参考資料2 「我が国の高等教育の将来像(審議の概要)」に関する意見発表における主な指摘事項(平成16年11月4日 第42回大学分科会参考資料3【追加版】)

2.新時代の高等教育と社会

  • 「フンボルト的大学観」とされてきた理念には、他方で“教育と研究の結合”への高い評価が内包されており、一定の積極的な意味を有していた。(公立大学協会)
  • 「社会と高等教育」の関連変数を明確にしないと社会と高等教育との双方向の関係は見えてこない(矢野氏)
  • 高等教育機関とはどのような存在か一層明確にしてほしい。
    1. 21世紀の日本をつくり、支える人材を育成する
    2. 知を創造し、継承をする
    3. 社会と知的・人的交流をする「開かれた存在」である
       これらの役割を踏まえ高等教育機関は何をし、国はどう支援するかを明確にする必要がある。(日本経済団体連合会)
  • 社会が求める人材像とその育成に向けた教育のあり方を明示してほしい。
    1. どのような付加価値をつけるのか
    2. 初等中等教育との関係
        などを明確にすることが重要。(日本経済団体連合会)
  • 「21世紀型市民の育成」という文言は、いわゆる「新しい公共」を意識したものとうかがえる。ただ、総合的教養教育型の大学にのみ特化して言及している印象があるが、この資質は、どんな機能を持つ大学の教育において必要なものであり、そうした観点で整理して提言する方がよいのではないか。(永井氏)

3.我が国高等教育の中長期的展望‐ユニバーサル・アクセスの時代の高等教育の将来像‐

〔3‐1〕高等教育の将来像の基本的考え方

  • 「高等教育」の語が、大学のみを示す場合と、短期大学・高等専門学校・専門学校を含んで言う場合とが見られるので、用語の統一を図るとともに、各学校種別に応じた「教養教育」のあり方、「専門教育」のあり方を明確に提示すべき。(日本私立大学団体連合会)
  • 「審議の概要」においては、「高等教育」が2通りの意味で使われている。2通りの定義が混在しているため、「将来像」がわかりにくくなった感が強い。(清水氏)
  • 専門学校抜きで「高等教育」を論じるのは現実味に欠ける。大学・短大に高専・専門学校を加えた進学率は75%近い。「高等教育のユニバーサル・アクセス」とは、まず、この数字でとらえるべき。そのうえで、各学校種ごとの位置づけや役割を明確にし、大学を再定義し、求められる施策を探るという論理展開が望ましい。(清水氏)
  • これからの高等教育政策については、「多様性」「競争」「評価」を基本とした取り組みが重要。(日本経済団体連合会)
  • 社会の変化、方向性に即した高等教育のあるべき姿、ユニバーサル・アクセスに関する考え方など、高等教育(高校後の教育課程)の全体像と大学の役割を明確化して欲しい。(経済同友会)
  • e‐learningは専門学校では有効かもしれないが、「大学」にまで広げることには慎重であってほしい。(清水氏)
  • 通信制の学部については大学通信教育設置基準が別に定められているのに対し、通信制の大学院は大学院設置基準の一部改正によって対処し、通信制の専門職大学院も専門職大学院設置基準の中で対処しているところ。このため大学院の場合は通学制にならった教員配置がされているのに対し、学部はそうなっていないという制度的矛盾がある。(吉田氏)
  • 通学制と通信制をこれまで明確に区別してきたが、単位修得については、これらを明確に区別する意味が実質的にどれほどあるかという問題がある。(吉田氏)
  • アメリカにおいては、1.公立セクターを中心に遠隔教育が拡大していること、2.学部と大学院を比較した場合に学部のプログラムが約半数をしめていること、3.学位取得ができるプログラムの約半数がdegreeではなくcertificateのプログラムになっていること、4.領域としては職業領域に特化していること、5.配信の技術としては非同期のインターネットが主流になっていること、が挙げられる。(吉田氏)
  • 通信制の授業の方法について、「印刷教材等による授業」「放送授業」「面接授業」「メディアを利用して行う授業」という4つがありうると定められているが、各種の授業方法が一体この4つのどれに相当するのか、混乱をきたしている。例えば、CD‐ROM等のパッケージ型メディア、衛星系・地上系の通信回線を利用したテレビ会議システム、電子メールによるQ&Aを利用する場合など。また、教育の配信側が学習者の学習履歴を把握する視点はきわめて弱かった。それは学習時間等によって教育の質を保証する観点に立つ単位制についても、本人認証についても同様である。(吉田氏)

〔3‐2〕高等教育の発展とユニバーサル・アクセスの実現

  • ユニバーサル・アクセスは国や教育機関が努力して実現すべき目標として捉えるべき。(日本私立大学団体連合会)
  • 「誰もがいつでも自らの選択により学ぶことのできる高等教育の整備」を「ユニバーサル・アクセス」と定義する(11ページ)のは無理があり、再考すべきではないか。(公立大学協会)
  • 73%という「ユニバーサル・アクセス」の高等教育像を描くかどうかが、『将来像』のもっとも重要な鍵であり、シナリオの分岐点だと読めるがその構図は明確ではない。(矢野氏)
  • 新しい指標を提示しないと「将来像の提示」はできない。将来像を提示する一つの方法は、複数のシナリオを「指標」に基づいて描き、その中の一つを選択することである。(75%の高等教育像、50%の大学像、縮小均衡の大学像、などは考えられる重要なシナリオだし、大いに検討されてよい)(矢野氏)
  • 大学間の分化は、各大学の選択に基づくもので、重点の置き方による機能分化であるとした点(p.14、 p.16)は評価できるが、具体的な解決策を提示しないまま高等教育の将来を描こうとしていること、一般には理解しがたい言葉が使われていることは憂慮すべき点。(日本私立大学団体連合会)
  • 大学の機能として掲げられている7つは、分類基準の異なるものを混在させている。各大学はこれら「複数の機能を併有する」とされるが、機能を分類する基準自体が異なっているから、ここで挙げられた7つの機能の組み合わせに基づいて大学の「個性や特色」を導き出すことは妥当性を欠くのではないか。(公立大学協会)
  • 大学が全体として7つの機能を持ち、大学自らがそれらの機能を選択し、それらを強化して特色ある大学を創造することは賛成である。機能別分化は、大学が自主的に選び社会的・市場的に認められてはじめて国全体として見えてくるものであり、国として行政誘導する性格のものではないだろう。(大南氏)
  • 「緩やかに機能別分化していく」ことが研究機能と教育機能の分離につながることのないよう、細心の注意を払って制度設計をすべき。(公立大学協会)
  • ほとんどの大学は、3の幅広い職業人養成と4の総合的教養教育である。そのほとんどの大学が最も重要であり、これらの大学の教育の質を世界最高水準にするのが、日本システムの境界設定問題であろう。(矢野氏)
  • システムの「境界設定」を明示する上で欠かせないのは、学生数、教職員数、資金投入、施設投入といった「量とインプット」の変数である。「量の時代から質の時代へ」という言葉は適切だが、その転換を図るためには、「量とインプット」の条件整備(境界設定)がなければならない。(矢野氏)
  • (12ページのように)新たな政策を打ち出す場面では、「国立大学の法人化」のみが指摘され、公立大学の法人化について言及されていないが、国立大学法人化と同様に重要な取組みとして位置づけられるべきである。(公立大学協会)
  • 概要が示す「五つの方向性」ならびに、大学が担うべき七つの機能とそれらの比重の置き方に関する方向性(概要p14)についても、総論としては賛同する。ユニバーサル化についても、「超大衆化」ではなく「ユニバーサル・アクセス」と位置づけていることも当を得ていると考える。(永井氏)
  • 学生の行動についての分析、さらには、大学および企業の行動分析が十分に蓄積されていない。最近の学歴別労働市場の変化は著しく、経済の動向を分析しておかないと教育の方向性を見誤るのではないか。(矢野氏)
  • 大学の全体規模や大学資源の縮小均衡は結末として有り得ても、それを政策化することに国民は必ずしも支持しないのではないか。(大南氏)
  • 大学院、とくに博士課程の乱立も、日本の高等教育の不安要因だと思われる。6万7000人の非常勤講師が低賃金で私学の教育の多くを担っているという現実がある。(清水氏)
  • 21世紀型の大学開放は、「大学の人的、物的、知的な資源」を社会に開放、即ち、教育のみならず、研究の開放も行うことを意味する。「研究の開放」というと、大学の教員と産官との共同研究が考えられるが、市民への研究の開放(ライフワークの追究)もある。一般教養や職業教育のゼミ形式の講座、大学院や専攻科レベルでの高度専門教育講座の普及、産・官・民間団体との協働による研究開発等が考えられる。(香川委員)
  • 知識基盤社会の形成が国家目標であるならば、大学開放は大学にとって必須な事業活動と位置づけられる。必須とは、社会のニーズに応えるのが義務ということである。研究中心の大学であろうと、教育中心の大学であろうと、それぞれの特質とレベルでの大学開放が考えられる。(香川委員)
  • 包括的な大学開放(社会貢献)を考えると、公開講座という表現(学校教育法第62条)で大学開放を表現するのは適切でない。社会貢献は社会のニーズに合わせて、多様な形態で展開される。公開講座はその一つでしかない。(香川委員)
  • 社会人を受け入れる大学開放講座は、正規の大学教育や大学院教育へ進学していくための苗床でもある。現在は袋小路になっているが、進学を可能にする連携を進めていく必要がある。(香川委員)
  • 大学には組織的な成人教育の経験の蓄積がほとんどない。経験の交流の場、共同での講師養成と認証、プログラムの研究開発・評価、全国的な職業・経済団体と、大学開放センターを連携させるような機関・団体を育てていくことが必要。(香川委員)
  • 「企業が求める人材像についてのアンケートでは、
    1. 事務系人材:思考力の訓練を強く希望、大学教育への期待は多様
    2. 技術系人材:コアとなる専門知識の伝授、思考訓練や周辺領域の基礎教育
    3. 実社会とのかかわりを意識させる教育を希望
    4. 事務系人材の育成面で、企業の期待と大学の取り組みに齟齬
    などの結果が出ている。(日本経済団体連合会)
  • アンケートから明らかになった企業の新卒採用のあり方としては、
    ○新卒採用者の選考方法・基準で一番重視するのは「面接の結果」、○「出身校」の重要度は極めて低い、○「熱意・意欲」、「行動力・実行力」、「協調性」が重視される。また、80%以上の企業が、インターネットを通じての採用を導入し、採用時の出身校不問は32%(部分採用を含め)、インターンシップ制度の導入は52%となっている。(経済同友会)
  • 高等教育の制度設計としてのグランドデザインの側面に加えて、幼小中高のシステム設計としてのグランドデザインも必要だと考える。いわゆる高大連携の拡大や具体的なありようを含めて、もう少し踏み込んだ提言を望みたい。
    98年の大学新答申では、「課題探求能力の育成」を掲げ、初等中等教育の目指している課題発見・課題解決型学習の重視路線と、教育の内容において、少なくとも言葉の上ではつながったという印象で受け止められた。「21世紀型市民教育」も含め、学力観の一貫性についても言及する必要があるのではないか。(永井氏)

〔3‐3〕高等教育の質の保証

  • 評価の方法の効率化、教育研究水準の高度化に寄与する評価のあり方、などについてはさらに検討が必要であり、水準向上のための評価の進め方の方向性が示されるべき。(国立大学協会)
  • 教育の質を、いわゆるユニバーサル・スタンダードとの関連で明確化することが必要。(日本私立大学団体連合会)
  • 機関別認証評価を周到に育成・支援する必要性について更に強い留意をうながすべきである。(公立大学協会)
  • 分野別評価の育成については、機関別認証評価、専門職大学院評価の育成への十分な配慮を含む評価事業全体のバランスのとれた発展の中での実現を期してほしい。(公立大学協会)
  • 学習者保護のためには一定の事前関与が不可欠であり、「ディグリー・ミルからの防壁」として、設置認可制度の意義を改めて確認することが重要。(相澤委員)
  • 設置認可と事後の第三者評価それぞれの担う役割・機能は、元来異なるものであって、必ずしも代替可能ではない。その意味では、今後の望ましい質保証システムの在り方の表現としては、報告書中の「双方の適切なバランス」よりも、「相互の有効な役割・機能分担(協調)」の方が適当ではないか。(相澤委員)
  • 事前の設置認可や事後の評価の在り方について、より具体的な改善策あるいはそのための検討課題を提起してはどうか。例えば、今後の設置審査あるいは事後の評価における観点として改めて明確にし、必要に応じてルール化を図るべき事項としては、次のようなものがあると考える。
    < 明確化すべき観点、ルール化を図るべき事項の例>
    1. 学位を授与する機関として、教員組織中、博士号など相応の学位所有者を相当程度含むこと(※ 米国では授与する学位の上位の学位所有者が中心となることが一般的)
    2. 研究対象とする学問分野を明らかにし、当該分野の研究者教員を置くこと
    3. 「専任教員」については、一定の授業時間を担当するなど大学の教育研究や管理運営について相応の責任を負うこと
    4. 「実務家教員」を教授とするためには、当該実務に関する公的資格、顕彰など第三者の評価を経た顕著な実績が必要であること
    5. 自らの設置の趣旨・理念に即して教養教育の実施方針・内容を明示・公表すること(学士課程等) (相澤委員)
  • IT化など時代の変化に即して、図書館などの教育研究環境の具備すべき最低条件を改めて検討し、事前の設置審査あるいは事後の評価の指針を設けることの重要性についても本報告書で言及することが望ましい。(相澤委員)
  • 設置認可申請や自己点検・評価に当たって、各大学が、自らの重点的に担う機能と、その機能に関わる教育研究上の具体的な目標を明示することが重要であり、そうした目標を達成する可能性や実際の達成度について検証することが、事前・事後を通じた効率的な質保証システムの在り方として望ましい。(相澤委員)
  • 相応の時間をかけて、申請者との「対話」によって設置構想における問題点を是正し、その内容を充実させていく認可制度の仕組みは欠かせず、当面、届出制の範囲を拡大すること等については慎重に対処することが望まれる。(相澤委員)
  • 今般の私立学校法の改正により、学校法人の管理運営及び財務状況の審査である法人審査については、十全に実施することが必要である。さらに認可後の学校法人の経営状況を注視し、その上で経営安定のための指導・助言体制の整備を一層図る必要がある。(相澤委員)
  • 情報公開のより具体的な在り方として、インターネットによる情報公開の推進の必要性、さらに、公開すべき内容の例について盛りこむことを望みたい。インターネットにより公開すべき内容の例としては、自らの社会的使命・責任に関する宣言、約束とも言うべき設置認可申請書や学部・学科等の設置届出書、学則などの基本的な情報が挙げられる。「約束の遵守」こそが市場での選択や健全な競争を成り立たせるための基礎的条件でもあり、設置審査と事後の情報公開はそれを担保する仕組みとして不可分である。(相澤委員)
  • 「高等教育の質の保証」は、公的な制度やシステムによる以前に、「大学コミュニティ」による自律的・自主的な改善の努力やモラル、ピアレビューによって支えられるものである。これらの重要性は、大学の在り方が多様化し、社会に対して開かれたものとなっていく中にあっても変わるものでない旨、より強調してはどうか。(相澤委員)
  • 「専任教員」「実務家教員が大部分を占める大学」「教授・助教授・講師の差異」「研究環境に問題がある場合」「大学図書館などの保有図書の過小」をどう考えるか。(相澤委員)
  • 1991年の「大綱化」以来、大学設置は規制緩和をひた走ってきたが、一度立ち止まって過去の緩和策を検証するべき時だと思う。まして、事後評価の方法が確立していないのに、事前審査のハードルをさらに下げるべきではない。(清水氏)
  • 国としては設置認可の弾力化を続行されることが良策と考える。国による現行の設置認可(チャーターリング)と、国の認証を受けた第三者評価機関による定期的な事後チェックである「認証評価」(適格認定アクレディテーションの性格を持つ)との適切な協調を通して、大学等の継続的な質保証を行うことにより、新しい分野の大学等の参入や収容定員増を伴う改組転換を今後とも国として支援していくことが望ましい。(大南氏)
  • 例えば、私立大学の財政構造が学生納付金に大きく依存している以上、学生定員を満たさないあるいはそのおそれのある部局等の改組を進めるための一定程度の収容定員増は容認せざるを得ない。(大南氏)
  • 質保証の強調は、情報の非対称性の解消を含む学習者の保護、教育サービスの公共性の担保、国際的に通用する大学教育が求められていることから見て必要である。この点で国の関与は理解できるところであるが、指摘される「事前・事後の評価のバランス」が官の一元的な管理を意味するのではないことに特に留意が必要。(大南氏)
  • 新しい認証評価制度の今後の運用に当っては、国の関与は認証した評価機関を側面的に支援する上で最小限のことがらに止め、独立性を保った第三者による多元的な複数の質保証機関の成熟化を図ることが大切である。とりわけ学協会等による様々な専門分野別適格認定機関(専門分野別認証評価機関)の設立が望まれる。(大南氏)
  • 認証評価(適格認定アクレディテーション)では大学設置後における教授団の資質の開発(ファカルティー・ディベロップメントFD)に重点を置くことが適切である。(大南氏)
  • 設置認可と認証評価(適格認定アクレディテーション)に携わる審査者や評価者の人選は、大学団体あるいは大学人等の同僚評価者(ピアー・レビューアー)のみならず広く利害関係者の参画(設置認可では参考人によるペーパー・レフリー制の採用や、認証評価ではピアー・レビューアーを含む広く第三者評価)を通して、透明性を高める必要がある。(大南氏)
  • 経営状態を悪化させないための対策について、さらに詳細を説明することが必要。(日本私立大学団体連合会)
  • 客観的な第三者評価の活用、評価、実績と連動させた形での予算措置など、情報公開・第三者評価を強化し、「淘汰」の仕組み造りをすべきである。(経済同友会)
  • 株式会社では公開会社(上場している会社)は証券取引法等に基づき、学校法人より量質ともに高い水準の情報開示をしなければならないことになっている。学校法人においても教育・研究の状況と併せて経営状況の開示がもっと行われるべき。(和田氏)
  • 企業は中長期計画のビジョンを持ちながら事後評価をしっかり行い、より効率的な事業を行っていくという部分は優れており、こういう部分は見習うべき。(和田氏)
  • 第三者評価において、教育・研究だけではなく、それを支える経営主体の経営状況(財務及び管理運営)の評価手法も十分な検討が必要ではないか。(和田氏)
  • 会計基準は、経営効率性を含め経営状況がわかりやすく比較可能性の高いものにしていくべきではないか。(和田氏)
  • 私学法改正により監事の監査機能は強化されたが、株式会社も厳しい状況の中で監査の機能を高めており、監査機能の強化は学校運営においても重要な課題である。(和田氏)
  • 教育や福祉、医療など社会的規制の領域には、経済的規制と異なるアプローチ、例えば、規制は規制として残しておくべきもの、新たな規制の必要なものも、厳然として存在する。(永井氏)
  • 教育という営みは、営利活動と基本的になじまないものがある。概要では、構造改革特区における株式会社立大学に関して、「検証・評価を十分に時間をかけて慎重に行った上で、改めて検討する必要がある」と述べているが、一般化・普遍化は避けるべきだと考える。(永井氏)
  • 大学をめぐる規制緩和は、設置基準、設置認可を中心に多岐にわたっている。この10数年の緩和の流れを、一度立ち止まって検証し、当初想定し得なかった副作用や弊害などを洗い出し、自由化に伴う新たな政策が必要なものがあれば検討すべきだと考える。(永井氏)

〔3‐4〕高等教育機関の個性・特色の明確化と質の向上

  • 大学・短大・高専・専門学校という学校種別を、国がどのような基準で分別するのかを示し、わが国の教育体系を明示されるとともに、「大学とは何か」を示すことが必要。(日本私立大学団体連合会)
  • 教育の個性・特色、学校種ごとの位置づけや役割の明確化は重要。(全国専修学校各種学校総連合会)
  • 大学は横並びの姿勢を脱し、自らの歴史、伝統、社会のニーズ等に勘案して、「UI(ユニバーシティ・アイデンティティ)を再構築し、個性化・多様化による「選ばれる大学」づくりを促進すべき。
    ただし、大学の個性、機能分化を促進し、根付かせるものは、社会や市場からの評価であって、旧来的な「行政指導」であってはならない。(経済同友会)
  • 大学における教育は研究に裏づけされたものでなければならない。これは大学に共通して求められる理念であることを確認する必要がある。(公立大学協会)
  • 高等教育機関の概念とその中における大学の位置づけや専門学校等との関係、学校教育法第52条に表された大学の目的や基本的要件の在り方などについて、より一層審議が深められることを期待したい。(相澤委員)
  • 教育目的・内容が資格取得や技能の習得に特化している構想について、それを「大学」と位置づけ得るか。(相澤委員)
  • 専門学校や学部とのレベルの相違が不明確な構想について、それを「専門職大学院」と位置づけることができるか。(相澤委員)
  • 高水準の教育と研究の育成については必ずしも明確に述べられていない。とくに学士課程(学部)教育の実質的な高度化の方向性が示されるべき。(国立大学協会)
  • 短期大学に関わる法的位置付けの、今後における検討を期待する。(日本私立短期大学協会)
  • 「職業教育」を高等教育全体で推進するために
    大学は「理論的背景をもった分析的・批判的見地からの教育」
    専門学校は「社会的背景(実態・将来)を踏まえた必然的対応の教育」
    を行うという考え方が必要ではないか。(全国専修学校各種学校総連合会)
  • ◇ いまや一般社会も学部を専門教育機関だとは思っていない。法・経・文などの戦前型専門学部は実質的に崩壊している。4文字以上名称学部への改革は、専門学部から教養学部化への動きである。実質的に機能していない戦前型学部制を廃止し、学部編制をあらたにすべきと考えている。(竹内氏)
  • 戦前型専門学部制の改革は、高度専門職業人養成と銘打ってなされつつある大学院の拡充策を促進するためにも必要。(竹内氏)
  • アンダーグラデュエイト(学部)教育は教養教育でよいし、そうならなければならないと思う。教養大学といっても、文科系や理科系、総合系のようなコース分けは必要であろう。上位学年では、進路(就職、大学院進学)に応じて専門性の高い科目を受講できるような配慮も必要。戦前型専門学部を廃止し、年限3年の教養大学への改組を提案したい。(竹内氏)
  • 新しい時代のニーズにあった3年制の専門教育をする大学を残すべき。戦前の大学が(旧制)高校や予科だけでなく、専門学校出身者にも開かれていたように大学院には、教養教育、専門大学のどちらからでも進学できる道を開いておくことは言うまでもない。就業年限3年の教養大学と専門大学による学部改革が、大学院進学の構造的インセンティブになる。(竹内氏)
  • 平成16年度にいっせいに法人化した国立大学、設置自治体による差が大きい公立大学、経営上の問題に直面する大学の増加が懸念される私立大学、これら設置形態別のしっかりとした現状分析に基づき将来像を描くべき。(公立大学協会)
  • 国立大学法人・公立大学法人・学校法人は非営利法人、株式会社は営利法人であり、そもそも法人の本質が違うものが同じ「大学」を設置するということであれば、区分経理等のルールを明確にする必要がある。
    株式会社であれば「収益事業部分」と「学校部分」を明確に区分し、他の学校と同じように公開して評価を受けるというようなルールを明確にしないと混乱が生ずるだろう。(和田氏)
  • 設置審査基準の中で、経営主体の財政的基盤、つまり高等教育機関がその目標を達成するために将来にわたって必要な財政基盤を備えているかという点の審査基準をしっかり定めるべき。(和田氏)
  • 学校教育の性格上、一定の修業年限があり、教育の成果として卒業生を送り出し、その卒業生の活躍をもって社会の評価を受けるには相応の時間も必要となる。株式会社立大学の問題についても、構造改革特区制度の下で開学したばかりの事例の評価に相応の時間を要することは論を待たない。(相澤委員)

〔3‐5〕高等教育の発展を支える財政支援の在り方

  • 境界設定の最も重要、かつ有力な変数が、財政であり、教育費の負担問題である。財政論なき教育論は無力である。グランドデザインは、財政という筆で描かなければいけない。(矢野氏)
  • 「高等教育への公財政支出の抜本的拡充を図るとともに民間企業や個人等からの資金の積極的導入に努めることが必要である」と述べられているが迫力に乏しい。(大南氏)
  • 高等教育への国民経済全体としての投資をどのように拡大していくかについてさらに具体的な政策に論及すべき。(国立大学協会)
  • 「高等教育機関の多様な機能に応じたきめ細やかなファンディング・システム」、「基盤的経費助成と競争的資源配分の有効な組み合わせ」の必要をのべている点は評価される。しかし、この点についてさらに具体的な検討の方向への論及が必要。(国立大学協会)
  • 国公私の緩やかな役割分担(方向性5)が何を意図しているのかについて、詳述が必要。(日本私立大学団体連合会)
  • 私学の「基盤的経費の確保」(p.30)をいかに実現するかについて、具体的な方向性あるいは施策を提示すべき。(日本私立大学団体連合会)
  • 私学から常に提起しているイコール・フッティングへの要望をさらに吟味していただきたい。(私立大学団体連合会)
  • 「2.公立大学は地域における知の拠点として、社会・経済・文化の発展に欠かすことのできない存在であり、今後とも地方交付税において適切に措置される必要がある。」を追加すべき。(公立大学協会)
  • 短期大学に対して、より一層充実した国の助成が必要であると考える。(日本私立短期大学協会)
  • 人材育成を通じた経済社会への貢献度を踏まえた公的支援は当然ではないか。(全国専修学校各種学校総連合会)
  • 9割以上が私立学校である専門学校への配慮も必要。(全国専修学校各種学校総連合会)
  • 国公費の支援は大学等の公共性を担保するに足る学生の学習保障や教職員の生活保障を含む基盤的支援経費、施設整備費補助金、競争的・重点的支援経費の最小必要額を確保し、基本的には各大学が大学改革によって財政自立を図るのが筋道である。各大学の競争力を備えるための必要最小限の基盤的支援経費と施設整備費補助金の確保が不可欠である。(大南氏)
  • 現代高等教育の投資論(誰が誰に如何なる目標達成に向けてまた期待をもって投資するのか、私学助成の制度改革、大学等への税制改革や教育投資SRIに向けた情報公開などを含む総合施策)を納税者を含めて社会的に合意形成を図るための道筋(ロードマップ)を準備することが必要。(大南氏)

〔3‐6〕高等教育の発展を支える各方面の取組

  • 人材養成に関する大学と実社会(企業等)との対話・協議の場が必要。大学教育と企業側の採用・処遇の間のミスギャップ、若年層の職業意識の変化、社会の生涯学習意欲の高まり、国際的に活躍する人材育成の中で共通理解が必要。個別には大学と産業界との教育プログラムに関する協議の場の設定が望まれる。(大南氏)
  • 大学に対しては、出口管理の徹底など教育カリキュラムの改善・充実を要請する一方で、企業側でも、卒業学年に達しない学生に対し、面接など実質的な選考活動を行うことは厳に慎む。日本経団連では既に「2004年度・新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章」を守るよう会員企業に呼びかけているが、これが、実効性を持つよう、今後とも採用活動のあり方について検討を重ねていく。(日本経済団体連合会)
  • 採用にあたっては、多様性な人材を広く受け入れるために、採用方法をオープン化するとともに、大学名不問の採用を実施する。また、産業界の期待する人材像を学生や大学関係者に明示する。(日本経済団体連合会)
  • 高等教育に関する国の役割は最低限にとどめ、現場(大学等)と学習者の努力・自己責任を改革の基本にできる限り現場の自助努力を促すべきである。(経済同友会)

4.新しい高等教育システムに向けて‐ユニバーサル・アクセスの実現に向けた施策の方向性‐

  • 学校種ごとの教育機能の定義は「中期的な施策の方向性(ロードマップ)」の原則論であろう。(全国専修学校各種学校総連合会)
  • マネジメント機能の向上については、教学と経営の抑制均衡(Check and Balance)あるいは分担統治(Shared Governance)といった大学の歴史的文化的側面を充分配慮されることを望みたい。(大南氏)
  • 教授会の位置づけについて再定義の必要があると考える。本来は経営マターのものから、執行部や事務当局に委ねれば済むものまで、教授会に決定権があるとの「誤解」が通用している面があるのではないか。教授会の自律性・主体性を損なわない範囲内で制度改善が急がれる。(永井氏)
  • 「将来像」と「施策の方向性」とは不可分のものである以上、拙速とならぬよう最終答申までに十分な公表とパブリックコメントを求める配慮が必要。(公立大学協会)

その他

  • 文章中の「国立・私立」という文言は、国公私立を問わずと変更するのが適切である。(公立大学協会)

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

-- 登録:平成21年以前 --