資料3‐4 株式会社等による学校経営への参入について(検討メモ)

1.学校の設置者について

 現在、学校の設置者については、教育基本法及び学校教育法の規定により原則として、国、地方公共団体、学校法人に限られている。

教育基本法(昭和22年法律第25号)

  • 第六条(学校教育) 法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。

学校教育法(昭和22年法律第26号)

  • 第二条 学校は、国、地方公共団体及び私立学校法第三条に規定する学校法人(以下学校法人と称する。)のみが、これを設置することができる。

2.特区における対応の状況

 構造改革特別区域法の一部改正(平成15年6月6日公布、10月1日施行)により、特区の認定を受けた地方公共団体においては、株式会社又はNPO法人についても学校の設置が可能となった。
 現在3自治体が特区認定を受け、3校が学校の設立認可申請中。

3.学校教育の主な特質

  • 学校教育制度は国民の教育を受ける権利を制度的に保証するためのもの。このため、一定水準以上の教育が平等にかつ安定的・継続的に供給されることが必要。
  • 学校教育は、個人としての自己実現、能力の伸長という面と、国家・社会の形成者として必要な資質・能力を養うという2つの面を有している。このため、すべてを個人の自由な選択に委ねることはできず、一定の教育内容は共通に身につけさせることが必要。
  • 学校教育(特に初等中等教育)は通常発達段階に応じて一定の時期に行われるものであり、また、その効果はすぐに判明するものではない。このため、簡単にやり直せるものではない。

4.株式会社等の参入に係る課題

 株式会社やNPO法人の制度上の特性により、次のような問題点が懸念される。

  1. 学校教育から撤退する可能性が高く、学校経営の継続の保証がない。
  2. 学校教育以外の事業の影響により、学校教育に対する支出削減や事業規模縮小の可能性が高い。
  3. 学校の経営方針や教育内容が容易に変更されるなど、安定的な教育が行われないおそれ。
  4. 生徒指導や特別の指導が必要な児童生徒への対応など手間がかかり収益のあがりにくい分野の教育活動の軽視(収益性の高い教育活動への特化)。

株式会社

  • 株式会社の設立・解散には所轄庁の認可が不要。
  • 解散時の残余財産は株主に返還可能(学校法人は他の学校法人や国に帰属)。
  • 学校教育以外の事業の実施が自由(認可が不要であり、会計区分も不要)。
  • 学校教育から撤退しても法人は存続(学校教育の実施は直接の目的ではない)。
  • 学校の経営方針や提供する教育内容は、経営の状況や株主の意向により決定。
  • 学校法人における評議員会制度のような、学校運営の公共性を高めるための機関が設けられていない。
  • 利益追求及び利益の私的分配(株式配当)が中心となり、収益が教育に再投資される保証がない。

NPO法人

  • 設立の要件が簡易であり、設立が容易である反面、組織としての体制や資産の面で不安。
  • 自主的な解散は届出で可能(学校法人は認可が必要)。
  • 学校教育以外の事業の実施が自由。
  • 学校教育から撤退しても法人は存続(学校教育の実施は直接の目的ではない)。
  • 学校法人における評議員会制度のような、学校運営の公共性を高めるための機関が設けられていない。

5.参入容認の立場の意見

  • 教育の質や公益性の確保には、サービス供給主体の「経営形態」について制限を設ける必要はなく、情報公開や第三者評価等の事後チェックのための仕組みを整えることにより対応が可能。「学校法人」に限定しなければならない理由が不明。
  • 継続性・安定性より質が重要。消費者から選ばれない質の低い学校はすぐに市場から撤退すべきで、いつまでも存続していることの方が問題。学校の倒産に備えたセーフティネットを整備することにより消費者を保護すべき。
  • 現在の公教育では現実に対応できていない分野がある一方、そのような分野を担っているNPO法人や株式会社が存在している。
  • 現在の学校は公益性が優先され営利追求が認められないため、市場を通じた競争が行われず、経営努力が行われない。一方、私学助成や税制上の優遇措置を受けない株式会社は、学生を集めなければ倒産するため、市場のニーズに応じたより質の高い教育サービスが提供されることになる。
  • 現在の学校は資金調達の多くを国に依存するため、国の規制と相まって、教育サービスの内容が画一化、大規模な展開も困難。株式会社は資金調達が容易であり特定の専門分野に集中して大規模な展開が可能。
  • 株式会社は投資家による市場評価を受けることにより、効率的な経営が求められコストが削減される。

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