視点5 人材養成の観点からの大学院の機能

今後、求められる人材と大学院教育

  • 今後の高等教育においては、学部段階の教育(学士課程)から一貫して課題探求能力の育成を重視した教育が重要であるとともに、大学院教育においては、どのような人材養成であれ、専攻分野に関する高度の専門的知識の修得に加え、国際的な場で活躍できる語学力はもとより、学修課題を複数の科目等を通して体系的に履修させるコースワークにより、関連する分野の基礎的素養の涵養を図り、学際的な分野への対応能力を含めた専門的知識を活用・応用する能力(専門応用能力)を磨いていく教育が重要である。
     なお、求められる人材を検討し、それを踏まえた教育課程を構築するに当たっては、大学院教育の国際的通用性の確保に留意することが重要である。
  • また、求められる人材は、社会における職業分野、学問専攻によっても異なり、上述に加えて、大学院に求められる人材養成機能ごとに、必要な教育を検討することも必要である。

創造性豊かな優れた研究・開発能力を持つ研究者等/確かな教育能力と研究能力を兼ね備えた大学教員の養成に必要な教育

  • 産学官を通じたあらゆる研究・教育機関を担う研究者/大学教員等を養成する観点から、体系的な教育課程において、例えば、
    • 海外、企業での研究経験など、多様な研究活動の場を通じて研鑽を積ませる教育
    • 学生同士が切磋琢磨する環境の中で、自ら研究課題を設定し研究活動を実施させるなどの学生の創造力、自立力などを磨かせる教育
    • 高度な研究開発プロジェクトの企画・管理等のマネジメントを行える人材を養成するために、学生に一定の責任と権限を与え、プロジェクトのマネジメント能力を高める教育
    • 加えて、大学教員を目指す学生に対しては、学生に対する教育方法のあり方を学ばせる教育
    などが重要である。

高度な専門的知識・能力を持つ高度専門職業人の養成に必要な教育

  • 社会の各分野において国際的に通用する高度で専門的な知識・能力が必要とされる人材を養成する観点から、体系的な教育課程において、例えば、
    • 「理論と実務の架橋」を目指すため、産業・経済社会等の各分野で世界の最前線に立つ実務家教員の積極的登用などにより、国際的に活躍できる水準の高度で実践的・継続的な教育
    • 長期間の単位認定を前提としたインターンシップにより、学問と実践を組合せた教育
    • 特定の職業的専門領域における職業的倫理を涵養する教育
    • 高度な専門職業人として求められる表現能力、交渉能力を磨かせる教育
    などが重要である。

知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材層の確保に必要な教育

  • 多様に発展する社会の様々な分野で活躍する高度で知的な素養のある人材層を確保する観点から、まず各大学院において教育目標など課程の目的・役割を明確化した上で、体系的な教育課程において、例えば、
    • グローバル化や科学技術の進展など社会の激しい変化に対応し得る統合された知の基盤を与える教育を基本とし、課題に対する柔軟な思考能力と深い洞察に基づく主体的な行動力を兼ね備えるための高度な素養を涵養する教育 
    • 1学生の知的好奇心などに応えた特色ある多様かつ豊富な教育プログラムにより幅広い視点を培う教育、又は、2論文作成を基本とした教育のほかに、養成すべき人材を念頭に関連する分野の知識・能力を修得する教育など、学修課題を複数の科目等を通して体系的に履修させるコースワークを重視した教育
    などが重要である。
  • 社会における職業分野、学問専攻によって求める人材は多様であるため、各大学院においては、大学院の多様な発展が図られる中で、大学の自主的・自律的な検討に基づき、養成する人材を出来るだけ具体的に描き、それを踏まえた教育課程の体系化を図っていく必要がある(人材養成機能の観点からの機能の多様化、分化)。

今後重点を置くべき課題と検討事項

  • 各大学院は、養成しようとする人材の明確化とそれを踏まえた教員の大学院教育に対する意識改革により、魅力ある大学院教育を行うための組織的な取組(FD)を実施していくことが必要である。
  • 国は、それを踏まえた魅力ある大学院教育の組織的展開(実質化)への重点支援とそれらの事例を広く社会に情報提供し、大学院教育の改善に供する取組(GP:Good Practice)が重要である。また、国は、これら魅力ある大学院教育を行っている教員を各大学が積極的に評価していく仕組みが発展していくよう、さらに具体化していくことが必要である。

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

-- 登録:平成21年以前 --