日本の大学の研究水準、特に理工系の研究水準は国際的に見て遜色ないレベルにあるにもかかわらず、大学教育が役に立っているかどうかのランキングでは非常に低いレベルにある。なぜこのようなギャップが生じるのか考えると、評価をしているビジネスマン自身が、特に人文・社会系で豊かな教育を受けた経験を持っていなかったからではないか。こうした状況を積極的に世間に流布させ、一度、財界の方々の考えを聞き、議論していく必要がある。
- 教育に対する評価と研究に対する評価でこれほど大きな差があるのは日本特有の現象ではないか。大学教育が空洞化していると言われて久しいが、今後は、大学教育の支援方策だけでなく教育者の意識改革が重要ではないか。今後は、社会資本である教育を学部レベルでどうしたらよいかについても、大学院の充実とともに考えていかなければならない。
- 大学の国際競争力には「教育力」「研究力」「マネジメント力」の3つの側面がある。「教育力」では、広く世界の学生を引きつけるようなカリキュラムを提供したり、世界を舞台に活躍できる人材を育成すること、「研究力」では国際的な研究機関あるいは海外の有力大学・企業との共同研究の実績や外部資金の獲得状況が重要である。また、今後は、社会とりわけ起業からどう評価されるかが、グローバルな形で問われる時代にあるのではないか。そして、教育・研究双方にとって、それらを運営する「マネジメント力」があるかどうかが重要ではないか。教育・研究を支援する運営体制の整備やそのための人材確保・養成が極めて重要ではないか。
- アジア太平洋地域の学生が留学する場合、アジア諸国よりもアメリカやアングロサクソン系諸国に留学する者が多い。日本の大学も、これらの国々の大学と競合するためには、英語による授業を行う必要があるのではないか。
- 台湾では国策として、英語で教育を行う小・中学校を設置したり、大学で英語で講義ができる者を採用することで、中国系のアメリカ人を呼び戻す政策をとっている。また,中国やシンガポールの大学では、宿舎を整備し安価で留学生に提供する一方で、正規の授業料を徴収している。こうすることで、各国は外貨を稼ごうとしており、日本も単純に英語の講義をすれば外国人を呼び込むことができる状況ではないのではないか。
- 現在、海外に留学するには非常に多額の必要経費がかかる。世界では、高等教育を輸出産業として捉える傾向があり、世界的な競争に打ち勝つためにも、留学の際の学費の問題について検討する必要があるのではないか。
3.21世紀COEプログラム
- 日本の大学院の研究レベルは高いが、教育のレベルが低く、そのため大学院教育を振興しなければならないと言われているが、そうだとすれば、21世紀COEプログラムのどこが教育に係る予算なのかを明確にする必要がある。人材養成のためのプロジェクトの一環として21世紀COEプログラムが存在するとすれば、それが人材養成のどの部分に位置付けられていて、どのように役に立っているのかを示す必要がある。
- 21世紀COEプログラムについても、大学院生の経済的援助という側面があり、これは重要である。21世紀COEプログラム以外にも、科学研究費補助金等による経済的援助の方法はあるが、制度上、援助できる額に制限がある。このため、21世紀COEプログラムに採択されているかどうかにより、学生に対する経済的援助に格差が生じてしまう。
- 昨年末の総合科学技術会議の答申にも言及されているように、ポスト21世紀COEプログラムについては、世間からの注目度も非常に高いと判断される。そこで、ポスト21世紀COEプログラムの基本的な考え方や内容の大枠については、文部科学省からの概算要求に向けて、大学分科会において議論を積み重ねる必要がある。
4.我が国の大学の国際展開
- 学部の国際化が改めて重要ではないか。長期的に見て、日本の大学の学部段階の質的向上は非常に大きな課題である。これまで、国際化というと、学生を確保するための飾りのようなものだとの考え方もあった。しかし、学部教育を様々な社会的視点から見る際に、外国の大学での経験、あるいは外国からの留学生に接することは非常に大きな要因となると思われる。学部段階での国際化について議論する際には、今までとは異なる広い視点で検討しなければならない。
- 我が国の大学の国際展開については、アジアを中心に展開するのが良いのではないか。その際、「アジアの中でも日本の大学は魅力があるので、日本の大学の学位を取得したい」という流れを作らなければならない。
- 過去10~15年間、各大学は国際化の流れの中で様々な事業を行ってきたが、実態が伴っている事業は少ないのではないか。目的が明確になっていない事業もあり、これらを一度見直す時期に来ているのではないか。実態が伴った真の国際協力をいくつも行うのは困難であり、学生交流等に内容を特化することも必要ではないか。
- アジアでは言語の障壁をどうするかについては、大きな問題である。アジア太平洋地域諸国は自国主義的な要素が強く、日本だけで改革を進めようとしてもうまくいかないだろう。言語の問題を全体としてどうするか検討しない限り、大学間交流はうまくいかないのではないか。また、国際的にみたカリキュラムの互換性や学費の問題についても検討しなければ、学生にとって身のある大学間交流にはならないのではないか。
5.その他