資料2 我が国の高等教育の将来像(審議の概要)に対する意見

平成16年10月14日
日本私立大学団体連合会

はじめに

 大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について ―競争的環境の中で個性が輝く大学― 」(平成10年)との関連を意識され、同答申の趣旨を現代的に改案して高等教育像を描かれようとしていると思われる。同答申では、各大学が、研究型、教育型などに固定的な分化を遂げることを個性化としていたが、本概要においては、大学の多岐にわたる機能の保持を所与のものとし、大学間の分化は、各大学の選択に基づくもので、重点の置き方による機能分化であるとした点(p.14、p.16)を評価したい。
 しかし、具体的な解決策を提示しないまま高等教育の将来を描こうとしていること、一般には理解しがたい言葉が使われていることは憂慮すべき点であり、このままでは国民の理解が得られないものと考える。
 以上の認識の下、3つの視点から各論的に意見を述べる。

1.高等教育の将来像を描き出したものと理解できるが、近未来の姿が曖昧に映るので、例えば、次の言葉の意味・内容をさらに明確に示す必要がある。

  • 1)「知識基盤社会」(p.4~p.5等)
     「知識基盤社会」における人材養成について、国としてどのような人材を養成しようとするのか、またその社会では、具体的にどのような知識が必要とされているのか曖昧である。
  • 2)「21世紀型市民」(p.5)
     「幅広い教養を身に付け、時代の変化に合わせて積極的に社会を支え、あるいは社会を改善していく資質を有する人材」としているが、一般的すぎる。
  • 3)「ユニバーサル・アクセス」(p.11~p.12)
    1. 初等・中等教育のあり方を考え、これと高等教育の接続を視野に入れつつ、国の教育施策を全般的に再考すべきであると考える。
    2. 18歳人口の減少に伴うユニバーサル・アクセスは、「社会人、留学生、パートタイム学生等の増大」(p.10)に直接結びつくものではない。これを自然的推移による所与の要件とするのではなく、国や教育機関が努力して実現すべき目標として捉える姿勢が必要である。

2.「『高等教育計画の策定と各種規制』の時代から『将来像の提示と政策誘導』の時代への移行」(p.7)を標榜されているが、その将来像や政策誘導の内容をもっと明確にするために、少なくとも次の事項について詳しい説明を示す必要がある。

  • 1)専門学校卒業生を大学院に入学させてもよいという議論にまで進んでいるが(p.28)、大学・短大・高専・専門学校という学校種別を、国がどのような基準で分別するのかを示し、わが国の教育体系を明示されるとともに、「大学とは何か」を示すこと。さらに、e-Learningは、知識の伝達には便利であるが、それに頼りすぎると教育上最重要な人間性、社会性の涵養が欠落する危惧があり、その危険を払拭する表現にすること。
  • 2)「高等教育」の語が、大学のみを示す場合と、短期大学・高等専門学校・専門学校を含んで言う場合とが見られるので、用語の統一を図るとともに、各学校種別に応じた「教養教育」のあり方、「専門教育」のあり方を明確に提示すること(多くの混迷がこれによって生じている)。
  • 3)p.16~p.19では、高等教育の質の保証が論じられているが、事前評価の必要性について、p.17の(ア)と(イ)の関係から明らかにすること。
  • 4)事前評価と事後評価のあり方について、国際的な競争環境を意識されているのだから、教育の質を、いわゆるユニバーサル・スタンダードとの関連で明確化すること。
  • 5)国公私の緩やかな役割分担(p.30:方向性5)が何を意図しているのかについて、詳述すること。
  • 6)大都市部の抑制規制が撤廃され、地域間格差を助長することは明白である。このことは経営状態の悪化した高等教育機関への対応(p.19)に直接関連する問題であるため、経営状態を悪化させないための対策について、さらに詳細を説明する必要があること。また、世界最高水準の高等教育の拠点形成を考えるとき、あわせて地域配置も考える必要があることから、このことについても詳述すること。

3.随所に散見する「国立優遇」、「国立中心」という発想や枠組みをさらに乗り越え、高等教育の将来像の中に私学のあるべき位置や役割をもっと積極的に示す必要がある。

  • 1)私学が全国の高等教育の約4分の3を担ってきていることを明言された(p.29)ことの意義は大きいが、活力溢れた多様な人間の育成と新しい多様な価値の創造に取り組む私立大学に対する評価と期待を是非明言していただきたい。
  • 2)国立大学に対する国庫補助のスタンスは明瞭だが、私学の扱いに関する具体的な言及がない。私学の「基盤的経費の確保」(p.30)をいかに実現するかについて、具体的な方向性あるいは施策を提示されたい。
  • 3)私学から常に提起しているイコール・フッティングへの要望をさらに吟味していただきたい。平等な競争環境と条件を整備しなければ、少なからずの私学の衰退を招き、国益を損なうこととなる。

以上

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

-- 登録:平成21年以前 --