1.審議会や経済界等における人材養成に係る主な意見

審議会等の提言

平成15年8月 IT戦略本部「e-Japan重点計画-2003」

我が国の国際競争力を向上させるため、IT分野の高度で専門的な知識を持った人材を早急に育成・確保すると共に、社会の急速なIT化に伴う新たな課題にも対応しつつ、全ての人々がITを一層主体的・積極的に活用できる環境を醸成する必要がある。

平成15年7月 知的財産戦略本部「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」

 「知的財産立国」の実現には、知的財産創造の担い手を育成することに加え、その権利化や紛争処理、知的財産ライセンス契約等の高度な専門サービスを提供する専門家の増員及び養成が急務である。
(略)知的財産に強く国際競争力のある、弁護士・弁理士を始めとした専門人材の充実を進める。また、高度な知的 財産専門人材を輩出すべく、質・量ともに充実した知的財産教育を推進するとともに、法律・技術・経営など各領域の知識に通暁した「融合系人材」の養成を推進する。さらに、知的財産教育を推進するために、知的財産実務に精通 した学者・研究者を大量に養成することを目指す。

平成15年7月 総合科学技術会議「ナノテクノロジー・材料分野の産業発掘の推進について」

 ナノテクノロジー・材料分野の基盤となるナノ加工・計測の分野の人材としては、複合的な技術分野に通じたリーダー・若手研究者、国際的に通用する人材、装置の研究開発や運用における支援技術者・高度専門技能者の育成等が必要である。

平成15年4月 総合科学技術会議「地球温暖化対策技術研究開発の推進について」

 温暖化対策技術は、短期的な取組みのみならず中長期的な研究開発も重要である。この分野での技術基盤を維持し、さらに具体的課題を推進していくためには、今後とも研究開発に従事する人材の育成確保を図ることがきわめて重要である。
温暖化対策技術は環境・エネルギー問題への対応としての幅広い考えかたが必要であり、さらに個々の要素技術やシステム工学など種々の専門分野の知識・経験が重要である。これら関連する専門分野を学ぶ学生に対しては、環境・エネルギーに関する総合的な視点からの教育が必要である。
環境問題への取組を経済成長と調和のとれたものとしていくためには、人文社会学的側面を含む環境学を工学教育の中に取り組んでいくことが不可欠となっている。
また、住民合意形成に係る社会学的側面を重視し、教育に取り組んでいくことも必要である。

平成14年12月 BT戦略会議「バイオテクノロジー戦略大綱」

 BTに係る人材供給を質・量とも抜本的に充実させるため、大学院、大学におけるBT関連分野の人材養成機能を大幅に強化する必要がある。例えば、生物学・薬学分野の卒業者数を米国のBiological scienceの学士数と同程度の水準とするためには、近年の学位取得者数の伸び(生物学では昭和55年(1980年)から平成10年(1998年)の間で学士2.3倍、博士で2.4倍)を加速させ、現状の3倍とすることが必要となる。

平成13年6月 司法制度改革審議会「司法制度改革審議会意見書」

 当審議会としては、法曹人口については、計画的にできるだけ早期に、年間3,000人程度の新規法曹の確保を目指す必要があると考える。具体的には、平成14(2002)年の司法試験合格者数を1,200人程度とするなど、現行司法試験合格者数の増加に直ちに着手することとし、平成16(2004)年には合格者数1,500人を達成することを目指すべきである。(略)このような法曹人口増加の経過を辿るとすれば、おおむね平成30(2018)年ころまでには、実働法曹人口は5万人規模(法曹1人当たりの国民の数は約2,400人)に達することが見込まれる。

経済界からの提言

『若者が自立できる日本へ』~企業そして学校・家庭・地域に何ができるのか~(経済同友会2003.4)

  • 社会人としての力とは、基礎的な学力、自分の考えを伝え、他者の考えを理解する力、他者を尊重し、円満な関係を築きながら共に行動する力、自分自身をコントロールしたり、動機付けする力、必要なときに自ら学ぶ力、そして悪いことを悪いと思う心などである。これを基盤に、就業観や職業に関する知識を身に付け、自分の強みや個性を認識することで、それぞれの人生における目標を見出すことができるのである。そうした「自立した個人」を若いうちに育成することが重要である。
  • 大学では、まず基盤となる教養教育(哲学、歴史、文学、芸術、科学など)を重視する。その上で専門教育・実践教育を大学院も含めて充実させる。
    大学は大衆化の時代を迎え、自由競争のもと、それぞれの特色を明確にした多様な教育を提供していく必要があるが、専門性の追求とともに、哲学的なものの考え方や人間観を深めるため、教養教育を必修とし、徹底して学べるようにすべきである。

産業力強化の課題と展望―2010年におけるわが国産業社会―(日本経済団体連合会2003.4)

産業技術人材の育成促進

  • 大学については、学部教育の充実を図るとともに、特に工学系大学院におけるより実践的な教育体制の構築、産業の実態に即した学科の設置などを強化すべきである。また、米国に倣って、社会人などを対象としたMOT(Management of Technology)コースを普及させることも必要である。

開業・創業の促進

  • 今後、大学をプラットフォームとして活用した産学官の連携や起業家支援、起業家や高度専門人材の育成強化、大学と密に連携するインキュベーターやテクノロジーパークの整備などにより、クラスター形成を加速することが必要となる。

人材育成システムの強化

  • 高い能力・スキルを有する高度専門人材へのニーズが高まっているにもかかわらず、雇用の流動化が進むにつれて、企業・個人の人的投資はむしろ減少する惧れも指摘されている。
  • 経営や事業再生、ベンチャーなど、わが国の競争力強化、経済活性化の核となる高度専門人材の育成のため、スキル標準の策定やカリキュラム・教材開発などのインフラ整備に集中的に取り組むべきである。また、このプログラムを実践する場として、大学の独立行政法人化と第三者評価体制の整備、専門職大学院の設置促進などを通じた高等教育機関の充実を図る。

大学と人材育成システムの改革を目指して(関西経済同友会 人材育成委員会2001.4)

  • 21世紀に求められる人材は、グローバル化や急速な科学・技術の高度化に対応でき、国際競争を勝ち抜いていく人材である。
  • かつての勤勉性・協調性だけを備えた人材ではなく、政府や企業への依存心から脱却して、競争社会を勝ち抜く自律性と気概を備えた人材が必要である。
  • 加速する技術革新に柔軟に対応して新たな付加価値を創出するだけでなく、日本の次代のリーディングカンパニーひいては産業を築いていくだけの、高い専門性と独創性を備えた人材が求められる。

グローバル化時代の人材育成について(経済団体連合会2000.3)

  • 国民の平均的な基礎知識が高いことが我が国の強みであったが、これからはあらゆる人材について主体性、プロ意識、知力等の新しい能力も求められる。
  • 指導的立場の人材については、哲学を含む幅広い教養を前提とした、以下のような人材が求められている。
    • 将来ビジョンを示すことのできる人材
    • 様々な意見をまとめて人材を糾合し、物事を確実に成し遂げる人材など
  • 大学は、経済社会の変化に迅速に対応し、国際的に活躍できる人材を育成するため、実社会とのつながりを重視し、開発者の先行者利益の獲得を確実にすることで技術革新にインセンティブを与える知的財産権をはじめ、起業家教育、情報化教育など実践的教育の充実を図るべきである。

志ある人々の集う国-志を育て、尊重し、達成できる新しい日本を目指して-(経済同友会1999.6)

  • これからの新しい日本は社会の様々な分野で性別・年齢・人種・国籍を問わず、志ある個人が生き生きと活躍することから生じるエネルギーによって大きく支えられる。
  • グローバルなコミュニケーションツールとしての英語のレベルを向上する。また、高等教育では英語に加え、さらに他の外国語を本格的に習得できるゆとりと自信を確保する。
  • 国際的に通用する、プロフェッショナルなビジネスマン養成のための教育機関としての大学院を充実する。

<参考>科学技術基本計画(概要)(平成13年3月)

国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化

 以下の4分野に対して、特に重点を置き、優先的に研究資源を配分:

  1. ライフサイエンス分野:疾病の予防・治療や食糧問題の解決に寄与
  2. 情報通信分野:高度情報通信社会の構築と情報・ハイテク産業の拡大に直結
  3. 環境分野:人の健康、生活環境の保全、人類の生存基盤の維持に不可欠
  4. ナノテクノロジー・材料分野:広範な分野に大きな波及効果を及ぼす基盤

 以上の4分野に加え、エネルギー、製造技術、社会基盤、フロンティアの4分野においても、国の存立にとって基盤的で、国として取り組むことが不可欠な領域を重視して推進。

急速に発展しうる領域への対応

  • 近年、異分野の融合や新たな科学技術の発展により、新領域が出現することが多い。したがって、小規模ながらも将来著しい成長が予想される領域が先駆的に出現した場合は、機動性を持って的確に対応。
    最近の例:ナノテクノロジー、バイオインフォマティックス、システム生物学、ナノバイオテクノロジー

<参考2>科学技術・学術審議会人材委員会での主な意見(人材需給関係)

今後の研究者のマクロな視点からの需要と供給について

  • 需給問題の解決のためには、システムをフレキシブルにすることが必要である。30歳・35歳くらいで他の職業、分野への異動がしやすいようなシステムをつくることが重要である。また、大学、大学院における転部・転科などもフレキシブルに行えることが重要である。
  • インフォマティクスやナノテクとバイオなどとの融合分野については、専門家が今後必要であり、量的にも不足すると考えられるので、検討が必要である。

研究者の専門性、能力をめぐる需要と供給について

  • (ミスマッチが生じたのは)供給側も需要側も短期的な視点で人を求めてきたためではないか。

人材養成側について

  • 社会のニーズの変化を長期的に予測して時間をかけて人材を養成するというのは難しいので、大学、大学院などの供給側の体制をフレキシブルにしていく必要がある。
  • ミスマッチに関しては、大学の各学部の間で定員を動かそうとしないことが大きな問題である。必要な分野の人材を育成するため、国として政策的な対応を打ち出すことが必要である。
  • ミスマッチに関しては、大学設置基準の大綱化などで、学生が自分の特性を考える前から、専門に分化した教育が行われるようになったことが問題。
  • 大学は産業界の要請する人材を教育するというのではなく、基礎学力を養うことを考えるべき。新しい分野は他の分野から流動してきた人材が補ってきたのだから、どうしたら柔軟な人が養成できるか、流動化が進められるかを考えるべき。

需要側について

  • 企業等でナノテク、バイオなど特定の分野やシステムエンジニアなど特定の職種の研究者・技術者を一時期に大量採用したようなことが、今後も本当に通用するのか、それで人材が育つのかなどを考える必要がある。
  • アメリカでは、情報やバイオなど今盛んになっている分野について、産業界が随分前から興す意図をもち、人材が育てられてきた。日本の産業界にも、将来延ばす分野をリードするような姿勢が求められるのではないか。
  • 需給については、今後環境も変わってくるし、国や産業の研究内容も変化していくため、国や総合科学技術会議などで将来の重点分野が示されても、その通り研究が実際に行われるかは疑問。結局、各々の大学が時代状況に対応してどのような人材を育てていくのか、自らの特色ある研究をどうしていくかという中で自ずと決まっていくのではないか。

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