制度発足以来、多様な分野において急速に設置されてきた専門職大学院の教育研究活動等の実態について、的確に把握し、高度専門職業人の養成の中心的な役割を担う専門職大学院の一層の充実に向けた検討を行うことを目的として実態調査を実施。
18年4月までに開設されているすべての専門職大学院(140専攻、回答率100パーセント)から、平成18年10月1日現在のデータ等について回答を得た。調査内容については以下のとおり。
法科大学院については、18年度から実施の新司法試験への対応として、16年4月に68専攻が同時に新設されたことに伴って志願者が集中した傾向があるが、その後も高い志願倍率で推移している。
その他の分野の専門職大学院の志願者については、毎年急増している入学定員とともに増加しており、各年度とも志願者が入学定員を上回っている。
15年度 | 16年度 | 17年度 | 18年度 | ||
---|---|---|---|---|---|
法科大学院 | 入学定員 | 0 | 5,590 | 5,825 | 5,825 |
志願者 | 0 | 72,800 | 41,756 | 40,341 | |
倍率 | 0 | 13.2 | 7.2 | 6.9 | |
その他分野の専門職大学院 | 入学定員 | 654 | 1,564 | 2,776 | 3,797 |
志願者 | 1,269 | 2,551 | 4,919 | 5,505 | |
倍率 | 1.9 | 1.6 | 1.8 | 1.5 |
専門職大学院の在学生は、その特性により、修士(博士前期)課程と比べ社会人の割合が高く幅広い年齢で構成されている。また、他大学や他分野からの入学者が多く多様な学生が在籍していることを表している。
24歳以下 | 25~29歳 | 30~39歳 | 40~49歳 | 50歳以上 | |
---|---|---|---|---|---|
法科大学院 | 30.7 | 37.6 | 24.8 | 5.8 | 1.1 |
ビジネス・MOT | 7.0 | 17.6 | 51.3 | 19.3 | 4.8 |
会計 | 38.2 | 27.2 | 22.6 | 9.0 | 3.0 |
公共政策 | 51.7 | 25.1 | 16.6 | 4.4 | 2.2 |
その他 | 28.7 | 25.0 | 28.7 | 11.9 | 5.7 |
計 | 28.3 | 32.8 | 28.5 | 8.3 | 2.1 |
24歳以下 | 25~29歳 | 30~39歳 | 40~49歳 | 50歳以上 |
---|---|---|---|---|
79.5 | 10.0 | 6.3 | 2.7 | 1.5 |
在学者数 | うち社会人学生数(比率) | |
---|---|---|
法科大学院 | 14,152 | 4,431(31.3パーセント) |
ビジネス・MOT | 2,926 | 2,618(89.5パーセント) |
会計 | 1,490 | 642(43.1パーセント) |
公共政策 | 609 | 188(30.9パーセント) |
その他 | 1,051 | 579(55.1パーセント) |
計 | 20,228 | 8,458(41.8パーセント) |
在学者数 | うち社会人学生数(比率) |
---|---|
165,525 | 19,629(11.9パーセント) |
「社会人学生」とは、平成18年10月現在において職に就いている者、すなわち給料、賃金、報酬その他経常的な収入を目的とする仕事に就いている者(企業等を退職した者及び主婦を含む。)とする。
学部卒業 | 修士課程修了 | 博士課程修了 | その他 | |
---|---|---|---|---|
法科大学院 | 90.2 | 8.4 | 0.5 | 0.9 |
ビジネス・MOT | 84.8 | 10.1 | 1.0 | 4.1 |
会計 | 93.3 | 4.8 | 0.1 | 1.8 |
公共政策 | 94.6 | 4.0 | 0.1 | 1.3 |
その他 | 82.5 | 6.6 | 0.8 | 10.1 |
計 | 89.4 | 8.2 | 0.5 | 1.9 |
専門職学位課程 | 修士・博士前期課程 | |
---|---|---|
他の大学等からの入学者の割合 | 75.7 | 30.0 |
他の分野からの入学者の割合 | 35.8 | 12.8 |
専門職大学院の修了生はまだ少数であり、現時点において調査結果等から一定の傾向を見出すことや評価を行うことは困難である。しかしながら専門職大学院制度の趣旨に則った教育研究活動の充実のためには、「修了生の状況」は非常に重要な要素であり、今後、継続的にフォローアップを行うことが不可欠である。
社会人学生 | その他の学生 | |
---|---|---|
企業等に勤務 | 72.9 | 70.5 |
転職または起業 | 12.6 | 3.1 |
博士課程への進学 | 1.6 | 8.9 |
不明・その他 | 12.9 | 17.3 |
専門職大学院の専任教員は、専攻分野について
を専攻の種類規模に応じ置くものとされ、基準上必要とされる専任教員数の3割以上(法科大学院については2割以上)の実務家教員を必置としている。
「専任教員の学位取得状況」においては、「博士」の学位を有する専任教員も33.9パーセントがである一方で、「学士・その他」についても27.1パーセントを占めており、多様な専任教員によって構成されていることが表されている。
「専任教員の年間授業担当単位数」については、1年間の授業担当単位数が6単位未満の教員が31.8パーセントである一方で、12単位以上担当している教員も24.0パーセントとなっており、教員それぞれによって授業負担に相違がある。
博士もしくはPh.D | 修士 | 学士・その他 | |
---|---|---|---|
法科大学院 | 23.8 | 39.6 | 36.6 |
ビジネス・MOT | 52.8 | 27.0 | 20.2 |
会計 | 31.2 | 31.9 | 36.9 |
公共政策 | 47.0 | 24.4 | 28.6 |
その他 | 43.8 | 28.1 | 28.1 |
計 | 33.9 | 39.0 | 27.1 |
39歳以下 | 40~49歳 | 50~59歳 | 60~69歳 | 70歳以上 | |
---|---|---|---|---|---|
法科大学院 | 7.3 | 28.1 | 35.7 | 22.4 | 6.4 |
ビジネス・MOT | 8.3 | 31.9 | 31.2 | 26.1 | 2.5 |
会計 | 10.6 | 31.3 | 25.1 | 25.1 | 7.9 |
公共政策 | 10.1 | 36.1 | 34.5 | 17.6 | 1.7 |
その他 | 20.4 | 22.8 | 31.2 | 19.6 | 6.0 |
計 | 9.0 | 28.9 | 33.6 | 22.8 | 5.7 |
6単位未満 | 6~7単位 | 8~9単位 | 10~11単位 | 12単位以上 | |
---|---|---|---|---|---|
法科大学院 | 27.0 | 22.1 | 17.6 | 12.0 | 21.3 |
ビジネス・MOT | 35.0 | 12.7 | 10.5 | 4.8 | 37.0 |
会計 | 33.9 | 19.8 | 15.9 | 3.7 | 26.4 |
公共政策 | 36.8 | 26.5 | 8.5 | 5.1 | 23.1 |
その他 | 49.4 | 6.0 | 12.0 | 13.7 | 18.9 |
計 | 31.8 | 18.9 | 15.3 | 10.0 | 24.0 |
ファカルティ・ディベロップメントについては、専門職大学院設置基準第11条において実施することが義務付けられており、本調査の回答では、すべての専門職大学院が実施していることが確認できた。
なお、その実施方法について代表的な項目を掲げ調査したところ、「学生による授業評価」が最も多く95パーセントであり、続いて「教員相互の授業参観」60.7パーセントとなっている。
新任教員研修会 | 研修会(新任以外) | 教員相互の授業参観 | 教員相互の授業評価 | センターの設置 | センター以外の組織設置 | 講演会の開催 | 学生による授業評価 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
法科大学院 <74> |
14 (18.9) |
28 (37.8) |
56 (75.7) |
25 (33.9) |
5 (6.8) |
35 (47.3) |
34 (45.9) |
71 (95.9) |
ビジネス <28> |
16 (57.1) |
14 (50.0) |
13 (46.4) |
3 (10.7) |
4 (14.3) |
5 (17.9) |
7 (25.0) |
27 (96.4) |
会計 <14> |
7 (50.0) |
6 (42.9) |
6 (42.9) |
5 (35.7) |
2 (14.3) |
5 (35.7) |
6 (42.9) |
13 (92.8) |
公共政策 <7> |
2 (28.6) |
1 (14.3) |
2 (28.6) |
1 (14.3) |
1 (14.3) |
3 (42.9) |
2 (28.6) |
7 (100) |
その他 <17> |
4 (23.5) |
5 (29.4) |
8 (47.1) |
3 (17.6) |
0 (0.0) |
4 (17.6) |
13 (76.5) |
15 (88.2) |
計 <140> |
43 (30.7) |
54 (38.6) |
85 (60.7) |
37 (26.4) |
12 (8.5) |
52 (37.1) |
62 (44.3) |
133 (95.0) |
※ 分野名の項目における<>は設置されている専攻の数
専門職大学院の修了要件については、設置基準上、研究指導を受けること及び論文、研究成果は必須とせず、一定期間(原則として2年間)の在学と必要とする単位の修得のみを必須としているが、現状においては、設置基準の範囲内で、各専門職大学院がそれぞれ定めている。このため、同一分野の大学院間においても、「必要修得単位数」に大きな差が生じている。このことは「履修登録科目の上限設定」も同様である。
なお、法科大学院については、修了要件について3年以上の在籍で93単位以上、履修科目登録の上限は1年間で36単位を標準とすることが専門職大学院設置基準上定められ、それに基づいて各法科大学院が修了要件や履修科目登録の上限を設定しているため掲載を省略した。
30~39単位 | 40~49単位 | 50~59単位 | 60単位以上 | |
---|---|---|---|---|
ビジネス・MOT | 8 | 16 | 2 | 2 |
会計 | 1 | 4 | 6 | 3 |
公共政策 | 0 | 7 | 0 | 0 |
その他 | 5 | 6 | 5 | 1 |
計 | 14 | 33 | 13 | 6 |
25単位以下 | 25~34単位 | 35~39単位 | 40単位以上 | |
---|---|---|---|---|
ビジネス・MOT | 6 | 12 | 2 | 3 |
会計 | 0 | 5 | 5 | 4 |
公共政策 | 0 | 2 | 3 | 2 |
その他 | 2 | 4 | 5 | 4 |
計 | 8 | 23 | 15 | 13 |
その他
7専攻
(例)
成績評価基準の明示については、専門職大学院設置基準第10条において義務付けられており、すべての専門職大学院において実施している。しかしながら、明示する内容、範囲、方法等は様々である。その中において「GPA制度を導入している専門職大学院(専攻数)」については以下のとおりであり、全体でも半数以下にとどまっている。
法科 | MBA・MOT | 会計 | 公共政策 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|
GPA制度を導入している専 攻数/設置専攻数 |
36/74 (48.6) |
9/28 (32.1) |
4/14 (28.6) |
0/7 (0.0) |
5/17 (29.4) |
社会人の学生など、多様な学生が在籍している専門職大学院における、学生の学習支援体制の整備状況について調査した。その結果、社会人学生の比率が高い経営系の専攻分野については、平日の夜間及び土曜日などに授業を開講するなど「勤務時間に配慮した授業時間の設定」や都心等、立地条件のよいところで学習できるよう配慮した、「サテライト・遠隔教育システムの整備」などによって学生のニーズに応えている。
また、学習相談への対応については、オフィスアワーの設定とともに、通信手段などを活用し、在学時間帯以外においても教員と学生が相談できる体制を整えるなどの工夫も見受けられる。
社会人のみを募集対象 | 社会人特別選抜の実施 | 勤務時間に配慮した授業時間の設定 | サテライト・遠隔教育システムの整備 | |
---|---|---|---|---|
法科大学院<74> | 1 | 13 | 9 | 5 |
ビジネス・MOT<28> | 13 | 7 | 27 | 17 |
会計<14> | 2 | 3 | 7 | 3 |
公共政策<7> | 0 | 0 | 3 | 0 |
その他<17> | 1 | 5 | 9 | 4 |
計 | 17 | 28 | 55 | 29 |
※ 分野名の項目における<>は設置されている専攻の数
オフィスアワーの設定 | 双方向性の通信手段(電子メールなど)を活用 | TA等学習サポートを担うスタッフの配置 | |
---|---|---|---|
法科大学院<74> | 69 | 56 | 37 |
ビジネス・MOT<28> | 21 | 27 | 11 |
会計<14> | 10 | 10 | 7 |
公共政策<7> | 5 | 3 | 4 |
その他<17> | 13 | 14 | 3 |
計 | 118 | 110 | 62 |
※ 分野名の項目における<>は設置されている専攻の数
「自習室の整備状況」については、収容定員の80パーセント以上の座席数が整備されている専攻が全体の70パーセントを占めており、概ね学生が常時使用できる環境を整備している傾向が見受けられるが、一部で収容定員の30パーセント未満の専攻(全体では12パーセント)が見受けられた。
「図書の整備状況」については、専門職大学院の立地条件などにも違いがあるが、10万冊以上の閲覧可能図書を有している専攻が多数(全体では72.8パーセント)を占める一方で、1万冊未満の整備にとどまっている専攻(全体では12.8パーセント)も見受けられた。
30パーセント未満 | 31~50パーセント未満 | 50~80パーセント未満 | 80パーセント以上 | |
---|---|---|---|---|
法科大学院<74> | 0(0.0) | 0(0.0) | 1(1.4) | 73(98.6) |
ビジネス・MOT<28> | 10(35.7) | 5(17.9) | 6(21.4) | 7(25.0) |
会計<14> | 1(7.1) | 0(0.0) | 4(28.6) | 9(64.3) |
公共政策<7> | 1(14.3) | 1(14.3) | 3(42.8) | 2(28.6) |
その他<17> | 6(35.3) | 3(17.6) | 1(5.9) | 7(41.2) |
計 | 18(12.9) | 9(6.4) | 15(10.7) | 98(70.0) |
※ 分野名の項目における<>は設置されている専攻の数
1万冊未満 | 5万冊未満 | 10万冊未満 | 10万冊以上 | |
---|---|---|---|---|
法科大学院<74> | 7(9.5) | 8(10.8) | 2(2.7) | 57(77.0) |
ビジネス・MOT<28> | 4(14.3) | 3(10.7) | 0(0.0) | 21(75.0) |
会計<14> | 2(14.3) | 1(7.1) | 1(7.1) | 10(71.4) |
公共政策<7> | 0(0.0) | 1(14.3) | 0(0.0) | 6(85.7) |
その他<17> | 5(29.4) | 0(0.0) | 3(17.7) | 9(52.9) |
計 | 18(12.8) | 13(9,3) | 6(4.3) | 103(73.6) |
※ 分野名の項目における<>は設置されている専攻の数
高等教育局高等教育企画課高等教育政策室
-- 登録:平成21年以前 --