附属資料 中央教育審議会 「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」 中間報告概要

1 基本的な考え方

  • 「知の時代」とも言われるこの21世紀において,我が国がリーダーシップを発揮し発展していく上で大学の果たす役割は極めて大きく,国際的通用性等の観点からも,大学の質を社会に保証していく必要がある。
  • また,我が国の行政システム全体が,国による事前規制型から事後チェック型へと移行する方向にあり,平成13年12月の総合規制改革会議第1次答申等も踏まえ,事前規制である設置認可制度を見直し,国の関与は謙抑的としつつ,設置後も含めて全体で大学の質を保証していく必要がある。
  • このため,現在,国による厳格な設置認可と各大学の自己努力に負っている大学の質の保証システムについて,設置認可を弾力化し大学が自らの判断で社会の変化等に対応した教育研究活動を展開できるようにするとともに,設置後の状況を第三者が客観的な立場から継続的にチェックを行う体制を整備することにより,大学の自主性・自律性を踏まえた新たな質の保証システムを構築する。

2 設置認可の在り方の見直し

設置認可の対象

  • 大学が主体的・機動的・弾力的に組織改編できるよう,設置認可の対象を大学の質の確保のために事前審査が必要不可欠なものに限定する。
  • 具体的には,国の設置認可は,大学,大学院の基本組織である学部,研究科等の新設・改廃について行うことを原則とするが,学部の設置は認可,学部の学科の設置は届出といった一律な対応とするのではなく,改編前後で授与する学位の種類や対象とする学問分野に変更があるか否かを勘案して次のような弾力的な取扱いとする。
    • (1)現在授与している学位の種類・分野を変更しない範囲内で組織改編する場合は,学部等大学の基本組織の設置であっても国の認可は不要とし,届出で足りることとする。
      • <イメージ例>
        • 経済学部の中に経済学科と経営学科があり,経営学科を改組して経営学部を新設する場合は届出とする。
        • 理学研究科と工学研究科を統合して理工学研究科を新設する場合は届出とする。
    • (2)新たな種類・分野の学位を授与する課程等を創設するための組織改編の場合は,学部の学科の新設であっても認可の対象とする。
      • <イメージ例>
        • 医学部の中に既設の医学科とは別に看護学科を新設する場合は,看護学部の設置の場合と同様,認可の対象とする。
        • 既設大学に新たに「法科大学院」の課程を設置する場合は,研究科として設置するか専攻として設置するかを問わず,認可の対象とする。
  • 今後の学部等の設置に当たっては,改編前後で授与する学位の異同によって認可か届出かが分かれることとなるため,どのような場合が「新たな分野の学位」に該当するかについて更に整理し,明確化する。
  • 私立大学の収容定員の増減に係る学則変更について,今後も認可対象とするのは大学全体で収容定員が純増する場合のみに限定する。
  • 短期大学の学科について,短大の基本組織として認可の対象とするものの審査の手続や内容の大幅な簡素化を図ることとするか,あるいは,原則として届出とするかについて,引き続き検討する。
  • 届出事項となったものについて,届出内容が法令に適合していない場合は,国は変更その他必要な措置が講じられるようにする。

設置審査の取扱い方針

  • 大学,学部等の設置審査における抑制方針は撤廃する方向で検討する。ただし,現在全く新増設等を認可していない医師,歯科医師,獣医師,教員及び船舶職員の分野について,例外として今後もその取扱いを継続する必要があるかどうか更に検討する。
  • 首都圏,近畿圏等における工業(場)等制限区域内等の大学,学部等の設置審査における抑制方針は撤廃する方向で検討する。
  • なお,抑制方針を撤廃するに当たっては,大都市部における過当競争の激化,地域間格差の拡大等が生じるおそれもあることから,これらの点に引き続き配慮した方策について別途検討する。

校地に係る基準の見直し

  • 校地面積基準(校地が校舎の基準面積の3倍以上)及び校地の自己所有比率規制(原則として基準面積の2分の1以上が自己所有)は,一定の役割を果たしていることを踏まえ,数量基準は設定することとしつつ,その在り方について検討する。

3 第三者評価(適格認定)制度の導入

  • 大学の教育研究活動等の状況について,様々な第三者評価機関のうち国の認証を受けた機関(認証評価機関)が,自ら定める一定の基準を基に定期的に評価し,その基準に達しているものに対して適格認定を行うとともに,評価結果を踏まえて大学が自ら改善を図ることを促す制度を導入する。
  • 機関別第三者評価について,各大学は認証評価機関による評価を受けることとする方向で検討する。ただし,評価の実施スケジュールについては,第三者評価機関の整備充実の状況や評価に対する大学側の準備状況を考慮して定める。
  • 専門分野別第三者評価について,高度専門職業人養成に特化した大学院は認証評価機関による評価を受けることとする方向で検討する。特に,法科大学院などその修了が国家試験の受験資格等とつながる大学院に関しては認証評価機関による評価を受けることとする。
  • 適格認定されなかった大学は,それを理由に直接国から行政処分を課されることとなるものではないが,法科大学院などその修了が国家試験の受験資格等とつながる大学院の場合については,その対応の在り方について検討する。

4 法令違反状態の大学に対する是正措置

  • 違法状態の大学に対する国の措置としては,現行法令上,大学の閉鎖命令しか認められていないが,これの発動に至る前の,大学の自主性・自律性を踏まえた緩やかな改善措置の規定が整備されていないことから,改善勧告など閉鎖命令に至る事前の措置を導入する方向で検討する。

5 留意点

  • 今後の大学の教育研究の質の確保は,これまで述べてきた種々の方策をセットで実施することによって初めて可能になるものであることに留意する。
  • 第三者評価機関に対する国の支援方策について検討する。
  • 大学評価・学位授与機構による評価を受けることを希望する私立大学についてはこれを可能にする。
  • 教育研究活動や財務関係の状況,評価結果など,大学の情報提供を一層促進する。
  • 大学の存続や学生に対する教育機会の提供が困難になった場合における学生の就学機会の確保方策等について検討する。

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

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